内科指導医に役立つ教育理論その2として、まずTARGETモデルを紹介します。このモデルは私はこの論文で初めて知りました。
これは学習者のやる気を支援するモデルで、Task, Autonomy, Recognition, Grouping, Evaluation, Timeの頭文字をとったものです。成人学習理論はある程度自主的に学ぼうとするやる気のある学習者であることが前提になっていますが、実際にはモチベーションが低い学習者も少なくありません。そのためのモデルです。
TARGETのそれぞれの内容と例として、下記のように記載されています。
T:学習者のタスクがどのような意義深いものであるかを明確にする
例:学習の目的を説明する、目標を自主的に設定させる
A:学習者の志向に合わせた選択性・責任を持たせる
例:選択できるように複数の課題を提示する、司会進行を任せる
R:学習者として認識し、学びの進捗を承認する
例:学習者として自己評価させる、賞を与える
G:学習者同士の交流を促す
例:隣同士で話し合わせる、小グループ討議を用いて学習する
E:学習者の評価・報告の機会を設ける
例:フィードバックをする、試験を実施する
"Assessment drives learning"とはよく言われる格言である
T:学習する時間や期間の決定にも学習者を参加させる
例:スケジュールにゆとりを持たせる、学習のペースを学習者に委ねる、業務から離れ落ち着いて学習する時間を確保する
これは学習者の支援だけでなく、自己学習の動機づけにも有効だと考えます。学習へのモチベーションが低いと感じている方は、自分にTARGETモデルを当てはめてみてはいかがでしょうか。
次に熟達化理論を紹介します。これは私は聞いたことがあります。
プロレベルになった人は共通して10年にわたる1万時間以上の、時に厳しい練習を積んでいるそうです。これを「熟達の10年ルール」といいます。
しかし、10年目以上経験した医療人がすべてプロレベルかというと、「まずいラーメン屋は20年やってもまずい」と一緒です…。ラーメン店なら本当は20年もやる前に店がつぶれるとは思いますが、まずい医療人は20年やっても残念ながら退職しません…。
そこで単に10年間、1万時間だけでなく、「よく考えられた練習(deliberate practice)」を積むことが重要だそうです。「よく考えられた練習(deliberate practice)」の特徴を引用します。
・その人の技術を向上させるために最適な難易度に設定されている。
・練習の結果に対して、フィードバックがある。
・自分で、結果の良し悪しを評価している。
・本人がやる気を出して練習している。
・継続的に練習している。
・課題の楽しさを教えてくれるコーチがいる。
・練習に専念できるよう環境などへの支援がある。
これらの下で10年間、1万時間の練習や経験を積むことで、プロレベルに到達します。医療人でいえば、自分の身の丈にあった症例経験・研修を積み、その成果を継続的に指導者や自らで評価し、その喜びを共有できるような同僚・職場が存在することが重要といえます。このあたりをリハ栄養研究会でうまく導入したいと思います。
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