2010年12月30日木曜日

「栄養とリハビリテーション」の日本の先駆者

今日で今年のブログの執筆は終わりとさせていただきます。1年間、どうもありがとうございました。来年もブログを継続できればと考えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。

今日は、「栄養とリハビリテーション」の日本の先駆者を紹介したいと思います。「リハビリテーション栄養」という言葉を作ったのは私ですが、その前から「栄養とリハビリテーション」の重要性を訴え続けている先生がいます。それは近森会の近森正幸先生です。

2005年の静脈経腸栄養ですでに「栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さ」を訴えています。

近森 正幸. 非経口栄養管理における管理栄養士の役割 : ―医師の立場から― . 静脈経腸栄養 20: 3_3-3_8, 2005

抄録
管理栄養士の役割は大きく変わり、厨房を出て病棟に行く時代になった。その際「腸管を使う大切さ」を充分自覚し、「栄養の目的は骨格筋の量を増やすこと」から栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さを理解してNSTに参加してほしい。経腸栄養は管理栄養士が最も活躍できる舞台であり、なかでも栄養評価と栄養プランの作成は管理栄養士の最大の役割である。
積極的に患者のもとに行き栄養評価を行ない、病態を考えながら栄養プランを作り、NSTカンファレンスを通じて常に栄養プランを経時的に見直し、plan do seeを行なってもらいたい。経腸栄養は、あくまで強制栄養であることから、ぜひ管理栄養士は患者の腹部触診、聴診を行ない、下痢、嘔吐などの合併症を防いでほしい。最終目標はあくまで口から食べることであり、口のリハビリテーションへの参加や嚥下食の提供を通じてスムーズな経口摂取に移行してもらいたい。

下記HPで全文PDFを見ることができます。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/20/3/3_3/_pdf/-char/ja/

2005年に私はこの論文を拝読させていただきましたが、とても勇気づけられた記憶があります。この頃は前医の院内で嚥下チームとNSTの活動に一生懸命で、院外でのアウトプットはあまりしていませんでした。それでも「栄養とリハビリテーションを同時に行う大切さ」は、臨床現場で認識していました。

2009年の日本老年医学会雑誌には、教育講演「高齢者栄養サポートの実践とその効果について」をまとめた論文が掲載されています。

近森 正幸: “高齢者栄養サポートの実践とその効果について”. 日老医誌 (2009); Vol. 46: 395-397 .

下記HPで全文PDFを見れます。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/46/5/395/_pdf/-char/ja/

一部、この論文から引用させていただきます。

「救命後,回復するためには,食べて動くことが必要で,栄養とリハビリテーションのチーム医療が求められている.食べて動かないと骨格筋は減少し,低栄養から免疫能が低下,高齢者は慢性炎症を有していることから感染症を併発,衰弱が進み,死に至る.これらを予防するのも栄養とリハビリであり,チームでの対応が必要となる.」

このように栄養とリハの重要性を訴え続けている先生がいることは、とても心強いです。私も来年も、リハ栄養の重要性を訴え続けたいと思います。

また、近森病院、近森リハ病院の臨床栄養部の西岡心大さんと宮澤靖さんの論文「リハビリテーションと栄養管理」も2007年の静脈経腸栄養に掲載されています。

西岡 心大, 宮澤 靖. リハビリテーションと栄養管理 . 静脈経腸栄養 22: 471-475, 2007 .

抄録
脳血管疾患では、急性期を離脱しても、麻痺や嚥下障害などの機能障害が残存するため、早期からのリハビリテーションが必要である。特に嚥下障害は脱水や低栄養を招き、食べるという基本的欲求を喪失することに繋がる。摂食嚥下リハビリテーションは、まず摂食嚥下評価を行い、摂食嚥下能力を把握することから始まる。食物を用いた直接訓練はゼラチンゼリーから開始するのが安全である。モニタリングを行い、必要栄養量・水分量が適切なルートから投与されるように計画する。また、外科手術前に、心肺機能トレーニングや筋力トレーニングなどの術前リハビリを6~12週間実施すると、手術侵襲、活動量低下による機能低下を抑制することが報告されている。栄養管理とリハビリは相補的にはたらき、リハビリ実施中の患者に対する栄養サポートは、ADL向上という側面からも有効性が期待できるが、明確な基準はまだ存在していない。我が国の実情を考慮した形で、可能な限り早期からのリハビリ実施と、術前の栄養状態の維持改善が推奨される。

下記HPで全文PDFを見ることができます。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/22/4/471/_pdf/-char/ja/

こういった論文を見ても、近森会グループの病院では、リハ栄養の質が極めて高いことが伺えます。臨床栄養に関しては宮澤さんや真壁さんたちがいますから、当然と言えば当然ですが…。近森会の先生方から学ぶことは実に多いです。

来年は「栄養とリハビリテーション」に取り組む仲間を増やすとともに、リハ栄養をテーマにした何らかのコミュニティもしくは研究会を立ち上げたいと考えています。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。

2010年12月29日水曜日

慢性心不全における糖尿病・悪液質・肥満の研究デザイン論文


慢性心不全における糖尿病・悪液質・肥満に関する研究デザインの論文を紹介します。

Stephan von Haehling, Mitja Lainscak, Wolfram Doehner, Piotr Ponikowski, Giuseppe Rosano, Jens Jordan, Piotr Rozentryt, Mathias Rauchhaus, Rostislav Karpov and Vsevolod Tkachuk, et al. Diabetes mellitus, cachexia and obesity in heart failure: rationale and design of the Studies Investigating Co-morbidities Aggravating Heart Failure (SICA-HF). Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle Volume 1, Number 2, 187-194, DOI: 10.1007/s13539-010-0013-3Open Access

下記のHPで全文PDFファイルで見れます。

http://www.springerlink.com/content/a47h021348vguw23/fulltext.pdf

研究デザインを紹介する論文が増えている印象があります。通常の原著論文より研究デザイン論文を読むほうが、研究デザインの学習になりますので、たまに読むことをお勧めします。人、物、金、知識、時間といった研究資源を贅沢に使えると、こんな臨床研究ができるということがわかります。そのままマネすることは絶対にできませんが、参考にはなります。

慢性心不全では糖尿病や肥満を合併していることは少なくありませんが、それらの存在は十分認識されています。一方、悪液質も合併していることが実は少なくないのですが、あまり認識されていません。そこでこの研究は、以下の6つを目的として行われます。

Objective 1: To characterise the prevalence, incidence, persistence and phenotype of obesity, cachexia and type 2 diabetes in patients with CHF

Objective 2: To describe patterns of exercise capacity and cardiorespiratory reflex control

Objective 3: To analyse body composition and its changes over time in patients with CHF and type 2 diabetes, obesity or cachexia

Objective 4: To investigate the incidence and prevalence of sleep-disordered breathing and its impact on the clinical severity in patients with CHF

Objective 5: To establish the impact of impaired vascular reactivity on impaired skeletal muscle metabolic and functional capacity, including its underlying mechanisms

Objective 6: To describe the interplay and metabolic signalling pathways between adipose tissue, skeletal muscle, the bone marrow and the heart in patients with heart failure and type 2 diabetes, obesity and cachexia

この研究のオーバービューの図を示します。1600人以上の慢性心不全患者をリクルートして4年間フォローするという大規模コホート研究です。6カ国、11センターで行うそうです。観察研究ではこのような臨床研究が理想的なモデルの1つかもしれません。数年後の原著論文が楽しみです。

Abstract
Background
Chronic heart failure (CHF) is increasing in prevalence. Patients with CHF usually have co-morbid conditions, but these have been subjected to little research and consequently there is a paucity of guidance on how to manage them. Obesity and diabetes mellitus are common antecedents of CHF and often complicate management and influence outcome. Cachexia is an ominous and often missed sign in patients with CHF.
Methods
This manuscript describes the rationale and the design of Studies Investigating Co-morbidities Aggravating Heart Failure (SICA-HF), a prospective, multicentre, multinational, longitudinal, pathophysiological evaluation study, which is being conducted in 11 centres across six countries in the European Union and in Russia. We aim to recruit >1,600 patients with CHF due to various common aetiologies, irrespective of left ventricular ejection fraction, and with or without co-morbidities at study entry. In addition, >300 patients with type 2 diabetes mellitus without CHF and >150 healthy subjects will serve as control groups. Participants will be systematically investigated at annual intervals for up to 48 months. Additional investigations focusing on cellular and subcellular mechanisms, adipose and skeletal muscle tissue, and in endothelial progenitor cells will be performed in selected subgroups.
Conclusions
SICA-HF will provide insights into common co-morbidities in CHF with a specific emphasis on diabetes mellitus and body mass. This will provide a more thorough pathophysiological understanding of the complexity of CHF that will help develop therapies tailored to manage specific co-morbidities.

2010年12月28日火曜日

高齢リハ患者のビタミンBと入院期間の関連

リハを行っている高齢者のビタミンBと入院期間の関連をみた横断研究の論文を紹介します。

F. O’Leary, V. M. Flood, P. Petocz, M. Allman-Farinelli and Samir Samman. B Vitamin status, dietary intake and length of stay in a sample of elderly rehabilitation patients. The Journal of Nutrition, Health & Aging DOI: 10.1007/s12603-010-0330-4

対象はリハを行っている高齢者52人。平均年齢80歳、平均BMI26.4kg/m2、平均MNA得点22点(MNAは17点~23.5点が低栄養の恐れあり、17点未満が低栄養)。

ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の欠乏はそれぞれ、30人、22人、5人に認めた。

多変量解析ではビタミンB6とメチルマロン酸が入院期間と関連していた。

リハを行っている高齢者では、MNAで低栄養の恐れありの患者が平均的で、平均BMIは26.4kg/m2であっても58%にビタミンB6欠乏、42%にビタミンB12欠乏を認めるという結果です。ビタミンB6は入院期間に関連しています。

リハを行っている高齢者では、3大栄養素だけでなく微量栄養素の不足、欠乏にも注意を示すことが必要だといえます。回復期リハ病棟で微量栄養素の血中濃度を定期的に評価することは現実的ではありませんが、微量栄養素の不足、欠乏に関心を持つことは、リハの予後にも関わる可能性がありますので重要です。

Abstract
Objectives
To investigate the relationships between previous diet, biomarkers of selected B vitamins, nutritional status and length of stay.
Design
Cross sectional study. Setting: Geriatric rehabilitation patients, Sydney, Australia.
Participants
Fifty two consenting patients with normal serum creatinine levels and no dementia.
Measurements
Serum vitamin B12, plasma vitamin B6, serum and erythrocyte folate, homocysteine and methylmalonic acid (MMA) concentrations; dietary intake using a validated semi-quantitative food frequency questionnaire and nutritional assessment using the Mini Nutritional Assessment (MNA). Length of stay data were collected from medical records after discharge.
Results
The age was 80 ± 8 year (mean ± SD), BMI 26.4 ± 6.8 kg/m2 and MNA score 22 ± 3 indicating some risk of malnutrition. Deficiencies of vitamins B6, B12 and folate were found in 30, 22 and 5 subjects respectively. Length of stay was positively correlated with age and MMA (Spearman’s correlation 0.4, p<0.01 and 0.28, p<0.05 respectively) and negatively correlated with albumin, vitamin B6 and MNA score (Spearman’s correlation -0.35, -0.33 and -0.29, p<0.05). After adjustment for age and sex, ln vitamin B6 and ln MMA concentrations were significant in predicting ln LOS (p=0.006 and p=0.014 respectively).
Conclusion
The study indicates a high risk of vitamin B deficiencies in the elderly and suggests that deficiencies of vitamins B6 and B12 are associated with length of stay. This is concerning as B vitamin status is rarely fully assessed.

管理栄養士養成課程におけるモデルコアカリキュラムとリハ栄養

日本栄養改善学会が昨年提案した「管理栄養士養成課程におけるモデルコアカリキュラム」を下記HPで見ることができます。

http://www.jade.dti.ne.jp/~kaizen/about/pdf/model_core_090523.pdf

基本方針は下記の3点とのことで、必要最小限に整理されたものです。

1.4年制の管理栄養士養成のためのモデルコアカリキュラムとする。
2.今後5~10年後の社会的要請や管理栄養士の役割の変化に対応できるものとする。
3.管理栄養士が活躍する何れの職場においても必要な共通の教育内容(コア)について,養成施設における総必修教育内容の70%程度を目途に整理し,これ(コア)をAと表示する。残り30%程度は,各養成施設の教育理念に基づく,独自の特色ある教育内容を設定する枠と考え,その際の参考として,Bの項目を用意する。

必要最小限とはいえそれでも莫大な項目で、これだけのことを4年間で学習するのかと考えると大変だなあと実感します。この中でリハ栄養に関連する領域を検討してみました。授業時間の目安では、以下の項目が該当します。

Ⅴ.実践専門科目
4.ライフステージ等における身体特性と栄養マネジメントについて学ぶ
 5)運動時の身体特性と栄養マネジメント A15EU B6EU (1EU=15分、6EU=90分=1コマの授業)
5.医療・介護・福祉における栄養管理について学ぶ
 6)要支援・要介護者の栄養管理(在宅を含む) A15EU B0EU
 7)障がい者の栄養管理(小児を含む) A15EU B0EU

運動栄養学で2.5~3.5コマ、要支援・要介護者・障がい者の栄養管理で合計5コマということになります。

各論では以下のようになっています。

5)運動時の身体特性と栄養マネジメント
A 3 ① 生涯を通じた健康管理のための身体活動・運動の意義について説明できる。
A 3 ② 健康づくりのための運動基準および健康づくりのための運動指針(エクササイズガイド)の基本概念および科学的根拠について説明できる。
A 3 ③ 身体活動・運動時のエネルギー・基質代謝および生理的変化の特徴について説明できる。
A 3 ④ 年齢,運動の種類,強度(メッツ,%最大酸素摂取量),時間に応じた栄養マネジメントについて説明できる。
A 3 ⑤ 体力を向上させるための運動の種類とトレーニングの方法について概説できる。
B 6 ⑥ 様々なトレーニング時の効果的な栄養補給法について概説できる。

6)要支援・要介護者の栄養管理(在宅を含む)
A 5 ① 要支援・要介護レベルに対応した栄養マネジメントができる。
A 5 ② 要支援・要介護レベルに対応した生活・食事支援について説明できる。
A 2 ③ 要支援・要介護者の支援者に対する栄養教育ができる。
A 3 ④ 介護予防のための栄養マネジメントと栄養教育ができる。

7)障がい者の栄養管理(小児を含む)
A 5 ① 障害のレベルに対応した栄養マネジメントができる。
A 5 ② 障害のレベルに対応した生活・食事支援について説明できる。
A 2 ③ 障がい者およびその支援者に対する栄養教育ができる。
A 3 ④ 障がい者の社会的支援について概説できる。

モデルコアカリキュラムには莫大な項目が含まれていますので、それを考えるとリハ栄養に関連した項目がこれだけ含まれているのはありがたいことかもしれません。また、各論では嚥下障害・嚥下性肺炎に関することが数か所出ていましたので、これからの管理栄養士は嚥下障害の基本を理解していると考えてよさそうです。

ただ私が見た限りでは、「リハとは」「障害とは」「ICF(国際生活機能分類)とは」に関する内容は、「A 2疾病の一次,二次,三次予防について説明できる。」以外にありませんでした。

30分で一次,二次,三次予防について説明しようと思ったら、リハに割ける時間は10分以内でしょう。これではリハ・障害・ICFに関する理解を深めることは難しいと思います。せめて病院に勤務希望の管理栄養士には、リハ・障害・ICFに関する卒前学習をもっと充実させてほしいと思います。

2010年12月27日月曜日

進行がんにおける筋肉量・筋力と疲労の関連

J Cachexia Sarcopenia Muscleの最新号の中から、進行がんにおける筋肉量・筋力と疲労の関連をみた論文を紹介します。

Robert D. Kilgour, Antonio Vigano, Barbara Trutschnigg, Laura Hornby and Enriqueta Lucar, et al. Cancer-related fatigue: the impact of skeletal muscle mass and strength in patients with advanced cancer. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2010) 1:177–185 DOI 10.1007/s13539-010-0016-0

下記のHPで全文をPDFファイルで見れます。

http://www.springerlink.com/content/g20k5113v01203t2/fulltext.pdf

がんに関連した疲労(cancer-related fatigue, CRF)と筋肉量・筋力の関連を進行がん患者で評価した横断研究です。

対象は、診断後半年以内で、手術適応のない消化管がんもしくは非小細胞の肺がん患者84人。がんに関連した疲労はBrief Fatigue Inventory (簡易倦怠感尺度)で評価。筋力として握力と大腿四頭筋筋力を評価。筋肉量はDEXAで評価。

日本語版BFIは下記HPを参照して下さい。
http://pod.ncc.go.jp/documents/BFI.pdf

単変量解析で、がんに関連した疲労はBMI、体重減少、貧血、低アルブミン血症、活動レベル、痛み、抑うつ、サルコペニア(握力、大腿四頭筋筋力、筋肉量)と関連していました。

多変量解析でも、がんに関連した疲労はサルコペニア(握力、大腿四頭筋筋力、筋肉量)と関連していました。

横断研究ですので、サルコペニアだからがんに関連した疲労があるのか、がんに関連した疲労があるからサルコペニアなのかの因果関係は検証できません。印象としてはどちらもありそうな気もします。ただ、悪液質が存在するために、がんに関連した疲労とサルコペニアの両者とも認める気もします。このあたりは今後の検証が必要です。

リハ栄養としては、疲労・倦怠感に対するアプローチとサルコペニアに対するアプローチの両方が重要だといえます。

Abstract

Background
Although exertional fatigue is directly and negatively related to skeletal muscle mass and strength, it is currently unknown if these variables are associated with cancer-related fatigue (CRF). Therefore, the purpose of this study was to determine if CRF is associated with measures of appendicular lean muscle mass and strength in advanced cancer patients (ACP).

Methods and results
Eighty-four patients (48 men, 36 women aged 61.6 ± 13.2 year) newly diagnosed (≤6 months) with inoperable (Stages III–IV) gastrointestinal or non-small cell lung cancer participated in this study. All patients completed the Brief Fatigue Inventory (BFI). Handgrip (HGS) and quadriceps (QS) strength were assessed using isometric and isokinetic dynamometry, respectively. Skeletal muscle mass index (SMMI) was calculated from the appendicular lean mass measured via dual-energy X-ray absorptiometry divided by body height squared. Univariate analysis showed BFI to be significantly associated with body mass index, weight loss, anemia, hypoalbuminemia, activity level, pain, depression, and sarcopenia along with SMMI, HGS, and QS. HGS (r = −0.34; p = 0.018), QS (r = −0.39; p = 0.024), and SMMI (r = −0.60; p < 0.001) were negatively correlated with BFI total scores in men but not in women. When adjusted for sex, age, diagnosis, survival, along with the above characteristics, multivariate analyses showed that BFI scores were negatively associated with HGS (B = −0.90; 95% CI −1.5:−0.3), QS (−0.2; −0.3:−0.01), and SMMI (−7.5; −13.0:−2.0). There was a significant sex × SMMI interaction (10.8; 1.2:20.5), where BFI decreased with increasing SMMI in men, but did not change with SMMI in women.

Conclusion
These results suggest that in ACP, CRF is related to muscle mass and strength, which may provide targets for future interventions.

Geriatric Medicine最新号特集:高齢者の誤嚥性肺炎

Geriatric Medicine(老年医学)の最新号(2010年12月号)で、「高齢者の誤嚥性肺炎」が特集されています。

http://www.lifesci.co.jp/cgi-bin/search/periodicals.cgi?type=gm#04

私も藤谷先生からのご依頼で「摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養の進め方」という論文を執筆させていただきました。SUMMARYのみ以下に紹介します。

SUMMARY
 非経口栄養患者が少量でも経口摂取を併用できればQOLが向上するので、すべての患者に食べるチャンスを作ることが、非経口栄養のマネジメントの原則である。その際、経口摂取にはこだわるが、経口摂取のみにはこだわらない。摂食・嚥下機能はスクリーニングテストや5つの期で評価する。
 誤嚥性肺炎は嚥下筋のサルコペニアと関連している。サルコペニアは狭義では加齢に伴う筋肉量の低下、広義ではすべての原因による筋肉量と筋力の低下となる。広義の原因には、加齢、活動(廃用、禁食)、栄養(飢餓)、疾患(侵襲、悪液質、原疾患)がある。誤嚥性肺炎ではすべての原因を認めることが多いため、リハビリテーション栄養の考え方が有用である。

高齢者の誤嚥性肺炎は数がとても多いにもかかわらず、体系的な書籍や雑誌が少ないです。今回の特集では比較的わかりやすく高齢者の誤嚥性肺炎についてまとめられていると思います。誤嚥性肺炎についてまとめて学習したい方におすすめします。

内容

高齢者の誤嚥性肺炎
藤谷 順子(独立行政法人国立国際医療研究センターリハビリテーション科医長)

序文 藤谷 順子 
総説
1. 誤嚥性肺炎の診断と治療の組み立て方 海老原 覚
2. 誤嚥性肺炎の疫学 山脇 正永
3. 誤嚥と嚥下のメカニズム
 1) 嚥下機能のメカニズム 鮫島 靖浩
 2) 中枢性のメカニズム―脳卒中後誤嚥性肺炎の制御メカニズムを中心に― 卜部 貴夫
各論
1. 誤嚥性肺炎の診断・治療と最近の考え方 寺本 信嗣
2. 誤嚥性肺炎の院内連携 藤谷 順子
3. 在宅医療における誤嚥性肺炎
 1) 在宅医療を中心にした連携 冨山 宗徳
 2) 看護師の立場から誤嚥性肺炎をみる 藤森まり子
 3) 訪問歯科医師の立場から誤嚥性肺炎をきる 五島 朋幸
 4) 栄養士の立場から誤嚥性肺炎をみる 江頭 文江
4. 非経口栄養のマネジメント
 1) 在宅で行う胃瘻マネジメント 岡田 晋吾
 2) 非経口栄養法のマネジメント 瀬田  拓
 3) 摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養の進め方 若林 秀隆
座談会 高齢者の誤嚥性肺炎における栄養管理―胃瘻を入れないという選択肢―
英  裕雄
小坂 陽一
藤谷 順子
鷲澤 尚宏
岩本 俊彦

2010年12月26日日曜日

悪液質とグレリン


今回のJ Cachexia Sarcopenia Muscleにはグレリンのレビュー論文が2つあります。このうち、日本人が執筆したレビュー論文のほうを紹介します。

Takashi Akamizu and Kenji Kangawa: Ghrelin for cachexia. J Cachexia Sarcopenia Muscle (2010) 1:169–176 DOI 10.1007/s13539-010-0011-5

下記のHPで全文、PDFファイルで見れます。

http://www.springerlink.com/content/h1q54m750h18552r/fulltext.pdf

以前にもグレリンを紹介したことがありますが、グレリンは食欲を増進させるホルモンであり、同化ホルモンです。そのため、悪液質に対する治療効果があるのではないかと考えられています。

図に示すようにグレリンは、食欲増強による食事摂取量の増加だけでなく、炎症性サイトカインの減少、成長ホルモンとIGF-1(インシュリン様成長因子1)の分泌増加による効果が期待されます。

実際、うっ血性心不全、がん、COPD、慢性腎不全といった悪液質の原因となる主な疾患で効果が報告されています。その他、神経性食思不振症、機能性胃腸症、加齢(サルコペニア)、胃切後の食思不振、食道切除後、化学療法、熱傷でもグレリンの効果をみた研究がされています。

早くグレリンが臨床で使用できるようになればと期待しています。

Abstract
Ghrelin, a natural ligand for the growth hormone (GH)-secretagogue receptor, is primarily produced in the stomach. Administration of ghrelin stimulates food intake and GH secretion in both animals and humans. Ghrelin is the only circulating hormone known to stimulate appetite in humans. As GH is an anabolic hormone, protein stores are spared at the expense of fat during conditions of caloric restriction. Ghrelin also inhibits the production of anorectic proinflammatory cytokines. Thus, ghrelin exhibits anti-cachectic actions via both GH-dependent and -independent mechanisms. Several studies are evaluating the efficacy of ghrelin in the treatment of cachexia caused by a variety of diseases, including congestive heart failure, chronic obstructive pulmonary disease, cancer, and end-stage renal disease. These studies will hopefully lead to the development of novel clinical applications for ghrelin in the future. These studies have also facilitated a better understanding of the molecular basis of the anti-catabolic effects of ghrelin. This review summarizes the recent advances in this area of research.

Intensive care unit acquired weakness(ICUAW) とリハ栄養


重症敗血症、敗血症性ショックによるIntensive care unit acquired weakness(ICUAW):ICUにおける筋力低下に関するレビュー論文を紹介します。

Joerg C. Schefold, Jeffrey Bierbrauer and Steffen Weber-Carstens: Intensive care unit—acquired weakness (ICUAW) and muscle wasting in critically ill patients with severe sepsis and septic shock. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle(2010) 1:147–157 DOI 10.1007/s13539-010-0010-6

以下のHPでPDFファイルで全文を見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/r07l767wv3k54523/fulltext.pdf

Intensive care unit acquired weakness(ICUAW)は、適切な日本語訳がまだないようですが、ICU入室中に生じるCritical Illness Polyneuropathy/Myopathy(重症疾患多発ニューロパチー・ミオパチー)などの総称です。

ICUには敗血症も含めて当然、高度侵襲の患者が数多くいますので、1-2週間の入室でも急速に筋肉量が低下します。神経生理学的検査でCritical Illness Polyneuropathy/Myopathy/Myoneuropathyとこれらの合併に分類できるようです。

ICUAWの原因としては、図に示すように、大きく5つが考えられています。多臓器不全、ベッド上安静、高血糖、ステロイド使用、神経筋阻害剤使用。広義のサルコペニアに関しては、ICUAWに加え、敗血症、廃用、絶食、がん、臓器不全も関わります。

ICUAWの治療としては、原疾患の治療はもちろんですが、敗血症の管理、早期離床・早期リハ、血糖コントロール、ステロイド・神経筋阻害剤・鎮静剤の使用を適切に行い、可能な範囲で少なくすることになります。

以下、私の見解です。リハ栄養でできることは、人工呼吸器装着下でも早期離床・リハを行うこと、敗血症のときは低栄養も過栄養も避けた適切な栄養管理を行い、血糖コントロールを一定程度厳格に行うことになります。重症患者の治療中でも早期リハが重要です。

廃用症候群と診断される患者の一部には、ICUAWの患者が含まれています。リハや栄養管理の重要性は確かですが、単独での著明な効果はあまり期待できないのではないかと私は思います。原疾患の治療、適切な栄養管理、適切なリハの3本柱を同時に行ってはじめて、ある程度の効果を期待できると考えます。

Abstract
Sepsis presents a major health care problem and remains one of the leading causes of death within the intensive care unit (ICU). Therapeutic approaches against severe sepsis and septic shock focus on early identification. Adequate source control, administration of antibiotics, preload optimization by fluid resuscitation and further hemodynamic stabilisation using vasopressors whenever appropriate are considered pivotal within the early—golden—hours of sepsis. However, organ dysfunction develops frequently in and represents a significant comorbidity of sepsis. A considerable amount of patients with sepsis will show signs of severe muscle wasting and/or ICU-acquired weakness (ICUAW), which describes a frequently observed complication in critically ill patients and refers to clinically weak ICU patients in whom there is no plausible aetiology other than critical illness. Some authors consider ICUAW as neuromuscular organ failure, caused by dysfunction of the motor unit, which consists of peripheral nerve, neuromuscular junction and skeletal muscle fibre. Electrophysiologic and/or biopsy studies facilitate further subclassification of ICUAW as critical illness myopathy, critical illness polyneuropathy or critical illness myoneuropathy, their combination. ICUAW may protract weaning from mechanical ventilation and impede rehabilitation measures, resulting in increased morbidity and mortality. This review provides an insight on the available literature on sepsis-mediated muscle wasting, ICUAW and their potential pathomechanisms.

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle Vol1(2)

Journal of Cachexia, Sarcopenia and MuscleのVol1(2)が出版されました。下記のHPで全文読むことができます。

http://www.springerlink.com/content/2190-5991/1/2/

以下の7論文が掲載されています。興味ある論文について、順番にブログで紹介したいと思います。

An overview of sarcopenia: facts and numbers on prevalence and clinical impact
Stephan von Haehling, John E. Morley and Stefan D. Anker

Pathophysiology and treatment of inflammatory anorexia in chronic disease
Theodore P. Braun and Daniel L. Marks

Intensive care unit—acquired weakness (ICUAW) and muscle wasting in critically ill patients with severe sepsis and septic shock
Joerg C. Schefold, Jeffrey Bierbrauer and Steffen Weber-Carstens

Ghrelin and its potential in the treatment of eating/wasting disorders and cachexia
Timo D. Müller, Diego Perez-Tilve, Jenny Tong, Paul T. Pfluger and Matthias H. Tschöp

Ghrelin for cachexia
Takashi Akamizu and Kenji Kangawa

Cancer-related fatigue: the impact of skeletal muscle mass and strength in patients with advanced cancer
Robert D. Kilgour, Antonio Vigano, Barbara Trutschnigg, Laura Hornby and Enriqueta Lucar, et al.

Diabetes mellitus, cachexia and obesity in heart failure: rationale and design of the Studies Investigating Co-morbidities Aggravating Heart Failure (SICA-HF)
Stephan von Haehling, Mitja Lainscak, Wolfram Doehner, Piotr Ponikowski and Giuseppe Rosano, et al.

この中でまずは、An overview of sarcopenia: facts and numbers on prevalence and clinical impact
を紹介します。レビュー論文ですので新知見はありませんが、原発性サルコペニア(加齢によるサルコペニア)のレビューとしてコンパクトによくまとまっています。箇条書きでポイントを記載します。

・50歳以降、筋肉量は1年あたり1-2%減少。

・筋力は50代では1年あたり1.5%減少、60代以降では1年あたり3%減少

・サルコペニアの診断は、筋肉量が若年の2標準偏差以下で歩行速度が0.8m/s以下の場合。

・平均的には、60~70歳の5~13%、80歳以上の11~50%にサルコペニアを認める。

・Frailtyの約2倍、サルコペニアの人がいる。

・サルコペニアの治療はまだ研究途上であるが、筋トレ、テストステロン、成長ホルモン、ビタミンD、ACE阻害剤が検討されている。

(私の見解:この中で明らかに有効なのは筋トレだけですが、ビタミンD不足の場合にはビタミンD投与、高血圧の場合にはACE阻害剤の使用を検討してよいと思います。テストステロンと成長ホルモンは、現状ではおすすめできません。)

・栄養介入としては高カロリー栄養剤の投与(10週間の1日360kcalの栄養剤+筋トレ、必須アミノ酸の投与が有効という報告がある。

・最初にサルコペニアの存在を疑うことが重要。

・二次性サルコペニア(活動、栄養、疾患による筋肉量減少)をサルコペニア(加齢によるもの)に含めるかどうかには、賛否両論がある。

・サルコペニア(筋肉量低下)とダイナペニア(筋力低下)は分けて考えるべきという意見もある。

Abstract
Human muscle undergoes constant changes. After about age 50, muscle mass decreases at an annual rate of 1–2%. Muscle strength declines by 1.5% between ages 50 and 60 and by 3% thereafter. The reasons for these changes include denervation of motor units and a net conversion of fast type II muscle fibers into slow type I fibers with resulting loss in muscle power necessary for activities of daily living. In addition, lipids are deposited in the muscle, but these changes do not usually lead to a loss in body weight. Once muscle mass in elderly subjects falls below 2 standard deviations of the mean of a young control cohort and the gait speed falls below 0.8 m/s, a clinical diagnosis of sarcopenia can be reached. Assessment of muscle strength using tests such as the short physical performance battery test, the timed get-up-and-go test, or the stair climb power test may also be helpful in establishing the diagnosis. Sarcopenia is one of the four main reasons for loss of muscle mass. On average, it is estimated that 5–13% of elderly people aged 60–70 years are affected by sarcopenia. The numbers increase to 11–50% for those aged 80 or above. Sarcopenia may lead to frailty, but not all patients with sarcopenia are frail—sarcopenia is about twice as common as frailty. Several studies have shown that the risk of falls is significantly elevated in subjects with reduced muscle strength. Treatment of sarcopenia remains challenging, but promising results have been obtained using progressive resistance training, testosterone, estrogens, growth hormone, vitamin D, and angiotensin-converting enzyme inhibitors. Interesting nutritional interventions include high-caloric nutritional supplements and essential amino acids that support muscle fiber synthesis.

2010年12月25日土曜日

図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ

今日は、中屋豊著、図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ――メディカルサイエンスシリーズ、秀和システムを紹介します。

http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/2287.html

一般の方向けの書籍ですが、管理栄養士以外の医療人が読んでも十分、栄養の基本を学習できる書籍になっています。図解入門メディカルサイエンスシリーズとしての出版ですが、入門書のレベルは超えています。

私が読んでも「そうだったのか」と納得できることが少なからずありましたし、コラムや著者紹介も中屋先生らしさが出ていて面白いです。「基本としくみ」というタイトルとはいえ、初中級程度のレベルだと私は感じました。

管理栄養士には常識だと思いますが、管理栄養士以外の職種でNST専門療法士を目指す人(特にPT・OT・ST・DH)におすすめします。「白本」よりずっとわかりやすいです。

目次
chapter 1 栄養とは何だろう?
1-1 食べることの意味―動くため、生命維持のため
1-2 飢餓と半飢餓―飢餓になると体はどうなる?
1-3 栄養不良―栄養とケガや病気との関係
1-4 過栄養―栄養が多すぎるとどうなる?
chapter 2 消化器のしくみ
2-1 消化器と消化管―高度な機能を備えたくだ
2-2 口腔、咽頭、食道―正常に嚥下するための臓器
2-3 胃―食物を蓄えて送り出す臓器
2-4 小腸―消化、吸収の中心的な臓器
2-5 膵臓―消化酵素を分泌する臓器
2-6 大腸―水、電解質を吸収する臓器
2-7 消化―食物を小さな分子まで分解
2-8 吸収―特別な輸送システムを使う
chapter 3 三大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)
3-1 糖質―体のエネルギー源
3-2 タンパク質―体を維持する多様な機能
3-3 脂質―多すぎるのは問題だけど……
chapter 4 ビタミンのはたらき
4-1 ビタミンの発見―病原体のない病気とは?
4-2 ビタミンA―感染症の予防に役立つ
4-3 ビタミンD―骨を丈夫にするために
4-4 ビタミンE―抗酸化作用をもっている
4-5 ビタミンK―血液凝固に関係している
4-6 水溶性ビタミンとは―過剰症はないけれど……
4-7 ビタミンB1(チアミン)―欠乏では心不全、神経疾患
4-8 ビタミンB2(リボフラミン)―脂質代謝に重要な補酵素
4-9 ビタミンB6―酸化還元反応などの補酵素
4-10 ビタミンB12(コバラミン)―胃の異常で欠乏症が生じる
4-11 葉酸―核酸合成には欠かせない
4-12 ナイアシン―エネルギー産生に関わる
4-13 パントテン酸―糖、脂質代謝の中心
4-14 ビオチン―アトピー性皮膚炎に有効
4-15 ビタミンC―コラーゲンの合成に必要
chapter 5 ミネラルのはたらき
5-1 ナトリウム(Na)―体液量と深い関係をもつ
5-2 クロール(Cl)―血液中で一番多い陰イオン
5-3 カリウム(K)―細胞内に一番多いイオン
5-4 カルシウム(Ca)―骨に大事なだけでなく……
5-5 リン(P)―カルシウムと密接に関わる
5-6 鉄(Fe)―酸素を運ぶ重要なミネラル
5-7 マグネシウム(Mg)―骨や歯の形成に欠かせない
5-8 亜鉛(Zn)―一番不足しやすいミネラル
5-9 銅(Cu)―酵素反応に必要なミネラル
5-10 その他の微量栄養素―生体に必要な、意外な金属
chapter 6 その他の栄養素
6-1 食物繊維―新しい機能が見つかった!
6-2 ポリフェノール―強力な抗酸化作用をもつ
6-3 糖アルコール―人工甘味料として使われる
6-4 カフェイン―眠気が覚めるのはどうして?
6-6 その他のフィトケミカル―体によい植物由来の成分
chapter 7 栄養素と遺伝子
7-1 ニュートリゲノミクス―栄養素は遺伝子にも働く!
7-2 アルコール―お酒を科学してみると……
chapter 8 病気と栄養
8-1 メタボリックシンドロームと栄養―食べ過ぎはなぜいけない?
8-2 糖尿病と栄養―食べてはいけない物はある?
8-3 コレステロールと栄養―タマゴは本当に悪いもの?
8-4 虚血性心疾患と栄養―心筋梗塞を予防するには?
8-5 高血圧と栄養―塩はなぜ血圧を上げる?
8-6 痛風と栄養―痛風には肥満が大敵!
8-7 肝硬変と栄養―アミノ酸のインバランス
8-8 腎臓病と栄養―タンパク制限がなぜ必要?
8-9 肺疾患と栄養―重症では基礎代謝が亢進
8-10 ガンと栄養―ガンを予防する食品とは?
8-11 手術と栄養管理―手術前後は栄養管理が重要
chapter 9 運動と栄養
9-1 運動時のエネルギー―3つのエネルギー産生経路
9-2 筋肉をつける食事―タンパク質を摂ればよい?
9-3 マラソンと栄養補給―レースに勝つための栄養学
9-4 運動とサプリメント―本当に必要でしょうか?
chapter 10 栄養のウソ、ホント
10-1 機能性食品、トクホ―日本発の食品機能評価
10-2 体に良い食品、悪い食品?―「……に良い」の落とし穴
10-3 食品の広告―効果は過大、副作用は過小

2010年12月22日水曜日

博士の活かし方


産業技術総合研究所による「博士の活かし方 博士は21世紀の人材鉱脈」という報告書を下記のHPで見ることができます。

http://unit.aist.go.jp/humanres/ci/phd-career/pdf/Dr's-career2010.pdf

博士号取得者やポスドクは近年増えましたが、アカデミックキャリアにはポストが少ない、その先のキャリアの展望が見えない、企業は博士取得者の採用にあまり積極的でない、など博士号取得者やポスドクをとりまく環境は厳しいものがあります。

そこで博士号取得者の魅力など、その後のキャリアがより充実するような前向きな報告書になっています。

第1章 博士を眺める
第2章 博士を探る
第3章 博士を活かす

から構成されています。第2章の最初には「博士はお買い得」として、博士の能力の図が掲載されていましたので、引用紹介させていただきます。

この図に示される8つの能力がすべて卓越していたら、実にすばらしい人材です。実際、博士課程やポスドクでの研究生活を通じて、これらの能力が磨かれることは確かだと思います。私も医療人には臨床研究をおすすめしていますし、臨床研究を通じてFD全般のスキルが磨かれると実感しています。

ただ個人的には、これら8つの能力を見て、すべてに卓越しているのは経営コンサルタントだというイメージがあります。博士号取得者やポスドクのイメージは正直、あまり湧きません。

私はFDやビジネススキル関連の書籍を比較的読んでいるほうだと思いますが、博士号取得者やポスドクが著者となっている書籍は少ない気がします。コンサルタントやMBA取得者が多い印象です。もっともそんな書籍を書くほど研究生活は暇ではないとも思いますが…。

研究環境がより充実したほうがよいことは確かです。すべての博士号取得者やポスドクにはぜひ8つの能力すべてに卓越してほしいと思います。あと、質、量ともにより成果をだせるようにマネジメント能力にも卓越してほしいですね。私が博士号を取得する予定はありませんが、私も頑張ります。

これならわかる! ドラッカー思考

今日は、枝川公一著、これならわかる! ドラッカー思考、PHP文庫を紹介します。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-67558-9

今年は「もしドラ」が年間ベストセラー第1位になったこともあり、ドラッカー関連の書籍の出版が増えています。この書籍は「巨人ドラッカーの真髄」という単行本を今年、文庫化したものです。

ドラッカー関連の書籍は玉石混淆ですが、この書籍はタイトル通り、確かにドラッカー思考をわかりやすく解説していると思います。本来はドラッカーの書籍(プロフェッショナルの条件など)を一番おすすめしますが、それでは難解という方には、この書籍をおすすめします。

第2部 人、いかに生きるべきかは、学習方法に関してとても参考になりますので、目次に紹介していない項目のみ記載します。まさにドラッカー流だと私は感じます。

・仕事は、自分の強みを自覚し、それを十分に発揮する場である

・生きがいは、プロの仕事にこそ見出せる

・やるべきことは何かを自らに問え

・もっともよく学ぶためには、自らを教育しなければならない

・自分に合った学び方で学んで、はじめて成果が上がる

・より深く、より広い学びの場を求めて、外に出よ

・四十代半ばからは「第二の職業人生」をはじめるべきである

目次

第1部 変革される組織
(知識から何かを生み出す作業は、すべてマネジメントである
組織は、個人の知識が最大限に発揮される場でなければならない
組織は、情報本位につくり変えなければならない ほか)

第2部 人、いかに生きるべきか
(人は、仕事を好きになりたいと思い、満足できる仕事をしたがっている
働きがいは、まず自分の仕事を定義することから生まれる
自分の価値観に合致する仕事を見つけなければならない ほか)

第3部 構築される現実
(知識こそが、ほんとうの資本である
政治は集団の利害から分離する
社会は多元化し、国家が権威を失墜する ほか)

2010年12月21日火曜日

経鼻経管で持続ポンプを使用すると肺炎が減少するか

経鼻経管で持続ポンプを使用すると肺炎が減少するかをみたランダム化比較試験を紹介します。

Lee JS, Kwok T, Chui PY, Ko FW, Lo WK, Kam WC, Mok HL, Lo R, Woo J. Can continuous pump feeding reduce the incidence of pneumonia in nasogastric tube-fed patients? A randomized controlled trial. Clin Nutr. 2010 Aug;29(4):453-8.

経鼻経管を必要とする178人の高齢者を対象に、間欠投与群と持続ポンプ群に割りつけて、4週間経管栄養を行いました。一次アウトカムは肺炎発症、二次アウトカムは死亡率です。

結果として肺炎は、持続ポンプ群で15人(17.6%)、間欠投与群で18人(19.4%)に認め、統計学的有意差はありませんでした。死亡率も持続ポンプ群で7人(8.2%)、間欠投与群で13人(14.0%)で、統計学的有意差はありませんでした。

経鼻経管で持続ポンプを使用しても間欠投与と比較して、肺炎は減少しないという結論です。

ただ、経鼻経管で持続ポンプを使用する長所は、肺炎予防よりも下痢予防だと私は考えます。ですので、一次アウトカムが肺炎でよかったのか疑問です。あと、死亡率に関しては統計学的有意差はありませんが、臨床的には無視できない差だと思います。

そのため、この論文だけで経鼻経管で持続ポンプを使用する必要はない、というのは言い過ぎだと思います。あと、チューブ先端が胃ではなく空腸の場合には、今回の研究結果は当てはまりません。持続ポンプを使用することが原則だと考えます。

Abstract
BACKGROUND & AIMS: Continuous pump feeding is often used to reduce aspiration risk in older patients on tube feeding, but its effectiveness in preventing aspiration pneumonia is unproven. A randomized controlled trial was therefore performed to examine the effectiveness of continuous pump feeding in decreasing the incidence of pneumonia in tube-fed older hospital patients.

METHODS: One hundred and seventy eight elderly patients from three convalescence hospitals and one infirmary, on nasogastric tube feeding, were randomly assigned to have intermittent bolus (bolus) or continuous pump (pump) feeding for 4weeks. The primary outcome was the incidence of pneumonia. The secondary outcome was mortality.

RESULTS: Eighty five subjects were randomized into the pump group and 93 in the bolus group. The groups were comparable in age, nutritional and functional status, co-morbidities and history of pneumonia, except that there were more women in the pump group. Within 4weeks, 15 subjects (17.6%) in the pump group and 18 (19.4%) in the bolus group developed pneumonia. Seven subjects (8.2%) in pump group and 13 subjects (14.0%) in bolus group died. There was no significant difference in either pneumonia or death rates between the two groups.

CONCLUSION: Continuous pump feeding did not significantly affect the rates of pneumonia or mortality in tube-fed older hospital patients when compared with intermittent bolus feeding.

Nutritional Management in the Rehabilitation Setting

eMedicine MedscapeのHPでは、リハに限らずすべての臨床医学領域のレビュー論文を見ることができます。

http://emedicine.medscape.com/

例えばPhysical Medicine & Rehabilitation Articlesの項目では、大項目として以下のような項目があります。

Arthritis and Connective Tissue Disorders
Cervical Spine Disorders
Disorders of the Motor Unit
Electrodiagnostic Medicine
Lower Limb Musculoskeletal Conditions
Lumbar Spine Disorders
Medical Diseases
Movement Disorders
Muscle Pain Syndromes
Muscular Dystrophy
Myopathy
Occupational Medicine
Orthotics
Peripheral Neuropathy
Plexopathy
Prosthetics
Rehabilitation Protocols
Spinal Cord Injury
Stroke
Therapeutic Modalities
Traumatic Brain Injury
Upper Limb Musculoskeletal Conditions

これらの中に小項目があります。Rehabilitation Protocolsの中にはなんと、Nutritional Management in the Rehabilitation Settingという小項目がありました。下記のHPで全文見ることができます。

http://emedicine.medscape.com/article/318180-overview

中身を見てみるとリハに限らない栄養管理の記載が多かったですが、それでもこのようなリハ栄養的な項目があることは嬉しいです。ただ、昨年からあったサイトなのに今まで気付いていなかったことは、個人的には問題ですが…。

イントロに以下のような記載がありました。

There is no discussion of nutritional rehabilitation per se, but some of the issues discussed are of great relevance.

やはりリハ栄養の内容は少ないのですが、リハにとって栄養管理が重要であることは記載されています。最後にNutrition for Specific Disease Statesとして、褥瘡、神経疾患、脳外傷、熱傷、脊髄損傷、肺疾患における栄養が記載されています。これらは参考になると思います。

ただ、「リハビリテーション栄養ハンドブック」の第14章:主な疾患のリハ栄養でとりあげていない疾患がなくてよかったです(笑)。

リハ以外にも多くの項目(約6500項目)について、無料でレビュー論文を見ることができますので、学習の参考になるサイトだと思います。ただし、項目によって質の高低はありそうですので、留意してください。

臨床とトランスレーションの栄養研究の発展

臨床とトランスレーションの栄養研究をどのように発展させるかというASPEN(アメリカ静脈経腸栄養学会)の論文がありました。

Frederick A. Moore, Thomas R. Ziegler, Daren K. Heyland, Paul E. Marik and Bruce R. Bistrian: Developing Research Programs in Clinical and Translational Nutrition. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2010 34: 97S-105S. DOI: 10.1177/0148607110374320

下記のHPで全文見ることができます。

http://pen.sagepub.com/content/34/6_suppl/97S.full.pdf+html

ASPENでも質の高い臨床研究が不十分なことが問題となっているようです。特に2000年以降に関しては、本文中に下記のような記載がありました。

By the early 2000s, funding from industry began to disappear.
The annual meeting of A.S.P.E.N. became less research
oriented, physician involvement notably dwindled, and the
meeting’s primary focus has largely shifted to ongoing education
of dietician and pharmacy members.

ASPENには参加したことがありませんが、研究志向が減り、医師の参加が減り、栄養士や薬剤師などコメディカルの継続教育に重きが置かれるようになってきたようです。もちろん継続教育の重要性は否定していませんが、研究志向が減っていることは問題だと思います。日本の学会でも同じような状況だと思いますが…。

そこで臨床栄養の研究活動を活発化させるための3つの戦略に関して検討しています。

1 increase funding of nutrition research

2 foster young physician training in nutrition and research

3 attract nutrition researchers to our national nutrition society meetings

日本でも1と2は同様の戦略が必要だと感じました。特に医師が臨床栄養研究を行えるようになるためのトレーニング機関が、日本にはほとんどないのでは…と思います。一方、3に関しては今のところ学会参加者はとても多いので問題になっていないと思いますが。

結語として他の専門領域の学会と一緒になって、より大きな臨床研究、トランスレーショナル研究を行うことがよいのではと記載されています。

原著論文にならないような発表が日本の学会では多いように感じます。他人事ではありませんが…。まずは臨床研究の基本を学習できる場をなるべく多くすることが必須だと考えます。

ちなみにASPENではリハ栄養というよりも、急性期、集中治療の栄養管理に重点が置かれているように読んでいて感じました。リハ栄養はASPENよりESPENかなという印象です。

Abstract
Most clinicians believe that nutrition support therapy
improves outcome in hospitalized patients. Unfortunately,
few patients receive optimal nutrition management. A lack of
strong, well-designed research studies may prevent the medical/
surgical community from fully embracing the practice.
More quality research is needed. This article discusses 3
potential strategies to improve research activity in clinical
nutrition: increase funding of nutrition research, foster young
physician training in nutrition and research, and attract
nutrition researchers to our national nutrition society meetings.
The best chance for this process to succeed is for the
national nutrition societies to partner with medical and surgical
subspecialty societies to develop larger scale clinical and
translational research programs. (JPEN J Parenter Enteral
Nutr. 2010;34:97S-105S)

ω3脂肪酸は過栄養・肥満患者の体重減少に無効

もう1つω3脂肪酸の論文です。

Laura F DeFina, Lucille G Marcoux, Susan M Devers, Joseph P Cleaver, and Benjamin L Willis: Effects of omega-3 supplementation in combination with diet and exercise on weight loss and body composition. Am J Clin Nutr December 15, 2010, doi: 10.3945/​ajcn.110.002741

ω3脂肪酸が過栄養、肥満の患者の体重減少に有効という仮説があるそうです。今回、栄養療法と運動療法は両群で行い、介入群がω3脂肪酸(1日あたりEPA2.5g、DHA0.5g)、対照群がプラセボというRCTで、ω3脂肪酸の体重減少の効果をみました。

結果は介入群(−5.2 kg; 95% CI: −6.0, −4.4 kg)と対照群(−5.8 kg; 95% CI: −6.7, −5.1 kg) で体重減少に有意差を認めませんでした。むしろ対照群のほうが有意差はありませんが、0.61 ± 0.58 kg (P = 0.29)体重が減少していました。

結論として、ω3脂肪酸は過栄養、肥満の患者の体重減少に有効とはいえません。これは妥当な結果だと私は思いますが、いかがでしょうか。

Abstract
Background: In addition to the metabolic and cardiovascular benefits of omega-3 (n−3) fatty acids, several studies have suggested an added weight loss–enhancing benefit to this supplement.

Objective: The objective was to assess whether supplemental omega-3 fatty acids in conjunction with diet and exercise augment weight loss over a 6-mo period.

Design: In a single-institution, placebo-controlled, randomized clinical trial, 128 individuals with a body mass index (in kg/m2) between 26 and 40 were assigned to receive 5 omega-3 [3.0 g eicosapentaenoic acid (EPA) plus docosahexaenoic acid (DHA) at a 5:1 ratio (EPA:DHA)] or placebo capsules daily in conjunction with lifestyle modification. The primary endpoint was weight loss; secondary endpoints included metabolic and psychometric variables. Analyses were by intention-to-treat.

Results: Overweight and obese individuals were assigned to the omega-3 arm (n = 64) or to the placebo arm (n = 64). Subjects in both arms received dietary and exercise counseling. Eighty-one individuals completed the 24-wk study, and the dropout rate was 27%. Subjects in both arms lost an average of >5% of their body weight. No significant differences in weight loss were observed between the omega-3 (−5.2 kg; 95% CI: −6.0, −4.4 kg) and placebo (−5.8 kg; 95% CI: −6.7, −5.1 kg) arms. The absolute mean (±SEM) change difference was 0.61 ± 0.58 kg (P = 0.29). In addition, no significant differences in the other factors assessed were observed.

Conclusion: Omega-3 fatty acids were not effective as an adjunct for weight loss in this otherwise healthy, overweight population.

ω3脂肪酸は高齢者の筋蛋白合成率を増加させるかも

ω3脂肪酸は高齢者の筋蛋白合成率を増加させるかもという論文を紹介します。

Smith GI, Atherton P, Reeds DN, Mohammed BS, Rankin D, Rennie MJ, Mittendorfer B. Dietary omega-3 fatty acid supplementation increases the rate of muscle protein synthesis in older adults: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2010 Dec 15. [Epub ahead of print]

ω3脂肪酸は動物実験では筋蛋白同化を刺激する作用があるそうです。そこでサルコペニアの治療にω3脂肪酸が有効かもしれないということで、健常高齢者を対象に8週間、ω3脂肪酸もしくはコーンオイル(トウモロコシ)を投与して、筋蛋白合成率を比較したRCTです。

結果として、筋蛋白合成の基礎代謝率には変化がありませんでした。しかし、hyperaminoacidemia-hyperinsulinemia-induced increase in the rate of muscle protein synthesisは有意に増加したそうです。また、mTOR(Ser2448) (P = 0.08)とp70s6k(Thr389) (P < 0.01)のリン酸化反応が有意に増加したそうです。

この結果からω3脂肪酸は高齢者の筋蛋白合成率を増加させるという結論になっていますが、この結論は言い過ぎだと私は思います。また、実際の筋肉量を測定しているわけではありませんので、仮に結論が正しかったとしても、臨床で使用することはまだ不適切だと考えます。

ω3脂肪酸の使用を検討するのは、あくまで栄養障害の原因が前悪液質か悪液質と診断された場合のみと私は考えています。

Abstract
BACKGROUND: Loss of muscle mass with aging is a major public health concern. Omega-3 (n-3) fatty acids stimulate protein anabolism in animals and might therefore be useful for the treatment of sarcopenia. However, the effect of omega-3 fatty acids on human protein metabolism is unknown.

OBJECTIVE: The objective of this study was to evaluate the effect of omega-3 fatty acid supplementation on the rate of muscle protein synthesis in older adults.

DESIGN: Sixteen healthy, older adults were randomly assigned to receive either omega-3 fatty acids or corn oil for 8 wk. The rate of muscle protein synthesis and the phosphorylation of key elements of the anabolic signaling pathway were evaluated before and after supplementation during basal, postabsorptive conditions and during a hyperaminoacidemic-hyperinsulinemic clamp.

RESULTS: Corn oil supplementation had no effect on the muscle protein synthesis rate and the extent of anabolic signaling element phosphorylation in muscle. Omega-3 fatty acid supplementation had no effect on the basal rate of muscle protein synthesis (mean ± SEM: 0.051 ± 0.005 compared with 0.053 ± 0.008%/h before and after supplementation, respectively; P = 0.80) but augmented the hyperaminoacidemia-hyperinsulinemia-induced increase in the rate of muscle protein synthesis (from 0.009 ± 0.005%/h above basal values to 0.031 ± 0.003%/h above basal values; P < 0.01), which was accompanied by greater increases in muscle mTOR(Ser2448) (P = 0.08) and p70s6k(Thr389) (P < 0.01) phosphorylation.

CONCLUSION: Omega-3 fatty acids stimulate muscle protein synthesis in older adults and may be useful for the prevention and treatment of sarcopenia. This trial was registered at clinical trials.gov as NCT00794079.

胃瘻と経鼻経管の比較:コクランレビュー

成人の嚥下障害患者に対する、胃瘻と経鼻経管の比較をしたコクランレビューがありました。

Gomes CA Jr, Lustosa SA, Matos D, Andriolo RB, Waisberg DR, Waisberg J. Percutaneous endoscopic gastrostomy versus nasogastric tube feeding for adults with swallowing disturbances. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Nov 10;11:CD008096.

経口摂取困難な場合の経管栄養ルートとして、どちらが優れているかを検討した結果、介入の失敗(経管栄養の中断、チューブの詰まりや漏れ、治療の順守負荷no adherence)は、胃瘻で19/156、経鼻経管で63/158と、胃瘻のほうが有意に少ない結果でした(RR 0.24 (95%CI 0.08 to 0.76, P = 0.01)) 。

合併症や死亡率には有意差はありませんでしたが、介入の失敗を考えると、経鼻経管より胃瘻のほうが効果的で安全だという結論です。

ただ、嚥下障害の程度から4-6週間以内の経管栄養で経口摂取に移行できると判断される場合には、やはりガイドライン通りに胃瘻造設ではなく経鼻経管にするべきでしょう。

Abstract
BACKGROUND: A number of conditions compromise the passage of food along the digestive tract. Nasogastric tube (NGT) feeding is a classic, time-proven technique, although its prolonged use can lead to complications such as lesions to the nasal wing, chronic sinusitis, gastro-oesophageal reflux, and aspiration pneumonia. Another method of infusion, percutaneous endoscopy gastrostomy (PEG), is generally used when there is a need for enteral nutrition for a longer time period. There is a high demand for PEG in patients with swallowing disorders, although there is no consistent evidence about its effectiveness and safety as compared to NGT.

OBJECTIVES: To evaluate the effectiveness and safety of PEG as compared to NGT for adults with swallowing disturbances.

SEARCH STRATEGY: We searched The Cochrane Library, MEDLINE, EMBASE, and LILACS from inception to August 2009, as well as contacting main authors in the subject area. There was no language restriction in the search.

SELECTION CRITERIA: We planned to include randomised controlled trials comparing PEG versus NGT for adults with swallowing disturbances or dysphagia and indications for nutritional support, with any underlying diseases. The primary outcome was intervention failures (feeding interruption, blocking or leakage of the tube, no adherence to treatment).

DATA COLLECTION AND ANALYSIS: Review authors performed selection, data extraction and evaluation of methodological quality of studies. For dichotomous and continuous variables, we used risk ratio (RR) and mean difference (MD), respectively with the random-effects statistical model and 95% confidence interval (CI). We assumed statistical heterogeneity when I(2) > 50%.

MAIN RESULTS: We included nine randomised controlled studies. Intervention failure occurred in 19/156 patients in the PEG group and 63/158 patients in the NGT group (RR 0.24 (95%CI 0.08 to 0.76, P = 0.01)) in favour of PEG. There was no statistically significant difference between comparison groups in complications (RR 1.00, 95%CI 0.91 to 1.11, P = 0.93).

AUTHORS' CONCLUSIONS: PEG was associated to a lower probability of intervention failure, suggesting the endoscopic procedure is more effective and safe as compared to NGT. There is no significant difference of mortality rates between comparison groups, and pneumonia irrespective of underlying disease (medical diagnosis). Future studies should include previously planned and executed follow-up periods, the gastrostomy technique, and the experience of the professionals to allow more detailed subgroup analysis.

2010年12月20日月曜日

戦略的プレゼンテーションの技術

八幡 紕芦史著、戦略的プレゼンテーションの技術‐オープンな意思決定のために、ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=%39%37%38%2D%34%2D%34%37%38%2D%34%39%30%33%35%2D%38

アマゾンでは中古品を59円から購入できるようですのでおすすめです。

この書籍も目次を読むだけでもプレゼンの参考になります。2002年の書籍でありPowerPointの作り方の解説はほとんどありませんが、第5章ビジュアル化技術は、PowerPoint原稿作りの参考に十分なります。

一番の特徴は第3章インタラクティブ・プレゼンテーションだと思います。私も含め医療人の講演は、一方的に一定時間話した後に、最後に質疑応答の時間を設定するというのがほとんどです。この書籍では双方向のプレゼンテーションをとても重要視しています。

聴き手からの質問、意見、提案、反論を話の途中であってもいつでも歓迎するというスタンスです。もっともこのスタンスにしても話の途中で質問や意見を言うことに聴き手が慣れていないので、むしろプレゼンターから聴き手に質問や提案を投げかけるほうが重要だと思います。

質問の6つの効果として、

・注意を喚起できる
・メッセージを強調できる
・問題意識を強化できる
・知識を評価できる
・意見を吸い上げられる
・情報を引き出せる

をあげています。自分が聴き手だったときのことを考えると、一方的な話より双方向の話のほうが眠くなりにくいことは確かです。私はYes-No式のクローズドクエスチョンは講演の中で比較的使っていましたが、オープンクエスチョンはあまり使っていなかったので、これをもう少し活用できればと感じました。

目次
まえがき

第1章 プレゼンテーションの戦略
    ――確実に目標を達成するために
001 プレゼンテーションの目的
002 オープンな意思決定のツール
003 インタラクティブ・プレゼンテーション
004 ジョブ・プロセスとプレゼンテーション
005 プレゼンテーションの舞台装置
006 プレゼンテーションの準備プロセス
007 3P分析
008 決定に必要な聴き手を集める
009 聴き手の数に要注意
010 デモグラフィック分析
011 聴き手の知識レベル分析
012 聴き手のポジショニング
013 プレゼンテーションの目的分析
014 聴き手のベネフィットを語る
015 プレゼンテーションの環境分析
016 プレゼンテーションの基本情報
017 プレゼンテーションの戦略立案
018 プレゼンテーションの情報収集
019 プレゼンテーションのタイム・マネジメント
020 プレゼンテーションのリスク・マネジメント

第2章 プレゼンテーションのシナリオ
    ――意思決定に導くアウトライン
021 シナリオを構築する
022 シナリオのコンテンツ
023 シナリオのプロセス
024 シナリオ化の手順
025 シナリオは3部構成で
026 全体のアウトライン
027 イントロダクションの役割
028 聴き手にインパクトを与える
029 フォーマリティを軽視しない
030 背景、結論、ロードマップのロジック
031 ボディの役割
032 3部構成のルール
033 3部構成の種類
034 3部構成の組み替え
035 理解させるシナリオ
036 合意に導くシナリオ
037 決定させるシナリオ
038 コンクルージョンの役割
039 決定の意思表示を求める
040 次へのアクションを示す

第3章 インタラクティブ・プレゼンテーション
    ――聴き手をいかに巻き込むか
041 何故、インタラクションか
042 聴き手のストレスを解消する
043 聴き手に自ら決定させる
044 聴き手に考えさせる
045 インタラクションの方法
046 聴き手に質問をする
047 質問の6つの効果
048 質問の形式を選択する
049 聴き手を選ぶ
050 聴き手の意見に対応する
051 意見が出ないとき
052 期待に反する答えのとき
053 質問を受けるステップ
054 聴き手の質問に集中する
055 質問の意図に対応する
056 聴き手の質問に答える
057 結論から答える
058 質問に答えられないとき
059 反論はウェルカム
060 決定させ行動へ導く

第4章 プレゼンテーションのデリバリー技術
    ――話し手の一挙手一投足が大事
061 サクセス・イメージを描く
062 2種類のデリバリー技術
063 シンプルな文章で話す
064 プレゼンテーションでの言葉遣い
065 話のペースをコントロールする
066 沈黙の効用
067 ボーカル・スタイル
068 ノート・カードを使う
069 非言語の役割
070 ボディ・ラングエッジの活用
071 使ってはいけないボディ・ラングエッジ
072 ボディ・ラングエッジの法則
073 姿勢は人格を表す
074 信頼を得るアイ・コンタクト
075 聴き手との心理戦
076 聴き手の非言語を観察する
077 話し手の結果責任
078 コンクルージョンのデリバリー
079 リハーサルの3つのステップ
080 自分流のプレゼンテーション

第5章 ビジュアル化技術
    ――最大限の効果をあげる活用法
081 ビジュアルを活用する
082 ビジュアル化の4つの目的
083 デジタル・プレゼンテーション
084 ネット・プレゼンテーション
085 ビジュアル化のプロセス
086 ビジュアル・メディアの選定
087 説明資料と配付資料
088 ビジュアル化の原則
089 ビジュアル作成の注意点
090 ビジュアルの統一性
091 スライドの全体構成
092 数字データのグラフ化
093 文字データのチャート化
094 図形と線の種類
095 色彩のメッセージ
096 アニメーションの基本
097 ベストな環境と設備を用意する
098 ビジュアルを効果的に見せる
099 ビジュアルを説明するステップ
100 ビジュアルのリスク・マネジメント

ワークシート集
参考資料

あとがき

2010年12月19日日曜日

5日で身につく「伝える技術」

今日は、西野浩輝著、5日で身につく「伝える技術」 ビジネスで成功するプレゼンテーションの奥義、東洋経済新報社を紹介します。

http://www.toyokeizai.net/shop/books/detail/BI/0ee0a81116a114245642d227b4cdce18/
アマゾンで書籍の中身を一部見れます。中古品は900円程度のようです。

目次を見るだけでもプレゼンの基本の参考になります。

例えば話がうまい人のタイプには、「話そのもの」がおもしろい、話がわかりやすい、表現の仕方がうまいの3つがあります。これらを複数組み込んだ話にすることが、聴き手のために重要です。うまくない話は聴き手に伝わりませんので。

何冊かプレゼンの書籍を読んでみましたが、「3つ以内にまとめる」というのが伝わりやすいプレゼンの特徴のように感じました。この書籍でもポイントを3つにまとめるというのが、いろいろと活用されています。サブパートは3つにまとめる意外にも、

・3つの学習ポイントは、要素を分解して少しずつ練習する、場数を踏むことは必須条件、客観的な振り返りに勝るものなし。

・コンテンツ、ストラクチャー、デリバリーの3要素をまんべんなく伸ばす。

・イントロダクション、ボディーパート、エンディングの3つで構成する。

・話をわかりやすくする3つのテクニックは、順序だて、整理・分類、適切な言葉を選ぶの3つ。

・アイコンタクトでは、聴衆一人ひとりと目線を交わす、目を合わせる時間を調整する、資料ばかりを見ないの3つが重要。

・3つの「間」を使い分けよう

など3がキーワードになっています。たくさん伝えたいことがあっても、3つ以下に絞ることがプレゼンでは大切なようです。自分が聴き手になった場合のことを考えてみても、「ポイントが7つあります」と言われたら憶えられません。伝えたいからこそポイントを3つ以下に絞ることが重要だとよくわかりました。

私は皆様のおかげでプレゼンの場数は比較的多く踏ませていただいていますが、プレゼンを振り返る機会は今まで多くなかったのが実情です。1月9-10日の五島塾までプレゼンする機会はありませんので、この間に振り返りと学習をしっかり行い、来年は今年より聴き手に伝わるプレゼンをできるようになりたいと考えています。まずは五島塾でいいプレゼンをしたいと思っています。

目次

はじめに
1日目 入門編 「伝える技術」の基本をみにつけよう
「伝え下手」はこんなに損をしている・・・16
■「話が面白くない」のは技術がないから
■「話し下手」なだけで数億円がフイに
■「口下手」の言い訳は通用しない

巷にはびこる、3つのカンちがい・・・21
■デタラメを鵜呑みにするな
■都市伝説その1・・・口下手でも、じっくり話せばわかってくれる
■都市伝説その2・・・話し上手よりも、聞き上手のほうが好まれる
■「聞いている」ことを知らせるにもスキルがいる
■都市伝説その3・・・話し上手は「天賦の才」である
■「外国人にはかなわん」のは、練習していないから

3つの学習ポイントで、伝える技術はグンとうまくなる・・・31
■意外とカンタン!
■要素を分解して、少しずつ練習する
■場数を踏むことは必須条件
■客観的な振り返りに勝るものなし

プレゼンを分解する目を持つ・・・38
■「プレゼン眼」を養おう
■量が質に変わる
■「プレゼン眼」の磨き方
■他人の目から見た自分を知る

「話がうまい」とはどういうことなのか?・・・44
■話がうまい人、下手な人
■話がうまい人の3タイプ(1)・・・「話そのもの」がおもしろい
■話がうまい人の3タイプ(2)・・・話がわかりやすい
■話がうまい人の3タイプ(3)・・・表現の仕方がうまい

プレゼンは3層構造になっている・・・50
■「おもしろく」「わかりやすく」「上手に表現する」
■(1)コンテンツ
■(2)ストラクチャー
■(3)デリバリー
■3要素をまんべんなく伸ばそう

2日目 基本編(1) 話を面白く加工しよう
話は工夫しだいで、おもしろくなる・・・58
■おもしろいネタをさがすより、おもしろく味付けするほうが早い
おもしろい話に共通する5つの特徴・・・62
■おもしろさに秘密は5つ
■1わかりやすい
■2リアリティーがある
■3ストーリー性がある
■4親近感がもてる
■5意外性がある
どんな話でも魅力的に見せてしまう5つのテクニック・・67
■5つの材料に、5つの調理道具
■「事例・具体例」を入れる
■悪条件をひっくり返した「事例」の力
■「たとえ・比喩」を使う
■比喩によってイメージが深くなる
■ビジネスシーンでも比喩が効果を発揮する
■「数値・データ」を盛り込む
■数値やデータは「サイズ」にひと工夫
■意図する方向へ誘導できる数値のマジック
■「対比」できわだたせる
■「対比することでわかりやすくなる
■「対比」で聞き手に「モノサシ」を渡す
■「お墨付き」で話に泊がつく
■「お墨付き」はくわしく話すのがコツ
■一般人の意見も「お墨付き」に使える
■権威者と第三者の使い分けは?
聞き手によって、話し方を変えよう・・・84
■聞き手は誰ですか?
■どんな相手かを一瞬で識別する方法
■Aの人たち
■Bの人たち
■Cの人たち
■Dの人たち
■相手はどのゾーンにいるかを見抜け

3日目 基本編(2)話の組み立て方を学ぼう
わかりやすく話すには、話の組み立てが重要だ・・・94
■わかりやすく話せる人は、意外といない
■わかりやすく話すためのポイントは、たった二つだけ
■あらゆる話の組み立てに使える、万能のフォーマットとは?
イントロダクション・・・99
■イントロダクションの役割は2つ
■最初に「何について話すか」を明らかにする
■アウトラインとタイムテーブルを示す
■質問
■統計・データ
■実例・エピソード
■問題・課題の提示
ボディーパート・・・104
■ボディーパートでは、ここに注意
■メインメッセージをはっきりさせる
■メインメッセージを際立たせるには
■テーマとメインメッセージはちがう
■サブパートは3つにまとめる
エンディング・・・110
■聞き手としての人間はアホである
■聞いたはしから忘れていく
■「おさらい」と「イメージ化」で記憶の定着を
■ラストで全体の印象が左右される
話をわかりやすくする3つのテクニック(1)ー順序だて・・・114
■「順序だて」「整理・分類」「適切な言葉の選択」で、わかりやすくなる
■順序だて(1)・・・予告から本論に入る
■順序だて(2)・・・結論を先に述べてから、根拠・詳細へ
■順序だて(3)・・・全体像から部分へ
話をわかりやすくする3つのテクニック(2)ー整理・分類・・・120
■ごちゃまぜにするから、わからなくなる
■事実と意見がまじっていた
話をわかりやすくする3つのテクニック(3)ー適切な言葉を選ぶ・・・126
■キーワードを使えば、話は短くなる
■記事を読んで、かくされた見出しをあてる

4日目 基本編(3) 表現術をマスターしよう
表現術(デリバリー・スキル)とは何か・・・130
■表現術はすぐに身につく
■デリバリー・スキルで「見た目」を劇的に変える
あなたは人からどんな印象を持たれているか・・・134
■声や表情にはメッセージがある
■デリバリー・スキルに決まった正解はない
■「こんな感じの人に見られたい」を言葉にしてみよう
凛とした印象を演出する姿勢の技術・・・138
■姿勢がいいだけで、キリッとしてみえる
■ポイントは背骨・首・肩
■天井からつるされている自分を想像する
躍動感をだすボディランゲージ・・・142
■日本人でもボディランゲージは有効
■上体の動きが「身振り」
■手の動きが「手振り」
■ボディランゲージがうまくいかない理由
アイコンタクトで自信を見せる・・・147
■アイコンタクトとは何か
■複数の徴収とアイコンタクト(1)聴衆一人ひとりと目線を交わす
■複数の徴収とアイコンタクト(2)目を合わせる時間を調整する
■複数の徴収とアイコンタクト(3)資料ばかりを見ない
■少人数の聴衆に対してのアイコンタクト
表情ひとつで変わる印象の良し悪し・・・154
■話し手の感情を伝えるのは「表情」
■表情の基本は笑顔
■表情のバリエーションをたくさん持とう
■自然な笑顔をつくる方法
力強くダイナミックな声をだせるようにする
■声は大きい方が印象が良い
■すぐ声を大きくするには、腹式呼吸と口を大きく開くこと
話すスピードと理解力・印象の関係・・・163
■「速く話すと理解度が落ちる」は、誤解である
■話すスピードによる、プラスマイナスを知る
理解と味わいを深める「間のとり方」・・・166
■言葉と言葉の間に「沈黙」をはさみこめ
■3つの「間」を使い分けよう
■1の間
■2の間
■3の間
トーン&ピッチを駆使してメリハリをつける・・・172
■変化をつけ、重要な箇所を目立たせる
■大事なところは、繰り返す
■あえて小さな声で話す上級技

5日目 実践編 トレーニング方法を学ぼう
効果的に場数を踏むには・・・176
■まちがった場数を踏んではいけない
ビデオとテープを活用する・・・178
■自分のプレゼンを録画・録音してみよう
■客観的にチェックする
■デリバリー・スキルに注目する
■ビデオは、アップで撮る
日常すべてを練習の場に変える・・・186
■いたるところで練習できる
■日々是プレゼン
お手本となる人をみつける・・・190
■「あんな話し手になりたい」と思う人は誰ですか?
■レーガン元大統領の卓抜したコミュニケーション能力
■人間的魅力で他人を吸い寄せたアルバート
■彼らになったつもりでリハーサルをする
自信をつける方法・・・195
■自信がつくと、よいプレゼンができる
■ネガティブな意見がきっかけでスランプに
■6割ほめて、4割けなす
競争・評価にさらされる・・・201
■結果の出るプレゼンで、身の程を知る
すべてはあなたの前にそろっている・・・203
■「基礎を学ぶ」「場数を踏む」「レビューをする」の3つはそろった
おわりに

2010年12月18日土曜日

ビタミンDの高齢者の転倒予防効果:メタ分析

ビタミンDの高齢者の転倒予防効果をみた系統的レビューとメタ分析の論文を紹介します。

Kalyani RR, Stein B, Valiyil R, Manno R, Maynard JW, Crews DC: Vitamin D treatment for the prevention of falls in older adults: systematic review and meta-analysis. J Am Geriatr Soc. 2010 Jul;58(7):1299-310.

結論としてはビタミンD投与群ではカルシウム投与群もしくはプラセボと比較して、14%転倒が少なくなり、統計学的有意差があります。

特に80歳未満の在宅高齢者、カルシウムとの併用療法、骨折・転倒の既往がない、6か月以上、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、投与量が800IU以上の場合に、有意に転倒が少なかったという結果です。

ビタミンDは骨量だけでなく筋肉量の維持、改善に有効という報告が増えています。副作用と考えると安易に使用する気にはなりませんが、転倒リスクがありビタミンDが不足している高齢者に対しては投与が必要だと思います。

Abstract
OBJECTIVES: To systematically review and quantitatively synthesize the effect of vitamin D therapy on fall prevention in older adults.

DESIGN: Systematic review and meta-analysis.

SETTING: MEDLINE, CINAHL, Web of Science, EMBASE, Cochrane Library, LILACS, bibliographies of selected articles, and previous systematic reviews through February 2009 were searched for eligible studies.

PARTICIPANTS: Older adults (aged > or = 60) who participated in randomized controlled trials that both investigated the effectiveness of vitamin D therapy in the prevention of falls and used an explicit fall definition.

MEASUREMENTS: Two authors independently extracted data, including study characteristics, quality assessment, and outcomes. The I(2) statistic was used to assess heterogeneity in a random-effects model.

RESULTS: Of 1,679 potentially relevant articles, 10 met inclusion criteria. In pooled analysis, vitamin D therapy (200-1,000 IU) resulted in 14% (relative risk (RR)=0.86, 95% confidence interval (CI)=0.79-0.93; I(2)=7%) fewer falls than calcium or placebo (number needed to treat =15). The following subgroups had significantly fewer falls: community-dwelling (aged <80), adjunctive calcium supplementation, no history of fractures or falls, duration longer than 6 months, cholecalciferol, and dose of 800 IU or greater. Meta-regression demonstrated no linear association between vitamin D dose or duration and treatment effect. Post hoc analysis including seven additional studies (17 total) without explicit fall definitions yielded smaller benefit (RR=0.92, 95% CI=0.87-0.98) and more heterogeneity (I(2)=36%) but found significant intergroup differences favoring adjunctive calcium over none (P=.001).

CONCLUSION: Vitamin D treatment effectively reduces the risk of falls in older adults. Future studies should investigate whether particular populations or treatment regimens may have greater benefit.

Physical Medicine & Rehabilitation: Principles and Practice


リハの代表的な教科書の1つである、Physical Medicine & Rehabilitation: Principles and Practice 4th Edition, © 2005 Lippincott Williams & Wilkins の全文を、下記のHPで見ることができます。

http://www.msdlatinamerica.com/ebooks/PhysicalMedicineRehabilitationPrinciplesandPractice/index.html

この書籍の実物はとても分厚いのですが、インターネット上でこうして無料で見ることができるのは、とても便利です。索引もありますので、興味のある項目だけ調べるという使い方のほうがよいかもしれません。

この書籍のChapter 58にNutrition in Physical Medicine and Rehabilitationという項目があり、リハ栄養の項目ともいえます。

http://www.msdlatinamerica.com/ebooks/PhysicalMedicineRehabilitationPrinciplesandPractice/sid1171174.html#PG1267

以下、この項目の内容の一部を紹介します。

Multifactorial etiology of malnutritionの図を掲載しましたが、Host、Social、Environmental、Medical、Economicにわけて評価することは、リハ栄養に有用だと思います。もちろんICFでもこれらの領域をカバーしていますので、モレがなければ対応可能です。

Energy Balanceの項目には、以下のような執筆があります。これもリハ栄養の考え方の基本です。

The optimal state of nutrition with regard to energy is one of equilibrium. In the person who is growing, either naturally or recovering from an injury to body tissue, energy balance must be positive. If the energy (caloric) intake is inadequate, then body tissues will be metabolized for transformation into energy. Conversely, consumption of excessive amounts of energy (calories) will lead to excess adipose tissue.

私がリハ栄養の検査値で最も重要と言っているNitrogen Balanceの項目もあります。

Risk of Nutrition Problemsの項目には、以下の執筆があります。リハにおける栄養障害の重要性は、2005年の時点である程度研究されています。

Thus, by definition, people with new onset of disability, through illness or injury, are at risk for the development of malnutrition (Fig. 58-5).

The need for specific attention to nutritional status and nutritional support in patients admitted to rehabilitation units has been studied. Those patients with abnormal nutrition assessments have increased morbidity and mortality (65). As the patients with disabilities become more chronic, it cannot be assumed that nutrition status and requirements for nutrients stabilize. The homeostatic balance in people living with chronic disability is more precarious than that in able-bodied individuals. With musculoskeletal and neurologic abnormalities, there are changes in body composition. Other factors affecting the person’s nutrition are acute or chronic illness and use of medication.

Other Nutrition Problemsの項目には、栄養士がリハチームに不可欠なメンバーとして、週1回のリハカンファに参加することが有用と記載されています。本当にその通りだと思います。

The multidisciplinary rehabilitation team can assist with nutritional support by identifying each patient’s individual needs. It is helpful to have a dietitian who attends weekly rehabilitation conferences as an integral member of the team.

急性期病院で入院期間が短縮しているため、リハ患者における栄養障害を早期に発見し、可能な限り早期に栄養介入することの重要性も記載されています。これはリハ医、リハスタッフにも求められる視点だと考えます。

Because of the decreased length of acute hospital stays, there may be more nutritional problems identified among rehabilitation patients. It is important to identify these problems early so nutrition intervention can occur as soon as possible, thereby decreasing mortality and morbidity.

主な疾患(外傷、切断、脊髄損傷、脳性麻痺など)の栄養管理もFOOD/NUTRIENT REQUIREMENTSの項目に記載されています。

Clinical Application of Nutrition Management in Selected Disabilitiesには各論として、COPD、脳性麻痺の記載が、Nutritional Implications of Specific Clinical Problemsには、尿路結石、便秘、褥瘡、浮腫、肥満、高齢者の記載があります。

今回、改めて一通りNutrition in Physical Medicine and Rehabilitationの項目を読みなおしましたが、かなりの学習になりました。最新のリハや栄養学の知見は含まれていませんが、リハにおける栄養の重要性を十分認識できる内容です。

日本のリハの教科書にも、このくらい栄養に関する記載があると嬉しいです。そうすると、卒前・卒後教育で、リハ医、PT、OT、STが栄養に関してより学習するようになるのではと思います。

2010年12月16日木曜日

2010年の振り返り

まだ2週間ありますが、今年の学会発表や講演の予定がすべて終わりましたので、2009年のアウトカムと比較して、2010年の業績を振り返ってみます。

学会発表筆頭演者 2009年6つ → 2010年13つ(うち一般演題は6つです) 

講演(大学講義なども含め) 2009年30回 → 2010年40回

書籍 2009年 PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 → 2010年 リハビリテーション栄養ハンドブック、栄養塾共著

総説など依頼原稿 2009年4つ → 2010年8つ 臨床栄養2010年8月号では「適切な栄養管理はリハビリテーションの第一歩」の構成を考えました。 他に来年掲載予定のものが7つ程度あります。

原著論文 2009年0つ→2010年1つ 他に今日アクセプトされた日本語論文があり、掲載は来年です。

今年は数字的には昨年以上に頑張ったと思います。このブログも何とか1年間、継続することができました。これらについては自分で自分をほめてあげたい気持ちです(笑)。日本語ばかりなのが微妙ですが…。

ただ、来年の目標をこれ以上の数字にする気はしません。数には限度がありますし、定量的な目標と同時に定性的な目標も大事だと思います。この振り返りを参考にしながら、来年の目標を考えてみます。

以下、今年の私の業績です。ただ、講演は記載していません。

(原著論文)
若林秀隆、喜瀬守人、岡田唯男:若手家庭医はリハビリテーション領域の臨床能力獲得に関してどのように考えているか‐質的研究.家庭医療15(2)p4-15、2010年3月

(総説)
若林秀隆:摂食・嚥下障害患者のシームレスな栄養管理・地域栄養ケア.癌と化学療法37(Suppl.Ⅱ)、2010年12月
若林秀隆:摂食・嚥下リハビリテーション栄養管理と地域連携.ヘルスケアレストラン18(10)p18-19、2010年10月
若林秀隆:【実践!栄養アセスメント】リハビリテーションと栄養アセスメント.看護技術56(9) p55-56、2010年8月
若林秀隆:【適切な栄養管理はリハビリテーションの第一歩】「リハビリテーション栄養」の考え方.臨床栄養117(2)p114-118、2010年8月
若林秀隆:横浜南部地域一体型NSTによる地域連携の成果と課題.看護学雑誌74(7)p47-53、2010年7月
若林秀隆:ジェネラリストの臨床研究.日本プライマリ・ケア連合学会誌33(2)、2010年6月
若林秀隆:PT・OT・STの臨床に役立つ栄養とNST.日本赤十字リハビリテーション協会誌24p33-36、2010年4月
若林秀隆:地域連携とよりよい栄養サポートのあり方を考える.病栄協のしおり‐地域連携における栄養サポート‐p2-13、2010年3月

(著書)
若林秀隆編著:リハビリテーション栄養ハンドブック.医歯薬出版、2010年11月
若林秀隆:摂食・嚥下障害、大村健二(編)栄養塾.pp155-161、医学書院、2010年2月

(学会発表:筆頭のみ)
Hidetaka Wakabayashi, Hironobu Sashika: Malnutrition and rehabilitation outcome of disuse syndrome: a retrospective cohort study. 2nd Asia-Oceanian Conference of Physical and Rehabilitation Medicine. Taipei, May 2010
若林秀隆:リハビリテーションと臨床栄養‐栄養ケアがリハを変える.第5回日本リハビリテーション医学会専門医会学術集会,横浜,2010年11月
若林秀隆:口腔機能へのアプローチ‐リハビリテーション栄養の視点から.第7回日本口腔ケア学会,大阪,2010年11月
若林秀隆、他:神奈川摂食・嚥下リハビリテーション研究会による地域リハビリテーションの取り組みの現状と展望(第2報).第16回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,新潟,2010年9月
若林秀隆:横浜南部地域一体型NSTにおける栄養ケア連携.第32回日本臨床栄養学会,名古屋,2010年8月
若林秀隆:低栄養状態が廃用症候群のリハビリテーションの帰結に与える影響.第1回日本プライマリ・ケア連合学会,東京,2010年6月
若林秀隆:摂食・嚥下障害患者のシームレスな栄養管理・地域栄養ケア.第21回日本在宅医療学会,東京,2010年6月
若林秀隆、佐鹿博信:入院患者における廃用症候群の有無と栄養状態の関連.第47回日本リハビリテーション医学会,鹿児島,2010年5月
若林秀隆:「地域連携を考える」~よりよい栄養のサポートのあり方とは~.第29回食事療法学会,宮崎,2010年3月
若林秀隆:入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連.第25回日本静脈経腸栄養学会,幕張,2010年2月
若林秀隆、他:【継続医療と地域一体型NST】横浜南部地域一体型NSTによる地域連携の成果と課題.第25回日本静脈経腸栄養学会,幕張,2010年2月
若林秀隆:「口から食べる」を続けるために、病院と在宅での挑戦.第25回日本静脈経腸栄養学会,幕張,2010年2月
若林秀隆:栄養障害は廃用症候群のリハビリテーションの帰結に影響を与えるか.第13回日本病態栄養学会,京都,2010年1月

(研究助成金)
若林秀隆:栄養評価による廃用症候群のリスク管理と機能訓練プログラム.文部科学省科学研究費若手研究(B)78万円
若林秀隆:日本リハビリテーション医学会海外特別助成金(第2回アジア・オセアニア
地区リハビリテーション医学会会議)5万円

COPDの栄養状態:低酸素の役割


COPDの栄養状態:低酸素の役割というレビュー論文を紹介します。

Comasia A. Raguso, and Christophe Luthy: Nutritional status in chronic obstructive pulmonary disease: Role of hypoxia. Nutrition (2010), doi:10.1016/j.nut.2010.07.009

COPDでは悪液質の患者が少なくなく、栄養障害を認めることが多いです。その要因の1つとして、この論文では低酸素に焦点を当てています。図に示すように低酸素のために、食思不振、炎症、筋繊維のタイプ変化などが生じ、その結果、食事摂取量低下や筋肉の機能不全がおこり悪液質となるというメカニズムが提案されています。

またインシュリン抵抗性だけでなく成長ホルモン抵抗性がおこるため、蛋白分解が増加して筋肉の機能不全がおこるというメカニズムも提案しています。

COPDへの介入として、エネルギー摂取量の増加だけでは栄養状態の改善は得られません(コクラン)。グレリンは今後期待されていますが、同化ホルモン(テストステロンなど)は推奨できません。運動療法(レジスタンストレーニングと有酸素運動)は有効です。

低酸素が悪液質の引き金になっているのであれば、早期在宅酸素療法が悪液質の予防に有効な可能性があります。一方、酸化ストレスも問題になりますので、過度の酸素療法も逆効果となる可能性があります。酸素飽和度でいくつがベストなのかという指標を私は知りませんが、80台でも100でもないことは確かだと思います。

Abstract
In patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD), malnutrition and limited physical activity are very common and contribute to disease prognosis, whereas a balance between caloric intake and exercise allows body weight stability and muscle mass preservation. The goal of this review is to analyze the implications of chronic hypoxia on three key elements involved in energy homeostasis and its role in COPD cachexia. The first one is energy intake. Body weight loss, often observed in patients with COPD, is related to lack of appetite. Inflammatory cytokines are known to be involved in anorexia and to be correlated to arterial partial pressure of oxygen. Recent studies in animals have investigated the role of hypoxia in peptides involved in food consumption such as leptin, ghrelin, and adenosine monophosphate activated protein kinase. The second element is muscle function, which is strongly related to energy use. In COPD, muscle atrophy and muscle fiber shift to the glycolytic type might be an adaptation to chronic hypoxia to preserve the muscle from oxidative stress. Muscle atrophy could be the result of a marked activation of the ubiquitin-proteasome pathway as found in muscle of patients with COPD. Hypoxia, via hypoxia inducible factor-1, is implicated in mitochondrial biogenesis and autophagy. Third, hormonal control of energy balance seems to be affected in patients with COPD. Insulin resistance has been described in this group of patients as well as a sort of “growth hormone resistance.” Hypoxia, by hypoxia inducible factor-1, accelerates the degradation of tri-iodothyronine and thyroxine, decreasing cellular oxygen consumption, suggesting an adaptive mechanism rather than a primary cause of COPD cachexia. COPD rehabilitation aimed at maintaining function and quality of life needs to address body weight stabilization and, in particular, muscle mass preservation.

急性心不全におけるアルブミン値と死亡率


今日は、急性心不全におけるアルブミン値と死亡率を検討した論文を紹介します。

Shanmugam Uthamalingam MD, MRCP(UK), Jagdesh Kandala MD, MPH, Marilyn Daley ARNP, Eshan Patvardhan MBBS, Robert Capodilupo MD, FACC, Stephanie A. Moore MD and James L. Januzzi Jr. MD: Serum albumin and mortality in acutely decompensated heart failure. American Heart Journal Volume 160, Issue 6, December 2010, Pages 1149-1155

慢性心不全ではアルブミン値と死亡率の関連がすでに検討されていて、アルブミン値が低いほど死亡率が高くなるということが報告されています。今回は、急性心不全でも同様の関連が認められるかという報告です。

アルブミン値で5群に分類した1年間の死亡率の図を示します。アルブミン値が3.3以下の場合、3.4以上の場合と比較して死亡率が明らかに異なります。アルブミン値が3.4以上でも1年間の死亡率は10%程度ありますが、3.3以下の場合、20%強となります。多変量解析でもアルブミン値は独立した危険因子でした。

これより急性心不全においてもアルブミン値を予後指標として使用することが可能だといえます。アルブミン値は栄養指標としてはあまり使えませんが、予後指標としては重要な検査値です。

ただ、今回のデータにはCRP値がないのが残念です。アルブミン値が3.3以下の群の平均総蛋白が6.8、アルブミン値が2.8、アルブミン値が3.4以上の群の平均総蛋白が7.2、アルブミン値が3.7であることを考えると、アルブミン値が3.3以下の群のほうがグロブリン量が多く(4.0 vs. 3.5)、炎症反応が強いことが予想されます。その結果、アルブミン値が低いのかもしれません。

Abstract

Background
Although hypoalbuminemia has been associated with decreased survival in chronic systolic heart failure (HF), its role for prognosticating outcomes in those with acutely decompensated heart failure (ADHF) has not been established.

Methods and Results
438 consecutive patients with ADHF (mean age 75 ± 13 years, mean left ventricular ejection fraction 41% ± 20%) admitted to a large community hospital were studied. The mean serum albumin level for the group was 3.4 g/dL; quintile analysis demonstrated an inflection of risk for death below this value. Patients with hypoalbuminemia (defined as a serum albumin <3.4 g/dL; N = 236, 54% overall) were more likely to have prior HF, more severe HF symptoms, more likely to be edematous, and had more prevalent prognostically meaningful laboratory abnormalities, such as a higher frequency of renal dysfunction and elevated B-type natriuretic peptide. Independent associations between anemia, hyponatremia, lack of therapy with vasodilators at presentation, prior history of obstructive airways disease, severe tricuspid regurgitation, low serum cholesterol, and the presence of a pleural effusion on chest radiography were found with reduced serum albumin; interestingly, body mass index was not predictive of albumin levels. In Cox proportional hazards analysis, hypoalbuminemia predicted 1-year mortality (hazard ratio [HR]adjusted = 2.05, 95% CI 1.10-3.81, P = .001). Reduced serum albumin concentrations were prognostic across a wide range of body mass index but had highest HR in obese patients (HRadjusted = 4.39 [95% CI = 1.66 to 11.60], P = .003). As well, hypoalbuminemia was mainly predictive of outcomes among those with systolic HF (HRadjusted = 5.00, 95% CI = 2.17-11.5, P < .001).

Conclusion
Hypoalbuminemia is common among patients with ADHF and is independently associated with increased one year mortality in patients admitted with ADHF.

2010年12月15日水曜日

私のタイムマネジメント

先月の第2回チーム医療推進全国会議のシンポジウムの際、タイムマネジメントに関するディスカッションがありました。その中で私のタイムマネジメントは、他のシンポジストと違っていましたので、自分なりに気にしている点を紹介します。決して特殊だとは思いませんが。

・睡眠時間を十分確保する。
 世の中には3-4時間の睡眠でやっていける方もいますが、私は6-7時間の睡眠がないとやっていけません。日中をよいコンディションで過ごすために、私は睡眠時間を削ることはしません。

・3食確実に食事をとる。
 NSTやリハ栄養をやっていれば当然、3食の重要性も認識します。朝食抜きの方もいますが、私は朝食がないと日中をよいコンディションで過ごすことができません。

・趣味の時間を確保する。
 週1回程度のテニス、2週間に1回程度の図書館通いと読書は、ストレス発散に必要です。

・講演旅行や学会旅行にできるだけ出かける。
 昔から旅行が趣味なので、遠方での講演や学会は苦というよりも楽しみです。日程調整さえできれば、なるべく講演は引き受けるようにしています。移動時間は景色を楽しんだり、読書、考え事、資料作成などをしたりします。

・メールは確認して返事が必要であればすぐに返信する。
 メールを確認した場合、十分に検討してからでなければ返信できないということは少ないです。その場ですぐに返信することが最も効率的だと思います。

・依頼された原稿はすぐに作成する。
 依頼原稿の場合、締切日が設定されていますが、私は基本的に締切日を無視します。締切に間に合わせないという意味ではなく、依頼されたらすぐに原稿全体のデザイン・構成を考えて、その後に執筆します。
 一昨日、ある雑誌から「高齢者リハビリテーションと栄養」という6000字の原稿依頼をいただきましたが、一昨日と昨日でデザイン・構成を考えて、昨日と今日で執筆して完成させました。
 そうすれば依頼原稿がいくつもたまって、締切日が迫っているという状況を防ぐことができます。このような状況は私にとって精神衛生上、とても悪いです。そのため、常に依頼原稿を抱えていない状況を作るようにしています。そうすれば普段は気楽ですし、依頼があっても早々に仕上げることができます。
 問題は原著論文の場合、なかなか執筆が進まないことです…。これが私の欠点です…。

・依頼された講演のPowerPoint原稿はすぐに作成する。
 過去の講演とほぼ同じような講演内容であれば、講演が近くなるまで放置します。一方、過去に講演したことがない内容であれば、講演日を無視して、すぐに講演全体のデザイン・構成を考えて、その後にPowerPointを作成します。いきなりPowerPoint原稿を作らないことは、プレゼンの基本です。

 私のタイムマネジメントはこのような形ですが、真似する必要は全くありません。自分にとって最も成果を上げることができるタイムマネジメントを理解して実行することがとても重要です。

 一部の人は締切日が近づくと燃えて集中できるようです。この場合、締切ギリギリまで粘るほうが、多くの成果を上げられると思います。1日3-4時間の睡眠で大丈夫という方がいます。この場合、それ以上の睡眠時間は不要でしょう。でも食事に関しては、リハ栄養的に3食確実にとることを私はおすすめします。

2010年12月14日火曜日

リハ栄養のHow

最近、リハ栄養に関する講演をさせていただく機会が少しずつ増えてきました。リハ栄養の考え方や重要性を多職種に広めたいと考えていますので、とてもありがたいと感じています。

リハ栄養の講演では、リハ栄養のWhyとWhatの紹介、説明をすることが多く、リハ栄養のHowを紹介することは少ないのが現状です。そもそもリハ栄養のWhyとWhatが伝わらなければ、リハ栄養のHowだけ理解していただいても臨床現場で活用する気にならないためです。

リハ栄養のWhyとWhatを理解してくださった方に関しては、リハ栄養のHowが課題となります。「リハビリテーション栄養ハンドブック」では第5章に「リハビリテーション栄養管理」。第12章に「リハビリテーションNST」として、リハ栄養のHowも執筆しています。

ただ、第5章と第12章を読めばすぐに臨床現場でリハ栄養のHowを実践できるかというと、残念ながらそうはいきません。一定のFDスキルも必要ですし、多職種(特に管理栄養士などNSTスタッフと、PT・OT・STなどリハスタッフのうち、複数の職種。多ければ多いほどよい)がリハ栄養のWhyとWhatを理解することも必要です。リハ栄養のHowは、私にとっても課題の1つです。

「リハビリテーション栄養ハンドブック」を多職種で回し読みしていただくことは、有効かと思います。特にNSTスタッフが第2章「リハビリテーションの基本知識」、リハスタッフが第3章「栄養の基本知識」を理解して、第2章・第3章に出てくる言葉を使ってコミュニケーションできることが重要と考えます。

いずれはリハ栄養研究会を設立したいと考えていますが、今すぐという訳にはいきませんので、それまでは「リハビリテーション栄養ハンドブック」を多職種で学習しながら、リハ栄養のHowに取り組んでいただければと思います。

2010年12月13日月曜日

“伝わる”プレゼンテーション技法を身に付けよう

週刊医学界新聞第2908号 2010年12月13日に第141回医学書院看護学セミナー“伝わる”プレゼンテーション技法を身に付けようの記事が紹介されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02908_04

同善会クリニック・齊藤裕之氏による「“伝える”ためのプレゼンテーション技法――5 step approachのすべて」のレポートです。「5 step approach」とは,

(1)Pre-Design:状況を把握し,適切なプレゼンテーションの方法を選択する。
(2)Design:目的を達成できるようプレゼンテーションの設計図を描く。
(3)Building Content:スライドなどでプレゼンテーションの媒体を上手に作成する。
(4)Delivery:プレゼンテーション本番。質のよい発表をするために最も必要なのはリハーサル。
(5)Feedback:次のプレゼンテーションに生かすためのフィードバックを行う。

の手順でプレゼンテーションを創り上げていく技法と紹介されています。詳細は、齊藤裕之/佐藤健一編:医療者のための伝わるプレゼンテーション、医学書院を参照して下さい。私もこの本を参考にしながらプレゼンを考えています。とてもおすすめのプレゼン本です。

http://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=81292

スライド作成のポイントも週刊医学界新聞の記事の中に紹介されています。これもかなり参考になると思いますが、より大切なことは、スライド作成以前の段階でどれだけしっかりデザインするかどうかです。

・1分あたり1-2枚のスライドを目安に(自分の話しやすいスタイルを知ろう)
・1スライドで8-9行まで
・1行20字程度
・文字サイズ:24ポイント以上
・フォントは基本的に,ゴシック体/Arialを使用(和の雰囲気を出したいときは,明朝体よりも楷書体で)
・背景と文字のコントラストがしっかり出るように
・タイトルと本文の境界(位置)は固定する
・スライド上で70%程度の面積を占めるように余白を十分活用する
・英文を大文字だけで表記しない
・異なるフォントを混ぜることは絶対にしない

プレゼンで最も重要な“ポイントを最小限に絞る”とは,「最も伝えたいことを1行で書ききれる」ことであり,その1行を伝えきれるよう設計図を組んでいくことがプレゼンテーションでは効果的とのことです。シンボルフレーズを1つ(多くても2-3つ以内)に絞らなければ、話すプレゼンではあっても、”伝える”プレゼンではないかもしれません。その違いは大きいと思います。

キャリアデザイン

今日は田路則子、月岡亮著、ライトワークス監修、キャリアデザイン、ファーストプレスを紹介します。

http://www.firstpress.co.jp/books/cn19/1175.html

著者は2人とも神戸大学大学院の金井壽宏教授の門下生のようですので、金井教授の書籍と内容的に近いと感じました。特別な人ではなく、医療人も含めた普通の人がどのようにキャリアを考えてデザインして作っていけばよいかが、わかりやすく執筆されています。特にケーススタダィがおもしろいです。キャリアデザインの基本的な教科書としておすすめします。

この書籍でのキャリアデザインの基本コンセプトは、金井教授の考え方である「立ち止まってじっくり考えるときがキャリアの節目であり、節目にキャリアをデザインし、それ以外はむしろ流れに身を任せてドリフトしてみる」です。ただ、自分が今、節目にいるのか違うのかを判断できることが重要です。

私はドラッカー流で、1年に2回くらい「何によって憶えられたいか」を自問自答するとよいと考えています。

第3章の最後に、仕事の「志」や「精神性」として2つの言葉が紹介されています。「志」や「精神性」が土台にあり、キャリアアンカーがベースにあり、その上に理想の仕事があります。どちらも私には耳が痛かったので(笑)、紹介します。

1つは「脚下照顧」。「高く遠いところにあるものと錯覚して求めてはならない、それは自分の中にある」という禅の教えです。お金、地位、名声などに惑わされて、自分を見失ってしまうことが多いので、注意が必要だそうです。反省…。

もう1つは、マザー・テレサの「大切なのはどれだけたくさんのことをしたかではなく、どれだけ心をこめたかです」という言葉です。たくさんのアウトプットを生み出すかに私は関心が向きがちでしたが、心をこめていなければ、それらのアウトプットは大切なものになっていないかもしれません。反省…。

目次

第1章 キャリアデザインとは

 1 キャリアデザインとは何か
 2 キャリアデザインの必要性
 3 キャリアを考える視点
 4 仕事生活とキャリアデザイン

第2章 キャリアをデザインする

 1 キャリアアンカー
 2 過去を振り返る
 3 キャリアサバイバル
 4 職務と役割の分析

第3章 キャリアデザインの旅

 1 偶然を自分のものにする
 2 キャリアのサポーター
 3 ワークライフバランス
 4 何のために働くのか

2010年12月10日金曜日

LLL: nutrition and sport

ESPENが作成している臨床栄養のe-learning学習サイトLLL(Life Long Learning)に、topic 37としてnutrition and sportがあります。

http://lllnutrition.com/

LLLはメールアドレスがあれば無料でアカウントを作成して、自由に中身を見ることができます。このLLLは臨床栄養を学習するのにとても充実したサイトですので、英語が苦でない方には強くおすすめします。すべて英語なのが難点ですが、それでも比較的わかりやすい英語で執筆されていると私は感じます。

私は今、nutrition and sportを学習していますが、かなり運動栄養学のよい学習になっています。自分なりに運動栄養学のテキストは学習してきたつもりですが、知らなかったことも紹介されていました。以下の4項目で構成され、それぞれPDFファイルで10ページ程度の内容になっています。

Module 37.1 Substrate utilization
Module 37.2 Muscle physiology and bioenergetics
Module 37.3 Nutritional requirements for physical fitness
Module 37.4 Fluids, electrolyte balance, and ergogenic aids

nutrition and sport以外にも下記のようなtopicを無料で学習できます。興味のある1トピックだけでもよいので、挑戦されることをおすすめします。私も少しずつ挑戦していきます。

Topic 1 Metabolism of Macronutrients, Pro- Prebiotics and Fibre
Topic 2 Water, Electrolytes and Micronutrients
Topic 3 Nutritional Assessment and Techniques
Topic 4 Nutritional Requirements for Health throughout Life Span
Topic 5 Malnutrition
Topic 7 Enteral/Parenteral Nutrition - Substrates
Topic 8 Approach to Oral and Enteral Nutrition (EN) in Adults
Topic 9 Approach to Parenteral Nutrition
Topic 10 Nutritional Support in Pediatric Patients
Topic 12 Nutritional Support in Gastrointestinal Disease
Topic 13 Nutritional Support in Liver Disease
Topic 14 Nutrition in Pancreatic Disease
Topic 15 Nutrition Support in Renal Disease
Topic 16 Nutritional Support in SIRS and Sepsis
Topic 17 Nutritional Support in the Perioperative Period
Topic 18 Nutritional Support in Intensive Care Unit (ICU) Patients
Topic 19 Nutritional Support outside the Hospital: Home Parenteral Nutrition (HPN) in Adult Patients
Topic 20 Nutritional Support in Cardio-Vascular Diseases (CVD)
Topic 21 Consequences of Diabetes Mellitus on the Nutritional Status
Topic 22 Nutrition in Lipidemias
Topic 23 Nutrition in Obesity
Topic 24 Nutrition in Metabolic Syndrome
Topic 25 Nutritional Support in Neurological Diseases
Topic 26 Nutritional Support in Cancer
Topic 27 Nutritional Support in AIDS
Topic 29 Nutritiont in Hereditary Disease
Topic 30 Nutrition and disease prevention
Topic 31 Nutrition in Behavioural Disorders
Topic 32 Food Safety
Topic 34 Nutrigenomics
Topic 35 Economics of Nutrition
Topic 36 Nutrition in the Elderly
Topic 37 Nutrition and Sports
Topic 38 Nutritional Support in Respiratory Diseases

2010年12月9日木曜日

第14回日本病態栄養学会:摂食・嚥下障害の最新栄養管理

来年1月15-16日(土・日)にパシフィコ横浜で第14回日本病態栄養学会が開催されます。詳細なプログラムは下記のHPにあります。

http://www.eiyou.gr.jp/gakujutsu/program/index.html

私は16日のシンポジウムIII 摂食・嚥下障害の最新栄養管理に参加します。演題名を見る限り多彩な発表内容ですので、各演者の発表後のディスカッションテーマを1つに絞るのは難しい気がします。

1月16日(日) 10:30~12:00 第3会場(501)
座長 東京医科大学 リハビリテーションセンター 西野 誠一
    地域栄養ケアPEACH厚木 江頭 文江

SIII-1 脳卒中後胃瘻患者における胃排出能と肺炎発症との関連
  慶信会記念病院 内科 上田 章人

SIII-2 4段階の嚥下咀嚼訓練食導入による有用性の調査
  名古屋市立大学病院 臨床栄養管理室 伊藤 明美  

SIII-3 嚥下障害へのチーム対応
  福井県済生会病院 耳鼻咽喉科 津田 豪汰

SIII-4 摂食・嚥下障害患者における補助食品使用による転帰の違い
  NTT東日本伊豆病院 リハビリテーション科 馬渡 敏也 
 
SIII-5 筋萎縮による摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養管理
  横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 若林 秀隆

SIII-6 摂食・嚥下機能に配慮した摂食機能訓練パスによる多職種の取り組み
  東京医科大学病院 栄養管理科、NST 佐藤 知世

筋萎縮による摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養管理の抄録です。

 摂食・嚥下障害の原因の1つに、嚥下筋のサルコペニアがある。サルコペニアの定義は、狭義では加齢に伴う筋肉量の低下、広義ではすべての原因による筋肉量・筋力の低下となる。広義のサルコペニアの原因には、加齢、活動(廃用)、疾患(侵襲、悪液質、原疾患)、栄養(飢餓)がある。

 高齢者では加齢に伴い嚥下筋のサルコペニアを認めることが増加する。廃用は活動性や運動量の低下した状態の継続で生じる二次的障害である。絶食で嚥下筋の廃用性筋萎縮を認める。誤嚥性肺炎などの侵襲で嚥下筋も含めた筋蛋白の異化が亢進する。悪液質は、がん、結核、エイズ、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、肝不全、慢性閉塞性肺疾患などで生じ、嚥下筋も含めた筋肉の喪失が特徴である。早期診断・介入のために前悪液質の概念がある(悪液質の原因となる慢性疾患の存在、6ヶ月以内に5%以上の体重減少、慢性・再発性の全身炎症反応:CRP陽性、食思不振の4項目すべて該当で診断)。原疾患による筋萎縮には、多発性筋炎や筋萎縮性側索硬化症などがある。飢餓では嚥下筋も含めた筋蛋白が異化する。

 サルコペニアによる摂食・嚥下障害に対しては、これらの原因の有無を判断した上で、栄養管理と嚥下筋のレジスタンストレーニング(頭部挙上訓練、舌筋力強化訓練)を適切に行う。加齢と廃用が原因の場合、栄養障害を認めなければ主な治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングである。栄養障害を合併している場合には、適切な栄養管理を併用する。疾患が原因の場合、原疾患の治療が最も重要である。高度侵襲下では、適切な栄養管理とリハビリテーションを行っても摂食・嚥下機能の改善は難しい。悪液質の場合、エイコサペンタエン酸の投与と廃用や飢餓の予防を同時に行う。飢餓が原因の場合、主な治療はリハビリテーションではなく栄養改善である。栄養改善なしにレジスタンストレーニングを行うとかえって摂食・嚥下障害は悪化する。

南加賀NST研修会

明後日12月11日に南加賀NST研修会でリハ栄養の講演をしてきます。今年はこれが最後の講演になります。直前の案内で申し訳ありませんが、お近くの方はぜひご参加ください。

南加賀NST研修会

日時:12月11日(土)13:50~15:50
会場:石川県小松市 小松市民病院 南館4F研修室

特別講演1 NSTにおける栄養管理の現状(仮題)
 公立能登総合病院 薬剤部 NST専門療法士 杉田尚寛先生

特別講演2 摂食・嚥下障害のリハビリテーション栄養の実践
 横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科 若林秀隆

幹事:小松市民病院 内科担当部長 吉本幸子先生(NSTチェアマン)

共催:小松市民病院 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 株式会社大塚製薬工場 
後援:小松市医師会、加賀市医師会、能美市医師会

2010年12月8日水曜日

サルコペニア:Wikipediaより

今日はWikipediaによるサルコペニアの項目を紹介します。残念ながら現時点で日本語版のWikipediaではサルコペニアは存在していないようですので、英語版を紹介します。ここでは狭義のサルコペニア(加齢によるサルコペニア)になります。以下、下記のWikipediaのHPからの一部引用です。

http://en.wikipedia.org/wiki/Sarcopenia

Definition of sarcopenia
統一された診断基準はないが、 European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP)では、筋肉量の低下+筋肉の機能低下(筋力もしくは身体機能)でサルコペニアを診断している。

Sarcopenia as a public-health problem
サルコペニアは近年、重大な健康問題と考えられてきている。サルコペニアは独立した障害の予後因子である。骨粗鬆症の筋肉版ともいえる。骨粗鬆症とサルコペニアが合併すると、さらに虚弱(frailty)が問題となる。

Diagnosis
ESPENでは、筋肉量低下(若年の2標準偏差以下)と身体機能低下(例:4m歩行テストで歩行速度0.8m/s以下)で診断するとしている。

Manegement Exercise
サルコペニアの治療と予防で最も重要なのは段階的運動療法であり、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を行う。

Manegement Drugs
薬物療法で明らかに有効なものはないが、Selective Androgen Receptor Modulators(選択的アンドロゲン受容体モジュレーター)が近年の研究で有効な可能性がある。

Manegement Diet and nutrition
運動療法で食欲は増進するが、低栄養が疑われるときや栄養管理が不適切な場合には、栄養評価が必要かもしれない。 ラットの実験ではGinkgo biloba(イチョウ)が筋肉量低下を軽減するという報告がある。

2010年12月7日火曜日

嚥下障害の高齢者における虚弱・栄養・サルコペニア

嚥下障害の高齢者における虚弱・栄養・サルコペニアに関するレビュー論文です。

Joseph Murray: Frailty, Nutrition, and Sarcopenia in the Geriatric Patient With Dysphagia. Perspectives on Gerontology 15 35-41 December 2010. doi:10.1044/gero15.2.35

高齢の嚥下障害患者では、虚弱、低栄養、サルコペニア(加齢に伴う狭義のサルコペニア)による嚥下筋の筋肉量低下や筋力低下の存在について評価、判断することが重要です。これらが存在する場合と存在しない場合で比較すると、嚥下リハの予後が悪い可能性があります。

嚥下筋のサルコペニアの診断基準は現時点ではありませんが、

・頭部挙上(Shaker Exercise)が自分でできない
・舌圧が弱い
・首回りが細い、甲状軟骨が皮下に明瞭に見える
・舌の厚さが薄い

などで定性的に推測できると考えています。今後、これらについて定量的に評価して、この数値以下であれば嚥下筋のサルコペニアと判断するという診断基準を作ることが重要です。嚥下筋のサルコペニアに関する研究や論文は今後、増えてくるのではと感じています。

In this review, the interaction of aging and deglutition are discussed with attention to normal changes in bodily systems that occur with aging and the acceleration of decline often observed in frail individuals. The concepts of frailty and sarcopenia are discussed in a way to aid the speech-language pathologist providing services to the elderly with swallowing disorders. It is important for the practicing speech-language pathologist to be able to identify elders who are at risk of poor outcome as the result of the synergy of poor nutrition and frailty as these symptoms appear in daily clinical practice.

がん悪液質総説論文

今日はがん悪液質総説論文を紹介します。

Kumar NB, Kazi A, Smith T, Crocker T, Yu D, Reich RR, Reddy K, Hastings S, Exterman M, Balducci L, Dalton K, Bepler G: Cancer Cachexia: Traditional Therapies and Novel Molecular Mechanism-Based Approaches to Treatment. Curr Treat Options Oncol. 2010 Dec 3. [Epub ahead of print]

今回の論文では、特にn-3脂肪酸による治療に関して重きが置かれています。賛否両論ではありますが、n-3脂肪酸+適切な栄養療法+食欲増進剤の併用療法を早期の悪液質に対して行うことで改善できるのではないかと提言しています。

また論文の最後に文献の中で特におすすめというものいくつか紹介していました。これらの論文の中には読んだことがないものがありましたので、読んでみたいと思います。これらの文献のみ紹介します。

Tisdale MJ: Catabolic mediators of CC. Curr Opin
Support Palliat Care 2008, 2(4):256–261

Deans C, Wigmore SJ: Systemic inflammation, cachexia
and prognosis in patients with cancer. Curr
Opin Clin Nurs Metal Care 2005, 8(3):265–269.

Bozzetti F, Mariani L: Defining and classifying CC: a
proposal by SCRINIO Working Group. JPEN J Parenter
Enteral Nutr 2009, 33(4):361–367.

Bosaeus I: Nutritional support in multimodal therapy
for cancer cachexia. Support Care Cancer 2008,
16(5):447–451.

Fearon KC: Cancer cachexia: developing multimodal
therapy for a multidimensional problem. Eur J Cancer
2008, 44(8):1124–1132.

Al-Majid S, Waters H: The biological mechanisms of
cancer-related skeletal muscle wasting: the role of
progressive resistance exercise. Biol Res Nurs 2008,
10(1):7–20.

Mantovani G, Maccio` A, Madeddu C, et al.: Randomized
phase III clinical trial of five different arms
of treatment for patients with cancer cachexia: interim
results. Nutrition 2008, 24(4):305–313.

Abstract
OPINION STATEMENT: The complex syndrome of cancer cachexia (CC) that occurs in 50% to 80% cancer patients has been identified as an independent predictor of shorter survival and increased risk of treatment failure and toxicity, contributing to the mortality and morbidity in this population. CC is a pathological state including a symptom cluster of loss of muscle (skeletal and visceral) and fat, manifested in the cardinal feature of emaciation, weakness affecting functional status, impaired immune system, and metabolic dysfunction. The most prominent feature of CC is its non-responsiveness to traditional treatment approaches; randomized clinical trials with appetite stimulants, 5-HT3 antagonists, nutrient supplementation, and Cox-2 inhibitors all have failed to demonstrate success in reversing the metabolic abnormalities seen in CC. Interventions based on a clear understanding of the mechanism of CC, using validated markers relevant to the underlying metabolic abnormalities implicated in CC are much needed. Although the etiopathogenesis of CC is poorly understood, studies have proposed that NFkB is upregulated in CC, modulating immune and inflammatory responses induce the cellular breakdown of muscle, resulting in sarcopenia. Several recent laboratory studies have shown that n-3 fatty acid may attenuate protein degradation, potentially by preventing NFkB accumulation in the nucleus, preventing the degradation of muscle proteins. However, clinical trials to date have produced mixed results potentially attributed to timing of interventions (end stage) and utilizing outcome markers such as weight which is confounded by hydration, cytotoxic therapies, and serum cytokines. We propose that selective targeting of proteasome activity with a standardized dose of omega-3-acid ethyl esters, administered to cancer patients diagnosed with early stage CC, in addition to a standard intervention with nutritionally adequate diet and appetite stimulants, will alter metabolic abnormalities by downregulating NFkB, preventing the breakdown of myofibrillar proteins and resulting in increasing serum protein markers, lean body mass, and functional status.

2010年12月6日月曜日

摂食・嚥下リハビリテーション特別講演会:津田沼

東京湾岸リハビリテーション病院で、「千葉県8020(ハチマル・ニイマル)運動推進特別事業」の業務委託を受け、要介護者等摂食嚥下指導普及事業として、摂食・嚥下リハビリテーションに関する講演会が開催されています。

http://www.wanreha.net/info/index.htm

私も平成23年3月3日(木)19時からモリシアホール「多目的ホール」で、「地域における摂食嚥下リハビリの構築の実際:神奈川県の現状を通して(仮)」という講演をさせていただきます。その他にも下記のような高名な先生による講演があります。

平成23年1月27日(木) 看護師による摂食嚥下リハビリテーション(仮) 鎌倉やよい先生
平成23年2月17日(木) 脳卒中パスの歯科シートを活用した摂食嚥下リハビリについて 石田瞭先生

いずれも参加費無料です。申し込み用紙は上記HPから入手できます。特に津田沼周辺の方にご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。

PowerPointでマスターする勝ち抜く提案プレゼン実践の極意

今日は住中光夫著、PowerPointでマスターする勝ち抜く提案プレゼン実践の極意、ASCIIを紹介します。

http://ascii.asciimw.jp/books/books/detail/4-7561-4733-X.shtml

アマゾンでは中古品を800円程度で購入できるようです。

プレゼンというとついPowerPointを作ること、凝ることに走りがちです。最近もPowerPoint作りはよく頑張ったなあ、でもプレゼンは…というものを見かけました。聞き手主体ではなく作り手主体のPowerPointでは、プレゼンが成功するはずがありません。

この書籍はPowerPointの2003までの対応ということで新しくはありませんが、プレゼンに関して十分学習になります。また、私のレベルではPowerPointの作り方に関しても十分参考になります。

良いプレゼンを行うためには、以下の4つの力を総合的にもつことが必要だそうです。

聴き手の価値の創出力
伝える情報の論理化力
わかりやすい表現力と資料作成力
よく伝わる説明力

プレゼンはこれらを総合した全人格的な表現力の場だそうです。ですので、ある人にプレゼンさせればその人の実力がわかってしまうということになります。この書籍では、これらの力をどのように身につけるかがわかりやすく解説されています。

プレゼンのステップは5W1Hで行うとあります。企画・設計、資料作成、プレゼンの実施の3段階がありますが、最も大事なのはプレゼンの企画・設計です。要するにWhyとWhoです。何のためにプレゼンをするのか、誰に対してプレゼンをするのか、当たり前のことですが、これらを明確にさせないとプレゼンはうまくいきません。プレゼンでお悩みの方におすすめします。

■プレゼン目的編
Part 1「何のためのプレゼンか」
  01.なぜプレゼンを行うのか?
  02.感動したことは始められる
  03.顧客を感動させる脳へのアプローチ
  04.プレゼンは人と人とのコミュニケーション
  05.プレゼンがビジネスを強くする
  06.プレゼンで必要な4つの力

■プレゼン企画編
Part 2「誰に何を伝えるのか」
  01.なぜ情報が伝わらないのか
  02.プレゼンで行う3つのステップ
  03.伝える相手は誰で何を伝えるのか
  04.テーマを絞り、論旨をストーリー化する
  05.6W2Hで企画・設計を行う
  ケース事例で学ぶプレゼン(1)

■提案企画編
Part 3「BAF手法で作る提案書・企画書」
  01.提案書は意思決定者へのラブレター
  02.BAF手法による提案方法
  03.BAF提案書3つの基本構造
  04.顧客階層に合わせた提案書
  05.意志決定に結びつく提案とは
  ケース事例で学ぶプレゼン(2)

■資料作成編
Part 4「構造化手法で3倍速い資料作成」
  01.伝わる表現とは
  02.構造化手法で伝わる情報へ
  03.秘訣は構造化テンプレートの作成
  04.デザインで統一感のある資料作り
  05.表紙・目次・章扉のテンプレートを作る
  06.本文ページのテンプレートを作る
  07.ホワイトページで3倍速く資料を作る
  08.表紙、目次、章扉、ホワイトページを作る
  ケース事例で学ぶプレゼン(3)

■ページ内レイアウト編
Part 5「レイアウトとデザインの基本を守る」
  01.本文ページの基本レイアウト
  02.ページの共通要素を追加する
  03.見る人にやさしいレイアウト
  04.プレゼンにおける色の役割
  05.色で情報を区別・強調する
  06.よく見える配色にする
  07.色の持つ「意味」を利用する
  08.文字によるイメージ統一と読みやすさ
  09.デザインで差をつける
  ケース事例で学ぶプレゼン(4)

■本文表現編
Part 6「伝わる力・3つの図解」
  01.3つの図解で伝える力を強化する
  02.「論理図解」で情報を構造化する
  03.論理図解(1) 関係と分析を表す「ロジック図解」
  04.論理図解(2) 階層や内訳を表す「構成図解」
  05.論理図解(3) 関係と変化の流れを表す「関係図解」
  06.論理図解(4) 表や座標軸で表す「表図解」
  07.論理図解(5) 手段や段階を表す「手続図解」
  08.論理図解(6) 論理図解で失敗しない3つのポイント
  09.論理図解(7) 文章を図解化する
  10.文章を図解化する(演習問題)文章から論理図解を作成してみよう
  11.「絵図解」で情報をビジュアル化する
  12.絵図解(1) オリジナルの絵部品集を利用する
  13.絵図解(2) 右脳に訴求するマルチメディア
  14.絵図解(3) 「お客様の声」を音声で表現する
  15.絵図解(4) 「お客様の声」をビデオで表現する
  16.絵図解(5) 写真の見せ方で伝達力をUpする
  17.「データ図解」で数字を視覚化する
  18.データ図解(1) 数値を一覧、分類比較する「表図解」
  19.データ図解(2) 傾向や問題点を表す「グラフ図解」
  ケース事例で学ぶプレゼン(5)

■プレゼン準備編
Part 7「プレゼンの成功は万全の準備から」
  01.プレゼンまでに何を準備すべきか
  02.プランニングシートで骨子を明確に
  03.聴き手の再分析と準備
  04.聴き手がうなずくデジタルプレゼン表現
  05.デジタルプレゼン表現(1) 意味のあるアニメーション利用
  06.デジタルプレゼン表現(2) アニメーションで理論的に説明する
  07.デジタルプレゼン表現(3) アニメーションで事実と切り口を分けて説明する
  08.デジタルプレゼン表現(4) ほかの情報にリンクする
  09.十分なリハーサルが成功を招く
  10.配布資料はプレゼンを補完する
  11.配布資料はプレゼンを補完する(1) スライドから縦位置形式資料を作る
  12.配布資料はプレゼンを補完する(2) 縦位置形式資料からスライドを作る
  13.会場準備で自信をつける
  ケース事例で学ぶプレゼン(6)

■プレゼン実践編
Part 8「聴き手がうなずくプレゼンのコツ」
  01.タイプ別で攻める3つのプレゼン
  02.多人数プレゼンの進め方
  03.効果的なスライドショーの実践ポイント
  04.タブレットPCで行うライブ・プレゼン
  05.この人の話を聴きたいと思わせるには
  06.プレゼンを上手く行う10の話法
  07.4つの「意」でプレゼンを行う
  08.聴き手の意思を態度でつかむ
  09.質疑応答への対応
  10.プレゼン後のアクション
  ケース事例で学ぶプレゼン(7)

■Appendix
  配色サンプル集
  PowerPoint 2000での操作方法

2010年12月5日日曜日

侵襲時の筋トレの目安:CRP

侵襲で異化期の時は、筋肉をどんどん分解してアミノ酸にして肝臓で糖新生でグルコースにして、疾患や怪我に対する治癒反応へのエネルギー源となります。そのため、レジスタンストレーニング、筋トレは禁忌となります。筋肉合成を全く期待できる時期ではありませんので。

このような話をすると、検査値で目安はないかとよく聞かれます。一番確実なのは窒素バランスです。窒素バランスが負であれば、その原因が飢餓であれ侵襲であれ悪液質であれ、筋トレによる筋肉合成を期待できないと判断できます。ただ、測定がやや面倒ではあります。

先日の第13回神奈川NSTフォーラムで、侵襲期の栄養管理として以下のような話がありました。言葉使いが正確でない可能性がありますがご了承ください。

「感染症を制御しないと栄養療法は効果を発揮しない。CRPが3~5まで改善した時点が栄養投与量を30kcal/kgまで増量し、リハビリテーションを進めるタイミングである。」

ここでのリハを進めるというのは、リハを開始するという意味ではありません。機能維持を目標としたリハ(関節可動域訓練、ポジショニング、座位訓練、筋トレ以外の呼吸訓練など)から、機能改善を目標としたリハ(筋トレ、持久力増強訓練など)に移行するタイミングという意味です。高度の侵襲時でも、機能維持を目標としたリハの適応はあります。

CRPが2桁であれば明らかに侵襲の程度が強いので、機能維持を目標としたリハしか行えません。CRPが3~5まで改善してくれば機能改善を目標としたリハを検討することになります。CRPが侵襲下のリハの1つの目安となります。

ただ、CRPが3~5で持続している場合には、機能維持を目標としたリハしか行えないと思います。一方、CRPが5以上であっても明らかに改善傾向で、侵襲としてはすでに落ち着いているがCRPの半減期の関係でまだ高い場合には、機能改善を目標としたリハを行ってよいでしょう。これらはすべて仮説ですが、リハ栄養の1つの指標になると考えます。

2010年12月2日木曜日

Paralytic condition における呼吸リハ

先月の第5回リハビリテーション科専門医会学術集会では、「Paralytic condition における呼吸リハビリテーション」に関する教育講演がありました。抄録は下記のHPで入手できます。

http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~rehasen5/shouroku.pdf

以下、上記HPの38ページからの引用です。

1. Paralytic condition とは

 肺障害は病態より大きく閉塞性と拘束性に分けられる。Paralytic condition とは拘束性障害のうち、原因が一時的には肺・胸郭にあるのではなく、呼吸運動にかかわる神経系から筋に至る経路にあるものである。すなわち、脳の呼吸中枢から始まり、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、筋がその病変の主座となりうる。また、呼吸筋力低下が主要な問題である状態と考えれば、加齢、廃用、鎮静などもこの範疇に含まれると考えられる。

2. Obstructive condition とのちがい
 閉塞性障害が主であるCOPD における呼吸リハビリテーション(以下、リハ)の目的の大きな柱はADL の維持、改善であり、運動療法をいかに行うかが重要である。これに対して呼吸筋力低下をきたす状態では、しばしば重度の四肢の運動障害を合併する。この場合、呼吸運動による生命の維持がまず優先され、ADL を含めて筋力が不十分な場合に外部に動力を求めることとなる。

3. Paralytic condition における呼吸リハ
 Paralytic condition における呼吸リハは非侵襲的人工換気(NPPV)、特に陽圧換気の導入、普及により発展し、患者のQOL も向上した。その最もよいモデルはデュシェンヌ型筋ジストロフィーとされている。その理由は、進行性であるが急激ではないこと、知的面、咽喉頭筋機能が比較的保たれることなどである。これらの条件が欠けるほど、そのケアおよびリハは難しくなってくる。たとえば、筋委縮性側索硬化症では進行が急激であり、早期より球麻痺を生じることよりその対応はより難しくなる。また高位頸髄損傷では、慢性期の管理は筋ジストロフィーに比べてそれほど難しくはないが、急性期にはNPPV 導入は必ずしも容易でなくまた普及も進んでいない現状である。リハの目的は、胸郭・肺のコンプライアンスの維持、気道の清浄化、換気の正常化であるが、それには機器の使用を含めたさまざまな技術が必要である。

4. 神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハガイドライン策定に向けて
 これらの疾患は一般の医療現場では希少な疾患であり、NPPV をはじめ一連の呼吸リハの普及が進まない現状がある。リハ学会では、麻痺性疾患の呼吸リハをどのように行うべきか一定の線を示し啓蒙するためガイドラインを作成する方針とし、策定委員会が設置された。本委員会は発足して間もないが、有用なガイドライン策定をめざして活動していく所存である。

1に呼吸筋力低下が主要な問題である状態と考えれば、加齢、廃用、鎮静などもParalytic conditionに含まれるとあります。広義のサルコペニア(加齢、活動、疾患、栄養)で呼吸筋の筋肉量と筋力が減少すれば当然、Paralytic conditionとなります。

Paralytic conditionのほうが神経系から筋肉のいずれかの障害で生じるという点で、呼吸筋のサルコペニアより広い概念になります。ただ、広義の呼吸筋のサルコペニアを合併している患者が多いのではと思います。

人工呼吸器からなかなか離脱できない理由として、肺・胸郭の問題だけではなく、広義の呼吸筋のサルコペニアもあげられます。この場合、呼吸リハを行うことになりますが、レジスタンストレーニングを行ってよいかどうかは、現在の全身・栄養状態や栄養管理次第となります。また、適切な栄養管理の併用は欠かせません。

サルコペニアというと、四肢体幹の筋肉量と筋力の低下をイメージしがちですが、口腔筋・嚥下筋、呼吸筋、心筋など全身の筋肉量と筋力が低下しますので、これらを考慮したリハ栄養が重要といえます。Paralytic conditionも「栄養ケアなくしてリハなし」「リハなくして栄養ケアなし」かもしれません。

2010年12月1日水曜日

動機づけ要因と衛生要因

今日は、F.ハーズバーグによって提唱されたモチベーション理論である、動機づけ要因と衛生要因を紹介します。この理論は古典かもしれませんが、極めて有用な考え方だと私は感じています。

ハーズバーグは、仕事に対する満足をもたらす要因と不満をもたらす要因が異なることを示しました。以下に両者の例を示します。

動機づけ要因:仕事の達成感、責任範囲の拡大、能力向上や自己成長、チャレンジングな仕事など。

衛生要因:会社の方針、管理方法、労働環境、作業条件(金銭・時間・身分)など。

劣悪な労働環境(例:長時間労働、頻回の当直、当直明けの連続勤務、給料が安い、インターネットができない環境)だと多くの場合、不満を感じます。ただ、これらが解消されたからといって仕事満足度が高くなるわけではなく、仕事不満度が少なくなるだけです。

一方、仕事を通じて自分が学習と成長をしたり、院内外のネットワークが広がったり、患者さんの治療や改善に貢献したりすると多くの場合、満足を感じます。これらが少ない場合には、仕事満足度が低くなりますが、劣悪な労働環境のような不満感はそれほど出てきません。

NSTや嚥下チームで大事なことは、衛生要因で不満感を作らないようにしつつ、動機づけ要因で満足感を作ることになります。どちらか一方だけというわけにはいきませんが、モチベーションを高めるという意味では、動機づけ要因に重きを置くことが有用です。リハ栄養への関心を高める意味でも、動機づけ要因を意識していきたいと考えています。

ちなみにこの理論は仕事に限らず、人間関係などでも有用です。例えば私の場合、時間にルーズな人間が嫌いです(衛生要因がみたされずに不満が高まります)。ただ、時間に正確であっても、その人に惚れることはありません(笑)。つまり、欠点・弱み(衛生要因)を改善しても、人に好かれるようにはなりません。

一方、生き方・考え方が素敵な方や素晴らしい成果をあげている方のことは好きになります(動機づけ要因がみたされて満足が高まります)。ただ、まだ学習と成長の発展途上の方であっても、嫌いになることはありません(笑)。つまり、長所・強み(動機づけ要因)を改善することで、人に好かれるようになります。

私は昔、人に好かれようと思って衛生要因をなくすことにばかり力を入れていましたが、これは人に嫌われないための努力であって、人に好かれるための努力ではありませんでした。その結果、残念ながらモテませんでした(笑)。今は、動機づけ要因を身につけることにより力を入れています。

PT・OT・ST・歯科衛生士・リハ医が一緒に学習できる場

昨年末に「PT・OT・STとリハ医が一緒に学習できる場」というブログを書きました。

http://rehabnutrition.blogspot.com/2009/12/ptotst.html

PT・OT・STとリハ医が一緒に学習できる場がほとんどないので、この状況を改善しなければいけないと感じていました。それから約1年がたちました。残念ながら今でもPT・OT・ST・歯科衛生士・リハ医が一緒に学習できる場はほとんどないと思います。もしご存知の方がいましたら、教えていただけるとありがたいです。

リハビリテーション・ケア合同研究大会(全国リハビリテーション医療研究大会、全国回復期リハビリテーション病棟研究大会、全国地域リハビリテーション研究会、全国訪問リハビリテーション研究大会、全国老人デイ・ケア研究大会、全国地域リハビリテーション支援事業連絡協議会研究大会)はそうなのかもしれませんが、私は参加したことがないのでよくわかりません。来年の熊本(10月29~31日)のは、日程があうか仕事の依頼があるかすれば、参加してみようと思います。

特に歯科衛生士と一緒に学ぶ場を作ることが大変だと感じています。この1年で歯科衛生士のお友達は少し増えましたが、個人的にはまだまだ歯科とのつながりは薄いのが現状です。医科歯科連携を強化したいと思っているのですが、少しずつというところです。

まだ実現可能性は?ですが、NST専門療法士に合格もしくは目指しているPT・OT・ST・歯科衛生士とリハ科医師が一緒に学習できる場を何とか作りたいと考えています。皆様のご協力の程、よろしくお願い申し上げます。