Amanda Louise Love, Petrea Louise Cornwell, and Sarah Lilian Whitehouse. Oropharyngeal dysphagia in an elderly post-operative hip fracture population: a prospective cohort study. Age Ageing (2013) doi: 10.1093/ageing/aft037 First published online: March 26, 2013
181人の大腿骨近位部骨折術後の高齢者(平均年齢83歳)のうち、61人(34%)に嚥下障害を認めました。多変量解析では、骨折前からの神経疾患や呼吸器疾患の合併、術後せん妄、年齢、入院前の生活場所が介護施設の場合、嚥下障害が多かったです。
以上より、大腿骨近位部骨折術後の高齢者に嚥下障害を認めることは多く、嚥下障害の早期発見が二次的合併症の予防や入院期間の短縮に重要という結論です。
大腿骨近位部骨折術後に嚥下障害や誤嚥性肺炎を認めるのは、臨床ではよくありますよね。私はサルコペニア、低栄養(骨折、手術の侵襲を含め)の要素が大きいと感じていますが、この研究ではそもそもサルコペニアや栄養状態を評価していませんので、今後の研究課題ですね。
ちなみに日本では、大腿骨近位部骨折術後の嚥下障害について、以下の論文があります。
高齢者大腿骨近位部骨折後の誤嚥性肺炎と嚥下機能評価に基づいた食事摂取方法(原著論文)
Author:田積 匡平(岡崎市民病院 リハビリテーション室), 鳥居 行雄
Source:Hip Joint(0389-3634)38巻Suppl. Page287-290(2012.08)
Abstract:過去1年間に大腿骨近位部骨折で入院加療した60歳以上の患者199例を対象として、骨折後の肺炎発症状況と嚥下機能に関する調査を行い、食事開始前の嚥下機能評価の有用性を検討した。1年間の入院中肺炎発症率と誤嚥性肺炎の占める割合、誤嚥性肺炎発症患者の肺炎発症状況、ST介入時の評価と経過を後方視的に調査した結果、入院中に199例中12例が肺炎を発症し(肺炎発症率6%)、その66.7%(8例)が誤嚥性肺炎であったが、誤嚥性肺炎発症患者の中にはSTの評価後も食形態の調整などで経口摂取を継続できた患者が存在した。大腿骨近位部骨折においても食事開始前に適切な嚥下機能評価を行い、栄養摂取方法を調整することで誤嚥性肺炎の発症を予防できる可能性が示された。
Abstract
Background: normal ageing processes impact on oropharyngeal swallowing function placing older adults at risk of developing oropharyngeal dysphagia (OD). Anecdotal clinical experience has observed that older patients recovering from hip fracture surgery commonly develop OD post-operatively.
Objective: to document the presence of OD following hip fracture surgery, and the factors associated with OD.
Methods: one hundred and eighty-one patients with a mean age of 83 years (range: 65–103) admitted to a specialised orthogeriatric unit were assessed for OD post-surgery for hip fracture. Pre-admission, intra-operative and post-operative factors were examined to determine their relationship with the presence of OD.
Results: OD was found to be present post-operatively in 34% (n = 61) of the current population. Multivariate logistic regression analyses revealed the presence of pre-existing neurological and respiratory medical co-morbidities, presence of post-operative delirium, age and living in a residential aged care facility prior to hospital admission to be associated with the post-operative OD.
Conclusion: these results highlight that OD is present in a large number of the older hip fracture population. Early identification of OD has important implications for the provision of timely dysphagia management that may prevent secondary complications and potentially reduce the hospital length of stay.
いつもブログを拝見させていただいております。
返信削除今回自分の論文を紹介していただいているのを発見し、ただただ驚いております。
当院は大腿骨近位部骨折の入院患者数がとても多く、現在も継続して大腿骨近位部骨折の嚥下障害、誤嚥性肺炎についての研究を進めております。
また、機会がございましたら先生の御話を御伺いしたいと思っております。
この度はありがとうございました。
田積さん、コメントしてくださりどうもありがとうございます。大腿骨近位部骨折患者の嚥下障害は、臨床現場ではかなり多いのに、あまりエビデンスがありませんでしたよね。ぜひ低栄養とサルコペニアの視点を含めた臨床研究を行っていただけると嬉しいですね。今後ともよろしくお願い申し上げます。
返信削除ありがとうございます。
返信削除当院でも上記論文のような大腿骨近位部骨折患者の前向き調査を実施し、その対応策を考案しており、現在投稿中で今秋くらいには刊行されると思います。
その中で入院時の栄養状態(Alb、TP、Hb)の比較は行っておりますので、また御意見をお伺いできれば嬉しく存じます。
今後とも宜しくお願い申し上げます。