2011年11月30日水曜日

作業療法士のためのキャリアデザイン入門

来年1月22日に神奈川県作業療法士会で「作業療法士のためのキャリアデザイン入門-強みの作り方、伸ばし方、活かし方-」という研修会を開催します。

http://kana-ot.jp/wpm/lecture/post/246

OTであれば神奈川県以外の方でも申し込み可能ですが、応募者多数の場合には神奈川県のOTを優先するようです。医療人のキャリアデザインで3時間のワークショップを行うのは初めてですが、FDの1つとして参加者が考える機会になればと思っています。興味のあるOTはぜひご参加いただければと思います。

もしこれが好評でしたら、他でも医療人のキャリアデザインのワークショップをやりたいですね。ビジネスパーソンや医療人でも看護師向けのものは少なくありませんが、看護師以外の医療人ではこのようなワークショップは少ないと感じています。そのうち、リサーチクエスチョンよりキャリアデザインのワークショップばかり行うことになるかもしれません。

以下、上記HPからの引用です。

日時:2012年1月22日(日)12:30受付開始 13:00-16:00
※講習会終了後に懇親会を予定しています。見知らぬ方同士でも気軽に参加していただけるよう配慮いたしますので、普段できない情報交換の場としてご利用いただければ幸いです。(会費は別途徴収します)

場所:横浜市立大学附属市民総合医療センター本館3階リハビリテーション部
〒232-0024横浜市南区浦舟町4-57 電話番号:045-261-5656
横浜市営地下鉄ブルーライン「阪東橋」駅下車徒歩5分
京浜急行「黄金町」駅下車徒歩10分

内容:作業療法士の国家試験に合格して、作業療法士になったあなた。あなたは作業療法士としてのキャリアデザインをどの様に考えていますか?臨床場面で経験を積み、スキルアップに努力しているあなたに、今回別の視点からのキャリアデザインを提案したいと思います。講師は、横浜市大の若林秀隆先生をお迎えします。リハビリテーション医学界に「リハ栄養」の概念を持ち込み、多くの著作と研修会の講師、リハ栄養研究会の主宰など、今最も注目される先生です。先生ご自身のキャリアデザインの経験を元に、作業療法士への熱いメッセージをいただきたいと思います。キャリアデザインに興味がある方だけでなく、リハ栄養に興味のある方も、若林先生の肉声にふれることのできる機会となります。お早めのご応募をお待ちしています。

対象:神奈川県OT士会員で今年度会費納入済みの方、他都道府県OT士会員等
※神奈川県在勤のOTで、神奈川県作業療法士会未入会または今年度会費未納の方は受講できません。

参加費:3000円

定員:50名

申し込み方法:
1)E-mail(携帯メール不可)にて神奈川県OT士事務局研修会担当(ken-otアットマークkana-ot.com)までお申込み下さい
2)E-mailの題名を「身障1/22受講希望」とし、本文に1)受講希望講習会名及び開催日、2)氏名、3)所属、4)都道府県士会名、5)日本作業療法士協会会員の場合は会員番号、6)連絡先電話番号、7)返信用E-mailアドレス(携帯メール不可)を必ずご記載下さい。記載内容に不備があった場合は受け付けられません。
3)神奈川県在勤のOTの方は、申込2週間前までに必ず今年度会費を納入して下さい。納入確認に2週間程度必要になります。納入状況をお忘れの場合は、日本作業療法士協会「Web版OT協会会員情報システム」にてご確認いただくか、士会事務局(電話番号045-663-5997)にお問い合わせください。
4)申込みのE-mailは1人1通までとします。

申し込み締切
2011年12月1日―2012年1月6日
※期間外の申込は受付不可
※応募者多数の場合、先着、神奈川県OT士会員を優先し選考いたします。

問い合わせ
山岸誠、伊藤淳子(横浜市大附属市民総合医療センター)電話番号045-261-5656 内線2444OT室

病態別実践リハ医学研修会(内部障害)

2012年2月18日(土)に、東京・大手町サンケイプラザで、病態別実践リハビリテーション医学研修会(内部障害)は開催されます。

http://www.jarm.or.jp/member/member_calendar_20120218.html

日本リハ医学会の会員しか参加できませんが、私も「栄養管理とリハビリテーション:嚥下障害を含めて」という講演をさせていただきます。日本リハ医学会の会員で関心のある方にはご参加いただければと思います。よろしくお願いいたします。

■ 病態別実践リハビリテーション医学研修会(内部障害)
開催日時:2012年2月18日(土)10:00~16:30
開催場所:大手町サンケイプラザ
対 象 :リハビリテーション医学会会員
単 位 :20単位(4講演全て受講につき)、日本医師会生涯教育講座4単位
プログラム:
10:10「排尿障害とリハビリテーション」
独立行政法人国立病院機構東京医療センター 古野 薫
11:25「栄養管理とリハビリテーション:嚥下障害を含めて」
      横浜市立大学附属市民総合医療センター 若林 秀隆
13:25「透析患者のリハビリテーション」 諏訪の杜病院 武居 光雄
14:40「メタボリックシンドロームとリハビリテーション」 埼玉医科大学 間嶋 満

[申込方法]
受講料 :15,000円(昼食・テキスト代を含む)
定 員 :100名(定員に達し次第、申込受付を終了します)
     ※入金後のキャンセルによる返金には応じられません。
修了証 :講義終了後の試験合格者には修了証を交付します。
申込方法:オンラインによる申込受付。会員ページへのログインが必要です。

2011年11月29日火曜日

臨床栄養:高齢者の栄養と運動

臨床栄養の最新号119巻7号で、「高齢者の栄養と運動-健康寿命延長のための新たな試み」が特集されています。
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/eiyo/EiyoBookDetail.aspx?BC=061197

高齢者栄養をめぐる重要な概念が項目として取り上げられています。いずれもリハ栄養的にも重要な項目ばかりです。強いて言えば運動による抗炎症作用の項目があるともっと嬉しかったですが、十分学習になりますので一読をお勧めします。

対談 高齢者における栄養ケアの重要性-低栄養の早期発見とMNA®の有用性  雨海照祥,葛谷雅文……738 
老年症候群とは  神﨑恒一……750 
フレイルティとは  葛谷雅文……755 
サルコペニアとは  佐竹昭介……760 
〔コラム〕sarcopenic obesityとはなにか  荒木厚……767 
カヘキシアとは  雨海照祥……771 
〔コラム〕MIA症候群-低栄養症候群,炎症,粥状硬化症の3つの病態の合併症候群  雨海照祥……785

透析中の運動療法

透析中の運動療法に関するレビュー論文を紹介します。

Jung TD, Park SH. Intradialytic Exercise Programs for Hemodialysis Patients. Chonnam Med J. 2011 Aug;47(2):61-65. Epub 2011 Aug 31.

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3214879/pdf/cmj-47-61.pdf

終末期腎疾患患者での運動療法の有用性は、コクランレビューでも明らかにされています。ただし、透析中に運動療法を行う有用性の検証は不十分です。

有酸素運動とレジスタンストレーニングには、身体機能、最大酸素摂取量、筋力だけでなく、身体計測値、栄養状態、血液データ、炎症性サイトカイン、うつ、QOLを改善させる作用があります。ただし、運動療法の効果が比較的健康な透析患者のみに限定されるかどうかは不明ですので、今後の検証が必要です。

透析中の運動療法の実施に関しては私は行うべきとまでは思いませんが、透析患者の運動療法は行うべきです。透析時間以外に運動療法を行う機会がまったくなさそうな患者の場合には、透析中に運動療法を行ったほうがよいと感じます。特に運動で栄養状態や炎症性サイトカインを改善させるところが重要です。

Abstract
Although it is widely accepted that exercise is beneficial in patients with end-stage renal disease as in the general population, it is not easy to incorporate exercise programs into routine clinical practice. This review aimed to investigate the beneficial effects of exercise during hemodialysis and also to introduce various intradialytic exercise programs and their advantages as a first step in combining exercise programs into clinical practice. Aerobic and resistance exercise are beneficial not only in improving physical functioning, including maximal oxygen uptake and muscle strength, but also in improving anthropometrics, nutritional status, hematological indexes, inflammatory cytokines, depression, and health-related quality of life. However, it is not clear whether the beneficial effects of exercise are limited to only relatively healthy dialysis patients. Therefore, the effects of individualized exercise programs for elderly patients or patients with comorbid conditions need to be studied further.

ベッド上安静とサルコペニア

ベッド上安静とサルコペニアのレビュー論文を紹介します。
Coker RH, Wolfe RR. Bedrest and sarcopenia. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2011 Nov 19. [Epub ahead of print]

ベッド上安静によるインスリン抵抗性が、栄養やサルコペニアに悪影響を与えている可能性があります。ベッド上安静による筋肉量低下の対策として必須アミノ酸の投与が有効な可能性があります。廃用には栄養とリハの両者が必要ということですね。

Abstract
PURPOSE OF REVIEW: The primary focus of this review is to characterize the physiological elements of sarcopenia. In addition, we will also describe the impact of bedrest on sarcopenia and how various countermeasures may be able to offset the deleterious clinical consequences of unanticipated bedrest or hospitalization. It is well known that the aging process presents many challenges to the maintenance of overall health. With the increasing rate of obesity and the potentially simultaneous development of sarcopenia, bedrest presents a difficult clinical challenge to the elderly individual.

RECENT FINDINGS: The etiology of accelerated sarcopenia has been described as a syndrome. The characteristics of this syndrome include combined alterations in neuromuscular control and muscle protein synthesis that increase the risk of morbidity and mortality in the elderly population. Moreover, the acute onset of bedrest-induced insulin resistance may further complicate the nutritionally derived

SUMMARY: Even though many questions remain unresolved concerning the optimal clinical management of elderly individuals who undergo unanticipated bedrest, the supplementation of essential amino acids has shown promise as a therapeutic strategy to minimize the detrimental influence of hospitalization in the elderly. In turn, this nutritional adjunctive therapy may reduce the length of stay and the likelihood of repeated hospitalization.

犬と猫の悪液質とサルコペニア

犬と猫の悪液質とサルコペニアに関するレビュー論文を紹介します。

Freeman LM. Cachexia and Sarcopenia: Emerging Syndromes of Importance in Dogs and Cats. J Vet Intern Med. 2011 Nov 23. doi: 10.1111/j.1939-1676.2011.00838.x. [Epub ahead of print]

長寿の犬や猫が増えていることは聞いていましたが、犬や猫の世界でも悪液質とサルコペニアが重要な問題となりつつあることは知りませんでした。犬や猫でも体重と筋肉量の管理が重要とありますので、犬や猫のリハ栄養も大事になりますね(笑)。

Abstract
Cachexia is the loss of lean body mass (LBM) that affects a large proportion of dogs and cats with congestive heart failure (CHF), chronic kidney disease (CKD), cancer, and a variety of other chronic diseases. Sarcopenia, the loss of LBM that occurs with aging, is a related syndrome, although sarcopenia occurs in the absence of disease. As many of the diseases associated with muscle loss are more common in aging, cachexia and sarcopenia often are concurrent problems. Both cachexia and sarcopenia have important clinical implications because they are associated with increased morbidity and mortality. The pathophysiology of these 2 syndromes is complex and multifactorial, but recent studies have provided new information that has helped to clarify mechanisms and identify potential new targets for treatment. Newly identified mechanisms and pathways that mediate cachexia appear to act by increasing energy requirements, decreasing energy intake, impairing nutrient absorption, and causing metabolic alterations. Whereas cachexia and sarcopenia are important areas of research for drug development in people, they are only beginning to be recognized in veterinary medicine. Greater awareness and earlier diagnosis will help provide practical approaches to managing body weight and lean tissue in dogs and cats, as well as more directed targets for treatment.

2011年11月28日月曜日

週刊医学界新聞:RCTにおけるデータ解析

週刊医学界新聞の最新号(第2955号 2011年11月28日)に、今日から使える医療統計学講座【Lesson7】RCTにおけるデータ解析が掲載されています。この連載は本当におすすめです。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02955_03

上記HPよりポイントを引用させていただきます。以下、引用です。

*ベースラインの特性比較にはP値は記載しません。
*アウトカムの解析は補正しない場合が多いですが,補正によりパワーが増すことがあります。
*補正を行う場合は,プロトコル作成時に補正する変数を決めておくことが重要です。
*アウトカムのベースライン値は通常補正するので,必ず測定します。

RCTでベースラインの両群の特性の違いをP値を見て、ランダム割り付けがうまく行っていないのではと解釈していたのですが、それは統計的に正しい意味を持たないそうです。まったく知りませんでした。

RCTでは補正なしの単変量解析を行うべきだと思っていたのですが、以下引用です。

(4)ベースラインの群間比較の結果は用いず,研究前に作られたプロトコルで表記された変数のみを補正する。これらの変数は,アウトカムに対して影響力を持つリスク因子(例:がんによる死亡がアウトカムの場合,腫瘍ステージなど)の中から選ばれる。
(5)アウトカムのベースラインの値(薬剤投与後の血圧をアウトカムとすると,投与前の血圧の値)を補正する。
(6)特性を確実にそろえるためにランダムな割り付けが層別に行われた場合(例:多施設RCTの場合の施設),層別に使われた変数を補正する。

これらに関しては統計的に正しいと認識されているとのことです。特にアウトカムのベースライン値での補正はあり(むしろ行ったほうがよい)なので、必ず測定することが大切だとあります。RCTは統計学的にはシンプルに解析すればよいと思っていたのですが、今回も自分の認識の誤りを実感できました。

2011年11月25日金曜日

リハビリテーション栄養ケーススタディ出版

若林秀隆編著「リハビリテーション栄養ケーススタディ-臨床で成果を出せる30症例」が、医歯薬出版から出版されます(11月28日予定です)。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=218670

上記HPで書籍の3ページほど、見本を見ることができます。内容紹介を引用します。以下、引用です。

●前書『PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養―栄養ケアがリハを変える』(2010年1月,小社刊)と『リハビリテーション栄養ハンドブック』(2010年11月,小社刊)では,リハ栄養のWhyとWhatを中心にした.それに対し本書では,リハ栄養のHow(方法)のに重点をおき,リハ栄養の症例を通して,機能訓練やリハにあわせた栄養管理を実践できることをめざした.

●第1章では,リハ栄養の総論および先駆的なリハ栄養を実践している近森病院と北海道済生会小樽病院の取り組みを紹介.第2章では,「脳疾患・神経筋疾患」「骨関節疾患・膠原病」「内部疾患」「がん」「摂食・嚥下障害」「その他の疾患」と疾患別に分けたリハ栄養30症例を収載した.
●症例では,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,医師,歯科医師,歯科衛生士のほかに,NST専門療法士である管理栄養士,薬剤師,看護師とリハ栄養にかかわる多職種が執筆.「症例提示」「評価」「ゴール設定」「リハ栄養の経過・帰結」「考察」など,わかりやすく解説した.

以上、引用です。リハ栄養のコンセプトは前書2冊で解説しましたので、今回はリハ栄養の実践方法の紹介に重きを置いています。リハ栄養を効率的に実施するには、病棟単位で従来のリハカンファレンスに管理栄養士やNST専門療法士が参加して、リハ栄養カンファレンスを行うことだと感じています。

12月3日の第1回日本リハビリテーション栄養研究会に間に合わせたいと思って頑張りました。当日の研究会参加者(申し訳ありませんが、事前申込制ですでに締め切っています)には、お荷物になるかもしれませんが、「リハビリテーション栄養ケーススタディ」を配布予定です。

ガリガリで回復期リハを行っている方を、今日も何人も診ました。臨床でリハと栄養管理に関わっている多くの医療人にぜひ、「リハビリテーション栄養ケーススタディ」を読んで、臨床現場でリハ栄養を実践していただきたいと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。

2011年11月24日木曜日

自己実現系ワーカホリック

大野正和氏のブログ「草食系」のための日本的経営論を紹介します。

http://www.geocities.jp/japankaroshi/index.html

過労死問題などを研究テーマとされていた方ですが、昨年50歳で急逝されたそうです。とても残念です。

この中に「自己実現系ワーカホリック」分析と「やりたいこと」言説の抜書きシリーズがあります。このうち、その1の中にある「自己実現系ワーカホリック」について引用します。以下、引用です。

「自己実現系ワーカホリック」
個人性が強い「自由闊達」な仕事でありながら、いや、むしろそうであるがゆえに、「働きすぎ」が生じる
1. 趣味性:「好きなこと」=趣味を仕事にもち込んでいる
「好きなこと」や「やりたいこと」を仕事にすることが望ましい
2. ゲーム性:仕事における裁量性や自律性の高さ(しばしば疑似的)に基づいて「ゲーム」に没入していく
裁量性や創意工夫の余地がある仕事は希少価値をもつものとして憧憬の対象
3. 奉仕性:顧客への最大限の奉仕という気高い動機自体が、「働きすぎ」を生み出す
自分の生きる意味を他者からの承認によって見出し、「人の役に立つこと」を求める
4. サークル性・カルト性:仕事の意義についてハイテンションな、しばしば疑似宗教的な意味づけがなされ、高揚した雰囲気の中で仕事にのめり込む
「夢の実現」などの価値に向かって、瞬発的なハイテンションにもっていく
日本企業は、安定雇用の保障や高賃金という代価なしに、労働者から高水準のエネルギー・能力・時間を動員したいという動機を強く有している
その実現のために、「自己実現系ワーカホリック」を生み出すことが、きわめて好都合
以上、引用です。

日本企業によって生み出された「自己実現系ワーカホリック」であれば、過労死につながる恐れが少なからずあります。企業はかなり上手に労働者を働かせているという印象があります。当然かもしれませんが…。ただ、医療人も「自己実現系ワーカホリック」になりやすい環境にあると思います。

趣味性:やりたいことを仕事にしていることが少なくありません。
ゲーム性:職種によりますが、裁量性や創意工夫の余地は比較的あるほうです。
奉仕性:医療人に奉仕性がないわけがありません。
サークル性・カルト性:これは病院・施設や学会・研究会によりけりですが、一部の組織は高揚した雰囲気を持っています。

振り返ってみると自分も「自己実現系ワーカホリック」という気もします。上記の4つの要素はすべて持っています。ただ、4つの要素が揃っていることが問題ではなく、ワーカホリックになってしまうことが問題です。4要素を持ちつつも、ワークライフバランスをしっかり保つ心の工夫が重要だと感じますが、容易ではないかもしれません。まずはこの言葉を知って自覚します。

「自己実現系ワーカホリック」をトリアージすると、休みや趣味を楽しんでいる時は仕事を忘れるのが緑信号、休みや趣味を楽しんでいる時も仕事のことを考えるのは黄信号、休みや趣味のときに早く仕事に行きたいと考えて仕事に行ってしまうときもあるのは赤信号、休みや趣味がなく人生は仕事と睡眠・食事のみというのは黒信号です。

2011年11月22日火曜日

サルコペニア肥満の管理戦略

サルコペニア肥満の管理戦略に関するレビュー論文を紹介します。

Benton MJ, Whyte MD, Dyal BW. Sarcopenic Obesity: Strategies for Management. Am J Nurs. 2011 Nov 11. [Epub ahead of print]

看護師向けの雑誌で紹介されています。看護師はサルコペニア肥満に関する知識を持つべき。レジスタンストレーニングと蛋白摂取によるサルコペニア、サルコペニア肥満の予防と治療について、高齢患者に教育すべきとあります。日本の看護師よりこの点では明らかに進んでいる印象です。

サルコペニア肥満の対策について、質問されることがよくあります。まずはサルコペニア肥満の存在を知り診断することで、あとは食事と運動に尽きます。サルコペニアのない肥満では、全体のエネルギー摂取量を少なくして有酸素運動を行います。しかし、サルコペニア肥満でこのアプローチを行うと、筋肉量が減少する恐れがあります。

サルコペニア肥満では有酸素運動よりレジスタンストレーニング(週2回より週3回を推奨)を優先します。そして、レジスタンストレーニングとセットで蛋白質・アミノ酸補給を行います。また、筋トレ時に蛋白質を補給しなくても、通常の食事を体重1kgあたり蛋白質0.8gではなく1.5gを推奨する報告もあります。もちろん全体のエネルギー摂取量は少なめにします。

体重1kgあたり蛋白質1.5gというのは慢性腎疾患(CKD)患者には禁忌ですが、健常者であれば腎機能を悪化させるエビデンスはありません。高齢者で体重1kgあたり蛋白質0.8gはCKDを除き少なすぎだと私は考えます。問題はレジスタンストレーニングと高蛋白質の食事の併用をどう日常生活で継続できるかですね。

Abstract
Increased protein intake and resistance training can counter muscle loss in older adults. OVERVIEW: Sarcopenia is the age-related loss of muscle mass. Sarcopenic obesity, which describes the process of muscle loss combined with increased body fat as people age, is associated with loss of strength and function, reduced quality of life, and early death. This article describes the clinical significance of sarcopenia and sarcopenic obesity, their pathophysiology, and management strategies for healthy older adults. Both diet and exercise are essential for preventing and reversing loss of muscle and gains in fat. Dietary approaches include protein supplementation and a high protein diet. Exercise strategies promote resistance training in order to maintain muscle mass and maximize energy expenditureNurses should be knowledgeable about this condition and its management and routinely educate older patients on the benefits of resistance training and dietary protein to prevent or reverse sarcopenia and sarcopenic obesity.

2011年11月21日月曜日

看護師の継続教育・学習におけるe-learningの活用

週刊医学界新聞の第2954号、2011年11月21日に、バートン裕美氏(NurseEDU・CEO)と瀬戸山陽子氏(聖路加看護大学大学院博士後期課程)の「看護師の継続教育・学習におけるe-learningの活用」という記事が掲載されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02954_03

上記HPより一部引用して紹介させていただきます。

以下、引用です。
「看護職の学習では,何を学ぶかはもちろん重要であるが,同時に効率的な学習方法を普及させることが急務であろう。その一例として,e-learning方式を用いた利便性や自由度が高い学習方法が挙げられる。不規則勤務で拘束時間が長い看護師にとって,休日の確保はその翌日に効率的に働くため必要である。現在,休日返上で勉強会を行う施設が多くあるが,これは効率的な業務の妨げになりかねない。もちろん,休日を学習の機会に充てることも個人の選択肢としてはあるが,各看護師が主体的・自律的に選択でき,裁量度の高いシステムが求められる。」

効率的な学習方法は、私がブログでしばしば紹介しているFDの1つになります。FDの普及も急務だと思います。看護師以外の医療人にもe-learning方式はとても有用だと私は感じていますが、特に不規則勤務の多い看護師に有用だと私も考えます。問題はITに弱い看護師が多いことでしょうか。

以下、引用です。
「インターネット上で学びの場を共有することも効率的だ。(中略)掲示板など書き込みの場を設けることで,組織横断的に,他者が何を学び,何を疑問と思っているのかを知ることができる。これは,他の組織に所属する看護職との「学び合い」の機会となり,他者が何を考えているのかを知り,自分や自分の組織を客観的にとらえる機会ともなるだろう。また教え合うことで,集合知の共有にもなる。」

インターネット上での学びの場として、日本リハ栄養研究会ではFacebookのグループを活用しています。学びよりは交流の要素のほうが大きいですが、学びの要素も少なくないと感じています。多くの方にFacebookを初めて、研究会に入会して学んでいただけると嬉しいです。
日本リハ栄養研究会HP:https://sites.google.com/site/rehabnutrition/

最後の引用です。
「開かれた学びの場における学習は,自らがスキルアップするだけでなく,外の世界を知る機会にもなる。繰り返しとなるが,他の組織の看護職は何を考え,何に疑問を持ち,何を学んでいるかを知ることで,自らを振り返り,行動を起こすことに結びつくかもしれない。インターネットを使い,施設を超えて看護職同士がつながりながら,同じようにインターネットを使って自らの病気について学習する患者を支援できる専門職をめざしたいと思う。」

看護師は1病院内の人数が多いので、他の組織の看護師と交流する機会がほとんどなく、同じ組織の看護師とばかり交流していることが、他の医療人より多い気がします。病院の外に出なければ山登りはできませんので、インターネットで施設を超えて看護師同士がつながることは、学習と成長に有用だと考えます。

私の課題は、日本リハ栄養研究会(特にFacebookのグループ)を施設と職種を超えて多職種でつながり、より学習、成長、交流ができる場にすることです。リハ栄養セミナーやリハ栄養合宿に参加できない方でも、学習、成長、交流がいくらかはできるように頑張ります。もちろん参加するほうがなおよいですが…。

2011年11月19日土曜日

ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変える

ジェニファー・アーカー,アンディ・スミス著,阿久津 聡監修,黒輪 篤嗣訳、ドラゴンフライ エフェクト ソーシャルメディアで世界を変える、翔泳社を紹介します。

http://books.shoeisha.co.jp/book/b88805.html

FacebookやTwitterのマニュアル本ではなく、これらを使用してどのように社会的にインパクトのある目標を達成するかを解説した書籍です。

ポイントは、焦点、注目、魅了、行動の4つです。これら4つがすべてそろわないと目標達成は難しいようです。ぞれぞれのデザイン原則は以下の通りです。

焦点(Focus):焦点を絞るためのデザイン原則
 1)人間的(Humanistic)
 2)実行可能(Actionable)
 3)検証可能(Testable)
 4)明確(Clarity)
 5)幸福(Happiness)

注目(Grab Attention):注意を引くためのデザイン原則
 1)私的に
 2)驚きのあることを言う
 3)メッセージを視覚化する
 4)感覚に訴える

魅了(Engage):魅了するためのデザイン原則
 1)ストーリー(物語)を語る
 2)共感する
 3)信頼を得る
 4)メディアを組み合わせる

行動(Take Action):行動を起こさせるためのデザイン原則
 1)簡単にする
 2)楽しくする
 3)相手に合わせる
 4)オープンにする

自分に当てはめて考えてみると、「日本リハビリテーション栄養研究会」でどのようにソーシャルメディアを上手に活用して世界を変えるか、ということになります。今のところ、焦点、注目、魅了、行動の4つとも皆無ではないにせよ不足していますので、それぞれの次の一手を考えで行動しなければと再認識しました。

ただ、ソーシャルメディアを活用して「日本リハビリテーション栄養研究会」を立ち上げて世界を変えることなど、数年前にはまったく考えられませんでした。いろんな意味で厳しい時代ですしリスクはありますが、同時に挑戦する人にはチャンスも多い時代なのだと感じます。研究会運営の参考にしたいと思います。

目次
序章 ドラゴンフライの胴体
飛び続けるためのシステム

第1の羽 焦点を絞る
有効な目標の立て方

第2の羽 注意を引く
おびただしい数の人や意見や雑音に埋もれず、目立つためにはどうするべきか

第3の羽 魅了する
人々をどのように自分の目標に結びつけるか

第4の羽 行動を起こさせる
いかに人々に力を与え、運動を発展させるか

終章 前進し、上昇しよう
飛べた!次にすることは?

2011年11月18日金曜日

脳卒中とObesity Paradox:Editorial

StrokeにObesity Paradox and Stroke: Noticing the (Fat) Man Behind the CurtainというEdirotialが掲載されています。

Michael Katsnelson and Tatjana Rundek. Obesity Paradox and Stroke: Noticing the (Fat) Man Behind the Curtain. Stroke published online September 29, 2011, DOI: 10.1161/STROKEAHA.111.632471

下記で全文見ることができます。

http://stroke.ahajournals.org/content/early/2011/09/29/STROKEAHA.111.632471.full.pdf

おそらくStrokeの2011年12月号に、脳卒中のObesity Paradoxを示唆する論文が2本掲載され、同時にこのEditorialも掲載されるものと思います。

5. Ovbiagele B, Bath P, Cotton D, Vinisko R, Diener H. Obesity and recurrent vascular risk after a recent ischemic stroke. Stroke. In press.
脳卒中・心筋梗塞・血管疾患死亡までの期間(二次アウトカムですが)は、過栄養群や肥満群のほうがやせ群より長いという結果です。

12. Scherbakov N, Dimalgi U, Doehner W. Body weight and stroke: lessons
from the obesity paradox. Stroke. In press.
下記ブログを参照してください。
http://rehabnutrition.blogspot.com/2011/10/obesity-paradox.html

ただし、このEditorialではさらなる臨床研究が必要であるとしています。そして、新たな臨床研究の結果が出るまでは、過栄養や肥満の脳卒中患者に対してはバランスのとれた食事と定期的な運動で体重を減らすことを推奨すべきとしています。

個人的には、BMI25~27程度までの脳卒中患者であれば、やせている脳卒中患者よりも機能予後がよい可能性はあると感じています。しかし、BMI30以上の脳卒中患者の場合、やせなければ機能予後はよくないと考えます。脳卒中の場合、BMI18.5未満は体重増加、BMI30以上は減量を指導していきたいと思います。

2011年11月17日木曜日

非小細胞肺がんの悪液質と予後

非小細胞肺がんStage3患者における悪液質の有病割合と予後に関する研究です。

Barbara S. van der Meij, et al: The prevalence and prognostic value of cachexia in patients with stage III NSCLC

非小細胞肺がん患者で診断時にStage3であった40人について、悪液質の有無をFearonらとEvansの診断基準を使用して比較しています。

結果です。Fearonらの診断基準では、前悪液質9人、悪液質7人、悪液質に非該当24人でした。3群間で生存期間には有意差を認めませんでしたが、悪液質群でQOLが有意に低いという結果でした。

Evansの診断基準では、悪液質11人、悪液質に非該当29人でした。悪液質群では生存期間が有意に短く、炎症マーカー(CRP、IL-6)が高値で、ヘモグロビンと悪液質が低値でした。悪液質群ではQOLが低い傾向にありました。

結論ですが、非小細胞肺がん患者Stage3診断時に悪液質を認めることはありますが、Fearonらの診断基準とEvansの診断基準で異なります。悪液質は生存期間とQOLに関連していると思われますが、さらなる研究が必要です。

どちらの診断基準を使えばよいかは迷うところですが、Fearonらの診断基準はがん悪液質、Evansの診断基準はがん以外の疾患も含めた悪液質ですので、がん悪液質ならFearonら、がん以外の疾患の悪液質ならEvansがよいかもしれません。私は診断が簡単なFearonらの診断基準を好みますが。

Background and aims: Cachexia frequently occurs in patients with lung cancer, and is associated with reduced physical function, intolerance to anti-cancer therapy and shorter survival. Our aim was to study the prevalence and the prognostic value of cachexia and to explore parameters associated with cachexia in patients with stage III non-small cell lung carcinoma (NSCLC).

Methods: In 40 patients at diagnosis of stage III NSCLC, weight loss, FFM, handgrip strength, anorexia, nutritional intake and serum biochemistry were assessed. The ESPEN SIG and Fearon criteria were used to define pre-cachexia and cachexia, respectively. Cachexia was also defined by the Evans criteria. Additionally, quality of life was assessed by the EORTC-QLQC30 questionnaire. Differences between groups were analysed by independent t tests and ANOVA, and survival by Cox regression, adjusted for sex and tumour stage (IIIa/IIIb).

Results: According to the SIG and Fearon criteria, pre-cachexia was present in 9 (23%), cachexia in 7 (18%), and no cachexia in 24 (60%) patients. Survival between these groups was not significantly different, but patients with cachexia reported a lower quality of life (p = 0.03). According to the Evans criteria, cachexia was present in 11 (28%) patients and no cachexia in 29 (72%) patients. The cachexia group showed a significantly shorter survival than the no-cachexia group (HR = 4.4, p = 0.001). Patients with cachexia had higher levels of CRP and IL-6, and lower Hb and serum albumin than patients without cachexia (p < 0.01), and all inflammatory parameters were significantly correlated (Pearson r: 0.5–0.7, p < 0.01). Patients with cachexia tended to report a lower quality of life (p = 0.08).

Conclusions: Pre-cachexia and cachexia are prevalent at diagnosis of stage III NSCLC, but criteria find different prevalences. Cachexia seems to be associated with shorter survival and a lower quality of life. Further studies are warranted to more extensively explore these new criteria in cancer patients.

悪液質の機能障害と代謝順応

非小細胞肺がん悪液質患者の機能障害と代謝順応に関する研究を紹介します。

Anne-Marie C. Dingemans, et al: Functional impairment and distinct metabolic adaptations in skeletal muscle of pre-cachectic and cachectic patients with non-small cell lung cancer

非小細胞肺がん患者では、前悪液質のような発症後早期でも運動能力が低下しているという報告があります。そこで悪液質患者(悪液質16人、前悪液質10人)と健常者22人の身体機能、筋肉生検(大腿四頭筋)、酸化的代謝の調節因子・酵素を評価しました。

結果です。骨格筋の筋肉量減少は悪液質のみ認め、前悪液質では認めませんでしたが、身体機能は悪液質、前悪液質とも低下していました。筋生検では遅筋から速筋への有意な移行を認めました。酸化的代謝の調節因子は悪液質、前悪液質とも低下し、酸化的代謝の酵素は悪液質のみ低下していました。

悪液質・前悪液質では、筋線維の遅筋から速筋への移行や酸化的代謝の変化によって、運動耐容能低下を認める可能性があるという結論です。

遅筋から速筋への移行は、廃用性筋萎縮でも生じます。一方、原発性サルコペニア(加齢)単独での場合、速筋から遅筋に移行します。前悪液質・悪液質の患者に廃用症候群を合併すると、より遅筋から速筋への移行が進み、易疲労性が目立つ可能性があります。前悪液質・悪液質では特に廃用予防が重要かつ有効かもしれません。

Background: A recent study demonstrated that exercise capacity is already decreased in patients with early stages of non-small cell lung cancer (NSCLC) cachexia, i.e. pre-cachexia. As physical performance is an important determinant of quality of life and mortality, we further focused on the molecular basis of this observation.

Aim: This study aims to investigate whether histochemical and metabolic properties of skeletal muscle are altered in pre-cachectic and cachectic patients with NSCLC.

Methods: In this prospective study, 22 healthy controls and 16 cachectic and 10 pre-cachectic patients with NSCLC were studied. Physical performance was assessed using quality of life (QLQ-C30) and physical activity (SF-20) questionnaires. Quadriceps muscle biopsies were analyzed by immunohistochemistry to distinguish muscle fibers containing type I (oxidative), type IIa (mixed) or type IIx (glycolytic) myosin heavy chain isoforms. Furthermore, expression and activity of an important regulator (PGC1alpha) and enzymes (citrate synthase and 3-Hydroxyacyl-CoA dehydrogenase) of oxidative metabolism were assessed.

Results: Although skeletal muscle mass was only significantly decreased in patients with cachexia (p < 0.001), both patients groups showed decreased physical performance (p < 0.001). Interestingly, both patients with pre-cachexia and cachexia demonstrated a fiber type I to >II shift compared with healthy controls. While pre-cachectic patients showed a higher percentage of type IIx (p = 0.015), cachectic patients showed a higher percentage of type IIa (p = 0.036) fibers. mRNA expression of PGC1alpha was decreased in both patients groups and decreased activity of oxidative enzymes was observed in muscle of patients with cachexia.

Conclusions: The shift from types I to II fibers and alterations in oxidative metabolism observed in both patients with pre-cachexia and cachexia may lie at the basis of exercise intolerance in these patient groups. The relative shift to type IIa or IIx fibers in cachexia and pre-cachexia, respectively, implicates that metabolic adaptations are distinct in successive stages of cachexia.

がん悪液質高齢者のエネルギー必要量

がん悪液質の高齢者におけるエネルギー必要量に関する研究です。

Marc Bennefoy, et al: Energy requirement in elderly cachectic patients with cancer

59人の高齢がん患者(平均年齢76.88歳)を対象に、がん悪液質の診断にはFearonらの国際コンセンサス分類を用いています。間接熱量計で測定したエネルギー消費量とHarris-Benedict式で計算したエネルギー消費量を比較しました。

結果ですが、平均体重57.86kg、過去6か月の体重減少は平均7.13kg、平均BMIは21.93、平均血清アルブミン値は3.07g/dl、平均CRPは3.6mg/dl、平均MNA得点は17.68でした。間接熱量計での平均は1296kcal、Harris-Benedict式での平均は1135kcalでした。

31.7%の患者で間接熱量計での数値はHarris-Benedict式より20%以上高かったです。1日エネルギー摂取量の平均は1361kcal、23.52 kcal/kg/dayで、食思不振は43%に認めました。

これよりHarris-Benedict式ではエネルギー消費量が低めにでるという結論です。また、。少なくとも安静時エネルギー消費量の1.4倍の摂取量が必要と推定されることより、体重減少の主要因はエネルギー摂取量が少ないことと推測しています。

日本では高齢者のエネルギー消費量をHarris-Benedict式で計算すると高すぎると言われていますが、がん悪液質で平均CRPは3.6mg/dlとかなりの全身炎症を認める高齢者ではむしろ低すぎるという話です。ただストレス係数として1.15をかければ、間接熱量計の数値に近付きます。

Background: Cachexia is a well-known adverse effect of cancer and is associated with poor prognosis, impaired physical function and reduced tolerance to anticancer treatments. Despite understanding of cachexia has progressed, the clinical management remains complex and few data about energy requirement is available in elderly patients with cancer cachexia despite its implication for nutritional support.

Aims: The present study evaluated measured resting energy expenditure (mREE) and predicted energy expenditure (pREE) in elderly patients with cancer cachexia.

Methods: Fifty-nine elderly patients from our consultation of nutrition and addressed by the service of oncology were consecutively included (76.88 ± 9.17 years). They all had weight loss >5% or BMI < 20 and weight loss >2%, over the past 6 months according to Fearon’s criteria. mREE was measured with indirect calorimetry and pREE was calculated from the Harris and Benedict equations.

Results: Mean weight was 57.86 ± 12.88 kg and mean weight loss was 7.13 kg ± 3.46 at 6 months; mean BMI was 21.93 ± 4.25; mean albuminemia: 30.71 ± 7.19 g/l and CRP 35.96 ± 40.07 mg/l. Mean MNA score was 17.68 ± 4.87. mREE was 1,296.57 ± 341.11 kcal/day and pREE was 1,135.07 ± 199.13 kcal/day. Of the patients, 31.7% showed mREE more than 20% pREE; while caloric intake was 1,361 kcal ± 572/day and 23.52 kcal/kg/day. Anorexia was present in 43% of the patients.

Conclusion: As expected, patients had inflammatory process and malnutrition criteria. Elderly patients with cancer cachexia show rather similar values for mREE and pREE that do not really confirm an elevated REE in the majority of our patients as commonly held. Loss of weight seems to be mainly explained by insufficient caloric intake since caloric intake was largely under energy requirement that may be estimated at least at 1.4 REE in these patients.

がん診断時の身体機能と悪液質

がん診断時の身体機能:がん悪液質の役割に関する研究を紹介します。

Ana Maria Rodriguez, et al: Physical function at the time of diagnosis: the role of cancer cachexia

198人の進行がん患者を対象に、がん診断時の悪液質はFearonらの国際コンセンサス分類で評価しています。身体機能は2分間歩行テスト、TUG、快適な歩行速度、SF-36の身体機能で評価し、CRPも測定しています。

結果ですが、悪液質の有無に関しては身体機能の有意な予測因子ではありませんでした。TUGと2分間歩行テストは年齢、CRPと関連し、SF-36の身体機能は性別、CRPと関連していました。これより悪液質の有無より全身炎症(CRP陽性)のほうが、がん診断時の身体機能に影響があるという結論です。

Fearonらの国際コンセンサス分類でのがん悪液質診断基準は、6か月で5%以上の体重減少です。健常時体重にもよりますが5%程度の体重減少であれば、身体機能に大きな影響は与えないかもしれません。ただ、がん悪液質の早期発見・介入という点では、身体機能低下の予防が重要です。

また、日頃の運動習慣の有無で差が出るかどうかも知りたいところです。全くの仮説ですが、運動習慣がある方は運動による抗炎症作用もあり、CRPが低く身体機能が高い。一方、運動習慣がない方は運動による抗炎症作用がなく、CRPが陽性で身体機能が低いという可能性もあると思います。

Background and aims: We have recently applied the international consensus classification system for cancer cachexia (Fearon et al. 2011) on people with advanced cancer. Our main objective was to determine the extent to which cachexic state predicted physical function at the time of diagnosis. A second aim was to verify the role of systemic inflammation in predicting physical function.

Methods: One hundred ninety-eight persons with a recent diagnosis of advanced cancer of various origins from the McGill University Health Center and the Jewish General Hospital (JGH) in Montreal, Canada were evaluated prior treatment. Cachexic state was determined by applying the guidelines suggested by Fearon et al. Physical function was measured by the 2-min walk test (2MWT), the Timed-Up and Go (TUG), comfortable gait speed over 5 m, and by the physical function subscale of the SF-36 (PFI). Serum C-reactive protein (CRP) levels were collected and measured. Multiple linear regressions were used to analyze the relationship between the variables.

Results: Cachexic state was not a significant predictor of physical function regardless of how physical function was measured, holding age, gender, primary tumor site, and CRP levels constant. The TUG and 2MWT (R 2 = 0.21 and 0.22) were significantly predicted by age (b = 0.06 ± 0.02 and −0.89 ± 0.33, respectively) and CRP levels (b = 0.02 ± 0.01 and −0.41 ± 0.15, respectively). Age (b = −0.01 ± 0.002) was the only significant predictor of comfortable gait speed (R 2 = 0.28). Sex (b = 11.31 ± 5.15) and CRP levels (b = −0.23 ± 0.09) significantly predicted self-reported PFI (R2 = 0.25).

Conclusions: At the time of diagnosis, systemic inflammation seems to be an important predictor of physical function. Although physical function is on average lower in cachexic and precachexic patients than in normal patients, cachexia in itself does not seem to be a significant predictor of physical function at diagnosis. Physical function levels during the disease progression could however be influenced by cancer cachexia.

2011年11月16日水曜日

脳卒中後のBMIと予後:obesity paradox

脳卒中後のBMIと予後:obesity paradoxに関する研究を紹介します。

Wolfram Doehner, et al: The association of body mass index and presence of cachexia with survival and disability after stroke: data from 1,521 hospitalised patients with 30 months follow-up

急性期脳卒中とTIAの患者1521人を対象に、BMIで5群(悪液質18.5未満、標準18.5-25、過体重25-30、軽度肥満30-35、中等度以上肥満35以上)に分類しました。アウトカムは30か月後の死亡、脳卒中再発、施設生活、ADL介助(Barthel index 60点未満など)です。

結果ですが、BMIが低ければ低いほど、死亡率、死亡率+脳卒中再発率、施設生活、ADL介助が高かったです。BMIは多変量解析でも独立した予後因子でした。つまり、急性期脳卒中とTIAの患者においてもobesity paradoxが成立するという結論です。

この研究ではBMI18.5未満を悪液質と呼んでいますが、BMI18.5未満はあくまでるいそうであって、悪液質ではありません。Evansなどの悪液質の診断基準も使用していませんので、この点には注意が必要です。

るいそう患者で脳卒中の予後が悪いことは理解できますが、BMI35以上の群でもっとも予後がよい点に関しては日本では当てはまらないのではないかと感じてしまいます。BMIが25以上で予後が悪いという報告もありますので。ただ、この著者らはStrokeにも脳卒中のObesity Paradoxに関して投稿していますので無視はできません。

Background: Overweight and obesity are established risk factors for cardiovascular disease including stroke. In patients with established cardiovascular disease, increasing evidence suggests an inverse relationship between body mass index (BMI) on outcome, which has been termed obesity paradox. The impact of body weight in general and presence of cachexia specifically on outcome after stroke is not well established. We aimed to investigate the relationship between BMI and mortality as well as functional outcome in patients after stroke.

Patients and methods: We analysed data from of the Telemedical Project for Integrative Stroke Care project. In 1,521 patients suffering from an acute stroke or TIA data on BMI at time of hospital admission and on subsequent outcomes were available. Patients were grouped by BMI as cachectic (BMI ≤18.5), reference group (BMI >18.5 to 25) overweight (BMI >25 to 30), mild obesity (BMI >30 to 35) and advanced obesity (BMI >35, all kg/m2). Outcome measures after 30 months included all-cause mortality, recurrent stroke, need for institutional care, and dependency (institutionalisation, Barthel index <60 or modified Rankin score >3).

Results: During 30 months of follow-up, 401 patients (27%) died. Mortality rates at 30 months were 61%, 33%, 24%, 18%, and 13% in the BMI subgroups ≤18.5,>18.5–25, >25–30, >30–35, and >35 kg/m2, respectively (P < 0.001). Rates for the combined endpoint of death or recurrent stroke were 64%, 40%, 31%, 22%, 18%, respectively (p < 0.001). Also, institutional care and dependency followed the same stepwise pattern with lowest rates in obese subjects (all p < 0.001). BMI was a significant inverse predictor for poor outcome after multivariable adjustment for age, sex, co-morbidity, living in partnership, and stroke severity: Compared to BMI 18-5-25 (HR 1.0, i.e., reference group) risk for death or recurrent stroke was higher in patients with BMI < 18.5 (HR 2.74, 95%CI 1.23–6.03), but lower in patients with overweight (HR 0.79; 95%CI 0.60–1.03, p = 0.08), mild obesity (HR 0.56, 95%CI 0.37–0.86; p < 0.01) and advanced obesity (HR 0.51, 95%CI 0.27–0.97; p < 0.05). When patients’ obesity (BMI > 30) are considered as reference group, risk for death or recurrent stroke more than five times increased in patients with BMI < 18.5, and two times increased in patients with BMI 18.5–25. Similarly, the risk for death or institutional care or and dependency was highest in patients with cachexia (BMI < 18.5), and decreased stepwise with increasing BMI being lowest in obese and very obese patients.

Conclusion: Patients hospitalised for stroke or TIA with low BMI (BMI < 25) and particularly with cachexia show increased subsequent morbidity and mortality. In contrast, obese patients have better outcome for mortality or recurrent stroke, need for institutional care, and dependency than patients with normal BMI. A better outcome after stroke in obese patients is in contrast to data from primary prevention studies, but concurs with observations of an obesity paradox in other cardiovascular diseases including heart failure and diabetes mellitus. Treatment strategies to increase or maintain body weight in patients with stroke or TIA should be tested.

同種造血幹細胞移植前後の体重・筋力変化

同種造血幹細胞移植を受けた患者における生理機能、栄養、疲労の性差と変化に関する研究を紹介します。

Shinichiro Morishita, et al: Gender differences and changes in physiological function, nutrition, and fatigue in the early phase in patients undergoing allogeneic hematopoietic stem cell transplantation

98人(男性65人、女性33人)の患者を対象に、同種造血幹細胞移植の3週間前までと6週間後に、身体組成(BIAで評価)、握力、膝伸展筋力、6分間歩行テストを評価しました。

結果ですが、同種造血幹細胞移植前後で、体重は5%、脂肪量は20%の有意な減少を認めましたが、除脂肪体重には有意差を認めませんでした。握力、膝伸展筋力は20%、6分間歩行距離は5%の有意な低下を認めましたが、性差は認めませんでした。

結論として、除脂肪体重は減少しなかったが、筋力は減少した点について、身体の水分量が増えたことで筋肉量減少がマスクされた可能性を指摘しています。そのため、BIAによる身体組成評価は同種造血幹細胞移植後早期では最適ではないかもしれません。

以下、コメントです。握力と膝伸展筋力が20%低下した原因は何でしょうか。原疾患と同種造血幹細胞移植によるものか、廃用か、飢餓(低栄養)か、疾患(例えば薬剤性の末梢神経障害)か、その他かがわかると、臨床現場でより適切な対応が可能になると思います。

昨日紹介した森下慎一郎さんの研究の抄録では、164人の患者のうち、83人(50.6%)にサルコペニアを認めていました。この抄録では98人となっていますが、対象人数の違い、サルコペニアの有無と程度も結果に影響しているかもしれません。いずれにせよ興味深い研究であることは間違いありません。

Background and aims: Hematopoietic stem cell transplant (HSCT) patients have decreased exercise capacity and muscle strength from before to after transplantation. However, there are no reports evaluating body composition in adult HSCT patients. The primary aim of this study is to investigate the change in body composition, physiological function, nutritional status, and fatigue pre- and post-allogeneic (allo) HSCT. Additional aims of this study include examining gender differences in physiological function, nutritional status, and fatigue pre and post allo-HSCT.

Methods: Study participants included patients who had undergone allo-HSCT from July 2007 to June 2011. Ninety-eight patients were included in this study (65 men, 33 women). The evaluation was performed up to 3 weeks before and 6 weeks after transplantation. Body composition was evaluated using a bioelectrical impedance analysis (BIA). Physiological functions were evaluated by handgrip, knee extensor strength, and 6-min walk test (6MWT).

Results: Body weight (BW) and fat body mass significantly decreased after transplantation (5% in BW and 20% in fat body mass, p < 0.01). Moreover, there was no significant decrease in lean body mass before to after transplantation. Handgrip, knee extensor strength, 6MWT, all decreased significantly after transplantation (20% in both handgrip and knee extensor strength and 5% in 6MWT, p < 0.01). There were no significant differences between men and women with respect to any of the tested parameters.

Conclusions: We found that, despite the fact that lean body mass did not decrease, muscle strength decreased significantly in allo-HSCT patients. Many patients receive intravenous drip therapy after transplantation. Thus, despite decreased muscle mass, the lack of change in lean body mass may be a result of a corresponding increase in body water volume. Based on these facts, the BIA method may not be ideal for accurately assessing muscle mass in the early phases of allo-HSCT.

炎症性腸疾患とサルコペニア・悪液質

炎症性腸疾患とサルコペニア・悪液質に関する記述研究を紹介します。

Igor Khoroshilov, Sergius IvanovAims: Prevalence of undernutrition, sarcopenia and cachexia in patients with inflammatory bowel diseases

炎症性腸疾患は慢性炎症をおこす疾患ですので、当然、悪液質の原因疾患の1つとなります。今回は潰瘍性大腸炎とクローン病で、低栄養、悪液質、サルコペニアに該当する方がどのくらいいつかを調査しています。サルコペニアは上肢の筋肉量で評価しています。

低栄養、悪液質、サルコペニアに該当したのは、潰瘍性大腸炎でそれぞれ42%、25%、10%、クローン病でそれぞれ54%、27%、8%でした。血清総蛋白、アルブミン、総リンパ球数の低下も一部の患者で認めています。

サルコペニアの診断基準に改善の余地があると思いますが、炎症性腸疾患患者の4人に1人はサルコペニアといえます。また、悪液質を認める患者はサルコペニアの半数以下ですので、サルコペニアの原因として最も重要なのは、悪液質よりも飢餓・吸収障害かもしれません。ただ、悪液質への配慮も必要です。

Aim: This paper aims to study the prevalence of undernutrition, sarcopenia, and cachexia in patients with inflammatory bowel diseases in acute phase.

Methods: Thirty patients with ulcerative colitis and 26 patients with Crohn’s disease in acute phase had been inspected in hospital conditions. We studied the body weight, body mass index, body composition, muscle volume of arm, protein content in the blood, and number of lymphocytes in the blood. Content of fat body mass and fat-free mass was determined by methods of bioelectrical impedance and dual energy X-ray absorbtiometry.

Results: Reduction of the body weight and body mass index (<18.5) was detected in 42% of patients with ulcerative colitis and 54% of patients with Crohn’s disease. The diagnosis “cachexia” was installed in 10% of patients with ulcerative colitis and 8% of patients with Crohn’s disease. Reduction of the muscle volume of arm (sarcopenia) has been revealed in 25% of patients with ulcerative colitis and 27% of patients with Crohn’s disease. Hypoproteinemia and hypoalbuminemia took place in 16% of patients in both groups, reducing of number of lymphocytes in the blood in 14% of patients with ulcerative colitis and 27% of patients with Crohn’s disease.

Conclusions: Undernutrition was detected in 42–54% of patients with inflammatory bowel diseases, however diagnosis of cachexia was installed in 8–10% of patients, sarcopenia took place in 25–27% of patients with inflammatory bowel diseases in acute phase.

肝硬変・肝細胞がんとサルコペニア

しばらくは
Abstracts of the 6th Cachexia Conference, Milan, Italy, December 8–10, 2011. J Cachexia Sarcopenia Muscle DOI 10.1007/s13539-011-0045-3
からの紹介を続けます。

肝硬変で肝細胞がんのある患者とない患者のサルコペニアに関するコホート研究を紹介します。
Judith Meza-Junco, et al: Sarcopenia in cirrhotic patients with and without hepatocellular carcinoma

筋肉量に関してはL3レベルのCTで評価しています。163人の肝硬変患者のうち、51人(31%)が肝細胞がんあり、112人(69%)が肝細胞がんなしです。平均年齢55歳、男性118人、女性45人。フォローアップ期間の中央値は19カ月。サルコペニアは61人(37%)に認めましたが、肝細胞がんの有無による有意差は認めませんでした。

多変量解析で死亡率と有意に関連していたのは、Model for End-Stage Liver Disease(MELD)とサルコペニアだけでした。また、サルコペニアとMELD、Child–Pugh得点には有意な関連を認めませんでした。

MELDスコアとは、プロトロンビン時間(PT−INR)、血清クレアチニン値、直接ビリルビン値で下記の式より計算されます。肝硬変患者の短期の予後予測に優れているそうです。
MELD score=3.8log e (bilirubin [mg/dL])+11.2log e (INR)+9.6log e (creatinine [mg/dl]+6.4 (etiology: 0 if cholestatic or alcoholic, 1 othewise)

結論として、肝硬変患者の37%にサルコペニアを認め、サルコペニアは独立した死亡の予測因子であり、肝機能障害スコアとは関連していませんでした。

肝硬変患者でサルコペニアや悪液質の評価が重要なのは確かです。日本ではもっと多い印象があります。サルコペニアの原因が悪液質なのか、その他なのか、どのように介入すれば肝硬変患者でも筋肉量・筋力を増やすことができるのか、が今後の研究課題かと思います。
Background/aims: Prognostic assessment of cirrhotic patients remains a
challenge. Sarcopenia is defined as low levels of muscle mass; it may be
present in chronic/malignant diseases. It is not well-studied/understood in
cirrhotic and HCC patients. We aimed to establish sarcopenia frequency
and if it predicts mortality in a cohort of cirrhotic patients with and without
hepatocellular carcinoma (HCC).

Patients and methods: One hundred sixty-three patients with cirrhosis
were consecutively evaluated for liver transplant and had computed
tomography (CT) scan at the third lumbar vertebrae were selected. Skeletal
muscle cross-sectional area was measured by CT to determine the third
lumbar vertebrae (L3) skeletal muscle index (L3 SMI) defined as total
lumbar muscle cross-sectional area adjusted for stature; sarcopenia was
defined using previously published gender-specific cutoffs.

Results: One hundred eighteen patients were males (72%), mean age of 55
±1 years, 51 patients (31%) had HCC at the time of CT. Median time of
follow-up was 19±1 months. Sarcopenia was present in 61 patients (37%),
and there was no difference in the frequency of sarcopenia among patients
with and without HCC (31% vs. 40%, P=0.3). By univariate Cox analysis
the bilirubin, creatinine, albumin, Model for End-Stage Liver Disease
(MELD), Child–Pugh, sodium, L3 SMI, and sarcopenia were associated
with mortality. The presence of HCC was not associated with increased
mortality (HR 1.12, P=0.6). By multivariate Cox regression analysis, only
MELD score (HR 1.08, P=0.001), and sarcopenia (HR 2.18, P=0.001)
were independently associated with early mortality. Median survival for
sarcopenic patients was 19±5 months, compared to 30±2 months in
nonsarcopenic patients (P=0.001). There was a poor correlation
between sarcopenia and MELD score (r=−0.13, P=0.1) and sarcopenia
and Child–Pugh score (r=0.04, P=0.6).

Conclusions: Sarcopenia is present in 37% of patients with cirrhosis
and is not associated with the presence of HCC. Sarcopenia
constitutes a strong and independent predictor of mortality in cirrhotic
patients and does not correlate with degree of liver dysfunction
evaluated with conventional scoring systems. Further studies including
sarcopenia with conventional scores may allow better mortality
prediction among cirrhotic patients with and without HCC.

2011年11月15日火曜日

6th Cachexia Conference抄録

12月8-10日にミラノで開催される6th Cachexia Conferenceの抄録集がJ Cachexia Sarcopenia Muscleに掲載されています。

Abstracts of the 6th Cachexia Conference, Milan, Italy, December 8–10, 2011. J Cachexia Sarcopenia Muscle DOI 10.1007/s13539-011-0045-3

下記のHPで抄録集をPDFで見ることができます。

http://www.springerlink.com/content/ku5q46173458q124/fulltext.pdf

日本からの発表も抄録集を見る限り、6-7題程度あるようです。面白そうな抄録を順番に紹介していきます。まずは「同種造血幹細胞移植前患者におけるサルコペニアの発生割合と、身体組成、生理機能、栄養、疲労への影響」を紹介します。

サルコペニアの診断基準には骨格筋量が男性8.87kg未満、女性6.42kg未満を使用しています。生理機能は握力、膝伸展筋力、6分間歩行距離で評価しています。

結果ですが、164人の患者(年齢中央値50歳)のうち、83人(50.6%)にサルコペニアを認めました。除脂肪体重(LBM)は握力、膝伸展筋力と強い相関を、6分間歩行距離と弱い相関をそれぞれ認めました。サルコペニアの患者ではサルコペニアではない患者と比較して、握力、膝伸展筋力が低く、疲労が多かったです。

同種造血幹細胞移植前患者の2人に1人がサルコペニアという事実は、かなりインパクトがあると思います。原因としては悪液質によるものが最も疑われますが、飢餓や廃用を合併している可能性もあります。原因検索の追及とその対策、サルコペニアの患者は予後が悪いかなども今後知りたいですね。

Shinichiro Morishita, et al: The incidence of sarcopenia and its effects on body composition, physiological function, nutrition, and fatigue in patients before allogeneic hematopoietic stem cell transplantation
Background and aims: Cachexia in patients with haematological
malignancies is often related to sarcopenia. We believe that allogeneic
hematopoietic stem cell transplant (allo-hematopoietic stem cell
transplantation (HSCT)) patients are often stricken by sarcopenia prior
to transplantation. The aim of this study is to investigate the incidence
of sarcopenia and the relationship of sarcopenia with body composition
and physiological function, nutrition, and fatigue in patients
before allo-HSCT.

Methods: Study participants included patients who had undergone
allo-HSCT from May 2007 to July 2011. One hundred and sixty-four
patients were included in this study (median 50 years). Body
composition was evaluated using bioelectrical impedance analysis.
Evidence of sarcopenia was calculated using the male (<8.87 kg of
skeletal muscle mass/m2) and female (<6.42 kg of skeletal muscle mass/
m2). Physiological functions were evaluated by handgrip, knee extensor
strength, and 6-min walk test (6MWT).
Results: Eighty-three patients (50.6%) enrolled in our study had sarcopenia
prior to allo-HSCT. Lean body mass (LBM) strongly correlated with handgrip
and knee extensor strength (r=0.72∼0.75, p<0.01) and weakly correlated
with 6MWT (r=0.34, p<0.01). Body weight and fat body mass correlated
with fatigue (r=−0.15 and r=−0.2, respectively, p<0.05). Patients with
sarcopenia experienced decreased muscular strength and increased fatigue
compared with patients without sarcopenia (handgrip=−12%, knee extensor
strength=−12%, fatigue=+22%, p<0.05).

Conclusion: Sarcopenia has been reported to occur at a rate of 5% (2 SD)
in the elderly. In this study, roughly half of the patients had sarcopenia
before allo-HSCT. Therefore, patients may have decreased muscle mass
prior to allo-HSCT. In the evaluation of body composition, we discovered
that muscle strength and LBM showed a high correlation. Patients with
sarcopenia also have decreased muscle strength due to muscle atrophy and
we believe that this causes increased fatigue in these patients.

新しいSarco-osteopeniaの定義とQOL

新しいSarco-osteopeniaの定義とQOLに関する横断研究を紹介します。

Kull M, Kallikorm R, Lember M. Impact of a New Sarco-osteopenia Definition on Health-related Quality of Life in a Population-based Cohort in Northern Europe. J Clin Densitom. 2011 Nov 8. [Epub ahead of print]

以前もSarco-osteopeniaの論文を紹介しましたが、筋肉量と骨量の両方が減少している方をSarco-osteopeniaと今後呼んでいくことになるのでしょうか。日本語だとサルコオステオペニアのままなのか、筋肉・骨減少症なのか、その他か、いずれにしても日本語に訳しにくいです。

この論文では新しいSarco-osteopeniaの定義として、DEXAで若年者と比較して、骨量が1標準偏差以下で、四肢筋肉量が2標準偏差以下もしくは握力が2標準偏差以下と提案しています。この定義では40歳以上の3-9%がSarco-osteopeniaに該当します。

Sarco-osteopeniaの方ではSF-36の下位項目のうち、日常役割機能(身体)、活力、日常役割機能(精神)の3項目で有意に低いという結果でした。ただし骨量低下の有無とQOLには有意差を認めませんでした。つまり、サルコペニアのほうがQOLに関連している可能性が高いということになります。因果関係は不明です。

サルコペニアと骨粗鬆症を一緒にDEXAで診断して一緒に管理(栄養・運動・薬物など)していくことに関しては、異論はありません。ただ診断基準や名称(特に日本語)に関しては、改善の余地がある印象です。

Abstract
Sarcopenia has been shown to be a marker of falling; therefore, combining osteopenia and sarcopenia could identify a frailer, higher-fracture-risk population. We aimed to define sarco-osteopenia (SOP) in a population-based healthy young sample using both muscle functional and quantitative parameters and assessing the impact of this definition on health-related quality of life. A population sample of 304 patients aged 25-70 yr was analyzed with a Lunar DPX-IQ dual-energy X-ray absorptiometry machine (GE Healthcare, Pollards Wood, UK), and their health-related quality of life was assessed with the Short-Form-36 (SF-36) questionnaire. SOP was defined as bone mineral density (BMD) -1 standard deviation (SD) and height-adjusted appendicular muscle mass -2 SD and/or grip strength -2 SD less than the mean values of 77 young individuals in the population sample (age: 25-39yr). Our proposed SOP definition identifies 3-9% of the population older than 40yr as sarco-osteopenic. These individuals also show markedly lower scores in the role-physical (p=0.01), vitality (p=0.03), and role-emotional (p=0.02) subscales of the SF-36 questionnaire. No difference in the quality of life was observed between osteopenic individuals and those with normal BMD. The new definition identifies a population with significant decrements in health-related quality of life.

2011年11月14日月曜日

認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション

野原幹司編、山脇正永、小谷泰子、山根由起子、石山寿子著、認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーション 、南山堂を紹介します。

http://www.nanzando.com/books/52061.php

認知症の嚥下リハの書籍で、これほどわかりやすく包括的に臨床現場向けに執筆されたものは他にはないと思います。改善しない(むしろ徐々に悪化する)嚥下障害や非がん疾患の終末期の嚥下障害で苦慮することは、臨床現場では少なくないので参考になります。

栄養へのアプローチに関しても1章分の記載があります。「低栄養の原因 ―飢餓,侵襲,悪液質」の記載があるのは個人的には嬉しいです。さすが野原先生です(笑)。実際に現場で認知症の嚥下リハに関わる医療職、介護職におすすめできる書籍です。

目次
●理論編 ─ 嚥下臨床に必須の知識と技術 ─

1章 摂食・嚥下リハビリテーション
I.キュアからケアへ
II.回復期と慢性期の嚥下リハ
III.認知症の嚥下リハ―訓練から支援へのパラダイムシフト
IV.最適な認知症の嚥下リハを行うために

2章 認知症総論
I.認知症とは―認知症の概念と定義
II.認知症の疫学
 1 認知症の頻度
 2 認知症のリスクファクター
III.認知症の種類
 1 アルツハイマー型認知症
 2 レビー小体型認知症
 3 前頭側頭型認知症
 4 軽度認知障害
IV.中核症状と周辺症状―認知症状の特徴と対応・ケア
 1 中核症状
  A.記憶障害
  B.見当識障害
  C.理解・判断力の障害
  D.実行機能障害
  E.感情表現の変化
 2 周辺症状
  A.妄 想
  B.睡眠リズムの障害
  C.せん妄,軽度の意識障害
  D.徘徊・多動
  E.食行動の異常
  F.不潔行為
  G.抑うつ
  H.仮性作業(常同性強迫性)
  I.攻撃的行動(介護への抵抗)
  J.無気力・無関心・意欲低下
V.認知症のスクリーニング,重症度
VI.認知症患者の摂食・嚥下リハビリテーションへ

3章 嚥下機能評価のポイント
I.認知症と嚥下
 1 認知症のタイプと嚥下
  A.アルツハイマー型認知症
  B.レビー小体型認知症
  C.前頭側頭型認知症
  D.脳血管性認知症
 2 認知症の症状進行と嚥下障害の関係
  A.初 期
  B.中 期
  C.末 期
 3 認知症とケア
II.問 診
 1 基本情報
  A.主訴(誰の)
  B.おもな介助者・キーパーソン
 2 全身状態
  A.生活自立度・要介護度・FAST
  B.身長・体重・BMI
  C.既往疾患(発症年齢・担当医)
  D.服用薬剤
  E.褥瘡の有無・部位・大きさ・深さ
  F.発熱の既往
  G.視 力
  H.聴 力
 3 食 事
  A.嗜好・食欲
  B.栄養摂取方法
  C.食事時の姿勢
  D.食事に要する時間
  E.介助の有無
  F.食事内容・摂取量
  G.増粘剤の使用
 4 嚥 下
  A.むせの有無
  B.肺炎の既往
  C.窒息の既往
  D.以前に受けた嚥下機能検査・指導内容
 5 問診でわからない情報の判断
III.身体所見採取
 1 頸 部
 2 口唇,頬
 3 口腔内
  A.衛生状態
  B.口腔乾燥
  C.舌
  D.咬合支持の有無
  4 呼 吸
  5 身体所見の解釈
IV.食事時の観察ポイント
 1 先行期
  A.食物の認知,食事への意欲(食べるのを嫌がる,食べてくれない)
  B.口への運搬(食卓に座っているが動かない,こぼす)
  C.口での取り込み(口を開けない,開けたまま)
  D.一口量,ペース
 2 準備期
  A.咀 嚼
  B.食べ物をまとめる
 3 口腔期
  A.口腔から咽頭への送り込み(なかなか飲み込まない,口に入れっぱなし)
 4 咽頭期
  A.喉頭挙上
  B.む せ
 5 食道期
  A.胃食道逆流
 6 食事観察時の心得
V.嚥下内視鏡検査
 1 認知症の症例における嚥下内視鏡検査
  A.VEの長所と短所
  B.VEの目的
 2 客観的判断の重要性

4章 嚥下訓練
I.間接訓練
 1 間接訓練とは
 2 認知症における間接訓練
  A.マッサージ,ROM訓練
  B.アイスマッサージ
II.呼吸理学療法
 1 嚥下と呼吸
 2 誤嚥性肺炎発症のバランス
 3 口から食べ続けるための呼吸理学療法
 4 認知症における呼吸理学療法
  A.深呼吸
  B.胸郭可動域訓練

5章 食事支援
I.直接訓練と食事支援
  A.「訓練」と「支援」の違い
  B.認知症例に適するのはどちらか
II.認知症と食事
 1 食行動の障害へのアプローチ
  A.声かけ
  B.サーカディアンリズムの調整
  C.ペーシング
  D.マッサージ,嚥下体操
  E.食事環境のセッティング
  F.食器の選択
  G.食事の匂い,味付け
  H.全身状態の把握
  I.異食への対応
  J.介助者のこころがけ
 2 嚥下障害へのアプローチ
  A.食事を摂る時間帯
  B.食事時のポジショニング
  C.食事内容の工夫
  D.一口量
  E.食事の介助
  F.歯科治療
  G.服薬の方法
III.理想と現実のバランス

6章 栄養へのアプローチ
I.認知症の発症と栄養
II.高齢者の低栄養
 1 マラスムス型とクワシオコール型
 2 低栄養の原因 ―飢餓,侵襲,悪液質
 3 高齢者の栄養状態
III.低栄養による弊害
IV.栄養状態の評価
 1 体 重
 2 身体計測
 3 血液検査
 4 栄養摂取量
V.低栄養に対するアプローチの実際
 1 食事摂取の時間帯の工夫
 2 間食の利用
 3 脂質の利用
 4 嗜好に合わせる
 5 栄養剤(栄養補助食品)の利用
VI.柔軟な多方面からのアプローチ

7章 リスク管理
I.窒息のリスク管理
 1 高齢者と窒息
 2 窒息のリスク
  A.ヒト側のリスク
  B.食べ物側のリスク
 3 窒息時の対応法
  A.窒息を発見したら
  B.窒息物の確認
II.誤嚥のリスク管理
 1 誤嚥とは
 2 誤嚥と誤嚥性肺炎―誤嚥性肺炎発症のバランス
  A.不顕性誤嚥
  B.侵襲の軽減
  C.抵抗の向上
 3 誤嚥時の対応法
 4 誤嚥性肺炎のサイン
 5 誤嚥性肺炎を疑うときの診査・検査
 6 誤嚥性肺炎の早期発見の重要性

8章 胃 瘻
I.認知症における胃瘻
 1 胃瘻とは
 2 胃瘻の長所
  A.栄養改善・確保
  B.誤嚥・誤嚥性肺炎の予防
  C.脱水の予防
  D.服 薬
  E.介助負担の軽減
 3 胃瘻の短所
  A.入院・手術が必要
  B.嚥下機能の廃用症候群
  C.延命装置としての胃瘻
 4 胃瘻にするかどうか
  A.決め手は症例とその家族
  B.認知症というファクターをどう捉えるか
 5 胃瘻との付き合い方―胃瘻症例における食事支援
  A.胃瘻と経口摂取
  B.経口摂取の注意点
II.胃瘻の適応と実際

9章 終末期の対応

I.認知症の終末期とは
II.いつまで経口摂取を続けるか
III.認知症終末期における経口摂取の重要性
 1 口腔・咽頭のケア
 2 QOLの維持
 3 コミュニケーション
IV.ケアとしての嚥下リハ
 1 「誤嚥させない」ではなく「誤嚥しても肺炎にならないように」
 2 「肺炎にさせない」ではなく「肺炎を予知する」
V.嚥下機能のソフトランディング


●実践編
よくある症状とその対応

1 嚥下訓練をしてくれない
2 指示しても咳ができない
3 呼吸が浅い,指示しても深呼吸ができない
4 食事時に意識レベルが低い
5 食事を認識しない
6 食べない
7 食べるペースが早い
8 食べこぼしが多い
9 食べるのが遅い,食事に時間がかかる
10 うまくスプーン,食器が持てない
11 食事中,食事後に呼吸が乱れる
12 食べ物を飲み込まない,口にためたままになる
13 食事のとき口を開けない
14 食べ物を口から出す
15 食事を残す
16 食事中にむせる
17 とろみ剤,ペースト食を嫌がる
18 咬まない,丸飲み
19 義歯を嫌がって入れない,義歯を出してしまう
20 食後にのどがゴロゴロ鳴る
21 窒息した
22 (不顕性)誤嚥をしているといわれた
23 痩せてきた
24 好き嫌いが多い
25 原因不明の発熱がある,ときどき微熱がある
26 異食がある
27 飲み込んだ食べ物,胃瘻から入れた食べ物が口に戻ってくる
28 胃瘻をしているが食べたい・食べさせたい
29 肺炎をくり返す
30 どうしても誤嚥してしまう

脳卒中回復期患者経口摂取例のREE

リハ栄養に関連するエネルギー消費量の論文を検索しているのですが、なかなかよい論文が見つかりません。そこでまずはJJRMに掲載された論文を紹介します。

川上 途行他:脳卒中回復期患者経口摂取例における安静時エネルギー消費量The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine Vol. 48 (2011) , No. 9 pp.623-627

脳卒中回復期患者で経口摂取されている方の場合、ハリス・ベネディクトの式より算出した基礎エネルギー量と簡易熱量計で計測した安静時エネルギー消費量には有意な差はないという論文です。つまり、簡易熱量計がなくても70歳以上の方であっても、ハリス・ベネディクト式で計算して大きな問題はないといえます。

回復期ではストレス係数は1.0のことが多いと思われますので、あとは活動係数をいくつにすればよいかの目安がきちんとできれば、脳卒中回復期患者経口摂取例では適切な栄養管理ができると考えます。

以前の書籍では機能訓練室でリハをしている患者の活動係数は1.3~1.5と書きましたが、今は1.3~1.7くらいかと思っています。軽労働で1.5、中労働で1.7くらいですので、患者によっては中労働程度の機能訓練をされている方もいるのではないかと推測しています。現状では体重などで栄養モニタリングしていくしかありませんが。

要旨:
【目的】脳卒中患者の回復期での栄養療法の基準に関する報告は少ない.今回我々は回復期リハビリテーション目的で入院した初回脳卒中患者の安静時エネルギー消費量 (以下REE) を測定し,ハリス・ベネディクトの式より算出した基礎エネルギー量 (以下BEE) と比較した.【対象ならびに方法】対象は当院に入院した初回脳卒中患者76 名 (年齢45~95 歳,平均69.1±11.9 歳)である.性別,病型,麻痺側,発症からREE測定日までの期間,嚥下障害の有無,麻痺の重症度を診療録より後方視的に調査した.REEは携帯用簡易熱量計を用い,2 時間の安静後3 分間の測定を計3 回行い,平均値を算出し,BEEと比較した.【結果】REEの平均値は1231.3±245.7 kcal/day,計算上のBEEの平均は1185.6±177.7 kcal/dayであり,両者に有意な差を認めなかった (paired t-test).REEをBEEで割った値の平均は104.3±16.4%であった.男性と女性,脳出血と脳梗塞,テント上とテント下,右片麻痺と左片麻痺,嚥下障害の有無の比較では,REE/BEEは有意な差を認めなかった.麻痺の重症度,ADLの介助量での層別化でも同様であった.【考察】回復期患者のREEは計算上のBEEはほぼ同等であり,これは回復期の脳卒中患者の栄養量,ストレス係数を決定する上で参考となる結果と考えられた.

2011年11月11日金曜日

クローズアップ「癌悪液質の謎に挑む」

NCIキャンサーブレティンの2011年11月01日号のHPで、クローズアップ「癌悪液質の謎に挑む」が取り上げられています。悪液質の研究の現状について、日本語としてはよくまとまっている資料だと思います。

http://www.cancerit.jp/12691.html

一部、上記HPから引用します。
「悪液質は癌に限ったことではない。AIDS患者や、慢性の腎臓病、心疾患などのほか、重度の外傷または熱傷でも普通に見られる」

重度の外傷や熱傷の場合、慢性的に炎症が持続していればという限定付きだと思います。ただ、がん以外の様々な慢性炎症性疾患や慢性臓器不全でも悪液質を生じることを知らない医療人が少なくないのが現状です。

HPからの引用です。
「もっとも研究が進んでいると思われるのが、テネシー州メンフィスに本社があるGTx社が開発した選択的アンドロゲン受容体調節剤のGTx-024(商品名:オスタリン)である。同社は8月にこの試験薬に関する第3相臨床試験を2つ立ち上げ」

「ミオスタチンの本来的な機能は筋肉成長のブレーキ役となることである。ミオスタチンの産生を支配する遺伝子に変異がある羊、マウス、犬、牛では過度に筋肉質となる。(中略)ミオスタチンおよびアクチビンの活性を阻害すると、悪液質に大きな効果をもたらす可能性がある。(中略)ミオスタチンおよびアクチビンを標的とすることで悪液質による心筋の喪失が改善される」

選択的アンドロゲン受容体調節剤やミオスタチン拮抗薬は、悪液質に対する薬物療法として、今後期待されます。悪液質では骨格筋が減少し広義のサルコペニアとなりますが、心筋のサルコペニアも生じることがあります。心筋の喪失が改善されるというのは興味深いです。

Lancet Oncologyに今年5月に掲載された癌悪液質の定義及び分類に関する国際的コンセンサスに関しては、以下のように訳されていました。以下もHPからの引用です。

「癌悪液質の診断基準
・過去6カ月以上にわたって5%を超える体重減少がある
・BMIが20未満で2%を超える体重減少がある
・補正四肢筋量が別の消耗性症候群であるサルコペニア(骨格筋減少症)と同等で、2%を超える体重減少がある

癌悪液質の病期分類
・前悪液質:体重減少は5%未満で、耐糖能異常や食欲不振を伴う
・悪液質:体重減少が5%を超え、他の症状や状態が悪液質の診断基準に一致する
・不応性悪液質:癌治療に応答しなくなった患者における悪液質で、パフォーマンススコアも低く余命3カ月未満と予測される」

refractory cachexiaをどう訳せばよいのか悩んでいたのですが、今回「不応性悪液質」と訳されていたので、今後は少し気楽にこの言葉を使えます。

あとはがん以外の疾患による悪液質でもこの定義と分類を使用してよいという報告やコンセンサスが早くでると、もっと嬉しいですね。私はがん以外の疾患でも使用してよいと勝手に解釈していますが、がん以外の場合、Evansの2008年の悪液質の定義と診断基準を使うのが本来は適切かもしれません。

キャリアデザイン入門③

キャリアデザイン入門シリーズで、今回は金井壽宏氏のキャリア理論を紹介します。

金井壽宏教授が提唱する「節目」のキャリア論
http://jibun.atmarkit.co.jp/ljibun01/rensai/career11/career01.html

なお、上記の「エンジニアも知っておきたいキャリア理論入門」全15回は、医療人も知っておきたい内容ですので、時間のあるときに一通り目を通すことをお勧めします。

上記HPからの引用です。

「金井先生の「キャリア・デザイン」論の基本的なメッセージは、“(人生の)節目に絶対に意識してデザインすべきものが「キャリア」だ” というものです。(中略)節目では真剣にキャリア・デザインを行うけれど、それ以外はキャリア・ドリフト、偶然の出来事を自分の可能性を広げるチャンスとして生かすのです。」

キャリアについて毎日考えていると気が重くなります。かといってキャリアについて何も考えないようでは、自分の人生を生きているとは言いにくい気がします。節目(社会人となる時期、30歳前後、結婚・出産、疾患など)のときだけは、自分のキャリアについてじっくり考えるべきでしょう。

私はよく講演でドラッカーの「何によって憶えられたいか」を引用しますが、これを毎日考えていると何もできなくなります(笑)。行動して初めて理解できることも少なくありません。ですので、「何によって憶えられたいか」について、自分なりの仮説としての答えが見つかった後には、1年に1-2回熟慮すればよいと思っています。その後は仮説検証サイクルをまわし続けることです。

HPからの引用です。
「20年も30年も先のことはデザインできない。そんな先までの道程は分からないから。だからこそ、数年に1回くらい自分に訪れる節目のときくらいは、しっかりキャリア・デザインすべき。節目でさえデザインしなかったら、ずっと流されたままになってしまう。
節目だけでもデザインして、不確実な中にも大きな方向感覚や夢を持っていれば、あえて流されてみた方が、「思わぬ掘り出し物」に出合えるかもしれない。」

確かに20~30年後のことなどまったくわかりません。生きているかどうかもわかりませんし(笑)。せいぜい3~5年後になりたい自分をイメージするのが現実的だと思います。流されたままのキャリアは、他人や社会によって生かされたキャリアといっても過言ではないかもしれません。それでよいという方にはキャリアデザインは不要ですが。

上記HPからの最後の引用です。
「金井流キャリアトランジション・モデルは以下の4ステップで構成されています。1.キャリアに方向感覚を持つ。2.節目だけはキャリア・デザインする。3.アクションを起こす。4.ドリフトも偶然も楽しみながら取り込む。」

キャリアも考えるだけでもアクションするだけでもダメだということですね。経験学習モデルのサイクルをまわすのに似ています。

金井壽宏氏:魂の仕事人第32回
http://www.jinzai-bank.net/careerlab/info.cfm/tm/128/

上記HPからの引用です(其の二)。
「石の上にも3年」というのはほとんど深い意味はないんですが、新しい仕事に就いたら、最初に向いているかどうか悩む時期はあって、そのときに最低、必要な努力はするべきやと思うね。つまりとことんやってみる前に辞めちゃダメと思う。」

これは必ずしも三年でなくてもよいとは思いますが、安易に辞めないことはやはり重要だと感じます。ただし、職場が腐っている、ブラック企業ならぬブラック病院・施設の場合には話は別で、すぐに辞めるべきです。

これ面白いので引用します(其の二)。
「こんなこと言ったら医者の友達は怒ると思うけど、そいつのポテンシャリティー見てて、「もったいない。おまえみたいな優秀なやつがなんで医者をやるのよ」って思う。地頭が良くて、親父が医者で、周りも「おまえは医者になったらいい」って言うから医者になってしまって。結果的に立派な医者になってるからいいけど、もういっぺん視野を広げてみたら、いろんな可能性があるんじゃないかって思うね。」

医者をやるのがもったいないというのは、私には新鮮な発想です(笑)。でも医者をやらないのがもったいないという人も一方でいるとは思うのですが…。いろんな可能性を重視することは同感です。

其の三からの引用です。
「仕事を長く続けるためには他者から認められることが必要やと思うね。良いことさえやっていたら社会に認められなくてもいいじゃないかという高尚なことを言う人もいますが、社会とか他者が認めてくれなかったら絶対にさびしくなるから。」

「何によって憶えられたいか」の答え(仮説)を持つことが重要な理由の1つがこれです。誰か(それを決めるのも大事なことです)に憶えられることで、長く続けることができるができるのだと思います。

少し長いですが、最後の引用です(其の五)。
「特に若い人に言ってあげたいのは、どんな仕事の世界でもうれしいこととつらいことがあるから、落ち込むことがあっても大丈夫だってこと。
 キャリアは一生続くものだから、途中で失敗したり挫折しても、振り返るたびに後知恵でもいいから、これまで経験してきたことにはそれぞれどんな意味や教訓があったのかということを考えた方がいいと思う。うまくいかなかった経験も含め、これまでのキャリアを全否定しない方がいい。そうやって経験を蓄積していって35歳とか40歳になった頃に、ちょうど人生の真ん中ころだから、残りの人生で何をやりたいかというのを考えたらいいと思うね。」

2011年11月10日木曜日

キャリアデザイン入門②

キャリアデザイン入門シリーズということで、今回は大久保幸夫氏の資料を紹介します。
①大久保幸夫氏:「キャリアと能力の育て方」
http://www.keiomcc.net/terakoya/2007/03/sekigaku49.html

上記HPからの引用です。
「キャリアというと、ひとつは、履歴書に書くような「経験した職業職務の履歴」という意味があります。これは、キャリアの客観的側面です。もうひとつは、キャリアの主観的側面で、仕事に対する「自己イメージ」のことです。そして今回、大久保氏が語る「キャリア」は、この主観的側面である「自己イメージ」だということです。」

キャリアを主観と客観に分けて考えるのはとても有効だと私は感じます。客観的なキャリアよりも主観的なキャリアのほうが大切です。しかし、客観的なキャリアを意識しながらデザインすることで、主観的なキャリアをより充実させることができます。
引き続きHPからの引用です。
「もし次の3つの問いに対する答えを持っているなら、自己イメージが形成されていると言えます。
  • 自分にできることは何か?(能力・才能)
  • 自分は何がやりたいか?(動機・欲求)
  • 自分は何をやることに価値を感じるか?(意味・価値)」
この中でもっとも難しいのは確かに、やりたいことだと思います。いろんなことをやってみなければ、本当に何がやりたいのかはわかりません。何もせずに自分の中で思索を重ねても仮説以上のものはでてきません。若いうち(特に20代から30代)は粗い仮説でよいので実際に行動して、仮説を検証することが大切です。

HPからの引用です。私も講演でよく紹介する筏下り-山登り理論です。

「「筏下り」とは、激流を下りながら、オールを使って難所を乗り切っていくイメージ。仕事に当てはめれば、ゴールを設定せず、当面の仕事に目標に向けて全力で取り組むことを意味します。そして、仕事上の経験やさまざまな人との出会いを通じて、自分の進むべき道を見出していく段階です。」

「「山登り」は、自分の進む道(専門)をひとつに絞り、その目指すべき頂に向けてすべてのエネルギーを集中させる段階です。自分の登るべき山を決めること、これも非常に勇気の要る、大変に難しい決断です。なぜなら、ひとつの山に登るということは、他の山、つまり他の選択肢を捨ててしまうということを意味するからです。」

このHPでは筏下りを最初の20年、山登りを次の20年とあります。しかし、20年の筏下りは長すぎると私は考えます。医療人の場合、筏下りは10年前後で終わらせて、山登りに移行したほうがプロフェッショナルとして活動しやすいと思います。20年筏下りしたら、その後も下り続けてしまう恐れがあります。

このHPからの最後の引用です。
「キャリアのサイクルを経験する中で、人が自分の仕事(天職)と出会った時、人は、「すべての経験は無駄ではなかった」と思えます。そして、また、「収入、出世、地位、学歴、資格などの世の中の一般的な基準はたいしたものではなかった」と感じることができます。こうした境地に達することができるようになるために「キャリアデザイン」はあるのだそうです。」

私はこうした境地にはまだ達していませんので、まだまだですね(苦笑)。いつかは達したいものです。

②大久保幸夫氏:若手人材採用の「ミスマッチ」こうすれば防げる
https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/13/

上記HPからの引用です。
「若い優秀層は自分がそんなふうになれる企業を探しています。その企業には30代でキラキラ輝きながら、バリバリ仕事をしている先輩がたくさんいるかどうか、そこに注目します。キャリア10年前後の社員が生き生きと働いている、とわかれば、きっと自分自身も成長していけるだろうとイメージするんですね。」

医療人の場合、企業を病院・施設・大学・研究施設などにあてはめれば同じことが言えます。皆様のところでは30代で輝いている医療人がどれだけいるでしょうか。輝いているにもいろんな意味がありますが、類は友を呼ぶという意味でも重要だと感じます。他人事ではありませんが…。

2011年11月9日水曜日

キャリアデザイン入門①

来年1月にキャリアデザイン入門という3時間の研修会を行うことになりました。自分のキャリアデザインさえ上手にできているとは言えませんし、そもそもキャリアはデザインできない(偶然の要素が少なくない)という理論もありますが・・・。そこで少しキャリアデザイン関連の資料をネットで集めてみました。今回は高橋俊介氏の資料を紹介します。

①高橋俊介氏:「スローキャリア」人材をつぶす上昇志向型の人事 https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/7/

上記HPからの引用です。
スローキャリアとは、「出世・報酬の目標や最終的なゴールにはこだわらず、自分なりの働き方などプロセスやポリシーを重視している」キャリアのことです。

医療人にはビジネスパーソンよりもスローキャリア型の方が多いと感じます。

これもHPからの引用です。
「私は「継続的成長感」がないと、人がやる気を持続することはむずかしいと思います。これまで日本の会社がどういうかたちで「継続的成長感」を社員に与えてきたかというと、それは「出世」と「転勤」だったんですね。」

しかし、医療現場では出世も転勤も容易ではない医療人のほうが多いと感じます。医療人として一人前になるのが先決ですが、その後は1つの専門領域(FDスキルでも可)を深めていくことが、継続的成長感を自ら作るには有用かと思います。そうしないと一人前になった後に成長できず、漂流・退化するキャリアとなるリスクがあります。

②高橋俊介氏:スペシャルインタビュー
http://www.exemovin.com/interview/exe201004.html

少し長いですが上記HPからの引用です。
「20代って、やっぱりキャリアの根っこを太くしなきゃいけない時期なんです。やたらここで狭めちゃうと後でキャリアの広がりがなくなってしまいます。だから色んな経験をした方がいいし、試行錯誤した方がいいんですよ。最初から自分に向いてるものがたまたまあった人はラッキーですけど、そうじゃなかったら変わればいい事だし、試行錯誤して、模索して自分の根っこを作っていく時期なんだろうと思うんですよね。
その上で30代っていうのは、どこかこれをやりたいなって思ったことを一気にガーっとやっていくい時期なんじゃないかなと思うんですよね。自分の突破力でね。自分の得意技でね。」

医療人でも20代のうちは一人前になるまでの時期ですから、まずは何でもやってみるというスタンスがよいのかもしれません。自分に向いている仕事かどうかなど、数年以上仕事してみないとわかりませんので。数年やってダメなら次を考えるというくらいでも良い気がします。30代になったら自分の専門領域を1つ決めるということですね。

これもHPからの引用です。
「40代になると色々な幅の能力を求められるようになります。そして色々な自分の不得意を一生懸命直そうとして自分の利き手じゃない方の手も使ったりしてるうちに、自分は何なんだ、って事が分からなくなってきちゃう時期が40代に一度来て、そこでアイデンティティを作り直さなきゃいけない時期が来るということが発達心理学で言われています。」

私は今この時期です(笑)。ただ、ドラッカーの教えで「弱みを直して人並みにするよりも強みの上に築け」ということを私は肝に銘じていますので、利き手しか使いません。それでもアイデンティティを作り直す時期がいずれ近い将来のうちに来るのでしょう。

最後にもう1つHPからの引用です。
「色々な意味で良い習慣をたくさん身に付ければ、結局道はおのずと開いていけるんだから、今は見えないからといって変なことを考えるなと。キャリアを例えるならば富士山じゃないんだから。富士山だったら登る前から頂上見えるんですから、キャリアというのは富士山じゃない。どっちかと言うと北アルプスの奥の山登るみたいな、登山口から頂上は見えない、だけど登らない限り見えて来ない。最初は藪の中で景色も分からない中に入っていくしかないんですよ。常に頂上が見えてなきゃ登れないんだったら最初から山なんて登れないでしょう。」
私は今、リハ栄養の山を登っていますが、研修医のときにこの山を登ることになるとは全く想像していませんでした。卒後10年くらいでようやく山のイメージが出てきたという程度で、はっきり山として見えてきたのはこの3年くらいです。しかも頂上は今でも見えていません。先行き不明でも山登りを続けているというのが実情です。

2011年11月8日火曜日

2型糖尿病+心血管疾患のobesity paradox

2型糖尿病+心血管疾患患者における体重・体重変化と罹患率・死亡率の逆相関に関する論文を紹介します。
Doehner W, Erdmann E, Cairns R, Clark AL, Dormandy JA, Ferrannini E, Anker SD. Inverse relation of body weight and weight change with mortality and morbidity in patients with type 2 diabetes and cardiovascular co-morbidity: An analysis of the PROactive study population. Int J Cardiol. 2011 Oct 29. [Epub ahead of print]

PROactiveという2型糖尿病+心血管疾患患者のRCTのデータを使用した二次研究です。死亡率がもっとも低かったのは BMI 30-35の群で、BMI22未満とBMI22-25の群は BMI 30-35の群より有意に死亡率が高いという結果でした。また、体重減少は死亡率の増加と有意に関連していましたが、体重増加は有意な関連を認めませんでした。以上より2型糖尿病+心血管疾患患者においてobesity paradoxがあるかもしれないという結論です。

obesity paradoxは慢性炎症を生じる疾患(CKD、COPD、CHFなど)で指摘されています。2型糖尿病も単独で慢性炎症を生じる可能性がありますが、心血管疾患による要素のほうが大きいのではと思います。また、体重減少の原因が意図した減量目的なのか、併存疾患や慢性炎症によるものなのかで異なると感じます。筋肉量を減らさないほうがよいことは確かだと考えますが。

Abstract
CONTEXT: Although weight reduction is a recommended goal in type 2 diabetes mellitus (T2DM), weight loss is linked to impaired survival in patients with some chronic cardiovascular diseases.

OBJECTIVE: To assess the association of weight and weight change with mortality and non-fatal cardiovascular outcomes (hospitalisation, myocardial infarction and stroke) in T2DM patients with cardiovascular co-morbidity and the effect of pioglitazone-induced weight change on mortality.

SETTING AND PARTICIPANTS: We assessed in a post hoc analysis body weight and weight change in relation to outcome in 5202 patients from the PROactive trial population who had T2DM and evidence of pre-existing cardiovascular disease. Patients were randomized to treatment with pioglitazone or placebo in addition to their concomitant glucose-lowering and cardiovascular medication. Mean follow up was 34.5months.

MAIN OUTCOME MEASURE: The impact of body weight and body weight change on all-cause mortality, cardiovascular mortality, on non-fatal cardiovascular events and on hospitalisation.

RESULTS: The lowest mortality was seen in patients with BMI 30-35kg/m(2) at baseline. In comparison to this (reference group), patients in the placebo group with BMI <22kg/m(2) (Hazard Ratio (95% confidence intervals) 2.96 [1.27 to 6.86]; P=0.012) and BMI 22 to 25kg/m(2) (HR 1.88 [1.11 to 3.21]; P=0.019) had a higher all-cause mortality. Weight loss was associated with increased total mortality (HR per 1% body weight: 1.13 [1.11 to 1.16]; P<0.0001), with increased cardiovascular mortality, all-cause hospitalisation and the composite of death, myocardial infarction and stroke. Weight loss of ≥7.5% body weight (seen in 18.3% of patients) was the strongest cut-point to predict impaired survival (multivariable adjusted HR 4.42 [3.30 to 5.94]. Weight gain was not associated with increased mortality. Weight gain in patients treated with pioglitazone (mean+4.0±6.1kg) predicted a better prognosis (HR per 1% weight gain: 0.96 [0.92 to 1.00] P=0.037) compared to patients without weight gain.

CONCLUSION: Among patients with T2DM and cardiovascular co-morbidity, overweight and obese patients had a lower mortality compared to patients with normal weight. Weight loss but not weight gain was associated with increased mortality and morbidity. There may be an "obesity paradox" in patients with type 2 diabetes and cardiovascular risk. The original PROactive trial is registered as an International Standard Randomized Controlled Trial (Number ISRCTN NCT00174993).

がん悪液質とカルニチン・セレコキシブ

がん悪液質に対するカルニチン+セレコキシブ±酢酸メゲステロールの効果を見た非劣性RCT論文を紹介します。

Madeddu C, Dessì M, Panzone F, Serpe R, Antoni G, Cau MC, Montaldo L, Mela Q, Mura M, Astara G, Tanca FM, Macciò A, Mantovani G. Randomized phase III clinical trial of a combined treatment with carnitine + celecoxib ± megestrol acetate for patients with cancer-related anorexia/cachexia syndrome. Clin Nutr. 2011 Oct 31. [Epub ahead of print] doi:10.1016/j.clnu.2011.10.005

セレコキシブは、コキシブ系非ステロイド性抗炎症薬(COX-2選択的阻害)です。NSAIDですので抗炎症作用はもちろんありますが、抗異化作用があることも最近、報告されています。以下の文献が参考になります。

Lai V, George J, Richey L, Kim HJ, Cannon T, Shores C, et al. Results of a pilot study of the effects of celecoxib on cancer cachexia in patients with cancer of the head, neck, and gastrointestinal tract. Head Neck 2008;30:67e74.
Cerchietti LC, Navigante AH, Peluffo GD, Diament MJ, Stillitani I, Klein SA, et al. Effects of celecoxib, medroxyprogesterone, and dietary intervention on systemic syndromes in patients with advanced lung adenocarcinoma: a pilot study. J Pain Symptom Manage 2004;27:85e95.
Mantovani G, Maccio A, Madeddu C, Serpe R, Antoni G, Massa E, et al. Phase II nonrandomized study of the efficacy and safety of COX-2 inhibitor celecoxib on patients with cancer cachexia. J Mol Med 2010;88:85e92.

今回の研究ではカルニチン+セレコキシブとカルニチン+セレコキシブ+酢酸メゲステロールで差がないことを検証する非劣性試験を行いました。その他に両群とも基本的治療としてポリフェノール、リポ酸、カルボシステイン、ビタミンE、A、Cを投与しています。治療期間は4カ月で一次アウトカムは除脂肪体重です。

結果ですが、両群で除脂肪体重の変化量に有意差を認めませんでした。例えばDEXAでは前者で2.4kg、後者で2.5kgの増加が得られています。BIAとCTでも除脂肪体重を評価していますが、両者で統計学的有意差は認めていません。歩数や身体活動に関しても統計学的有意差はありませんが、後者のほうが増えている印象です。

以上より、がん悪液質に対してカルニチン+セレコキシブ+酢酸メゲステロールではなく、カルニチン+セレコキシブのみでよいという結論です。カルニチンはサプリメントとして、セレコキシブは薬剤(商品名セレコックス)として適応病名があれば臨床現場で投与可能です。悪液質に対する薬物療法の選択肢の1つになる可能性はあるかと感じています。

Abstract
BACKGROUND & AIMS: A phase III, randomized non-inferiority study was carried out to compare a two-drug combination (including nutraceuticals, i.e. antioxidants) with carnitine + celecoxib ± megestrol acetate for the treatment of cancer-related anorexia/cachexia syndrome (CACS): the primary endpoints were increase of lean body mass (LBM) and improvement of total daily physical activity. Secondary endpoint was: increase of physical performance tested by grip strength and 6-min walk test.

METHODS: Sixty eligible patients were randomly assigned to: arm 1, l-carnitine 4 g/day + Celecoxib 300 mg/day or arm 2, l-carnitine 4 g/day + celecoxib 300 mg/day + megestrol acetate 320 mg/day, all orally. All patients received as basic treatment polyphenols 300 mg/day, lipoic acid 300 mg/day, carbocysteine 2.7 g/day, Vitamin E, A, C. Treatment duration was 4 months. Planned sample size was 60 patients.

RESULTS: The results did not show a significant difference between treatment arms in both primary and secondary endpoints. Analysis of changes from baseline showed that LBM (by dual-energy X-ray absorptiometry and by L3 computed tomography) increased significantly in both arms as well as physical performance assessed by 6MWT. Toxicity was quite negligible and comparable between arms.

CONCLUSIONS: The results of the present study showed a non-inferiority of arm 1 (two-drug combination) vs arm 2 (two-drug combination + megestrol acetate). Therefore, this simple, feasible, effective, safe, low cost with favorable cost-benefit profile, two-drug approach could be suggested in the clinical practice to implement CACS treatment.

脳卒中での病前の栄養状態と短期予後

脳卒中における病前の栄養状態と短期予後を見たインドの論文を紹介します。

Pandian JD, Jyotsna R, Singh R, Sylaja PN, Vijaya P, Padma MV, Venkateswaralu K, Sukumaran S, Radhakrishnan K, Sarma PS, Mathew R, Singh Y. Premorbid nutrition and short term outcome of stroke: a multicentre study from India. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2011 Oct;82(10):1087-92.

病前の栄養状態は脳卒中発症後48時間以内にSGA(主観的包括的評価)を行い、栄養状態良好か栄養不良(中等度と重度を含む)に分類しました。脳卒中の機能予後は発症30日後のmodified Rankin scaleで評価して、3より高い場合を予後不良としました。

modified Rankin scaleは下記のHPを参照してください。
http://www.jsts.gr.jp/guideline/350_351.pdf

結果ですが、病前にSGAで低栄養と判定された患者は27.2%でした。病前の低栄養は多変量解析で独立した予後に影響を与える因子でした。低栄養の脳卒中患者では予後が悪いというエビデンスはすでにありますが、今回も同様の結果でした。このくらいの臨床研究なら日本でも十分できるのに…と感じたのは私だけでしょうか。

Abstract
BACKGROUND: Little is known about the impact of premorbid undernutrition on stroke outcome in developing countries. AIM: To study the impact of premorbid undernutrition status, measured by the Subjective Global Assessment (SGA) tool, on short term stroke outcome.

METHODS: First ever stroke patients admitted to six major hospitals in North and South India participated in this study from 1 March 2008 to 30 September 2009. The SGA tool was administered within 48 h of stroke onset, and 6 months premorbid nutritional status was rated as well nourished (A rating) and undernourished (B and C ratings) using this tool. Stroke outcome was assessed after 30 days using the modified Rankin scale (mRs), and a mRs score > 3 was defined as a poor outcome. Statistical analyses were performed using SPSS Statistics V.17.0.

RESULTS: Of 477 patients enrolled, 448 patients were included in the analyses. Mean age was 58.1±13.7&emsp14;years (range 16-96) and 281 (62.7%) patients were men. At admission, premorbid undernutrition was found in 121 (27.2%) patients. Older age (OR 4.99, CI 1.26 to 19.64, p=0.021), hypertension (OR 1.99, CI 1.04 to 3.79, p=0.037) and patients from Andhra Pradesh State (OR 1.87, CI 1.05 to 3.32, p=0.032) were predictors of undernutrition in multiple logistic regression analysis. Premorbid undernutrition (OR 1.99, CI 1.20 to 3.31, p=0.007) and length of hospital stay (OR 3.41, CI 1.91 to 6.06, p<0.0001) were the independent predictors of poor outcome in the multiple logistic regression model.

CONCLUSIONS: High rates of premorbid undernutrition in stroke patients were found. Age, hypertension and patients from Andhra Pradesh State were predictors of premorbid undernutrition. Premorbid undernutrition was associated with poor stroke outcome. The results provide opportunities for primary prevention and improving stroke outcome.

CKDの運動療法:コクランレビュー

慢性腎疾患(CKD)に対する運動療法の効果を見たコクランの系統的レビュー・メタ分析を紹介します。

Heiwe S, Jacobson SH. Exercise training for adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Oct 5;(10):CD003236.

CKDの運動療法介入(RCTで8週間以上のもの)には、有酸素運動のみ、有酸素運動+筋トレ、筋トレのみ、ヨガの4種類がありました。ただし多くは有酸素運動のみで、有酸素運動+筋トレ、筋トレのみについては今後さらにRCTが必要とされています。

結果ですが、運動療法によって、持久力、歩行能力、安静時血圧、心拍数、栄養指標(アルブミン、プレアルブミン、エネルギー摂取量)、健康関連QOLに有意な改善を認めました。その他の項目では明らかな差を認めませんでした。つまり、CKDに対する運動療法(主に有酸素運動)は有効といえます。

コクランレビューでエビデンスがありますので、呼吸器疾患、循環器疾患と同様にCKDでも運動療法が必須といえます。運動療法でアルブミン、プレアルブミン、エネルギー摂取量が改善したのは、運動による抗炎症作用で食欲が改善したことが要因かもしれません。もちろん栄養療法との併用が必須ですが。

Abstract
BACKGROUND: Chronic kidney disease (CKD) is a worldwide public health problem. In the National Kidney Foundation Disease Outcomes Quality Initiative guidelines it is stressed that lifestyle issues such as physical activity should be seen as cornerstones of the therapy. The physical fitness in adults with CKD is so reduced that it impinges on ability and capacity to perform activities in everyday life and occupational tasks. An increasing number of studies have been published regarding health effects of various regular exercise programmes in adults with CKD and in renal transplant patients.

OBJECTIVES: We aimed to: 1) assess the effects of regular exercise in adults with CKD and kidney transplant patients; and 2) determine how the exercise programme should be designed (e.g. type, duration, intensity, frequency of exercise) to be able to affect physical fitness and functioning, level of physical activity, cardiovascular dimensions, nutrition, lipids, glucose metabolism, systemic inflammation, muscle morphology and morphometrics, dropout rates, compliance, adverse events and mortality.

SEARCH STRATEGY: We searched the Cochrane Renal Group's specialised register, CENTRAL, MEDLINE, EMBASE, CINAHL, Web of Science, Biosis, Pedro, Amed, AgeLine, PsycINFO and KoreaMed. We also handsearched reference lists of review articles and included studies, conference proceeding's abstracts. There were no language restrictions.Date of last search: May 2010.
SELECTION CRITERIA: We included any randomised controlled trial (RCT) enrolling adults with CKD or kidney transplant recipients undergoing any type of physical exercise intervention undertaken for eight weeks or more. Studies using less than eight weeks exercise, those only recommending an increase in physical activity, and studies in which co-interventions are not applied or given to both groups were excluded.

DATA COLLECTION AND ANALYSIS: Data extraction and assessment of study and data quality were performed independently by the two authors. Continuous outcome data are presented as standardised mean difference (SMD) or mean difference (MD) with 95% confidence intervals (CI).

MAIN RESULTS: Forty-five studies, randomising 1863 participants were included in this review. Thirty two studies presented data that could be meta-analysed. Types of exercise training included cardiovascular training, mixed cardiovascular and resistance training, resistance-only training and yoga. Some studies used supervised exercise interventions and others used unsupervised interventions. Exercise intensity was classed as 'high' or 'low', duration of individual exercise sessions ranged from 20 minutes/session to 110 minutes/session, and study duration was from two to 18 months. Seventeen per cent of studies were classed as having an overall low risk of bias, 33% as moderate, and 49% as having a high risk of bias.The results shows that regular exercise significantly improved: 1) physical fitness (aerobic capacity, 24 studies, 847 participants: SMD -0.56, 95% CI -0.70 to -0.42; walking capacity, 7 studies, 191 participants: SMD -0.36, 95% CI-0.65 to -0.06); 2) cardiovascular dimensions (resting diastolic blood pressure, 11 studies, 419 participants: MD 2.32 mm Hg, 95% CI 0.59 to 4.05; resting systolic blood pressure, 9 studies, 347 participants: MD 6.08 mm Hg, 95% CI 2.15 to 10.12; heart rate, 11 studies, 229 participants: MD 6 bpm, 95% CI 10 to 2); 3) some nutritional parameters (albumin, 3 studies, 111 participants: MD -2.28 g/L, 95% CI -4.25 to -0.32; pre-albumin, 3 studies, 111 participants: MD - 44.02 mg/L, 95% CI -71.52 to -16.53; energy intake, 4 studies, 97 participants: SMD -0.47, 95% CI -0.88 to -0.05); and 4) health-related quality of life. Results also showed how exercise should be designed in order to optimise the effect. Other outcomes had insufficient evidence.

AUTHORS' CONCLUSIONS: There is evidence for significant beneficial effects of regular exercise on physical fitness, walking capacity, cardiovascular dimensions (e.g. blood pressure and heart rate), health-related quality of life and some nutritional parameters in adults with CKD. Other outcomes had insufficient evidence due to the lack of data from RCTs. The design of the exercise intervention causes difference in effect size and should be considered when prescribing exercise with the aim of affecting a certain outcome. Future RCTs should focus more on the effects of resistance training interventions or mixed cardiovascular- and resistance training as these exercise types have not been studied as much as cardiovascular exercise.

2011年11月7日月曜日

第1回日本リハ栄養研究会抄録集

12月3日に開催される第1回日本リハビリテーション栄養研究会のプログラム・抄録集のPDFファイルを研究会HPなどからダウンロードできるようにしました。下記からもダウンロード可能です。

https://www.sugarsync.com/pf/D6162998_9620294_87962

研究会当日は紙ベースでは配布しませんので、参加者の皆様はiPadやスマートフォンなどでみていただくか、各自で印刷していただくかをお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

敗血症に対する早期リハRCT

敗血症に対する早期リハの効果を検証するRCTのプロトコール論文を紹介します。

Geetha Kayambu, et al: Early Rehabilitation in Sepsis : A Prospective Randomised Controlled Trial investigating Functional and Physiological Outcomes The i-PERFORM Trial (Protocol Article). BMC Anesthesiology 2011, 11:21 doi:10.1186/1471-2253-11-21.

下記のHPで全文PDFで見ることができます。

http://www.biomedcentral.com/content/pdf/1471-2253-11-21.pdf

予備研究では敗血症に対して早期リハを行った群では除脂肪体重が減少しなかったのに対して、対照群(通常ケア)では7.2%除脂肪体重が減少しました。また、健常者と慢性心不全患者では、有酸素運動とレジスタンストレーニングがIL-6とTNF-αを減少し、抗炎症サイトカインであるIL-10を増加させることが報告されています。このような背景から、敗血症に対する早期リハの効果を検証するRCTを行うことになったというプロトコール論文です。

介入群では発症48時間以内に、1回30分の理学療法を1日1-2回、ICUを退室するまで行います。PTの内容はROM訓練、レジスタンストレーニング、筋肉への電気刺激、上下肢エルゴメーター、座位・立位・歩行訓練です。もちろん全身状態などにあわせて行います。対照群は早期リハを受けませんが、通常のICUケアとして座位・歩行を行います。

リハ栄養的に考えると、ICU入室中にレジスタンストレーニングや筋肉への電気刺激(筋肉量増加を目的とした)が適応となる患者はあまりいないのでは…と思います。異化期のことが大半でしょうし。ただ、ROM、エルゴメーター(低負荷)、座位・立位・歩行は有効だと考えますので、よい結果を期待したいです。

Abstract

Background Patients with sepsis syndromes can have worse outcomes for physical function, quality of life and survival. Early intensive care rehabilitation can improve the outcome in general Intensive Care Unit (ICU) patients, however no investigations have specifically looked at patients with sepsis syndromes. The 'i-PERFORM Trial' will investigate if early targeted rehabilitation is both safe and effective in patients with sepsis syndromes admitted to ICU.

Methods/Design A single-centred blinded randomized controlled trial will be conducted in Brisbane, Australia. Participants (n=252) will include those [greater than or equal to] 18 years, mechanically ventilated for [greater than or equal to] 48 hours and diagnosed with a sepsis syndrome. Participants will be randomised to an intervention arm which will undergo an early targeted rehabilitation program according to the level of arousal, strength and cardiovascular stability and a control group which will receive normal care. The primary outcome measures will be physical function tests on discharge from ICU (The Acute Care Index of Function and The Physical Function ICU Test). Health-related quality of life will be measured using the Short Form-36 and the psychological component will be tested using The Hospital Anxiety and Depression Scale. Secondary measures will include inflammatory biomarkers; Interleukin-6, Interleukin-10 and Tumour Necrosis Factor-alpha, peripheral blood mitochondrial DNA content and lactate, fat free muscle mass, tissue oxygenation and microcirculatory flow.

Discussion The 'i-PERFORM Trial' will determine whether early rehabilitation for patients with sepsis is effective at improving patient outcomes with functional and physiological parameters reflecting long and short-term effects of early exercise and the safety in its application in critical illness. Trial Registration ACTRN12610000808044

2011年11月4日金曜日

図解 細胞生物学

江島洋介著、これだけは知っておきたい 図解 細胞生物学、オーム社を紹介します。

http://ssl.ohmsha.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=978-4-274-21085-3

細胞生物学の基礎はもちろん高校時代、大学時代に学習したはずです。ただ、大半はすっかり忘れてしまったのが恥ずかしながら私の現状です。それに私が昔学んだ頃に比べれば、細胞生物学もずっと進んでいるはずですので、わかりやすくて新しい書籍として本書を読んでみました。

リハ栄養やサルコペニアとの関連ですが、細胞生物学は代謝や筋肉の理解を深めるのに有効だと感じました。関連する内容を少し紹介します。目次を見て興味を持った方は読んでみることをお勧めします。

例えば脂肪酸の異化はほとんどミトコンドリアで行われていると思っていましたが、長い脂肪酸や分枝脂肪酸はペルオキシソーム(ミクロボディ)でβ酸化され、脂肪酸全体の25-50%はペルオキシソームが受け持っているそうです。

グリコーゲンの分解は細胞質ゾルで行われ、クエン酸回路と電子伝達系はミトコンドリアで行われると思っていましたが、グリコーゲンの分解の一部は小胞体でに行われているそうです。小胞体は脂質や蛋白質の合成にも関わっています。

筋肉でも、横紋筋は多核細胞で筋サテライト細胞があること、心筋は多核細胞ではなく1-2個の核が中央に存在し、ミトコンドリアが発達し、脂肪酸を主要なエネルギー源にしていること、平滑筋も多核細胞ではなく中央に1個の核があり、筋サテライト細胞はないが他の筋細胞より高い分裂能をもつそうです。

目次
第1章  細胞生物学の基礎
Q1-1 細胞とは何か
Q1-2 だれが細胞を発見したのか
Q1-3 細胞はいつごろ出現したのか
Q1-4 原核生物は真核生物より原始的なのか
Q1-5 細胞はどんな物質からできているのか
Q1-6 クローン生物からわかるDNAの底力とは
Q1-7 タンパク質というポリマーが万能である理由は
Q1-8 膜にはどんな役割があるのか
Q1-9 細胞骨格からみた細胞質ゾルのイメージとは
Q1-10 生命現象と細胞の関係をどう考えればよいのか

第2章  細胞の構成要素
Q2-1 細胞質とは何か
Q2-2 DNAは核のどこに存在するのか
Q2-3 染色体という構造がみえる理由は
Q2-4 小胞体はいつ発見されたのか
Q2-5 ゴルジ体は細胞あたり1セットしかないのか
Q2-6 リソソームの膜はなぜ自己消化しないのか
Q2-7 ミトコンドリアの外膜はどんな膜なのか
Q2-8 ペルオキシソームを特徴づける酵素は何か
Q2-9 細胞の「毛」は何でてきているのか
Q2-10 細胞膜に必要な条件とは

第3章  細胞の基本機能
Q3-1 細胞の機能を支えているのは何か
Q3-2 エネルギーは「呼吸」と関係があるのか
Q3-3 水やイオンは生体膜を自由に通り抜けられるのか
Q3-4 シグナル配列はどうして見つかったのか
Q3-5 被覆タンパク質(小胞を覆うタンパク質)の役割は
Q3-6 なぜ膜電位があるのか
Q3-7 モータータンパク質は酵素なのか
Q3-8 シグナル伝達の基本原理は
Q3-9 増殖はどんな場合に必要か
Q3-10 アポトーシスに際して細胞成分を破壊するのは何か

第4章  多細胞系の細胞生物学
Q4-1 多細胞生物になると何が変わるのか
Q4-2 細胞外マトリクスの三つのタイプとは
Q4-3 細胞接着分子だけで接着力は十分なのか
Q4-4 デスモソームとヘミデスモソームの共通点と相違点は
Q4-5 人体には何種類の組織があるのか
Q4-6 結合組織にはどんな細胞がいるのか
Q4-7 上皮組織の生理機能とは
Q4-8 近くの細胞が連絡をとりあう方法は
Q4-9 ホルモンを手紙に例えれば
Q4-10 常在細菌は体のどこに住んでいるのか

第5章  細胞生物学から見た生命現象
Q5-1 血液に含まれる細胞の数は
Q5-2 ニューロンにはどんな「突起」があるのか
Q5-3 筋肉ではどこからどこまでが1個の細胞なのか
Q5-4 感覚を受容する細胞は「ニューロン」なのか
Q5-5 自然免疫と適応免疫の違いは
Q5-6 生殖細胞に必要な条件とは
Q5-7 がんは「細胞」のどこがおかしくなっているのか
Q5-8 がんはどんな「組織」なのか
Q5-9 細胞内小器官が異常になる疾患の原因は
Q5-10 幹細胞を特徴づける性質とは

第6章  細胞生物学の基本技術と細胞の多様性
Q6-1 倍率を上げればどんな小さいものでも見えるのか
Q6-2 生きた細胞の機能を調べる方法は
Q6-3 小胞体だけを取り出す方法は
Q6-4 培養にはなぜ血清が必要なのか
Q6-5 細胞を改変する技術の始まりは
Q6-6 細菌の細胞壁はどうなっているのか
Q6-7 ヒトと関わりの深い単細胞の真核生物は
Q6-8 動物全体の中で無脊椎動物が占める割合は
Q6-9 脊椎動物の原型は
Q6-10 細胞からみた植物と動物の違いは

参考図書
索引 

2011年11月2日水曜日

ロイシンでサルコペニアと2型糖尿病を予防

ロイシンによるサルコペニアと2型糖尿病の予防と治療に関するレビュー論文を紹介します。
Marika Leenders, Luc JC van Loon: Leucine as a pharmaconutrient to prevent and treat sarcopenia and type 2 diabetes. Nutrition Reviews Volume 69, Issue 11, pages 675–689, November 2011, DOI: 10.1111/j.1753-4887.2011.00443.x

ロイシンによるサルコペニアの予防、治療に関してはあちこちで聞きますが、2型糖尿病の予防と治療にも有効な可能性があるということは初めて聞きました。ロイシンには強いインスリンの分泌促進作用があるので、仮説としてはロイシンが2型糖尿病に有効な可能性があります。これは今後の検証が必須ですが。

2型糖尿病の治療目的でロイシンを使用することは、現時点では考えません。ただ、サルコペニアを合併した2型糖尿病患者の場合、運動療法(有酸素運動+レジスタンストレーニング)、食事療法、必要時は薬物療法に加えて、ロイシン・BCAAを多く含んだアミノ酸製剤や栄養剤を筋トレ直後に摂取するのはよいかもしれません。

Absrtact
Amino acids function as precursors for de novo protein synthesis. In addition, however, they play a key role as nutritional signals that regulate multiple cellular processes. There is ample in vitro and in vivo evidence showing that muscle tissue responds to increases in amino acid availability via signal transduction pathways that are also regulated by insulin, glucagon, growth hormone, and insulin growth factor 1. The increased amino acid availibility results in the upregulation of mRNA translation, thereby increasing muscle protein synthesis, which, in turn, leads to greater net muscle protein accretion. These findings have been particularly pronounced for the amino acid leucine. Furthermore, leucine has the ability to act as a strong insulin secretagogue. Consequently, it has been suggested that leucine represents an effective pharmaconutrient for the prevention and treatment of sarcopenia and type 2 diabetes. In accordance, recent in vivo studies in humans show that free leucine ingestion can reverse the blunted response of muscle protein synthesis to amino acid/protein intake in the elderly. Although short-term studies suggest that leucine supplementation can stimulate muscle mass accretion in the elderly, there are no long-term nutritional intervention studies to confirm this or the other proposed benefits of leucine as a pharmaconutrient.

リハビリテーションと臨床栄養:総説

日本リハ医学会誌(JJRN)の今年4月号に執筆した「リハビリテーションと​臨床栄養」の総説原稿が、下記のURLで公開されました。興味のあ​る方はぜひ読んでみてください。よろしくお願いいたします。

http://www.jstage.jst.go.jp/ar​ticle/jjrmc/48/4/270/_pdf/-cha​r/ja/

2011年11月1日火曜日

急性期脳卒中の退院先と嚥下障害

急性期脳卒中患者の短期予後に対する嚥下障害の影響に関する論文を紹介します。埼玉医科大学国際医療センターの前島先生の論文です。素晴らしいです。

Maeshima S, Osawa A, Miyazaki Y, Seki Y, Miura C, Tazawa Y, Tanahashi N. Influence of dysphagia on short-term outcome in patients with acute stroke. Am J Phys Med Rehabil. 2011 Apr;90(4):316-20.

急性期病院から自宅退院した脳卒中患者の90%が常食を経口摂取していました。一方、嚥下調整食の経口摂取や経管栄養の脳卒中患者の大半は転院しました。これより他の要因の考慮も必要ですが、急性期脳卒中における嚥下障害の臨床評価は、直接自宅退院できるかどうかを決定するのに重要です。

常食を経口摂取できないことは、脳卒中全般の重症度や嚥下リハの質など他の因子の影響を大きく受けますが、早期経口摂取や早期摂食・嚥下リハを推進して、早期3食経口摂取だけでなく早期常食経口摂取を目標として達成できれば、より多くの急性期脳卒中患者が直接自宅退院できるようになるかもしれません。

Abstract
OBJECTIVE: The aim of this study was to determine whether dysphagia present at initial swallowing evaluation is associated with the type of diet eaten at the time of discharge and the location to which the patient is transferred after discharge.

DESIGN: A total of 409 newly diagnosed acute stroke patients were studied.

RESULTS: After hospital discharge, 140 patients returned home, 250 were transferred to another hospital for rehabilitation, and 7 were admitted to a nursing home. Twelve patients died. A total of 205 patients were on a regular diet, 96 were receiving a dysphagia diet, and 96 were on enteral feeding at discharge. A total of 90.7% (127/140) of patients who were discharged home were on a regular diet. Most of the patients on a dysphagia diet or enteral feeding could not return home. The scores of the functional independence measure were higher in the patients who returned to their homes than in other groups.

CONCLUSIONS: Although it is necessary to indicate other factors, such as the physical status to establish better rehabilitation networks, clinical assessment of swallowing in acute stroke is very important to determine whether the patients can go home directly.