2011年12月25日日曜日

細胞が自分を食べる‐オートファジーの謎

水島昇著、細胞が自分を食べる‐オートファジーの謎、PHPサイエンス・ワールド新書を紹介します。

http://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-80071-4

最初にオートファジーの定義をWikipediaから引用します。以下、下記HPからの引用です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%B8%E3%83%BC
「オートファジー (Autophagy) は、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つ。自食(じしょく)とも呼ばれる。酵母からヒトにいたるまでの真核生物に見られる機構であり、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行ったり、細胞質内に侵入した病原微生物を排除することで生体の恒常性維持に関与している。」

以上、引用です。

この書籍はオートファジーに関する初めての書籍で、わかりやすく解説されています。リハ栄養やサルコペニアとの関連でいうと、飢餓や侵襲のとき、オートファジーが亢進して、筋肉などの蛋白質の分解が増えます。適度なオートファジーは生体に必須であり、オートファジーが起こらないとアミノ酸プールを満たすことができず、飢餓や侵襲を乗りきることが難しくなります。

一方、侵襲時の過度なオートファジーは多くの細胞死につながります。そのため、外科代謝・侵襲分野での関心が高く、Surgery Frontierの2011年6月号では、オートファジーが特集されています。

http://www.m-review.co.jp/shop/goods.html?item_base_id=3167&PHPSESSID=jp6cec6h9lv8u9qp0594lfj6u3

特集によせて
1.オートファジーの膜形成機構と生体における役割
2.オートファジー研究の位置付けと動向
3.オートファジーの測定・解析方法
4.オートファジー関連疾患
5.癌に対する新規治療とオートファジー

また、アンチエイジング領域では、カロリー制限で寿命が延長することが報告されています。この要因の1つとして、カロリー制限(一時的もしくは軽度の飢餓)によってオートファジーが亢進して、細胞内をきれいにできる(機能の低下したミトコンドリアを処理することで酸化ストレスを少なくする)ことの可能性はあります。

線虫の研究では断続的なカロリー制限(いわゆるプチ断食)でも寿命延長効果があることがわかっているそうです。ただし、オートファジーが関連しているかどうかは不明とのことです。栄養とオートファジーの関連が深いことは確かなようですので、関心のある方は、この書籍でオートファジーの基本を学ぶことをお勧めします。

目次
第1章 オートファジー、細胞内の大規模分解系
第2章 酵母でブレークしたオートファジー研究
第3章 自分を食べて飢餓に耐える
第4章 細胞の性質を変えるためのオートファジー、発生と分化
第5章 細胞内を浄化するオートファジー
第6章 相手をねらいうちする「選択的オートファジー」
第7章 免疫系でも活躍するオートファジー
第8章 オートファジーの研究最前線

なお「オートファジーの現場をとらえる-細胞が自分を食べる理由-」というHPも参照になりますので、あわせて紹介しておきます。

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/45/research_21.html

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