松尾睦著、職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門、ダイヤモンド社を紹介します。
http://www.diamond.co.jp/book/9784478017296.html
以前、このブログでコルブの経験学習モデルを紹介しました。
http://rehabnutrition.blogspot.jp/2009/12/blog-post_04.html
これを含めて、よりわかりやすく解説した書籍です。キーメッセージは「適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、ビジネスパーソンは経験から多くのことを学ぶことができる。」です。もちろんビジネスパーソンだけでなく、医療人も同様です。
キーワードはストレッチ、リフレクション、エンジョイメントの3つとされていますが、日本語でいえば「挑戦し、振り返り、楽しむ」です。確かに挑戦するような経験・行動なしに経験学習モデルをまわしても、学習と成長が少ないことは確かでしょう。ただ、エンジョイメントがなければ苦行になりがちです。
そこでエンジョイメントとして「仕事自体に関心を持ち、やりがいや面白さを感じることで意欲が高まっている状態、および仕事をやりきることで達成感や成長感を感じている状態」が必要としています。「ストレッチとリフレクションが自転車の両輪だとしたら、エンジョイメントはそれらをつなぐチェーン」だそうです。
70:20:10の法則があるそうです。これは成人における学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、10%は本を読んだり研修を受けたりすることから得ているという法則です。
確かに今の自分を振り返っても、学生時代の膨大な講義より、自分の仕事経験からの学びが断然多いです。学生時代の膨大な講義は成人学習とは言えませんので、当てはまらないかもしれませんが…。また、他者の貴重な経験(広義の歴史)から、あたかも自分が経験したかのように学ぶことも大事です。
成長の5段階モデルとして「初心者→見習い→一人前→中堅→熟達者」という5つのステップがあります。これは看護領域でも聞きますし、医療人にも当てはまります。問題は、組織に中堅(職場の中核メンバー)は約3割、熟達者(外部でも名が知られる組織内のエース)は約1割しかいないそうです。
つまり、約6割の人は一人前以下ということになります。つまり、一人前から中堅へ移行する第一の壁と、中堅から熟達者へ移行する第二の壁があるといえます。この壁を乗り越えるためには、経験学習が重要だそうです。特に30代以降では成長が止まりがちですので、質の高い経験をできるだけ多く積んで学習することが大切です。
経験学習の入門書ですので、すでに経験学習の知識がある方にはおすすめしません。コルブの経験学習モデルも聞いたことがないという方にはおすすめできる書籍です。そのうち、建宮さんと熊谷さんに、経験学習のワークショップも企画してほしいなあと思っています(笑)。
目次
はじめに
序章 経験から学べる人、学べない人
第1章 成長とは何か
能力的成長と精神的成長
能力的成長とは
精神的成長とは
プレイヤーとしての成長、マネジャーとしての成長
時代に合わせた「学びほぐし」
第2章 経験から学ぶ
70:20:10の法則
一皮むけた経験
コラム 守・破・離の考え方
自ら経験を創り出す
経験学習のサイクル
「よく考えられた実践」でサイクルを回す
コラム 学びにくくなっている日本の職場
第3章 経験から学ぶための三つの力
根っこを育てる
経験から学ぶ力の三要素
(ストレッチ系の学ぶ力)
なぜストレッチが必要か
方略1 挑戦するための土台をつくる
方略2 信頼を得てストレッチ経験を呼び込む
方略3 できることをテコにして挑戦を広げる
まとめ ストレッチの足場を作る
コラム 自分の頭で考える「ノウイング」
(リフレクション系の学ぶ力)
なぜリフレクションが重要なのか
方略1 行為の中で内省する
方略2 他者からフィードバックを求める
方略3 批判にオープンになり未来につなげる
まとめ 進行形で内省する
コラム 持論を問い直す「内省的実践」
(エンジョイメント系の学ぶ力)
なぜエンジョイメントが必要なのか
方略1 集中し、面白さの兆候を見逃さない
方略2 仕事の背景を考え、意味を見いだす
方略3 達観して、後から来る喜びを待つ
まとめ 仕事の意味を発見する
コラム 仕事に関心を持つ「内発的動機づけ」
第4章 「思い」と「つながり」
(思い)
適切な「思い」が成長を決める
自分への思い、他者への思い
経験から学ぶ力のドライバー
顧客のために働くこと
成長したいという思い
二つの思いを融合する
コラム 利己と利他
(つながり)
発達的なつながり
発達的な「つながり」を構築する方法
職場外から率直な意見を聞く
人を選び、誠実につきあう
自ら発信し、相手を受け入れる
コラム 発達的ネットワーク
(「経験から学ぶ力」のまとめ)
第5章 学ぶ力を育てるOJT
OJTのサイクル
コラム 「育て上手のOJT指導者」調査の概要
調査でわかったこと
目標をストレッチする
進捗を確認し相談をうながす
内省をうながす
ポジティブ・フィードバック
年次により指導方法を変える
人材をつぶす指導者の特徴
OJT力をアップする
コラム 伝統的なOJTの手法
第6章 学ぶ力を高めるツール
三種類の診断ツール
ツール1 経験学習力チェックリスト
ツール2 経験学習カルテ
ツール3 経験キャリアシート
職場でワークショップを開く
マニュアルや事例集を作成する
おわりに
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