2010年6月5日土曜日

JSPEN:医学研究及び研究発表における倫理的問題に関する見解及び勧告

JSPENのHPに「医学研究及び研究発表における倫理的問題に関する見解及び勧告」が掲載されています。

http://jeff.jp/JJSPEN-kenkai-kankoku.html.html

JSPEN(その他の学会・研究会でも同様ですが)での発表で必ず考慮しなければいけないことですので、全文引用します。

基本的にすべての臨床研究(症例報告含め)でインフォームドコンセント、匿名化(連結可能など)、倫理審査委員会の3点セットは必須だと考えたほうがよいです。研究倫理は徐々に厳しくなっている印象ですが、それだけ大切な概念ということになります。以下、引用です。

学会員各位
近年、新しい医学研究領域の発展により、研究・医療及び医学教育の従事者はそれぞれの立場で必要に応じた倫理的対応が迫られています。日本静脈経腸栄養学会理事会では、本学会における今後の投稿論文や学術集会での医学研究発表における倫理的問題に関して下記のごとく見解を示し、生命倫理に関する問題について広く会員の理解を深め、注意を喚起することに致しました。すべての医学研究においては、研究自体の倫理性は言うに及ばず、患者さんの権利に関しても十分に配慮されるべきであります。

本学会会員の皆様におかれましては、特にヒトを対象とした医学研究を行う場合には、患者さんのプライバシーの保護やインフォームドコンセントなどに関する倫理的問題に十分配慮されますようお願い致します。

医学研究発表における倫理的問題に関しては、以下のいずれかを満たすものとする。
A.ヒトを対象とした研究:
1.ヒトゲノム・遺伝子研究では「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」による規定を遵守したもの。
(文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)
(平成16年12月28日全部改正、平成17年6月29日一部改正、平成20年12月1日一部改正)
2.上記以外の研究で各施設の倫理審査委員会の承認が必要な場合、その承認を得たもの。
3.倫理審査委員会の承認を必要としないが、ヘルシンキ宣言(2008年大幅修正)の精神を遵守したもの。
(但し、第15条、第25条、第29条の条文を除く)

B.動物を対象とした研究:
動物実験に関する審査委員会の承認を得たもの。

C.ヒト・動物以外の研究:
広い意味での生命倫理について配慮を要する。

D.研究倫理と不正行為
総合的な研究倫理を理解し、不正行為などが起こらないように十分留意する。

[解説] ここでは医学研究を、ヒトを対象とした研究(個人を特定できるヒト由来の材料及び個人を特定できるデータの研究を含む)とヒト以外を対象とした研究に分けます。また、ヒトを対象とした研究では「ヒトゲノム・遺伝子研究」と「これ以外の研究」とに分けます。

A.ヒトを対象とした研究:
1.ヒトゲノム・遺伝子研究では「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」(文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)(平成16年12月28日全部改正、平成17年6月29日一部改正、平成20年12月1日一部改)
(http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/40_126.pdf
)による規定があり、これを熟読し内容を理解した上で遵守する必要があります。この場合、各施設での倫理審査委員会の承認が必要です。なお、現時点における過渡期的問題として、本指針が示される以前に終了した研究については、上記指針で示されている「細則1(本指針施行前の研究に関する細則)本指針施行前に既に着手され、現在実施中のヒトゲノム・遣伝子解析研究に対しては適用しないが、可能な限り本指針に沿って適正に実施することが望まれる」に従って下さい。

2.「これ以外の研究」についても「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働省) (平成16年12月28日全部改正、平成20年7月31日一部改正)
(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf
)に沿って、原則として各施設倫理審査委員会の承認が求められます(2.として提示しました)。また疫学研究に関しては「疫学研究に関する倫理指針」(文部科学省、厚生労働省)
(平成19年8月16日全部改正、平成20年12月1日一部改正)
(http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/37_139.pdf
) による規定があり、これを熟読し内容を理解した上で遵守する必要があります。「人口統計に関する研究」やインフォームドコンセントを得て治療を目的に行った症例の「症例検討(症例報告も含む)」などでは、倫理審査委員会の審査を必要としない場合もありますが*、この場合も世界医師会ヘルシンキ宣言(2008年1O月大幅修正。日本医師会ホームページ参照)
(http://www.med.or.jp/wma/helsinki08_j.html
)(第15条、第25条、第29条の倫理審査委貝会への実験計画書の提出を義務づけた条文以外)の精神に十分配慮したものであることが求められます(3.として提示しました)。なお、症例報告に関しては「症例報告に関する患者プライバシー保護に関する指針」(外科関連学会協議会)を遵守して下さい。
*: 症例検討(症例の集計による研究発表)や症例報告などは、一般に実地医療の結果報告であり、ヘルシンキ宣言が対象としている‘medical research involving human subject’には含まれないと考えます。

B.動物を対象とした研究:
1.ヒト以外に動物などを対象とした医学研究の場合においても、各施設における審査委員会の承認が必要であり、「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」(日本学術会議2006年6月1日、
http://www.scj.go.jp/ja/info/ kohyo/data_20_5.html
)を遵守する必要があります。

C.ヒト・動物以外の研究:
1.医工学領域や動物以外の生物に関する研究領域では、倫理的問題を考慮する必要がないものがありますが、広い意味で生命倫理について(化学兵器製造の問題、地球環境問題などにも)十分配慮することが求められます。

D.研究倫理と不正行為
科学者の規範の基礎である、研究活動における人、社会、自然に対する影響、安全性などの評価を包含した総合的な研究倫理を理解し、研究の遂行及び成果の発表においては、不正行為として捏造(Fabrication:存在しないデータの作成)、改ざん(Falsification:データの変造、偽造)、盗用(Plagiarism:他人のアイデアやデータや研究成果を適切な引用なしで使用)のみならず、不適切なオーサーシップ、重複発表、引用の不備・不正、研究過程における安全の不適切な管理、実験材料の誤った処理・管理、情報管理の誤りなどが起こらないように十分留意する。
平成22年2月25日
日本静脈経腸栄養学会

2010年6月4日金曜日

人勢塾―ポジティブ心理学が人と組織を鍛える

今日は、金井壽宏編・著「人勢塾―ポジティブ心理学が人と組織を鍛える」小学館を紹介します。

http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093878630

人勢塾とはポジティブ心理学を応用・実践し、人と組織を元気にするための研究会のことで、主に企業の人事担当者を対象にした勉強会です。ただ、組織を元気づけるという意味で医療人にも参考になる内容だと思います。

医療界は構造的になかなか厳しいですし、NSTは稼動していてもうまくいっていない病院が少なくないですし、病院や医療スタッフに腹が立つ時もあるでしょうし、医療人はネガティブになりやすい環境で仕事をしていると感じています。本当は多くのありがとうのことばをいただける、得難い環境ではあるのですが…。

ポジティブ心理学と言ってもネガティブな面にも目を向けて、ポジティブ対ネガティブの比が3対1くらいが丁度よいそうです。あまりポジティブに偏りすぎても、それはそれでやや問題があるようです。

「感謝日誌法」という方法が紹介されています。毎日その日に生じた出来事のうち感謝すべきことを5つ書くと、次の日に前向きな気持ちになれるそうです。感謝の気持ちは内省してもよいし、人に伝えてもよいですが、自分だけでなくまわりも組織も明るくさせます。

あと、以下の質問に高い評価をする社員は生産性の高い職場に多く、低い評価をする社員は生産性の低い職場に多いそうです。これらは「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」という書籍からの引用です。皆様はいかがでしょうか。

1.仕事上で自分が何をなすべきか、要求されていることがわかっているか。
2.自分の仕事を適切に遂行するために必要な材料や道具はそろっているか。
3.最高の仕事ができるような機会に毎日恵まれているか。
4.この一週間の間に仕事の成果を認められたり、褒められたりしたことはあるか。
5.上司や同僚は自分を一人の人間として認めて接してくれているか。
6.仕事上で自分の成長を後押ししてくれている人はいるか。
7.仕事上で自分の意見は尊重されているか。
8.企業のミッションと照らし合わせて自分自身の仕事は重要だと感じられるか。
9.同僚は質の高い仕事をしているか。
10.職場にだれよりも親しい友人はいるか。
11.この半年の間に、自分の進歩について誰かと話し合ったことがあるか。
12.この一年の間に、職場で学習し、成長する機会に恵まれたか。

いずれにしても仕事をするのであれば、辛くやるよりも楽しくやりたいものです。ただ、楽しさが3、辛さが1くらいのバランスがお勧めです。逆に辛さが3、楽しさが1ではなかなか大変ですが。

目次
序章 人勢塾への道―ポジティブ心理学を組織・人事に実践的に応用するために
第1章 ポジティブ心理学
第2章 「感謝」が社内を変えていく
第3章 「強み」を生かした組織づくり
第4章 「フロー経験」を知る
第5章 ピーク経験と自己実現
第6章 HRから組織を変える
第7章 逆境を乗り越える力
第8章 その後の人勢塾
巻末付録 「人勢塾」事前シラバス抜粋

2010年6月3日木曜日

昇進者の心得

今日は、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部:編訳「昇進者の心得―新任マネジャーの将来を左右する重要課題」ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00890-4

多くの書籍はいかに昇進するかに焦点を当てています。昇進した後いかにあるべきかについて書かれた書籍は少ないと思います。私は昇進者とは言えない職位ですが、組織ではリーダー的な仕事をさせていただくことがありますので、参考になる部分がありました。

ただ、この書籍の前に、ドラッカーの以下の言葉が名言です。昇進者はまずはこの言葉を肝に銘じておくべきでしょう。

「10年、15年にわたって有能だった人が、なぜ急に無能になるのか。私が見てきた限り、原因は、それらのほとんどにおいて、昇進した人が、前の任務で成功したこと、昇進をもたらしてくれたことを新しい任務においても行い続けることにある。その挙句、無能な仕事しか出来なくなる。

 正確には、無能になるのではなく、単に間違ったことを行うために無能な仕事しか出来なくなるのである。新しい任務を行ううえで必要なことは、卓越した知識と才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において致命的に重要なものへの集中である。」

 私がこの書籍で最も参考になったのは、「第8章なぜ地位は人を堕落させるのか」です。トップでありつづけるための日常習慣として、以下の項目が紹介されています。

・普通の生活を心がける
・自分の短所に光を当てる
・「観測気球」をあげる(まわりの現実を調べる作業をおしまない)
・小さなことにくよくよ悩む
・内省する時間を増やす

 要は謙虚であれということなのでしょうが、偉くなるとそれがなかなか難しいのだろうと思います。

 また、みずからのリーダーシップを「監査」してみるということで、以下の6つの質問が用意されています。これらの質問で転落の危機に落ちていないかどうか自己診断できます。

・穴を塞いだり、綻びを繕ったりと、目の前の問題の処理に追い回されていないか。
・耳の痛い社内の意見にどのように対応しているか。
・必要な時に必ず「王様は裸だ」と進言してくれる人物はいるか。
・尊大な幻想を抱いていないか。
・自分の利益を求めるあまり、強欲な人間に変わっていないか。
・一息入れて、何か違うことをするか、ゆっくり休んでみてはどうか。

 私にも耳の痛い質問がありました。リーダーでもそうでなくても、これらの質問で自己診断することは有用かと感じます。

目次
まえがき──「昇進後の落とし穴」の存在

第1章 新任マネジャーはなぜつまずいてしまうのか
 ハーバード・ビジネススクール 教授 リンダ・A・ヒル

管理職になってみて気づくこと
マネジャーの心得が身につかない理由
新米マネジャーが抱きがちな五つの誤解
上司が新米マネジャーの不安を理解する必要性
【章末】もう一つの教訓:権限はみずから獲得するもの

第2章 新任リーダーが犯しやすいミス
 INSEAD 教授 マイケル・D・ワトキンス

昇進や異動は新たなる大きな試練
どのような状況にあるか評価する
組織変革の基本原則
マネジャーのみならず社員全員の自己変革を促す
【章末】STARSモデルの実践法
【章末】転職組の管理職がつまずく理由

第3章 功を急ぐと、なぜ失敗するのか
 コーポレート・エグゼクティブ・ボード プラクティス・マネジャー
 マーク・E・バン・ビューレン
 コーポレート・エグゼクティブ・ボード マネージング・ディレクター
 トッド・サファーストーン

成功するリーダーと失敗するリーダーの違い
クイック・ウィンの落とし穴
クイック・ウィンの逆説を打ち破る
集合的クイック・ウィンの重要性
【章末】クイック・ウィンを実現する
【章末】集合的クイック・ウィンの威力
【章末】新任マネジャーの成功を支援する

第4章 頼れる部下と困った部下
 ハーバード大学 ジョン・F・ケネディ行政大学院 講師 バーバラ・ケラーマン

フォロワーシップ研究は遅れている
リーダーとフォロワーの関係の変化
フォロワーの類型化
フォロワーをあらためて類型化する
賢いフォロワー、困ったフォロワー
【章末】フォロワーの分類例

第5章 リーダーが部下に翻弄される時
 ジョージ・ワシントン大学 教授 リン・R・オファーマン

ケネディが迷走してしまった理由
多数派の意見を疑う
おだてに乗るべからず
批判に耳を傾けられるか
部下の言葉よりも組織の価値観で判断する
策略家や不満分子に注意する
【章末】敵の懐に入る

第6章 だれを信頼すべきか
 ケンブリッジ・インターナショナル・グループ 創業者兼CEO
 サジュ=ニコル・A・ジョニ

信頼について多くが誤解している
信頼の種類とレベルを認識する
「第三の意見」に耳を傾ける
早い段階で「キッチン・キャビネット」を組成する
職位が高くなるほど構造的信頼は得がたい

第7章 完全なるリーダーはいらない
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 デボラ・アンコーナ
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 トーマス・W・マローン
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 教授
 ワンダ・J・オーリコフスキー
 マサチューセッツ工科大学 スローン・スクール・オブ・マネジメント 上級講師
 ピーター・M・センゲ

「分散型リーダーシップ」とは
「状況認識」に取り組む
「人間関係」を築く
「ビジョン」を描く
「創意工夫」を促す
四つの能力のバランスを図る
【章末】「状況認識」に取り組む
【章末】「人間関係」を築く
【章末】「ビジョン」を描く
【章末】「創意工夫」を促す

第8章 なぜ地位は人を堕落させるのか
 スタンフォード大学 経営大学院 教授 ロデリック・M・クラマー

なぜ権力を手にすると堕落し始めるのか
勝者はすべてを欲する
「ルールなんて凡人のためにあるものさ」
組織の頂上には滑りやすい急坂がつき物
ほめ言葉が「裸の王様」をつくる
トップであり続けるための日常習慣
前途洋々ゆえに前途多難であることに気づかない
【章末】失脚の研究
【章末】みずからのリーダーシップを「監査」してみる

強皮症と栄養障害

強皮症と栄養障害に関とうするエビデンスはあまりなかったのですが、最近2つの論文が発表されました。強皮症では栄養障害はよく認めるという当然の結果ですが…。

強皮症は膠原病で慢性的な炎症を認めますので悪液質になりやすいだけでなく、嚥下障害や消化管機能障害を認めますので飢餓にもなりやすいので、栄養管理が重要です。強皮症に限らず、すべての膠原病で悪液質を認めることがありますし、機能障害を認める疾患も多いので、リハ栄養では重要な疾患です。

膠原病と栄養に関するエビデンスは関節リウマチが圧倒的に多いのですが、その他の膠原病疾患(SLE、皮膚筋炎など)でも栄養管理が大切であることが広まればと思います。

もっとも関節リウマチでの栄養管理の重要性さえ、日本ではまだあまり広がっていないのが現状です…。関節リウマチではるいそうや悪液質が多いということだけでも、リハ栄養で伝えていかないといけませんね。

①Lijana Krause, et al: Nutritional status as marker for disease activity and severity predicting mortality in patients with systemic sclerosis. Ann Rheum Dis published online May 28, 2010. doi: 10.1136/ard.2009.123273

124人中69人(55.7%)の強皮症患者が低栄養。50%がエネルギー必要量以下の摂取量。19.8%が基礎エネルギー消費量以下の摂取量。栄養指標は生命予後と関連。

ABSTRACT
Objective: To assess and analyse nutritional status in patients with systemic sclerosis (SSc) and identify possible associations with clinical symptoms and its prognostic value.
Methods: Body mass index (BMI) and parameters of bioelectrical impedance analysis (BIA) were assessed in 124 patients with SSc and 295 healthy donors and matched for sex, age and BMI for comparisons. In patients with SSc, BMI and BIA values were compared with clinical symptoms in a cross-sectional study. In a prospective open analysis, survival and changes in the
nutritional status and energy uptake induced by nutritional treatment were evaluated.
Results: Patients with SSc had reduced phase angle (PhA) values, body cell mass (BCM), percentages of cells, increased extracellular mass (ECM) and ECM/BCM values compared with healthy donors. Malnutrition was best
refl ected by the PhA values. Of the patients with SSc, 69 (55.7%) had malnutrition that was associated with severe disease and activity. As assessed by multivariate analysis, low predicted forced vital capacity and high N-terminal(NT)-proBNP values discriminated best between good and bad nutritional status. Among different clinical parameters, low PhA values were the best predictors for SSc-related mortality. BMI values were not
related to disease symptoms or mortality. Fifty per centof patients with SSc had a lower energy uptake related to their energy requirement, 19.8% related to their basal metabolism. Nutritional treatment improved the patients’nutritional status.
Conclusions: In patients with SSc, malnutrition is common and not identifi ed by BMI. BIA parameters reflect disease severity and provide best predictors for patient survival. Therefore, an assessment of nutritional status should be performed in patients with SSc.

②Baron M, et al: Malnutrition is common in systemic sclerosis: results from the Canadian scleroderma research group database. J Rheumatol. 2009 Dec;36(12):2737-43.

malnutrition universal screening tool(MUST)で栄養スクリーニング。
586人中18%の患者で低栄養のハイリスク群。すべての強皮症患者で栄養スクリーニングが行われるべき。(私は栄養アセスメントまでしっかり行うべきだと思っていますが)

Abstract
OBJECTIVE: Systemic sclerosis (SSc) is a multisystem disease associated with significant morbidity and increased mortality. Little is known about nutritional status in SSc. We investigated the prevalence and demographic and clinical correlates of nutritional status in a large cohort of patients with SSc.
METHODS: This was a cross-sectional multicenter study of patients (n = 586) from the Canadian Scleroderma Research Group Registry. Patients were assessed with detailed clinical histories, medical examinations, and self-administered questionnaires. The primary outcome was risk for malnutrition using the "malnutrition universal screening tool" (MUST). Multiple logistic regression was used to assess the relationship between selected demographic and clinical variables and MUST categories.
RESULTS: Of the 586 patients in the study, MUST scores revealed that almost 18% were at high risk for malnutrition. The significant correlates of high malnutrition risk included the number of gastrointestinal (GI) complaints, disease duration, diffuse disease, physician global assessment of disease severity, hemoglobin, oral aperture, abdominal distension on physical examination, and physician-assessed possible malabsorption. Among 14 GI symptoms, only poor appetite and lack of a history of abdominal swelling and bloating predict MUST. These factors accounted for 24% of the variance in MUST scores.
CONCLUSION: The risk for malnutrition in SSc is moderate and is associated with shorter disease duration, markers of GI involvement, and disease severity. Patients with SSc should be screened for malnutrition, and potential underlying causes assessed and treated when possible.

2010年6月2日水曜日

断絶の時代

今日は、ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生翻訳「ドラッカー名著集7 断絶の時代」、ダイヤモンド社、2007を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00057-1

断絶の時代はもともと1969年に執筆された書籍であるが、私が生まれる前に書かれたものとは思えないほど、今読んでも通じる内容である。目次にあるように起業家の時代、グローバル化の時代、多元化の時代(組織社会)、知識の時代、まさに現代がこれらの時代である。

その中でも「最も重要なこととして、知識の性格が変わる。すでに知識が、中心的な資本、費用、資源となった。知識が、労働と仕事、学ぶこと、教えること、知識自らの本質とその使い方を変えた。」とあります。

今でこそ知識は成果につながらなければ知識とはいえないことは明らかですが、40年以上前にこのような指摘があったのは本当に驚きです。日本の教育界(文部科学省)がドラッカーの考え方を学校教育に取り入れていれば、すべての日本人が学校を卒業した後も継続学習の習慣を身に着けていたはずなのに残念です。

今でも取り入れているとはいえませんし、むしろ継続学習の習慣をあえて身につけさせない愚民化政策に力を入れているようにさえ感じます。医療人には継続学習、生涯学習能力が必須ですので、過去の学校教育は忘れて自己学習に取り組むのがよいと思います。

まえがきのおわりには以下のような記載があります。
「本書は、定量的ならざるもの、質的なもの、構造的なもの、そして認識、意味、価値、機会、優先順位を見ていく。(中略)「明日のために今日どう取り組むか」を問う。」

ドラッカーが優れた質的研究者であることに、私はしばらく気づきませんでした。近年は質的研究にも日があたるようになってきていますが、40年前に質的研究に取り組んでいる人はごく少数でした。

現在でも量的研究>質的研究と考えている人が多数派です。私はドラッカーから質的研究の大切さを学びました。量的研究より本質をつかんだ質的研究のほうが格段に説得力があることも、ドラッカーで知りました。リハ栄養も量的研究でエビデンスを蓄積することは大切ですが、リハ栄養という概念は質的な考え方でなければ作りだすことはできません。

今の時代や社会を知ることは、知識労働者として世の中で成果を上げるために大切です。そのためにもご一読をお勧めします。ただ、「もしドラ」とは異なり、易しい書籍ではありませんので、繰り返し読むことが必要です。

目次
第1部 企業家の時代

第1章 継続の時代の終わり
経済は変わらなかった
いよいよ断絶の時代に入った

第2章 新産業の誕生
近代産業の成熟化
次なる産業
知識が基盤となる

第3章 方法論としての企業家精神
再びの企業家精神
技術のダイナミクス
技術戦略の必要性
市場のダイナミクス
イノベーションのための組織

第4章 経済政策の転換
人と資金の移動の自由
グローバル経済の位置づけ
新産業におけるリーダーシップ

第2部 グローバル化の時代

第5章 経済のグローバル化
グローバル経済の出現
ニーズのみのグローバル化
通貨の必要性
グローバル企業の役割
グローバル経済はグローバル企業を必要とする

第6章 途上国の貧困
人種間の格差
閉ざされた発展への道
資金と人材
社会と文化の基盤
経済発展に伴う危険

第7章 経済学の無効
経済学の無能ぶり
利益、技術、知識への理解
グローバル経済、マクロ経済、ミクロ経済
新しい経済学

第3部 組織社会の時代

第8章 多元化した社会
組織社会の出現
新種の多元社会
組織に関わる理論の必要

第9章 多元社会の理論
組織の役割とは
目的に関わる二つの決定
組織のマネジメント
組織の社会的責任とは
社会のニーズを機会とする
組織の正統性

第10章 政府の病い
政府への幻滅
統治不能
政府が不得手とすること
政府活動の再民間化
企業は事業をやめられる
活力ある政府

第11章 組織社会に生きる
意思決定の責任
自由の守りとしての組織
離脱の自由
オンブズマンの役割
善意による越権
機会としての組織

第4部 知識の時代

第12章 知識経済への移行
知識が生産要素
知識の適用の歴史
知識は人生を変える
知識労働の登場
学校教育の延長

第13章 仕事の変化
知識労働の動機づけ
第二の人生
六五歳では遅い
未熟練労働者の問題
アメリカのマイノリティ問題

第14章 教育革命の必然
一般高等教育のルーツ
知識の裏づけをもつ技能
知覚と感性
学校教育と継続教育
経験の重要性
青年期の長期化
必然の教育革命
教育方法の陳腐化
学ぶことと教えること
教えることと監督すること
学校の恥

第15章 問われる知識
知識の意味合いの変化
知識の社会的意味
頭脳流出の問題
知識の探究の優先順位
知識そのものへの疑問
知識ある者の責任
知識の未来

2010年6月1日火曜日

1st Abbott International Conference for Cancer Nutrition Therapy

1st Abbott International Conference for Cancer Nutrition Therapyという会議の記事が、下記のHPに掲載されています。

http://www.vyzivapacientov.sk/documents/ProSure_Newsletter.pdf

アボットさんの会議なので、プロシュア(EPAを含む栄養剤)の有効性、エビデンスを示す方向に行くのですが、紹介する価値はあると感じました。また、会議の様子の写真を見る限りかなりの参加者で、アボットさんの力を改めて感じます。

ここでは悪液質の診断基準と段階分けの部分を紹介します。以前紹介した論文(Muscaritoli M, et al: Consensus definition of sarcopenia, cachexia and pre-cachexia: Joint document elaborated by Special Interest Groups (SIG) “cachexia-anorexia in chronic wasting diseases” and “nutrition in geriatrics”. Clinical Nutrition (2010), doi:10.1016/j.clnu.2009.12.004) とは少し異なります。訳ではありませんが、コメントを入れていきます。

Professor Fearon began the conference by defining cancer cachexia using an evidence-based mathematical model based on patients with advanced pancreatic cancer.
→あくまで膵癌患者をベースにしたモデルです。他にも悪液質になる疾患はいろいろありますが…。

Three indices are included in the definition: weight loss > or = to 10%, <1500> 10 mg/L.1 He went on to state that cancer cachexia is a multifactorial syndrome that cannot be fully reversed by conventional nutritional support.
→診断基準を、①体重減少10%以上、②食事摂取量1500kcal以下、③CRP1.0mg/dl以上の3つとしています。②は食欲不振と同義に近いと個人的には感じています。

Cancer cachexia has been described as progressing along a continuum of 3 phases of increasing severity before resulting in death.
→悪液質を3つの時期に分類しています。3つに分けるというのは、以前紹介したのと同じです。

– The first phase is described as precachexia where weight loss may be ≤ 5% and some metabolic and endocrine changes may be occurring.
→前悪液質は体重減少5%以下程度。

– The second phase is described as cachexia with weight loss ≥ 5% often
with reduced food intake and systemic inflammation.
→悪液質は体重減少5%以上、食事摂取量低下、全身性炎症を認めることが多い。

– The third phase is described as refractory cachexia where there is severe muscle wasting, low performance scores, immune compromise, and expected survival of < 3 months.
→難治性悪液質は著明な筋萎縮、身体機能低下、免疫機能低下を認め、生命予後は3カ月未満。

以前紹介した論文と多少の違いはありますが、悪液質の診断には体重減少、食事摂取量(食欲)低下、CRP陽性が重要で、早期診断・治療の方向に向かっていることは間違いないと感じます。

NSTで栄養障害の患者を回診した時に、飢餓と悪液質(前悪液質を含めて)のいずれかか両方かを鑑別して、それにあわせて治療方針を変えるようになるとよいと思います。

COPDへのBCAA投与の効果

COPD(慢性閉塞性肺疾患)に対するBCAA(分岐鎖アミノ酸)投与の効果をみた最近の論文を2つ紹介します。いずれもイタリアの論文です。

対象者は少ないのですが、どちらの論文もランダム化比較試験で、BCAA投与群で体重の有意な増加を認めています(①は12週間のBCAA投与で12ヶ月後で6kg、②は12週間のBCAA投与で12週後で3.8kg)。

これだけ見るとCOPDの患者にはBCAA製剤を使用したほうがよい気になりますが、個人的な印象では体重増加の効果が大きすぎるように感じます。RCTではありますが、エビデンスの質の高い論文とは言いづらい気がします。

COPDに対する栄養療法はなかなか効果を出せなくて、最近になってようやく有効という論文が出始めている段階です。

なかなか効果が出ないのは、COPDによる栄養障害の場合、単なる飢餓(エネルギー摂取量不足)ではなく、悪液質を認めるからです。悪液質の早期発見、早期治療がCOPDの栄養管理では求められます。

そうすると、COPD患者には単にBCAAを投与すればよいのではなく、包括的呼吸リハの中で、薬物療法、運動療法、酸素療法、生活指導を同時に行い、さらに適切にエネルギー摂取量を確保しておくことが必要条件だと思います。

COPD患者にNSTが介入して、栄養管理(適切なエネルギー量投与)も含めた包括的リハを行っているのに、栄養改善が難しい場合には、BCAA投与を検討してよいと考えます。

①Dal Negro RW, et al: Comprehensive effects of supplemented essential amino acids in patients with severe COPD and sarcopenia. Monaldi Arch Chest Dis. 2010 Mar;73(1):25-33.

AIM: Aim of the study was to investigate whether or not oral supplementation of essential amino acids (EAAs) may improve body composition, muscle metabolism, physical activity, cognitive function, and health status in a population of subjects with severe chronic obstructive pulmonary disease (COPD) and sarcopenia. METHODS: Thirty-two patients (25 males) (FEV1/FVC < 40% predicted), age 75 +/- 7 years, were randomised (n = 16 in both groups) to receive 4 gr/bid EAAs or placebo according to a double-blind design. When entered the study (T0), after four (T4), and after twelve (T12) weeks of treatments, body weight, fat free-mass (FFM), plasma lactate concentration (micromol/l), arterial PaCO2 and PaO2, physical activity (n degree steps/day), cognitive function (Mini Mental State Examination; MMSE), health status (St. George's Respiratory Questionnaire; SGRQ) were measured. RESULTS: EAAs supplemented, but not patients assuming placebo, progressively improved all baseline variables overtime. In particular, at T12 of EAAs supplementation, body weight (BW) increased by 6 Kg (p = 0.002), FFM by 3.6 Kg (p = 0.05), plasma lactate decreased from 1.6 micromol/l to 1.3 micromol/l (p = 0.023), PaO2 increased by 4.6 mmHg (p = 0.01), physical activity increased by 80% (p = 0.01). Moreover, the score for cognitive dysfunction improved from 19.1 scores to 20.8 (p = 0.011), while the SRGQ score also improved from 723 to 69.6 even though this trend did not reach the statistical significance. CONCLUSIONS. A three-month EAAs supplementation may have comprehensive effects on nutritional status; muscle energy metabolism; blood oxygen tension, physical autonomy; cognitive function, and perception of health status in patients with severe COPD and secondary sarcopenia.

②Baldi S, et al: Fat-free mass change after nutritional rehabilitation in weight losing COPD: role of insulin, C-reactive protein and tissue hypoxia. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2010 Feb 18;5:29-39.

Abstract
BACKGROUND: Fat-free mass (FFM) depletion marks the imbalance between tissue protein synthesis and breakdown in chronic obstructive pulmonary disease (COPD). To date, the role of essential amino acid supplementation (EAAs) in FFM repletion has not been fully acknowledged. A pilot study was undertaken in patients attending pulmonary rehabilitation. METHODS: 28 COPD patients with dynamic weight loss > 5% over the last 6 months were randomized to receive EAAs embedded in a 12-week rehabilitation program (EAAs group n = 14), or to the same program without supplementation (C group n = 14). Primary outcome measures were changes in body weight and FFM, using dual X-ray absorptiometry (DEXA). RESULTS: At the 12th week, a body weight increment occurred in 92% and 15% of patients in the EAAs and C group, respectively, with an average increase of 3.8 +/- 2.6 kg (P = 0.0002) and -0.1 +/- 1.1 kg (P = 0.81), respectively. A FFM increment occurred in 69% and 15% of EAAs and C patients, respectively, with an average increase of 1.5 +/- 2.6 kg (P = 0.05) and -0.1 +/- 2.3 kg (P = 0.94), respectively. In the EAAs group, FFM change was significantly related to fasting insulin (r(2) 0.68, P < 0.0005), C-reactive protein (C-RP) (r(2) = 0.46, P < 0.01), and oxygen extraction tension (PaO(2x)) (r(2) = 0.46, P < 0.01) at end of treatment. These three variables were highly correlated in both groups (r > 0.7, P < 0.005 in all tests). CONCLUSIONS: Changes in FFM promoted by EAAs are related to cellular energy and tissue oxygen availability in depleted COPD. Insulin, C-RP, and PaO(2x) must be regarded as clinical markers of an amino acid-stimulated signaling to FFM accretion.