週刊医学界新聞の最新号(第2943号 2011年09月05日)に超高齢社会における医療・介護関連肺炎へのアプローチという座談会記事が掲載されています。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02943_01
2011年8月に発表された日本呼吸器学会の「医療・介護関連肺炎診療ガイドライン」では、従来の市中肺炎(CAP)・院内肺炎(HAP)のほか,主に療養型病床群や介護施設での高齢者肺炎を対象とした医療・介護関連肺炎(Nursing and Healthcare associated pneumonia;NHCAP)が肺炎の新たなカテゴリーとして加わったそうです。このNHCAPに関するディスカッションがされています。
NHCAPの定義として、以下の基準が記載されています。
(1)長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している*
(2)90日以内に病院を退院した
(3)介護**を必要とする高齢者・身障者
(4)通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免疫抑制薬等による治療)を受けている
以上の,(1)―(4)のいずれかに当てはまる肺炎をNHCAPとする。
*精神科病棟も含む。
**介護の基準:PS 3(限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす)以上をめどとする。
おそらくNHCAPの大半が誤嚥性肺炎と考えます。ただ、誤嚥性肺炎の診断基準が決してわかりやすいものではなかったこともあり、今回新たな概念としてNHCAPを作ったのだと思います。これなら診断するのは容易です。問題は原因が単一ではないので、治療や対応も単一ではないということですが。
"ワクチン,口腔ケア,嚥下"が予防のキーワードとあります。確かにこれらはいずれも重要です。また胃食道逆流症(GERD)と栄養に関する記載もありますので、個人的には嬉しいです。以下少し長いですが、引用です。
「GERDがあらゆる呼吸器疾患と結びついているというエビデンスが出てきています。下部食道括約筋の機能不全と嚥下障害はほぼ同義ですし,逆流そのものの影響のほか,胃酸の上昇が粘膜組織での接着分子ICAM-1の増加を招きウイルス感染を助長するという要素もあります。このようにGERDがあると複合的に状態が悪くなるので,あまり関係なさそうですがGERDの治療をしっかり行うことも,予防の観点から大事になると思います。
もう1つ,忘れてはならないのが栄養です。やはり肺炎患者の予後を規定するのはアルブミン値などの栄養指標なので,歯があるとよく食べられるという交絡因子の影響もありますが,栄養状態の改善に向けた取り組みを行うことがトータルな意味での肺炎予防につながると思います。」
以上、引用です。NHCAPに対するリハ栄養アプローチも今後さらに重要になってくると感じています。
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