2012年6月3日日曜日

サルコペニアと加齢に関連した内分泌機能

サルコペニアと加齢に関連した内分泌機能に関するレビュー論文を紹介します。

Kunihiro Sakuma and Akihiko Yamaguchi. Sarcopenia and Age-Related Endocrine Function. International Journal of EndocrinologyVolume 2012 (2012), Article ID 127362, doi:10.1155/2012/127362

下記のHPで全文見ることができます。

http://www.hindawi.com/journals/ije/2012/127362/

サルコペニアにおける内分泌の役割と介入研究に関して、わかりやすく解説されています。私が佐久間先生の英語論文に慣れたせいもあるかもしれませんが(笑)。

ミオスタチン阻害剤が、筋トレ+アミノ酸投与を除くと、最も興味深い戦略です。テストステロンは有効ですが副作用の問題があります。IGF-1はおそらく局所の抵抗性のために効果が出ないと思われます。

グレリンは経口摂取できる点で興味深い候補です。ビタミンDをサルコペニア予防に使用するには、ビタミンDに関連したメカニズムについて、より包括的な知識が必要です。ビタミンDはまだ賛否両論の状況です。

現時点では筋トレ+アミノ酸を含んだ栄養剤投与が、サルコペニア治療にもっとも有効です。サルコペニアに対しては、原因を判断したうえでリハ栄養をしっかり行いつつ、薬物療法の開発を期待するというスタンスです。難治性のサルコペニアには、入院中限定で副作用に留意しながらメテノロン(プリモボラン)を検討します。

Abstract
Sarcopenia, the age-related loss of skeletal muscle, is characterized by a deterioration of muscle quantity and quality leading to a gradual slowing of movement, a decline in strength and power, and an increased risk of fall-related injuries. Since sarcopenia is largely attributed to various molecular mediators affecting fiber size, mitochondrial homeostasis, and apoptosis, numerous targets exist for drug discovery. In this paper, we summarize the current understanding of the endocrine contribution to sarcopenia and provide an update on hormonal intervention to try to improve endocrine defects. Myostatin inhibition seems to be the most interesting strategy for attenuating sarcopenia other than resistance training with amino acid supplementation. Testosterone supplementation in large amounts and at low frequency improves muscle defects with aging but has several side effects. Although IGF-I is a potent regulator of muscle mass, its therapeutic use has not had a positive effect probably due to local IGF-I resistance. Treatment with ghrelin may ameliorate the muscle atrophy elicited by age-dependent decreases in growth hormone. Ghrelin is an interesting candidate because it is orally active, avoiding the need for injections. A more comprehensive knowledge of vitamin-D-related mechanisms is needed to utilize this nutrient to prevent sarcopenia.

4 件のコメント:

  1. 佐久間邦弘6/06/2012

    若林先生 いつも論文のご紹介ありがとうございます。もともと内分泌が専門ではないのですが、昨年12月初旬締めで原稿を頼まれ、わかる範囲で書いた内容です。グレリン投与はサルコペニア研究に用いられてないと思いますが、GHよりは効果的かもしれませんね。今回の論文が認められたのかなんなのかわかりませんが、このInt J Endocrinolでまもなく募集が始まる企画(やはりサルコペニア関係の内分泌機能)の協力エディター側に入ることになりました。いつも執筆を依頼されてもOnline掲載料金はタダにならないこと多いのですが、企画側に入るとこの料金がタダになります。だけど集まった複数件の論文•レビュー審査など面倒なことはついてくるのですが。。。何の巡り合わせか、自分の実力以上のことを頼まれること増えてきました。業績になりにくい案件ですが、頑張ってつとめてみようと思います。

    返信削除
  2. 佐久間先生、いつもどうもありがとうございます。グレリンは過度な期待はしていませんが、GHよりは効果的ではと私も感じています。
    Int J Endocrinolの協力エディター側に入るのは、私にはまったく未知の世界ですが素晴らしいですね。Online掲載料金が今までタダでなかったことにも驚いています。私は世間知らずです。
    佐久間先生には遠く及びませんが、私も自分の実力以上のことを頼まれることが増えてきました。大変ではありますが、学習と成長の好循環だと考えています。

    返信削除
  3. 佐久間邦弘6/07/2012

    若林先生 返信ありがとうございます。エディター側に入れたのは、単純にイタリアのマルコが声をかけてくれたからです (笑)個人的にはまったく知らないヒトなので、たまたまじゃないでしょうか。。。招待レビューというのは結構名ばかりで、たいてい掲載料金取られます。J Aging Resの執筆時に1度だけ無料でしたが、他はもれなく8-12万ほどかかるんですよねえ。普通の別刷り代金より高いのがネックです。世間知らずだとは思いませんよ。誰でも知らない分野たくさんありますもの。僕も外国での講演に関しては知識ゼロですし (笑) 学習と成長の好循環という言葉、いい響きですね。フィールドは若干違いますが、お互い頑張りましょう!!!

    返信削除
  4. 佐久間先生、どうもありがとうございます。招待レビューの掲載料金が8-12万円ですか…。仕方ないのかもしれませんが、このシステムには違和感がありますね。
    2週間後の食事会を楽しみにしています。よろしくお願い申し上げます。

    返信削除