内科指導医に役立つ教育理論その3として、「発達の最近接性領域」、「構成主義」、「協同的学習」について、西城卓也「内科指導医に役立つ教育理論」(日内会誌100: 1987-1993, 2011)より引用紹介させていただきます。
まず「発達の最近接性領域」です。Vygotskyは学びの段階を単独で到達できる段階と、援助を受けて到達できる段階のふたつがあると構造化しています。そして、その2つの段階の間を、発達の最近接性領域(zone of proximal development)とよび、学びはその学習者がジャンプする程度の領域で行われるべきであると提示しました。
身の丈に合った練習を提供するには、学習者の発達を指導者が把握しながら、レベルを調節しなければならないということになります。無茶ぶりは「突然」という意味ならまだ許されることもありますが、「段階やレベルが違いすぎる」という意味では許されないということですね。反省です…。
次に「構成主義」です。構成主義によれば、知識というものは、その個人の有する知識体系に、新しい知識が自らの作業によって組み込まれ構成されていくものだそうです。自分で試行錯誤して身に付けた知識のほうがよく記憶できて応用できるようです。
従って指導者の役割は、講義により一方的に知識を「移植」することではなく、学習者自身の思考活動を促進させることです。その際、学習者が何を知っているかを把握することが、指導者の試金石となります。
ただこれは学習者自身も自分が何を知っているかを把握すべきでしょう。「何を知らないかも知らない」のでは、学習をどこから始めればよいのかの判断が難しいです。実際には理想的な指導者やロールモデルに出会える方ばかりではありませんので、その際には学習者によるセルフラーニングが必要です。現代はセルフラーニングを行いやすい時代ではありますが、構成主義の考え方は重要だと考えます。
最後に「協同的学習」です。「勉強」と「学習」の定義について、佐藤はこれらの違いを「出会いと対話」であるとしています(佐藤学、2004)。
勉強とは、教師の説明する教科書の内容を理解し暗記する座学と表現しています。それに対して、学習とは、概念・モデル・理論に触媒された議論・実験・経験によって遂行される活動的な学びであるとしています。
臨床教育に推奨されるべき学習方法は、主に小グループで行われる協同的学習(collaborative learning)です。協同的学習では、様々なレベルのグループメンバー間での協力が推奨されます。相互の考えや知識を惜しみなく議論を通じて提供しあい、互いが学び成長し合っていくことが学習の目的です。
協同的学習では、学びは様々な他者や知識との「出会い」であり、交流的な「対話」こそ、その強力な学習方法となります。ここで指導者の役割は、情報提供者というよりもファシリテーターになります。
リハ栄養はリハと栄養の「出会い」であり、多くの職種が実際に「出会い」、「対話」を深めることが重要です。リハ栄養研究会に限りませんが、研究会を「勉強」の場ではなく、「学習」の場にしたいと考えます。
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