2011年11月11日金曜日

クローズアップ「癌悪液質の謎に挑む」

NCIキャンサーブレティンの2011年11月01日号のHPで、クローズアップ「癌悪液質の謎に挑む」が取り上げられています。悪液質の研究の現状について、日本語としてはよくまとまっている資料だと思います。

http://www.cancerit.jp/12691.html

一部、上記HPから引用します。
「悪液質は癌に限ったことではない。AIDS患者や、慢性の腎臓病、心疾患などのほか、重度の外傷または熱傷でも普通に見られる」

重度の外傷や熱傷の場合、慢性的に炎症が持続していればという限定付きだと思います。ただ、がん以外の様々な慢性炎症性疾患や慢性臓器不全でも悪液質を生じることを知らない医療人が少なくないのが現状です。

HPからの引用です。
「もっとも研究が進んでいると思われるのが、テネシー州メンフィスに本社があるGTx社が開発した選択的アンドロゲン受容体調節剤のGTx-024(商品名:オスタリン)である。同社は8月にこの試験薬に関する第3相臨床試験を2つ立ち上げ」

「ミオスタチンの本来的な機能は筋肉成長のブレーキ役となることである。ミオスタチンの産生を支配する遺伝子に変異がある羊、マウス、犬、牛では過度に筋肉質となる。(中略)ミオスタチンおよびアクチビンの活性を阻害すると、悪液質に大きな効果をもたらす可能性がある。(中略)ミオスタチンおよびアクチビンを標的とすることで悪液質による心筋の喪失が改善される」

選択的アンドロゲン受容体調節剤やミオスタチン拮抗薬は、悪液質に対する薬物療法として、今後期待されます。悪液質では骨格筋が減少し広義のサルコペニアとなりますが、心筋のサルコペニアも生じることがあります。心筋の喪失が改善されるというのは興味深いです。

Lancet Oncologyに今年5月に掲載された癌悪液質の定義及び分類に関する国際的コンセンサスに関しては、以下のように訳されていました。以下もHPからの引用です。

「癌悪液質の診断基準
・過去6カ月以上にわたって5%を超える体重減少がある
・BMIが20未満で2%を超える体重減少がある
・補正四肢筋量が別の消耗性症候群であるサルコペニア(骨格筋減少症)と同等で、2%を超える体重減少がある

癌悪液質の病期分類
・前悪液質:体重減少は5%未満で、耐糖能異常や食欲不振を伴う
・悪液質:体重減少が5%を超え、他の症状や状態が悪液質の診断基準に一致する
・不応性悪液質:癌治療に応答しなくなった患者における悪液質で、パフォーマンススコアも低く余命3カ月未満と予測される」

refractory cachexiaをどう訳せばよいのか悩んでいたのですが、今回「不応性悪液質」と訳されていたので、今後は少し気楽にこの言葉を使えます。

あとはがん以外の疾患による悪液質でもこの定義と分類を使用してよいという報告やコンセンサスが早くでると、もっと嬉しいですね。私はがん以外の疾患でも使用してよいと勝手に解釈していますが、がん以外の場合、Evansの2008年の悪液質の定義と診断基準を使うのが本来は適切かもしれません。

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