2012年3月8日木曜日

presbyphagia(老嚥)とは

高齢者の嚥下障害評価のレビュー論文を紹介します。presbyphagia(老人性嚥下機能低下、略して老嚥)についても紹介します。

D. GINOCCHIO, E. BORGHI, A. SCHINDLER: Dysphagia assessment in the elderly. Nutritional Therapy & Metabolism / Vol. 27 no. 1, pp. 9-15


下記のHPで全文見ることができますので、サルコペニアの嚥下障害に関心のある方はぜひ読んでいただければと思います。

http://nutritional.wichtig.it/subs2009/vol.%2027%20no.%201%202009/9-15%20Ginocchio.pdf
サルコペニアの嚥下障害を考える上で、presbyphagiaは重要な概念です。presbyは老人、老年、phagiaは嚥下という意味です。定義としては健常高齢者における加齢による嚥下機能低下で、疾患による嚥下障害(dysphagia)とは異なります。

Wikipedia(英語版ですが)には、presbyphagiaの解説が載っています。

http://en.wikipedia.org/wiki/Presbyphagia

ただ、老人性嚥下機能低下では日本語として長いので、老眼と同じように老嚥と略すのがよいと思うのは私だけでしょうか・・・。私はpresbyphagiaの日本語訳を見たことがありません。ご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけますでしょうか。

この論文では、primary presbyphagia(原発性老嚥)とsecondary presbyphagia(二次性老嚥)について解説しています。primary presbyphagiaは加齢以外に要因がないもの、secondary presbyphagiaは疾患による嚥下障害があるものを意味します。

これはサルコペニアにおける原発性(加齢以外に要因がないもの)と二次性(活動、栄養、疾患の要因があるもの)の分類に似ています。サルコペニア、presbyphagiaとも原発性は老年医学の概念、二次性はリハ、リハ栄養の概念となります。

リハ、リハ栄養で対象としているサルコペニア、presbyphagiaのほとんどは二次性です。ただ、原発性サルコペニアや原発性presbyphagiaを認める方に、何らかの疾患、侵襲、廃用、低栄養などが加わることで二次性となることは少なくないと思います。

原発性サルコペニアや原発性presbyphagiaであれば、舌筋力増強訓練や頭部挙上訓練などの筋力トレーニングで改善させることができます。そのため、高齢社会では原発性サルコペニアや原発性presbyphagiaの早期発見・治療が重要になります。

サルコペニアの嚥下障害=presbyphagiaとはいえませんが、かなり重複しています。例えば、舌や舌骨上筋群の筋肉量低下や筋力低下は重複しています。感覚低下はサルコペニアに含まれませんが、動きが遅いことは関連しているかもしれません。

リハ栄養で重要なのは、広義のサルコペニアによる嚥下障害や二次性presbyphagiaです。しかし、原発性サルコペニアによる嚥下障害や原発性presbyphagiaを理解することも大切だと考えます。

ABSTRACT:
Dysphagia becomes an increasingly common problem as people age; its prevalence and the increased risk of related complications (aspiration pneumonia, dehydration, malnutrition) has brought the attention of dysphagia specialists to the elderly. Dysphagia assessment in the elderly relies primarily on the same modalities as in other age groups: history, bedside examination, fiberoptic endoscopic examination of swallowing, and videofluoroscopy. However, the elderly often show differences in anatomy and physiology, as well as in the diseases presented and the environment in which they live; specialists involved in dysphagia assessment should take these specific aspects into consideration. Modification of swallowing simply related to aging is called primary presbyphagia, while swallowing impairment due to diseases in the elderly is called secondary presbyphagia. The main characteristics of deglutition and deglutition disorders in the elderly are thus reviewed here, with special emphasis on the assessment and decision-making implications specific for this patient category.

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