2010年3月31日水曜日

膝・股関節人工関節置換術後のリハ栄養

膝・股関節人工関節置換術後(TKA・THA)のリハ栄養について、文献検索してみました。2つの文献抄録を紹介しますが、先に私の考えを書いておきます。

短期の入院リハでの減量にはかなり限度があるが、それでもTKA・THA患者にBMI30以上の肥満を認める場合には、入院リハ中およびその前後で減量を目指すべき。BMI25-29.9の過栄養の場合に減量を目指すかどうかは一概に言えない。

ただし、減量を目指す際にエネルギー摂取量(特に脂質)は少なくしても、筋肉量が減少しないように蛋白質の摂取量は十分確保することが望ましい。

非肥満群の中に正常栄養群と低栄養群が混ざっている可能性がある。日本ではこの違いを検討したほうがよい。

変形性関節症(OA)でTKA・THAを行う患者には低栄養は少ないと思われるが、関節リウマチ(RA)でTKA・THAを行う患者には悪液質・前悪液質を認める可能性が十分にある。RAの場合には、積極的に栄養評価、悪液質・前悪液質の有無を診断して加療することが望ましい。

以下、文献紹介です。

①Vincent HK, Vincent KR. Obesity and inpatient rehabilitation outcomes following knee arthroplasty: a multicenter study. Obesity (Silver Spring). 2008 Jan;16(1):130-6.

抄録一部訳:

人工膝関節置換術(TKA)後の入院リハがBMIの影響を受けるかを研究。
非肥満(BMI25未満)、過栄養(BMI25-29.9)、中等度肥満(BMI30-39.9)、重度肥満(BMI40以上)の4群で比較。

全群でADLは改善したが、非肥満群で最も大きく重度肥満群で最も少なかった。重度肥満群では他の群より医療費が高かった。

OBJECTIVE: This multicenter study examined whether inpatient rehabilitation outcomes following total knee arthroplasty (TKA) were influenced by BMI.
METHODS AND PROCEDURES: This was a retrospective, comparative study conducted using a computerized medical database and medical records derived from TKA patients, at 15 independent rehabilitation hospitals (N = 5,428). Patients were separated into four groups based on BMI: non-obese (BMI < 25 kg/m(2)), overweight (25-29.9 kg/m(2)), moderately obese (30-40 kg/m(2)), severely obese (BMI > or = 40 kg/m(2)). All patients completed an interdisciplinary inpatient rehabilitation program post-TKA. Total and individual functional independence measure (FIM) scores, length of stay (LOS), FIM efficiency scores, itemized hospital charges, and discharge disposition location, were collected.
RESULTS: The percentage of total FIM change was 7.5% greater by the time of discharge in the non-obese than in the very severely obese (P < 0.05). FIM efficiency was lowest in the severely obese as compared to the remaining groups (3.7 points (pts)/day vs. 4.0-4.3 pts/day; P = 0.044). The change in the motor FIM score from admission to discharge was 6.7-15.6% greater in the non-obese than in the remaining groups (P < 0.05). The changes in cognition FIM, toilet transfer and walking without assistance scores were higher in the non-obese as compared to the severely obese group (P < 0.05). The severely obese group had higher total, physical and occupational therapy and pharmacy charges than the remaining groups (P < 0.05).
DISCUSSION: An excessive BMI does not prevent gains during inpatient rehabilitation; however, these gains are made less efficiently and at a higher cost than those made when the BMI is low.

②Vincent HK, Weng JP, Vincent KR. Effect of obesity on inpatient rehabilitation outcomes after total hip arthroplasty. Obesity (Silver Spring). 2007 Feb;15(2):522-30.

抄録一部訳:

人工股関節置換術(THA)後の入院リハがBMIの影響を受けるかを研究。
非肥満(BMI25未満)、過栄養(BMI25-29.9)、中等度肥満(BMI30-39.9)、重度肥満(BMI40以上)の4群で比較。

全群でADLは改善したが、ADL効率(1日当たりのADL改善量)、入院期間、医療費は非肥満群が最もよく、重度肥満群で最も悪かった。自宅退院できなかった患者の割合は、非肥満群(13.1%)と重度肥満群(10.5%)で低かった。

OBJECTIVE: This study examined whether obesity affected inpatient rehabilitation outcomes after total hip arthroplasty (THA).
RESEARCH METHODS AND PROCEDURES: This was a retrospective, comparative study conducted using a computerized medical database derived from THA patients at a university-affiliated rehabilitation hospital (data from 2002 to 2005). Patients were divided into four brackets based on BMI: non-obese (<25 kg/m(2)), overweight (25 to 29.9 kg/m(2)), moderate obesity (30 to 39.9 kg/m(2)), and severe obesity (> or = 40 kg/m(2)). All patients completed an interdisciplinary inpatient rehabilitation program after THA. Functional independence measure (FIM) scores, length of stay (LOS), FIM efficiency scores (FIM/LOS), hospital charges, and discharge disposition location were collected.
RESULTS: FIM scores improved from admission to discharge similarly in all groups (25 to 29.5 points). However, FIM efficiency, LOS, and total charges were curvilinearly related with BMI (all p < 0.05). Total hospital charges were highest in the severely obese group compared with the overweight group (p < 0.05). Non-homebound discharge disposition rates were lower in non-obese (13.1%) and severely obese groups (10.5%).
DISCUSSION: Elevated BMI does not prevent FIM gains in THA patients during inpatient rehabilitation. However, BMI is related with FIM efficiency, LOS, and hospital charges in a curvilinear fashion. Severely obese patients can achieve physical improvements but at a lower efficiency and greater cost.

2010年3月30日火曜日

NST加算診療報酬改訂疑義解釈とリハ栄養

厚労省のHPに診療報酬改訂疑義解釈がでています。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-100.pdf

以下はNST関係の一部抜粋です。

(問61) 日本静脈経腸栄養学会が、当該学会が認定した教育施設において、合計40時間の実地修練を修了した場合に修了証を交付している。看護師、薬剤師又は管理栄養士がこの修了証の交付を受けた場合、栄養サポートチーム加算にある所定の研修を修了したといえるか。あるいは、当該学会が認定している「NST専門療法士」の資格を得なければならないのか。
(答) 当該学会が認定した教育施設における合計40時間の実地修練を修了し、修了証が交付されれば、所定の研修を修了したということができる。なお、本加算の算定にあたっては、その他の認定資格を要しない。

(問63) 「栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者」とは、例えばどのような患者か。
(答) 例示としては、以下のような患者が挙げられる。
(例1)脱水状態にある入院直後の患者で、血清アルブミン値は高値を示しているものの、他の指標や背景から明らかに栄養障害があると判断できる者
(例2)これから抗がん剤による治療を開始する患者で、副作用等により当該治療によって栄養障害をきたす可能性が高いと予想される者
(例3)脳卒中を発症して救急搬送された直後の患者で、栄養状態はまだ低下し ていないが、嚥下障害を認めており、経口摂取が困難となる可能性が高いと予想される者
(例4)集中的な運動器リハビリテーションを要する状態にある患者で、入院中に著しい食欲低下を認めており、栄養治療を実施しなければリハビリテーションの効果が十分に得られない可能性が高いと判断できる者

(問70) 栄養サポートチーム加算は、チームが稼働していることについて第三者機関による認定を受けた施設でないと算定が認められないか。
(答) そのようなことはない。

現時点ではNST加算の申請に関して、特定の学会や第三者機関の認定資格や認定稼働施設は不要ということです。今回の申請条件は容易ではありませんので、そこまでは不要でよいかと感じます。

私が興味深く感じたのは、栄養治療により改善が見込めると判断した患者の4番目の例です。おそらく大腿骨頚部骨折をイメージしていると思えます。

運動器リハに限らず、栄養治療を実施しなければリハの効果が十分に得られない可能性が高いと判断できる患者はたくさんいます。実際、入院リハを要する患者の多くが低栄養状態です。

リハ栄養的には、中等度から重度はもちろん、軽度の栄養障害であっても栄養治療を同時に実施しなければリハの効果は「十分に」得られないと考えます。軽度の栄養障害の場合には、リハ単独でもADLの改善はある程度期待できますが「不十分」でしょう。

過度の拡大解釈には問題がありますが、私の考えを提示しておきます。
程度にかかわらず何らかの栄養障害があって、入院リハを行っている患者で、栄養改善によって機能やADLの改善が期待できる場合には、NST加算を算定できると考えます。運動器以外の脳血管疾患等(廃用含む)、呼吸器、心臓のリハでも同様です。

特に廃用症候群では、自験例で91%の患者に栄養障害を認めています。廃用症候群の診断基準がないため混乱を生じやすいですが、大半の廃用症候群患者にはリハ栄養が必要と思います。

ただし、栄養改善を全く見込めない患者(例えば余命数週のターミナルで1日500ml程度の末梢静脈栄養のみ)や、リハによる機能やADLの改善を全く見込めない患者(例えばJCS3桁の遷延性意識障害)に関してはNST加算の算定は無理でしょう。

リハ栄養のエビデンスは乏しいので今後、質の高いエビデンスを作り出して、栄養治療を実施しなければリハの効果が十分に得られない可能性が高いと判断できる患者がたくさんいることを実証しなければいけないと考えています。

2010年3月29日月曜日

若手家庭医はリハビリテーション領域の臨床能力獲得に関してどのように考えているか:質的研究

上記の原著論文がようやく雑誌「家庭医療」に掲載されました。リハ栄養とはあまり関係はないのですが、掲載までの長い道のりを紹介させてください。

若林秀隆、喜瀬守人、岡田唯男:若手家庭医はリハビリテーション領域の臨床能力獲得に関してどのように考えているか:質的研究.家庭医療15(2)4-15,2010
http://jafm.org/journal/pdf/vol15no2/15_2_04.pdf

この質的研究のプロトコールは、2005年度(かなり昔ですね…)の「日本家庭医療学会臨床研究初学者のためのワークショップ」に参加して作成しました。この時点では「質的研究とは何か」ということさえ全く理解できていない初心者でした。とはいえ当時他に質的研究を学べる機会は少なく、書籍を読んでもさっぱり理解できませんでしたので、このような学習機会は実にありがたかったです。

その後(2006年4月~)、臨床研究初学者WSの講師だった岡田唯男先生にメンター、事務局だった喜瀬守人先生に共同研究者をお願いして、まずは日本家庭医療学会倫理委員会に提出する書類(研究計画書など)を作成しました。

この倫理委員会は、倫理面だけでなく研究の内容面に関しても暖かく適切なコメントをくださり、とてもありがたかったです。今は亡き白浜雅司先生のお人柄が倫理委員会に反映されていたのではないかと感じています。

白浜雅司先生のホームページ(臨床倫理の4分割法など臨床倫理の貴重な資料が掲載されています)
http://square.umin.ac.jp/masashi/

次に質的研究であっても、インタビューによるデータ収集のための交通費・宿泊費・会場費(結局会場費はかからなかったのですが、会議室の料金が思いのほか高いことをこのとき知りました)・おやつ代(飲食しながらのほうがよりリラックスできますので、より本音を聞ける可能性が高くなります)、ICレコーダーの購入費用、テープおこし代などお金が必要でしたので、平成18年度日本家庭医療学会の研究助成金を申し込みました。

幸い研究助成金をいただくことができたのですが、別の言い方をすると、この時点でもう研究を途中で辞めることはできなくなりました。研究実施の退路を断つという意味で、研究助成金を申請することは極めて有用な方法です。臨床研究を行っている方にはぜひ研究助成金にトライしてほしいと思います。公益財団法人助成財団センターのHPに、各種団体の助成金情報が掲載されています。助成金応募の手引きも参考になります。

http://www.jfc.or.jp/

その後、日本各地の日本家庭医療学会後期研修施設にお邪魔して、家庭医を対象にフォーカスグループインタビューを行いました。データ収集とデータ分析は本当に不慣れで時間もかかり大変でした。ちなみに量的研究ではデータ収集終了後にデータ分析を行いますが、質的研究では別々ではなく同時に行きつ戻りつしながら行います。岡田先生と喜瀬先生のお力で何とか理論的飽和(これ以上データ収集を行っても新しい概念は出てこないと考えられる状態)に達することができました。

過去に自分が行った臨床研究はすべて量的研究でしたので、数字ではなく文字・文章のままデータを集めて分析するという作業がどんなものなのか、なかなかイメージできませんでした。その中で、戈木クレイグヒル滋子編著「質的研究方法ゼミナール―グラウンデッドセオリーアプローチを学ぶ」医学書院はわかりやすくかなり参考になりました。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=62750

そして研究開始から3年以上経過した昨年8月、第24回日本家庭医療学会学術集会・2009年プライマリ・ケア関連学術集会連合学術会議で、学会発表を行うことができました。発表スライドと第4回日本家庭医療学会・学会賞を受賞したときの写真が、以下のHPに掲載されています。

http://www.scribd.com/doc/19730168/2009-

この学会で発表した資料をベースにして、「家庭医療」に投稿しました。研究助成金のルールの1つに、「原則3年以内に日本家庭医療学会の学会誌に原著論文を投稿すること」があり、その締め切りが昨年10月でしたので、ギリギリでしたが何とか投稿できました。幸い1回目の投稿で受理されましたが、私の過去の経験では査読をクリアすることはかなり大変ですし、リジェクトされたことも数回あります。

臨床研究初学者WSから論文掲載まで実に4年以上かかってします。私の努力不足が大きな要因ですが、それでも研究プロトコール作成→倫理委員会申請→研究助成金申請→データ収集とデータ分析→学会発表→論文執筆の順番にきちんと進めていけば、論文掲載までに2-3年はかかると感じています。

論文という形になったことはすごく嬉しいですが、同時に質的研究について学習して、ものの見方、考え方が広がったことが自分の財産だと考えています。リハ栄養という概念を作れたのも、質的研究を学習したからです。量的研究よりも質的研究のほうが自分に向いていると感じるようになりました。

多くの方に感謝していますが、特に岡田先生と喜瀬先生には大変お世話になり感謝しています。お二人の存在とサポートがなければ、絶対に論文にすることはできませんでした。本当にありがとうございました。

私もまだ研究初学者ではありますが、より初学者の方たちの臨床研究をサポートできればと考えています。体系的に研究方法を学習するために大学院に進学される方を除くと、サポートなしに質の高い臨床研究を実施することはかなり困難です。それが間接的に恩返しになるのではないかと思い、ときどき臨床研究のことをここに書いています。

2010年3月25日木曜日

質的研究のための現象学入門

今日は、編著:佐久川肇、著:植田嘉好子、山本玲菜の「質的研究のための現象学入門 対人支援の「意味」をわかりたい人へ」医学書院を紹介します。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81100

質的研究とは、研究の中で量的研究ではないものです。量的研究とは、概念を定量化して数字で測定、評価、統計処理などすることで、概念間の因果関係を調べる研究です。いわゆる科学・サイエンスと呼ばれるものの大半は量的研究です。

医学の世界でエビデンスと言われるものは基本的には量的研究の結果ですし、科学がこれだけ発展したのも主に量的研究の成果です。質的研究の書籍や研究が増えてきてはいますが、世の中はやはり量的研究が中心です。

ただし、数字で測定できる概念がなければ、量的研究を行うことはできません。そのため、概念・コンセプトを作り出す際には、質的研究を行うことになります。リハ栄養の書籍も高いエビデンスレベルを提示した本ではなく、リハ栄養という概念を作った質的な本といえます。

リハ栄養のエビデンス作り、つまり量的研究の実施はもちろん重要です。実際、量的研究を1つ実施中です。ただ、リハ栄養の概念をさらに深めるためには、量的研究と同時に質的な分析、質的研究の実施も重要と感じています。

質的研究ではデータ収集として、インタビュー、観察、文書、歴史的記録などを用います。観察であっても文章に変換して、文字データで集めます。量的研究ではデータ収集の際に基本的に数字で集めてエクセルに入力しますので、ここは大きな違いになります。

次にデータ分析にはいろいろな方法があります。今回紹介する現象学もその1つですし、それ以外にグラウンデッド・セオリー・アプローチ、エスノグラフィー、ライフストーリー研究、内容分析などいろいろあります。

現象学の基本構造として、相手の発言が「現象」で、発言の意図を知るために相手の立場に立って考え、根拠に基づいて自分の理解の妥当性を確かめようとする作業が「還元」、そしてこちらの意味の受け取り方が「本質観取」、と2ページに記載されています。

「還元」が現象学のキーワードの1つです。「還元」とは収集したデータ(客観的事実)を、客観的意味に書き換えて、そこから実存的意味を取り出す作業です。その際、他の解釈の可能性はないことの妥当性を検証することが必要です。

解釈的現象学と呼ばれる研究もあります。これは妥当性の検証よりも実存的内容自体により重きを置いて、あるがままに記述するような研究だそうです。リハの質的研究の論文にも、解釈的現象学で分析したものがあります。

この文章だけで現象学を理解することは困難ですが、原理はこれだけです。詳細は書籍を実際に読んでいただくしかないのですが、私が読んだ中では現象学に関して一番わかりやすい書籍です。というか他に現象学を理解できる書籍に出会ったことがありませんでした。

また、この書籍では質的研究における方法論の関係として、
実践価値志向(課題解決的)←→存在価値志向(意味論的)
社会集団の特性を明らかにする←→個人のストーリーを明らかにする
の2軸で質的研究をうまく分類しています。

グラウンデッド・セオリー・アプローチ:実践価値志向、社会集団の特性を明らかにする
ナラティブアプローチ(EBMではなくNBM:Narrative Based Medicine):実践価値志向、個人のストーリーを明らかにする
エスノグラフィー:存在価値志向、社会集団の特性を明らかにする
ライフストーリー:存在価値志向、個人のストーリーを明らかにする
と位置付けています。これらはなるほどと感じました。

現象学についてはこの書籍では
1.すべての質的研究法を包括する根本的な認識原理
2.最も意味を志向する研究方法
として位置づけています。私は存在価値志向、個人のストーリーを明らかにするという位置づけでよいのではと感じています。

現象学に関心のある方は、現象学研究会のHPが参考になると思います。

http://www.phenomenology-japan.com/

質的研究の知識がほとんどなくて、質的研究とは何かを知りたい人には、この書籍よりも、①秋田喜代美・能智正博監修、高橋都・会田薫子編「はじめての質的研究法 医療・看護編」東京図書、もしくは②西條剛央著「ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMベーシック編」、「ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMアドバンス編」新曜社をお勧めします。これらの書籍のほうがより入門書と言えると思います。

http://www.tokyo-tosho.co.jp/books/ISBN978-4-489-02009-4.html

http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1071-5.htm
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1108-8.htm

ただ、現象学にせよ他の質的研究にせよ、これらの書籍を読んだだけで一人で質的研究を実施することはかなり困難です。質的研究の知識と経験がある方にメンターになってもらい、一緒に研究プロトコール作成、データ収集、データ分析を行うことが望ましいと考えます。

目次
Part A 質的研究のための「現象学入門」
 対人支援の「意味」を理解したい人への研究の手引き
 序章 現象学的研究方法をわかりやすく学ぶには
 第I章 学問の原理とは-ゼロから始めよう
 第II章 「支援」から見た科学と現象学
 第III章 支援の研究になぜ「実存」の理解が必要か
 第IV章 「支援」における現象学的研究の基本
 第V章 現象学的研究の実践 現象学的方法をどのように習得するか
 第VI章 現象学的研究の具体例
 第VII章 支援領域における現象学的研究の課題
 【引用・参考文献】

Part B のぞいてみよう!質的研究
 現象学の位置づけとその意味
 1.質的研究とは何か
 2.代表的な質的研究方法の紹介
 3.質的研究法の関係図式
 【質的研究全般に関する文献】
 【Part B-2.代表的な質的研究方法の紹介での引用・参考文献】

2010年3月24日水曜日

文献・書籍の検索

文献検索というと、医学の世界では、
・医学中央雑誌:日本語(有料)

・Google Scholar:日本語、英語(無料)
http://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja

・PubMed:英語(無料)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/

あたりが標準的な検索方法かと思います。他に日本語なら
・メディカルオンライン
http://www.meteo-intergate.com/

・JDreamⅡ
http://pr.jst.go.jp/jdream2/

・J-Stage
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

あたりでしょうか。書籍に関しては私はとりあえずアマゾンで検索していました。

今日は、以前からあるサイトですが、国立情報学研究所で運用しているGeNII(ジーニィ)という学術コンテンツポータルを紹介します。
http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp

これは
CiNii(サイニィ):論文情報ナビゲータ
Webcat Plus(ウェブキャット プラス)
KAKEN:科学研究費補助金データベース
NII-DBR:学術研究データベース・リポジトリ
JAIRO(ジャイロ)
という5つのデータベースで同時に検索できる便利なポータルです。

CiNii:論文情報ナビゲータは日本の学術論文を中心にした論文を検索

Webcat Plus:図書や雑誌を検索し、所蔵している大学図書館等を検索

KAKEN:科学研究費補助金により行われた研究に関して、当初採択時のデータ(採択課題)と研究成果の概要(研究実績報告、研究成果概要)の検索

NII-DBR:複数の専門的なデータベースを、一括してあるいは個別に検索

JAIRO:日本の機関リポジトリに登録された、大学や研究機関の教育・研究成果(学術論文、学位論文、研究報告書、学会発表資料、教材等)を検索

自分の名前で検索(エゴサーチと言います。Googleなどでも一度やってみるとよいかもしれません)すると、自分の研究の少なさがよくわかります(涙)。えらい先生の名前で検索するとたくさんヒットしますので、さすがにいろんな研究をしているんだなあということがよくわかります。

リハ栄養に限りませんが、どのサイトで検索するかの知識といかに検索するかの知識の有無(あとは英語のサイトで検索して読めるかどうかですね)で、インターネットから引き出せる情報の質と量は大きく異なります。当然、そこから学習できることも大きく異なります。

インターネットでの検索スキル(特にGoogleの活用方法)は、現代の一般教養の1つです。時々自分の検索スキルを磨くことが自分の学びのために、大切だと感じています。

2010年3月23日火曜日

適切に太るための食事

世の中には痩せるための食事・運動の本や、健常者がさらに筋力をつけるためのレジスタンストレーニングの本はたくさんあります。しかし、私が調べた範囲では、低栄養状態の患者さんが適切に太るための食事を紹介している本は、ほとんどなさそうです。

私がリハ科外来で診療するときは、肥満の方に体重を減らすような指導をすることも少なくありませんが、それと同じくらいるいそうの方に体重を増やすような指導をしています。

るいそうの患者さんは悪液質を生じうる慢性疾患を合併していることがしばしばあります。そうすると食思不振を併発することもよくあります。食事の嗜好を聞くと、カロリーの少ないヘルシーな食事がもともと大好きで、肉や魚はあまり食べないという人が少なくありません。

実際、このような患者さんに指導しても、1kgの体重増加さえなかなか得られないのが実情です。「とにかく痩せないように」と毎回伝えるだけになってしまっていることもあります。

るいそうが著明であればとりあえず脂肪での体重増加でもよいと思い、脂質や糖質ばかりの飲料や食事であっても摂取を勧めています。運動に関しては、廃用予防程度ならよいですが、1日1時間以上のウオーキングなどエネルギー消費量が明らかに増えるような運動は推奨しません。過活動の制限もリハ栄養では大事だと感じています。

るいそうがそこまで著明でなければ筋肉での体重増加を優先したいので、エネルギー摂取量の増加と同時に、たんぱく質の摂取量増加と軽いレジスタンストレーニングの指導を推奨しています。こちらがリハ栄養の王道ですね。

NSTに関心がある人が外来や在宅診療をしていれば、適切に太るための食事を指導したくなる低栄養状態の患者さんがいるはずです。その時にパンフレットや冊子があれば、指導をやりやすくなるのにと感じています。

もしそのようなパンフレットや書籍の存在を御存知の方がいましたら、教えていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

2010年3月22日月曜日

「知の衰退」からいかに脱出するか?

今日は大前研一著「知の衰退」からいかに脱出するか?光文社を紹介します。アマゾンでは中古品を100円で購入できます。

http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E7%9F%A5%E3%81%AE%E8%A1%B0%E9%80%80%E3%80%8D%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%AB%E8%84%B1%E5%87%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8B-%E5%A4%A7%E5%89%8D%E7%A0%94%E4%B8%80/dp/4334975607/ref=sr_1_5?ie=UTF8&s=books&qid=1269231025&sr=1-5

日本人は個人レベルではIQが高い人も少なくないが、日本の国レベルでの集団IQは低く、集団知の活用が不十分であり、いかに思考停止となっているか、どうすれば考えて行動できるようになるかについて書かれています。Web2.0では集団知の活用が可能ですし重要ですから、私もこのようなブログを立ち上げました。もっと集団知を活用できるように心がけたいです。

254ページに「愚民政策=偏差値導入」が日本人を劇的に変えたとあります。日本政府は安保闘争のようなことが2度と起こらないように、若者たちがけっしてアメリカに刃向わないように、体制が転覆する事態が起こらないようにと、愚民政策を実施したそうです。今のテレビでもバカなほどチヤホヤされる番組がありますね。あれも愚民政策の1つかもしれません。

少なくとも私に関して言えば学生時代はものを考えることをしない人間でしたし、英会話は今でも苦手なので、国の愚民政策は成功したのかもしれません。今は考えることや英語の重要性を認識していますのでFDの学習を推奨していますが、本来は大学生や20代のうちに学んでおくべき内容だったと感じています。

今の20代が物欲・出世欲喪失世代(もちろん全員ではありませんが)と解釈しているのもなるほどと感じました。戦後の工業社会、物不足の時代と比べると、今は知識社会、物余りの時代ですし、物欲は昔の人より少ないかもしれません。出世欲に関しても、昔は出世して給料が増えることでより楽な生活をしたいという欲がありましたが、今は出世しなくても仕事さえあれば最低限の楽な暮らしはできる時代です。

もっとも日本は工業社会から知識社会への移行途中ですが、なかなかスムースに移行できていないので、ミスマッチなどで仕事が見つからなくて楽な暮らしをできない人もいますが…。

考える力に乏しく欲求も少ないとなると、高次脳的には前頭葉機能障害です。前頭葉が障害されると思考力、注意力、自発性・意欲、感情コントロール、言語・コミュニケーション、運動など様々な面で機能が低下します。今の世の中は前頭葉をあまり使わなくても生きていけてしまう世の中、教育体制なのでしょう。今後は健常者への認知リハが必要かもしれません。

大前研一氏の書籍を読むと、自分がいかに日頃考えないで生きているかを痛感して落ち込むことがよくあります。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、一読する価値はあると思います。

2010年3月18日木曜日

原稿執筆

以前、「栄養士のためのリハビリテーション」という名前で、企画についていろいろとご意見をいただきました。どうもありがとうございました。その後、内容も確定しましたので、マイミクを中心にいろんな方に原稿執筆依頼をさせていただきました。依頼を引き受けてくださった皆様、どうもありがとうございます。雑誌が出版されましたら、また宣伝させていただきます。

依頼に関しては、執筆経験豊富でご本人にお任せすれば全く心配ないという方と、学会発表はしているけれど執筆経験が少なく相談に乗らないといけない方がいます。

原稿執筆の方法については、私には何の解説もできません。原著論文の執筆に関してはいろんなテキストが出ていますのでそちらを参照していただきたいと思います。ここでは原稿執筆のメリットの話だけにします。

原稿執筆のメリットに関しては、いくつかあげられます。まず日々の臨床の中で1つのテーマについてじっくり考えをまとめる機会というのは、私の場合実はあまりありません。学会発表や論文執筆という機会でもないと、きちんと調べてまとめることは少ないので、自分にとって貴重な学習機会となります。

私にはアウトプット型学習(学会発表で話す、論文を書くなど。問題集を解くことも入ります)のほうが学習効率がずっと高いです。インプット型学習(人の話を聞く、本を読むなど)では定着率が悪く、繰り返し復習しないとなかなか身に付きません。実際、執筆した内容はあまり忘れません。

ただ学会発表レベルでもまとめる機会にはなりますが、原稿執筆レベルとは全く異なります。学会発表は抄録は残るとしても基本的に発表のその場限りですが、論文は永久にそのままの形で残りますので、いい加減なことはできません(これがプレッシャーにならなければよいのですが…)。

原稿執筆することで自分の名前を憶えてもらえるということもメリットです。簡単に個人ブランドを構築できるというわけにはいきませんが、自分の関心領域が伝わりますので、同じような関心を持っている人に声をかけられたり、別の発表や執筆の機会をいただけたりすることもあります。

実際、原稿執筆のチャンスはいくらでも転がっています。ほとんどの雑誌で常に原稿を募集していますので、臨床研究、症例報告などを執筆、投稿する気にさえなればいくらでもできます。でも現実的には原稿執筆を依頼されなければ、なかなか執筆しないのが普通だと感じます。専門医試験を受験しようとする際に、自分で執筆した論文が1本もないので受験を延期したという医師もいますし。

原稿執筆には確かにいろんな壁がありますし辛いときもありますが、人に教えることと同じくらい、自分にとって最もよき学びの機会になりますので、多くの方に執筆していただきたいと思います。

また、リハ栄養の考え方をより多くの人に知ってもらうには、自分一人で執筆、講演しているだけでは当然、限界があります。いろんな方(できれば若手で臨床現場で頑張っている方)に原稿執筆を依頼できるように、その執筆をサポートできるようにしていくことが、自分の大切な仕事かなと感じています。

2010年3月17日水曜日

ドラッカー:ポスト資本主義社会

今日は、P.F.ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会、ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/_itemcontents/0201_biz/00210-0.html

ちなみに今日のクローズアップ現代はドラッカーの特集です。

http://www.nhk.or.jp/gendai/

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という書籍がベストセラーとなり、ドラッカー人気が再び高まっているのは嬉しい限りです。

この本に比べると、ポスト資本主義社会は決して読みやすい本とは言えないと思いますが、知識社会兼組織社会である現代のことを詳細に書いている1つです。繰り返し読めば、現在はどんな社会なのか、日本の政治がさえないのはなぜか、学習と教育はどうあるべきか、これからの知識労働者(=すべての医療人)が身につけるべき一般教養は何かなどが見えてくると思います。

私は現在の一般教養とは、専門領域の知識・技術プラスFDのスキル(問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力)と考えていますが、ドラッカーは昔からこれらの能力の重要性を書いています。

「知識人の世界は、組織人による均衡がなければ好きなことをするだけとなり、意味あることは何もなされない世界となる。組織人の世界も、知識人による均衡がなければ形式に陥り、組織人間が支配する無気力な灰色の世界へと堕する。両者が両立して初めて、創造と秩序、自己実現と課題達成が可能となる。(中略)ポスト資本主義社会では、教養ある人間は二つの文化を理解できなければならない。」とあります。

病院という組織に関して言えば、わがままな医師や医療人が好き放題やっている病院も、院長や事務長が医療人を縛り付ける病院(特に金銭面のみでの管理至上主義)もどちらもダメということになります。幸か不幸か私は両者の病院を見たことがあります。このような病院は決して珍しくないかもしれません。

病院以外の組織でも、組織人間が支配する無気力な灰色の世界は、日本中にありふれているような気がしますが、いかがでしょうか。

医療人も当然、知識人の世界と組織人の世界と両方に生きなければいけませんが、どちらかというと専門の知識・技能を活かす方向に偏りがちだと感じます。ドラッカーの書籍でマネジメントをよく学習して、自分と自分の組織がより多くの成果を出せるように心がけることが改めて問われていると思います。

●目次
序章 歴史の転換期
われわれが経験しつつあるものは何か
ポスト資本主義社会の姿
知識社会への移行
国民国家を超えて
第三世界の行方
ポスト資本主義社会における社会、政治、知識

第1部 社会

第1章 資本主義社会から知識社会へ
何が産業革命をもたらしたか
技術革新と文明
知識の意味が変わった
産業革命
生産性革命
テイラーの悲劇
教育訓練が生産性を爆発的に向上させた
マネジメント革命
マネジメントとは何か
一般知識から専門知識へ

第2章 組織社会の到来
組織の機能
企業も病院も組織
組織の特性
変革機関としての組織
組織の論理
従業員社会

第3章 資本と労働の未来
資本と労働の役割の変化
資本家なき資本主義
コーポレート・ガバナンス
マネジメントの責任

第4章 生産性
知識労働とサービス労働の生産性
チーム
集中
仕事の改善
アウトソーシングの理由

第5章 組織の社会的責任
ポスト資本主義社会の原則
社会的責任とは何か
組織と権力
責任型組織

第2部 政治

第6章 国民国家からメガステイトへ
国民国家の誕生
福祉国家としてのメガステイト
経済国家としてのメガステイト
租税国家としてのメガステイト
冷戦国家の登場
メガステイトは機能したか
ばらまき国家という民主主義の否定
袋小路に入ったメガステイト

第7章 グローバリズム、リージョナリズム、トライバリズム
ゆるぐ国民国家の基盤
環境問題、テロ、軍備管理
新しい現実としてのリージョナリズム
トライバリズムへの回帰

第8章 政府の再建
政党の基盤の消失
反行政の流行
軍事援助の不毛
経済政策において廃棄すべきもの
行うべきこと

第9章 社会セクターによる市民性の回復
二つの社会的ニーズの高まり
NPOによる市民性の回復
コミュニティは欠かせない
市民としてのボランティア

第3部 知識

第10章 知識の経済学
知識が主役
知識の経済学
知識の生産性
中央計画と集中化の失敗
マネジメント上の処方
結合せよ

第11章 教育の経済学
一変する学び方と教え方
高度の基礎教育を与える
強みに焦点を合わせる
学校へ戻る
学校の責任

第12章 教養ある人間
知識社会の中心は何か
求心力となるべき存在
知識社会と組織社会
教養ある人間の条件
専門知識を一般知識とする

2010年3月16日火曜日

チーム医療フォーラム

今日はチーム医療フォーラムの取り組みを紹介します。

http://teamforum.or.jp/

東葛クリニック病院の秋山和宏先生が中心となって取り組んでいる活動で、下記のように新たなチーム医療の実現を目指しています。

「私たちは、チーム医療に必要な知識や知恵を共有(share)し、多くの医療人が参加(join)、実践(act)していくための場を提供していくことを願っています。皆さんのチーム医療に賭ける夢をこの場に描いてみてください。また、こうした地道なチーム医療活動が、医療界を良き方向に導いていくのだと信じます。」

リハ栄養も医師、管理栄養士、PT、OT、ST、看護師、歯科医師、歯科衛生士など多職種のチーム医療(できれば超職種型)が必須です。また、秋山先生とは考え方が似ているところがありますので、できるだけチーム医療フォーラムの活動には協力したいと考えています。

HPだけでもかなり参考になりますが、特に優れているのは「ツ・ナ・ガ・ル」という季刊誌です。先日の幕張のJSPENのときに第1号を配布していましたが、こんなにきれいで中身も充実している冊子を無料で配布するなんて実に素晴らしいと感動しました。

ちなみに私も「私の転機!あのきっかけがそれまでの自分を変えた」という記事に出ています。今後も何らかの原稿を執筆していく予定ですので、よかったら入手して読んでみてください。一番確実な入手方法は、賛助会員になることです。詳細はHPを参照していただければと思います。

また、11月13日には東京ビッグサイトで第2回チーム医療推進全国会議が開催されます。テーマは「プロフェッショナルの条件」で、NSTの世界では知らない人がいない東口先生のランチョンセミナー「チーム医療と私」があります。

私は「医療人のキャリア・アップ 自分ブランドのつくり方」というシンポジウムに参加予定です。このようなことを学習できる機会は他には少ないので、多くの方に参加していただければと思います。よろしくお願いいたします。

第32回日本臨床栄養学会

8月28日、29日に名古屋国際会議場で、第32回日本臨床栄養学会総会・第31回日本臨床栄養協会総会第8回大連合大会が開催されます。

http://www.macc.jp/2010rinsho-eiyo/

私は学会の存在は以前から知っていましたが、参加したことはありませんでした。今回、栄養ケア連携に関する講演をさせていただくことになりました。地域連携の話をさせていただく機会が増えていて、その重要性がさらに高まっていることを実感しています。以前の発表と似たような内容の文章ですが、最後に記載させていただきます。

別件で先日、薬剤師向けと作業療法士向けの栄養に関する研修会講師の依頼があったのですが、日程があわずに断ってしまいました。特にOT向けにリハ栄養の話をする機会はめったにないので何とかしたかったのですが、とても残念でした…。

横浜南部地域一体型NSTにおける栄養ケア連携

横浜南部地域一体型NSTは、横浜南部地域(金沢区、港南区、磯子区、南区、中区、西区)において急性期病院、リハビリテーション(以下、リハ)病院、診療所、歯科医師会、介護施設、在宅、行政などで栄養療法に関する学習、交流、連携を推進し、患者のQOL向上に貢献することを目的に立ち上げた。2007年11月に横浜市磯子区と港南区のNST稼働施設2か所が中心となって、磯子港南地域一体型NSTとして立ち上げ、2008年3月から横浜南部地域一体型NSTに拡大して活動している。テーマは当初、嚥下障害、経口摂取を優先していたが、現在は限定していない。

各NST稼働施設で定期的に行っているNST勉強会のうち、年1回を横浜南部地域一体型NST勉強会と位置付け、同時に連絡会と懇親会を行っている。今までに8回勉強会、連絡会、懇親会を開催した。各NST稼働施設のNST勉強会をベースにすることで、企画の負担を少なくしている。毎回、懇親会を開催することで顔の見えるネットワーク作りを強化している。

地域連携のツールとして、神奈川摂食・嚥下リハ研究会で作成したNST嚥下連絡票(PDN:PEGドクターズネットワークのHPからダウンロード可能

http://www.peg.or.jp/network/kanagawa/index.html

) の運用を推奨している。多職種で共通の連絡票を活用することで、食事の形態や栄養ケアだけでなく口腔ケア、増粘剤の粘度、食事の姿勢、リハテクニックなどもより適切に連携できる。

横浜南部地域も含めた神奈川県内の嚥下相談窓口を作成した(PDNのHPからダウンロード可能)。現在、県内に49か所ある。地区ごとに嚥下相談窓口を明確にすることで、摂食・嚥下障害患者の地域連携を進めやすくなる。嚥下相談窓口以外にも、往診可能な医師・歯科医師、訪問看護師、訪問言語聴覚士、訪問管理栄養士、訪問薬剤師など在宅の情報把握と共有を行っている。

リハ栄養の考え方も有用である。リハ栄養とは、栄養状態も含めてICF(国際生活機能分類)で全人的な評価を行ったうえで、適切な予後予測のもとで、リハ栄養ケアプランを実践することである。摂食・嚥下障害の原因の1つである嚥下筋の筋萎縮には、飢餓・侵襲、廃用性筋萎縮、サルコペニア、悪液質、原疾患による筋萎縮のうち、複数の要因を認めることが少なくない。そのため栄養ケア連携だけでは摂食・嚥下機能、ADL、QOLの向上のためには不十分なことが多く、リハ栄養ケア連携が必要である。

第8回勉強会参加者を対象に行ったアンケート調査で、在宅を含めたNSTの連携・ネットワーク強化と、栄養や摂食・嚥下の学習機会の提供が、今後取り組むべき課題であることが明らかになった。今後は、在宅に関わる各職種との顔の見えるネットワーク作りの強化と情報共有、NST嚥下連絡票のさらなる運用、県内他地域での地域一体型NSTの立ち上げ支援を行いたい。

2010年3月11日木曜日

リハ看護とリハ栄養

リハ看護は最近、脳卒中リハ看護認定看護師の資格もできて、リハにおける看護師の役割は高まりつつあると感じています。

リハ看護については、石鍋圭子・野々村典子編集代表「専門性を高める継続教育 リハビリテーション看護 実践テキスト」医歯薬出版が詳しいと思います。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.cfm?bookcode=235120

目次
第1章 看護行動を支えるリハビリテーション・マインド
第2章 リハビリテーション看護に必要なヘルスアセスメント
第3章 リハビリテーション看護基本技術
第4章 リハビリテーション過程に生じやすい問題と看護アプローチ
第5章 リハビリテーション看護に関連する政策・制度,社会状況
詳細な目次は下記を参照してください。
http://www.ishiyaku.co.jp/search/details_1.cfm?cid=1&bookcode=235120

リハ看護はあらゆる場面で必要ですが、特に回復期リハにおいて「しているADL」、「するADL」を高めていく際に重要です。廃用症候群や脳卒中などで病棟でのADLに一部介助を要する時に、いかに早期に病棟でのADLを自立させるかは大切な課題です。

病棟でのリハ看護を頑張れば頑張るほど、病棟生活でのエネルギー消費量は通常、増加します。身体活動でのMETsの目安は下記の通りです。

1.0 静かに座る
1.2 静かに立つ
1.3 本や新聞等を読む(座位)
1.5 座位での会話・食事、タイプ、入浴(座位)、軽いオフィスワーク
2.0 更衣、整容、シャワー(立位)、歩行(平地、54m/分未満)、料理(座位、立位)、洗濯
2.5 歩行(平地、54m/分)、掃除、ストレッチング
3.0 歩行(平地、67m/分)、階段下り、レジスタンストレーニング(軽・中等度)

しかし、障害者が頑張ってADLを行っている際のMETsはより高くなるものと思われます。例えば健常者の歩行と片麻痺患者・義足患者の歩行を比べると、後者のほうがエネルギー消費量が多いです。ですので、食事によるエネルギー消費量も2Mets程度になっている可能性があります。

例えば体重50kgの患者さんが1食40分、3食で1日2時間を食事時間として、2Metsと考えると、エネルギー消費量の計算式は、

エネルギー消費量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×運動時間(h)

ですので、1.05×50×2×2=210kcalとなり、無視はできないエネルギー消費量となります。

ちなみに健常者が1食20分で1.5Metsと仮定すると、1.05×50×1×1.5=79kcalとなり、その差は131Kkcalです。これだけで活動係数を0.1高くしたほうがよいという計算になります。

他のADL(特にトイレ、歩行、入浴、離床時間など)でもリハ看護を頑張れば頑張るほど、エネルギー消費量は高くなりますので、それに見合ったエネルギー量を摂取していることが必要です。以前はリハ栄養でPT・OT・STによるエネルギー消費量しか考えていませんでしたが、リハ看護のことも考慮しなければいけないなと感じています。

ただ、こんな実例もあります。急性期脳梗塞で前医で嚥下食を経口摂取(+一部経管栄養)していて栄養状態に大きな問題がないにもかかわらず、転院先のリハ病院で「まだ体力がついていないから、口から食べるのはやめる。口から食べるとエネルギーを使うから、そこで体力を消耗する。もっと体力がついてからでないと口から食べられません。」ということで経管栄養のみになったそうです。

私は適切な栄養管理をしながら経口摂取・リハ看護を進めたほうがよっぽど体力もつくし、本人のADL、QOLも高まるのによいと考えますが、非常に残念です。まともなリハ科医師であれば経口摂取を中止させることはないと思うのですが…。

リハ看護栄養(もっといい言葉があればよいのですが…)の正しい実践で、ADLやQOLのさらなる向上を期待できるはずなので、自分でももっと考えてみます。

2010年3月10日水曜日

第21回日本在宅医療学会

今日から第21回日本在宅医療学会の演題募集が開始となっています。

http://www.procomu.jp/jshm2010/index.html

メインテーマ 『シームレスな医療へ -病院そして在宅-』
【会長】 丸山道生先生(財団法人 東京都保健医療公社大久保病院 外科部長)
【日時】 2010年6月12日(土)~13日(日)
【会場】 東京ファッションタウンTFTホール(東京・有明)
【演題登録受付期間】 2010年3月10日(水)~3月31日(水)予定

 私は土曜日午後のシンポジウム2『病院から在宅へのシームレスな栄養管理・地域栄養ケア』に参加します。

司会 望月弘彦 クローバーホスピタル 消化器科
シンポジスト 若林秀隆 横浜市立大学市民総合医療センターリハビリテーション科
シンポジスト 中村悦子 市立輪島病院 
シンポジスト 荒木玲子 国立病院機構西群馬病院 薬剤科
シンポジスト 西山順博 西山医院
シンポジスト 工藤美香 南大和病院 栄養科

 私は「摂食・嚥下障害患者のシームレスな栄養管理・地域栄養ケア」という演題名で、以下のような内容について発表する予定です。

 栄養管理や経口摂取は1つの病院・施設内だけで完結する課題ではないため、地域連携が必要である。シームレスな栄養管理・地域栄養ケアを臨床現場で行うには、5W1H(Why、Who、When、Where、What、How)を明確にすることが有用である。その1例を示す。
 Why:ビジョン・ミッションを明確にする
 Who:誰とでも・超職種型(同じ職種同士は当然、その他の職種とも連携)
 When:いつでも(患者の移動時はいつでも連携)
 Where:どこでも(患者の移動時は病院・施設・在宅に関わらずどこでも連携)
 What:何でも(栄養管理や嚥下食は当然、他にも必要な情報は何でも連携)
 How:人、物、金、知識、時間、感情の経営資源を適切にマネジメント
 神奈川摂食・嚥下リハビリテーション(以下、リハ)研究会では、NST嚥下連絡票(PDN:PEGドクターズネットワークのHPからダウンロード可能)

http://www.peg.or.jp/network/kanagawa/index.html

を作成して、県内での運用を進めている。多職種で共通の連絡票を活用することで、食事の形態や栄養管理だけでなく口腔ケア、増粘剤の粘度、食事の姿勢、リハテクニックなどもより適切に連携できる。神奈川県内の嚥下相談窓口も作成している(PDNのHPからダウンロード可能)。現在、県内で49か所ある。地区ごとに嚥下相談窓口を明確にすることで、摂食・嚥下障害患者の地域連携を進めやすくなる。
 横浜南部地域一体型NSTは、横浜南部地域(金沢区、港南区、磯子区、南区、中区、西区)において急性期病院、リハ病院、診療所、歯科医師会、介護施設、在宅、行政などで栄養療法に関する学習、交流、連携を推進し、患者のQOL向上に貢献することを目的に立ち上げた。ここでも、NST嚥下連絡票の運用を推奨している。地域内の嚥下相談窓口以外にも、往診可能な医師・歯科医師、訪問看護師、訪問言語聴覚士、訪問管理栄養士、訪問薬剤師など在宅の情報把握と共有も行っている。第8回勉強会参加者を対象に行ったアンケート調査で、在宅を含めたNSTの連携・ネットワーク強化と、栄養や摂食・嚥下の学習機会の提供が、今後取り組むべき課題であることが明らかになった。
 リハ栄養の考え方も有用である。リハ栄養とは、栄養状態も含めてICF(国際生活機能分類)で全人的な評価を行ったうえで、適切な予後予測のもとで、リハ栄養ケアプランを実践することである。摂食・嚥下障害の原因の1つである嚥下筋の筋萎縮には、飢餓・侵襲、廃用性筋萎縮、サルコペニア、悪液質、原疾患による筋萎縮のうち、複数の要因を認めることが少なくない。この場合、栄養管理だけの連携でもリハだけの連携でも、摂食・嚥下機能、ADL、QOLの向上のためには不十分なことが多い。そのため、シームレスなリハ栄養管理・地域リハ栄養ケアが必要である。

 他には『病院から在宅へ、嚥下・食事摂取の各職種の関わり』というシンポジウムもあります。私の発表内容はこちらにもかぶっている感じです。

司会 中村育子 福岡クリニック在宅部栄養課
司会 前田佳予子 武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
シンポジスト 戸原玄 日本大学歯学部摂食機能療法学講座
シンポジスト 木下朋雄 コンフォガーデンクリニック在宅療養支援診療所
シンポジスト 関初穂 北里研究所病院リハビリテーション技術・メディカルトレーナー科
シンポジスト 弓狩幸生 医療法人財団福寿会在宅総合支援センターふくろう
シンポジスト 中村育子 福岡クリニック在宅部栄養課

 関心のある方はぜひ参加、発表していただければと思います。よろしくお願いいたします。

2010年3月9日火曜日

週刊医学界新聞‐今こそ学ぼう!!栄養管理

週刊医学界新聞レジデント版第2870号2010年3月8日に、大村健二先生のインタビュー記事「今こそ学ぼう!!栄養管理」が掲載されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02870_01

先日紹介した「栄養塾」の書籍はもちろんためになりますが、このインタビュー記事を読むだけでも学習になりますので、ぜひ見ていただければと思います。

この記事の中に、私が「栄養塾」の書籍で書いたクリニカルパール「栄養ケアなくしてリハなし。リハなくして栄養ケアなし」も紹介されていて嬉しかったので、その部分を引用させていただきます。

――「栄養ケアなくしてリハなし。リハなくして栄養ケアなし」というクリニカルパール(『栄養塾』摂食・嚥下障害の項より)も,同じような考え方ですね。

大村 実際,低栄養状態の方にリハビリテーションを強いても,場合によってはかえって骨格筋の萎縮をまねきます。「栄養ケアなくしてリハなし」です。一方で,適切なリハビリテーションを行わずに栄養状態の改善を試みても,もっぱら体脂肪ばかりを増加させてインスリン抵抗性が増してしまう可能性がある。ADLやQOLもむしろ低下する恐れがあります。「リハなくして栄養ケアなし」です。栄養管理とリハビリテーションは不可分の関係にありますから,同時期にチームでアプローチする必要があるのです。

栄養管理もリハも疾病の治療と平行して行わなければいけないものですが、どちらも疾病の治療が落ち着いた後に、それでは栄養管理でも考えるか、それではベッドサイドリハでもやってみるかという現状がまだあります。

回復期、維持期の栄養管理やリハも当然重要ですが、急性期から「できる範囲で」治療と早期リハ栄養を平行して行うことが大切です。そうしないと急性期の不適切なリハ栄養の肩代わりを回復期、維持期で行うことになります。

リハの世界では早期リハの重要性はかなり普及してきていると思いますが、早期栄養管理の重要性は早期リハほどは普及していないように感じます。早期リハ栄養の重要性を伝えていきたいと考えています。

平成22年度NST専門療法士試験公告

JSPENのHPに平成22年度NST専門療法士試験公告が出ています。一部紹介します。

http://jspen.jp/eiyouRyouhousi-H22.html

日時:平成22年11月14日(日) 13:00-15:00
場所:名古屋国際会議場
受験申請受付期間:平成22年7月20日~8月20日 (必着)

1. 認定の対象および認定試験受験申請の要件
1) 日本国の以下に掲げる国家資格を有すること。
認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、および歯科衛生士。
2) 当該国家資格により5年以上、医療・福祉施設に勤務し、当該施設において栄養指導の業務に従事した経験を有すること。
3) 本学会学術集会に1回(10単位)以上、本学会主催の教育セミナー(10単位)に1回以上参加することを必須とし、この単位数を必須単位数とする。必須単位数30単位以上を有するか、または、必須単位数に加え、本学会が認める栄養に関する全国学会(5単位)、地方会(5単位)、研究会(5単位)への参加単位数の合計が、30単位以上あること。
なお、「バーチャル臨床栄養カレッジ」修了証については非必須10単位を認める。
4) 第4章の規定により認定された認定教育施設(以下認定施設)において、合計40時間の実地修練を修了していること。

上記の条件さえ満たせば、PT、OT、ST、DHも今年のNST専門療法士試験を受験できます。他の職種の方ももちろんですが、特により多くのPT、OT、ST、DHにNST専門療法士を目指してほしいと思います。

2010年3月6日土曜日

NST加算の情報

昨日、NST加算の新しい情報が出たようで、所定の研修がどんなものかも明らかになったようですが、私のほうでは現時点では下記の情報しか入手できませんでした。

褥瘡対策チーム、感染対策チーム、緩和ケアチーム、摂食・嚥下対策チーム等、他チームとの合同カンファレンスを、必要に応じて開催ということが明記されており、ますます組織横断型のチーム医療、多職種連携の重要性は高まるものと考えます。

また、当該患者の退院・転院時に、紹介先保険医療機関等に対して診療情報提供書を作成した場合は、当該報告書を添付するということも大事なポイントです。リハ栄養の地域連携がマイブーム(?)になっていますが、NST加算が普及すればするほど、栄養管理の地域連携も進むものと考えます。以下、厚労省の資料です。

(1) 栄養サポートチーム加算は、栄養障害の状態にある患者や栄養管理をしなければ栄養障害の状態になることが見込まれる患者に対し、患者の生活の質の向上、原疾患の治癒促進及び感染症等の合併症予防等を目的として、栄養管理に係る専門的知識を有した多職種からなるチーム(以下「栄養サポートチーム」という。)が診療することを評価したものである。

(2) 栄養サポートチーム加算は、当該加算を算定できる病棟に入院している患者であって、区分番号A233に掲げる栄養管理実施加算を算定している患者のうち、次のアからエのいずれかに該当する者について算定できる。
ア栄養管理実施加算に係る栄養スクリーニングの結果、血中アルブミン値が3.0g/dl以下であって、栄養障害を有すると判定された患者
イ経口摂取又は経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者
ウ経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者
エ栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者

(3) 1日当たりの算定患者数は、1チームにつき概ね30人以内とする。

(4) 栄養サポートチームは、以下の診療を通じ、栄養状態を改善させ、また、必要に応じて経口摂取への円滑な移行を促進することが必要である。
ア栄養状態の改善に係るカンファレンス及び回診が週1回程度開催されており、栄養サポートチームの構成員及び必要に応じて、当該患者の診療を担当する保険医、看護師等が参加している。
イカンファレンス及び回診の結果を踏まえて、当該患者の診療を担当する保険医、看護師等と共同の上で、別紙様式5の2又はこれに準じた栄養治療実施計画を作成し、その内容を患者等に説明の上交付するとともに、その写しを診療録に添付する。
ウ栄養治療実施計画に基づいて適切な治療を実施し、適宜フォローアップを行う。
エ治療終了時又は退院・転院時に、治療結果の評価を行い、それを踏まえてチームで終了時指導又は退院時等指導を行い、その内容を別紙様式5の2又はこれに準じた栄養治療実施報告書として記録し、その写しを患者等に交付するとともに診療録に添付する。
オ当該患者の退院・転院時に、紹介先保険医療機関等に対して診療情報提供書を作成した場合は、当該報告書を添付する。

(5) 栄養サポートチームは、以下の診療を通じ、当該保険医療機関における栄養管理体制を充実させるとともに、当該保険医療機関において展開されている様々なチーム医療の連携を図ることが必要である。
ア現に当該加算の算定対象となっていない患者の診療を担当する保険医、看護師等からの相談に速やかに応じ、必要に応じて栄養評価等を実施する。
イ褥瘡対策チーム、感染対策チーム、緩和ケアチーム、摂食・嚥下対策チーム等、当該保険医療機関において活動している他チームとの合同カンファレンスを、必要に応じて開催し、患者に対する治療及びケアの連携に努めること。

2010年3月3日水曜日

JSPEN幕張の発表資料

幕張のJSPENで発表したスライド原稿をPDFファイルで下記のHPに掲載しました。

http://sites.google.com/site/noventurenoglory/

1つが一般演題で「入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連」、もう1つがシンポジウム・継続医療と地域一体型NSTで「横浜南部地域一体型NSTによる地域連携の成果と課題」です。

興味のある方はぜひ見ていただければと思います。ご意見、ご質問などありましたら、コメントをよろしくお願いいたします。

栄養士のためのリハビリテーション

今度、栄養士向けのある雑誌でリハビリテーションの特集を組むことになりました。現在、編集者と企画を調整しているところです。リハビリテーション栄養の考え方と実践がなぜ栄養士にとって重要なのかを伝えるよい機会だと考えています。

その中でリハビリテーションで問題となる栄養不良について、取り上げたいと検討しています。一見リハのみの問題のようで、実は栄養障害が問題となっていて、適切な栄養管理とリハを併用しなければ、機能・ADL・QOLの改善は難しいテーマをいくつかあげたいと思っています。ただ、数に上限があるので、疾患別というわけにはいかないのが現状です。候補として、

・筋力低下
・持久力低下(心肺機能低下・不全含む)
・ADL低下(廃用症候群含む)
・嚥下障害
・咀嚼・口腔機能障害

あたりを考えているのですが、いかがでしょうか。このあたりのテーマですと、PT・OT・ST・歯科衛生士は基本的に訓練を考えることになりますし、栄養士もリハに頑張ってもらうことを考えがちな気がします。

こんなテーマを取り上げたらよいのではというご意見などありましたら、いただけるとありがたいです。よろしくお願い申し上げます。

2010年3月2日火曜日

栄養塾

今日は先日のJSPENに合わせて出版された「栄養塾 症例で学ぶクリニカルパール 大村健二先生編」医学書院を紹介します。私も第3章8の摂食・嚥下障害を執筆しました。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=62998

もともと「レジデントのための栄養塾」という名前で医学界新聞で連載されていた内容を大幅に質・量とも充実させて1冊の本にしたものです。

1章の生化学はかなりわかりやすく執筆されています。3章はわかりやすい中でもかなりレベルの高い内容まで記載されていて、私も学ぶことがいろいろとありました。

・急性腎不全では、十分に栄養・蛋白を投与したうえで、出口としてCHDFを考える
・心不全では利尿剤の使用でビタミンB1が不足しやすく、脚気心になることがある
・サルコペニアには栄養管理とレジスタンストレーニングが重要である

などのクリニカルパールが多数ありますし、リハビリテーションと栄養管理・NSTの併用の重要性を大村塾長が何度も強調してくださっているのも、とても嬉しいです。多職種にお勧めしたい1冊です。

目次
1章 栄養管理に必要な生化学の知識
 1 糖質の消化・吸収と代謝
 2 脂質の消化・吸収と代謝
 3 蛋白質の消化・吸収とアミノ酸代謝
 4 微量栄養素の生理活性とその欠乏
2章 臨床栄養 基礎編
 1 栄養アセスメント
 2 栄養管理のプランニング
 3 栄養投与ルートとその管理
 4 モニタリング
 5 周術期の栄養管理
 6 低栄養患者の栄養管理
 7 過栄養患者の栄養管理
3章 臨床栄養 応用編 病態・ライフサイクル別
 1 糖尿病
 2 肝硬変
 3 急速進行性糸球体腎炎
 4 SIRSを伴った急性腎不全
 5 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
 6 炎症性腸疾患
 7 脳血管障害
 8 摂食・嚥下障害
 9 心不全
 10 癌化学療法時の消化管毒性
 11 終末期癌
 12 短腸症候群
 13 認知症高齢者
 14 妊娠
 15 小児
 16 加齢に伴う代謝変動
4章 栄養管理のピットフォール
 1 特殊病態用栄養剤のピットフォール
 2 Refeeding症候群
 3 糖尿病性ケトアシドーシス・高血糖高浸透圧症候群
 4 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)
 5 胃瘻のトラブル