2012年9月30日日曜日

COPDの筋異常と悪液質


COPDの筋異常の原因である悪液質のメカニズムに関するレビュー論文を紹介します。

Remels AH, Gosker HR, Langen RC, Schols AM. The mechanisms of cachexia underlying muscle dysfunction in COPD. J Appl Physiol. 2012 Sep 27. [Epub ahead of print]

肺悪液質(Pulmonary cachexia)はCOPDでの死亡率増加と、末梢筋および呼吸筋の機能障害と関連しています。悪液質のメカニズムの詳細は不明ですが、細胞内での筋肉量維持のメカニズム(蛋白や筋核のターンオーバー)の病的変化が関与しているというエビデンスが増えています。

病的変化の要因として、酸化ストレス、ミオスタチン、炎症が考えられています。筋肉減少に加え、末梢筋では筋線維がⅡ型(速筋)にシフトして酸化能に障害が出やすくなります。一方、呼吸筋の筋線維は筋萎縮を認めるとともにⅠ型(遅筋)にシフトして酸化能が増強されます。

下肢筋肉の筋線維の変化は、悪液質や体重減少の影響を受けやすい肺気腫でより顕著であり、筋肉量減少と下肢筋肉の筋線維変化にはつながりがありそうです。

仮説ですが、下肢筋肉の筋線維変化が悪液質を加速させる可能性があります。十分な食事摂取が確保されていない場合、よりエネルギー不足や体重減少になりやすいためです。下肢筋肉の筋線維が変化することで、より炎症や酸化ストレスの影響を受けやすくなっている可能性があります。

悪液質のメカニズムが複雑であるために、その治療も栄養療法単独、運動療法単独、薬物療法単独では十分な効果が期待しにくいのだと思います。食事・運動・薬物のどれが欠けても悪液質が進行しやすいので、やはりCOPDには包括的な治療・対応が求められます。

Abstract

Pulmonary cachexia is a prevalent, debilitating and well-recognized feature of COPD associated with increased mortality and loss of peripheral and respiratory muscle function. The exact cause and underlying mechanisms of cachexia in COPD are still poorly understood. Increasing evidence however shows that pathological changes in intra-cellular mechanisms of muscle mass maintenance (i.e. protein turn-over and myonuclear turn-over) are likely involved. Potential factors triggering alterations in these mechanisms in COPD include oxidative stress, myostatin and inflammation. In addition to muscle wasting, peripheral muscle in COPD is characterized by a fiber-type shift towards a more type II, glycolytic phenotype and an impaired oxidative capacity (collectively referred to as an impaired oxidative phenotype). Atrophied diaphragm muscle in COPD, however, displays an enhanced oxidative phenotype. Interestingly, intrinsic abnormalities in (lower limb) peripheral muscle seem more pronounced in either cachectic patients or weight-loss susceptible emphysema patients, suggesting that muscle wasting and intrinsic changes in peripheral muscle's oxidative phenotype are somehow intertwined. In this manuscript, we will review alterations in mechanisms of muscle mass maintenance in COPD and discuss the involvement of oxidative stress, inflammation and myostatin as potential triggers of cachexia. Moreover, we postulate that an impaired muscle oxidative phenotype in COPD can accelerate the process of cachexia, as it renders muscle in COPD less energy-efficient thereby contributing to an energy-deficit and weight loss when not dietary compensated. Furthermore, loss of peripheral muscle oxidative phenotype may increase the muscle's susceptibility to inflammation- and oxidative stress-induced muscle damage and wasting.

2012年9月28日金曜日

第2回認知症の人の食支援研究会



‎12月16日に第2回認知症の人の食支援研究会が横浜(鶴見)で開催されます。私は栄養の話と事例検討をさせていただくことになりました。参加希望の方はFAXで申し込んでください。下記リンクから案内ビラと申し込み用紙を入手できます。よろしくお願い申し上げます。

https://www.sugarsync.com/pf/D6162998_9620294_37867

 

2012年9月27日木曜日

八重山地区摂食嚥下リハ栄養セミナー


11月2日(金)に八重山地区摂食嚥下リハ栄養セミナー(石垣島)で、摂食・嚥下障害のリハ栄養の講演をさせていただきます。翌日は石垣島まつりもありますので、お近くでない方もよかったらご参加ください。よろしくお願い申し上げます。

経腸栄養 100の疑問

大井田尚継監修、三松謙司編著:経腸栄養 100の疑問、医歯薬出版を紹介します。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731450

神奈川NST研究会や横浜南部地域一体型NSTで大変お世話になっている、社会保険横浜中央病院NSTの三松先生が中心となって執筆された書籍です。

下記の目次を見ていただければわかりますが、臨床場面で気になる疑問を中心にわかりやすく解説されています。体系的な書籍での学習も重要ですが、理解しやすさの点でこの書籍のほうがずっと優れています。先にこの書籍で学習してから、体系的な書籍で学習するのがよいかもしれません。

私が知らない疑問もいくつもあり、よい学習になりました。例えば経腸栄養の歴史について教えてください、nasogastric tube syndromeとは何ですか?、耐性乳酸菌製剤を使用したほうがよい抗菌薬は何ですか?などです。

脱胃瘻(胃瘻からの解放)のタイミングは?という疑問も興味深かったですが、読んでみると私の文献を参考にしてくださっていました。サルコペニアについても記載してくださり、どうもありがとうございます。

経腸栄養の最先端の知識も含めて、かなりの部分を網羅している書籍ですので、経腸栄養の初心者から中級者の多職種にお勧めできます。多くの方に読んでいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

主な目次
1 経腸栄養はなぜ有用なのですか?
2 経腸栄養はどこから投与しますか?
3 経腸栄養の適応は?
4 経腸栄養の禁忌は?
5 経腸栄養の歴史について教えてください.いつから経腸栄養は始まったのですか?
6 経鼻胃管による経腸栄養の適応は?
7 経鼻胃管チューブ挿入時の注意点は?
8 経鼻経管栄養で使用するチューブの選択は?
9 経鼻胃管チューブの固定法はどうすればよいですか?
10 経鼻胃管栄養時の合併症で注意することは何ですか?
11 nasogastric tube syndromeとは何ですか?
12 経腸栄養チューブ閉塞の対処法はどうすればよいですか?
13 外科的胃瘻の適応と造設方法は?
14 PEGによる経腸栄養の適応と禁忌は?
15 PEGの種類にはどのようなものがありますか?
16 PEGの造設にはどのような方法がありますか?
17 PEGカテーテルの交換は,いつ・どのようにして行いますか?
18 胃切除後の患者にPEG造設は可能ですか?
19 脱胃瘻(胃瘻からの解放)のタイミングは?
20 PEG造設時の看護ケアについて教えてもらえませんか?
21 PEG周囲のスキンケアはどのようにしますか?
22 PEG瘻孔部感染に対する予防とケアはどうすればよいですか?
23 PEG周囲の不良肉芽に対するケアはどうすればよいですか?
24 外科的空腸瘻の適応と造設方法は?
25 空腸瘻の入れ替えはできますか?
26 PEG-Jとはどのような栄養投与方法ですか?
27 PTEGとはどのような栄養投与方法ですか?
28 投与エネルギーと三大栄養素の投与量はどのようにして決定するのですか?
29 経腸栄養の投与時に必要な物品には何がありますか?
30 経腸栄養の投与前に確認することは何ですか?
31 経腸栄養の投与手順はどうしますか?
32 経腸栄養剤の投与量と投与速度はどのように決定すればよいですか?
33 経腸栄養投与時にポンプは必要ですか?
34 経腸栄養施行時の追加水は,いつ・どのように投与したらよいですか?
35 経腸栄養剤を水で希釈してもよいですか?
36 経腸栄養施行時に口腔ケアは必要ですか?
37 経腸栄養剤の種類にはどのようなものがありますか?
38 成分栄養剤はどのようなときに使いますか?
39 消化態栄養剤はどのようなときに使いますか?
40 半消化態栄養剤はどのようなときに使いますか?
41 immunonutritionとは何ですか?
42 免疫増強・調節経腸栄養剤にはどのようなものがありますか?
43 GFO(R)とは何ですか? どのようなときに使いますか?
44 プロバイオティクス・プレバイオティクスとは何ですか?
45 シンバイオティクスとは何ですか?
46 食物繊維はなぜ必要なのですか? すべての栄養剤に含まれていますか?
47 経腸栄養剤にはどうして薬品扱いと食品扱いがあるのですか?
48 半固形化栄養材とは何ですか?
49 市販されている半固形化栄養剤にはどのような種類がありますか?
50 半固形化栄養材短時間注入法とそのメリットは何ですか?
51 半固形化栄養材の投与方法と手順はどのようなものですか?
52 半固形化栄養材投与時の水分補給はどのようにすればよいですか?
53 半固形化栄養材の投与ルートに制限はありますか?130
54 経腸栄養投与時によく起こる合併症は何ですか?
55 経腸栄養を開始するときに注意しなければならない合併症は何ですか?
56 経腸栄養施行中に下痢が起こる原因は何ですか?
57 経腸栄養剤に関連のある下痢の対処方法は?
58 経腸栄養剤に関連のない下痢の対処方法は?
59 経腸栄養施行中に便秘が起こる原因は何ですか?
60 便秘時の対処方法は?145
61 経腸栄養で腹部膨満になるのはなぜですか?
62 腹部膨満時の対処方法は?
63 経鼻経管栄養で誤嚥しやすいのはなぜですか?
64 経口摂取困難患者の栄養投与方法は経鼻胃管とPEG,どちらを選択するのがよいですか?
65 嚥下障害患者への補助経管栄養投与にはどのような方法がありますか?
66 経鼻経管チューブ留置中の経口摂取は禁忌ですか?157
67 気管切開患者の嚥下訓練や経口摂取で注意することは何ですか?
68 経腸栄養投与中の低Na血症はどうして起こるのですか?
69 経腸栄養投与中にビタミン欠乏になりますか?
70 経腸栄養投与中に微量元素欠乏になりますか?
71 経鼻経管栄養中の薬剤投与はどのように行うのですか?
72 簡易懸濁法とはどのような方法ですか?
73 抗菌薬投与時に耐性乳酸菌製剤を使うのはなぜですか?
74 耐性乳酸菌製剤を使用したほうがよい抗菌薬は何ですか?
75 経口抗癌剤を簡易懸濁法により経管チューブから投与してもよいですか?
76 腎疾患(透析・非透析)のときに使用できる経腸栄養剤は何ですか?
77 糖尿病に対して血糖を考慮した経腸栄養剤は何ですか?
78 肝疾患のときに使用できる栄養剤は何ですか?
79 呼吸不全のときに使用できる栄養剤は何ですか?
80 脳血管障害患者に対する経腸栄養で注意することは何ですか?
81 胃食道逆流現象における経腸栄養で注意することは何ですか?
82 クローン病に経腸栄養は有用ですか?
83 潰瘍性大腸炎に経腸栄養は有用ですか?
84 狭窄を有する大腸癌に経腸栄養は有用ですか?
85 急性膵炎では経腸栄養を行ってもよいのですか?
86 術前患者の栄養管理にはどのような栄養剤を使用したらよいですか?
87 ERAS(イーラス)における経腸栄養の役割は何ですか?
88 経口補水療法(oral rehydration therapy:ORT)とは何ですか?
89 早期経腸栄養は有用ですか?
90 食道切除術の栄養管理に経腸栄養は有用ですか?
91 胃全摘術後に経腸栄養は必要ですか?
92 膵頭部十二指腸切除術後の栄養管理に経腸栄養は有用ですか?
93 縫合不全発生時にも経腸栄養は施行可能ですか?
94 短腸症候群で経腸栄養は施行可能ですか?
95 褥瘡に有用な栄養剤はありますか?
96 oral nutritional supplements(ONS)とは何ですか?
97 癌化学療法時の口内炎に対して有用な経腸栄養剤はありますか?
98 癌悪液質に有用な経腸栄養剤はありますか?
99 癌終末期の患者に対して経腸栄養は有用ですか?
100 在宅経腸栄養に移行する際の注意点は何ですか?

2012年9月26日水曜日

第20回ハートセンターフォーラム


10月22日(月)に聖マリアンナ医科大学病院で、慢性心不全のリハ栄養という講演をさせていただきます。

私の講演はリハ栄養とサルコペニアに関する総論的な話がほとんどですが、今回は慢性心不全に限定した話を少し(5-10分程度でしょうか)させていただく予定です。お近くの方はよかったらご参加ください。よろしくお願い申し上げます。

2012年9月24日月曜日

飢餓時の筋トレと運動

飢餓時のレジスタンストレ―ニングや持久力増強訓練は禁忌とリハ栄養で言っています。それではどの程度の運動や活動であれば可能であり、行うべきでしょうか。

日常生活での筋収縮力が常に最大筋力の20%以下であれば、筋力は徐々に低下します。一方、最大筋力の20-30%の筋収縮で筋力は維持可能で、最大筋力の30~40%以上の筋収縮で筋力は増加可能と言われています。

日常生活レベルで発揮する筋力は20-30%程度ですので、日常生活を行っていれば廃用性筋萎縮を起こすことも筋力が増えることもあまりないと思われます。

飢餓時は筋肉を分解してエネルギーを作りだしますので、筋肉量は減少します。Muscle Power(筋肉の質)が改善すれば、筋肉量が減少しても筋力が改善する可能性はあります。しかし、飢餓で筋肉量が減少している時の筋力の目標は、改善ではなく維持もしくは悪化軽減でしょう。

飢餓時に日常生活での筋収縮力が常に最大筋力の20%以下になると、飢餓による筋萎縮に廃用性筋萎縮が加わります。そのため、飢餓時でも最大筋力の20-30%程度の筋収縮を発揮する機会は重要です。つまり、日常生活を行うことは、廃用性筋萎縮の予防に有用です。

一方、運動によるエネルギー消費量の増加は通常、飢餓の悪化につながります。ただし、悪液質で運動による抗炎症作用から食欲改善を期待する場合は、飢餓の改善につながることもあります(漫然と行うべきではありませんが)。そのため、飢餓時はできるだけ運動を控えたほうがよいということになります。

飢餓時のレジスタンストレーニングは、筋肉量増加を期待できないだけでなく、運動によるエネルギー消費量増加から飢餓の悪化にもつながりますので、原則として禁忌です。

飢餓時の持久力増強訓練も、持久力増加を期待できないだけでなく、運動によるエネルギー消費量増加から飢餓の悪化にもつながりますので、原則として禁忌です。

飢餓時に廃用性筋萎縮を予防するためには、1日中安静臥床で過ごすのではなく、日常生活を行うことが重要です。日常生活を行うことで安静臥床に比べるとエネルギー消費量は増加しますが、日常生活のメッツは2メッツ程度です。飢餓の若干の悪化と廃用性筋萎縮を比べると、廃用性筋萎縮のほうがより問題と考えます。

そのため、飢餓時に日常生活を制限する必要はないと考えます。むしろ1日中安静臥床で過ごすのではなく、しっかり離床したうえで、日常生活やADL訓練を行うことを推奨します。ただし、階段昇降はお勧めしません。エレベーターやエスカレーターを使いましょう(笑)。

飢餓時に機能訓練を行う場合、離床する、廃用症候群予防のためにADL訓練を行う、2メッツ以下の活動を行うことはよいと考えます。機能訓練中の栄養剤補給は特に重要でしょう。一方、レジスタンストレーニングや持久力増強訓練は禁忌です。平地歩行は可ですが、家屋内短距離程度とするのがよいと考えます。

2012年9月21日金曜日

脳からストレスを消す食事

武田英二著、脳からストレスを消す食事、ちくま新書を紹介します。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480066213/

脳によい食事「ブレインフード」という概念は、今回初めて聞きました。脳の可塑性から考えるブレインフードとして、239ページに以下のようにあります。以下、引用です。

脳によい食事は、主食であるご飯に主菜、副菜がついた一汁三菜のバランスがとれた食事です。主菜にはDHA、EPAが含まれた魚介類を持ってきて、副菜は野菜の煮物、漬け物で食物繊維やミネラルを補充する、そして具だくさんの味噌汁をつける――これが脳によい食事です。

一見、当たり前のように思えるかもしれませんが、当たり前の食事や栄養管理が現代ではなかなか実践が難しくなっています。リハ栄養的に考えると、認知リハを頑張っても、食事や栄養管理に大きな問題があれば、認知機能を最大限改善させることは難しいといえます。

飢餓や不適切な栄養管理のときにレジスタンストレーニングや長時間の持久力増強訓練は禁忌と言っています。飢餓や不適切な栄養管理のときに認知リハは禁忌とまでは言えませんが、栄養はリハのバイタルサインですから、栄養を無視した認知リハには改善の余地があるかと思います。

この書籍では生理学を栄養学を上手に絡めて執筆されています。生理学だけですとどうしても難解になりがちで関心を持ちにくいのですが、最近の栄養学の知見を含めて紹介されていますので、わかりやすく興味を持ちながら読み進めることができます。

例えば、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は食欲を抑えるホルモンです。コルチゾールは食欲を増進させます。薬剤でコルチゾールを投与するとACTHの分泌が抑制される結果、食欲を抑制するホルモンがほとんど分泌されないために肥満になりやすくなります。

脳卒中の栄養管理というと、まずは低栄養や過栄養の評価と治療(リハ栄養含め)が求められます。その次のステップとして、本書に出てくるようなブレインフードと認知リハ(と薬剤など)の併用による認知機能の改善に踏み込んでいくことが今後の課題かもしれません。多くの方にお勧めしたい書籍です。

目次
第1章 食事が脳をつくる
第2章 食べ物で変わる脳の働き
第3章 食べ物が引き起こす脳のトラブル
第4章 食べ物が心と身体を健康にする
第5章 脳ストレスを食べ物でなくす
第6章 ブレインフードが脳をよくする
第7章 脳によい食事を実践する

2012年9月20日木曜日

Glasgow Prognostic Scoreのレビュー

がん患者におけるGlasgow Prognostic Scoreのレビュー論文を紹介します。

Donald C. McMillan. The systemic inflammation-based Glasgow Prognostic Score: A decade of experience in patients with cancer. Cancer Treatment Reviews, http://dx.doi.org/10.1016/j.ctrv.2012.08.003

GPSはCRP1mg/dlとアルブミン3.5mg/dlをカットオフの数値として、0-2点と採点する簡単なスコアリング方式です。modifiedGPSではCRP陰性でアルブミン3.5mg/dlのことは稀のため、この項目がなくなっています。

結果ですが、がん患者でGPS/mGPSの得点が高いほど、体重減少、筋肉量減少、機能低下、併存疾患増加、炎症性サイトカイン高値、治療の合併症を認めました。GPS/mGPSによる慢性炎症の存在は、がん患者の予後と明らかに関連していました。

GPS/mGPSは悪液質の指標の1つと考えます。抄録の最後にもありますが、がん以外の疾患でもGPS/mGPSが予後指標として使用できるかどうかが興味深いです。おそらく悪液質・慢性炎症性疾患に関しては当てはまると思いますが、カットオフ値が同じでよいのかどうかはわかりません。





The Glasgow Prognostic Score (GPS)Points allocated
C-Reactive protein ⩾10 mg/l and albumin ⩾35 g/l0
C-Reactive protein 10mg/l以上1
Albumin 35g/dl以下
1
C-Reactive protein 10mg/l以上かつAlbumin 35g/dl以下
2

The modified Glasgow Prognostic Score (mGPS)
C-Reactive protein ⩽ 10 mg/l and albumin ⩾35 g/l0
C-Reactive protein 10mg/l以上1
C-Reactive protein 10mg/l以上かつAlbumin 35g/dl以下
2

Summary

Since the initial work, a decade ago that the combination of C-reactive protein and albumin, the Glasgow Prognostic Score (GPS), had independent prognostic value in patients with cancer, there have been more than 60 studies (>30,000 patients) that have examined and validated the use of the GPS or the modified GPS (mGPS) in a variety of cancer scenarios. The present review provides a concise overview of these studies and comments on the current and future clinical utility of this simple objective systemic inflammation-based score. The GPS/mGPS had independent prognostic value in (a) unselected cohorts (4 studies, >19,400 patients) (b) operable disease (28 studies, >8,000 patients) (c) chemo/radiotherapy (11 studies, >1500 patients) (d) inoperable disease (11 studies, >2,000 patients). Association studies (15 studies, >2,000 patients) pointed to an increased GPS/mGPS being associated with increased weight and muscle loss, poor performance status, increased comorbidity, increased pro-inflammatory and angiogenic cytokines and complications on treatment. These studies have originated from 13 different countries, in particular the UK and Japan. A chronic systemic inflammatory response, as evidenced by the GPS/mGPS, is clearly implicated in the prognosis of patients with cancer in a variety of clinical scenarios. The GPS/mGPS is the most extensively validated of the systemic inflammation-based prognostic scores and therefore may be used in the routine clinical assessment of patients with cancer. It not only identifies patients at risk but also provides a well defined therapeutic target for future clinical trials. It remains to be determined whether the GPS has prognostic value in other disease states.

2012年9月18日火曜日

サルコペニア肥満、筋力とQOL

サルコペニア肥満、筋力とQOLの関連を高齢女性でみた論文を紹介します。

Silva Neto LS, Karnikowiski MG, Tavares AB, Lima RM. Association between sarcopenia, sarcopenic obesity, muscle strength and quality of life variables in elderly women. Rev Bras Fisioter. 2012 Sep 13. pii: S1413-35552012005000044. [Epub ahead of print]

リサーチクエスチョンは以下の通りです。

P:高齢女性で(56人)
E:サルコペニア(肥満)を認めると
C:サルコペニア(肥満)を認めない場合と比較して
O:QOLが低い
D:横断研究

サルコペニアの評価はDEXAで行っています。筋力は握力で、QOLはSF-36で評価しています。結果ですが、56人中サルコペニア肥満を11人、サルコペニア肥満を13人に認めました。サルコペニア(肥満)の有無でQOLに有意差はありませんでした。

一方、握力はSF-36の8項目中6項目で有意な正の相関を認めました。以上より、握力とQOLは関連するが、サルコペニア(肥満)とQOLは関連しないという結論です。

対象が56人と少なく、サルコペニアの方も13人しかいません。また、QOLは疾患特異的QOL(サルコペニアでは聞いたことがありませんが…)ではなく全般的QOLで評価しています。これらより有意差が出にくいため、サルコペニア(肥満)とQOLに明らかな関連は認めなかったという解釈が無難かと思います。

Abstract

OBJECTIVE:

To investigate the association between sarcopenia, sarcopenic obesity and muscle strength and variables related to quality of life in elderly women.

METHOD:

The sample consisted of 56 female volunteers who underwent body composition analysis (BMI and x-ray absorptiometry dual-energy DXA). Handgrip strength was measured using a Jamar dynamometer. We used the SF-36 health questionnaire to analyze quality of life. The data were analyzed with descriptive statistics and the Pearson correlation coefficient; SPSS 15.0 was used to perform the statistical analysis.

RESULTS:

The mean age of the subjects was 64.92±5.74 years; of the 56 volunteers evaluated, 19.64% (n=11) were classified as sarcopenic obese and 45 (80.36%) were not. Thirteen volunteers (23.21%) were classified as sarcopenic while 43 (76.78%) were not. Although there were no statistically significant differences between the studied parameters and quality of life among those with sarcopenia or sarcopenic obesity, the values were lower in affected individuals. Interestingly, handgrip strength correlated positively and significantly with all of the SF-36 dimensions except VIT (p=0.08) and SM (p=0.25).

Conclusions:
Seeing that handgrip strength is a determining factor in quality of life aspects in this population, the screening and identification of small functional changes using simple clinical measures may facilitate early intervention and help prevent disability. In contrast, neither sarcopenia nor sarcopenic obesity were found to be associated with quality of life.

サルコペニアの栄養療法:系統的レビュー

サルコペニアの高齢者の筋肉量に対する栄養療法の効果をみた系統的レビュー論文を紹介します。

Malafarina V, Uriz-Otano F, Iniesta R, Gil-Guerrero L. Effectiveness of Nutritional Supplementation on Muscle Mass in Treatment of Sarcopenia in Old Age: A Systematic Review. J Am Med Dir Assoc. 2012 Sep 12. pii: S1525-8610(12)00245-9. doi: 10.1016/j.jamda.2012.08.001. [Epub ahead of print]

リサーチクエスチョンは以下の通りです。

P:サルコペニアの高齢者に
I:栄養療法を行うと
C:栄養療法を行わない場合と比較して
O:筋肉量が改善する
D:系統的レビュー

抄録しか読んでいないため、詳細な栄養療法の内容は不明ですが、17論文の系統的レビューで、栄養療法によってBIAおよびDEXAによる筋肉量改善が得られたという結果です。また、筋力改善も得られました。運動療法と併用するとより改善効果が高まります。

以上より、サルコペニアの高齢者に対する栄養療法は有用という結論です。主な限界として、長期のアドヒアランスが不明という点があります。健康的な食事、活発な生活、有酸素運動がhealthy agingの基礎としています。

系統的レビューでサルコペニアの栄養療法の有用性が検証されたことは、意味があります。悪液質よりも栄養療法のエビデンスは高いです。ただ、栄養療法の内容、この論文の質がわからないため、素直に信じてよいのか、どんな栄養療法を行えばよいのかは不明です。

Abstract

BACKGROUND:

Much interest has been focused on nutritional treatment of sarcopenia, loss of muscle mass and performance associated to aging; however, its benefits are unclear.

OBJECTIVE:

To analyze the relevance of nutritional treatment of sarcopenia and assess the effects of supplementation on muscle mass and function within the aged population.

METHODS:

We searched Medline and the Cochrane Library for controlled trials published between 1991 and 2012. We have assessed the quality, type of intervention, the cohort used, the way muscle mass was measured, and the outcomes of the various studies.

RESULTS:

We have included 17 studies, with a total of 1287 patients, aged between 65 and 85 on average. An improvement in muscle mass was proven, whether measured with bioelectrical impedance analysis or dual energy x-ray absorptiometry, and an improvement in strength was also proven.

CONCLUSION:

Nutritional supplementation is effective in the treatment of sarcopenia in old age, and its positive effects increase when associated with physical exercise. The main limitation of this treatment is lack of long-term adherence. A healthy diet associated with a physically active lifestyle and possibly with aerobic exercise are the basis of healthy aging, which is the aim of all doctors treating aged people must seek.

よくわかる嚥下障害改訂第3版

藤島一郎編著:よくわかる嚥下障害改訂第3版、永井書店を紹介します。

http://www.nagaishoten.co.jp/search/book/2012/978-4-8159-1902-3.html

第2版までは読んでいましたが今回、改訂第3版が出版されました。第2版と比べて主要な目次は同じですが、エビデンスのある最新情報がきちんと掲載されていることに感心しました。内容的にはかなりレベルが高いのですが、タイトル通りわかりやすく記載されています。

症例が多いことやコラム(Coffee Break、ミニ知識)が多いことも、書籍を読みやすくわかりやすくしています。質・量ともに嚥下障害の教科書として最適だと考えます。嚥下障害の最新の知識と技術を習得するために、多くの方に読んでいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

■目次■

1 嚥下のメカニズム
 I.嚥下の運動メカニズム
 II.嚥下の中枢機構

2 嚥下障害の原因と疾患
 I.器質性嚥下障害
 II.運動障害性嚥下障害
 III.機能性嚥下障害

3 摂食・嚥下機能の発達と衰退
 I.形態変化とその特徴
 II.機能変化とその特徴

4 球麻痺と偽性球麻痺の神経症候
 I.「球麻痺」と「偽性球麻痺」の用語の定義
 II.球麻痺による嚥下障害
 III.偽性球麻痺による嚥下障害
 IV.特殊例について

5 嚥下障害と呼吸器疾患
 I.誤嚥から呼吸器疾患へ
 II.誤嚥と疾患
 III.嚥下性呼吸器疾患の診断
 IV.対策および治療法

6 症状とスクリーニング
 I.嚥下障害の症状
 II.問診
 III.身体所見
 IV.摂食場面の観察
 V.スクリーニング検査、モニター
 VI.外来や病棟ではどのようにスクリーニングを進めるか
 VII.スクリーニング評価と診察は無駄な検査を減らせるか

7 評価と診断
 I.X線造影検査
 II.内視鏡検査
 III.嚥下圧検査
 IV.筋電図検査
 V.その他の嚥下機能検査

8 歯科口腔の問題とケア
 I.口唇の機能
 II.咀嚼機能
 III.発音器官としての口腔
 IV.唾液分泌
 V.味覚
 VI.嗅覚
 VII.歯科の対応
 VIII.口腔ケア
 IX.嚥下補助装置

9 重症度と誤嚥の分類
 I.重症度分類
 II.誤嚥の分類

10 リハビリテーション
 1. 治療計画の過程とゴールの設定
 2. 基礎訓練
 3. 摂食・嚥下訓練の実際
 4. 摂食・嚥下障害と呼吸理学療法
 5. チームアプローチ
 6. 看護と介護

11 外科治療
 1. 嚥下障害の外科治療
 2. 口腔癌・咽頭癌治療後の嚥下障害-治療法の理解と病態を踏まえた対応-

12 栄養管理─代替栄養法
 I.栄養状態の管理
 II.代替栄養法
 III.症例提示

13 嚥下障害治療の歴史
 1. 世界における嚥下障害の歴史と流れ-私の歩んだ道と経験から-
 2. 本邦における耳鼻咽喉科領域の研究と臨床

14 用語

15 文献紹介

2012年9月15日土曜日

サルコペニアと骨密度減少

サルコペニアは骨密度減少と関連するという論文を紹介します。

Wu CH, Yang KC, Chang HH, Yen JF, Tsai KS, Huang KC. Sarcopenia is Related to Increased Risk for Low Bone Mineral Density. J Clin Densitom. 2012 Sep 10. pii: S1094-6950(12)00122-9. doi: 10.1016/j.jocd.2012.07.010. [Epub ahead of print]

対象は台湾で在宅生活をしている40-85歳の600人です。骨密度は大腿骨頸部と腰椎をDEXAで、筋肉量はBIAで評価しています。台湾の先行研究で、四肢骨格筋量が男性8.87kg/m2以下、女性6.42kg/m2の場合にサルコペニアと判定しています。

結果ですが、サルコペニアの高齢者では大腿骨頸部と腰椎の骨密度減少を認めることが多かったです。性別、年齢別に検討しても女性ではサルコペニアが独立した危険因子でした。以上より、サルコペニアでは骨密度減少のリスクが高いという結論です。

筋肉量と骨量に関連を認めることは、いくつもの研究で検証されています。リスク因子や介入方法も一部共通しますし、どちらか一方を認めた場合にはもう一方も存在する可能性が高いと考えて、評価、対応すべきかと思います。

Abstract

Lean body mass is positively correlated with bone mineral density (BMD). The association between sarcopenia and BMD is less studied. The aim of the study is to investigate the association between sarcopenia and abnormal BMD. A total of 600 community residents aged 40-85yr (mean=63.63±10.12) from Taipei, Taiwan were included. Abnormal and normal BMD groups were categorized by T-score of femoral neck and lumbar spine (L2-L4) measured by dual-energy X-ray absorptiometry. Skeletal muscle mass (SM) index (SMI) was obtained from SM divided by height squared using bioelectrical impedance analysis (BIA) method. Sarcopenia was defined as SMI less than 8.87kg/m(2) in men and 6.42kg/m(2) in women according to previous Taiwanese sarcopenia study. The association between BMD groups and sarcopenia was examined using binary logistic regression analyses after controlling potential confounders. Subjects with sarcopenia were at higher risk for low BMD (odds ratio (OR) = 1.59, 95% confidence interval (CI)=1.06-2.39 for femoral neck BMD and OR=1.72, 95% CI=1.09-2.72 for lumbar BMD) compared with the nonsarcopenia group. Even in different gender groups with age categorized, sarcopenia was still an important independent factor in female group. The least square (LS) means of BMD of femoral neck and lumbar spine were significantly lower in sarcopenia group. The risk of low BMD increased significantly with sarcopenia.

仕事と人生を楽しむために必要なこと

梶山寿子著、仕事と人生を楽しむために必要なこと―チェンジメーカー21人に学ぶ「幸福な働き方」、PHP研究所を紹介します。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-77940-9

あとがきより、必要と思われそうなことを引用します。以下、引用です。

仕事のやりがい。人の役に立ち、社会に貢献しているという充実感。ともに働く仲間とのつながり。仕事を通じて成長できたという達成感。
そんな無形の”報酬”こそが、明日を生きる希望やエネルギーとなり、私たちを幸せにするのではないか。

以上、引用です。医療系の仕事に従事していると、このような無形の報酬を比較的得やすいと感じています。この点ではよいのですが、一方でこの書籍に出てくるようなチェンジメーカーとして活躍している医療人は少数かと思います。

私自身、この書籍に登場するチェンジメーカーのような大きな変革を起こすことは難しいです。ただ、自分にできる範囲でできるところから少しずつ、さざ波程度でもリハ栄養で変革を起こしていければと考えています。

目次
はじめに
第1章 愛のある働き方、愛のある人生 1 「仕事をたのしむ」ということ 2 「コウノトリ育む農法」を広め、命を守る 3 ソーシャル・デザインという道に「愛」を見つける
第2章 「これが自分のやるべきこと」だと信じて 1 知的障害者とつくるワインと「働く幸せ」 2 投資というお金の力で社会を変える 3 「アイガモ農法」でアジアの暮らしを守る 
第3章 目の前のことに熱中する 1 気がつけば、ふるさと活性のカリスマに  2 オーガニックコットンの普及という「気持ちのいい仕事」 3 「何もない」北国の山村で、奇跡の町おこし 
第4章 新しい時代の「幸せな働き方」を見つける 1 ほしいのは心を満たしてくれるもの  2 「世の中を変えたい」。そう思うから強くなれる 3 「自分ならできる!」が不可能を可能にする 4 新たな時代の幸福論「MERRY主義」
第5章 社会起業家という生き方 1 誰もがチェンジメーカーになる時代  2 介護保険制度のモデルをつくる 3 有機野菜宅配のパイオニア 4 病児保育を広げ、働く親をサポートする
第6章 組織に留まるチェンジメーカー 1 公務員と社会起業家。「雨水博士」ふたつの顔 2 会社員だからこそできることを探す 3 授業をアートに変える型破りな公立小教員
第7章 お金より大事なもの 1 さらばマイクロソフト、さらばマッキンゼー  2 みんなが幸せになる道具づくりを 3 チャーミングな広告で、平和構築をめざす
おわりに

2012年9月13日木曜日

地域リハビリテーション7巻9号

地域リハビリテーション7巻9号で、「リハビリテーションと栄養」の特集が組まれています。

https://www.miwapubl.com/products/detail/1373

内容は以下の通りです。

    リハビリテーション患者に対する栄養ケア / 百崎 良
    急性期におけるリハビリテーションと栄養 / 高橋浩平,他
    回復期における栄養管理 / 西岡心大,他
    高齢者における運動と栄養 / 若林秀隆
    がん患者における栄養管理 / 稲野利美
    小児のリハビリテーションにおける栄養 / 高増哲也
    NST活動におけるリハビリテーションへの栄養介入の実際 / 工藤美香
    在宅医療現場での栄養管理 / 川上純子,他

当初私は執筆予定ではなかったのですが結局、執筆させていただくことになりました。リハの雑誌で栄養の特集を組んでいただけることは、とてもありがたいです。地域リハに関わる多くの方に読んでいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

理学療法ジャーナル2012年9月号

理学療法ジャーナル2012年9月号に、入門講座として「栄養と理学療法」というテーマで執筆させていただきました。

http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=34799

9月号の特集が心疾患に対する理学療法の新たな展開であり、慢性心不全・悪液質による低栄養と理学療法に関する記載もしていますので、ちょうどタイムリーな号に掲載していただいたと思っています。多くの理学療法士に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

第14回Met3・NST研究会



10月20日(土)の13時30分から17時30分まで、日本消防会館ニッショーホールで、第14回Met3・NST研究会が開催されます。案内ビラと申し込み用紙は下記のリンクから入手可能です。

 今回は一般演題のほか、明日につながるリハビリテーションと栄養の輪というシンポジウムがあります。特別講演はリハビリテーション栄養とサルコペニア~栄養ケアがリハを変える~というテーマで私が担当させていただきます。皆様のご参加のほどよろしくお願い申し上げます。

 https://www.sugarsync.com/pf/D6162998_9600408_882300

実践で身につく!摂食・嚥下障害へのアプローチ

小山珠美、芳村直美監修、実践で身につく!摂食・嚥下障害へのアプローチ、学研メディカル秀潤社を紹介します。

http://gakken-mesh.jp/book/detail/9784780910834.html

以前紹介させていただいた「ビジュアルでわかる早期経口摂取実践ガイド」との同時執筆で、本当に大変だったことと思いますが、「実践で身につく!摂食・嚥下障害へのアプローチ」も素晴らしい書籍です。

総論として最初に食べることの意義と全身活動との関係について記載があり、その後すぐに11事例の取り組みが紹介されています。各症例のアセスメントとプランが詳細かつわかりやすく、図や写真を多用することで、こうやって実践すればよいということがより明確に伝わります。

また、思いやりと情熱がこもった書籍です。思いやりや情熱がなくても摂食・嚥下に関わることは不可能ではありませんが、プロセスとアウトカムには大差が生じると考えます。知識やスキルももちろん大事ですが、思いやりと情熱を持って取り組むことの大切さも伝わる書籍です。

内容的には経験数年程度の看護師を意識して、かなりわかりやすく執筆されたように感じます。ただ、経験年数を問わず、職種を問わず、摂食・嚥下の臨床に関わる医療・介護職種にお勧めできる書籍です。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

目次

総論 食べることの意義と全身活動との関係
人間として口から食べることの意義
口から食べることと全身活動との調和
食べることと脳機能との関係

Part1 事例で身につける摂食・嚥下障害へのアプローチ
胃瘻造設を宣告された誤嚥性肺炎の高齢患者
90歳の重症肺炎患者
窒息から呼吸不全をきたした統合失調症患者 ほか

Part2 摂食・嚥下障害ケアの実践に必要な基本知識と援助技術
摂食・嚥下メカニズムの理解
摂食・嚥下障害の原因・症状・合併症・悪化誘因
摂食・嚥下機能評価 ほか

ESPEN参加感想最終日

ESPEN最終日は、サルコペニアのセッションに参加しました。

Sarcopenia: does size matter?
・Geriatrics and beyond
・Function is the goal
・Nutiritional determinants of mobility

内容
①Geriatrics and beyond
・ヨーロッパでは障害や施設入所への恐怖が、死への恐怖と同様に大きい。EWGSOPのサルコペニア定義は、障害を予防するために作られた。

・いくつかのコンセンサスによるサルコペニアの定義があるが、いずれも症候群である、筋肉量だけではない、身体機能を含む、悪液質とは異なるという点で一致している。一方、アウトカム、カットオフ値、筋肉内脂肪、サルコペニア肥満、虚弱との関連に関してはまだディスカッションが必要である。

・サルコペニアと身体的な虚弱(Frailty)はほぼ同義に近い。

・出生時体重が少ないとサルコペニアになりやすいという報告がある。

②Function is the goal
・50歳以降は年に1-2%筋肉量が減少し、80歳以降では11-50%がサルコペニア。

・筋力低下は筋肉量低下よりも速度が速く、筋肉量が増えなくても筋力は増えることがある(ABC研究)。薬剤で筋肉量が増加しても、筋力が増加するとは限らない。

・サルコペニアと関連するのは、アナボリック抵抗性、アポトーシス、軽度の炎症、筋肉内脂肪、神経の変化、筋線維の変化、血流減少、栄養、参加ストレス、遺伝など。

・治療は身体活動、筋トレ、カロリー制限(人でのエビデンスはないが)、ホルモン、抗炎症薬、抗酸化。蛋白は1.2g/kg。臥床で必須アミノ酸による筋蛋白合成が減少する。有酸素運動でアナボリック抵抗性が改善する。筋トレ+適切なエネルギー・蛋白摂取が最も有効か。

・ビタミンE、セレン、カロテノイドが低いと筋力が低いというデータはあるが、これらの介入効果は不明。

・サルコペニア肥満の場合、体重減少は生命予後不良と関連するので、どこまで体重を減少させるかは課題。過栄養から軽度肥満のほうが死亡率が低い。筋肉量・筋力増加は必要であるが。

③Nutiritional determinants of mobility
・不適切なエネルギー・蛋白摂取は、筋力、身体機能、生命予後不良と関連する。蛋白摂取量が多いと筋肉量減少が少ない。

・アルツハイマー病でも、栄養状態が悪いと身体機能が低下しやすい。

・ビタミンD血中濃度が身体機能と関連。施設入所者の転倒予防に有用であるが、高容量の投与で転倒増加の報告もある。一方、ビタミンD血中濃度が高いと死亡率が高いという報告もある。

・蛋白質のパルス投与(1回の食事で必要量の70-80%の蛋白質を投与)は賛否両論。

・ビタミンE血中濃度が高いほうが、大腿骨頸部骨折後の回復がよい。ただし、介入効果は不明。

・重炭酸の投与で筋力が増加するというRCTがある。重炭酸の血中濃度が低すぎても、高すぎても身体機能は低くなる。適度な血中濃度が重要。

・地中海食や果物・野菜の多い食事が有効かどうかの介入研究が望まれる。観察研究は多いが、これから介入研究にシフトすべきである。

感想
・大半は知っている研究結果であり、PubMedとGoogle Scholarのアラート機能を活用すれば、論文になっているものに関してはUp to dateな情報を入手できることを再確認できました。

・栄養療法として、n3脂肪酸以外にもビタミンD、ビタミンE、重炭酸、セレンが有用な可能性がありますが、やはり適切なエネルギー・蛋白質(1.2g/kg)の投与が最も重要です。

・EWGSOPのサルコペニア定義は、障害予防だけでなく、障害評価、治療(リハ栄養)にも有用ですが、障害になった後の話はありませんでした。やはり老年医学としてのサルコペニアの話がほとんどであり、障害者のサルコペニア・リハ栄養の話はありませんでした。

・栄養療法もRCTで検証されないといけないという雰囲気がかなりありました。リハ栄養に関しては当面、観察研究の数を増やしていくことでよいと思いますが、いずれは介入研究も行っていかなければいけないと改めて感じました。

高齢者大腸がんのPrehabilitation

Colorectal Cancer in the Elderlyという書籍の中に、Prehabilitationというチャプターがあります。

書籍ページ
http://www.springerlink.com/content/978-3-642-29882-0/#section=1122631&page=1

Prehabilitationページ
http://www.springerlink.com/content/g24v821511466537/

一部のページは書籍ページから見ることができます。エビデンスはまだ不十分ですが、待機的手術の術前にプレハビリテーションを行うことが書籍の中に含まれていることは嬉しいですね。リハ栄養がもっと関与できる領域の1つだと考えています。

2012年9月10日月曜日

ESPEN参加感想2日目

9月9日のESPENに参加した感想を記載します。

①Fatty muscles and metabolic consequences
・Epidemology of myosteatosis
・Physiological consequences of  myosteatosis
・Adipose tissue-muscle crosstalk in insulin resistance

内容
・筋肉への脂肪蓄積には、皮下脂肪、筋細胞外、筋細胞内(異所性脂肪蓄積)の3種類があるが、ここで問題としているのは筋細胞内脂肪蓄積である。

・検査方法は、CT、MRI、MRS(MRスペクトロスコピー)、生検がある。筋肉が減衰(attenuation)すると、例えばCTなら濃度が異なってくるので、Leanな筋肉とFattyな筋肉を分類できる。

・加齢に伴い筋細胞内脂肪蓄積は増加する。筋肉量がそれほど減少しなくても増加することがある。肥満の場合に増加する。筋力低下、移動能力低下、在宅の場合入院増加と関連している。

・肥満患者の筋細胞内脂肪蓄積に対して、減量を目指した食事療法と運動療法(筋トレ含め)の併用によって、脂肪減少(全身および筋細胞内)と筋肉量・筋力増加は可能である。

・筋細胞内脂肪蓄積とインスリン感受性は負の関連がある。しかし、アスリートはインスリン感受性が高く筋細胞内脂肪蓄積も多いパラドックスとなっている。インスリン抵抗性があると、ミトコンドリアの機能が低下しやすいために筋細胞内に脂肪が蓄積しやすい。

感想
・Muscle quality(筋肉の質)という言葉はあまり出てきませんでしたが結局、このことに関する内容だったと感じています。

・筋肉量と筋力には相関を認めますが、その相関は強いとは言えません。その原因の1つに筋細胞内脂肪蓄積があるといえます。

・ただし、筋細胞内脂肪蓄積であれ筋肉量減少であれ、治療は食事療法と運動療法の併用であり、大差はないと思います。食事の基本は高蛋白、運動の基本は持久力と筋力トレーニングの併用でしょう。

②ポスター発表
 
私は廃用症候群の予後と栄養状態に関する前向きコホート研究を発表しました。発表と言っても、12時30分から14時の間立っているだけで、特にプレゼンの時間はありませんでした。私は真面目に立っていましたが、貼り逃げしている方も少なくないようでした。

声をかけてくださったのは、すべて日本からの参加者でした。「廃用症候群」という概念はアメリカで生まれて日本に伝わり、リハの臨床現場で普及しましたが、実は欧米ではあまり普及していません。ICUAWの発表であれば、より関心を持たれたかもしれません。

国際学会ですべて日本の方と日本語でディスカッションするのもどうかと思いますが、何人かの高名な先生方と御挨拶してディスカッションすることができたのは、有意義でした。アルツハイマー病高齢者の栄養状態と口腔機能に関する発表に関しては、いろいろ質問させていただきました。

リハ関連の発表はほとんどありませんが、脳卒中、大腿骨頸部骨折、COPD、CKD、パーキンソン病の発表はありました。CKDstage3で8週間、高エネルギー・高蛋白の栄養剤を投与しても腎機能悪化はほとんどないという研究発表がありました。

つまり、回復期リハで患者がCKDの場合、低蛋白食にすべきと思われている方は少なくありませんが、8週間程度高蛋白食にしても腎機能に対する問題はあまりありません。むしろ筋肉量・筋力を増加するためには、「期間限定(2-3カ月程度、回復期リハの入院期間中)」で高蛋白にすべきです。

口演が全部で51、ポスターが全部で約600ですので、ほとんどがポスターでした。開催国のスペインをおさえて、日本からの発表が最も多かったのはやはり驚きでした。緊張しましたが無事終わって、かなりほっとしています。

③Sir David Cuthbertson Lecture
本来の講師予定だった方が体調不良で講演できなくなり、1週間前に急遽 、Y.Boirie先生が担当することになったそうです。
Language of protein nutrition - how dose food speak to our muscles

内容
・Cuthbertson先生は、1930年代に運動と食事摂取のタイミングに関する論文を執筆している。1940年代に侵襲下での筋蛋白分解・合成に関する論文を執筆している。

・筋肉は1日2%(100g)、肝臓は1日25%、腸管は1日40%が分解して入れ替わっている。

・侵襲時、不活動時などにアナボリック抵抗性を認め、筋蛋白合成が難しくなる。Lipotoxicity(脂肪毒性、多量の脂肪によって起こる膵β細胞障害)のために、肥満患者では筋蛋白合成が低下する可能性がある。

・抗酸化、抗炎症(n3脂肪酸)で筋蛋白合成が増加するというエビデンスもある(賛否両論ですが)。高ロイシン、蛋白のPulse feeding(1回の食事で1日蛋白必要量の7-8割を投与)で筋蛋白合成が増加するエビデンスがある。

・ビタミンD欠乏の場合には、ビタミンD投与で筋蛋白合成が増える。

・筋蛋白合成の対策としては、栄養、運動、ホルモン、薬物の併用がベスト。

感想
・Cuthbertson先生の研究から約80年経過しても、リハ領域での運動と食事摂取のタイミングに関する研究や実践は少ないです。日本にリハが本格的に広まり始めたのが約50年前とはいえ、この50年間、リハ栄養・代謝に関する研究はあまりにも少ないと感じます。

・先人の研究や歴史から多くのことを学び、リハ栄養の臨床・研究の質をより高めていくことの重要性を再認識しました。道は遠いですが…。

2012年9月9日日曜日

ESPEN参加感想初日

昨日からESPENに参加しています。タイミング的にずれていますが、初日の参加感想を記載します。特にネスレのシンポジウムSynergy in Motion: combining nutrition and exercise for optimal physical functionに参加した感想です。

内容紹介

 ①The role of nutrition in optimizing strength and function
サルコペニアでは低栄養と不活動(Inactivity)の評価、治療、予防が重要。

加齢による食欲不振はサルコペニアと関連。

全体的な低栄養と同時に部分的な低栄養(蛋白、ビタミンD、亜鉛)も重要。

サルコペニアの原因は多岐にわたるが、食欲不振、ビタミンD欠乏、廃用は介入可能。

10日間の不活動で蛋白合成は30%低下するが、蛋白投与量を増やすことで合成低下を軽減できる。

蛋白摂取量が多いとFrailtyの割合が少ない。

蛋白摂取のwhat kind, how much, whenのエビデンスは少ない。

身体活動、蛋白摂取(1g/kg/day以上)、ビタミンD欠乏改善でサルコペニアを予防する。
 

②Functional decline and nutritional status in the older adult
 
Disability Pathway

Non frail, prefrail, frail, disability IADL, disability ADL5段階。より前の段階で予防、早期発見、早期介入を行う。

FRADEA研究の紹介。

BMI20未満の群でFrailtyが最も多い。少ないのは25-3030-35の群。

BMI20未満の群で死亡率が最も高い。低いのは35以上の群。


③Physical activity programs for the older adult: Success factors
 
Poor Agingに対する不活動の影響は大きいのでは。

アメリカの女性で中等度以上の運動を行っている時間は1日当たり、6-11歳のみ70分。その他の年齢はすべて5-20分程度と不足。一方、テレビ視聴は13時間20分。

健康・長寿には、持久力トレーニング、レジスタンストレーニング、バランストレーニングが重要。

3回、11時間、6ヶ月の運動療法(上記3種)+栄養剤(糖質+蛋白質)のRCTを実施中。

個人の運動継続には、楽しくやることが最も重要。他には行動変容のステージを利用、希望する運動にする、バリアを理解することも重要。


以下、参加した感想です。思いついたことの箇条書きですみません。

・どの発表も基本的にサイエンス・エビデンス(英語の原著論文)に基づいている。エビデンスがないものは、エキスパートオピニオンとして述べている。エキスパートオピニオンではなく、エビデンスとして語れることが重要。

・栄養の学会でこれだけ運動に関する内容が多いことに感心した。JSPENでもPTOTSTNST専門療法士が少数ながら誕生し、今年は運動やリハと栄養に関する発表も増えたが、ESPENに比べたら全く不十分。

・一方、リハの学会で栄養に関する内容は、国際学会、国内学会どちらも少ない(~ない)。リハの世界における栄養への関心の低さと、ESPENでの運動への関心の高さは対照的ともいえる。

・そういった背景もあり、今回の発表はいずれも虚弱高齢者が主な対象であり、障害者が主な対象ではなかった。障害者にならないように運動と栄養で介入しようという内容ばかりであり、障害者になった場合の運動と栄養の介入をどうするかという視点はなかった。

・原因として、障害者に対する運動と栄養の介入のエビデンスが乏しいことがある。これは虚弱高齢者と比較すると、対象が多彩(個別性が高い)ために、臨床研究を行いにくいことが要因の1つであろう。

・健常ボランティアでの廃用研究と、患者での侵襲研究はそれぞれかなり行われている。しかし、高齢者で侵襲が加わって廃用となった場合の研究はあまり行われていない。多くの要因が絡んでいて、研究対象としにくいためか。廃用症候群の診断基準がないためか。

・発表者のエビデンスを中心にプレゼンすることが多いので仕方ないかもしれないが、日本発のエビデンスの紹介はほとんどなかった。ESPENの演題発表は最多にもかかわらず。英語で学会発表はしても英語で論文を執筆していないことが私も含めて疑われる。

・エビデンスがなければ(エキスパートオピニオンであれば)、こういった学会で報告されることはない。リハ栄養のエビデンスは日本で作り、日本から発信していくことが必要。

・発表のレベルはもちろんどれも高いが、日本でも質の高い発表はあり、それと比べて特別にレベルが高いということはなかった。日本の学会でも参加するプログラムを選べば、大差のないレベルで学習は可能と考える(11月の第2回日本リハビリテーション栄養研究会はそうあってほしい)。

・全体の発表の質は日本のほうが断然低い。しかし、初学者~初心者が発表して発表経験から学習できるというメリットもあるので、発表の質の低いことが一概に悪いわけではない。全国学会と地方会のすみ分けは必要かもしれないが。

・リハの臨床現場でのサルコペニアスクリーニング方法を決めて、予防や治療でリハ栄養介入すべき対象を決める簡単なフローチャートが必要。現状ではEWGSOPのサルコペニア診断とMNA-SFを初期評価時に行い、前サルコペニア、サルコペニア、重症サルコペニアの場合のリハ栄養介入内容を、低栄養の有無で決めるのがよさそう(サルコペニアがない場合も含めて低栄養の有無で4×2or3)。

・人に運動指導する前に、まず自分が日常的に運動習慣をつけることが大事(仕事の多忙を理由に運動を犠牲にしているのは、サルコペニア肥満のリスク群かも)。

・人に栄養指導する前に、まず自分が適切な飲食習慣をつけることが大事(仕事の多忙さを理由に適切な飲食を行わないのは、サルコペニア肥満のリスク群かも)。

2012年9月4日火曜日

低栄養と転倒の関連

低栄養と転倒の関連を高齢者の入所施設で調査した論文を紹介します。

Jacques Neyens, et al: Malnutrition is associated with an increased risk of falls and impaired activity in elderly patients in Dutch residential long-term care (LTC): A cross-sectional study. Archives of Gerontology and Geriatrics, http://dx.doi.org/10.1016/j.archger.2012.08.005

リサーチクエスチョンは以下の通りです。

P:施設入所の高齢者で
E:低栄養を認めると
C:低栄養を認めない場合と比較して
O:転倒リスクが高い
D:横断研究

結果ですが、6701人の施設入所高齢者のうち、転倒は9.8%、低栄養は22.8%に認めました。低栄養群では、低栄養でない群と比較して有意に転倒リスクが高く、不活動でした。多変量解析では低栄養と転倒に独立した関連を認めました。

また低栄養群で栄養介入されている場合、栄養介入されていない場合と比較して転倒者の割合が少ない傾向にありました(p = 0.056)。以上より、低栄養は転倒と関連し、低栄養高齢者への栄養介入は転倒割合を少なくする可能性があるという結論です。

低栄養も転倒のリスク因子の1つではと前から思っていましたが、その可能性がより高くなりました。ただし、横断研究ですので、栄養介入が実際に転倒を少なくするかどうかに関しては、前向き研究での検証が必要です。転倒のリスク因子は多いので、検証は難しいかもしれませんが。

Abstract

Purpose of the study

Falls are frequent in LTC, with considerable health consequences. This study explores the relationship between malnutrition, activity, and falls in Dutch LTC residents and the influence of nutritional intervention on this relationship.

Design and methods

A secondary data analysis of a cross-sectional, multi-center point prevalence and incidence measurement. Setting: 81 LTC settings in The Netherlands. Participants: 6.701 LTC residents aged 65 and older; mean age 84; 70% female. Prevalence measurements of nutritional status and activity, and a 30 days incidence measurement of falls.

Results

Of all participating residents, 9.8% sustained at least one fall, and 22.8% was malnourished. Malnourished residents were more often a faller (odd ratio (OR) 1.78; p < 0.01) and inactive (OR 1.7, p < 0.01) than non-malnourished residents. Multivariate analysis confirmed the relation between malnutrition and fallers, without interference of activity. In the malnourished group with nutritional intervention, the percentage of fallers was lower than in the malnourished group without nutritional intervention (OR 0.738; p = 0.056).

Implications

Malnutrition is associated with an increased risk of being a faller and with impaired activity in Dutch LTC residents. Malnourished residents who receive nutritional intervention have a lower risk of being a faller.

在宅高齢障害者の口腔、嚥下、栄養、認知とADL

日本の在宅高齢障害者の口腔、嚥下、栄養、認知とADLの関係を調査した論文を紹介します。

Furuta M, Komiya-Nonaka M, Akifusa S, Shimazaki Y, Adachi M, Kinoshita T, Kikutani T, Yamashita Y. Interrelationship of oral health status, swallowing function, nutritional status, and cognitive ability with activities of daily living in Japanese elderly people receiving home care services due to physical disabilities. Community Dent Oral Epidemiol. 2012 Aug 30. doi: 10.1111/cdoe.12000. [Epub ahead of print]

対象は60歳以上の在宅高齢者で何らかの在宅サービスを受けている286人です。口腔(歯の数と義歯の有無)、嚥下(頸部聴診)、ADL(Barthel Index)、認知(CDR、臨床認知症尺度)、栄養(MNA-SF)を評価して、これらの関係をパス解析で検討しています。

パス解析については、下記HPを参照してください。多変量解析の1つで、横断研究でも変数の因果関係や相互関係を図に示せるようです。上の図が今回の研究結果のパス図です。

http://psy.isc.chubu.ac.jp/~oshiolab/teaching_folder/datakaiseki_folder/10_folder/da10_01.html

結果は、歯の本数と認知機能が義歯装着に影響していて、これらによる嚥下機能低下と認知機能低下が栄養状態に影響を与えています。低栄養、嚥下障害、認知機能低下が、ADLに影響を与えています。以上より、歯の維持と義歯装着が嚥下と栄養を介して、ADLの維持・改善につながる可能性があるという結論です。

パス解析といった高度な統計手法を使うと、横断研究であってもここまで言えるのですね。ただ私に取り扱える手法ではないので、統計の専門家に相談しないと実施できそうにありません。また、歯の維持と義歯装着が嚥下と栄養を介して、ADLの維持・改善につながるかは、前向き研究での検証が必要だと思います。

Abstract

OBJECTIVES:

Malnutrition and cognitive impairment lead to declines in activities of daily living (ADL). Nutritional status and cognitive ability have been shown to correlate with oral health status and swallowing function. However, the complex relationship among the factors that affect decline in ADL is not understood. We examined direct and indirect relationships among oral health status, swallowing function, nutritional status, cognitive ability, and ADL in Japanese elderly people living at home and receiving home care services because of physical disabilities.

METHODS:

Participants were 286 subjects aged 60 years and older (mean age, 84.5 ± 7.9 years) living at home and receiving home care services. Oral health status (the number of teeth and wearing dentures) was assessed, and swallowing function was examined using cervical auscultation. Additionally, ADL, cognitive ability, and nutritional status were assessed using the Barthel Index, the Clinical Dementia Rating Scale, and the Mini Nutritional Assessment-Short Form, respectively. Path analysis was used to test pathways from these factors to ADL.

RESULTS:

The mean number of teeth present in the participants was 8.6 ± 9.9 (edentates, 40.6%). Dysphagia, malnutrition, and severe cognitive impairment were found in 31.1%, 14.0%, and 21.3% of the participants, respectively. Path analysis indicated that poor oral health status and cognitive impairment had a direct effect on denture wearing, and the consequent dysphagia, in addition to cognitive impairment, was positively associated with malnutrition. Malnutrition as well as dysphagia and cognitive impairment directly limited ADL.

CONCLUSIONS:

A lower number of teeth are positively related to swallowing dysfunction, whereas denture wearing contributes to recovery of swallowing function. Dysphagia, cognitive impairment, and malnutrition directly and indirectly decreased ADL in elderly people living at home and receiving home nursing care. The findings suggest that preventing tooth loss and encouraging denture wearing when teeth are lost may indirectly contribute to maintaining or improving ADL, mediated by recovery of swallowing function and nutritional status.

認知症の大腿骨近位部骨折への多職種介入プログラム

認知症のある大腿骨近位部骨折患者にも多職種介入プログラムは予後を改善させるというRCTのサブグループ解析論文を紹介します。

Stenvall M, Berggren M, Lundström M, Gustafson Y, Olofsson B. A multidisciplinary intervention program improved the outcome after hip fracture for people with dementia--subgroup analyses of a randomized controlled trial. Arch Gerontol Geriatr. 2012 May-Jun;54(3):e284-9.

大腿骨近位部骨折患者の30-50%に認知症を認めます。多職種介入プログラムは、スタッフ教育、個別のケア計画とリハ、積極的予防、術後合併症(特にせん妄)の検索と治療で構成されています。CGA(comprehensive geriatric assessment)を用いています。

結果ですが、尿路感染症、栄養障害、せん妄、転倒といった術後合併症が有意に少ないという結果でした。4か月後の歩行能力、12ヶ月後のADLも有意に高かったです。以上より、認知症があっても多職種介入プログラムは有効であり、認知症を理由に除外すべきではないという結論です。

これは日本の回復期リハ病棟にも当てはまるかもしれません。認知症の有無で回復期リハ病棟の入院審査を左右させてはいけないというメッセージ・エビデンスのように聞こえます。ただ、サブグループ解析ですので、エビデンスレベルとしては十分とは言えませんが。

Abstract

BACKGROUND:

People with cognitive impairment and dementia have a poor outcome after a hip fracture surgery, about 30-50% of all those who sustain a hip fracture have dementia. Therefore the aim was to investigate whether a multidisciplinary postoperative intervention program could reduce postoperative complications and improve functional recovery among people with dementia.

METHODS:

A randomized controlled trial with subgroup analyses among patients with dementia. Sixty-four patients with femoral neck fracture, aged ≥70 years at Umeå University Hospital, Sweden. The intervention consisted of staff education, individualized care planning and rehabilitation, active prevention, detection and treatment of postoperative complications, especially delirium. The staff worked in teams to apply comprehensive geriatric assessment, management and rehabilitation, including a follow-up at 4 months postoperatively. The control group followed conventional postoperative routines.

RESULTS:

There were fewer postoperative complications in the intervention group such as urinary tract infections, p=0.001; nutritional problems, p=0.025; postoperative delirium, p=0.002; falls, p=0.006. At 4 months a larger proportion in the intervention group had regained their previous independent indoor walking ability performance, p=0.005. At 12 months a larger proportion in the intervention group had regained the activities of daily living (ADL) performance level they had before the fracture, p=0.027.

CONCLUSION:

This study demonstrates that patients with dementia who suffer a hip fracture can benefit from multidisciplinary geriatric assessment and rehabilitation and should not be excluded from rehabilitation programs.

食道がん術後のERAS

食道がん術後のERASに関する後ろ向きコホート研究を紹介します。

Cao S, Zhao G, Cui J, Dong Q, Qi S, Xin Y, Shen B, Guo Q. Fast-track rehabilitation program and conventional care after esophagectomy: a retrospective controlled cohort study. Support Care Cancer. 2012 Aug 30. [Epub ahead of print]

ERAS(早期リハプログラム)の内容は、早期離床・運動、硬膜外疼痛管理、静脈栄養での水分管理と経管栄養です。結果ですが、ERASのほうが入院期間の中央値と、術後1カ月以内の合併症発生割合が有意に低かったです。疼痛管理もERASのほうが満足度が高かったです。

以上より食道がん術後のERASは有用という結論です。ただ、RCTではなく後ろ向きコホート研究ですので、今後RCTでの検証は必要だろうと思います。従来型のケアがどの程度かによっても差は変わりますし。

Abstract

PURPOSE:

The purpose of this article is to evaluate fast-track rehabilitation program and conventional care after esophagectomy using a retrospective controlled cohort study in esophageal cancer patients.

METHODS:

Fifty-five patients underwent fast-track rehabilitation program and 57 patients underwent conventional care after esophagectomy. Fast-track rehabilitation program was performed to patients who have early movement, epidural analgesia control, fluid infusion volume control and enteral nutrition for early discharge. The other 57 patients underwent conventional care after esophagectomy. The average of hospital stay and complications were calculated in the patients between the two groups.

RESULTS:

The median length of hospital stay in the patients was significantly shorter after fast-track rehabilitation program than after conventional care (7.7 vs 14.8 day, P < 0.01). The percentage of patients who developed complications was significantly lower 30 day after fast-track rehabilitation program than after conventional care (29.1 vs 47.4 %, P < 0.05). 87.3 % in patients of the fast-track rehabilitation program group and 54.4 % in those of the conventional care group reported excellent to very good satisfaction with their pain control (P = 0.000).

CONCLUSIONS:

The fast-track rehabilitation program results in fewer complications, less postoperative pain, a reduction in the hospital length of stay, and quicker return to work and normal activities after esophagectomy.

サルコペニア、ダイナペニア、筋肉の質のレビュー

サルコペニア、ダイナペニア、筋肉の質に関するレビュー論文を紹介します。

Mitchell WK, Williams J, Atherton P, Larvin M, Lund J, Narici M. Sarcopenia, dynapenia, and the impact of advancing age on human skeletal muscle size and strength; a quantitative review. Front Physiol. 2012;3:260. Epub 2012 Jul 11.

下記のHPから全文PDFファイルを入手できます。

http://www.frontiersin.org/Striated_Muscle_Physiology/10.3389/fphys.2012.00260/abstract

サルコペニアよりもダイナペニア(加齢による筋力低下)のほうが、高齢者のwellbeing(健康、幸福、福祉)への影響が大きく、サルコペニアとダイナペニアではかなり進み方が異なることがわかってきています。muscle quality(筋肉の質:横断面積あたりの筋力)の概念も重要です。

筋肉量低下は男性で年0.47%、女性で年0.37%です。75歳の高齢者になると、女性で年0.64-0.70%、男性で年0.80-0.98%の筋肉量低下を認めます。

一方、筋力低下の進み方はより速いです。75歳の高齢者では、男性で年3-4%、女性で年2.5-3%の筋力低下を認めます。つまり、高齢者の筋力低下は筋肉量低下より2-5倍速く、障害や死亡のリスクは筋力低下のほうがより高いです。

 狭義のサルコペニア(加齢による筋肉量低下のみ)で考えると、ダイナペニアは別の概念になります。一方、広義のサルコペニア(すべての原因による筋肉量低下、筋力低下、これらによる身体機能低下)には、ダイナペニアも含まれます。

研究上は、狭義のサルコペニアとダイナペニアで考えたほうが進めやすいと思いますが、リハ栄養の臨床上は広義のサルコペニア(すべての原因による筋力低下を含む)で考えたほうが、原因追究や対策立案が行いやすいと考えます。

Abstract

Changing demographics make it ever more important to understand the modifiable risk factors for disability and loss of independence with advancing age. For more than two decades there has been increasing interest in the role of sarcopenia, the age-related loss of muscle or lean mass, in curtailing active and healthy aging. There is now evidence to suggest that lack of strength, or dynapenia, is a more constant factor in compromised wellbeing in old age and it is apparent that the decline in muscle mass and the decline in strength can take quite different trajectories. This demands recognition of the concept of muscle quality; that is the force generating per capacity per unit cross-sectional area (CSA). An understanding of the impact of aging on skeletal muscle will require attention to both the changes in muscle size and the changes in muscle quality. The aim of this review is to present current knowledge of the decline in human muscle mass and strength with advancing age and the associated risk to health and survival and to review the underlying changes in muscle characteristics and the etiology of sarcopenia. Cross-sectional studies comparing young (18-45 years) and old (>65 years) samples show dramatic variation based on the technique used and population studied. The median of values of rate of loss reported across studies is 0.47% per year in men and 0.37% per year in women. Longitudinal studies show that in people aged 75 years, muscle mass is lost at a rate of 0.64-0.70% per year in women and 0.80-0.98% per year in men. Strength is lost more rapidly. Longitudinal studies show that at age 75 years, strength is lost at a rate of 3-4% per year in men and 2.5-3% per year in women. Studies that assessed changes in mass and strength in the same sample report a loss of strength 2-5 times faster than loss of mass. Loss of strength is a more consistent risk for disability and death than is loss of muscle mass.

2012年9月3日月曜日

第3回日本プライマリ・ケア連合学会参加報告

9月1-2日と福岡で開催された第3回日本プライマリ・ケア連合学会に参加してきました。今回の参加目的は、ワークショップ「サルコペニアのリハ栄養」と、日本リハ医学会との連携シンポジウム「在宅における食・排泄・睡眠」での「在宅でのリハ栄養」という発表でした。

日本プライマリ・ケア連合学会でリハ栄養の話を2回もさせていただけるのは、おそらく最初で最後だと思っています(笑)。貴重な機会を作ってくださった丸山先生、シンポジウムの座長をしてくださった蜂須賀先生、志波先生に感謝いたします。どうもありがとうございます。

それ以外は臨床研究関連のプログラムに参加しました。この学会に参加すると、いつも臨床研究に関して多くの学びとモチベーションを得ています。

インタレストグループ12 アカデミックGPへの道
印象に残ったキーメッセージだけ紹介します。「理不尽なことに巻き込まれろ」「メンターはほぼ必須」「希少性を追求しろ」「週半日でも継続的に研究の時間を作ること」
理不尽と無茶ぶりは似ています。無茶ぶりにはYesで対応ということですね(笑)。

ワークショップ16 これからのジェネラリストにとって必要なデータとは?
福原先生の講演からキーメッセージを紹介します。まず臨床研究で重要なことは、「タイトル・疑問がよいか」「研究リテラシー(メンターに相談できるレベルの研究スキルの習得)」「研究デザイン・基本設計に時間をかける」「ロジカルシンキング」。統計と英語は5%ずつ程度。

臨床研究スキル習得への道は、①研究リテラシー、②実際の研究プロジェクトに参加、③既存のデータの二次解析で論文執筆、④独自のリサーチクエスチョンで系統的レビュー、⑤独自のリサーチクエスチョンで研究デザインを作って実施。ここまでで3年。

グループワークでは、「やりやすいこと」「やりたいこと」「やるべきこと」の3つが重なった領域の臨床研究を行うとよいという話が出ました。これってキャリアの登る山選びと全く同じですね。キャリアと臨床研究がこんなに近いことに改めて気づけたのは収穫でした。

自分の身に置き換えると、現在行っている研究で成果を出すことはもちろんですが、リハ栄養で何らかの系統的レビュー論文を執筆することが重要だと感じました。まずはリハ栄養の系統的レビューのテーマをじっくり考えたいと思います。

2012年9月1日土曜日

廃用性筋萎縮に対する蛋白と運動治療

廃用性筋萎縮に対する蛋白と運動治療に関するレビュー論文を紹介します。

Joanne E. Mallinson, Andrew J. Murton. Mechanisms responsible for disuse muscle atrophy: Potential role of protein provision and exercise as countermeasures. Nutrition, doi:10.1016/j.nut.2012.04.012

まだ抄録しか読めていませんが、廃用性筋萎縮の治療として、レジスタンストレーニングと栄養に関する最近の研究が紹介されているようです。これって、同時に行えばリハ栄養ですよね。Nutritionにこのようなレビュー論文が掲載されるのは嬉しいですね。私も頑張らないと。

Abstract
Muscle disuse is often observed after injury or during periods of illness, resulting in the loss of muscle mass and strength, with sometimes debilitating consequences. Although substantial advancements have been made in determining the mechanisms responsible for the etiology of muscle disuse atrophy in rodents, only in recent years have studies of any significant number focused on reaffirming these findings in humans. In this review, we discuss the processes responsible for disuse atrophy as based on current evidence and highlight where gaps in our knowledge persist. Furthermore, given the emphasis placed on resistance exercise and nutrition as potential therapeutic countermeasures, we consider recent advancements in the study of resistance exercise and nutrition in the stimulation of muscle protein synthesis and the associated implications when devising effective treatment strategies.

在宅高齢者の食欲不振とサルコペニア

在宅高齢者における食欲不振とサルコペニアの関連をみた論文を紹介します。

Francesco Landi, Rosa Liperoti, Andrea Russo, Silvia Giovannini, Matteo Tosato, Christian Barillaro, Ettore Capoluongo, Roberto Bernabei and Graziano Onder. Association of anorexia with sarcopenia in a community-dwelling elderly population: results from the ilSIRENTE study. European Journal of Nutrition 2012, DOI: 10.1007/s00394-012-0437-y

リサーチクエスチョンは以下の通りです。

P:80歳以上の在宅高齢者で
E:食欲不振を認めると
C:食欲不振を認めない場合と比較して
O:サルコペニアが多い
D:横断研究(二次研究)

サルコペニアの有無はEWGSOPの基準で判定しています。

結果ですが、354人中、食欲不振は21%に、サルコペニアは29%に認めました。食食不振群ではサルコペニアを46.6%認めたのに対し、食欲不振がない群では24.6%にサルコペニアを認め、有意差がありました。多変量解析でも有意差を認めました。

以上より、80歳以上の高齢者では食欲不振を認めることはしばしばあり、サルコぺニアと独立して関連しているという結論です。今回の対象者は加齢によるサルコペニアの要素が強いと思われますが、食欲不振が関連しているということは、栄養によるサルコペニアの影響もあるかもしれません。

Abstract

Objective

There is increasing evidence that anorexia of aging can cause physical and mental impairment. The aim of the present study was to evaluate the relationship between anorexia and sarcopenia in elderly persons aged 80 years or older.

Methods

Data are from the baseline evaluation of 354 subjects enrolled in the ilSIRENTE study. The ilSIRENTE study is a prospective cohort study performed in the mountain community living in the Sirente geographic area (L’Aquila, Abruzzo) in Central Italy. We defined anorexia as the presence of loss of appetite and/or lower food intake. According to the European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP) criteria, diagnosis of sarcopenia required the documentation of low muscle mass plus the documentation of either low muscle strength or low physical performance. The relationship between anorexia and sarcopenia was estimated by deriving odds ratios from the multiple logistic regression models considering sarcopenia as the dependent variable.

Results

Nearly 21 % of the study sample showed symptoms of anorexia. Using the EWGSOP-suggested algorithm, 103 subjects (29.1 %) with sarcopenia were identified. Thirty-four (46.6 %) participants were affected by sarcopenia among subjects with anorexia compared to 69 subjects [24.6 %] without anorexia (p < 0.001). After adjusting for potential confounders including age, gender, functional and cognitive impairment, physical activity, urinary incontinence, comorbidity, congestive heart failure, COPD, depression, anti-cholinergic drugs, and TNF-α plasmatic levels, participants with anorexia had a higher risk of sarcopenia compared with non-anorexic subjects (HR 1.88, 95 % CI 1.01–3.51).

Conclusions

Anorexia is common among community-dwelling older subjects in Italy. Our results suggest that among old–old subjects, anorexia is independently associated with sarcopenia.