大腿骨頸部骨折患者でのサルコペニアを後ろ向きに検討した論文を紹介します。
飛田哲朗・他:大腿骨頚部骨折患者におけるサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の現状および精神機能, 血液化学的評価.未病と抗老化20(1): 174 - 178, 2011
この研究ではサルコペニアの診断基準を、Sanadaらが報告した18歳から40歳の健常な日本人男女529名の平均値の-2SDから算出された値を基に,補正四肢筋量ASMI(appendicular skeletal mass index)が女性で5.46kg/m2以下,男性で6.87kg/m2以下をサルコペニアありと診断しています。
Sanada K, Miyachi M, Tanimoto M, et aL A cross-sectional study of sarcopenia in Japanese men and women: reference values and association with cardiovascular risk factors.Eur J Appl Physiol 2010
その結果、年齢・性別で調整後のASMIは,頚部骨折群において5.84kg/m2,対照群では6.29kg/m2であり,頚部骨折群で有意にASMIが低かったです(p<0.0001)。また、サルコペニアの有病率は頚部骨折群において52.6%,対照群では28%であり,頚部骨折群で有意にサルコペニアの有病率が高いという結果でした(p<0.0001)。
大腿骨頸部骨折患者の2人に1人がサルコペニアというのは、インパクトのある結果だと思います。ASMIと血液生化学検査項目に有意な関連を認めなかったことより、検査値ではなく筋肉量の評価が重要と言えます。また、骨粗鬆症とサルコペニアはどちらか一方があればもう一方の存在も疑うというセットで考えたほうがよいかもしれません。
「要約」
加齢性の筋肉減少症であるサルコペニアは, 高齢者の転倒, 骨折の原因として重要視されているが, サルコペニアの大腿骨頚部骨折患者における実態は未だ明らかではない. 我々は219名の大腿骨頚部骨折患者における補正四肢筋量(ASMI), サルコペニア有病率, 精神機能, 血液生化学検査を評価した, ASMIおよびサルコペニアの有病率は, 骨粗鬆症の無い外来患者1586名と比較検討した. 年齢, 性別で調整した後のASMIは頚部骨折患者で有意に低く, サルコペニアの有病率は有意に高かった(P<0.0001, P<0.0001). ASMIと有意に相関する精神機能, 血液生化学検査項目は無かった. サルコペニアの治療が大腿骨頚部骨折の予防となる可能性がある.
2011年9月22日木曜日
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