2013年12月31日火曜日

大腿骨近位部骨折の体重・除脂肪量減少

大腿骨近位部骨折患者の発症後2カ月以内の身体組成変化を調査した論文を紹介します。

C. R. D'Adamo, et al. Short-term changes in body composition after surgical repair of hip fracture. Age Ageing (2013) doi: 10.1093/ageing/aft198 First published online: December 25, 2013

先行研究として発症後1年の身体組成変化(体重・除脂肪量減少)は、障害悪化、骨折再発、死亡と関連します。今回は、155人の大腿骨近位部骨折患者の体重、除脂肪量、骨密度を、DEXAで発症後3日、10日、2ヶ月の3回調査しました。

結果ですが、発症後3日と10日の間には有意差を認めませんでした。一方、発症後10日と2カ月の間に体重減少(−1.95 kg, P < 0.001)、除脂肪量減少(−1.73 kg, P < 0.001)、骨密度低下を認めました。脂肪は有意差なしでした。

以上より、大腿骨近位部骨折の発症後10日~2カ月の間に体重・除脂肪量減少を認めたという結論です。身体組成と予後を改善させる介入の最適なタイミングを知るために、さらなる研究が必要です。

発症前と発症後3日の比較はできませんので、発症後早期に身体組成に変化を認める可能性は否定できません。しかし今回の研究結果から、体重・除脂肪量を改善させる積極的なリハ栄養介入は、急性期より回復期のほうが重要と示唆されます。

抄録しか読めていないので、発症後10日~2カ月の間にどのようなリハや栄養管理が行われていたか不明です。ただしおそらく、通常のリハと栄養管理を行っていると、この間に体重・除脂肪量が減少するのだと推測されます。

日本では大腿骨近位部骨折の発症前から低栄養・サルコペニアの患者も少なくありませんので、発症後10日~2カ月の間で体重・除脂肪量が減少するのは大きな問題です。回復期リハ病棟での積極的な栄養管理の実施が重要と考えます。

Abstract
Background: the deleterious changes in body composition that occur during the year after hip fracture are associated with increased disability, recurrent fracture, and mortality. While the majority of these unfavourable changes have been shown to occur during the first 2 months after fracture, potential changes in body composition occurring earlier than 2 months post-fracture have not been studied. Accordingly, the aim of this study was to rigorously assess short-term changes in body composition after hip fracture.
                 
Methods: total body mass, lean mass, fat mass and total hip and femoral neck bone mineral density (BMD) were assessed via dual energy X-ray absorptiometry at 3 days, 10 days and 2 months post-fracture among 155 hip fracture patients from the Baltimore Hip Studies. Longitudinal regression analysis using mixed models was conducted to model short-term changes in body composition.
                 
Results: no significant changes in body composition were revealed from 3- to 10 days post-fracture. However, significant decreases from 10 days to 2 months post-fracture were noted in the total body mass (−1.95 kg, P < 0.001), lean mass (−1.73 kg, P < 0.001), total hip BMD (−0.00812 g/cm2, P = 0.04) and femoral neck BMD (−0.015 g/cm2, P = 0.03). No meaningful changes in fat mass were uncovered.
                 
Conclusions: the adverse changes in body composition during the first 2 months after hip fracture appear to have occurred primarily between 10 days and 2 months post-fracture. More research is needed to determine how these findings might help inform the optimal timing of interventions aimed at improving body composition and related outcomes after hip fracture.

2013年12月29日日曜日

2013年の振り返り2:リハ栄養・サルコペニア・悪液質



2013年の振り返り2として、医学中央雑誌での検索ヒット数の推移を2010年から2013年まで調べてみました。検索語は「リハビリテーション栄養」、「リハビリテーション栄養 若林秀隆」、「サルコペニア」、「悪液質」の4つです。

「リハビリテーション栄養」は2010年に初めて5件ヒットしました。その後2012年に39件まで増えましたが、2013年では33件となっています。本日検索しましたので、後日2013年の文献が医学中央雑誌に登録される可能性もあります。

とはいえ2011年から2012年にかけて急増したのに比べると、2013年はあまり変化が内容です。日本語での「リハビリテーション栄養」の学会発表や論文はまだまだ少ないと解釈できる結果です。

「リハビリテーション栄養 若林秀隆」で検索してみると、「リハビリテーション栄養」でヒットした件数の約半数は、私が学会発表や論文執筆したものであることがわかります。私以外の方が約半数ですが、私以外の方に頑張ってほしいです。

「サルコペニア」に関しては2010年以降、右肩上がりのヒット件数となっています。サルコペニアに対する関心が年々高まっていることの表れです。「リハビリテーション栄養」もサルコペニアと同じ勢いで増えてほしいのですが…。

「悪液質」に関しては2011年がピークでそれ以降、むしろ低下しています。リハ栄養的にはサルコペニアへの関心が高まれば、悪液質にも目を向けざるを得なくなると思うのですが、実際にはそうではないようです。

つまり、悪液質を含まない狭義のサルコペニアへの関心が高まっている可能性があります。今年はサルコペニア肥満がマスコミでよく取り上げられたましたが、これは悪液質をほとんど含んでいないと思われます。

来年は私以外の方にリハ栄養の学会発表や論文執筆を頑張っていただきたいと思います。そしてサルコペニアも大事ですが、リハ栄養的にはむしろ悪液質をターゲットにした臨床研究を行うことが重要かもしれません。

2013年12月27日金曜日

2013年の振り返り

若干早いですが、2013年の振り返りをしたいと思います。

学会発表・講演筆頭演者 2011年8回 → 2012年18回 → 2013年26回

講演(大学講義なども含め) 2011年69回 → 2012年95回 → 2013年77回

原著論文 2011年2本 → 2012年1本(筆頭ではありませんが) → 2013年1本

書籍(編著) 2011年 1冊 → 2012年 2冊 → 2013年3冊

総説・書籍など依頼原稿 2011年19本 → 2012年27本 → 2013年38本(うち英語のレビュー論文3本、ツ・ナ・ガ・ルの連載とNutrition Careの「症例でアプローチ!リハビリテーション栄養のススメ」のコメントは含んでいません)

日本リハビリテーション栄養研究会会員数 2011年末574人 → 2012年12月28日1917人 → 2013年12月27日現在3077人

ブログ執筆本数 2011年415本 → 2012年367本 → 2013年144本

テレビ・ラジオなど 2012年0回 →2013年4回

講演を減らそうと考えていましたが、学会発表と合わせると103回ということで、週2回ペースで1年間やり続けた計算になります。やりすぎですね。今年はかなりの講演依頼をお断りさせていただきましたが、来年は今年以上にお断りさせていただきたいと思います。申し訳ありませんが、よろしくお願い申し上げます。

原著論文はようやくImpact Factorのある雑誌に、リハ栄養の内容で掲載することができました。自分の中では大きな一歩です。来年もImpact Factorのある雑誌に1本は掲載しなければと考えています。他に日本語論文でアクセプトされたものが1つあります。

書籍は過去最高でしたが、これも多すぎですね。特に単著に関しては負担がかなり大きかったので、もう当分はやめようと思います。来年2月頃に「悪液質とサルコペニア」に関する書籍を出版予定ですが、それで十分かなと感じています。

サルコペニア関連の英語のレビュー論文を3本執筆できたことは、今年の収穫の1つでした。これはブログで何度も論文を紹介させていただいた、豊橋技術科学大学の佐久間邦弘先生のご指導のおかげです。とても感謝しております。来年もご指導いただく予定です。

日本語の依頼原稿も多すぎですね。今年はすべてお引き受けさせていただきましたが、来年は方針を変更したいと思います。できるところから日本リハビリテーション栄養研究会の世話人の方などに無茶ぶりをして、共著という形にしたいと考えています。よろしくお願い申し上げます。

日本リハビリテーション栄養研究会の会員数はおかげさまで毎月100人ペースで増加しています。Facebookの壁で入会できない方向けの研修会(リハ栄養フォーラム、学術集会)も今年は成功しました。来年もリハ栄養フォーラム、学術集会に多くの方に参加していただきたいと思います。

ブログに関しては来年はさらに執筆回数が少なくなると思います。現在はTwitterとFacebookで簡単に論文紹介することがメインになりました。興味のある方は私のTwilogを見ていただければ参考になるかと思います。

http://twilog.org/HideWakabayashi

今年はテレビやラジオに出演させていただくことが数回ありました。これも筑波大学の久野譜也先生がサルコペニア肥満について精力的に活動されていたおかげです。テレビ、ラジオに関しては目標設定するものではありませんが、タイミングが合えば協力させていただくつもりです。

来年も目標に関しては、別の機会に書きたいと思います。まずは振り返りまで。以下、2013年の私の業績です。

(原著論文)
Wakabayashi H, Sashika H: Malnutrition is associated with poor rehabilitation outcome in elderly inpatients with hospital-associated deconditioning: a prospective cohort study. J Rehabil Med doi: 10.2340/16501977-1258. 2013 [Epub ahead of print]

(総説)
Wakabayashi H, Sakuma K. Comprehensive Approach to Sarcopenia Treatment. Curr Clin Pharmacol 2013 [Epub ahead of print]
Wakabayashi H. Presbyphagia and sarcopenic dysphagia: association between aging, sarcopenia, and deglutition disorders. J Frailty Aging 2013 [Epub ahead of print]
Wakabayashi H, Sakuma K: Nutrition, exercise, and pharmaceutical therapies for sarcopenic obesity. J Nutr Ther 2(2):100-111, July 2013.
若林秀隆:今、なぜリハビリテーション栄養か.週刊医学界新聞3057p2, 2013年12月
若林秀隆:小児NST病態栄養シリーズ:在宅栄養のすべて‐摂食・嚥下リハビリテーションの問題点.小児外科45p1326-1329, 2013年12月
若林秀隆:サルコペニアに対する運動療法の実際.日本医事新報4677p32-36, 2013年12月
若林秀隆、他:サルコペニアと運動器の障害.Practice of Pain Management4(4)p4-13, 2013年11月
若林秀隆:栄養―低栄養例.Medical Rehabilitation163p420-423, 2013年11月
若林秀隆:研修医のための栄養療法入門.研修医通信50p8-11, 2013年10月
若林秀隆:高齢者の廃用症候群の機能予後とリハビリテーション栄養管理.静脈経腸栄養28p1045-1050, 2013年9月
若林秀隆:高齢者「主治医」事典―生活の質―高齢者と生き甲斐.JIM23p826-828, 2013年9月
若林秀隆:アンチエイジングとリハビリテーション―サルコペニア.総合リハビリテーション41(9)p809-816, 2013年9月
若林秀隆:「回復期リハ“栄養”病棟」という考え方.リハビリナース6(5)p8-13, 2013年9月
若林秀隆:誤嚥性肺炎と栄養管理―嚥下障害によるサルコペニアとその治療.臨床リハ22(9)p858-864 , 2013年9月
若林秀隆:摂食・嚥下障害と栄養管理―理学療法とリハビリテーション栄養管理.理学療法学40(5)p392-398, 2013年8月
若林秀隆:軽度の摂食・嚥下障害を初期から見抜く‐嚥下障害スクリーニングのための質問票“EAT-10”.エキスパートナース29(11)p13-17, 2013年8月
若林秀隆:サルコペニアとアンチエイジング‐栄養と運動.アンチ・エイジング医学9(4)p548-553, 2013年8月
若林秀隆:持久力低下とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(7)p92-94, 2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.ヒューマンニュートリションケア 24p67-69, 2013年6月
若林秀隆:リハビリテーションに栄養の視点を.総合リハビリテーション41(6)p515, 2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの呼吸障害とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(6)p84-86, 2013年5月
若林秀隆:リハビリテーションと栄養管理~リハと栄養管理はベストカップル~.急性・重症患者ケア2(2)p340-347, 2013年5月
若林秀隆:術後リハビリテーションの実際―ICU.総合リハビリテーション41(5)p431-437, 2013年5月
若林秀隆:サルコペニア肥満と栄養.体育の科学 63(5)p366-371, 2013年5月
若林秀隆:実地医家のための臨床栄養update―咀嚼・嚥下障害と栄養管理.日本医師会雑誌142(2)p279-281, 2013年5月
若林秀隆:サルコペニアの嚥下障害とリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(5)p98-100, 2013年4月
若林秀隆:二次性サルコペニアのリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(4)p92-94, 2013年3月
若林秀隆:原発性サルコペニアのリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(3)p84-86, 2013年2月
若林秀隆:歯科衛生士に知ってほしい“リハビリテーション栄養”.DHstyle7(2)p48-52, 2013年1月
若林秀隆:悪液質のリハビリテーション栄養.ニュートリションケア 6(2)p60-62, 2013年1月
若林秀隆:サルコペニアの概要.リハニュースNo.56p2-3, 2013年1月

(著書)
【単著・編著】
若林秀隆:高齢者リハビリテーション栄養、カイ書林、2013年12月
栢下淳、若林秀隆:リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎、医歯薬出版、2013年12月
若林秀隆:リハビリテーション栄養Q&A、中外医学社、2013年10月
【分担執筆】
若林秀隆:絶食.藤島一郎他編:Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社、pp325-327、2013年9月
若林秀隆:患者さんの栄養状態はどのように把握すればいいでしょうか?藤島一郎他編:Q&Aと症例でわかる!摂食・嚥下障害ケア、羊土社、pp46-50、2013年9月
若林秀隆:高齢者の栄養状態.全国歯科衛生士教育協議会監修:高齢者歯科第2版、医歯薬出版、pp97-103、2013年9月
若林秀隆:リハビリテーションと栄養.日本病態栄養学会編:病態栄養専門師のための病態栄養ガイドブック改訂第4版、メディカルレビュー社、pp307-311、2013年5月
若林秀隆:脳卒中とリハビリテーション.藤本篤士他編:5疾病の口腔ケア、医歯薬出版、pp80-83、2013年3月
若林秀隆:サルコペニアの早期発見・治療:病院─急性期病院.葛谷雅文、雨海照祥編:栄養・運動で予防するサルコペニア、医歯薬出版、pp42-47、2013年2月
若林秀隆:サルコペニア予防のための栄養管理とトレーニング.大村健二、葛谷雅文編:高齢者の栄養 はじめの一歩、羊土社、pp160-169、2013年2月

(学会発表・講演)
Wakabayashi H: Association between muscle strength of head lifting, dysphagia, and malnutrition in Japanese elderly: possibility of sarcopenic dysphagia. 7th International Conference of the Society on Sarcopenia, Cachexia and Wasting Disorders, Kobe, Japan, December 2013
Wakabayashi H: The sensitivity and specificity of EAT-10 for dysphagia and malnutrition in Japanese elderly with dysphagia or suspected dysphagia. 3rd Congress of the European Society for Swallowing Disorders, Malmö, Sweden, September 2013
Wakabayashi H: Importance of dysphagia management in rehabilitation. 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics, Seoul, June 2013
若林秀隆:日本リハビリテーション栄養研究会の今後の展望.第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会,福岡,2013年12月
若林秀隆:慢性期医療とリハビリテーション栄養.第21回日本慢性期医療学会,東京,2013年11月
若林秀隆:高齢者の栄養ケア〜今そこにある危機にチーム医療で立ち向かう〜:リハビリテーションの立場から―高齢者の栄養ケアがリハを変える.第55回全日本病院学会,埼玉,2013年11月
若林秀隆:摂食・嚥下の地域連携の課題.第52回全国自治体病院学会,京都,2013年10月
若林秀隆:Presbyphagia(老嚥)とサルコペニアの栄養管理.第19回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,倉敷,2013年9月
若林秀隆:サルコペニアとリハビリテーション栄養.第19回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,倉敷,2013年9月
若林秀隆:術後回復力強化プログラムにおけるプレハビリテーションの重要性.日本麻酔科学会関東甲信越・東京支部第53回合同学術集会,東京,2013年9月
若林秀隆:食事と栄養でロコモ・サルコペニア肥満を予防しよう.第25回日本運動器科学会,神戸,2013年7月
若林秀隆:緩和医療とリハビリテーション栄養.第18回日本緩和医療学会学術集会,横浜,2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆、佐鹿博信:Eating Assessment Tool(EAT-10)による嚥下スクリーニングの妥当性.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆、佐鹿博信:高齢者の摂食嚥下障害と頭部挙上筋力・頸部周囲長の関連:横断研究.第50回日本リハビリテーション医学会,東京,2013年6月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第24回日本老年歯科医学会,大阪,2013年6月
若林秀隆:在宅リハビリテーション栄養とサルコペニア.第15回日本在宅医学会大会,愛媛,2013年3月
若林秀隆:回復期リハビリテーションにおける臨床栄養とサルコペニア.回復期リハビリテーション病棟協会第21回研究大会,金沢,2013年3月
若林秀隆:サルコペニアの摂食・嚥下障害とリハビリテーション栄養.第26回日本嚥下医学学会,京都,2013年3月
若林秀隆:廃用症候群の高齢入院患者における栄養評価と機能予後.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養の過去・現在・未来.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:脳卒中のリハビリテーション栄養管理.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:サルコペニアと摂食・嚥下障害.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養管理とサルコペニア.第28回日本静脈経腸栄養学会,金沢,2013年2月
若林秀隆:リハビリテーション栄養.第16回日本病態栄養学会,京都,2013年1月 若林秀隆:摂食嚥下障害.第16回日本病態栄養学会,京都,2013年1月

(研究助成金)
若林秀隆:CTによるサルコペニア指標の開発およびサルコペニアによる摂食・嚥下障害の解析.学術研究助成基金助成金 基盤研究(C) 195万円(内、間接経費45万円)、研究代表者
若林秀隆:地域・在宅高齢者における摂食嚥下・栄養障害に関する研究―特にそれが及ぼす在宅療養の非継続性と地域における介入システムの構築に向けて―.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合事業)80万円、研究分担者

(その他:テレビ、ラジオ、雑誌)
若林秀隆:40代から要注意!あなたの知らないサルコペニア肥満.あさイチ、NHKテレビ、2013年7月18日
若林秀隆:サルコペニア肥満.ニュースなぜ太郎、テレビ朝日、2013年11月2日
若林秀隆:要注意!サルコペニア(筋肉減少)のやせ・肥満.ラジオあさいちばん、NHKラジオ、2013年12月2日~6日
若林秀隆:外見から分からない「サルコペニア肥満」.AERA 2013年12月23日号

2013年12月24日火曜日

高齢者リハビリテーション栄養:続報

若林秀隆著、新・臨床高齢者医学1「高齢者リハビリテーション栄養」、カイ書林の印刷が完成して、本日私の手元に届きました。ただネット上ではまだ入手できないようです。今週中にはアマゾンなどで入手できるようになると思います。

新・臨床高齢者医学シリーズが何冊まで出版されるかわかりませんが(笑)、最初が「高齢者リハビリテーション栄養」であるというのは、まさに「新」臨床高齢者医学だと思います。臨床高齢者医学でリハと栄養が重要であることは言うまでもありませんし。

リハ栄養ではサルコペニアが重要な対象ですので当然、高齢者に対するリハ栄養が多くなります。ただ高齢者のリハ栄養に特化した書籍は、今まで企画したことがありませんでした。今回は単著ですので、かなり個人的な意見も執筆させていただきました。

主な読者対象である総合医には、最初の藤沼先生からのインタビュー記事が一番面白いかもしれません。また医師以外の職種にも読みやすい内容だと思います。本書のコンセプトは、レジデントが寝る前に30分で読める本です。多くの方に読んでいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

目次
序:リハビリテーションなくして総合診療なし

第1章 総論
①総合診療医のための高齢者リハビリテーション
②ICFとCGA
③ADLとQOL
④SMARTなゴール設定
コラム:ブレイン・マシーンインターフェイス
⑤高齢者のリハビリテーション栄養

第2章 ケースで学ぶリハビリテーションなくして総合診療なし
①CKDに対して蛋白質制限を行わなかった脳卒中のケース
コラム:HAL
②老年症候群が進行し大腿骨近位部骨折を受傷したケース
③大腿骨近位部骨折から回復したケース
④軽度認知機能障害~初期認知症の外来ケース
⑤抑うつの改善でADLが改善した廃用症候群のケース
⑥がん悪液質を一時的に改善できたケース
⑦とりあえず安静・禁食にしなかった誤嚥性肺炎のケース

2013年12月23日月曜日

週刊医学界新聞:今,なぜリハビリテーション栄養か

週刊医学界新聞第3057号(2013年12月23日)に「今,なぜリハビリテーション栄養か」という寄稿を掲載していただきました。

今,なぜリハビリテーション栄養か
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03057_02

週刊医学界新聞では2011年に「筋肉は健康のバロメーター:サルコペニアを知ろう」を掲載していただきましたので、今回が二度目になります。ありがたいことです。

筋肉は健康のバロメーター:サルコペニアを知ろう
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02920_02

今回の原稿の内容は以下の4項目です。
・「栄養ケアなくして,リハビリテーションなし」の原点
・リハ栄養の視点でみた摂食嚥下障害の原因とは
・日本発の概念として,エビデンスの創出と発信を
・「日本リハビリテーション栄養研究会」の立ち上げと拡大

まだ短い期間しかありませんが、リハ栄養の歴史について振り返った内容となっています。多くの方の支援があってここまで来れたのだと改めて実感しています。多くの方に見ていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

2013年12月14日土曜日

リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎

PT・OT・ST・看護師の学生向けの栄養、リハ栄養の教科書として作成した、栢下淳・若林秀隆編著「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」、医歯薬出版が出版されました。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=214380

今まで学生向けではない卒後・生涯学習としてのリハ栄養の書籍は、何冊か執筆してきました。しかし、学生向けの栄養・リハ栄養の基礎を学べる教科書がないこともあり、PT・OT・STの卒前教育で、栄養を学ぶことはほとんどなかったと思います。

「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」は、管理栄養士の学生向けの教科書ではなく、PT・OT・ST・看護師の学生向けの教科書です。ただし、第2章主な病態の栄養療法と第3章主な疾患の栄養療法に関しては、管理栄養士の学生にも知ってほしい内容です。

PT・OT・ST・看護師の学生向けの教科書ではありますが、すでに臨床で仕事をしているPT・OT・ST・看護師な多職種の方にとっても、栄養・リハ栄養の基礎を学習・復習できる書籍にはなっていると思います。あくまで基礎・初級レベルですが。

ぜひPT・OT・ST・看護師の多くの学校で教科書として採用して、栄養・リハ栄養の講義をしていただけると嬉しいです。PT・OT・ST・看護師にとって、栄養・リハ栄養の基礎は学生時代に学ぶべきことです。栄養ケアなくしてリハなしですので。

ただ、教科書の内容を教えることができる教員の存在も必要です。PT・OT・ST・看護師の教員にも、栄養・リハ栄養の基礎を学習していただければと思います。中には栄養とリハは関係ないとして、栄養やリハ栄養に無関心の方もいますので…。

日本リハビリテーション栄養研究会の会員やリハ栄養に関心のあるPT・OT・ST・看護師の皆様には、ぜひ母校に「リハビリテーションに役立つ栄養学の基礎」を紹介していただればと思います。場合によっては非常勤講師もお願いしますね(笑)。

目次

序章 リハビリテーションにおける栄養知識の重要性 1.栄養面から
   1 高齢社会と栄養 2 栄養と生命予後
 2.リハビリテーション面から
   1 なぜPT・OT・STに栄養の知識が必要なのか 2 リハビリテーション栄養とは 3 ICFと栄養
第1章 栄養の基礎
 1.栄養補給ルート
   1 栄養投与経路 2 経口摂取 3 経管栄養 4 経静脈栄養
 2.エネルギー代謝
   1 エネルギー消費量 2 基礎代謝量 3 身体活動レベル
   4 健康づくりのための身体活動基準2013
 3.5大栄養素の役割
  1)たんぱく質
   1 消化・吸収 2 代謝 3 アミノ酸 4 食品中の含量 5 必要量の考え方
   6 低栄養の判定
  2)脂質
   1 消化・吸収 2 代謝 3 リポたんぱく質 4 必要量の考え方 5 食品中の含量
  3)炭水化物(糖質・食物繊維)
   1 糖質 2 食物繊維 3 アルコール
  4)ビタミン
   1 ビタミンの代謝と働き 2 必要量の考え方
  5)ミネラル
   1 多量ミネラル 2 微量ミネラル
 4.運動時の栄養
   1 リハビリテーションを行う患者の必要栄養量 2 栄養素の必要量の考え方
   3 リハビリテーションと栄養素の働き
 5.栄養不良時の栄養
   1 栄養不良の分類 2 栄養不良時の代謝とリハビリテーションの留意点
   3 栄養不良の評価指標 4 refeeding症候群の予防と栄養管理
 6.侵襲時の栄養
   1 術前の栄養管理 2 術後の栄養管理
第2章 主な病態の栄養療法
 1.低栄養者の栄養管理
   1 低栄養とは 2 飢餓の病態生理 3 マラスムス型,クワシオルコル型,混合型
   4 侵襲下の飢餓の病態生理 5 悪液質の病態生理 6 栄養評価のポイント 7 栄養療法
 2.摂食・嚥下障害
   1 摂食・嚥下障害とは 2 器質的障害の病態生理 3 機能的障害の病態生理
   4 心理的原因の病態生理 5 栄養評価のポイント 6 栄養療法
   7 摂食・嚥下障害への対応
 3.サルコペニア
   1 サルコペニアとは 2 一次性サルコペニアの病態生理 3 二次性サルコペニアの病態生理
   4 サルコペニアの診断基準 5 サルコペニアと虚弱 6 栄養評価のポイント
   7 サルコペニアの栄養療法 8 サルコペニア肥満の栄養療法
   9 二次性サルコペニアへの対応:リハビリテーション栄養
 4.ロコモティブシンドローム
   1 ロコモティブシンドロームとは 2 ロコモティブシンドロームの病態生理
   3 ロコモティブシンドロームの診断基準 4 栄養評価のポイント
   5 ロコモティブシンドロームの栄養療法 6 ロコモティブシンドロームのトレーニング
 5.メタボリックシンドローム
   1 メタボリックシンドロームとは 2 日本のメタボリックシンドロームの診断基準
   3 メタボリックシンドロームの病態生理 4 栄養評価のポイント
   5 メタボリックシンドロームの栄養療法
第3章 主な疾患の栄養療法
 1.脳卒中
   1 病態生理と治療 2 脳卒中の種類 3 機能障害と機能訓練 4 栄養評価のポイント
   5 栄養療法 6 栄養ケアプラン
 2.誤嚥性肺炎
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 3.がん
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 4.脊髄損傷
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 5.大腿骨近位部骨折
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 6.下肢切断
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 7.関節リウマチ
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 8.慢性閉塞性肺疾患
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 9.慢性心不全
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 10.廃用症候群
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
 11.褥瘡
   1 病態生理と治療 2 機能障害と機能訓練 3 栄養評価のポイント
   4 栄養療法
第4章 栄養関連事項
 1.NSTの実際
   1 目的 2 栄養評価の指標
 2.アルコールの影響
   1 代謝 2 疾患との関連 3 含有量
 3.タバコによる影響
   1 タバコに含まれる有害物質 2 タバコによる代謝の変化 3 タバコと疾患の関係
   4 タバコと低栄養

 索引

2013年12月12日木曜日

7th cachexia conference参加

12月9-11日と神戸で7th cachexia conferenceが開催されました。私は3日間フル参加してきました。

http://www.lms-events.com/19/index.php

私の見立てなのでかなり違うかもしれませんが、参加者は400(~500)人程度で、日本人の参加者は100人もいなかったのではと思います。世界中のサルコペニアと悪液質の一流の研究者が日本に集まっていたのに、とてももったいないことだと感じました。

サルコペニアへの関心はこの数年で高まってきましたが、悪液質の新しい考え方への関心はまったく高まっていないことがよくわかりました。日本でも悪液質への関心を高めるよう、努力しなければいけないと痛感しました。学会の宣伝不足の要素もありそうですが・・・。

参加者の多くは研究家であって、臨床家ではなさそうでした。臨床家ではリハ、循環器、緩和医療、呼吸器の医師がそれぞれ数人ずつ参加していたようです。リハ医は私を含めて6人でした。それだけ研究と発表のレベルは高く、日本が遅れていることを実感しました。

リハ栄養的に一番印象に残ったのは、悪液質の薬物療法の研究が進んでいますが、栄養、運動、心理社会サポートをしっかり行うことの重要性が繰り返し述べられていました。前悪液質・悪液質の早期発見と包括的対応といったリハ栄養を、臨床現場で実践できるよう還元したいです。

私はAssociation between muscle strength of head lifting, dysphagia, and malnutrition in Japanese elderly: possibility of sarcopenic dysphagiaという発表をしてきました。

口腔・嚥下に関する発表は、私と熊本リハ病院の吉村先生のAssessment of oral cavity function and its clinical significance: Is ROAG valuable for sarcopenia screening?だけでした。

つまり、口腔・嚥下のサルコペニア・悪液質に関しては未開の領域であり、ここでは日本が先行できる可能性があります。また、サルコペニア肥満の発表もほとんどありませんでした。ここは韓国が頑張っている領域ですが、日本も頑張れそうです。

アジアでのサルコペニアのコンセンサス論文が近日中に発表になると言っていました。重要な論文になりますので、納得できる内容の論文であれば日本で広めたいですし、そうでなければレター論文を書いてコメントしたいと思っています。できるかわかりませんが(笑)。

吉村先生に撮影していただいたポスター発表の様子の写真を掲載いたします。英語での発表やディスカッションをもっとできるようにしなければと思いつつ、なかなか改善できませんね(苦笑)。


2013年12月5日木曜日

リハ栄養フォーラム2014

リハ栄養フォーラム2014の日程が、下記ポスターのように決まりました。来年は全国7か所で開催させていただきます。この企画は、日本リハビリテーション栄養研究会の会員でなくても参加可能です。私は仙台以外の6か所で講演予定です。ぜひ多くの方にご参加いただければと思います。

参加申し込みの開始時期は来年2月以降ですが、今から来年の手帳やカレンダーに予定を書いておいていただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。


2013年12月3日火曜日

がん悪液質とGlasgow Prognostic Score

がん悪液質とGlasgow Prognostic Scoreのレビュー論文を紹介します。

Euan Douglas, Donald C McMillan. Towards a simple objective framework for the investigation and treatment of cancer cachexia: The Glasgow Prognostic Score. Cancer Treatment Reviews.

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0305737213002600

Glasgow Prognostic Scoreのスコアで悪液質の有無とステージを評価して、どんな介入をするかを表で示しています。主観的な項目がないので、簡単な診断基準といえます。個人的にはCRPが1mg/dl以上でないと悪液質と判断できないのは気になります。


Abstract

Progress in the treatment of progressive involuntary weight loss in patients with cancer (cancer cachexia) remains dismally slow. Cancer cachexia and its associated clinical symptoms, including weight loss, altered body composition, poor functional status, poor food intake, and poorer quality of life, have long been recognised as indicators of poorer prognosis in the patient with cancer. In order to make some progress a starting point is to have general agreement on what constitutes cancer cachexia. In recent years a plethora of different definitions and consensus statements have been proposed as a framework for investigation and treatment of this debilitating and terminal condition. However, there are significant differences in the criteria used in these and all include poorly defined or subjective criteria and their prognostic value has not been established.
The aim of the present review was to examine the hypothesis that a systemic inflammatory response accounts for most of the effect of cancer cachexia and its associated clinical symptoms on poor outcome in patients with cancer. Furthermore, to put forward the case for the Glasgow Prognostic Score to act a simple objective framework for the investigation and treatment of cancer cachexia.

2013年12月1日日曜日

第3回日本リハ栄養研究会の会長講演資料

第3回日本リハビリテーション栄養研究会学術集会in福岡が終わり、横浜に戻りました。金久さんはじめ実行委員会の皆様に改めて感謝いたします。どうもありがとうございました。

会長講演は、私の考えていることに賛成であれ反対であれ、少しでも理解していただければ幸いです。会長講演の配布資料は1週間限定公開ということで終了させていただきました。