2011年6月6日月曜日

高齢の大腸がん患者の長期予後を改善する周術期の評価と介入

高齢の大腸がん患者の長期予後を改善する周術期の評価と介入に関するレビュー論文を紹介します。

Cheema FN, Abraham NS, Berger DH, Albo D, Taffet GE, Naik AD. Novel approaches to perioperative assessment and intervention may improve long-term outcomes after colorectal cancer resection in older adults. Ann Surg. 2011 May;253(5):867-74.

高齢の大腸がん患者では様々なリスクを有していることがあります。そのためにCGA:comprehensive Geriatric Assessment高齢者総合機能評価による評価が重要としています。この中に栄養評価や身体機能評価も、もちろん含まれます。CGAの詳細は下記のHPを参照してください。

http://hosp.nms.ac.jp/shinryo/elderly/kinohyoka.html

周術期の介入としてリハはとても重要です。先行研究の多くは術後の早期リハに関するものですが、最近ではprehabilitationに関する研究もいくつか行われています。整形外科領域のprehabilitationに関する研究が多いのが現状ですが、有効という報告もいくつか見られています。また、prehabilitationの一部では、運動(有酸素運動+レジスタンストレーニング)と栄養療法を併用しています。

CGAで評価して必要な場合にprehabilitation(運動+栄養)を行うという流れが、長期予後を改善させる術前評価と介入になるかもしれません。ただし、周術時期を遅らせることによる害とprehabilitationの益のバランスを考慮することが必要です。

この論文では主に術前の評価と介入に重きが置かれていますが、これとERAS:Enhanced Recovery After Surgery術後回復力増強プログラムを組み合わせることが、周術期リハ栄養プログラムとしてベストだと感じています。

Abstract
Colorectal cancer (CRC) is common among older adults and surgical resection with curative intent is the primary treatment of CRC. Despite the changing demographics of CRC patients and increasing prevalence of multiple comorbidities, surgery is increasingly performed in this complex aging population. Clinically important short-term outcomes have improved for this population, but little is known about long-term outcomes. We review the literature to evaluate trends in CRC surgery in the geriatric population and the outcomes of surgical treatment. We explore the specific gaps in understanding longitudinal patient-centered outcomes of CRC treatment. We then propose adaptations from the geriatrics literature to better predict both short and long-term outcomes after CRC surgery. Interventions, such as prehabilitation, coupled with comprehensive geriatric assessment may be important future strategies for identifying vulnerable older patients, ameliorating the modifiable causes of vulnerability, and improving patient-centered longitudinal outcomes. Further research is needed to determine relevant aspects of geriatric assessments, identify effective intervention strategies, and demonstrate their validity in improving outcomes for at-risk older adults.

2011年6月4日土曜日

サルコペニアのphase IIb研究のデザイン

サルコペニアのphase IIb研究のデザインに関する国際サルコペニアワーキンググループの論文を紹介します。

Chumlea WC, Cesarit M, Evans WJ, Ferrucci L, Fielding RA, Pahor M, Studenski S, Vellas B. Sarcopenia: designing phase IIb trials: international working group on sarcopenia. J Nutr Health Aging. 2011;15(6):450-5.

今までの研究で除脂肪量(fat-free mass)は身体活動や栄養介入によって短期間で反応することがわかっています。しかし、薬物療法では有意な効果を示すことができていません。治療効果、サンプルサイズ、一次アウトカムが適切なサルコペニア研究は少ないのが現状です。

DEXAは除脂肪量の測定に有効ですが、正確かつ信頼できる変化を観察するにはかなりの時間が必要です。臨床、基礎、疫学の研究に有用なサルコペニアの診断方法の確立が必要です。

リハやNSTの臨床ではどんな診断基準であれ、サルコペニアに間違いないという方が少なからずいます。サルコペニア肥満の方を見落としている可能性があるかもしれませんが。正確な定義と診断基準ができるまで何年も待っている猶予は、臨床にはありません。

機能訓練室で運動を行った直後に、サルコペニアに効果的と思われる栄養材を飲む(運動中でも構いませんが)というリハ栄養文化を、早く日本に定着させたいと思っています。

abstract

Sarcopenia is the age-related involuntary loss of skeletal muscle mass and functionality that can lead to the development of disability, frailty and increased health care costs. The development of interventions aimed at preventing and/or treating sarcopenia is complex, requiring the adoption of assumptions and standards that are not well established scientifically or clinically. A number of investigators and clinicians (both from academia and industry) met in Rome (Italy) in 2009 to develop a consensus definition of sarcopenia. Subsequently, in Albuquerque (New Mexico, USA) in 2010, the same group met again to consider the complex issues necessary for designing Phase II clinical trials for sarcopenia. Current clinical trial data indicate that fat-free mass (FFM) parameters are responsive to physical activity/nutritional treatment modalities over short time periods, but pharmacological trials of sarcopenia have yet to show significant efficacy. In order to conduct a clinical trial within a reasonable time frame, groups that model or display accelerated aging and loss of FFM are necessary. Few studies have used acceptable designs for testing treatment effects, sample sizes or primary outcomes that could provide interpretable findings or effects across studies. Dual energy x-ray absorptiometry (DXA) is the measure of choice for assessing FFM, but sufficient time is needed for changes to be detected accurately and reliably. A tool set that would allow clinical, basic and epidemiological research on sarcopenia to advance rapidly toward diagnosis and treatment phases should be those reflecting function and strength.

2011年6月3日金曜日

いしかわ地域リハビリテーション研究会

7月9日(土)14時から金沢市の近江町交流プラザ集会室で、いしかわ地域リハビリテーション研究会主催の講演会「リハビリテーション栄養の考え方と実践 ~QOL 向上に、リハビリ栄養ケアプラン!~」が開催されます。

http://ishireha.yokochou.com/infohistory/20110709/20110709tirashi.pdf

以下、上記HPからの引用です。

私たちが支援し、ケアをしている人の中で、栄養状態が不良で栄養管理が不適切な人が少なくありません。このような人に積極的な機能訓練や活動を行うと栄養状態が悪化して、筋力、持久力もかえって低下する可能性があります。という視点から若林先生は、リハビリと栄養管理を併用するリハビリ栄養ケアプランは、訓練・活動単独の場合よりもADL やQOL の向上が期待できることについて講演されます。この機会に、低栄養状態による筋肉量の低下について知識を深め、栄養と運動・活動について一緒に考えてみましょう。

金沢周辺の方はよかったらご参加ください。申し込み先も上記HPを参照してください。

第1回日本リハ栄養研究会まであと半年

2011年12月3日(土)に神奈川歯科大学附属横浜クリニック7階大会議室で、第1回日本リハビリテーション栄養研究会を開催します。今日で開催まであと半年になりました。

目的は、リハビリテーション栄養学の研究、教育、臨床での普及と発展を図ることと、リハビリテーション栄養に関心を持つ人たちの学習、成長、交流を図ることの2つです。

リハ栄養に関心を持って下さる方は少しずつ増えている印象はあります。しかし、ごく少数派、ニッチであることは確かです。今年のリハ関連学会で臨床栄養関連の演題はPT学会では10弱ありますが、OT学会では1つもありません。11月2-3日に延期となったリハ医学会でも栄養のセッションはなくなってしまいました。

そこでリハ栄養に関心を持つ人たちのコミュニティを作りたいと考えて、今年立ち上げることに決めました。学術的にはまったくこれからの領域ですので、当分の間は学会ではなく研究会として活動していくつもりです。

研究会の組織つくり、12月3日の研究会準備、その前の9月23-24日の第1回リハ栄養合宿(こちらは身内?のみで開催して、目的はリハ栄養普及のコアになる人材発掘・交流と学習です)と、今年はリハ栄養研究会の準備、企画、運営にかなりのエネルギーを注ぐことになります。すでに一部の方からはかなりの支援をいただいていて、本当にありがたく思っています。

まだまだ準備中で具体的な内容について公開できる状態ではありませんが、ある程度まとまりましたら、このブログだけでなく日本リハ栄養研究会HPでもきちんと案内をさせていただきます。皆様のご参加の程よろしくお願い申し上げます。

ということで最近改めて、ドラッカーの「非営利組織の経営」を読みなおしています。この通りにはとてもできませんが、少しでも近付けるように頑張ります。資金源開拓は研究会の場合、会員開拓ですね。研究会と会員の成果を何とするかは、定量化できるものとできないものの両方を考えています。

http://www.diamond.co.jp/book/9784478307052.html

目次

日本版へのまえがき

まえがき


第1部 ミッションとリーダーシップ

第1章 ミッション
 ミッションは行動本位
 ミッションの具体化
 ミッションの三本柱

第2章 イノベーションとリーダーシップ
 変化は機会
 イノベーションを成功させるために
 リーダーを見つける
 リーダーの役割
 リーダーは自らをつくりあげる
 バランスをとる
 リーダーがしてはならないこと

第3章 目標の設定 ヘッセルバインとの対話
 機会のターゲット
 ボランティアのトレーニング
 人口構造の変化を先取りする

第4章 リーダーの責任 マックス・ドプリーとの対話
 人の可能性を引き出す
 機会を提供する
 チームづくり

第5章 リーダーであるということ まとめとしてのアクション・ポイント
 ミッションを見直す
 長期目標からスタートする
 成果を中心に据える
 組織の模範となる
 市民社会をつくる


第2部 マーケティング、イノベーション、資金源開拓

第1章 マーケティングと資金源開拓
 非営利組織のマーケティング
 資金源開拓の戦略

第2章 成功する戦略
 行動志向の戦略
 改善のための戦略
 定性的な目標設定
 戦略のステップ
 気をつけるべきこと
 イノベーションの機会
 イノベーションの条件
 犯しやすい間違い

第3章 非営利組織のマーケティング戦略 フィリップ・コトラーとの対話
 マーケティングと販売の違い
 マーケティングの三つのステップ
 非営利組織のニッチ戦略
 マーケティングが求められる理由
 マーケティングの成果を測る

第4章 資金源の開拓 ダトレイ・ハフナーとの対話
 気にかけてくれる人たち
 募金を集める名人
 長期的な関係を築く
 マーケットごとの戦略
 ボランティアという基盤

第5章 非営利組織の戦略 まとめとしてのアクション・ポイント
 戦略の重要性を知る
 人をトレーニングする
 廃棄のシステムをつくる


第3部 非営利組織の成果

第1章 非営利組織にとっての成果
 成果を定義する
 多様な関係者
 長期の目標への合意
 大義と経済性

第2章 「してはならないこと」と「しなければならないこと」
 してはならないこと
 しなければならないこと
 権限委譲のルール
 基準の設定
 人を活かす

第3章 成果をあげるための意思決定
 何のための決定か
 意思決定のリスク
 真摯な不同意
 意見の対立を利用する
 決定が意図に終わる四つの原因

第4章 学校の改革 アルバート・シャンカーとの対話
 生徒がどう学ぶべきか
 公立学校を救う
 長期の目標と短期の目標

第5章 成果が評価基準 まとめとしてのアクション・ポイント
 成果のあるところに資源を投入する
 成果を明らかにする
 成果に責任をもつ


第4部 ボランティアと理事会

第1章 人事と組織
 人事の原則
 人を育てる
 強みに焦点を合わせる
 ミッションを感じさせる
 リーダーを育てる
 チームを編成する
 トップの継承

第2章 理事会とコミュニティ
 非営利組織の理事会
 ツーウェイ・リレーション

第3章 ボランティアから無給のスタッフへの変身 レオ・バーテルとの対話
 パートナーとしてのボランティア
 動機づけ
 理事会の活性化
 人としての尊厳

第4章 理事会の役割 デヴィッド・ハバードとの対話
 理事の役割
 CEOの仕事
 強力な理事会をもつ

第5章人のマネジメント まとめとしてのアクション・ポイント
 非営利組織に特有の問題
 仕事と成果を明確にする
 トップの仕事を知る


第5部 自己開発

第1章 自らの成長
 責任ある仕事
 成果をもたらすもの

第2章 何によって憶えられたいか
 働く環境を知る
 所を得る
 強みを生かす─
 成長の原理
 「何によって憶えられたいか」という問いかけ

第3章 第二の人生としての非営利組織 ロバート・バフォードとの対話
 季節の変化
 世界を広げる

第4章_ 非営利組織における女性の活躍 ロクサンヌ・スピッツァーレーマンとの対話
 男性社会での女性役員
 成果の評価
 自己開発に力を貸す

第5章 自らを成長させるということ まとめとしてのアクション・ポイント
 自ら自分の人生を設計する
 能力向上の方法を知る


訳者あとがき

索引

2011年6月2日木曜日

第3回神奈川NST合宿のご案内



10月8日(土)12:30から10月9日(日)13:40まで第3回神奈川NST合宿が、KKR江ノ島ニュー向洋で開催されます。

これは神奈川NST専門療法士連絡会が企画している、NST専門療法士取得後の学習、成長、交流の機会です。そのため、参加資格はNST専門療法士取得者に限定されます。昨年の第2回は全国からNST専門療法士の参加がありました。今回まだ、若干参加枠が残っています。私は10月8日の夕方から参加予定です。プログラムは下記のポスターを参照してください。




参加希望の方は、

http://bit.ly/kBe8D5

にアクセス後、全項目ご入力ください。申し込み後に下記に指定させていただいた振込口座に入金していただき、入金が確認された時点で、申し込みは確定となります。

◆振込先 ゆうちょ銀行 店名: 〇五八店 店番: 058 口座番号: 普通預金6877216
口座名義:「神奈川NST専門療法士連絡会」( カナガワエヌエスティーセンモンリョウホウシレンラクカイ)

NST専門療法士の皆様のご参加の程、よろしくお願いいたします。

ESPEN-LLLに学ぶ

日本静脈経腸栄養学会の学会誌「静脈経腸栄養」の前号と最新号で「ESPEN-LLLに学ぶ前編・後編」という特集記事が組まれています。前編はJ-stageで全文PDFファイルで見ることができます。後編もいずれ見れるようになるはずです。

http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjspen/26/2/_contents/-char/ja/

ESPENのLLLは臨床栄養の学習ツールとしてとても有用ですが、英語のHPしかないことがやや難点でした。

http://lllnutrition.com/

今回、一部のTopicだけですが日本語で読むことができますので、他の教材では学ぶことが難しい最新の臨床栄養の知識を知ることができます。後編ではこのブログでもよく取り上げているサルコペニアや悪液質、前悪液質に関する記載もあります。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

前編のみ目次を掲載しておきます。

特集:ESPEN-LLLに学ぶ(前編)

ESPEN-LLLプログラムについて 648-650
谷口 正哲

Topic 8 成人における経口摂取と経腸栄養 651-675
福島 亮治, 佐々木 雅也, Johann OCKENGA, Kristina NORMAN, Luzia VALENTINI

Topic 9 静脈栄養入門 677-702
竹山 廣光, 谷口 正哲, Federico BOZZETTI, Andre Van GOSSUM, Asuncion BALLARIN, Viviane LIEVIN, Stefan MÜHLEBACH, Alessandro LAVIANO, Alessio MOLFINO

Topic 13 肝疾患に対する栄養サポート 703-711
石橋 生哉, Jens KONDRUP

Topic 14 膵疾患の栄養管理 713-722
栗山 とよ子, Rémy MEIER, Johann OCKENGA

Topic 17 周術期の栄養管理 723-735
小山 諭, 森 直治, Olle LJUNGQVIST, Ken FEARON, Mattias SOOP, CHC DEJONG

2011年6月1日水曜日

ALS診断時の栄養状態は生存期間の予測因子

ALS:筋萎縮性側策硬化症診断時の栄養状態は生存期間の予測因子となるという論文を紹介します。

Marin B, et al: Alteration of nutritional status at diagnosis is a prognostic factor for survival of amyotrophic lateral sclerosis patients. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2011 Jun;82(6):628-34.

下記のHPで全文PDFで見ることができます。

http://jnnp.bmj.com/content/82/6/628.full.pdf

ALS診断時に5%以上の体重減少や1以上のBMI低下を認める場合には、生命予後が有意に短いという結果です。それ以上の体重減少やBMI低下では、さらに予後が悪くなります。経過中の低栄養を認める場合も、生命予後が短くなります。

低栄養の場合に予後が悪いことは多くの疾患で明らかになっていますが、ALSでも同様でした。今後は栄養介入で生命予後が改善するかどうかの介入研究が望まれます。ただ、ALS患者でのランダム化比較試験は、倫理面も考慮すると容易ではないと思います。

Abstract
Objectives The aims were to analyse changes in nutritional parameters from diagnosis of amyotrophic lateral sclerosis (ALS) to death and to assess their relationships with survival at the time of diagnosis and during follow-up.

Methods 92 ALS patients were included and clinically assessed every 3months (ALS functional rating scale, manual muscular testing, forced vital capacity, weight, BMI, percentage weight loss). Bioimpedance was performed to evaluate body composition (fat-free mass, fat mass and hydration status) and phase angle. Survival analyses were performed from diagnosis to death or censoring date using a Cox model.

Results The evolution of nutritional parameters in ALS patients was marked by significant decreases in weight, BMI, fat-free mass and phase angle, and increased fat mass. The authors identified an adjusted 30% increased risk of death for a 5% decrease from usual weight at time of diagnosis (RR 1.30; 95% CI 1.08 to 1.56). During follow-up, the authors identified adjusted 34% (95% CI 18% to 51%) and 24% (95% CI 13% to 36%) increased risks of death associated with each 5% decrease in usual weight and each unit decrease in usual BMI, respectively (p<0.0001). Malnutrition during the course was related to a shorter survival (p=0.01), and fat mass level was associated with a better outcome (RR 0.90 for each 2.5kg fat mass increment).

Conclusions Nutritional parameters of ALS patients worsened during evolution of the disease, and worse nutritional status (at time of diagnosis or during the course) was associated with a higher mortality. This study offers some justification for studying the use of therapeutic nutritional intervention to modify the survival of ALS patients.