内科指導医に役立つ教育理論その3として、「発達の最近接性領域」、「構成主義」、「協同的学習」について、西城卓也「内科指導医に役立つ教育理論」(日内会誌100: 1987-1993, 2011)より引用紹介させていただきます。
まず「発達の最近接性領域」です。Vygotskyは学びの段階を単独で到達できる段階と、援助を受けて到達できる段階のふたつがあると構造化しています。そして、その2つの段階の間を、発達の最近接性領域(zone of proximal development)とよび、学びはその学習者がジャンプする程度の領域で行われるべきであると提示しました。
身の丈に合った練習を提供するには、学習者の発達を指導者が把握しながら、レベルを調節しなければならないということになります。無茶ぶりは「突然」という意味ならまだ許されることもありますが、「段階やレベルが違いすぎる」という意味では許されないということですね。反省です…。
次に「構成主義」です。構成主義によれば、知識というものは、その個人の有する知識体系に、新しい知識が自らの作業によって組み込まれ構成されていくものだそうです。自分で試行錯誤して身に付けた知識のほうがよく記憶できて応用できるようです。
従って指導者の役割は、講義により一方的に知識を「移植」することではなく、学習者自身の思考活動を促進させることです。その際、学習者が何を知っているかを把握することが、指導者の試金石となります。
ただこれは学習者自身も自分が何を知っているかを把握すべきでしょう。「何を知らないかも知らない」のでは、学習をどこから始めればよいのかの判断が難しいです。実際には理想的な指導者やロールモデルに出会える方ばかりではありませんので、その際には学習者によるセルフラーニングが必要です。現代はセルフラーニングを行いやすい時代ではありますが、構成主義の考え方は重要だと考えます。
最後に「協同的学習」です。「勉強」と「学習」の定義について、佐藤はこれらの違いを「出会いと対話」であるとしています(佐藤学、2004)。
勉強とは、教師の説明する教科書の内容を理解し暗記する座学と表現しています。それに対して、学習とは、概念・モデル・理論に触媒された議論・実験・経験によって遂行される活動的な学びであるとしています。
臨床教育に推奨されるべき学習方法は、主に小グループで行われる協同的学習(collaborative learning)です。協同的学習では、様々なレベルのグループメンバー間での協力が推奨されます。相互の考えや知識を惜しみなく議論を通じて提供しあい、互いが学び成長し合っていくことが学習の目的です。
協同的学習では、学びは様々な他者や知識との「出会い」であり、交流的な「対話」こそ、その強力な学習方法となります。ここで指導者の役割は、情報提供者というよりもファシリテーターになります。
リハ栄養はリハと栄養の「出会い」であり、多くの職種が実際に「出会い」、「対話」を深めることが重要です。リハ栄養研究会に限りませんが、研究会を「勉強」の場ではなく、「学習」の場にしたいと考えます。
2011年7月28日木曜日
2011年7月27日水曜日
内科指導医に役立つ教育理論その2
内科指導医に役立つ教育理論その2として、まずTARGETモデルを紹介します。このモデルは私はこの論文で初めて知りました。
これは学習者のやる気を支援するモデルで、Task, Autonomy, Recognition, Grouping, Evaluation, Timeの頭文字をとったものです。成人学習理論はある程度自主的に学ぼうとするやる気のある学習者であることが前提になっていますが、実際にはモチベーションが低い学習者も少なくありません。そのためのモデルです。
TARGETのそれぞれの内容と例として、下記のように記載されています。
T:学習者のタスクがどのような意義深いものであるかを明確にする
例:学習の目的を説明する、目標を自主的に設定させる
A:学習者の志向に合わせた選択性・責任を持たせる
例:選択できるように複数の課題を提示する、司会進行を任せる
R:学習者として認識し、学びの進捗を承認する
例:学習者として自己評価させる、賞を与える
G:学習者同士の交流を促す
例:隣同士で話し合わせる、小グループ討議を用いて学習する
E:学習者の評価・報告の機会を設ける
例:フィードバックをする、試験を実施する
"Assessment drives learning"とはよく言われる格言である
T:学習する時間や期間の決定にも学習者を参加させる
例:スケジュールにゆとりを持たせる、学習のペースを学習者に委ねる、業務から離れ落ち着いて学習する時間を確保する
これは学習者の支援だけでなく、自己学習の動機づけにも有効だと考えます。学習へのモチベーションが低いと感じている方は、自分にTARGETモデルを当てはめてみてはいかがでしょうか。
次に熟達化理論を紹介します。これは私は聞いたことがあります。
プロレベルになった人は共通して10年にわたる1万時間以上の、時に厳しい練習を積んでいるそうです。これを「熟達の10年ルール」といいます。
しかし、10年目以上経験した医療人がすべてプロレベルかというと、「まずいラーメン屋は20年やってもまずい」と一緒です…。ラーメン店なら本当は20年もやる前に店がつぶれるとは思いますが、まずい医療人は20年やっても残念ながら退職しません…。
そこで単に10年間、1万時間だけでなく、「よく考えられた練習(deliberate practice)」を積むことが重要だそうです。「よく考えられた練習(deliberate practice)」の特徴を引用します。
・その人の技術を向上させるために最適な難易度に設定されている。
・練習の結果に対して、フィードバックがある。
・自分で、結果の良し悪しを評価している。
・本人がやる気を出して練習している。
・継続的に練習している。
・課題の楽しさを教えてくれるコーチがいる。
・練習に専念できるよう環境などへの支援がある。
これらの下で10年間、1万時間の練習や経験を積むことで、プロレベルに到達します。医療人でいえば、自分の身の丈にあった症例経験・研修を積み、その成果を継続的に指導者や自らで評価し、その喜びを共有できるような同僚・職場が存在することが重要といえます。このあたりをリハ栄養研究会でうまく導入したいと思います。
これは学習者のやる気を支援するモデルで、Task, Autonomy, Recognition, Grouping, Evaluation, Timeの頭文字をとったものです。成人学習理論はある程度自主的に学ぼうとするやる気のある学習者であることが前提になっていますが、実際にはモチベーションが低い学習者も少なくありません。そのためのモデルです。
TARGETのそれぞれの内容と例として、下記のように記載されています。
T:学習者のタスクがどのような意義深いものであるかを明確にする
例:学習の目的を説明する、目標を自主的に設定させる
A:学習者の志向に合わせた選択性・責任を持たせる
例:選択できるように複数の課題を提示する、司会進行を任せる
R:学習者として認識し、学びの進捗を承認する
例:学習者として自己評価させる、賞を与える
G:学習者同士の交流を促す
例:隣同士で話し合わせる、小グループ討議を用いて学習する
E:学習者の評価・報告の機会を設ける
例:フィードバックをする、試験を実施する
"Assessment drives learning"とはよく言われる格言である
T:学習する時間や期間の決定にも学習者を参加させる
例:スケジュールにゆとりを持たせる、学習のペースを学習者に委ねる、業務から離れ落ち着いて学習する時間を確保する
これは学習者の支援だけでなく、自己学習の動機づけにも有効だと考えます。学習へのモチベーションが低いと感じている方は、自分にTARGETモデルを当てはめてみてはいかがでしょうか。
次に熟達化理論を紹介します。これは私は聞いたことがあります。
プロレベルになった人は共通して10年にわたる1万時間以上の、時に厳しい練習を積んでいるそうです。これを「熟達の10年ルール」といいます。
しかし、10年目以上経験した医療人がすべてプロレベルかというと、「まずいラーメン屋は20年やってもまずい」と一緒です…。ラーメン店なら本当は20年もやる前に店がつぶれるとは思いますが、まずい医療人は20年やっても残念ながら退職しません…。
そこで単に10年間、1万時間だけでなく、「よく考えられた練習(deliberate practice)」を積むことが重要だそうです。「よく考えられた練習(deliberate practice)」の特徴を引用します。
・その人の技術を向上させるために最適な難易度に設定されている。
・練習の結果に対して、フィードバックがある。
・自分で、結果の良し悪しを評価している。
・本人がやる気を出して練習している。
・継続的に練習している。
・課題の楽しさを教えてくれるコーチがいる。
・練習に専念できるよう環境などへの支援がある。
これらの下で10年間、1万時間の練習や経験を積むことで、プロレベルに到達します。医療人でいえば、自分の身の丈にあった症例経験・研修を積み、その成果を継続的に指導者や自らで評価し、その喜びを共有できるような同僚・職場が存在することが重要といえます。このあたりをリハ栄養研究会でうまく導入したいと思います。
2011年7月26日火曜日
内科指導医に役立つ教育理論
日本内科学会雑誌の最新号(2011年7月号)の医学と医療の最前線に、西城卓也先生が執筆された「内科指導医に役立つ教育理論」(日内会誌100: 1987-1993, 2011)が掲載されています。
医学教育理論のエッセンスがわかりやすく紹介されていて、すべての医療人に有益な内容だと思いますので、その一部をここで紹介させていただきます。ちなみに西城卓也先生とは「第1回PC医のための臨床研究デザイン塾」でご一緒させていただきました。その後も医学教育のプロとして着実に成長されていて素晴らしいです。
欧州医学教育学会会長のHardenらは、医学教育に関わる医師の12の役割を提示しています。原稿では図ですが、ここでは言葉で示します。
学習支援者
現場でのロールモデル
教育者としてのロールモデル
講義者
臨床指導医
資料作成者
シラバス・手帳製作者
学習コース責任者
カリキュラム立案者
カリキュラム評価者
評価者(学生の)
メンター
これらは以下の6つに大別できます。
ファシリテーター
ロールモデル
情報提供者
教育資源作成者
カリキュラム責任者
評価者
教育者の役割は実に幅広いことが分かります。これは大変です(笑)。リハ栄養に関して自分を振り返ってみると、情報提供はこのブログで、教育資源はリハ栄養の書籍で作っているかもしれませんが、カリキュラムはまったく考えていませんし、その結果、当然評価者でもありません。ファシリテーターやロールモデルにもなっていないと感じます。
来年全国でリハ栄養セミナーを企画する予定ですので、リハ栄養のカリキュラムや学習コースといったものを、より真剣に考えなければいけません。書籍に執筆したことをそのまま伝える以上の内容にしたいと思います。
次に成人学習理論として、Knowlesによる5つの特徴が掲載されています。
成人である学習者は、
①独立心が強く、自己のペースで学習することを好む
②既に幾多の経験があり、それが学習の糧となる
③実際に役立つ学習に価値を置く
④差し迫る問題を解決するための学習を好む
⑤強制ではなく自らの学習意欲に駆られて学ぶ
このように小中学生の学習(勉強という言葉のほうが適切かもしれません)と成人学習では、方法論がかなり異なってきます。このことに十分配慮したセミナーや研修会を開催しなければ…と最近、改めて痛感しています。
どんな内容であれ成人学習の場合には、一方的な講義の学習効率が低いことは明らかであり、小グループ学習(協同的学習)やファシリテーションを重視しなければと考えます。
「絶対に正しい○○の知識を一方的に授ける」なんていうのは、成人学習では問題外に近いと感じます。私が関与している一部の研究会でこのような雰囲気になる危険性が出てきていますので、こうならないように注意して行動したいと思います。他は後日紹介したいと思います。
医学教育理論のエッセンスがわかりやすく紹介されていて、すべての医療人に有益な内容だと思いますので、その一部をここで紹介させていただきます。ちなみに西城卓也先生とは「第1回PC医のための臨床研究デザイン塾」でご一緒させていただきました。その後も医学教育のプロとして着実に成長されていて素晴らしいです。
欧州医学教育学会会長のHardenらは、医学教育に関わる医師の12の役割を提示しています。原稿では図ですが、ここでは言葉で示します。
学習支援者
現場でのロールモデル
教育者としてのロールモデル
講義者
臨床指導医
資料作成者
シラバス・手帳製作者
学習コース責任者
カリキュラム立案者
カリキュラム評価者
評価者(学生の)
メンター
これらは以下の6つに大別できます。
ファシリテーター
ロールモデル
情報提供者
教育資源作成者
カリキュラム責任者
評価者
教育者の役割は実に幅広いことが分かります。これは大変です(笑)。リハ栄養に関して自分を振り返ってみると、情報提供はこのブログで、教育資源はリハ栄養の書籍で作っているかもしれませんが、カリキュラムはまったく考えていませんし、その結果、当然評価者でもありません。ファシリテーターやロールモデルにもなっていないと感じます。
来年全国でリハ栄養セミナーを企画する予定ですので、リハ栄養のカリキュラムや学習コースといったものを、より真剣に考えなければいけません。書籍に執筆したことをそのまま伝える以上の内容にしたいと思います。
次に成人学習理論として、Knowlesによる5つの特徴が掲載されています。
成人である学習者は、
①独立心が強く、自己のペースで学習することを好む
②既に幾多の経験があり、それが学習の糧となる
③実際に役立つ学習に価値を置く
④差し迫る問題を解決するための学習を好む
⑤強制ではなく自らの学習意欲に駆られて学ぶ
このように小中学生の学習(勉強という言葉のほうが適切かもしれません)と成人学習では、方法論がかなり異なってきます。このことに十分配慮したセミナーや研修会を開催しなければ…と最近、改めて痛感しています。
どんな内容であれ成人学習の場合には、一方的な講義の学習効率が低いことは明らかであり、小グループ学習(協同的学習)やファシリテーションを重視しなければと考えます。
「絶対に正しい○○の知識を一方的に授ける」なんていうのは、成人学習では問題外に近いと感じます。私が関与している一部の研究会でこのような雰囲気になる危険性が出てきていますので、こうならないように注意して行動したいと思います。他は後日紹介したいと思います。
2011年1月3日月曜日
管理栄養士・栄養士倫理綱領
日本栄養士会の管理栄養士・栄養士倫理綱領について紹介します。
臨床栄養の最新号(118巻1号 2011年1月号)で、「管理栄養士・栄養士の未来を考える 臨床と教育の現場からのメッセージ」という特集が組まれています。その中に小松龍史先生の「倫理」に基づいたプロフェッショナルへ―管理栄養士の卒後教育がめざすものとはという記事があります。「倫理」に基づいたプロフェッショナルという考え方は興味深いです。
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/eiyo/EiyoArticleDetail.aspx?BC=061181&AC=1637
ついでですが、臨床栄養の最新号では私も「横浜南部地域一体型NSTによる地域栄養連携の推進(1)」というスポットの記事を書いています。
小松先生の記事の中に「日本栄養士会の管理栄養士・栄養士倫理綱領」が紹介されていましたので、日本栄養士会HPから引用して下記に紹介します。
管理栄養士・ 栄養士倫理綱領制定 平成14 年4 月27 日
1. 日本栄養士会は、本会会員が、管理栄養士・栄養士としての使命と職責を自
覚し、常に自らを修め、律する基準として、ここに倫理規定を設ける。
2. 管理栄養士・栄養士は国籍、人種、宗教、思想、信条、門地、社会的な地位、
年齢、性別等によって差別を行わない。
3. 管理栄養士・栄養士は、国民の保健・医療・福祉のため、自己の知識、技術、
経験をもてる限り提供する。
4. 管理栄養士・栄養士は、社会の期待と信頼にこたえるため、常に人格の陶冶及
び関係法の遵守に努める。
5. 管理栄養士・栄養士は、業務の遂行にあたり、知識及び技術の向上及び最新
情報の収集を行い、適切な情報提供と個人情報の管理、秘密の保持に努め
る。
6. 日本栄養士会は、会員が上記規定に違反する行為があった時は、審査委員会
を開催し定款8 条の規定により、会員名簿から除名を行う。
倫理綱領は他職種でも医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、PT、OT、ST、視能訓練士のものがあります。この中で日本医師会が平成20年に改訂した医師の職業倫理指針は66ページとかなり詳細なものになっています。下記のHPでPDFをみることができますので、興味のある方はご覧ください。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20080910_1.pdf
日本栄養士会の管理栄養士・栄養士倫理綱領は、かなり厳しい(でも正しい)と思います。5と6を素直に解釈すれば、「知識及び技術の向上及び最新情報の収集を行」っていなければ、日本栄養士会の会員名簿から除名されることになります。これってすごいことですよね。実際にこれで除名された方はいるのでしょうか?
私はFDの中に生涯学習能力を含めていて、「生涯学習能力のない時代遅れの医療人は仕事を辞めるべきだ」と講演でよく言っています。でも日本栄養士会はすでに平成14年から同じことを言っていたのですね。私より日本栄養士会のほうが辛口だと思います(笑)。
小松先生は「これはあまり省みられることがなく、それが残念なのであるが、これが、発想の原点なのである。」と言っています。もしそうだとすれば本当に残念です。日本栄養士会に所属している管理栄養士・栄養士は、仕事を辞めるか死ぬまで学習を継続しなければいけません。私も負けないように生涯学習とブログの更新を頑張りたいと思います。
臨床栄養の最新号(118巻1号 2011年1月号)で、「管理栄養士・栄養士の未来を考える 臨床と教育の現場からのメッセージ」という特集が組まれています。その中に小松龍史先生の「倫理」に基づいたプロフェッショナルへ―管理栄養士の卒後教育がめざすものとはという記事があります。「倫理」に基づいたプロフェッショナルという考え方は興味深いです。
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/eiyo/EiyoArticleDetail.aspx?BC=061181&AC=1637
ついでですが、臨床栄養の最新号では私も「横浜南部地域一体型NSTによる地域栄養連携の推進(1)」というスポットの記事を書いています。
小松先生の記事の中に「日本栄養士会の管理栄養士・栄養士倫理綱領」が紹介されていましたので、日本栄養士会HPから引用して下記に紹介します。
管理栄養士・ 栄養士倫理綱領制定 平成14 年4 月27 日
1. 日本栄養士会は、本会会員が、管理栄養士・栄養士としての使命と職責を自
覚し、常に自らを修め、律する基準として、ここに倫理規定を設ける。
2. 管理栄養士・栄養士は国籍、人種、宗教、思想、信条、門地、社会的な地位、
年齢、性別等によって差別を行わない。
3. 管理栄養士・栄養士は、国民の保健・医療・福祉のため、自己の知識、技術、
経験をもてる限り提供する。
4. 管理栄養士・栄養士は、社会の期待と信頼にこたえるため、常に人格の陶冶及
び関係法の遵守に努める。
5. 管理栄養士・栄養士は、業務の遂行にあたり、知識及び技術の向上及び最新
情報の収集を行い、適切な情報提供と個人情報の管理、秘密の保持に努め
る。
6. 日本栄養士会は、会員が上記規定に違反する行為があった時は、審査委員会
を開催し定款8 条の規定により、会員名簿から除名を行う。
倫理綱領は他職種でも医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、PT、OT、ST、視能訓練士のものがあります。この中で日本医師会が平成20年に改訂した医師の職業倫理指針は66ページとかなり詳細なものになっています。下記のHPでPDFをみることができますので、興味のある方はご覧ください。
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20080910_1.pdf
日本栄養士会の管理栄養士・栄養士倫理綱領は、かなり厳しい(でも正しい)と思います。5と6を素直に解釈すれば、「知識及び技術の向上及び最新情報の収集を行」っていなければ、日本栄養士会の会員名簿から除名されることになります。これってすごいことですよね。実際にこれで除名された方はいるのでしょうか?
私はFDの中に生涯学習能力を含めていて、「生涯学習能力のない時代遅れの医療人は仕事を辞めるべきだ」と講演でよく言っています。でも日本栄養士会はすでに平成14年から同じことを言っていたのですね。私より日本栄養士会のほうが辛口だと思います(笑)。
小松先生は「これはあまり省みられることがなく、それが残念なのであるが、これが、発想の原点なのである。」と言っています。もしそうだとすれば本当に残念です。日本栄養士会に所属している管理栄養士・栄養士は、仕事を辞めるか死ぬまで学習を継続しなければいけません。私も負けないように生涯学習とブログの更新を頑張りたいと思います。
2010年12月22日水曜日
博士の活かし方

産業技術総合研究所による「博士の活かし方 博士は21世紀の人材鉱脈」という報告書を下記のHPで見ることができます。
http://unit.aist.go.jp/humanres/ci/phd-career/pdf/Dr's-career2010.pdf
博士号取得者やポスドクは近年増えましたが、アカデミックキャリアにはポストが少ない、その先のキャリアの展望が見えない、企業は博士取得者の採用にあまり積極的でない、など博士号取得者やポスドクをとりまく環境は厳しいものがあります。
そこで博士号取得者の魅力など、その後のキャリアがより充実するような前向きな報告書になっています。
第1章 博士を眺める
第2章 博士を探る
第3章 博士を活かす
から構成されています。第2章の最初には「博士はお買い得」として、博士の能力の図が掲載されていましたので、引用紹介させていただきます。
この図に示される8つの能力がすべて卓越していたら、実にすばらしい人材です。実際、博士課程やポスドクでの研究生活を通じて、これらの能力が磨かれることは確かだと思います。私も医療人には臨床研究をおすすめしていますし、臨床研究を通じてFD全般のスキルが磨かれると実感しています。
ただ個人的には、これら8つの能力を見て、すべてに卓越しているのは経営コンサルタントだというイメージがあります。博士号取得者やポスドクのイメージは正直、あまり湧きません。
私はFDやビジネススキル関連の書籍を比較的読んでいるほうだと思いますが、博士号取得者やポスドクが著者となっている書籍は少ない気がします。コンサルタントやMBA取得者が多い印象です。もっともそんな書籍を書くほど研究生活は暇ではないとも思いますが…。
研究環境がより充実したほうがよいことは確かです。すべての博士号取得者やポスドクにはぜひ8つの能力すべてに卓越してほしいと思います。あと、質、量ともにより成果をだせるようにマネジメント能力にも卓越してほしいですね。私が博士号を取得する予定はありませんが、私も頑張ります。
2010年10月7日木曜日
リハビリテーションとマネジメント
「総合リハビリテーション」の10月号で「リハビリテーションとマネジメント」が特集されています。
リスクマネジメントと安全学
チームマネジメントと人材育成
医療の質のマネジメントとP4P
リハビリテーション医療機能評価とマネジメント
病院経営とマネジメント
特に関心をもったのは、井出睦先生のチームマネジメントと人材育成と、及川忠人先生のリハビリテーション医療機能評価とマネジメントです。
チームマネジメントと人材育成では、PDCA cycle、employee satisfaction(従業員満足度)、単位制導入の功罪、人材養成の3層構造-院内、リハ部内、院外などが記載されています。
私も含めてそうですが、1つの病院・施設内での卒後教育で1人前にはなれますが、それ以上の学習と成長は院外に出ないと難しいのが現状です。しかし、PT・OT・STの一部は、ほとんど院外で学んでいないと推測します。卒後3年目までに1回でも研究会・学会発表した人数の割合、卒後年数を問わず原著論文を1つでも執筆した人数の割合を出したら、厳しい数字が出ると思います。
このあたり院外での学習機会を、経験年数に見合ったものを活用するという姿勢は参考になります。インプットする研修会に出るのが大好きでも、学会発表や原著論文のようにアウトプットする機会を作らなければ、卒後4年目以降の学習と成長の伸びは少なくなると考えます。
及川忠人先生とは昨年のトルコ・イスタンブールの国際リハビリテーション学会(ISPRM)でご一緒させていただきました。及川先生のリハビリテーション医療機能評価とマネジメントでは、ドラッカーが参考文献に紹介されているので、それだけで嬉しくなりました(笑)。以下、引用です。
ドラッカーは企業の成果について、「我々の事業は何か」を問うのは苦境に陥ったときにしか問わないが、むしろ成功している時こそそれを考えることが必要であると述べている。
部門に限らずチーム医療でも、我々の事業は何か、顧客は誰か、顧客が価値ありとするものは何か、成果は何か、計画は何かの5つの質問を自問自答することは、とても大切だと考えます。5つの質問に自問自答できれば、チーム医療はよりうまくいくと私は信じています。
リスクマネジメントと安全学
チームマネジメントと人材育成
医療の質のマネジメントとP4P
リハビリテーション医療機能評価とマネジメント
病院経営とマネジメント
特に関心をもったのは、井出睦先生のチームマネジメントと人材育成と、及川忠人先生のリハビリテーション医療機能評価とマネジメントです。
チームマネジメントと人材育成では、PDCA cycle、employee satisfaction(従業員満足度)、単位制導入の功罪、人材養成の3層構造-院内、リハ部内、院外などが記載されています。
私も含めてそうですが、1つの病院・施設内での卒後教育で1人前にはなれますが、それ以上の学習と成長は院外に出ないと難しいのが現状です。しかし、PT・OT・STの一部は、ほとんど院外で学んでいないと推測します。卒後3年目までに1回でも研究会・学会発表した人数の割合、卒後年数を問わず原著論文を1つでも執筆した人数の割合を出したら、厳しい数字が出ると思います。
このあたり院外での学習機会を、経験年数に見合ったものを活用するという姿勢は参考になります。インプットする研修会に出るのが大好きでも、学会発表や原著論文のようにアウトプットする機会を作らなければ、卒後4年目以降の学習と成長の伸びは少なくなると考えます。
及川忠人先生とは昨年のトルコ・イスタンブールの国際リハビリテーション学会(ISPRM)でご一緒させていただきました。及川先生のリハビリテーション医療機能評価とマネジメントでは、ドラッカーが参考文献に紹介されているので、それだけで嬉しくなりました(笑)。以下、引用です。
ドラッカーは企業の成果について、「我々の事業は何か」を問うのは苦境に陥ったときにしか問わないが、むしろ成功している時こそそれを考えることが必要であると述べている。
部門に限らずチーム医療でも、我々の事業は何か、顧客は誰か、顧客が価値ありとするものは何か、成果は何か、計画は何かの5つの質問を自問自答することは、とても大切だと考えます。5つの質問に自問自答できれば、チーム医療はよりうまくいくと私は信じています。
2010年4月23日金曜日
医療関係職種教育におけるFDのシステム
理学療法ジャーナルの2010年4月号に、入門講座:理学療法学教育とFD①として、藤崎和彦先生の「医療関係職種教育におけるFDのシステム」という原稿が掲載されています(p317-324)。リハの雑誌でFaculty Developmentという用語を私は初めて見た気がします。
この論文では、教師の教育・学習スキルをどう伸ばすか(Teacher training)と成人学習理論の紹介に重きが置かれています。
なぜTeacher trainingが必要かに関しては、「教育の対象領域が単なる生物学的医学知識から社会心理行動面まで含めた全人的なものへと拡大し、教育手法もより学習者参加型の実践的なものへと変化して」いるためとしています。
私は一方的な講義中心型教育は「昭和」の学習方法で、参加型学習が「平成」の学習方法と考えています。個人的経験で、講義中心型教育の学習効率は悪いことを痛感しています。そのため、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会では、なるべく参加型学習を増やすように心がけています。
自分が講義・講演をする機会には、なるべく一方的にならないように、質問を投げかけたり、症例検討にしたりするように気をつけています。それでもまだまだ不十分ですが…。
成人教育理論の特徴として、以下の4点が紹介されています。
①自己決定的
②体験・経験重視
③ニードに基づく学習が効果的
④問題中心的、作業中心的学習を好む
これらの特徴を活かした参加型学習の学習効率は比較的高いと感じています。
Daleによる社会心理学の実験結果も紹介されています。
「読むことだけで2週間後に覚えているのは約1割、聞いたことでは2割、みたことで3割、みることと聞くことをあわせてやっと5割というように、受動的な学習では効率がよくない。一方、自分で話すと7割が記憶に残るし、話した後に実際に体験してみると何と9割が記憶に残っている」
私の実感では、受動的学習では1割も覚えることはできていません。5%程度だと思います。一方、話したり書いたりすることで5割以上は記憶に残っている印象です。ここからも主体的・能動的学習、経験からの学習の重要性がわかります。
この論文では岐阜大学医学部医学教育開発研究センターの取り組みが紹介されています。年間4回医学教育セミナー&ワークショップを開催しています。
その他にFDを学べる機会は少ないのですが、私の友人が「ハワイ大学医学部 医学教育室 医学教育フェローシップ」に参加しています。
http://www.medical-principle.co.jp/hawaii/info01.html
HPに掲載されている範囲でしか内容は確認できないのですが、友人の話では相当すごいそうで、私も参加を薦められています。ちなみに薬剤師も参加しているそうです。モジュールのみ紹介いたします。
Module 1 魅力ある教育の創造:危険な「輸入」教育。標準化ではなく多様化が勝負の鍵
Module 2 上手に教える:『トップ指導医』への道
Module 3 上手に育てる:『評価のための評価』に別れを告げよう!
Module 4 リーダーシップ:技術、経験、そして、智恵
Module 5 国際交流:Globalizationの時代に生き残るための戦略
入門講座:理学療法学教育とFDは3回連載のようですので、PTジャーナルを入手できる人は、ぜひ4月号から6月号までご一読ください。
この論文では、教師の教育・学習スキルをどう伸ばすか(Teacher training)と成人学習理論の紹介に重きが置かれています。
なぜTeacher trainingが必要かに関しては、「教育の対象領域が単なる生物学的医学知識から社会心理行動面まで含めた全人的なものへと拡大し、教育手法もより学習者参加型の実践的なものへと変化して」いるためとしています。
私は一方的な講義中心型教育は「昭和」の学習方法で、参加型学習が「平成」の学習方法と考えています。個人的経験で、講義中心型教育の学習効率は悪いことを痛感しています。そのため、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会では、なるべく参加型学習を増やすように心がけています。
自分が講義・講演をする機会には、なるべく一方的にならないように、質問を投げかけたり、症例検討にしたりするように気をつけています。それでもまだまだ不十分ですが…。
成人教育理論の特徴として、以下の4点が紹介されています。
①自己決定的
②体験・経験重視
③ニードに基づく学習が効果的
④問題中心的、作業中心的学習を好む
これらの特徴を活かした参加型学習の学習効率は比較的高いと感じています。
Daleによる社会心理学の実験結果も紹介されています。
「読むことだけで2週間後に覚えているのは約1割、聞いたことでは2割、みたことで3割、みることと聞くことをあわせてやっと5割というように、受動的な学習では効率がよくない。一方、自分で話すと7割が記憶に残るし、話した後に実際に体験してみると何と9割が記憶に残っている」
私の実感では、受動的学習では1割も覚えることはできていません。5%程度だと思います。一方、話したり書いたりすることで5割以上は記憶に残っている印象です。ここからも主体的・能動的学習、経験からの学習の重要性がわかります。
この論文では岐阜大学医学部医学教育開発研究センターの取り組みが紹介されています。年間4回医学教育セミナー&ワークショップを開催しています。
その他にFDを学べる機会は少ないのですが、私の友人が「ハワイ大学医学部 医学教育室 医学教育フェローシップ」に参加しています。
http://www.medical-principle.co.jp/hawaii/info01.html
HPに掲載されている範囲でしか内容は確認できないのですが、友人の話では相当すごいそうで、私も参加を薦められています。ちなみに薬剤師も参加しているそうです。モジュールのみ紹介いたします。
Module 1 魅力ある教育の創造:危険な「輸入」教育。標準化ではなく多様化が勝負の鍵
Module 2 上手に教える:『トップ指導医』への道
Module 3 上手に育てる:『評価のための評価』に別れを告げよう!
Module 4 リーダーシップ:技術、経験、そして、智恵
Module 5 国際交流:Globalizationの時代に生き残るための戦略
入門講座:理学療法学教育とFDは3回連載のようですので、PTジャーナルを入手できる人は、ぜひ4月号から6月号までご一読ください。
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