今日は、ピーター・F・ドラッカー著、上田惇生翻訳「ドラッカー名著集7 断絶の時代」、ダイヤモンド社、2007を紹介します。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00057-1
断絶の時代はもともと1969年に執筆された書籍であるが、私が生まれる前に書かれたものとは思えないほど、今読んでも通じる内容である。目次にあるように起業家の時代、グローバル化の時代、多元化の時代(組織社会)、知識の時代、まさに現代がこれらの時代である。
その中でも「最も重要なこととして、知識の性格が変わる。すでに知識が、中心的な資本、費用、資源となった。知識が、労働と仕事、学ぶこと、教えること、知識自らの本質とその使い方を変えた。」とあります。
今でこそ知識は成果につながらなければ知識とはいえないことは明らかですが、40年以上前にこのような指摘があったのは本当に驚きです。日本の教育界(文部科学省)がドラッカーの考え方を学校教育に取り入れていれば、すべての日本人が学校を卒業した後も継続学習の習慣を身に着けていたはずなのに残念です。
今でも取り入れているとはいえませんし、むしろ継続学習の習慣をあえて身につけさせない愚民化政策に力を入れているようにさえ感じます。医療人には継続学習、生涯学習能力が必須ですので、過去の学校教育は忘れて自己学習に取り組むのがよいと思います。
まえがきのおわりには以下のような記載があります。
「本書は、定量的ならざるもの、質的なもの、構造的なもの、そして認識、意味、価値、機会、優先順位を見ていく。(中略)「明日のために今日どう取り組むか」を問う。」
ドラッカーが優れた質的研究者であることに、私はしばらく気づきませんでした。近年は質的研究にも日があたるようになってきていますが、40年前に質的研究に取り組んでいる人はごく少数でした。
現在でも量的研究>質的研究と考えている人が多数派です。私はドラッカーから質的研究の大切さを学びました。量的研究より本質をつかんだ質的研究のほうが格段に説得力があることも、ドラッカーで知りました。リハ栄養も量的研究でエビデンスを蓄積することは大切ですが、リハ栄養という概念は質的な考え方でなければ作りだすことはできません。
今の時代や社会を知ることは、知識労働者として世の中で成果を上げるために大切です。そのためにもご一読をお勧めします。ただ、「もしドラ」とは異なり、易しい書籍ではありませんので、繰り返し読むことが必要です。
目次
第1部 企業家の時代
第1章 継続の時代の終わり
経済は変わらなかった
いよいよ断絶の時代に入った
第2章 新産業の誕生
近代産業の成熟化
次なる産業
知識が基盤となる
第3章 方法論としての企業家精神
再びの企業家精神
技術のダイナミクス
技術戦略の必要性
市場のダイナミクス
イノベーションのための組織
第4章 経済政策の転換
人と資金の移動の自由
グローバル経済の位置づけ
新産業におけるリーダーシップ
第2部 グローバル化の時代
第5章 経済のグローバル化
グローバル経済の出現
ニーズのみのグローバル化
通貨の必要性
グローバル企業の役割
グローバル経済はグローバル企業を必要とする
第6章 途上国の貧困
人種間の格差
閉ざされた発展への道
資金と人材
社会と文化の基盤
経済発展に伴う危険
第7章 経済学の無効
経済学の無能ぶり
利益、技術、知識への理解
グローバル経済、マクロ経済、ミクロ経済
新しい経済学
第3部 組織社会の時代
第8章 多元化した社会
組織社会の出現
新種の多元社会
組織に関わる理論の必要
第9章 多元社会の理論
組織の役割とは
目的に関わる二つの決定
組織のマネジメント
組織の社会的責任とは
社会のニーズを機会とする
組織の正統性
第10章 政府の病い
政府への幻滅
統治不能
政府が不得手とすること
政府活動の再民間化
企業は事業をやめられる
活力ある政府
第11章 組織社会に生きる
意思決定の責任
自由の守りとしての組織
離脱の自由
オンブズマンの役割
善意による越権
機会としての組織
第4部 知識の時代
第12章 知識経済への移行
知識が生産要素
知識の適用の歴史
知識は人生を変える
知識労働の登場
学校教育の延長
第13章 仕事の変化
知識労働の動機づけ
第二の人生
六五歳では遅い
未熟練労働者の問題
アメリカのマイノリティ問題
第14章 教育革命の必然
一般高等教育のルーツ
知識の裏づけをもつ技能
知覚と感性
学校教育と継続教育
経験の重要性
青年期の長期化
必然の教育革命
教育方法の陳腐化
学ぶことと教えること
教えることと監督すること
学校の恥
第15章 問われる知識
知識の意味合いの変化
知識の社会的意味
頭脳流出の問題
知識の探究の優先順位
知識そのものへの疑問
知識ある者の責任
知識の未来
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