今年の科研費には、サルコペニアと嚥下障害に関する研究課題がいくつか採択されていました。
・サルコペニアによる摂食・嚥下機能低下の予防を目的とした電気的筋肉刺激装置の開発
・嚥下関連筋におけるサルコペニアの診断法の確立
・iPS細胞を用いた舌、咀嚼筋のサルコペニア治療法開発の試み
・近赤外分光法(NIRS)を用いた顎口腔サルコペニアの評価法
・加齢と廃用による嚥下障害に対する分岐鎖アミノ酸の効果に関する基礎的・臨床的研究
この他に、CTによるサルコペニア指標の開発およびサルコペニアによる摂食・嚥下障害の解析という課題で私も採択されましたので、合計6つですね。他にも採択されなかった課題の中に含まれていた可能性もあります。
書籍「サルコペニアの摂食・嚥下障害」の出版前が締切だったにもかかわらず、これほどサルコペニアと摂食・嚥下の課題が多いとは驚きました。それだけ関心が高い領域なのだと再認識しました。自分の研究を頑張らないといけませんね。
2013年7月29日月曜日
2013年7月22日月曜日
高齢者の最適な蛋白質摂取量
エビデンスに基づいた高齢者の最適な蛋白質摂取量に関する方針論文Position Paper を紹介します。
Jürgen Bauer, et al: Evidence-based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People: A Position Paper From the PROT-AGE Study Group. JAMDA, in press
下記のHPで全文読めると思います。
http://www.jamda.com/article/S1525-8610(13)00326-5/fulltext
高齢者では少なくとも1-1.2g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。持久性トレーニングとレジスタンストレーニングの実施も推奨され、これらを実施している場合には1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。
ただし、重度の腎疾患(例:eGFRが30未満)で透析を行っていない場合には、このルールは当てはまりません。蛋白質の質、摂取のタイミング、他の栄養素摂取に関するエビデンスはまだ不十分です。
運動をしている場合に1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されることは、リハ栄養的にも重要です。また、CKDのStage3(eGFRが30以上)であれば、蛋白質摂取の制限を必要としない(特に運動を行う場合)かもしれません。これも重要ですね。
Abstract
New evidence shows that older adults need more dietary protein than do younger adults to support good health, promote recovery from illness, and maintain functionality. Older people need to make up for age-related changes in protein metabolism, such as high splanchnic extraction and declining anabolic responses to ingested protein. They also need more protein to offset inflammatory and catabolic conditions associated with chronic and acute diseases that occur commonly with aging. With the goal of developing updated, evidence-based recommendations for optimal protein intake by older people, the European Union Geriatric Medicine Society (EUGMS), in cooperation with other scientific organizations, appointed an international study group to review dietary protein needs with aging (PROT-AGE Study Group). To help older people (65 years and older) maintain and regain lean body mass and function, the PROT-AGE study group recommends average daily intake at least in the range of 1.0 to 1.2 g protein per kilogram of body weight per day. Both endurance- and resistance-type exercises are recommended at individualized levels that are safe and tolerated, and higher protein intake (ie, ≥1.2 g/kg body weight/d) is advised for those who are exercising and otherwise active. Most older adults who have acute or chronic diseases need even more dietary protein (ie, 1.2–1.5 g/kg body weight/d). Older people with severe kidney disease (ie, estimated GFR less than 30) but who are not on dialysis, are an exception to this rule; these individuals may need to limit protein intake. Protein quality, timing of ingestion, and intake of other nutritional supplements may be relevant, but evidence is not yet sufficient to support specific recommendations. Older people are vulnerable to losses in physical function capacity, and such losses predict loss of independence, falls, and even mortality. Thus, future studies aimed at pinpointing optimal protein intake in specific populations of older people need to include measures of physical function.
Jürgen Bauer, et al: Evidence-based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People: A Position Paper From the PROT-AGE Study Group. JAMDA, in press
下記のHPで全文読めると思います。
http://www.jamda.com/article/S1525-8610(13)00326-5/fulltext
高齢者では少なくとも1-1.2g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。持久性トレーニングとレジスタンストレーニングの実施も推奨され、これらを実施している場合には1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されます。
ただし、重度の腎疾患(例:eGFRが30未満)で透析を行っていない場合には、このルールは当てはまりません。蛋白質の質、摂取のタイミング、他の栄養素摂取に関するエビデンスはまだ不十分です。
運動をしている場合に1.2-1.5g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されることは、リハ栄養的にも重要です。また、CKDのStage3(eGFRが30以上)であれば、蛋白質摂取の制限を必要としない(特に運動を行う場合)かもしれません。これも重要ですね。
Abstract
New evidence shows that older adults need more dietary protein than do younger adults to support good health, promote recovery from illness, and maintain functionality. Older people need to make up for age-related changes in protein metabolism, such as high splanchnic extraction and declining anabolic responses to ingested protein. They also need more protein to offset inflammatory and catabolic conditions associated with chronic and acute diseases that occur commonly with aging. With the goal of developing updated, evidence-based recommendations for optimal protein intake by older people, the European Union Geriatric Medicine Society (EUGMS), in cooperation with other scientific organizations, appointed an international study group to review dietary protein needs with aging (PROT-AGE Study Group). To help older people (65 years and older) maintain and regain lean body mass and function, the PROT-AGE study group recommends average daily intake at least in the range of 1.0 to 1.2 g protein per kilogram of body weight per day. Both endurance- and resistance-type exercises are recommended at individualized levels that are safe and tolerated, and higher protein intake (ie, ≥1.2 g/kg body weight/d) is advised for those who are exercising and otherwise active. Most older adults who have acute or chronic diseases need even more dietary protein (ie, 1.2–1.5 g/kg body weight/d). Older people with severe kidney disease (ie, estimated GFR less than 30) but who are not on dialysis, are an exception to this rule; these individuals may need to limit protein intake. Protein quality, timing of ingestion, and intake of other nutritional supplements may be relevant, but evidence is not yet sufficient to support specific recommendations. Older people are vulnerable to losses in physical function capacity, and such losses predict loss of independence, falls, and even mortality. Thus, future studies aimed at pinpointing optimal protein intake in specific populations of older people need to include measures of physical function.
2013年7月21日日曜日
第3回日本リハ栄養研究会事前参加申込開始
本日より、11月30日・12月1日の第3回日本リハビリテーシ ョン栄養研究会学術集会(in福岡)の事前参加申込が開始となり ました。事前参加申し込みは以下のHPで可能です。
https://sites.google.com/site/ nutrition1130/home/ shenshi-rumifomu
今回、Facebookの壁で入会できない非会員の方の参加も可能としました。教育講演、ランチョン特別講演など興味深いプログラムが数多くあります。
ラーニングバーも含まれることを考えれば、参加費(事前参加申し込みで会員7000円、非会員8000円)は安いと私は思います。多くの方のご参加のほど、よろしくお願い申し上げます。
第3回日本リハビリテーシ ョン栄養研究会学術集会(in福岡)のホームページ
https://sites.google.com/site/nutrition1130/home
https://sites.google.com/site/
今回、Facebookの壁で入会できない非会員の方の参加も可能としました。教育講演、ランチョン特別講演など興味深いプログラムが数多くあります。
ラーニングバーも含まれることを考えれば、参加費(事前参加申し込みで会員7000円、非会員8000円)は安いと私は思います。多くの方のご参加のほど、よろしくお願い申し上げます。
第3回日本リハビリテーシ
https://sites.google.com/site/nutrition1130/home
2013年7月12日金曜日
「あさイチ」サルコペニア肥満
7月18日(木)のNHKテレビ「あさイチ」で、「40代から要注意!あなたの知らないサルコペニア肥満」の特集が放送されます。
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/2013/07/18/01.html
サルコペニア肥満は徐々にマスコミで取り上げられる機会が増えていますが、ロコモに比べると認知度はまだまだ低いのが現状だと感じています。肥満のないサルコペニアのほうが医療現場ではより問題ですが、健常者ではサルコペニア肥満のほうがむしろ問題なのかもしれません。
筑波大学の久野先生の取り組み紹介がメインのようです。今回は私のところにも取材があり、少しだけ放送されるのではと思っています。番組の時間帯的に、実際には仕事で見ることが難しそうですが、サルコペニア肥満に関心のある方はよかったら見ていただければと思います。
以下、上記HPからの引用です。
高血圧になるリスクは2倍。糖尿病につながるリスクは18倍。さらに、転倒、骨折、寝たきりになる危険性も格段に高まるという、あるタイプの肥満をご存じですか。それは、「サルコペニア肥満」です。加齢による筋肉の減少(サルコペニア=加齢性筋肉減少症)と肥満が合体した状態で、2つの危険要因が、さまざまな病気のリスクをもたらします。筋肉は、20代をピークに40代以降は年1パーセントの割合で減少していくため、特に40代からは注意が必要です。最近の研究では、40代以降で、サルコペニア肥満、もしくはその予備軍が4人に1人とも言われています。さらにこの肥満の最大の難点は、気づかぬうちに進行してしまうことです。筋肉は徐々に落ちるので、自覚症状が乏しく、基礎代謝が落ちているのにもかかわらず、これまでと変わらぬ食事をしていると、さらなる肥満を促進、生活習慣病のリスクを高めます。
サルコペニア肥満については、食事とウォーキングなどの有酸素運動、そして筋トレの三位一体で取り組むことが効果的です。中でも食事は、筋肉を作る必須アミノ酸「BCAA」を取り入れることが大切です。番組では、日常に潜む落とし穴から、今からでも間に合うサルコペニア肥満対策についてお伝えします。
http://www1.nhk.or.jp/asaichi/2013/07/18/01.html
サルコペニア肥満は徐々にマスコミで取り上げられる機会が増えていますが、ロコモに比べると認知度はまだまだ低いのが現状だと感じています。肥満のないサルコペニアのほうが医療現場ではより問題ですが、健常者ではサルコペニア肥満のほうがむしろ問題なのかもしれません。
筑波大学の久野先生の取り組み紹介がメインのようです。今回は私のところにも取材があり、少しだけ放送されるのではと思っています。番組の時間帯的に、実際には仕事で見ることが難しそうですが、サルコペニア肥満に関心のある方はよかったら見ていただければと思います。
以下、上記HPからの引用です。
高血圧になるリスクは2倍。糖尿病につながるリスクは18倍。さらに、転倒、骨折、寝たきりになる危険性も格段に高まるという、あるタイプの肥満をご存じですか。それは、「サルコペニア肥満」です。加齢による筋肉の減少(サルコペニア=加齢性筋肉減少症)と肥満が合体した状態で、2つの危険要因が、さまざまな病気のリスクをもたらします。筋肉は、20代をピークに40代以降は年1パーセントの割合で減少していくため、特に40代からは注意が必要です。最近の研究では、40代以降で、サルコペニア肥満、もしくはその予備軍が4人に1人とも言われています。さらにこの肥満の最大の難点は、気づかぬうちに進行してしまうことです。筋肉は徐々に落ちるので、自覚症状が乏しく、基礎代謝が落ちているのにもかかわらず、これまでと変わらぬ食事をしていると、さらなる肥満を促進、生活習慣病のリスクを高めます。
サルコペニア肥満については、食事とウォーキングなどの有酸素運動、そして筋トレの三位一体で取り組むことが効果的です。中でも食事は、筋肉を作る必須アミノ酸「BCAA」を取り入れることが大切です。番組では、日常に潜む落とし穴から、今からでも間に合うサルコペニア肥満対策についてお伝えします。
2013年7月8日月曜日
第3回日本リハ栄養研究会学術集会演題募集開始
本日より、第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会(11月30日、12月1日福岡)の演題募集が開始となっています。筆頭演者は日本リハ栄養研究会の会員のみとさせていただいています。
https://sites.google.com/site/nutrition1130/my-page/yan-ti-mu-ji
上記演題募集のHPを見ると、倫理的に厳しすぎるのではという意見もあるかもしれませんが実際、研究倫理はなかなか厳しいものです。倫理面を配慮した演題の登録をよろしくお願い申し上げます。
またFacebookの壁で日本リハ栄養研究会に入会できない方を配慮して、今回は非会員の方も学術集会への参加は可能となっています。ぜひ第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会にご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
https://sites.google.com/site/nutrition1130/my-page/yan-ti-mu-ji
上記演題募集のHPを見ると、倫理的に厳しすぎるのではという意見もあるかもしれませんが実際、研究倫理はなかなか厳しいものです。倫理面を配慮した演題の登録をよろしくお願い申し上げます。
またFacebookの壁で日本リハ栄養研究会に入会できない方を配慮して、今回は非会員の方も学術集会への参加は可能となっています。ぜひ第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会にご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
2013年7月4日木曜日
Nutrition, Exercise, and Pharmaceutical Therapies for Sarcopenic Obesity
Journal of Nutritional Therapeuticsに投稿したサルコペニア肥満のレビュー 論文Nutrition, Exercise, and Pharmaceutical Therapies for Sarcopenic ObesityをHPからダウンロードできるようになりました。
http:// www.lifescienceglobal.com/home/ cart?view=product&id=671
Hidetaka Wakabayashi and Kunihiro Sakuma: Nutrition, Exercise, and Pharmaceutical Therapies for Sarcopenic Obesity. Journal of Nutritional Therapeutics 2(2): 100-111, 2013. DOI: http://dx.doi.org/10.6000/1929-5634.2013.02.02.5
肥満の薬物療法は日本では使用できない薬剤ばかり紹介していますが、その他の部分は日本でも一定の参考になるのではと感じています。日本では、マジンドール(サノレックス)と防風通聖散しか使用できませんので、より栄養療法と運動療法が重要だと考えます。
サルコペニア肥満の診断基準が明確でないため、現時点ではサルコペニア肥満に対する介入研究はありません。そのため、サルコペニアに対する介入と肥満に対する介入を同時に行うことがもっとも効果的ではないかという推測で執筆しています。
よかったら多くの方に読んでいただければと思います。よろ しくお願い申し上げます。
http://
Hidetaka Wakabayashi and Kunihiro Sakuma: Nutrition, Exercise, and Pharmaceutical Therapies for Sarcopenic Obesity. Journal of Nutritional Therapeutics 2(2): 100-111, 2013. DOI: http://dx.doi.org/10.6000/1929-5634.2013.02.02.5
肥満の薬物療法は日本では使用できない薬剤ばかり紹介していますが、その他の部分は日本でも一定の参考になるのではと感じています。日本では、マジンドール(サノレックス)と防風通聖散しか使用できませんので、より栄養療法と運動療法が重要だと考えます。
サルコペニア肥満の診断基準が明確でないため、現時点ではサルコペニア肥満に対する介入研究はありません。そのため、サルコペニアに対する介入と肥満に対する介入を同時に行うことがもっとも効果的ではないかという推測で執筆しています。
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