内科指導医に役立つ教育理論その3として、「発達の最近接性領域」、「構成主義」、「協同的学習」について、西城卓也「内科指導医に役立つ教育理論」(日内会誌100: 1987-1993, 2011)より引用紹介させていただきます。
まず「発達の最近接性領域」です。Vygotskyは学びの段階を単独で到達できる段階と、援助を受けて到達できる段階のふたつがあると構造化しています。そして、その2つの段階の間を、発達の最近接性領域(zone of proximal development)とよび、学びはその学習者がジャンプする程度の領域で行われるべきであると提示しました。
身の丈に合った練習を提供するには、学習者の発達を指導者が把握しながら、レベルを調節しなければならないということになります。無茶ぶりは「突然」という意味ならまだ許されることもありますが、「段階やレベルが違いすぎる」という意味では許されないということですね。反省です…。
次に「構成主義」です。構成主義によれば、知識というものは、その個人の有する知識体系に、新しい知識が自らの作業によって組み込まれ構成されていくものだそうです。自分で試行錯誤して身に付けた知識のほうがよく記憶できて応用できるようです。
従って指導者の役割は、講義により一方的に知識を「移植」することではなく、学習者自身の思考活動を促進させることです。その際、学習者が何を知っているかを把握することが、指導者の試金石となります。
ただこれは学習者自身も自分が何を知っているかを把握すべきでしょう。「何を知らないかも知らない」のでは、学習をどこから始めればよいのかの判断が難しいです。実際には理想的な指導者やロールモデルに出会える方ばかりではありませんので、その際には学習者によるセルフラーニングが必要です。現代はセルフラーニングを行いやすい時代ではありますが、構成主義の考え方は重要だと考えます。
最後に「協同的学習」です。「勉強」と「学習」の定義について、佐藤はこれらの違いを「出会いと対話」であるとしています(佐藤学、2004)。
勉強とは、教師の説明する教科書の内容を理解し暗記する座学と表現しています。それに対して、学習とは、概念・モデル・理論に触媒された議論・実験・経験によって遂行される活動的な学びであるとしています。
臨床教育に推奨されるべき学習方法は、主に小グループで行われる協同的学習(collaborative learning)です。協同的学習では、様々なレベルのグループメンバー間での協力が推奨されます。相互の考えや知識を惜しみなく議論を通じて提供しあい、互いが学び成長し合っていくことが学習の目的です。
協同的学習では、学びは様々な他者や知識との「出会い」であり、交流的な「対話」こそ、その強力な学習方法となります。ここで指導者の役割は、情報提供者というよりもファシリテーターになります。
リハ栄養はリハと栄養の「出会い」であり、多くの職種が実際に「出会い」、「対話」を深めることが重要です。リハ栄養研究会に限りませんが、研究会を「勉強」の場ではなく、「学習」の場にしたいと考えます。
2011年7月28日木曜日
栄養に関連したがんの補助代替療法のレビュー論文
栄養に関連したがんの補助代替療法のレビュー論文を紹介します。
Belinda Morey and Teresa Brown: A review of evidence-based practice in nutrition related complementary therapies: improving the knowledge of dietitians. CancerForum Volume 35 Number 2 July 2011
以下のHPで全文見ることができます。
http://www.cancerforum.org.au/file/2011/July/CF11July_112-122.pdf
補助代替療法を、有効で害なし、有効だが有害の可能性あり、無効、有害の可能性ありの4つに分類して、それぞれ表にまとめています。ただし、全体的にエビデンスレベルは弱く、有効で害なしのものは少ないです。
有効で害なしで、エビデンスレベルがBのものは、大腸がんへのカルシウムと乳がんへのビタミンEしかありませんでした。恥ずかしながら私はどちらも知りませんでした…。
一方、有害の可能性ありで、エビデンスレベルがAのものは、1日所要量を超えるビタミン・ミネラル、がんの予防と治療としての抗酸化サプリメント(Antioxidant supplementation)、肺がんへのβカロチン、乳がんへの植物性エストロゲンです。
またエビデンスレベルBのものとして、がん悪液質を除きエイコサペンタエン酸(EPA)も含まれています。EPAも決して副作用を無視できるわけではないのですね。
補助代替療法のエビデンスはまだ弱いものが多いですが、臨床研究は少なからず行われていますので、ときどき系統的レビューで有効性をチェックする必要があると感じます。
Abstract
Use of complementary and alternative medicine in cancer continues to increase and there is a need for health professionals to provide evidence-based information. The aim of this review was to determine whether nutritional supplementation, as a complementary and integrative therapy during oncology treatment, has either improved or adversely affected outcomes. A literature review and appraisal of the hierarchy of evidence until February 2010 were undertaken, excluding individual studies, animal studies, in vitro studies and anecdotal reports. The search results included 52 articles for inclusion. The summary of evidence was divided into four main sections: supplements that had a potential positive effect and no evident harm, supplements that had a potential positive effect but also had side-effects, supplements that had no effect, and supplements that had potential negative/harmful effects. There is a significant volume of evidence concerning nutrition related complementary therapies, however the evidence is generally weak and there are multiple variables making it difficult to extrapolate generalised recommendations for any one type of supplement. The challenge remains to provide strong evidence to support complementary and integrative therapy as part of integrated mainstream treatment therapies.
Belinda Morey and Teresa Brown: A review of evidence-based practice in nutrition related complementary therapies: improving the knowledge of dietitians. CancerForum Volume 35 Number 2 July 2011
以下のHPで全文見ることができます。
http://www.cancerforum.org.au/file/2011/July/CF11July_112-122.pdf
補助代替療法を、有効で害なし、有効だが有害の可能性あり、無効、有害の可能性ありの4つに分類して、それぞれ表にまとめています。ただし、全体的にエビデンスレベルは弱く、有効で害なしのものは少ないです。
有効で害なしで、エビデンスレベルがBのものは、大腸がんへのカルシウムと乳がんへのビタミンEしかありませんでした。恥ずかしながら私はどちらも知りませんでした…。
一方、有害の可能性ありで、エビデンスレベルがAのものは、1日所要量を超えるビタミン・ミネラル、がんの予防と治療としての抗酸化サプリメント(Antioxidant supplementation)、肺がんへのβカロチン、乳がんへの植物性エストロゲンです。
またエビデンスレベルBのものとして、がん悪液質を除きエイコサペンタエン酸(EPA)も含まれています。EPAも決して副作用を無視できるわけではないのですね。
補助代替療法のエビデンスはまだ弱いものが多いですが、臨床研究は少なからず行われていますので、ときどき系統的レビューで有効性をチェックする必要があると感じます。
Abstract
Use of complementary and alternative medicine in cancer continues to increase and there is a need for health professionals to provide evidence-based information. The aim of this review was to determine whether nutritional supplementation, as a complementary and integrative therapy during oncology treatment, has either improved or adversely affected outcomes. A literature review and appraisal of the hierarchy of evidence until February 2010 were undertaken, excluding individual studies, animal studies, in vitro studies and anecdotal reports. The search results included 52 articles for inclusion. The summary of evidence was divided into four main sections: supplements that had a potential positive effect and no evident harm, supplements that had a potential positive effect but also had side-effects, supplements that had no effect, and supplements that had potential negative/harmful effects. There is a significant volume of evidence concerning nutrition related complementary therapies, however the evidence is generally weak and there are multiple variables making it difficult to extrapolate generalised recommendations for any one type of supplement. The challenge remains to provide strong evidence to support complementary and integrative therapy as part of integrated mainstream treatment therapies.
2011年7月27日水曜日
内科指導医に役立つ教育理論その2
内科指導医に役立つ教育理論その2として、まずTARGETモデルを紹介します。このモデルは私はこの論文で初めて知りました。
これは学習者のやる気を支援するモデルで、Task, Autonomy, Recognition, Grouping, Evaluation, Timeの頭文字をとったものです。成人学習理論はある程度自主的に学ぼうとするやる気のある学習者であることが前提になっていますが、実際にはモチベーションが低い学習者も少なくありません。そのためのモデルです。
TARGETのそれぞれの内容と例として、下記のように記載されています。
T:学習者のタスクがどのような意義深いものであるかを明確にする
例:学習の目的を説明する、目標を自主的に設定させる
A:学習者の志向に合わせた選択性・責任を持たせる
例:選択できるように複数の課題を提示する、司会進行を任せる
R:学習者として認識し、学びの進捗を承認する
例:学習者として自己評価させる、賞を与える
G:学習者同士の交流を促す
例:隣同士で話し合わせる、小グループ討議を用いて学習する
E:学習者の評価・報告の機会を設ける
例:フィードバックをする、試験を実施する
"Assessment drives learning"とはよく言われる格言である
T:学習する時間や期間の決定にも学習者を参加させる
例:スケジュールにゆとりを持たせる、学習のペースを学習者に委ねる、業務から離れ落ち着いて学習する時間を確保する
これは学習者の支援だけでなく、自己学習の動機づけにも有効だと考えます。学習へのモチベーションが低いと感じている方は、自分にTARGETモデルを当てはめてみてはいかがでしょうか。
次に熟達化理論を紹介します。これは私は聞いたことがあります。
プロレベルになった人は共通して10年にわたる1万時間以上の、時に厳しい練習を積んでいるそうです。これを「熟達の10年ルール」といいます。
しかし、10年目以上経験した医療人がすべてプロレベルかというと、「まずいラーメン屋は20年やってもまずい」と一緒です…。ラーメン店なら本当は20年もやる前に店がつぶれるとは思いますが、まずい医療人は20年やっても残念ながら退職しません…。
そこで単に10年間、1万時間だけでなく、「よく考えられた練習(deliberate practice)」を積むことが重要だそうです。「よく考えられた練習(deliberate practice)」の特徴を引用します。
・その人の技術を向上させるために最適な難易度に設定されている。
・練習の結果に対して、フィードバックがある。
・自分で、結果の良し悪しを評価している。
・本人がやる気を出して練習している。
・継続的に練習している。
・課題の楽しさを教えてくれるコーチがいる。
・練習に専念できるよう環境などへの支援がある。
これらの下で10年間、1万時間の練習や経験を積むことで、プロレベルに到達します。医療人でいえば、自分の身の丈にあった症例経験・研修を積み、その成果を継続的に指導者や自らで評価し、その喜びを共有できるような同僚・職場が存在することが重要といえます。このあたりをリハ栄養研究会でうまく導入したいと思います。
これは学習者のやる気を支援するモデルで、Task, Autonomy, Recognition, Grouping, Evaluation, Timeの頭文字をとったものです。成人学習理論はある程度自主的に学ぼうとするやる気のある学習者であることが前提になっていますが、実際にはモチベーションが低い学習者も少なくありません。そのためのモデルです。
TARGETのそれぞれの内容と例として、下記のように記載されています。
T:学習者のタスクがどのような意義深いものであるかを明確にする
例:学習の目的を説明する、目標を自主的に設定させる
A:学習者の志向に合わせた選択性・責任を持たせる
例:選択できるように複数の課題を提示する、司会進行を任せる
R:学習者として認識し、学びの進捗を承認する
例:学習者として自己評価させる、賞を与える
G:学習者同士の交流を促す
例:隣同士で話し合わせる、小グループ討議を用いて学習する
E:学習者の評価・報告の機会を設ける
例:フィードバックをする、試験を実施する
"Assessment drives learning"とはよく言われる格言である
T:学習する時間や期間の決定にも学習者を参加させる
例:スケジュールにゆとりを持たせる、学習のペースを学習者に委ねる、業務から離れ落ち着いて学習する時間を確保する
これは学習者の支援だけでなく、自己学習の動機づけにも有効だと考えます。学習へのモチベーションが低いと感じている方は、自分にTARGETモデルを当てはめてみてはいかがでしょうか。
次に熟達化理論を紹介します。これは私は聞いたことがあります。
プロレベルになった人は共通して10年にわたる1万時間以上の、時に厳しい練習を積んでいるそうです。これを「熟達の10年ルール」といいます。
しかし、10年目以上経験した医療人がすべてプロレベルかというと、「まずいラーメン屋は20年やってもまずい」と一緒です…。ラーメン店なら本当は20年もやる前に店がつぶれるとは思いますが、まずい医療人は20年やっても残念ながら退職しません…。
そこで単に10年間、1万時間だけでなく、「よく考えられた練習(deliberate practice)」を積むことが重要だそうです。「よく考えられた練習(deliberate practice)」の特徴を引用します。
・その人の技術を向上させるために最適な難易度に設定されている。
・練習の結果に対して、フィードバックがある。
・自分で、結果の良し悪しを評価している。
・本人がやる気を出して練習している。
・継続的に練習している。
・課題の楽しさを教えてくれるコーチがいる。
・練習に専念できるよう環境などへの支援がある。
これらの下で10年間、1万時間の練習や経験を積むことで、プロレベルに到達します。医療人でいえば、自分の身の丈にあった症例経験・研修を積み、その成果を継続的に指導者や自らで評価し、その喜びを共有できるような同僚・職場が存在することが重要といえます。このあたりをリハ栄養研究会でうまく導入したいと思います。
2011年7月26日火曜日
日本福祉大学・栄養学
日本福祉大学の授業で栄養学として「リハビリテーション栄養について学ぶ」というテーマの科目がありました。
http://www.n-fukushi.ac.jp/syllabus/syllabus2011/kenko_kamoku/150_GA188401.html
しかもテキストが「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養」となっていました。大学でリハ栄養を学ぶ機会を作ってくださり、とても嬉しいです。学生のうちにリハ栄養の考え方、基本だけでも知っておいてもらえると、社会人になってからかなり違うのではないかと感じています。
http://www.n-fukushi.ac.jp/syllabus/syllabus2011/kenko_kamoku/150_GA188401.html
しかもテキストが「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養」となっていました。大学でリハ栄養を学ぶ機会を作ってくださり、とても嬉しいです。学生のうちにリハ栄養の考え方、基本だけでも知っておいてもらえると、社会人になってからかなり違うのではないかと感じています。
内科指導医に役立つ教育理論
日本内科学会雑誌の最新号(2011年7月号)の医学と医療の最前線に、西城卓也先生が執筆された「内科指導医に役立つ教育理論」(日内会誌100: 1987-1993, 2011)が掲載されています。
医学教育理論のエッセンスがわかりやすく紹介されていて、すべての医療人に有益な内容だと思いますので、その一部をここで紹介させていただきます。ちなみに西城卓也先生とは「第1回PC医のための臨床研究デザイン塾」でご一緒させていただきました。その後も医学教育のプロとして着実に成長されていて素晴らしいです。
欧州医学教育学会会長のHardenらは、医学教育に関わる医師の12の役割を提示しています。原稿では図ですが、ここでは言葉で示します。
学習支援者
現場でのロールモデル
教育者としてのロールモデル
講義者
臨床指導医
資料作成者
シラバス・手帳製作者
学習コース責任者
カリキュラム立案者
カリキュラム評価者
評価者(学生の)
メンター
これらは以下の6つに大別できます。
ファシリテーター
ロールモデル
情報提供者
教育資源作成者
カリキュラム責任者
評価者
教育者の役割は実に幅広いことが分かります。これは大変です(笑)。リハ栄養に関して自分を振り返ってみると、情報提供はこのブログで、教育資源はリハ栄養の書籍で作っているかもしれませんが、カリキュラムはまったく考えていませんし、その結果、当然評価者でもありません。ファシリテーターやロールモデルにもなっていないと感じます。
来年全国でリハ栄養セミナーを企画する予定ですので、リハ栄養のカリキュラムや学習コースといったものを、より真剣に考えなければいけません。書籍に執筆したことをそのまま伝える以上の内容にしたいと思います。
次に成人学習理論として、Knowlesによる5つの特徴が掲載されています。
成人である学習者は、
①独立心が強く、自己のペースで学習することを好む
②既に幾多の経験があり、それが学習の糧となる
③実際に役立つ学習に価値を置く
④差し迫る問題を解決するための学習を好む
⑤強制ではなく自らの学習意欲に駆られて学ぶ
このように小中学生の学習(勉強という言葉のほうが適切かもしれません)と成人学習では、方法論がかなり異なってきます。このことに十分配慮したセミナーや研修会を開催しなければ…と最近、改めて痛感しています。
どんな内容であれ成人学習の場合には、一方的な講義の学習効率が低いことは明らかであり、小グループ学習(協同的学習)やファシリテーションを重視しなければと考えます。
「絶対に正しい○○の知識を一方的に授ける」なんていうのは、成人学習では問題外に近いと感じます。私が関与している一部の研究会でこのような雰囲気になる危険性が出てきていますので、こうならないように注意して行動したいと思います。他は後日紹介したいと思います。
医学教育理論のエッセンスがわかりやすく紹介されていて、すべての医療人に有益な内容だと思いますので、その一部をここで紹介させていただきます。ちなみに西城卓也先生とは「第1回PC医のための臨床研究デザイン塾」でご一緒させていただきました。その後も医学教育のプロとして着実に成長されていて素晴らしいです。
欧州医学教育学会会長のHardenらは、医学教育に関わる医師の12の役割を提示しています。原稿では図ですが、ここでは言葉で示します。
学習支援者
現場でのロールモデル
教育者としてのロールモデル
講義者
臨床指導医
資料作成者
シラバス・手帳製作者
学習コース責任者
カリキュラム立案者
カリキュラム評価者
評価者(学生の)
メンター
これらは以下の6つに大別できます。
ファシリテーター
ロールモデル
情報提供者
教育資源作成者
カリキュラム責任者
評価者
教育者の役割は実に幅広いことが分かります。これは大変です(笑)。リハ栄養に関して自分を振り返ってみると、情報提供はこのブログで、教育資源はリハ栄養の書籍で作っているかもしれませんが、カリキュラムはまったく考えていませんし、その結果、当然評価者でもありません。ファシリテーターやロールモデルにもなっていないと感じます。
来年全国でリハ栄養セミナーを企画する予定ですので、リハ栄養のカリキュラムや学習コースといったものを、より真剣に考えなければいけません。書籍に執筆したことをそのまま伝える以上の内容にしたいと思います。
次に成人学習理論として、Knowlesによる5つの特徴が掲載されています。
成人である学習者は、
①独立心が強く、自己のペースで学習することを好む
②既に幾多の経験があり、それが学習の糧となる
③実際に役立つ学習に価値を置く
④差し迫る問題を解決するための学習を好む
⑤強制ではなく自らの学習意欲に駆られて学ぶ
このように小中学生の学習(勉強という言葉のほうが適切かもしれません)と成人学習では、方法論がかなり異なってきます。このことに十分配慮したセミナーや研修会を開催しなければ…と最近、改めて痛感しています。
どんな内容であれ成人学習の場合には、一方的な講義の学習効率が低いことは明らかであり、小グループ学習(協同的学習)やファシリテーションを重視しなければと考えます。
「絶対に正しい○○の知識を一方的に授ける」なんていうのは、成人学習では問題外に近いと感じます。私が関与している一部の研究会でこのような雰囲気になる危険性が出てきていますので、こうならないように注意して行動したいと思います。他は後日紹介したいと思います。
2011年7月25日月曜日
知的障害者におけるサルコペニアと身体機能低下の関係
知的障害者におけるサルコペニアと身体機能低下の関係をみた論文を紹介します。
Carmeli E, Imam B, Merrick J: The relationship of pre-sarcopenia (low muscle mass) and sarcopenia (loss of muscle strength) with functional decline in individuals with intellectual disability (ID). Arch Gerontol Geriatr. 2011 Jul 15. [Epub ahead of print]
内容的には握力よりも大腿四頭筋筋力のほうがADLと強く相関しているという論文です。ですので、サルコペニアで筋力低下を評価する場合、大腿四頭筋筋力を定量的に評価できれば、握力よりも優れています。ただ、握力のほうが簡便に筋力を定量化できるので、臨床現場では握力を用いていることが多いのが現状です。
この論文で一番気になるのは、前サルコペニアを筋肉量が少ない(low muscle mass)、サルコペニアを筋力低下(loss of muscle strength)とタイトルに記載していることです。サルコペニアの定義が混乱していることをよく表しているタイトルだと思うのは私だけでしょうか。
Abstract
The aim was to determine the association between loss of muscle mass, loss of muscle strength, and physical ability in individuals with ID. Upper and lower extremity strength, muscle mass and muscle quality (MQ) were calculated. Physical ability was measured according to the Katz activities of daily living (ADL), stair climb test, and sit-to-stand test. We found a strong correlation between quadriceps strength and physical ability in ADL (r=0.92 for males, and r=0.88 for females), and a low-moderate correlation between hand grip strength and physical ability in ADL (r=0.40 for males, and r=0.46 for females). MQ showed a strong relationship between pre-sarcopenia and sarcopenia. Quadriceps strength is a promising measure of age-related muscle changes and it is strongly associated with physical and functional decline.
Carmeli E, Imam B, Merrick J: The relationship of pre-sarcopenia (low muscle mass) and sarcopenia (loss of muscle strength) with functional decline in individuals with intellectual disability (ID). Arch Gerontol Geriatr. 2011 Jul 15. [Epub ahead of print]
内容的には握力よりも大腿四頭筋筋力のほうがADLと強く相関しているという論文です。ですので、サルコペニアで筋力低下を評価する場合、大腿四頭筋筋力を定量的に評価できれば、握力よりも優れています。ただ、握力のほうが簡便に筋力を定量化できるので、臨床現場では握力を用いていることが多いのが現状です。
この論文で一番気になるのは、前サルコペニアを筋肉量が少ない(low muscle mass)、サルコペニアを筋力低下(loss of muscle strength)とタイトルに記載していることです。サルコペニアの定義が混乱していることをよく表しているタイトルだと思うのは私だけでしょうか。
Abstract
The aim was to determine the association between loss of muscle mass, loss of muscle strength, and physical ability in individuals with ID. Upper and lower extremity strength, muscle mass and muscle quality (MQ) were calculated. Physical ability was measured according to the Katz activities of daily living (ADL), stair climb test, and sit-to-stand test. We found a strong correlation between quadriceps strength and physical ability in ADL (r=0.92 for males, and r=0.88 for females), and a low-moderate correlation between hand grip strength and physical ability in ADL (r=0.40 for males, and r=0.46 for females). MQ showed a strong relationship between pre-sarcopenia and sarcopenia. Quadriceps strength is a promising measure of age-related muscle changes and it is strongly associated with physical and functional decline.
2011年7月22日金曜日
廃用症候群の高齢入院患者のADLと栄養状態の関連:横断研究
【目的】廃用症候群の高齢入院患者のADLと栄養状態の関連を検討する。
【方法】対象は2010年4月から2011年3月に当院リハ科に併診があり、リハ科医師が廃用症候群と診断した65歳以上の入院患者176人。研究デザインは横断研究。リハ科併診時のADLはBarthel Indexで、栄養状態はMNA-SFで評価した。栄養障害の原因として飢餓、侵襲、前悪液質の有無を調査した。BMI、ヘモグロビン、アルブミン(Alb)、総リンパ球数(TLC)、CRPも評価した。ADLとMNA-SF、BMI、検査値の関連をSpearmanの順位相関係数で検討した。次にADLと有意な相関を認めた項目でADLの予測式を重回帰分析(ステップワイズ法)で検討した。またADLと飢餓、侵襲、前悪液質の有無をマンテル検定で検討した。
【結果】平均年齢78.6歳、男性102人、女性74人。入院から併診まで中央値13日。訓練開始場所はベッドサイド123人、機能訓練室53人。Barthel Indexの中央値は37.5点(5、57)。MNA-SFは153人(87%)が低栄養、23人(13%)が低栄養のおそれあり、栄養状態良好は0人。飢餓を75人(43%)、侵襲を146人(83%)、前悪液質を52人(30%)に認めた。平均値はBMI20.7±3.6、ヘモグロビン9.69±1.73g/dl、Alb2.64±0.59g/dl、TLC964±675。CRPの中央値は2.58mg/dl(0.91、6.06)。ADLと有意な相関を認めたのは、MNA-SF(r=0.325)、Alb(r=0.488)、TLC(r=0.309)、CRP(r=-0.395)であった(いずれもp<0.001)。次にこれら4項目と年齢、性別で重回帰分析を行ったところ、ADLに関わっていたのはMNA-SFとAlbのみであった(Barthel Index=3.76×MNA-SF+20.38×Alb-36.76、R2=0.302、p<0.001)。ADLと栄養障害の原因では、侵襲のみ有意な関連を認めた(カイ2乗値8.01、p=0.005)。
【考察】廃用症候群の高齢入院患者の大半は低栄養である。ADLと栄養状態に関連を認め、アルブミンと侵襲の存在もADLと関連していた。侵襲の結果、ADLと栄養状態が悪い可能性がある。
【方法】対象は2010年4月から2011年3月に当院リハ科に併診があり、リハ科医師が廃用症候群と診断した65歳以上の入院患者176人。研究デザインは横断研究。リハ科併診時のADLはBarthel Indexで、栄養状態はMNA-SFで評価した。栄養障害の原因として飢餓、侵襲、前悪液質の有無を調査した。BMI、ヘモグロビン、アルブミン(Alb)、総リンパ球数(TLC)、CRPも評価した。ADLとMNA-SF、BMI、検査値の関連をSpearmanの順位相関係数で検討した。次にADLと有意な相関を認めた項目でADLの予測式を重回帰分析(ステップワイズ法)で検討した。またADLと飢餓、侵襲、前悪液質の有無をマンテル検定で検討した。
【結果】平均年齢78.6歳、男性102人、女性74人。入院から併診まで中央値13日。訓練開始場所はベッドサイド123人、機能訓練室53人。Barthel Indexの中央値は37.5点(5、57)。MNA-SFは153人(87%)が低栄養、23人(13%)が低栄養のおそれあり、栄養状態良好は0人。飢餓を75人(43%)、侵襲を146人(83%)、前悪液質を52人(30%)に認めた。平均値はBMI20.7±3.6、ヘモグロビン9.69±1.73g/dl、Alb2.64±0.59g/dl、TLC964±675。CRPの中央値は2.58mg/dl(0.91、6.06)。ADLと有意な相関を認めたのは、MNA-SF(r=0.325)、Alb(r=0.488)、TLC(r=0.309)、CRP(r=-0.395)であった(いずれもp<0.001)。次にこれら4項目と年齢、性別で重回帰分析を行ったところ、ADLに関わっていたのはMNA-SFとAlbのみであった(Barthel Index=3.76×MNA-SF+20.38×Alb-36.76、R2=0.302、p<0.001)。ADLと栄養障害の原因では、侵襲のみ有意な関連を認めた(カイ2乗値8.01、p=0.005)。
【考察】廃用症候群の高齢入院患者の大半は低栄養である。ADLと栄養状態に関連を認め、アルブミンと侵襲の存在もADLと関連していた。侵襲の結果、ADLと栄養状態が悪い可能性がある。
2011年7月21日木曜日
大腿骨頸部骨折に対する多職種栄養ケアの効果
大腿骨頸部骨折に対する多職種栄養ケアの効果を見た論文を紹介します。
Hoekstra JC, et al., Effectiveness of multidisciplinary nutritional care on nutritional intake, nutritional status and quality of life in patients with hip fractures: A controlled prospective cohort study, Clinical Nutrition (2011), doi:10.1016/j.clnu.2011.01.011
リサーチクエスチョンをPICOで書くと
P:65歳以上の大腿骨頸部骨折で手術を受けた患者
I:入院中と退院後の栄養サポートに集中した多職種の栄養ケア(看護師、医師、栄養士が必ず栄養評価・介入を行う)
C:標準的な栄養ケア(MNAが24未満なら栄養士は栄養介入。看護師と医師は時に栄養評価・介入を行う)
O:栄養状態(MNA、BIA)とQOL(EQ-5D)の改善
になります。研究デザインは前向きコホート研究ですが、前後研究(Iが後、Cが前)でもあります。
結果は介入群でエネルギー摂取量と蛋白質摂取量が有意に多くなりました。介入群では発症3か月後のQOLの低下が対照群より有意に少なく、MNAで低栄養もしくは低栄養のおそれありと判定される割合も有意に少ないという結果でした。ただ、BIAによる体組成に関しては両群で有意差を認めませんでした。
これより標準的な栄養ケアより、退院時の栄養連携も含めた多職種の栄養ケアのほうが優れているという結論です。栄養状態そのものの改善が得られていないのは残念ですが、大腿骨頸部骨折患者での栄養介入の有効性を示すエビデンスの1つになると思います。
Abstract
BACKGROUND & AIMS: The purpose of this study was to determine the effectiveness of a multidisciplinary intervention program on nutritional intake and of nutritional intake on nutritional status and quality of life in older patients treated for a hip fracture.
METHODS: A controlled prospective cohort study included 66 patients in the control group and 61 patients in the intervention group, aged over 65 and sustaining a hip fracture with subsequent operative intervention. Postoperatively, the control group received standard nutritional care and the intervention group multidisciplinary nutritional care that focused on nutritional support during hospitalisation and a transfer of nutritional care after discharge. Nutrient intakes were monitored with food records. Nutritional status was determined by the Mini Nutritional Assessment (MNA), and bioelectrical impedance analysis was used to assess body cell mass (BCM). The EuroQol (EQ-5D) was used to assess quality of life. Patients were evaluated at admission and three months postoperatively.
RESULTS: There was a significant difference in the daily energy intake of patients between both groups during the first seven days postoperatively: 1127 kcal (±309) in the control group and 1292 kcal (±280) (P = 0.002) in the intervention group. Mean protein intake in the intervention group (57 g (±12)) was significantly higher than in the control group (48 g (±14), P = 0.000). The intervention group demonstrated a significantly lower reduction of EQ-5D index scores compared with the control group (P = 0.004) after three months. At three months, significantly fewer patients in the intervention group were classified as malnourished or at risk of malnutrition.
CONCLUSIONS: Among elderly patients with a hip fracture, a multidisciplinary postoperative approach of nutritional care was associated with an increase of energy and protein intake during hospitalisation. After three months follow-up there were fewer malnourished patients in the intervention group, and the decline in quality of life was lower than in the control group. There were no advantages of multidisciplinary nutritional care on body cell mass.
Hoekstra JC, et al., Effectiveness of multidisciplinary nutritional care on nutritional intake, nutritional status and quality of life in patients with hip fractures: A controlled prospective cohort study, Clinical Nutrition (2011), doi:10.1016/j.clnu.2011.01.011
リサーチクエスチョンをPICOで書くと
P:65歳以上の大腿骨頸部骨折で手術を受けた患者
I:入院中と退院後の栄養サポートに集中した多職種の栄養ケア(看護師、医師、栄養士が必ず栄養評価・介入を行う)
C:標準的な栄養ケア(MNAが24未満なら栄養士は栄養介入。看護師と医師は時に栄養評価・介入を行う)
O:栄養状態(MNA、BIA)とQOL(EQ-5D)の改善
になります。研究デザインは前向きコホート研究ですが、前後研究(Iが後、Cが前)でもあります。
結果は介入群でエネルギー摂取量と蛋白質摂取量が有意に多くなりました。介入群では発症3か月後のQOLの低下が対照群より有意に少なく、MNAで低栄養もしくは低栄養のおそれありと判定される割合も有意に少ないという結果でした。ただ、BIAによる体組成に関しては両群で有意差を認めませんでした。
これより標準的な栄養ケアより、退院時の栄養連携も含めた多職種の栄養ケアのほうが優れているという結論です。栄養状態そのものの改善が得られていないのは残念ですが、大腿骨頸部骨折患者での栄養介入の有効性を示すエビデンスの1つになると思います。
Abstract
BACKGROUND & AIMS: The purpose of this study was to determine the effectiveness of a multidisciplinary intervention program on nutritional intake and of nutritional intake on nutritional status and quality of life in older patients treated for a hip fracture.
METHODS: A controlled prospective cohort study included 66 patients in the control group and 61 patients in the intervention group, aged over 65 and sustaining a hip fracture with subsequent operative intervention. Postoperatively, the control group received standard nutritional care and the intervention group multidisciplinary nutritional care that focused on nutritional support during hospitalisation and a transfer of nutritional care after discharge. Nutrient intakes were monitored with food records. Nutritional status was determined by the Mini Nutritional Assessment (MNA), and bioelectrical impedance analysis was used to assess body cell mass (BCM). The EuroQol (EQ-5D) was used to assess quality of life. Patients were evaluated at admission and three months postoperatively.
RESULTS: There was a significant difference in the daily energy intake of patients between both groups during the first seven days postoperatively: 1127 kcal (±309) in the control group and 1292 kcal (±280) (P = 0.002) in the intervention group. Mean protein intake in the intervention group (57 g (±12)) was significantly higher than in the control group (48 g (±14), P = 0.000). The intervention group demonstrated a significantly lower reduction of EQ-5D index scores compared with the control group (P = 0.004) after three months. At three months, significantly fewer patients in the intervention group were classified as malnourished or at risk of malnutrition.
CONCLUSIONS: Among elderly patients with a hip fracture, a multidisciplinary postoperative approach of nutritional care was associated with an increase of energy and protein intake during hospitalisation. After three months follow-up there were fewer malnourished patients in the intervention group, and the decline in quality of life was lower than in the control group. There were no advantages of multidisciplinary nutritional care on body cell mass.
2011年7月20日水曜日
第15回八王子言語聴覚士ネットワーク講演会
8月3日の第15回八王子言語聴覚士ネットワーク講演会で、リハ栄養の講演をさせていただきます。詳細は下記のHPを参照してください。
http://www.c-rehab.com/course/hachiojist/pdf/20110803_hachiojist_no15.pdf
日 時: 平成23年8月3日(水) 19:00 ~ 20:30 (18:30開場)
会 場: 八王子市芸術文化会館 いちょうホール 小ホール
テーマ: 「低栄養と侵襲期のリハビリテーション」
「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養」の著者である若林先生をお迎えし,リハビリテーションを施行する際に必須である栄養とトレーニングの知識やマネジメントについてご講義いただきます。
講 師: 若林秀隆先生 横浜市立大学附属市民医療センター リハビリテーション科
参加費: 無料 (定員280名)
主 催: 八王子言語聴覚士ネットワーク
後 援: 南多摩保健医療圏地域リハビリ支援センター
申込方法:
・①氏名 ②職業(所属) ③電話番号 ④メールアドレスを記入の上
八王子言語聴覚士ネットワーク事務局までFAXもしくはメールにてお申し込みください。
eメール: kouza@hachioji-st.net Fax: 042-661-4168
締切は7月27日です。
八王子周辺の皆様のご参加の程よろしくお願いいたします。
http://www.c-rehab.com/course/hachiojist/pdf/20110803_hachiojist_no15.pdf
日 時: 平成23年8月3日(水) 19:00 ~ 20:30 (18:30開場)
会 場: 八王子市芸術文化会館 いちょうホール 小ホール
テーマ: 「低栄養と侵襲期のリハビリテーション」
「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養」の著者である若林先生をお迎えし,リハビリテーションを施行する際に必須である栄養とトレーニングの知識やマネジメントについてご講義いただきます。
講 師: 若林秀隆先生 横浜市立大学附属市民医療センター リハビリテーション科
参加費: 無料 (定員280名)
主 催: 八王子言語聴覚士ネットワーク
後 援: 南多摩保健医療圏地域リハビリ支援センター
申込方法:
・①氏名 ②職業(所属) ③電話番号 ④メールアドレスを記入の上
八王子言語聴覚士ネットワーク事務局までFAXもしくはメールにてお申し込みください。
eメール: kouza@hachioji-st.net Fax: 042-661-4168
締切は7月27日です。
八王子周辺の皆様のご参加の程よろしくお願いいたします。
管理栄養士のためのリハ栄養セミナー
学際企画で「管理栄養士のためのリハビリテーション栄養セミナー」という研修会を開催します。申し込み方法など詳細は、下記のHPを参照してください。
http://www.gakusai.co.jp/PDF/eiyou-yakugaku/N-40.pdf
東京開催 平成23年8月21日(日) 専売ビルホール(東京都港区)
大阪開催 平成23年8月28日(日) 大手前栄養学院(大阪市中央区)
いずれも10:00~16:00です。
内容は以下のようになっています。
1.リハビリテーションとは
・ICF(国際生活機能分類)
・生活機能と栄養障害
2.リハビリテーション栄養とは
・リハビリテーション栄養管理
・Faculty Development
・グループワーク
3.サルコペニア
・サルコペニアとミオペニア
・飢餓と侵襲と悪液質
・サルコペニアによる嚥下障害
・グループワーク
4.疾患別のリハビリテーション栄養
・廃用症候群
・脳卒中
・誤嚥性肺炎
・関節リウマチ
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・グループワーク
質疑応答
お近くの管理栄養士で日程などの都合がつく方がいらっしゃいましたら(特に大阪)、ご参加いただければと思います。ご検討の程よろしくお願いいたします。
http://www.gakusai.co.jp/PDF/eiyou-yakugaku/N-40.pdf
東京開催 平成23年8月21日(日) 専売ビルホール(東京都港区)
大阪開催 平成23年8月28日(日) 大手前栄養学院(大阪市中央区)
いずれも10:00~16:00です。
内容は以下のようになっています。
1.リハビリテーションとは
・ICF(国際生活機能分類)
・生活機能と栄養障害
2.リハビリテーション栄養とは
・リハビリテーション栄養管理
・Faculty Development
・グループワーク
3.サルコペニア
・サルコペニアとミオペニア
・飢餓と侵襲と悪液質
・サルコペニアによる嚥下障害
・グループワーク
4.疾患別のリハビリテーション栄養
・廃用症候群
・脳卒中
・誤嚥性肺炎
・関節リウマチ
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・グループワーク
質疑応答
お近くの管理栄養士で日程などの都合がつく方がいらっしゃいましたら(特に大阪)、ご参加いただければと思います。ご検討の程よろしくお願いいたします。
入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連:横断研究
臨床リハの最新号(2011年8月号)に、「入院患者における廃用症候群の程度と栄養障害の関連:横断研究」という臨床研究の論文が掲載されました。嬉しいです。
一言で結論を言うと、廃用症候群の有無、程度と栄養状態に一定の関連を認めるということです。廃用症候群と低栄養は深く関連していますが、そのことを述べた原著論文はまだ少ないのが現状です。私は今まで依頼原稿でしか述べたことがありませんでした。ようやく1つ形になりましたがこれで終わりにしないで、次も論文まで頑張ります。
臨床リハの同号には「高齢者の栄養」という葛谷雅文先生の論文もあります。こちらのほうが勉強になりますので(笑)、興味のある方は一緒に見ていただければと思います。よろしくお願いいたします。
一言で結論を言うと、廃用症候群の有無、程度と栄養状態に一定の関連を認めるということです。廃用症候群と低栄養は深く関連していますが、そのことを述べた原著論文はまだ少ないのが現状です。私は今まで依頼原稿でしか述べたことがありませんでした。ようやく1つ形になりましたがこれで終わりにしないで、次も論文まで頑張ります。
臨床リハの同号には「高齢者の栄養」という葛谷雅文先生の論文もあります。こちらのほうが勉強になりますので(笑)、興味のある方は一緒に見ていただければと思います。よろしくお願いいたします。
2011年7月19日火曜日
The 111th Abbott Nutrition Research Conference
The 111th Abbott Nutrition Research Conferenceの資料を以下のHPで見ることができます。
http://images.abbottnutrition.com/ANHI2010/MEDIA/111th-conference-report-6-6-11.pdf
今回のメインテーマはInflammation and Nutrition in Chronic Diseaseです。興味のある方は英語ですが、見ていただければと思います。
全体は、Keynote Address、Dietary Factors That Influence Inflammation、Therapies for Inflammation: Gaps for Nutrition To Fillの3部に分かれています。
Inflammation and Nutrition in Chronic Diseaseの中には、栄養障害を病態別に以下の3つに分類することも記載されています。私は飢餓をマラスムス、クワシオルコル、混合に分類するよりも、この病態別分類のほうが臨床でも有益だと感じています。
•飢餓“Starvation-related malnutrition” when there is chronic starvation without
inflammation (eg, in medical conditions such as anorexia nervosa).
•悪液質“Chronic disease-related malnutrition” when inflammation is chronic and
of mild to moderate degree (eg, with organ failure, pancreatic cancer,
rheumatoid arthritis, or sarcopenic obesity).
•侵襲 “Acute disease- or injury-related malnutrition” when inflammation is
acute and of severe degree (eg, with major infection, burns, trauma, or closed
head injury).
また、炎症をphysiologic inflammation、adaptive inflammation、pathologic inflammationの3つに分類するという考え方も興味深いです。生理的炎症、適応的炎症、病的炎症とでも訳せるでしょうか。現時点でこれらを的確に分類する基準はありませんが、病的炎症になってからの栄養介入では遅いようです。急性(侵襲)、慢性(悪液質)でそれぞれこのような分類が今後できてくるかもしれません。
http://images.abbottnutrition.com/ANHI2010/MEDIA/111th-conference-report-6-6-11.pdf
今回のメインテーマはInflammation and Nutrition in Chronic Diseaseです。興味のある方は英語ですが、見ていただければと思います。
全体は、Keynote Address、Dietary Factors That Influence Inflammation、Therapies for Inflammation: Gaps for Nutrition To Fillの3部に分かれています。
Inflammation and Nutrition in Chronic Diseaseの中には、栄養障害を病態別に以下の3つに分類することも記載されています。私は飢餓をマラスムス、クワシオルコル、混合に分類するよりも、この病態別分類のほうが臨床でも有益だと感じています。
•飢餓“Starvation-related malnutrition” when there is chronic starvation without
inflammation (eg, in medical conditions such as anorexia nervosa).
•悪液質“Chronic disease-related malnutrition” when inflammation is chronic and
of mild to moderate degree (eg, with organ failure, pancreatic cancer,
rheumatoid arthritis, or sarcopenic obesity).
•侵襲 “Acute disease- or injury-related malnutrition” when inflammation is
acute and of severe degree (eg, with major infection, burns, trauma, or closed
head injury).
また、炎症をphysiologic inflammation、adaptive inflammation、pathologic inflammationの3つに分類するという考え方も興味深いです。生理的炎症、適応的炎症、病的炎症とでも訳せるでしょうか。現時点でこれらを的確に分類する基準はありませんが、病的炎症になってからの栄養介入では遅いようです。急性(侵襲)、慢性(悪液質)でそれぞれこのような分類が今後できてくるかもしれません。
チーム・ファシリテーション
堀 公俊著、チーム・ファシリテーション 最強の組織をつくる12のステップ、朝日新聞出版を紹介します。
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11527
ファシリテーションの基本を総論的に学習するにはよくまとまっている書籍だと思います。ただ、「チームビルディング日記」に関しては内容がうすく、これでは具体的な参考にはあまりならないと感じました。
問題はこれをどう実践に落とし込むかです。会話→対話→議論→省察の順番に分けて話し合えば組織は生まれ変わるとありますが、これがそう簡単にできれば苦労しないなと感じます。ただ、今度は対話を意識した会議を企画してみようと思いました。うまくいけばよいのですが…。
目次
プロローグ 人と人が響き合うチームを目指して
第1ステージ 関係性を高める「会話」に火をつける
第2ステージ 意味を共有する「対話」を巻き起こす
第3ステージ 行動を変革する「議論」を繰り広げる
第4ステージ 学習を促進する「省察」を深め合う
エピローグ 自律型チームの新しいリーダー像
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=11527
ファシリテーションの基本を総論的に学習するにはよくまとまっている書籍だと思います。ただ、「チームビルディング日記」に関しては内容がうすく、これでは具体的な参考にはあまりならないと感じました。
問題はこれをどう実践に落とし込むかです。会話→対話→議論→省察の順番に分けて話し合えば組織は生まれ変わるとありますが、これがそう簡単にできれば苦労しないなと感じます。ただ、今度は対話を意識した会議を企画してみようと思いました。うまくいけばよいのですが…。
目次
プロローグ 人と人が響き合うチームを目指して
第1ステージ 関係性を高める「会話」に火をつける
第2ステージ 意味を共有する「対話」を巻き起こす
第3ステージ 行動を変革する「議論」を繰り広げる
第4ステージ 学習を促進する「省察」を深め合う
エピローグ 自律型チームの新しいリーダー像
2011年7月18日月曜日
サンプルサイズとパワー計算
週刊医学界新聞の最新号(第2937号 2011年7月18日)に新谷歩先生の「今日から使える 医療統計学講座 【Lesson3】サンプルサイズとパワー計算」が掲載されています。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02937_06
サンプルサイズの計算というと難しい話になりがちですが、わかりやすく解説されていると思います。臨床研究で省略してしまいがちなステップですが、ここを省略すると査読で痛い目にあいます(笑)。
サンプルサイズとは、このくらいあるはずだと考えている差を、1回の研究でできるだけ確実に検出するために、十分な検出力をもった研究を行うために計算される、一群の数という意味です。わかりにくいですね(笑)。やはり医学界新聞のこの記事を読んでください。
リサーチクエスチョンと研究デザインを考えていると、「こんなに素晴らしい研究は今までなかったので必ずやろう」と確信(妄想ですが)します。しかし、サンプルサイズを計算して一群500人とか1000人以上とかになると、目が覚めます。実現可能性がある研究かどうかを判断するうえで、サンプルサイズの計算は必ず早いうちに行うべきステップです。
あとサンプルサイズの概念は知っていても、計算するためのソフトが高いので購入する気にならないという方もいると思います。この原稿では無料でダウンロードできるPS(Power and Sample Size Calculation)というソフトが紹介されています。下記のHPからダウンロードできますが、これはなかなかの優れモノです。ぜひご活用ください。
http://biostat.mc.vanderbilt.edu/twiki/bin/view/Main/PowerSampleSize
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02937_06
サンプルサイズの計算というと難しい話になりがちですが、わかりやすく解説されていると思います。臨床研究で省略してしまいがちなステップですが、ここを省略すると査読で痛い目にあいます(笑)。
サンプルサイズとは、このくらいあるはずだと考えている差を、1回の研究でできるだけ確実に検出するために、十分な検出力をもった研究を行うために計算される、一群の数という意味です。わかりにくいですね(笑)。やはり医学界新聞のこの記事を読んでください。
リサーチクエスチョンと研究デザインを考えていると、「こんなに素晴らしい研究は今までなかったので必ずやろう」と確信(妄想ですが)します。しかし、サンプルサイズを計算して一群500人とか1000人以上とかになると、目が覚めます。実現可能性がある研究かどうかを判断するうえで、サンプルサイズの計算は必ず早いうちに行うべきステップです。
あとサンプルサイズの概念は知っていても、計算するためのソフトが高いので購入する気にならないという方もいると思います。この原稿では無料でダウンロードできるPS(Power and Sample Size Calculation)というソフトが紹介されています。下記のHPからダウンロードできますが、これはなかなかの優れモノです。ぜひご活用ください。
http://biostat.mc.vanderbilt.edu/twiki/bin/view/Main/PowerSampleSize
2011年7月17日日曜日
ビジネスで失敗する人の10の法則
ドナルド・R・キーオ著、山岡洋一訳、ビジネスで失敗する人の10の法則、日本経済新聞出版社を紹介します。
http://www.nikkeibook.com/book_detail/31449/
キーオ氏はコカコーラの元社長です。ビジネスで成功する法則を体系化することはできないが、失敗する法則は体系化できるということで作成された書籍です。これはビジネスだけでなく個人や医療でも当てはまると思います。目次がそのまま法則となっています。失敗経験から学習することは重要ですが、これらの法則を遵守して失敗することは避けたいものです。
珍しい法則はありませんが、これらをすべて避けることは容易ではないと感じます。もっとも重要な「リスクをとるのを止める」ことは、人間でも組織でもある程度以上に成長するとよくあることだと思います。ただ、「リスクをとらないことが最大のリスク」は多くの場合、真実だと考えます。それでもリスクをなかなかとれないのが人間ではありますが…。
最後の法則である「仕事への熱意、人生への熱意を失う」も大切だと感じます。熱意を持てない仕事や人生であれば、熱意を持てるように変えなければ失敗する可能性が高いでしょう。厳しい時代ではありますが、情熱を持つ人間にはチャンスの多い時代でもあると思います。
目次
序文(ウォーレン・バフェット)
法則1(もっとも重要) リスクをとるのを止める
法則2 柔軟性をなくす
法則3 部下を遠ざける
法則4 自分は無謬だと考える
法則5 反則すれすれのところで戦う
法則6 考えるのに時間を使わない
法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8 官僚組織を愛する
法則9 一貫性のないメッセージを送る
法則10 将来を恐れる
法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う
謝辞
訳者あとがき
http://www.nikkeibook.com/book_detail/31449/
キーオ氏はコカコーラの元社長です。ビジネスで成功する法則を体系化することはできないが、失敗する法則は体系化できるということで作成された書籍です。これはビジネスだけでなく個人や医療でも当てはまると思います。目次がそのまま法則となっています。失敗経験から学習することは重要ですが、これらの法則を遵守して失敗することは避けたいものです。
珍しい法則はありませんが、これらをすべて避けることは容易ではないと感じます。もっとも重要な「リスクをとるのを止める」ことは、人間でも組織でもある程度以上に成長するとよくあることだと思います。ただ、「リスクをとらないことが最大のリスク」は多くの場合、真実だと考えます。それでもリスクをなかなかとれないのが人間ではありますが…。
最後の法則である「仕事への熱意、人生への熱意を失う」も大切だと感じます。熱意を持てない仕事や人生であれば、熱意を持てるように変えなければ失敗する可能性が高いでしょう。厳しい時代ではありますが、情熱を持つ人間にはチャンスの多い時代でもあると思います。
目次
序文(ウォーレン・バフェット)
法則1(もっとも重要) リスクをとるのを止める
法則2 柔軟性をなくす
法則3 部下を遠ざける
法則4 自分は無謬だと考える
法則5 反則すれすれのところで戦う
法則6 考えるのに時間を使わない
法則7 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8 官僚組織を愛する
法則9 一貫性のないメッセージを送る
法則10 将来を恐れる
法則11 仕事への熱意、人生への熱意を失う
謝辞
訳者あとがき
ワールド・カフェ
最近の学会や研修会で(特に日本プライマリ・ケア連合学会)、ワールド・カフェ方式というものが増えてきた印象があります。
ワールド・カフェで検索するとたくさんのHPがヒットしますが、下記のHPが分かりやすく解説しています。
ワールド・カフェ・ネット
http://world-cafe.net/
また、ワールド・カフェ ~カフェ的会話が未来を創る~という書籍もあります。
http://www.humanvalue.co.jp/hv2/publish/book04.html
ワールドカフェには7つの原則があります。
1.コンテクストを設定する
・ダイアログを可能にするための目的と広範な要件を明確にする
2.もてなしの空間を創造する
・個人的な快適さと、お互いを尊重する気持を育むことができるもてなしの環境と、心理的な安心感を確保する
3.大切な質問を探求する
・協働を引き出すような強い力を持つ質問に対して、集合的に関心を高める
4.全員の貢献を促す
・参画と相互支援を促すことによって、「個」と「全体」の関係を活性化する
5.多様な視点を他花受粉させて、つなげる
・中核的な質問に対して共通の関心を高め、異なる視点のつながりをもつ多様性と密度を意図的に強めることにより、創発が現れる生体システムのダイナミズムを活用する
6.パターン、洞察、より深い質問に共に耳を傾ける
・個々人の貢献を損なわずに思考の結束を育むことができるように、共通の関心事に焦点を当てる
7.集合的発見を収穫し共有する
・集合的知識と洞察を可視化することによって行動に移せるようにする
個人的にはメンバーを変えながら少人数(4人程度)でグループワークを進めていくというのが興味深いです。私は今までメンバー固定で小グループ学習を企画することが多かったです。そのほうがメンバー間だけでも仲良くなれると考えていたからです。頻回にメンバーを変えると結局、誰とも仲良くなれないのではという心配があります。
9月のリハ栄養合宿はラーニングバー方式でやりたいと考えていますが、一部ワールド・カフェ方式を取り入れても面白いかなと感じています。
ワールド・カフェで検索するとたくさんのHPがヒットしますが、下記のHPが分かりやすく解説しています。
ワールド・カフェ・ネット
http://world-cafe.net/
また、ワールド・カフェ ~カフェ的会話が未来を創る~という書籍もあります。
http://www.humanvalue.co.jp/hv2/publish/book04.html
ワールドカフェには7つの原則があります。
1.コンテクストを設定する
・ダイアログを可能にするための目的と広範な要件を明確にする
2.もてなしの空間を創造する
・個人的な快適さと、お互いを尊重する気持を育むことができるもてなしの環境と、心理的な安心感を確保する
3.大切な質問を探求する
・協働を引き出すような強い力を持つ質問に対して、集合的に関心を高める
4.全員の貢献を促す
・参画と相互支援を促すことによって、「個」と「全体」の関係を活性化する
5.多様な視点を他花受粉させて、つなげる
・中核的な質問に対して共通の関心を高め、異なる視点のつながりをもつ多様性と密度を意図的に強めることにより、創発が現れる生体システムのダイナミズムを活用する
6.パターン、洞察、より深い質問に共に耳を傾ける
・個々人の貢献を損なわずに思考の結束を育むことができるように、共通の関心事に焦点を当てる
7.集合的発見を収穫し共有する
・集合的知識と洞察を可視化することによって行動に移せるようにする
個人的にはメンバーを変えながら少人数(4人程度)でグループワークを進めていくというのが興味深いです。私は今までメンバー固定で小グループ学習を企画することが多かったです。そのほうがメンバー間だけでも仲良くなれると考えていたからです。頻回にメンバーを変えると結局、誰とも仲良くなれないのではという心配があります。
9月のリハ栄養合宿はラーニングバー方式でやりたいと考えていますが、一部ワールド・カフェ方式を取り入れても面白いかなと感じています。
2011年7月15日金曜日
PT・OT・ST・DHのNST専門療法士MLの御案内
今日は、PT・OT・ST・DHのNST専門療法士MLの案内をさせていただきます。
昨年からPT・OT・ST・DHもNST専門療法士を取得できるようになりました。ただ現状では4職種で全国に11人しかいないのが現状です。
そこでより多くのPT・OT・ST・DHにNST専門療法士を目指してほしいことと、NST専門療法士同士のネットワークを作りたいということで新たなMLを作って運用しています。一応、4職種のNST専門療法士11人は全員参加していて、現在約200人が参加しています。
PT・OT・ST・DHで(今回はすみませんが4職種の方に限定させていただきます)、NST専門療法士を受験予定、受験資格はまだないが目指している、リハ栄養に関心があるという方がいましたら、私宛に氏名、所属、職種、メールアドレスをメールでご連絡ください。
今年立ち上げた日本リハ栄養研究会や来年全国で行うリハ栄養セミナーの案内もPT・OT・ST・DHのNST専門療法士MLで行います。PT・OT・ST・DHの皆様のご参加のほどよろしくお願いいたします。
昨年からPT・OT・ST・DHもNST専門療法士を取得できるようになりました。ただ現状では4職種で全国に11人しかいないのが現状です。
そこでより多くのPT・OT・ST・DHにNST専門療法士を目指してほしいことと、NST専門療法士同士のネットワークを作りたいということで新たなMLを作って運用しています。一応、4職種のNST専門療法士11人は全員参加していて、現在約200人が参加しています。
PT・OT・ST・DHで(今回はすみませんが4職種の方に限定させていただきます)、NST専門療法士を受験予定、受験資格はまだないが目指している、リハ栄養に関心があるという方がいましたら、私宛に氏名、所属、職種、メールアドレスをメールでご連絡ください。
今年立ち上げた日本リハ栄養研究会や来年全国で行うリハ栄養セミナーの案内もPT・OT・ST・DHのNST専門療法士MLで行います。PT・OT・ST・DHの皆様のご参加のほどよろしくお願いいたします。
2011年7月13日水曜日
NST専門療法士臨床実地修練
当院ではNST専門療法士を目指している方を対象に、9月から11月にかけてNST専門療法士臨床実地修練を行います。プログラムなどの詳細は下記のHPを参照してください。
http://www.urahp.yokohama-cu.ac.jp/pdf/eiyou.pdf
募集期間は7月中です。応募方法ですが、下記必要事項を記載の上、当センター事務局(栄養部)までお申し込みください。
申し込み内容確認後、NST 事務局より必要書類等の手続きに関する案内をメールにて送付させて頂きます。
〔必要事項〕
・氏名(ふりがな)・性別・生年月日
・連絡先住所・電話番号・メールアドレス
・職種・免許取得年月日・免許番号
・医療、福祉施設での臨床実務経験年数
・所属施設名・所属部門・所在地住所・電話番号
・日本静脈経腸栄養学会の入会の有無
・教育セミナー受講の有無
申し込み・問い合わせ先は下記の通りです。メールでお申し込み、お問い合わせください。
当院NST 事務局:栄養部
e-mail:k-shimi@urahp.yokohama-cu.ac.jp
興味のある方はぜひお申し込みください。よろしくお願いいたします。
http://www.urahp.yokohama-cu.ac.jp/pdf/eiyou.pdf
募集期間は7月中です。応募方法ですが、下記必要事項を記載の上、当センター事務局(栄養部)までお申し込みください。
申し込み内容確認後、NST 事務局より必要書類等の手続きに関する案内をメールにて送付させて頂きます。
〔必要事項〕
・氏名(ふりがな)・性別・生年月日
・連絡先住所・電話番号・メールアドレス
・職種・免許取得年月日・免許番号
・医療、福祉施設での臨床実務経験年数
・所属施設名・所属部門・所在地住所・電話番号
・日本静脈経腸栄養学会の入会の有無
・教育セミナー受講の有無
申し込み・問い合わせ先は下記の通りです。メールでお申し込み、お問い合わせください。
当院NST 事務局:栄養部
e-mail:k-shimi@urahp.yokohama-cu.ac.jp
興味のある方はぜひお申し込みください。よろしくお願いいたします。
サルコペニアの栄養マネジメント(Review)
私がいつも見ているアンチエイジングニューロリハドクターのブログに「サルコペニアの栄養マネジメント(Review)」という記事が掲載されていました。とても参考になりますので、引用紹介させていただきます。
http://neurorehai.blogspot.com/2011/07/review.html
このブログではNutritional recommendations for the management of sarcopenia.J Am Med Dir Assoc. 2010 ;11:391-6.という論文の紹介をしています。
推奨レベルA、Bのまとめに関しても、引用紹介させていただきました。基本的には異論はありませんが、ビタミンD関連に関しては、私は異論があります。
・ビタミンD摂取量は50,000IU/weekまでが安全(A)
・ビタミンD血中濃度はすべてのサルコペニアの患者で測定すべき(A)
・ビタミンDのサプリメントは補助療法として投与すべき(100nmol/l=40ng/ml以上まで)(A)
とあります。50,000IU/weekは安全かもしれませんが、1回に50万IU投与すると転倒が増えるという質の高いエビデンスがあります。
高容量経口ビタミンDで転倒と骨折が増加
http://rehabnutrition.blogspot.com/2011/03/d_09.html
ビタミンDは欠乏10~20ng/ml以下、充足20~30ng/ml以上という基準があります。欠乏状態は問題がありますが、40ng/ml以上まで高める必要性が私にはわかりません。
ビタミンD血中濃度は日本では保険診療で測定することができません。仮に測定できたとしても、すべてのサルコペニアの患者で測定すべきでしょうか。私はビタミンD欠乏が疑われるケースだけで十分だと考えています。
サルコペニアとビタミンDに関して、必ず○○すべきだというところまで質の高いエビデンスは今のところそろっていないと私は考えます。あくまで欠乏を疑ったときのみ評価、治療を行うというスタンスでよいのではないでしょうか。
Abstract
The Society for Sarcopenia, Cachexia, and Wasting
Disease convened an expert panel to develop nutritional
recommendations for prevention and management
of sarcopenia. Exercise (both resistance and
aerobic) in combination with adequate protein and
energy intake is the key component of the prevention
and management of sarcopenia. Adequate protein
supplementation alone only slows loss of muscle
mass. Adequate protein intake (leucine-enriched balanced
amino acids and possibly creatine) may enhance
muscle strength. Low 25(OH) vitamin D levels
require vitamin D replacement. (J Am Med Dir Assoc
2010; 11: 391–396)
2011年7月12日火曜日
レジスタンストレーニングと脳の可塑性
レジスタンストレーニングと脳の可塑性をみたRCT論文を紹介します。
Teresa Liu-Ambrose et al: Resistance training and functional plasticity of the aging brain: a 12-month randomized controlled trial Neurobiology of Aging Article in Press.
有酸素運動では高齢者の脳の可塑性を促進するという研究結果がすでに出ていますが、レジスタンストレーニングではあまり出ていませんでした。そこで12ヶ月間、週2回のレジスタンストレーニングが脳の可塑性を変化させるかを調べました。
その結果、週2回レジスタンストレーニングを行った場合には脳の可塑性が改善しましたが、週1回では改善しないという結果でした。有酸素運動と同様に、脳の可塑性に有効な可能性があります。
週2回以上のレジスタンストレーニングが必要というのは、筋力・筋肉量の改善でも同様です。頻度は週2-3回以上でなければいけないのでしょう。また、いいかげんな脳トレよりはしっかり運動したほうが、脳にもよい可能性があります。
Abstract
Maintaining functional plasticity of the cortex is essential for healthy aging and aerobic exercise may be an effective behavioral intervention to promote functional plasticity among seniors. Whether resistance training has similar benefits on functional plasticity in seniors has received little investigation. Here we show that 12 months of twice-weekly resistance training led to functional changes in 2 regions of cortex previously associated with response inhibition processes—the anterior portion of the left middle temporal gyrus and the left anterior insula extending into lateral orbital frontal cortex—in community-dwelling senior women. These hemodynamic effects co-occurred with improved task performance. Our data suggest that resistance training improved flanker task performance in 2 ways: (1) an increased engagement of response inhibition processes when needed; and (2) a decreased tendency to prepare response inhibition as a default state. However, we highlight that this effect of resistance training was only observed among those who trained twice weekly; participants of the once-weekly resistance training did not demonstrate comparable response profiles, both in behavioral performance and hemodynamic activity in cortex. In sum, our findings suggest that twice-weekly resistance training in seniors can positively impact functional plasticity of response inhibition processes in cortex, and that it does so in a manner that complements the effects on selective attention that have previously been ascribed to aerobic exercise in seniors.
Teresa Liu-Ambrose et al: Resistance training and functional plasticity of the aging brain: a 12-month randomized controlled trial Neurobiology of Aging Article in Press.
有酸素運動では高齢者の脳の可塑性を促進するという研究結果がすでに出ていますが、レジスタンストレーニングではあまり出ていませんでした。そこで12ヶ月間、週2回のレジスタンストレーニングが脳の可塑性を変化させるかを調べました。
その結果、週2回レジスタンストレーニングを行った場合には脳の可塑性が改善しましたが、週1回では改善しないという結果でした。有酸素運動と同様に、脳の可塑性に有効な可能性があります。
週2回以上のレジスタンストレーニングが必要というのは、筋力・筋肉量の改善でも同様です。頻度は週2-3回以上でなければいけないのでしょう。また、いいかげんな脳トレよりはしっかり運動したほうが、脳にもよい可能性があります。
Abstract
Maintaining functional plasticity of the cortex is essential for healthy aging and aerobic exercise may be an effective behavioral intervention to promote functional plasticity among seniors. Whether resistance training has similar benefits on functional plasticity in seniors has received little investigation. Here we show that 12 months of twice-weekly resistance training led to functional changes in 2 regions of cortex previously associated with response inhibition processes—the anterior portion of the left middle temporal gyrus and the left anterior insula extending into lateral orbital frontal cortex—in community-dwelling senior women. These hemodynamic effects co-occurred with improved task performance. Our data suggest that resistance training improved flanker task performance in 2 ways: (1) an increased engagement of response inhibition processes when needed; and (2) a decreased tendency to prepare response inhibition as a default state. However, we highlight that this effect of resistance training was only observed among those who trained twice weekly; participants of the once-weekly resistance training did not demonstrate comparable response profiles, both in behavioral performance and hemodynamic activity in cortex. In sum, our findings suggest that twice-weekly resistance training in seniors can positively impact functional plasticity of response inhibition processes in cortex, and that it does so in a manner that complements the effects on selective attention that have previously been ascribed to aerobic exercise in seniors.
2011年7月11日月曜日
大腸がんに対するprehabilitationのRCT
大腸がんに対するprehabilitationのRCT論文を紹介します。
Carli F, et al: Randomized clinical trial of prehabilitation in colorectal surgery. Br J Surg. 2010 Aug;97(8):1187-97.
先週の日本外科代謝栄養学会のイブンニングセミナーで発表させていただいた時に、一番質問の多かった論文です。読み直してみると少し間違った説明をしていました。お詫び申し上げます。
この研究のリサーチクエスチョンをPICOにすると、以下のようになります
P:大腸癌の待機手術患者112人
I:自転車(エルゴメーター)+歩行能力の回復強化プログラム
C:通常の単純な歩行訓練+呼吸訓練
O:歩行能力が改善するか
結果ですが、歩行能力の平均値はprehabilitation期間、術後とも両群で有意差を認めませんでした。ただし、歩行能力が改善した割合は対照群のほうがprehabilitation期間(47%、22%)、術後(41%、11%)とも有意に多いという意外な結果でした。
介入群でアドヒアランス(コンプライアンス)が低かったことが、今回の結果と関連している可能性があります。また、prehabilitationには今回のような運動単独のほか、栄養療法や疼痛管理と組み合わせたものがあります。
リハ栄養的にはprehabilitationは必ず、栄養療法と運動療法を組み合わせるべきだと考えます。それぞれ単独で行うよりも効果がより高いと考えます。
次の課題はすべての待機手術患者にprehabilitationが必要かということと、prehabilitationの内容です。ざっくりですが、社会生活(日常生活ではなく)に支障がないレベルの方は、prehabilitationの優先度が低いと考えます。一方、日常生活がギリギリやADLに一部支障があるレベルの方、3メッツ程度の運動に支障のある方、サルコペニアの方の場合には、prehabilitationの優先順位が高いと考えます。
prehabilitationの内容に関しては、有酸素運動とレジスタンストレーニング(筋トレ)の両方を組み合わせるべきだと考えます。組み合わせ方に関してはサルコペニアのほうが問題か、持久力がないほうが問題か、両方とも問題かによって変わってくると思います。そして、それぞれに栄養療法を併用します。
一例として、有酸素運動3時間前に糖質140g摂取。手術3か月前から週3回、1回20-45分実施、筋トレ直後に蛋白10g、糖質7g、脂質3g摂取。手術6週前から週2回実施というものがあります(Killewich LA : Strategies to minimize postoperative deconditioning in elderly surgical patients. J Am Coll Surg. 2006; 203(5):735-45)。脂質摂取のエビデンスは悪液質に対するEPAでなければ特にないと思いますが。
周術期早期回復にリハやリハ栄養がからむことは少なかったのが現状ですが、prehabilitationの適応と内容の検討や、術後早期離床と運動(有酸素運動)の内容の検討などで、お役にたてることがあるかもしれません。
Abstract
BACKGROUND: 'Prehabilitation' is an intervention to enhance functional capacity in anticipation of a forthcoming physiological stressor. In patients scheduled for colorectal surgery, the extent to which a structured prehabilitation regimen of stationary cycling and strengthening optimized recovery of functional walking capacity after surgery was compared with a simpler regimen of walking and breathing exercises.
METHODS: Some 112 patients (mean(s.d.) age 60(16) years) were randomized to either the structured bike and strengthening regimen (bike/strengthening group, 58 patients) or the simpler walking and breathing regimen (walk/breathing group, 54 patients). Randomization was done at the surgical planning visit; the mean time to surgery available for prehabilitation was 52 days; follow-up was for approximately 10 weeks after surgery.
RESULTS: There were no differences between the groups in mean functional walking capacity over the prehabilitation period or at postoperative follow-up. The proportion showing an improvement in walking capacity was greater in the walk/breathing group than in the bike/strengthening group at the end of the prehabilitation period (47 versus 22 per cent respectively; P = 0.051) and after surgery (41 versus 11 per cent; P = 0.019).
CONCLUSION: There was an unexpected benefit from the recommendation to increase walking and breathing, as designed for the control group. Adherence to recommendations was low. An examination of prehabilitation 'responders' would add valuable information.
Carli F, et al: Randomized clinical trial of prehabilitation in colorectal surgery. Br J Surg. 2010 Aug;97(8):1187-97.
先週の日本外科代謝栄養学会のイブンニングセミナーで発表させていただいた時に、一番質問の多かった論文です。読み直してみると少し間違った説明をしていました。お詫び申し上げます。
この研究のリサーチクエスチョンをPICOにすると、以下のようになります
P:大腸癌の待機手術患者112人
I:自転車(エルゴメーター)+歩行能力の回復強化プログラム
C:通常の単純な歩行訓練+呼吸訓練
O:歩行能力が改善するか
結果ですが、歩行能力の平均値はprehabilitation期間、術後とも両群で有意差を認めませんでした。ただし、歩行能力が改善した割合は対照群のほうがprehabilitation期間(47%、22%)、術後(41%、11%)とも有意に多いという意外な結果でした。
介入群でアドヒアランス(コンプライアンス)が低かったことが、今回の結果と関連している可能性があります。また、prehabilitationには今回のような運動単独のほか、栄養療法や疼痛管理と組み合わせたものがあります。
リハ栄養的にはprehabilitationは必ず、栄養療法と運動療法を組み合わせるべきだと考えます。それぞれ単独で行うよりも効果がより高いと考えます。
次の課題はすべての待機手術患者にprehabilitationが必要かということと、prehabilitationの内容です。ざっくりですが、社会生活(日常生活ではなく)に支障がないレベルの方は、prehabilitationの優先度が低いと考えます。一方、日常生活がギリギリやADLに一部支障があるレベルの方、3メッツ程度の運動に支障のある方、サルコペニアの方の場合には、prehabilitationの優先順位が高いと考えます。
prehabilitationの内容に関しては、有酸素運動とレジスタンストレーニング(筋トレ)の両方を組み合わせるべきだと考えます。組み合わせ方に関してはサルコペニアのほうが問題か、持久力がないほうが問題か、両方とも問題かによって変わってくると思います。そして、それぞれに栄養療法を併用します。
一例として、有酸素運動3時間前に糖質140g摂取。手術3か月前から週3回、1回20-45分実施、筋トレ直後に蛋白10g、糖質7g、脂質3g摂取。手術6週前から週2回実施というものがあります(Killewich LA : Strategies to minimize postoperative deconditioning in elderly surgical patients. J Am Coll Surg. 2006; 203(5):735-45)。脂質摂取のエビデンスは悪液質に対するEPAでなければ特にないと思いますが。
周術期早期回復にリハやリハ栄養がからむことは少なかったのが現状ですが、prehabilitationの適応と内容の検討や、術後早期離床と運動(有酸素運動)の内容の検討などで、お役にたてることがあるかもしれません。
Abstract
BACKGROUND: 'Prehabilitation' is an intervention to enhance functional capacity in anticipation of a forthcoming physiological stressor. In patients scheduled for colorectal surgery, the extent to which a structured prehabilitation regimen of stationary cycling and strengthening optimized recovery of functional walking capacity after surgery was compared with a simpler regimen of walking and breathing exercises.
METHODS: Some 112 patients (mean(s.d.) age 60(16) years) were randomized to either the structured bike and strengthening regimen (bike/strengthening group, 58 patients) or the simpler walking and breathing regimen (walk/breathing group, 54 patients). Randomization was done at the surgical planning visit; the mean time to surgery available for prehabilitation was 52 days; follow-up was for approximately 10 weeks after surgery.
RESULTS: There were no differences between the groups in mean functional walking capacity over the prehabilitation period or at postoperative follow-up. The proportion showing an improvement in walking capacity was greater in the walk/breathing group than in the bike/strengthening group at the end of the prehabilitation period (47 versus 22 per cent respectively; P = 0.051) and after surgery (41 versus 11 per cent; P = 0.019).
CONCLUSION: There was an unexpected benefit from the recommendation to increase walking and breathing, as designed for the control group. Adherence to recommendations was low. An examination of prehabilitation 'responders' would add valuable information.
2011年7月10日日曜日
脳卒中回復期リハへのNST介入 : FIMを用いた効果検証
笛吹 亘、他:脳卒中回復期リハビリテーションへの栄養サポートチーム介入 : Functional Independence Measureを用いた効果検証.リハビリテーション医学45(3), 184-192, 2008を紹介します。
下記のHPからCiNii 論文PDF - オープンアクセスをクリックすれば、全文PDFで見ることができます。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006633373
また、この論文は2008年度優秀論文賞を受賞されています。素晴らしいです。下記のリハニュース42号8ページに論文賞受賞者紹介が掲載されています。ちなみに、よく見ると隣にアンチエイジングニューロリハドクターのブログの百崎先生も奨励賞受賞で掲載されています。
http://www.jarm.or.jp/wp-content/uploads/file/member/member_RN42.pdf
昨日のいしかわ地域リハ研究会の講演会で笛吹先生とお話させていただく機会があり、この論文の別刷をいただきました。どうもありがとうございます。
回復期リハ病棟におけるNSTの有用性を検証した論文で、私はもちろん存在は以前から知っていました。回復期リハ病棟では急性期病院以上に適切なリハ栄養管理が重要ですし、このような素晴らしい臨床研究がもっと増えて、臨床現場でのリハ栄養管理の質がさらに向上するとよいと感じています。
ただこれから同じような臨床研究を行うのであれば、BMIよりもMNA-SFなどを栄養指標としたほうがよいとは思います。廃用症候群のリハ栄養の研究を行っている経験では、BMIではなかなか差や関連が出にくいというのが個人的印象です。
抄録
回復期リハビリテーション病棟での栄養サポートチーム(NST)介入効果をFIMを用いて後方視的に検討した.脳卒中患者304名を対象にNST介入対象者を栄養強化群と減量群に分類し,各々をNST介入非対象者(非NST群)と比較した.FIM利得は栄養強化群17.3±15.9,非NST群16.7±12.5と両群に有意差はなかったが,FIM効率は栄養強化群0.20±0.19,非NST群0.27±0.19と有意差を認めた.入院時FIM得点が54点以下の患者ではFIM利得,FIM効率ともに両群に有意差を認めなかった.入退院時BMI変化とFIM変化の間で一定の傾向を認めなかった.栄養介入を要した栄養強化群は一般的には予後不良の群と判断されるにもかかわらず,非NST群と差がなかった今回の結果は,NSTという栄養介入が有用であった可能性を示唆している.
下記のHPからCiNii 論文PDF - オープンアクセスをクリックすれば、全文PDFで見ることができます。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006633373
また、この論文は2008年度優秀論文賞を受賞されています。素晴らしいです。下記のリハニュース42号8ページに論文賞受賞者紹介が掲載されています。ちなみに、よく見ると隣にアンチエイジングニューロリハドクターのブログの百崎先生も奨励賞受賞で掲載されています。
http://www.jarm.or.jp/wp-content/uploads/file/member/member_RN42.pdf
昨日のいしかわ地域リハ研究会の講演会で笛吹先生とお話させていただく機会があり、この論文の別刷をいただきました。どうもありがとうございます。
回復期リハ病棟におけるNSTの有用性を検証した論文で、私はもちろん存在は以前から知っていました。回復期リハ病棟では急性期病院以上に適切なリハ栄養管理が重要ですし、このような素晴らしい臨床研究がもっと増えて、臨床現場でのリハ栄養管理の質がさらに向上するとよいと感じています。
ただこれから同じような臨床研究を行うのであれば、BMIよりもMNA-SFなどを栄養指標としたほうがよいとは思います。廃用症候群のリハ栄養の研究を行っている経験では、BMIではなかなか差や関連が出にくいというのが個人的印象です。
抄録
回復期リハビリテーション病棟での栄養サポートチーム(NST)介入効果をFIMを用いて後方視的に検討した.脳卒中患者304名を対象にNST介入対象者を栄養強化群と減量群に分類し,各々をNST介入非対象者(非NST群)と比較した.FIM利得は栄養強化群17.3±15.9,非NST群16.7±12.5と両群に有意差はなかったが,FIM効率は栄養強化群0.20±0.19,非NST群0.27±0.19と有意差を認めた.入院時FIM得点が54点以下の患者ではFIM利得,FIM効率ともに両群に有意差を認めなかった.入退院時BMI変化とFIM変化の間で一定の傾向を認めなかった.栄養介入を要した栄養強化群は一般的には予後不良の群と判断されるにもかかわらず,非NST群と差がなかった今回の結果は,NSTという栄養介入が有用であった可能性を示唆している.
2011年7月9日土曜日
リハビリ茶屋
今日はリハビリ茶屋というリハビリテーション専門家の栄養/エイジング情報のブログを紹介させていただきます。
http://ameblo.jp/eiyou-rehab/
抗加齢医学の専門歴が理学療法士歴より長く、栄養とリハへの関心も高いので、内容的にとても興味深いです。この方のブログを見ていると、「リハ栄養」でも「栄養リハ」でもいいやという気がしてきます(笑)。ぜひ定期的に見ていただければと思います。
ちなみに7月8日のブログでは、日本リハビリテーション栄養研究会の紹介をしてくださっています。どうもありがとうございます。
抗加齢医学に関心の高いリハ関連職種といえば、私の周りではアンチエイジングニューロリハドクターのブログです。
http://neurorehai.blogspot.com/
私はリハ栄養でしばらく行きますが、サルコペニアを相手にする以上、抗加齢医学にも一定の関心を持たざるを得なくなってきています。「抗加齢リハ医学」という学問分野ができるのも、そう遠くない時代ではないかと推測します。これからの領域ですので、興味のある方にはどんそん参入していただくとよいと思います。
でもリハ栄養にも参入してくださいね(笑)。
http://ameblo.jp/eiyou-rehab/
抗加齢医学の専門歴が理学療法士歴より長く、栄養とリハへの関心も高いので、内容的にとても興味深いです。この方のブログを見ていると、「リハ栄養」でも「栄養リハ」でもいいやという気がしてきます(笑)。ぜひ定期的に見ていただければと思います。
ちなみに7月8日のブログでは、日本リハビリテーション栄養研究会の紹介をしてくださっています。どうもありがとうございます。
抗加齢医学に関心の高いリハ関連職種といえば、私の周りではアンチエイジングニューロリハドクターのブログです。
http://neurorehai.blogspot.com/
私はリハ栄養でしばらく行きますが、サルコペニアを相手にする以上、抗加齢医学にも一定の関心を持たざるを得なくなってきています。「抗加齢リハ医学」という学問分野ができるのも、そう遠くない時代ではないかと推測します。これからの領域ですので、興味のある方にはどんそん参入していただくとよいと思います。
でもリハ栄養にも参入してくださいね(笑)。
2011年7月7日木曜日
悪液質に対する薬物療法レビュー
悪液質に対する薬物療法のレビュー論文を紹介します。
Elamin E. Dietary and Pharmacological Management of Severe Catabolic Conditions. Am J Med Sci. 2011 Jun 24. [Epub ahead of print]
以前は悪液質に対してプロゲステロンかステロイド程度しかありませんでしたが、現在ではその他に抗セロトニン薬、BCAA、EPA、メラノコルチン拮抗薬、抗ミオスタチン薬といった選択肢も出てきています。図を参照してください。
臨床現場で実際に使用できるのは、BCAAとEPA程度ですが、悪液質に対して必ず有効とは言えませんが、これらは試してみてよいのではないかと私は感じています。
Abstract
INTRODUCTION: Nutritional debilitation is among the most devastating and life-threatening complications of cancers and various chronic diseases. It arises from a complex interaction between the illness and the host. This process includes cytokine production, release of lipid-mobilizing and proteolysis-inducing agents and alterations in intermediary metabolism. As a result, many patients develop cachexia with progressive body fat and muscle tissue wasting with associated worsening of their clinical status and a lower quality of life. This review will provide up-to-date information about different pharmacological management of cachexia.
FINDINGS: Until recently, the 2 major options for pharmacological therapy have been either progestational agents or corticosteroids. However, knowledge of the mechanisms of cachexia has led to newer therapeutic interventions for treating several aspects of the syndrome. These include antiserotonergic agents, branched-chain amino acids, eicosapentanoic acid, melanocortin antagonists and antimyostatin agents-all of which act on the feeding-regulatory circuitry to increase appetite and inhibit illness-derived catabolic elements.
CONCLUSIONS: Information from this review will guide health care providers in limiting weight loss and improve performance status of the cachectic patients through dietary and pharmacological therapy, with the hope that such approach would extend patients survival and improve their quality of life.
2011年7月6日水曜日
映画に描かれた疾患と絆
安東由喜雄著、映画に描かれた疾患と絆、マネージドケア・ジャパンを紹介します。下記は熊本大学大学院生命科学研究部病態情報解析学分野(臨床検査医学)のHPですが、この書籍のことも紹介されています。
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/diagnostic/index.htm
安東由喜雄先生はこの分野の教授です。下記のHPでこの書籍の内容も含めたエッセイを見ることができます。ぜひこちらから安東先生のエッセイを読んでいただければと思います。
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/diagnostic/esseyando.html
月刊メディカルクオールという雑誌に10年間連載を続けており、この書籍が3冊目とのことです。
私は昨日、安東先生からのお声かけで熊本大学病院NSTフォーラムで講演させていただきました。そのときにこの書籍をいただき、熊本からの帰りに拝読させていただきました。どうもありがとうございました。
まず医学的にも面白いです。私には臨床遺伝学の知識が少ないので、この点での学びがあります。これを映画などと絡めて紹介している様子は何重にも面白く、まさにクリスタライズされた作品だと感じました。また、安東先生の人への優しさや愛情、社会に対する視点(厳しい視点も含めて)も伝わってきます。
Cinemeducationという映画の一場面を使って、登場人物の感情や人間関係などについてディスカッションする学習手法がありますが、それに通じるものがあります。ただ、Cinemeducationよりこの書籍を読むほうが学びが多いかもしれません。もちろん映画を見ることも大切ですが。
私には想像できないくらい大変お忙しい中で、10年間も連載を続けていることにも脱帽です。そして映画鑑賞だけでなく、チェロの演奏も趣味の1つと聞きました。私の時間管理はまだまだ改善の余地が大きいと感じました。
少なくとも私にはこの書籍のような文章は書けないなと痛感し、ブログを書くこともためらわれましたが、今の自分に書けることだけは書いておこうと思いました。ぜひ多くの方に安東先生のエッセイを読んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/diagnostic/index.htm
安東由喜雄先生はこの分野の教授です。下記のHPでこの書籍の内容も含めたエッセイを見ることができます。ぜひこちらから安東先生のエッセイを読んでいただければと思います。
http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/diagnostic/esseyando.html
月刊メディカルクオールという雑誌に10年間連載を続けており、この書籍が3冊目とのことです。
私は昨日、安東先生からのお声かけで熊本大学病院NSTフォーラムで講演させていただきました。そのときにこの書籍をいただき、熊本からの帰りに拝読させていただきました。どうもありがとうございました。
まず医学的にも面白いです。私には臨床遺伝学の知識が少ないので、この点での学びがあります。これを映画などと絡めて紹介している様子は何重にも面白く、まさにクリスタライズされた作品だと感じました。また、安東先生の人への優しさや愛情、社会に対する視点(厳しい視点も含めて)も伝わってきます。
Cinemeducationという映画の一場面を使って、登場人物の感情や人間関係などについてディスカッションする学習手法がありますが、それに通じるものがあります。ただ、Cinemeducationよりこの書籍を読むほうが学びが多いかもしれません。もちろん映画を見ることも大切ですが。
私には想像できないくらい大変お忙しい中で、10年間も連載を続けていることにも脱帽です。そして映画鑑賞だけでなく、チェロの演奏も趣味の1つと聞きました。私の時間管理はまだまだ改善の余地が大きいと感じました。
少なくとも私にはこの書籍のような文章は書けないなと痛感し、ブログを書くこともためらわれましたが、今の自分に書けることだけは書いておこうと思いました。ぜひ多くの方に安東先生のエッセイを読んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
2011年7月5日火曜日
Practice based research(JMS)講演
先週末の札幌の日本プライマリ・ケア連合学会で、EBMのワークショップと臨床研究のワークショップで帝京大学ちば総合医療センター地域医療学の井上和男先生と同じグループでした。これは私にとって、とても幸運なことでした。
井上先生はPractice based researchの英語の原著論文にたくさん執筆されていますが、特に素晴らしいのは全ての研究が大学病院や関連した場所でのデータからではないという点です。
Practice based researchはいろんな面で乗り越えなければいけない壁が多く大変ですが、このようにきちんと形にしているのを見ると、自分も形にしなければいけないなと改めて痛感します。ほんと、頑張ります…。
井上先生のPractice based research(JMS)講演「日々の臨床で通り過ぎていくところにテーマはある」のビデオを下記のHPで見ることができます。これを見るだけでかなり学習になりますので、ぜひご覧ください。よろしくお願いいたします。
http://lib-stream0.jichi.ac.jp/contents/all/200900000047.htm
井上先生はPractice based researchの英語の原著論文にたくさん執筆されていますが、特に素晴らしいのは全ての研究が大学病院や関連した場所でのデータからではないという点です。
Practice based researchはいろんな面で乗り越えなければいけない壁が多く大変ですが、このようにきちんと形にしているのを見ると、自分も形にしなければいけないなと改めて痛感します。ほんと、頑張ります…。
井上先生のPractice based research(JMS)講演「日々の臨床で通り過ぎていくところにテーマはある」のビデオを下記のHPで見ることができます。これを見るだけでかなり学習になりますので、ぜひご覧ください。よろしくお願いいたします。
http://lib-stream0.jichi.ac.jp/contents/all/200900000047.htm
2011年7月4日月曜日
日本リハ栄養研究会群馬支部会ホームページ
NPO群馬摂食・嚥下研究会山川先生のご尽力で、日本リハ栄養研究会群馬支部会ホームページを作成していただきました。どうもありがとうございます。
http://jarng.kai-dental.jp/
10月23日の第1回リハ栄養研究会-北関東地方会-の案内もHPに掲載されていますので、よかったら多くの方にご参加いただければと思います。
ちなみに支部・地方会の区分に関しては、12月3日の第1回日本リハ栄養研究会で正式に決めますので、今後変更があるかもしれません。
なお日本リハ栄養研究会のホームページは途中ですが、下記のように作成中です。
https://sites.google.com/site/rehabnutrition/
今後、12月3日の第1回日本リハ栄養研究会の案内もHPで進めていく予定ですので、こちらもよろしくお願いいたします。
http://jarng.kai-dental.jp/
10月23日の第1回リハ栄養研究会-北関東地方会-の案内もHPに掲載されていますので、よかったら多くの方にご参加いただければと思います。
ちなみに支部・地方会の区分に関しては、12月3日の第1回日本リハ栄養研究会で正式に決めますので、今後変更があるかもしれません。
なお日本リハ栄養研究会のホームページは途中ですが、下記のように作成中です。
https://sites.google.com/site/rehabnutrition/
今後、12月3日の第1回日本リハ栄養研究会の案内もHPで進めていく予定ですので、こちらもよろしくお願いいたします。
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