篠田道子著:多職種連携を高める チームマネジメントの知識とスキル、医学書院を紹介します。
http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81113
FD関連の書籍は数多くありますが、医療系に特化したFDの書籍は少ないのが現状です。その中でこの書籍は、よりよい成果を出せる医療チームに重要なマネジメント能力、コミュニケーション能力について、わかりやすく紹介されています。
この書籍ではICF(国際生活機能分類)を重視しています。「ICFの3つの生活機能と2つの背景因子を、生活モデルの枠組みとするなど、ケアマネジメントや多職種連携のツールとして活用する。」とあります。リハ栄養でもICFを多職種連携のツールとしていますので共感できます。まだ認知度が高いとはいえませんが…。
メインは第2章のチームマネジメントを高める技術です。「対人関係とチームマネジメントの両方を高めるスキルとして、カンファレンス、ファシリテーション、コンフリクト・マネジメント、参加型事例検討がある。これらの共通点は「実践知」を高める教育方法である。」とあります。
確かにいずれも有用なスキルですし、神奈川NST専門療法士連絡会の勉強会でもFDとして取り入れています。欲をいえば、カンファレンス、ファシリテーション、コンフリクト・マネジメント、参加型事例検討の実際の様子に関する原稿があれば、よりわかりやすいと感じました。
FDには関心があってもビジネス本にはとっつきにくいという方には、この書籍をお勧めします。一方、すでにビジネス本などでマネジメント、ファシリテーション、ケースメソッドなどを学習している方には、やや物足りないかもしれません。
目次
はじめに
第1章 チームマネジメントの基礎知識
1 チームマネジメントが求められる背景
1.チームマネジメントの発展の経緯
2.診療報酬からみたチームマネジメント
3.介護報酬からみたチームマネジメント
4.チームマネジメントの今日的な課題
2 チームマネジメントと関連用語の整理
1.本書で使用するチームマネジメントと関連用語
2.本書が考えるチームマネジメント
3 チームの類型(モデル)
1.多職種によるチームの類型
2.本書で扱う3つの類型
4 医学モデルと生活(社会)モデル
1.医学モデル
2.生活(社会)モデル
3.生物・心理・社会モデルとしてのICF
5 医療・福祉分野に求められるリーダーシップとメンバーシップ
1.リーダーシップの2つのタイプ
2.専門職種を束ねるジェネラルマネジャーが必要
3.専門性と連携を両立させるメンバーシップ
4.役割の重なりは無駄ではない
6 チームマネジメントの課題と対応策
1.チームマネジメントの誤解
2.階層構造
3.セクショナリズムと非干渉
4.組織やチームに対する低いコミットメント
5.スペシャリストとジェネラリスト
6.患者・家族の消費者意識の高まり
7.チームマネジメントの限界
8.医師・看護師中心に限定した評価である
7 チームマネジメントの評価
1.チームマネジメントの有効性
2.チームマネジメントの評価の視点
8 専門職連携教育としてのケースメソッド教育
9 チームマネジメントと個人情報の取り扱い
第2章 チームマネジメントを高める技術
1 チームづくりの場としてのカンファレンス
1.カンファレンスの定義・目的・機能
2.カンファレンスの種類
3.カンファレンスの構成要素(体制,過程,結果)
2 ファシリテーション技術によるチーム力の向上
1.ファシリテーションとは
2.関係性と問題解決を両立させるファシリテーション
3.ファシリテーション技術はチームづくりに有効
3 チームの危機を乗り切るコンフリクト・マネジメント
1.コンフリクトとは
2.コンフリクト・マネジメントとは
3.コンフリクトへの対処行動はチームを成長させる
4.コンフリクトの予防対策
4 実践知を磨き,チームをつくる参加型事例検討
1.参加型事例検討はチームで実践知をつくり上げる
2.参加型事例検討に必要な条件
3.参加型事例検討の進め方のポイント
4.事例検討でケアの質の改善を
5 チームと知的資産のメンテナンス
1.チームは時間とともに変化する生き物
2.人材と知的資産のマネジメントでチームを活性化
第3章 病院(施設)・チームの機能に応じたチームマネジメント
1 本書が取り扱うチームマネジメントの対象・タイプ
2 亜急性期・回復期におけるチームマネジメント
在宅復帰支援担当者を中心にした多職種チーム
1.亜急性期病床とは
2.調査データからみた亜急性期病床の実態
3.回復期リハビリテーション病棟とは
4.調査データからみた回復期リハビリテーション病棟の実態
5.在宅復帰支援担当者を中心にしたチームマネジメント
3 急性期病床におけるチームマネジメント
1.急性期病床はチームマネジメントが機能しにくい
2.短期決戦チームは最初のコンセンサスづくりが重要
3.チームはルーチンワークで成り立つ
4.包括的指示を拡大し,専門職の自律性を高める
4 長期療養施設におけるチームマネジメント 終末期ケアに焦点を当てて
1.長期療養施設のチームマネジメントの現状
2.高齢者の終末期の3つのパターン
3.認知症の終末期が最重要課題
4.看護・介護職を中心とした多職種チーム
5.医療・ケアチームでのインフォームド・コンセントの推奨
6.相談・助言機能を強化して意思決定を支える
7.質の高い終末期ケアの4つの条件とチームマネジメント
5 退院支援におけるチームマネジメント 集中的かつ重層的なケアマネジメント
1.退院支援とは
2.退院支援は3つのチームによる協働活動
3.退院支援におけるチームマネジメントの進め方
4.入院医療の延長線上としての在宅ケア
5.医学モデルから生活モデルへのチェンジ
6.退院支援計画に有効なフレームワーク
6 コンサルテーション型チーム
1.コンサルテーション型チームとは
2.NST
3.緩和ケアチーム
4.呼吸ケアチーム
5.コンサルテーション型チームとの連携のポイント
7 災害時における医療・福祉チームマネジメント
1.災害時における医療チーム
2.阪神・淡路大震災
3.地下鉄サリン事件-情報のハブ拠点が活躍
4.事例から学ぶ災害時のチームマネジメント
索引
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