能登洋、日常診療にすぐに使える臨床統計学 改訂版、羊土社を紹介します。
http://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758117135/index.html
下記の詳細な目次をみていただければわかると思いますが、臨床のための統計学としてかなりわかりやすく解説されています。わかりやすいといっても大事なことはしっかり書かれています。臨床研究よりはEBMのための書籍ですが、臨床研究デザインの学習にもなります。EBMの初級~中級者におすすめできる書籍です。
目次
入門編
1 総 論
•臨床統計学とは,臨床研究を客観的に評価・適用するためのツールです
•臨床疫学とは,臨床研究を検証し,それを活用するアクションです
•Evidence-Based Medicine(EBM)は,最適な医療を提供するアクションです
•臨床研究の目的は,理論や経験則に基づく仮説を現実の世界で検証することです
•臨床研究には観察研究と介入研究があります
•エンドポイントとは,臨床研究で究明する評価項目のことです
•リスクとは,ある要因をもつ人に特定の疾患・症状が発生する確率のことです
•統計学的推測とは,標本データから母集団の値を推測(推定・検定)することです
•偶然性とは,ぶれという誤差をひきおこす確率的要因のことです
•バイアスとは,ずれという誤差をひきおこす手法的要因のことです
•エビデンスの検索・選別には,EBM STEP1のキーワードを活用します
•システマティックレビュー,メタアナリシスとは,偶然性やバイアスの影響を最小限にするための解析方法です
•統計学用語や数式を覚えるいい方法は,研究の流れや結果を図表化する習慣を身につけることです
2 リスク・因果・相関
•リスクファクター(危険因子)とは,疾患の発生と関連ある予測因子のことです
•病因・リスクファクターを疫学的に実証するには,コホート研究や患者-対照研究が適しています
•コホート研究,患者-対照研究は,病因や治療効果の解析に適した研究デザインです
•相対リスク(リスク比)は,要因の有無による発症率の比です
3 観測値
•観測値の特性は,分布型,代表値,散らばりで記述します
•平均値・中央値・最頻値は観測値の分布型に応じて使い分けます
•観測値の散らばりは,分布型に応じて標準偏差,範囲,四分位点で表記します
•正規分布とは左右対称のベル型の分布曲線です
•異常値の基準は頻度や臨床的意義に基づいて定義されます
•有病率とはある一時点での割合で,罹患率とは観察期間を考慮した指標です
4 診断・スクリーニング
•検査の診断特性は,感度(見落としの少なさ)・特異度(過剰診断の少なさ)という指標で表されます
•感度・特異度とは,診断検査の誤診の指標で,検査の選択や結果の評価に役立ちます
•カットオフ値とは,検査結果を異常と正常に区切る境界値です
•尤度比とは,健常者に比べて患者でどのくらい陽性結果が出やすくなるかという指標です
•検査前確率(有病率)とは,疾患の頻度・可能性のことです
•検査後確率とは,検査結果が陽性(異常)となった人が真に有病者である確率(的中度)のことです
•スクリーニング検査を選択する際には,検査自体の診断特性と臨床的有益性を検証します
5 治療・予後
•無作為化比較試験とは,「無作為に」グループ割り付けをし,介入群と対照群の「比較」評価をする臨床「試験」です
•ITT解析とは,途中で治療を中止した人や治療変更した人も,最初の治療群として解析する方法です
•相対リスク低下とは治療による発症率の低下率(比)のことで,絶対リスク低下とは差のことです
•予後は発症率やイベント発生曲線で表記します
•死亡率の算出には現在羅患中の人数を含めますが,致死率には含めません
実践編
1 総 論
•研究仮説の意義は客観的で明確な結果を導くことです
•エビデンスの批評(critical appraisal)とは,妥当性・信頼性・臨床的意義を評価することです
•臨床研究の妥当性とは,客観性と普遍性のことです
•検定の意義は,研究結果(事実)を基に,真の値の確率的判断を行うことです
•検定法は研究の目的・デザイン・データの特徴に応じて使い分けます
•非劣性(non-inferiority)試験とは,新薬の効果が対照薬と同等以上であることを検証する臨床試験です
•統計学的有意差とは,確実な違いのことです
•統計ソフトには代表的なものとして,Excel,STATA, SPSS(PASW),R, JMP,SASがあります
•不確実な状況下で臨床方針を決定するには,決断分析という疫学的解析法が役に立ちます
•検定の限界は,誤って帰無仮説を棄却または採択する確率が常に伴うことです
•症例報告は,妥当性・信頼性の点でエビデンスとしては水準が高くありません
•EBMの実践には体系化された5つのステップを踏みます
•EBMの実践に必要なのは,臨床経験とコミュニケーション能力です
•EBMではエビデンスに優先度をつけて活用します
•ガイドラインを利用するときは,引用文献の妥当性・信頼性・臨床的意義を検証します
•確率論は客観的な判断をするための補助道具です
2 リスク・因果・相関
•リスク・因果に関するエビデンスを読む際は,交絡因子・関連性・臨床的意義に着目します
•相関係数とは2種のデータ間の関連性の強さを表す指標です
3 観測値
•検査の水準は,妥当性と信頼性という指標で評価します
•高血圧は再測定すると低くなってくることがよくあるのは,平均値への回帰という統計学的要因のためです
4 診断・スクリーニング
•感度・特異度から検査前確率(有病率)に基づいて2×2表を作成し,検査後確率(的中度)を算出します
•症状や身体所見にも感度・特異度があります
•検査と治療の優先順位は,疾患の検査前確率(有病率)や緊急性によって決定されます
•診断に関するエビデンスを読む際は,gold standardとの比較や感度・特異度・尤度比に着目します
•スクリーニングに関するエビデンスを読む際は,検査自体の診断特性と臨床的意義に着目します
5 治療・予後
•治療効果の評価には,相対リスク低下・絶対リスク低下・発症率を用いるのがベストです
•生存曲線は一般に実測値ではなく推定値をグラフ化したものです
•ドロップアウトは発症者とみなすか解析から除外するか研究開始前に取り決めておきます
•必要標本数は,研究目的・方法によって決定されます
•治療に関するエビデンスを読む際は,研究デザイン・リスク差・臨床的意義に着目します
•予後に関するエビデンスを読む際は,アウトカムの差と経時的発生率変化に着目します
•医療経済は,医療費と臨床的効果の大きさの関連性を解析します
ケーススタディ
ケース 1【診断,スクリーニング,因果】
•日本のメタボリックシンドローム診断基準(その1)
ケース 2【相 関】
•日本のメタボリックシンドローム診断基準(その2)
ケース 3【リスク,予後】
•足潰瘍の既往による糖尿病患者の死亡リスク
ケース 4【予 防】
•CRP高値者に対するスタチン投与による心血管疾患予防
ケース 5【治 療】
•慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する長時間作用性抗コリン薬の長期的効果
付録
【1】 EBM総説
【2】 用語集
【3】 信頼区間の求め方
【4】 厳選参考図書・URL
Column
•温故知新
•朝三暮四
•統計学の歴史
•論より証拠
•光るものすべて金ならず
•狐と風
•火と種
•日本国憲法:第三十八条
•米国EBM実践の現状
•確証バイアス (confirmation bias)
•聴診器の意義
•論文国際比較
•数値の意味合い
•傾向スコア(propensity score)
•平均寿命
•統計の出所に注意
•人口静態統計と人口動態統計
•針小棒大
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