Second international course on oropharyngeal dysphagia2日目の様子を紹介します。やや長文です。
2日目のコース内容
Complications of oropharyngeal dysphagia and the need for nutrition therapy
Nutritional complications of oropharyngeal dysphagia and utility of the MNA-SF for nutrition screening
Therapeutic approach to malnutrition and sarcopenia
Dietary modification strategies
Importance of nutrition support in older adults
日本で嚥下障害の栄養というと、日本摂食・嚥下リハ学会の内容を見る限りほとんどが嚥下調整食の話です。このコースでは嚥下調整食の話もありますが、むしろ嚥下障害の低栄養とサルコペニアをメインにとりあげています。この点は素晴らしいと感じました。私の関心領域がここということもありますが。
Practical session 3: Assuring safe and appealing nutrition for optimal compliance and outcomes
3種類のトロミ調整食品を使用して、水、ジュース、コーヒー、牛乳、コーラ(!)に、ネクター状、ハチミツ状、プリー状(!)の粘度をつけましょうという実習でした。トロミ調整食品でプリー状という、日本ではありえないことを普通にやっていることに驚きました。この領域では日本は断然進んでいます。ただ、ゼリーも含めてガラパゴス的になっていて、もっと日本の情報を英語できちんと海外発信しなければいけないと痛感しました。
Treatment: swallow rehabilitation and oral health
Exercise-based approaches to swallow rehabilitation
Emerging strategies: Pharmacological approach
Oral health issues
舌筋力増強訓練、薬物療法(ここは東北大学の論文引用が少なくありませんでした)、口腔衛生に関する内容で、舌筋力増強訓練に関して詳しく話を聞けたのが良かったです。
Practical session 4: Clinical case of diagnosis and treatment of a patient with dysphagia and malnutrition
このセッションは前の講義やセッションが大幅に延びたため中止となりました。個人的には残念でした。
2日間の研修に参加してみて、これはTNT研修会の嚥下版だと感じました。嚥下障害への認識や関心が低い国では、このコースをベースにして国内の各地でこのような研修会を開催すると、嚥下障害に対する関心が高まると感じました。ただ、日本で行う必要はないと思いました。日本摂食・嚥下リハ学会のE-learningを完璧に学習すれば、かなりフォローできる内容です。サルコペニアはありませんが…。
ホテルからマタロ病院までの移動のバスで、カナダのSLPと話をしたのですが、その方が来年のDRS(Dysphagia Research Society)の大会長と聞いてびっくりしました。Rosemary Martinoという名前は論文で見たことがありましたが。来年9月の日本摂食・嚥下リハ学会に行くかもと言っていました。これなら来年のトロントのDRSに参加しなくても大丈夫かも(笑)。
とても感心したのは、彼女はPhDをトロント大学の臨床疫学で取得していたということです。サケットやガヤットといった臨床疫学とEBCPの生みの親から指導を受けたそうです。私が知る限りですが、日本のSTで臨床疫学のPhDを取得した人はきいたことがありません(もしいたら教えてください)。
ヨーロッパ嚥下学会(ESSD)の紹介は今日もありました。すでに日本人で会員になっている方もいるようです。医師は年間100ユーロです。学会雑誌はDysphagiaにするそうです。今後はますますDysphagiaが世界の嚥下雑誌になりそうです。
私はASPENもESPENも参加したことがありませんが、それぞれの雑誌などで情報を知る限りでは、アメリカとヨーロッパの栄養管理の違いは多少あります。主な関心領域も多少異なります。私はASPENよりESPENから学ぶことが多いです。
DRSとESSDは同じDysphagiaをジャーナルにしますので、ASPENとESPENほどの違いは出ないかもしれません。ただ、嚥下障害の栄養管理やサルコペニアに関して、DRSではどれだけ取り上げているのでしょうか。DRSに参加したことがないので推測ですが少ないと思いますので、私はDRS派よりESSD派だろうなあと感じました。
栄養管理も嚥下リハも臨床面では日本はかなり進んでいるということを今回参加して、改めて感じました。ただし、英語での論文発表が少ないために、その実情があまり海外で知られていないことも痛感しました。
私は日本の中でリハ栄養の考え方を広めれば十分と思って今まで日本語のみで活動してきましたが、それだけでは足りないのかもしれません。「何によって憶えられたいか」を自問自答しなおすよい機会になりました。ぜひ多くの方に日本からヨーロッパ嚥下学会に参加してほしいと思います。
2011年5月7日土曜日
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