栄養とサルコペニアのレビュー論文を紹介します。
Siân Robinson, Cyrus Cooper, and Avan Aihie Sayer: Nutrition and Sarcopenia: A Review of the Evidence and Implications for Preventive Strategies. Journal of Aging Research Volume 2012 (2012), Article ID 510801, doi:10.1155/2012/510801
下記のHPで全文見ることができます。最近の論文まで含まれていて、サルコペニアの栄養療法の学習には有用だと思います。
http://www.hindawi.com/journals/jar/2012/510801/
サルコペニアの栄養療法として、蛋白、ビタミンD、抗酸化栄養素を十分摂取すべきとしています。n-3脂肪酸もサルコペニアに有効な可能性があります。ただし、観察研究による関連は確かでも、介入研究による有効性が検証されたものはわずかです。
運動と蛋白・アミノ酸の組み合わせに関しては、運動単独とそれほど変わらないという報告も少なくありません。もちろん有効という報告もありますが。低栄養やサルコペニアの高齢者ではより効果が高いのではと推測します。
サルコペニア予防を高齢になってから考えるのではなく、若年時の筋肉量のピークを高くすることで予防するという考え方があります。そのため生涯にわたる適切な食事と栄養が、サルコペニア予防の鍵となるかもしれません。
Abstract
Prevention of age-related losses in muscle mass and strength is key to protecting physical capability in older age and enabling independent living. To develop preventive strategies, a better understanding is needed of the lifestyle factors that influence sarcopenia and the mechanisms involved. Existing evidence indicates the potential importance of diets of adequate quality, to ensure sufficient intakes of protein, vitamin D, and antioxidant nutrients. Although much of this evidence is observational, the prevalence of low nutrient intakes and poor status among older adults make this a current concern. However, as muscle mass and strength in later life are a reflection of both the rate of muscle loss and the peak attained in early life, efforts to prevent sarcopenia also need to consider diet across the lifecourse and the potential effectiveness of early interventions. Optimising diet and nutrition throughout life may be key to preventing sarcopenia and promoting physical capability in older age.
2012年3月20日火曜日
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若林先生 漠然と効果がレビューに掲載されてるけど、
返信削除介入研究できちんとデータが出てるものってあまり多くないですよね。ビタミンD摂取なんて本当結果がバラバラだし、抗酸化物質も安定した結果が得られてないと感じます。個人により栄養状態が異なるというのが一因なのでしょうが、患者さんを対象にこういう研究するのって結構難しそうですね。。。ロイシン摂取が一番大事だという主張があるけど、ロイシンに加えてより多くの必須アミノ酸を摂取した方が明らかに効果的ですよね。何事もバランスが大事だということでしょうか。。。
佐久間先生、どうもありがとうございます。サプリメント単独でサルコペニアに有効であることを検証するのはかなり難しい(そんなに有効ではないのでは…)と個人的には感じています。
返信削除ロイシン単独より多くの必須アミノ酸を摂取したほうがよいことは、佐久間先生の書籍にも記載されていましたね。
単一の栄養素や食品でサルコペニアを解決しようという発想は不適切だと思います。私ならリハ栄養の考え方でレジスタンストレーニングと食事療法を必ず併用しますね。あとは今後の薬物療法の開発に期待です。
若林先生 貴重な意見ありがとうございます。現場の方の率直な意見、本当にためになります。僕もレジスタンストレーニングと食事療法は併用すべきだという意見に賛成なのですが、その本当の理由となるとちょっと自信が無い部分があります。リハ栄養の立場からすると、どのように考えるのでしょうか?運動することによるタンパク代謝の亢進が、サプリメントの効果(吸収)を促すという考え方でしょうか。ちょっと単純すぎる意見で申し訳ありませんが、もし良かったら先生の考えを教えて下さい。
削除佐久間先生、どうもありがとうございます。本当の理由となると私こそ自信がありません(笑)。先行研究で筋トレ後にアミノ酸と糖質を同時に摂取した場合にもっともタンパク質合成が高まるという報告がありますので、それを根拠としています。
返信削除なぜそうなのかとなると、筋トレでタンパク代謝が合成も分解も亢進しますが、その際血中BCAA濃度が高いと筋肉に取り込まれるBCAAが増えて、分解が少なくなり合成が増えるのではと単純に思っていました。
若林先生 そのような論文確かにありましたね。うっかり忘れてました。最近自分の記憶力があやしいときが度々あります (笑) 代謝が亢進している時でないと、外から摂取するサプリメントの類いは効果的に取り込まれずに、排泄される可能性があるのでしょうね。。。抗酸化物質でもビタミンDでも、欠乏(足りてない)状態にあれば効果的な介入データが出て、そうでない場合は効果無しという結果。患者さんの状態を見極め、それぞれに適切な処置ということなのでしょうが、それを見抜くための専門医の能力が試されてる感じがします。とてもやりがいのあるお仕事ですね!
返信削除佐久間先生、どうもありがとうございます。
返信削除抗酸化物質でもビタミンDでも欠乏時には投与が有効ですが、それ以外の場合にルーチンで使用する気には、今のところなれません。
高齢者で低栄養の場合にはビタミンDの血中濃度も低いことがよくありますが、保険診療に含まれていないのが難点です。サルコペニアの原因を見抜いて適切な対応を行うのは、確かにとてもやりがいのある仕事だと思います。もっと広められるよう頑張ります。ありがとうございました。