2013年9月23日月曜日

EAT-10日本語版ダウンロード

本日の日本摂食・嚥下リハ学会のランチョンセミナーで「Presbyphagia(老嚥)とサルコペニアの栄養管理」という講演を行いました。その中で紹介したEAT-10日本語版を、以下のHPからダウンロードできるようにしました。

www.maff.go.jp/j/shokusan/seizo/kaigo/pdf/eat-10.pdf

今日紹介したEAT-10の研究成果は、栢下先生と一緒に執筆済みです。「摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票EAT-10の日本語版作成と信頼性・妥当性の検証」という論文が、雑誌「静脈経腸栄養」にアクセプトされました。

要点は以下の通りです。EAT-10が実施困難もしくは3点以上の場合、軽度問題以下の嚥下障害を認める可能性(特異度)が高く、誤嚥の有無の判定に有用である。EAT-10が0-2点の場合でも、感度が低いため、嚥下障害の可能性を否定しにくい。

つまり、EAT-10で実施困難もしくは3点以上の場合、Presbyphagia(老嚥)もしくはDysphagia(嚥下障害)が疑われるため、スクリーニングテストでの評価や、VE、VFの実施による精査が必要と判断できます。

 一方、嚥下障害の病識がない方もいます。この場合、嚥下障害があってもEAT-10は0点となるため、EAT-10が0-2点の場合でも、嚥下障害がないとは言い切れません。疑わしい方の場合には、スクリーニングテストや食事場面の観察が必要です。

ただ、EAT-10日本語版をネットで入手することは、本日時点で困難でした。そのため、HPからEAT-10日本語版をダウンロードできるようにしました。この件に関しては、ネスレさんの承諾を得ておりますので、安心してご利用ください。

入院時栄養スクリーニングと同様に入院時嚥下スクリーニングとして実施することや、在宅や調剤薬局で嚥下スクリーニングとして実施することが有用かと考えます。一方、明らかに嚥下障害があると判断できる人にはメリットは少ないでしょう。

Presbyphagia(老嚥)は、嚥下のFrailty(虚弱)といえます。従来、嚥下障害はあり、なしの2択で考えてきました。これからは、なし(Health)、Presbyphagia(老嚥)、あり(Dysphagia)の3択で考えましょう。

Presbyphagia(老嚥)の高齢者が、誤嚥性肺炎を契機に「サルコペニアの嚥下障害」になるケースが増えていると思います。Presbyphagia(老嚥)の時点で早期発見して誤嚥性肺炎を予防することが重要だと考えます。

老年医学の世界では、Frailty(虚弱)という考え方は普及していますが、Presbyphagia(老嚥)はこれからだと思っています。Presbyphagia(老嚥)とDysphagia(嚥下障害)の線引きをどうするかは、今後の課題です。

サルコペニアの嚥下障害:診断基準案

本日、第19回日本摂食・嚥下リハ学会でシンポジウム3「サルコペニアと摂食嚥下リハ」の座長と発表をしてきました。

http://www.jsdr2013.jp/

事前にシンポジストと藤島一郎先生でメーリングリストで打ち合わせを行い、診断基準案を考えました。シンポジウムの最後で藤島先生が発表されましたが、口頭だけでしたので、ここに文章として記載しておきます。

サルコペニアの嚥下障害:診断基準案20130923

①嚥下障害が存在している
②全身のサルコペニアと診断されている(画像検査もしくは身体計測)
③画像検査で嚥下筋のサルコペニアがあると診断されている(これは現時点では困難です)
④嚥下障害の原因として、サルコペニア以外の疾患が存在しない(実際には高齢者では、潜在的なものも含めて脳卒中を合併することは多いですが)
⑤嚥下障害の原因として、サルコペニアが主要因と考えられる(サルコペニア以外の疾患が、嚥下障害の原因として存在してもよい)
Definite diagnosis:①、②、③、④
Probable diagnosis:①、②、④
Possible diagnosis:①、②、⑤

①、②は必須です。つまり、「サルコペニアの嚥下障害」という言葉では、全身にも嚥下筋にも筋肉量低下、筋力低下、機能低下があることを想定しています。嚥下筋のみの筋肉量低下、筋力低下による嚥下障害は、別の疾患(筋炎など)と考えます。

また「サルコペニアの嚥下障害」という言葉では、狭義のサルコペニアである「加齢による筋肉量低下」ではなく、広義のサルコペニアである「加齢以外の原因も含めた筋肉量低下、筋力低下、機能低下(嚥下では嚥下障害)」という意味とします。

ただし、広義のサルコペニアでも、疾患(特に神経筋疾患)のみで筋肉量低下、筋力低下、嚥下障害を生じている場合に「サルコペニアの嚥下障害」とは呼ばないほうがよいと考えます。加齢、活動、低栄養の要素のほうが大きい場合は別ですが。

①、②、④があれば⑤にも該当しますので、①、②、④がある場合には⑤を記載していません。ただ、①、②、③、⑤の場合と①、②、③の場合がありえますね。前者はProbable、後者はPossibleでしょうか。

ただ現時点では、画像検査(CT、MRI、エコー)で嚥下筋を評価するにしても、基準値がないので、③は困難です。ということでProbable diagnosis:①、②、④、Possible diagnosis :①、②、⑤が実用的となります。

臨床的には①、②、⑤でサルコペニアの嚥下障害の可能性があると評価することが、最も現実的です。もちろん他に嚥下障害の原因疾患がないかどうかの評価も重要ですが、Possible diagnosisでリハ栄養介入を行うという流れがよいと考えます。

本日のシンポジウムが終わりではなくスタートして、今後も今回のシンポジウムのメンバーを中心として、引き続き「サルコペニアの嚥下障害」について考え研究していきます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

2013年9月21日土曜日

移動障害のある高齢者の低栄養

移動障害のある高齢者における低栄養の役割に関するレビュー論文を紹介します

Cederholm T, Nouvenne A, Ticinesi A, Maggio M, Lauretani F, Ceda GP, Borghi L, Meschi T. The Role of Malnutrition in Older Persons with Mobility Limitations. Curr Pharm Des. 2013 Sep 18. [Epub ahead of print]

栄養と障害は密接に関連しているというエビデンスが増えてきています。低栄養は機能障害の原因の1つとなります。一方、障害自体が低栄養の原因や悪化となります。虚弱高齢者において栄養の重要性の認識は高まりつつあります。

地中海ダイエットや高蛋白質の食事、カロテノイド、セレン、ビタミンDに関する内容がレビューされています。

虚弱高齢者における低栄養の評価と管理は当然重要ですが、障害のある高齢者ではより低栄養の評価と管理が重要になります。リハ栄養の重要性が高まりつつあることを実感できる論文です。

Abstract

Movement disability has a high prevalence in elderly population, either healthy or with chronic disease. Impaired nutritional status is a very common condition in geriatric patients too, especially if we consider elderly subjects admitted to hospital. There are growing evidences that nutrition and disability are strictly interconnected. On the one side, nutritional status is one of the multiple elements that influence the onset and the course of a functional disability; on the other side, disability itself may contribute to malnutrition onset and worsening. Nutrition may not be the sole factor involved in movement impairment in the elderly, but consciousness of its importance in frail elderly population is growing among clinicians and scientific community. In this paper we review the existing knowledge of these complex relationships, discussing the main observational and interventional studies that explored the role of nutrition in movement disability onset and recovery. We also point out how specific kinds of diet, such as Mediterranean diet or high-protein diet, are involved in disability prevention. Finally, we take a look at the existing evidence of the role of single nutrient dietary intake, such as carotenoids, selenium or vitamin D, in mobility impairment in the elderly population.

2013年9月19日木曜日

Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア

藤島一郎,谷口 洋,藤森まり子,白坂誉子/編、Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社を紹介します。今週末の日本摂食・嚥下リハ学会でお披露目になると思います。

https://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758109703/index.html

私は、第1章Q10の「患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか」と、第4章の3.摂食・嚥下障害に影響を与える医療の4)絶食について、執筆させていただきました。臨床現場で役に立つ書籍ですので、多くの方に見ていただければと思います。

目次

第1章 エキスパートに聞く! なるほどQ&A

1.アセスメント・評価・診断

Q1 摂食・嚥下障害を見逃さないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか【白坂誉子】
Q2 摂食・嚥下障害が疑われる患者さんにまず何をすればいいでしょうか【鈴木友子】
Q3 質問紙やスクリーニングテストとはどのようなものですか【鎌倉やよい】
Q4 精度の高いスクリーニングテストはありますか【鎌倉やよい】
Q5 嚥下造影検査は、どのように行いますか【武原 格】
Q6 嚥下造影の見方を教えてください【武原 格】
Q7 嚥下内視鏡検査はどのように行いますか【西村 立】
Q8 嚥下内視鏡のみかたを教えてください【佐藤友里】
Q9 患者さんにとって適切な検査はどのように選べばよいですか【福村直毅】
Q10 患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか【若林秀隆】

2.治療

Q1 脳疾患の急性期において、絶食の状態からどのように経口摂取をはじめるのがよいでしょうか【小山珠美】
Q2 神経筋疾患の進行によって嚥下機能が悪化してきた場合は、どのように援助するのがよいでしょうか【寺尾聡子】
Q3 長期にわたり気管挿管されていた患者さんへのアプローチはどのように行うのがよいでしょうか【柿沼香里】
Q4 誤嚥性肺炎で絶食だった患者さんの摂食はどのようにはじめるのがよいでしょうか【鈴木友子】
Q5 経鼻胃管が挿入されている患者さんは経口摂取をしてよいのでしょうか【泉澤孝枝】
Q6 脳卒中でミキサー食が続いている患者さんが、次の段階の調整食を摂取できるようになるためにはどのような援助を行うのがよいでしょうか【宇佐美康子】
Q7 食事中ときどきむせる患者さんがいます。どのように対応するのがいいでしょうか【宇佐美康子】
Q8 手術により経口摂取を可能にすることができますか【兵頭政光】

3.リハビリ・ケア

Q1 摂食機能療法はどのように行いますか【大熊るり】
Q2 リハビリを行う際にまず考えるべきことは【大野 綾】
Q3 リハビリ訓練にはどのような種類がありますか【三鬼達人】
Q4 基礎訓練の適応と方法を教えてください【三鬼達人】
Q5 患者さんに合わせた口腔ケアの方法と注意点を教えてください【鈴木千佳代】
Q6 歯科医へのコンサルテーションはどのような場合に行いますか【鈴木千佳代】
Q7 直接訓練の進め方を教えてください【三鬼達人】
Q8 誤嚥しにくい姿勢について教えてください【三鬼達人】
Q9 嚥下反射が起こりにくい場合はどうすればいいですか【森脇元希】
Q10 患者さんが自己摂取しやすい環境調整のポイントを教えてください【佐野亜花里】
Q11 在宅療養に向けた家族への指導で、注意していることはありますか【佐野亜花里】

第2章 実践力が身につく! 症例編

1.疾患別

1)脳血管障害─球麻痺【今田智美】
2)偽性球麻痺【中野みさと】
3)パーキンソン病【臼井晴美】
4)筋萎縮性側索硬化症(ALS)【寺尾聡子】
5)脊髄小脳変性症【臼井晴美】
6)ギラン・バレー症候群【宇佐美康子】
7)認知症【鈴木葉子/伊藤史朗】
8)高次脳機能障害【鈴木葉子/伊藤史朗】
9)口腔がん、咽頭がん【青山真弓】
10)舌がん【青山真弓】
11)食道がん【鈴木恭子】
12)放射線治療の後遺症【鈴木恭子】

2.生活環境別

1)重症集中治療室【柿沼香里/杉山理恵】
2)回復期リハビリテーション【木本ちはる】
3)重症心身障害児施設【吉野綾子】
4)介護保険指定施設【田中靖代】
5)在宅療養・外来通院【藤森まり子/藤島一郎】

第3章 嚥下調整食の基本とコツ

1)嚥下調整食の特徴【栢下 淳】
2)嚥下調整食の種類と適応【栢下 淳】
3)とろみ調整食品とゲル化剤の使い方【栢下 淳】
4)介護者の負担を減らす調理方法の工夫【大塚純子】
5)嚥下調整食のレシピと市販品の利用方法【大塚純子】

第4章 摂食・嚥下障害の基礎知識

1.摂食・嚥下のメカニズム

1)「口から食べる」とはどういうことか【谷口 洋】
2)解剖・生理の基礎知識【谷口 洋】
3)小児の特徴【弘中祥司】
4)高齢者の特徴(加齢による解剖学的変化・生理学的変化)【谷口 洋】

2.定義・病態

1)摂食・嚥下障害とは【白坂誉子】
2)摂食・嚥下障害の原因【谷口 洋】
3)摂食・嚥下障害の病態【白坂誉子】
4)誤嚥と窒息(嚥下前の誤嚥、嚥下中の誤嚥、嚥下後の誤嚥)【重松 孝】
5)摂食・嚥下障害によって起こる合併症【杉山育子】

3.摂食・嚥下障害に影響を与える医療

1)気管切開【金沢英哲】
2)人工呼吸器装着【神津 玲】
3)経管栄養【田中直美】
4)絶食【若林秀隆】
5)点滴・酸素吸入【片桐伯真】
6)摂食・嚥下障害を引き起こす薬剤【中村智之】
7)吸引【大石佐奈美】

Column

摂食・嚥下障害看護認定看護師に期待すること【鎌倉やよい】

LIP:Liquid Intake Procedure【鮫島菜緒】

リハビリテーションにおけるゴール【藤島一郎】

段階的摂食訓練の意義【藤島一郎】

摂食・嚥下リハビリに期待すること【落合芙美子】

スタッフとともにつくり上げるケアの確立【外塚恵理子】

“食べることを支援する”看護の魅力とちから【戸田浩司】

プレゼンテーションの秘訣【金澤典子】

窒息【國枝顕二郎】

「合併症」と「併存症」について【杉山育子】

2013年9月16日月曜日

総合リハビリテーション2013年9月号

総合リハビリテーションの最新号(2013年9月号)で、アンチエイジングとリハビリテーションが特集されています。

http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=35354

現状と課題、サルコペニア、骨粗鬆症、動脈硬化症、認知障害-運動療法の可能性に関する内容となっています。私はサルコペニアのところを執筆させていただきました。今まで日本語で執筆した論文の中では一番、文献が多いと思います。

ハイライトは下記HPで見ることができます。サルコペニアやアンチエイジングとリハに関心のある方はぜひ見ていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/pdf/sogoriha_hl/4109.pdf

2013年9月15日日曜日

第3回ヨーロッパ嚥下障害学会(ESSD)参加報告

9月13-14日とスウェーデンのマルメで開催された第3回ヨーロッパ嚥下障害学会(ESSD)に参加してきました。第1回、第2回とも参加できず、一度は参加したいと思っていた学会でした。

http://www.myessd.org/

日本からの参加者は10人強というところでした。全体の参加者はざっくり300~400人くらいです。全体的にいうと、嚥下はヨーロッパより日本のほうが進んでいるように感じました。アメリカからの講師が多かったのもあるかもしれません。

私が一番聞きたかったPresbyphagiaのセッションでは、PresbyphagiaはDysphagiaではないと言っていました。Presbyphagiaの時点で発見して筋トレなどでDysphagiaへの移行を予防することが重要です。

Presbyphagiaの話の中で、サルコペニアという言葉が数回出てきました。サルコペニアだけがPresbyphagiaの原因ではありませんが、重要な一因ではあると考えます。

しかし、嚥下筋のサルコペニア研究の紹介はありませんでした。Sarcopenic dysphagiaという言葉も出てきませんでした。他のセッションも含めて、論文で入手できないほどの新しい情報は、サルコペニア関連ではありませんでした。

一方、EAT-10を使用した研究は、私の発表も含めて150弱の演題中、5演題もありました。EAT-10に関する論文はまだ少ないですが今後、増えてくることが予測されます。ESSDとしてもEAT-10を推奨している雰囲気がありました。

増粘剤に関しては、2年前に比べれば今のほうが改善されていましたが、まだまだ日本のほうが断然進んでいます。物性に関するセッションもありましたが、液体に関する話のみで固形物に関する話はありませんでした。

嚥下の世界では日本のほうが全体的に進んでいるとはいえ、進んでいることを英語で十分発信していないので、ヨーロッパに伝わっていないというのは今回も感じました。毎回ですが英語での発信の重要性を再認識しました。

来年の第4回ESSD(ヨーロッパ嚥下障害学会)は10月23-25日にブリュッセルで開催されます。私は参加しない予定ですが(笑)、興味のある方は日程をチェックしておいてください。

2013年9月2日月曜日

3種類のサルコペニア肥満

サルコペニアの話をするときは、その定義を狭義(加齢のみによる筋肉量低下)なのか、広義(加齢、活動、栄養、疾患による筋肉量低下、筋力低下、身体機能低下)なのかを明確にしないと、話がかみ合わなくなります。

サルコペニア肥満の話をするときも同様だと私は考えています。健常者、高齢者、障害者の3種類のサルコペニア肥満に分けて考えないと、話がかみ合わなくなります。

健常者(高齢者でも障害者でもない)の場合、加齢によるサルコペニアの影響は少なく、疾患によるサルコペニアの影響はありません。つまり、健常者のサルコペニア肥満の主な原因は、活動量・運動不足と栄養(高エネルギー・低蛋白食)ということになります。

高齢者(ADLは自立していてFrailty・虚弱を含む)の場合、加齢によるサルコペニアの影響が大きいです。活動、栄養、疾患によるサルコペニアの要素を認めることも認めないこともあります。おそらく活動量・運動不足と栄養(高エネルギー食)は合併しているでしょう。

障害者(高齢者だけでなく若年者も含みます)の場合、加齢によるサルコペニアの影響は認めることも認めないこともあります。活動、栄養、疾患によるサルコペニアの要素は、認めることが多いです。活動量・運動不足と栄養(高エネルギー食)もあるでしょう。

サルコペニア肥満の種類によって、研究者も変わってきます。健常者のサルコペニア肥満は体育科学、高齢者のサルコペニア肥満は老年科学、障害者のサルコペニア肥満はリハ栄養学となります。

サルコペニア肥満の診断基準は、健常者、高齢者、障害者とも同じものを使用することは可能だと考えます。そして、主な治療が運動(有酸素運動+筋トレ)と栄養(低エネルギー・高蛋白食)であることも同じでしょう。しかし、具体的な治療内容は対象によってやや異なります。

最近、マスコミで取り上げられる機会が増えつつあるのは、健常者のサルコペニア肥満です。もちろんこれを放置すると将来、Frailty・虚弱や障害に至る可能性がより高くなるため、その早期発見と対応は大事です。私も他人事ではありません(苦笑)。

しかし、より重篤なのは高齢者と障害者のサルコペニア肥満です。そして、障害者ではサルコペニア肥満より、やせのサルコペニアを認めることが多いのが現状です。サルコペニア肥満だけでなく、やせのサルコペニアにもより関心を持っていただけると個人的には嬉しいです。

2013年9月1日日曜日

protein-energy wasting (PEW)の認知度

昨日は第35回腎臓セミナーで、「高齢者CKD/ESKD患者の低栄養・サルコペニアの病態と治療」という講演をさせていただきました。

http://www.congre.co.jp/jinsemi/program.html

高齢者CKD/ESKD患者の低栄養・サルコペニアの病態であれば当然、protein-energy wasting (PEW)に触れないわけには行きませんので、講演中にPEWの診断基準を日常的に使用している方は…と質問しました。

PEWの診断基準は、ISRNM(国際腎臓栄養代謝学会)によって、生化学的検査(アルブミン値など)、体格検査(BMI、体重減少など)、筋肉量、食事摂取量の4項目のうち、3項目以上に該当した場合と定義されています。

しかし、会場内ではPEWの診断基準を用いていると挙手された方は、誰もいませんでした…。実際、私も使っていませんので、他人のことは言えませんが、PEWが日常臨床にはほとんどとりこまれていないということですね。

ISRNMは今年になって、PEWの病因に関する論文や、PEWの予防と治療という論文を発表しています。

CKDのPEWコンセンサス論文
http://rehabnutrition.blogspot.jp/2013/02/ckdpew.html

PEWの予防・治療:ISRNMコンセンサス
http://rehabnutrition.blogspot.jp/2013/08/pewisrnm.html

国際的には関心が高まっているようですが、日本では医学中央雑誌でprotein-energy wastingで検索しても、25件しか引っ掛かりません。今年のJSPEN金沢のシンポジウムで取り上げられた程度です。

CKD/ESKD患者の栄養障害というと、過栄養、糖尿病、蛋白制限、カリウム・リン制限となりがちです。しかし、PEW・悪液質、低栄養、サルコペニア、エネルギー・蛋白強化といったところにも、より注目が集まれば嬉しいですね。