2012年4月5日木曜日

低栄養時の運動と筋トレ

理学療法士の社会人大学院生活というブログに「鶏が先か、卵が先か」という、栄養と運動とどちらが先かということが記載されています。このブログは他の記事も読んでいて学習になります。

http://kamomoka0415.blogspot.jp/2012/03/blog-post_30.html

この中に「低栄養状態でも有酸素運動やレジスタンス運動を行うことで、食欲が増したり、インスリン感受性が改善する場合には低栄養状態でも行うことも可能なのかなと感じはします。」とあります。明確なエビデンスはありませんが、低栄養の病態別に運動の可否を考えてみたいと思います。

低栄養の病態は、飢餓、侵襲、悪液質の3つに分類して検討します。優先順位は侵襲、飢餓、悪液質の順番になると私は考えています。 また、どの低栄養の病態でも、廃用症候群、廃用性筋萎縮予防を目的とした離床や経口摂取は行うべきです。最低限のADLも行うべきでしょう。それ以上の有酸素運動と筋トレの話です。

①侵襲
 侵襲時は異化期か同化期かで大きく異なります。CRP3mg/dl以下かどうかが1つの目安になります。異化期の場合には、有酸素運動やレジスタンス運動を積極的に行う必要はないと思います。侵襲の原因疾患の治療が優先されます。廃用予防を目的とした離床、経口摂取、ADL動作・訓練は可です。
 

 一方、同化期の場合には、有酸素運動やレジスタンス運動を積極的に行うべきでしょう。もちろん、適切な栄養管理がされていることが前提ですが。同化期で食欲不振の場合には、食欲改善やインスリン感受性改善を期待して軽負荷の運動を行います。運動による抗炎症作用も期待します。

②飢餓
 飢餓の場合、運動を行わなくても脂肪と筋肉の量が低下します。運動を行えばエネルギーバランスがより負になりますので、さらに体重が減少します。そのため、原則としてレジスタンス運動は禁忌です。ただし、適切な栄養評価のもとで、食欲不振改善を期待して軽負荷の運動を行うことは可能だと考えます。

③悪液質
 悪液質の場合、前悪液質・悪液質か不応性(重症・難治性)悪液質かで大きく異なります。不応性悪液質の場合、ターミナルであり緩和医療・緩和ケアとなるため、有酸素運動やレジスタンス運動を積極的に行う必要はないと思います。QOLを低下させないためのリハ、栄養管理が優先されます。

 一方、前悪液質・悪液質の場合には、有酸素運動やレジスタンス運動を積極的に行います。運動療法によって悪液質の原因疾患(がん、慢性臓器不全、慢性炎症性疾患)による慢性炎症を改善させることで、食欲改善、栄養改善を目指します。飢餓が著明な場合にはレジスタンス運動は禁忌となりますが。

以上のように、低栄養の原因が侵襲の異化期や不応性悪液質でなければ、有酸素運動やレジスタンス運動を行うことは可能だと思います。ただ、適切な栄養評価を行うことが大前提です。リハの臨床現場では残念ですが、適切な栄養評価なしに機能訓練をひたすら行って体重減少させていることがあります。

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