2014年1月29日水曜日

アジアのサルコペニア・コンセンサス論文

アジアのサルコペニア・コンセンサス論文が出版されましたので紹介します。

Chen LK, et al. Sarcopenia in Asia: consensus report of the asian working group for sarcopenia. J Am Med Dir Assoc. 2014 Feb;15(2):95-101. doi: 10.1016/j.jamda.2013.11.025.

ただ抄録しか入手できていないので、詳細はわかりません。ヨーロッパなどのコンセンサス論文と同様に、サルコペニアの診断基準に筋肉量減少だけでなく筋力低下や身体機能低下も含めています。アジアのカットオフ値が明記されているのが特徴です。

Abstract

Sarcopenia, a newly recognized geriatric syndrome, is characterized by age-related decline of skeletal muscle plus low muscle strength and/or physical performance. Previous studies have confirmed the association of sarcopenia and adverse health outcomes, such as falls, disability, hospital admission, long term care placement, poorer quality of life, and mortality, which denotes the importance of sarcopenia in the health care for older people. Despite the clinical significance of sarcopenia, the operational definition of sarcopenia and standardized intervention programs are still lacking. It is generally agreed by the different working groups for sarcopenia in the world that sarcopenia should be defined through a combined approach of muscle mass and muscle quality, however, selecting appropriate diagnostic cutoff values for all the measurements in Asian populations is challenging. Asia is a rapidly aging region with a huge population, so the impact of sarcopenia to this region is estimated to be huge as well. Asian Working Group for Sarcopenia (AWGS) aimed to promote sarcopenia research in Asia, and we collected the best available evidences of sarcopenia researches from Asian countries to establish the consensus for sarcopenia diagnosis. AWGS has agreed with the previous reports that sarcopenia should be described as low muscle mass plus low muscle strength and/or low physical performance, and we also recommend outcome indicators for further researches, as well as the conditions that sarcopenia should be assessed. In addition to sarcopenia screening for community-dwelling older people, AWGS recommends sarcopenia assessment in certain clinical conditions and healthcare settings to facilitate implementing sarcopenia in clinical practice. Moreover, we also recommend cutoff values for muscle mass measurements (7.0 kg/m(2) for men and 5.4 kg/m(2) for women by using dual X-ray absorptiometry, and 7.0 kg/m(2) for men and 5.7 kg/m(2) for women by using bioimpedance analysis), handgrip strength (less than 26 kg for men and less than 18 kg for women), and usual gait speed (less than 0.8 m/s). However, a number of challenges remained to be solved in the future. Asia is made up of a great number of ethnicities. The majority of currently available studies have been published from eastern Asia, therefore, more studies of sarcopenia in south, southeastern, and western Asia should be promoted. On the other hand, most Asian studies have been conducted in a cross-sectional design and few longitudinal studies have not necessarily collected the commonly used outcome indicators as other reports from Western countries. Nevertheless, the AWGS consensus report is believed to promote more Asian sarcopenia research, and most important of all, to focus on sarcopenia intervention studies and the implementation of sarcopenia in clinical practice to improve health care outcomes of older people in the communities and the healthcare settings in Asia.

2014年1月25日土曜日

日本の簡易なサルコペニアスクリーニング

高齢者の簡易なサルコペニアスクリーニングに関する日本の論文を紹介します。

Ishii S, Tanaka T, Shibasaki K, Ouchi Y, Kikutani T, Higashiguchi T, Obuchi SP, Ishikawa-Takata K, Hirano H, Kawai H, Tsuji T, Iijima K. Development of a simple screening test for sarcopenia in older adults. Geriatr Gerontol Int. 2014 Feb;14 Suppl 1:93-101. doi: 10.1111/ggi.12197.

下記HPで全文PDFで入手できます。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.12197/pdf

結論だけ触れますが、年齢、握力、下腿周囲長の3項目で男女別にサルコペニアのスクリーニングが可能です。スコアリングでサルコペニアの確率を判断する方法ですが、在宅や施設では検査機器で筋肉量を評価するよりよいのではと感じます。


Abstract

AIM:

To develop a simple screening test to identify older adults at high risk for sarcopenia.

METHODS:

We studied 1971 functionally independent, community-dwelling adults aged 65 years or older randomly selected from the resident register of Kashiwa city, Chiba, Japan. Data collection was carried out between September and November 2012. Sarcopenia was defined based on low muscle mass measured by bioimpedance analysis and either low muscle strength characterized by handgrip or low physical performance characterized by slow gait speed.

RESULTS:

The prevalence of sarcopenia was 14.2% in men and 22.1% in women. After the variable selection procedure, the final model to estimate the probability of sarcopenia included three variables: age, grip strength and calf circumference. The area under the receiver operating characteristic curve, a measure of discrimination, of the final model was 0.939 with 95% confidence interval (CI) of 0.918-0.958 for men, and 0.909 with 95% CI of 0.887-0.931 for women. We created a score chart for each sex based on the final model. When the sum of sensitivity and specificity was maximized, sensitivity, specificity, and positive and negative predictive values for sarcopenia were 84.9%, 88.2%, 54.4%, and 97.2% for men, 75.5%, 92.0%, 72.8%, and 93.0% for women, respectively.

CONCLUSIONS:

The presence of sarcopenia could be detected using three easily obtainable variables with high accuracy. The screening test we developed could help identify functionally independent older adults with sarcopenia who are good candidates for intervention.

アジアのサルコペニアコンセンサス

アジアのサルコペニアコンセンサスに関する情報が、以下の論文に掲載されていました。下記HPで全文PDFで見れます。

Arai H, Akishita M, Chen LK. Growing research on sarcopenia in Asia. Geriatr Gerontol Int. 2014 Feb;14 Suppl 1:1-7. doi: 10.1111/ggi.12236.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.12236/pdf

Geriatr Gerontol Intのこの号自体がアジアのサルコペニア特集となっていて、上記論文に限らず、全文PDFで読めます。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ggi.2014.14.issue-s1/issuetoc

アジアのサルコペニアコンセンサス論文自体はまだ出版されていません。
Chen LK, Liu LK, Woo J et al. Sarcopenia in Asia: consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia. J Am Med Dir Assoc (in press).

しかし、上記論文にアジアのサルコペニアコンセンサスに関する内容がいくらか記載されていましたので紹介します。

スクリーニングのターゲットは、地域在住高齢者および以下の状況にある高齢者です。最近の機能低下、機能障害の存在、1ヶ月で5%以上の意図しない体重減少、抑うつ気分もしくは認知障害、繰り返す転倒、低栄養、慢性疾患:慢性腎不全・慢性閉塞性肺疾患・糖尿病・慢性腎疾患・結合組織疾患・結核・その他の慢性消耗性疾患。ターゲット年齢は60歳もしくは65歳以上です。

歩行速度と握力でスクリーニングをします。カットオフ値は歩行速度0.8m/s、握力男性26kg、女性18kgとしています。筋肉量のカットオフ値はDEXAとBIAで分けています。四肢骨格筋量を身長で2回割ったappendicular muscle mass/ht2でカットオフ値を出しています。DEXAでは男性7.0kg/m2、女性5.4kg/m2、BIAでは男性7.0kg/m2、女性5.7kg/m2です。

筋肉量、筋力、身体機能でサルコペニアの診断を行うのは、EWGSOPと一緒です。歩行速度のカットオフ値はEWGSOPと同じですが、握力のカットオフ値はEWGSOPよりやや低めになっています。筋肉量はIWGSより若干低めです。

サルコペニアコンセンサス論文を読めていないのでまだ判断はしにくいですが、今後は日本でサルコペニアの診断をする際にも、この基準を用いていくことになるのかと思います。DEXAやBIAができない場合には診断できないのかもしれませんが。

2014年1月23日木曜日

第6 回在宅介護事情調査

日清オイリオグループの第6回在宅介護事情調査に今回、協力させていただきました。

要支援・要介護者の92%に筋力の衰え:自発的に身体を動かしている人は33%と少数~急がれるサルコペニア対策 効率のよい栄養補給も必要~

http://www.nisshin-oillio.com/company/news/archive/2014/20140122_092917.shtml

調査の対象は、60 歳以上の要支援・要介護者の在宅介護に携わっている介護従事者(訪問介護員・介護福祉士)100 名です。以下、上記HPからの引用です。興味のある方はぜひすべての結果をご覧下さい。

サルコペニアの認知度ですが、「サルコペニア」について、言葉の意味まで理解している介護従事者はわずか19%、肥満により筋肉量が減少している「サルコペニア肥満」については13%と更に少なく、介護従事者であっても、「サルコペニア」の概念が広く浸透していない現状が明らかになりました。

以下、私のコメントの引用です。

92%の介護従事者が要支援・要介護者の筋力の衰えを感じていることより、要支援・要介護者のサルコペニア対策は重要な課題といえます。しかし、サルコペニアとサルコペニア肥満の認知度が低いことより、筋力の衰えの原因が加齢、活動(身体活動量低下による廃用性筋萎縮)、栄養(エネルギー摂取不足による飢餓)、疾患(急性炎症・侵襲、慢性炎症・悪液質、神経筋疾患など)であるということも、あまり認識されていないと思われます。サルコペニアという言葉、意味、考え方の重要性を、介護従事者にも広めなければいけません。

 サルコペニア対策として、最も重要なのは運動(筋力トレーニング、有酸素運動)と栄養(十分なエネルギーとたんぱく質摂取)の併用です。運動面では、ご家族やヘルパーの助言があれば身体を動かしているという方が最も多いので、適切な運動のアドバイスを実際に現場で行うことが大切です。栄養面では、エネルギーとたんぱく質が多い補助食品の利用が簡単で効果的ですので、より多くの介護従事者に現場でアドバイスしていただきたいと考えます。

2014年1月20日月曜日

リハ栄養フォーラム2014

今年は5月~9月にかけて全国7か所(熊本、仙台、京都、岡山、札幌、静岡、東京)でリハ栄養フォーラム2014を開催します。リハ栄養フォーラムは日本リハビリテーション栄養研究会の会員でなくても、医療・介護職であれば誰でも参加可能です。

詳細は下記HPをご参照ください。
https://seminar.admin83.jp/forum2014/

リハ栄養フォーラムはリハ栄養の入門~初級編として位置付けています。参加申し込みはこれからですが、多くの方にご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

以下、リハ栄養フォーラム2014の案内です。

昨今、リハビリテーションにおける栄養管理の重要性がますます
高くなっています。障害者や高齢者の方々の社会活動を支え、QOLを
向上させるためにも栄養ケアは欠かせません。このフォーラムでは、
リハ栄養の最前線で活躍される先生方を講師にお招きし、臨床で実践
できるリハ栄養の知識を学ぶ機会を提供させていただきます。

<日程・会場・定員>

■熊本 5月24日(土) 13:00~17:00
くまもと森都心プラザ・プラザホール 
熊本県熊本市西区春日1丁目14番1号
450名 募集開始日:2月18日(火)

■仙台 6月21日(土) 13:00~17:00
仙台市シルバーセンター・交流ホール 
宮城県仙台市青葉区花京院1丁目3番2号
300名 募集開始日:3月11日(火)

■京都 7月5日(土) 13:00~17:00
京都リサーチパーク(KRP)・西地区4号館B1Fバズホール
京都府京都市下京区中堂寺栗田町93番地 
330名 募集開始日:3月25日(火)

■岡山 7月6日(日) 13:00~17:00
コンベックス岡山・国際会議場 
岡山県岡山市北区大内田675番地
250名 募集開始日:3月25日(火)

■札幌 7月26日(土) 13:00~17:00
ACU・16階大研修室1614
北海道札幌市中央区北4条西5丁目 アスティ45内
280名 募集開始日:4月22日(火)

■静岡 8月2日(土) 13:00~17:00
静岡商工会議所会館・5階ホール
静岡県静岡市葵区黒金町20-8
250名 募集開始日:5月13日(火)

■東京 9月20日(土) 10:00~16:00
日本教育会館・一ツ橋ホール
東京都千代田区一ツ橋2-6-2
500名 募集開始日:6月24日(火)

<受講料>
3,000円(税込・熊本、仙台、京都、岡山、札幌、静岡 各会場)
4,000円(税込・東京会場)

<お申込み>
「リハ栄養フォーラム2014」のお申込みは、下記WEBサイトよりお願いします。

インターネット https://seminar.admin83.jp/forum2014/
各会場とも募集開始日(上記ご参照)の午前10:00から受付を開始させていただきます。(24時間受付)

◎お申込み受付後、受講料お振込先のご案内メールをお送りします。
◎ご入金確認後に、受講票、及び会場案内をメールにてお送りします。

※定員になり次第、お申込みを締め切らせていただきます。ご希望に添えない場合はご容赦下さい。

主催:日本リハビリテーション栄養研究会  共催:株式会社クリニコ

<講師>

■熊本
<講演>
若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科
悪液質とサルコペニア~リハ栄養アプローチ~

<症例検討・実践報告>
津田拓郎 先生(理学療法士) 
医療法人社団悠愛会 悠愛病院 リハビリテーション科

三好早苗 先生(歯科衛生士) 
広島大学歯学部 非常勤講師

井村沙織 先生(管理栄養士) 
医療法人共和会 小倉リハビリテーション病院 栄養科

■仙台
<講演>
藤本篤士 先生(歯科医師) 
医療法人渓仁会 札幌西円山病院 歯科
リハ栄養に必要な口腔の実践的知識-摂食嚥下リハと口腔ケア-

<症例検討・実践報告>
吉田 聡 先生(理学療法士) 
医療法人三省会 堀江病院 リハビリテーション科

大黒理江 先生(言語聴覚士)
公益財団法人宮城厚生協会 泉病院 リハビリテーション室

太田香緒里先生(管理栄養士) 
医療法人南東北新生病院 栄養管理科

■京都
<講演>
若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科
悪液質とサルコペニア~リハ栄養アプローチ~

<症例検討・実践報告>
井出浩希 先生(理学療法士) 
国民健康保険 飛騨市民病院 リハビリテーション科

八田理絵 先生(言語聴覚士) 
一般社団法人 愛生会山科病院 リハビリテーション科

東 敬一朗 先生(薬剤師) 
金沢市立病院 薬剤室

■岡山
<講演>
若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科
悪液質とサルコペニア~リハ栄養アプローチ~

<症例検討・実践報告>
岩下正樹 先生(理学療法士) 
社会医療法人緑壮会 金田病院 リハビリテーション科

永見慎輔 先生(言語聴覚士) 
広島市立広島市民病院 耳鼻咽喉科頭頸部外科

鈴木達郎 先生(管理栄養士) 
産業医科大学病院 栄養部

■札幌
<講演>
若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科
悪液質とサルコペニア~リハ栄養アプローチ~

<症例検討・実践報告>
西谷 淳 先生(理学療法士) 
社会福祉法人恩賜財団済生会支部 済生会小樽病院 医療技術部 リハビリテーション科

山田亜紀 先生(歯科衛生士) 
新潟大学医歯学総合病院 診療支援部歯科衛生部門

北岡めぐみ 先生(看護師) 
市立札幌病院 看護部

■静岡
<講演>
若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科
悪液質とサルコペニア~リハ栄養アプローチ~

<症例検討・実践報告>
近藤奈美 先生(看護師) 
みなと医療生活協同組合 協立総合病院 看護部

森本義朗 先生(理学療法士) 
株式会社Mix-up ハイブリッドデイサービスMix-up
みえリハビリテーション研究会 会長

後藤祐子 先生(管理栄養士) 
医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院 診療技術部 栄養指導科

■東京
<講演>
藤本篤士 先生(歯科医師) 
医療法人渓仁会 札幌西円山病院 歯科
リハ栄養に必要な口腔の実践的知識-摂食嚥下リハと口腔ケア-

<症例検討・実践報告>
嶋津さゆり 先生(管理栄養士) 
社会医療法人社団 熊本丸田会 熊本リハビリテーション病院
栄養管理部 栄養管理科

高橋浩平 先生(理学療法士) 
医療法人社団 東光会 戸田中央リハクリニック 主任

若林秀隆 先生(医師) 
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター リハビリテーション科

※都合により、講師・配属先が変更になる場合がございますので、ご了承下さい。

2014年1月18日土曜日

悪液質とサルコペニア‐リハビリテーション栄養アプローチ

荒金英樹・若林秀隆編著:悪液質とサルコペニア‐リハビリテーション栄養アプローチ、医歯薬出版が、2月のJSPEN横浜までに出版予定です。悪液質の勉強になること、間違いないと思います。多くの方に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願い申し上げます。

http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=214410

サルコペニアと死亡リスク

最近、サルコペニアが心血管死亡や全原因死亡のリスクという論文がいくつかありましたので、論文つぶやきをまとめておきます。高齢者・健常者の報告もありますが、がん、重症疾患・ICU、肝疾患での報告が多いですね。

これだけサルコペニアと死亡リスクに関連があると、サルコペニア(二次性で低栄養、廃用、悪液質も含む)の早期発見や予防、治療が重要です。そのためにも早く臨床でも研究でも容易に使える診断基準ができてほしいですね。

<高齢者・健常者>
高齢者では筋肉量が少ないほど心血管死亡、全死亡が高くなるという報告です。BMIと死亡率との関係はUカーブですが、筋肉量と死亡率の関係は直線的のようですので、リスクの高い高齢者ではサルコペニアの評価が重要と結論づけています。
www.sciencedirect.com/science/articl





















2014年1月8日水曜日

第17回日本病態栄養学会とリハ栄養

今週末に第17回日本病態栄養学会学術集会が開催されます。今回は昨年までの学術集会と比較して、リハ栄養関連のプログラムや演題が増えていると感じます。

http://www.eiyou.or.jp/gakujutsu/index.html

シンポジウムには、「食物摂取と活動エネルギーの出納の観点からのリハビリテーション」があり、これは完全にリハ栄養です。他にも「運動と栄養」や「スポーツ競技と健康増進に資する栄養支援と運動処方」のシンポジウムもあり、リハ栄養関連といえます。

さらにPresidential Poster(優秀ポスター)では10演題中、以下の5演題が大腿骨近位部骨折、慢性閉塞性肺疾患、心不全と心臓リハ、ロコモティブシンドーム、サルコペニアですので、リハ栄養関連といえます。
http://www.eiyou.or.jp/gakujutsu/pdf/prg_poster.pdf

P-004 (O-152) 大腿骨近位部骨折患者における周術期栄養状態の推移に関連する要因の検討
近森病院 栄養サポー トセンター友原妃東美、他

P-005 (O-143) 低強度運動療法施行中の慢性閉塞性肺疾患者に対する栄養補給介入の病期分類別効果:多設共同前向き研究
市立秋田総合病院 リハビリテーション科 菅原 慶勇、他

P-006 (O-188) 心不全患者における低 Alb血症と心臓リハビリテーションの関連
関西電力病院 リハビリテーション科 尾崎 泰、他

P-008 (O-374) 高齢女性の筋肉量および体力、栄養摂取とロコモティブシンドロームとの関連
静岡県立大学 臨床栄養学 野毛さち子 、他

P-009 (O-384) 介護高齢者施設入所者におけるサルコペニアの現状と栄養状態との関係
藤女子大学 人間生活学研究科食物栄養専攻  武部久美子、他

その他にも一般演題の中には「リハと栄養管理」や「サルコペニア」のセッションはありませんが、リハ栄養関連の一般演題が散見されます。リハ栄養関連の発表やプログラムが増加傾向にあることは嬉しいですね。この傾向が続くことを期待しています。

2014年1月3日金曜日

大腿骨近位部骨折のリハ栄養RCTプロトコール

大腿骨近位部骨折の高齢者に対するリハ栄養のRCTプロトコール論文です。

Malafarina V, Uriz-Otano F, Gil-Guerrero L, Iniesta R, Zulet MA, Martinez JA.Study protocol: High-protein nutritional intervention based on β-hydroxy-β-methylbutirate, vitamin D3 and calcium on obese and lean aged patients with hip fractures and sarcopenia. The HIPERPROT-GER study. Maturitas. 2013 Oct;76(2):123-8.

介入群ではリハ病棟入院中に30日間、ensure plus advanceという栄養剤を1日2本飲んでもらい、ADL改善を一次アウトカムとしています。リハ栄養の介入研究を考えている方には読んでほしい論文です。

ちなみにensure plus advanceは1本220mlで、1.5kcal/ml、蛋白質22%、脂質29%、糖質47%、フラクトオリゴ糖1%です。HMBが0.55g/100ml、ビタミンDが227UI/100ml、カルシウムが160mg/100mlです。こういうリハ栄養用の栄養剤を日本でも販売してほしいですね。

Abstract

INTRODUCTION:

Loss of muscle strength is associated with falls, which, in turn, are the main cause of hip fractures in elderly people. The factors that most influence loss of strength in elderly people are a decrease in muscle mass, i.e. sarcopenia, and an increase in fat, i.e. obesity.

METHODS:

A prospective randomized clinical trial among patients who have undergone an operation for a traumatic hip fracture and who are aged 65 or above will be implemented. We shall compare a control diet against a high-protein diet enriched with β-hydroxy-βmethylbutirate, calcium and vitamin D. The diet will be administered during 30 days of hospitalization in the orthopaedic geriatric rehabilitation unit. There will be 50 patients in each arm of the study. The main objective is to assess whether the experimental diet, together with rehabilitation, improves functional recovery, measured on the Barthel index. Secondary objectives are to assess changes in body composition and the prevalence of sarcopenia, obesity and mortality one year after the hip fracture. We shall also assess whether there is a relationship between specific inflammatory markers, sarcopenia and functional recovery.

CONCLUSIONS:

Ageing is accompanied by changes in body composition that increase the risk of falls and progressive functional loss. These factors are a public health problem because they are highly associated with disability in older people. The present study seeks to gain knowledge of those factors that are most often associated with the onset of disability and those that can be modified through diet.

2014年:リハ栄養の各論充実を

2014年のリハ栄養の課題を考えてみます。臨床、教育、研究、管理面とも課題が多いのですが、その原因の1つにリハ栄養の疾患別の各論が弱いことがあげられます。リハ栄養の総論として言葉と考え方はいくらか普及したと感じますが、疾患別の各論はまだまだこれからです。

海外でもリハ栄養の取り組みはあまり聞きませんが、がんに関してはマギル大学のThe McGill Cancer Nutrition and Rehabilitation (CNR) programがあります。下記文献に詳しいです。全文PDFで読めます。

Chasen MR, Dippenaar AP. Cancer nutrition and rehabilitation-its time has come! Curr Oncol. 2008 Jun;15(3):117-22.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2442766/pdf/co15_3p117.pdf

がんのリハ栄養はマギル大学の取り組みを参考にできます。しかし他の疾患に関しては、参考となる取り組みはほとんどありません。心臓領域でリハ栄養という言葉が出てきますが、急性心筋梗塞後の心リハの中に生活習慣病の栄養指導を含んでいるのが主のようです。

日本リハビリテーション栄養研究会の会員の方には、1つに疾患を絞ってリハ栄養を追及してほしいと思います。特にがん、脳卒中、大腿骨近位部骨折、廃用症候群、嚥下障害(誤嚥性肺炎)、COPD、慢性心不全、慢性腎不全(PEW)、慢性肝不全、関節リウマチが重要と考えます。

私もリハ栄養の研究を継続していきますが、個人では1-2疾患について行うのが限度です。多くの方のお力が、リハ栄養の充実に必要です。この疾患のリハ栄養に関しては詳しいという方が増えてくると、それだけリハ栄養の臨床、教育、研究が充実することになります。

2014年、リハ栄養で頑張ろうと考えている方は、ぜひ1つの疾患のリハ栄養を追及していただきたいと思います。日本リハビリテーション栄養研究会ではリハ栄養研究デザイン学習会の実施などで、臨床研究のサポートを行いますので、よろしくお願い申し上げます。