日本エンドトキシン・自然免疫研究会編集、エンドトキシン・自然免疫研究 〈15〉飛躍する自然免疫研究、医学図書出版を紹介します。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4871514528.html
この書籍は年1回開催される日本エンドトキシン・自然免疫研究会の開催記録として出版されているようです。
日本エンドトキシン・自然免疫研究会
http://www.shiga-med.ac.jp/~jesmail/
先週、東京で国際学会と合同開催で研究会が開催されていたようです。私は参加できませんでしたが。
http://www.aeplan.co.jp/ieiis2012/
この書籍の中に近森正昭先生の「急性期における慢性炎症状態」という論文が掲載されていますので、長くなりますが一部引用紹介させていただきます。
侵襲性が高い手術や体外循環、敗血症では高サイトカイン血症が生じ、循環動態、凝固線溶系、代謝、免疫系の異常が生じ2日目以降に回復するが、感染が持続する患者や術後腎不全、透析患者では回復が遅れ、理学療法や蛋白、カロリーの投与によってもADLレベルや栄養状態、アルブミン値は低いままで、合併症頻度が高く死亡率も高い。
サイトカイン上昇で抑制されたTSHが正常化しても、持続感染や腎不全で回復過程が遅れる患者ではFT3が抑制され代謝が低下した状態が続くため、FT3が正常化するまでの期間を指標として高サイトカイン血症からの回復過程を評価した。
回復期にFT3低下が継続するのはサイトカイン血症や回復遅延を示す指標であり回復期の重症度や治療法の評価として利用できる。
心大血管手術例で、腎機能正常群、AKINStage3群、透析患者群でTSH、FT3、アルブミン値の経時的推移を比較した。術後7日目にFT3が正常値以下だったのは、腎機能正常群で20例中2例、AKINStage3群で10例中7例、透析患者群で10例中9例と差があった。
体外循環である血液透析のFT3への影響を知るために、安定した外来維持透析患者41例で透析前後のFT3を測定したが、信頼区間0.5%でP0.001未満と透析後除水によりFT3は上昇した。
1ヶ月以上の運動療法を必要とした歩行回復群のFT3は透析離脱後と歩行開始後に上昇した。FT3の上昇と平行してアルブミンは回復しており、運動量増加により蛋白同化が促進したと考えられる。
敗血症や侵襲性の高い手術で高サイトカイン血症となり、回復過程で腎不全や感染持続によって慢性炎症状態となり回復が遅れる病態をFT3が低下した状態として捉えることができた。高サイトカイン血症からの回復過程がFT3で容易に検証できることで臓器不全治療の改善を望みたい。
以上、引用です。日本の病院内低栄養で大きな問題となるのは、飢餓よりも炎症です。もちろん飢餓も問題ですが、こちらはNSTが普及したことで改善傾向にあると考えます。急性、慢性による低栄養(侵襲、悪液質)の評価と対応がより重要です。
炎症の評価としては白血球数、CRP、アルブミンが参考になりますが、FT3は感度が高いようで、下垂体機能低下症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症など内分泌疾患を合併していない場合には、炎症指標として有用だと考えます。
炎症が改善したから栄養状態、運動機能、ADLが改善するのか、適切な栄養管理と運動療法を行ったから炎症が改善するのか、これは両者の要素があると思います。安静臥床で炎症が亢進する一方、運動には抗炎症作用があります。
高サイトカイン血症に対して不適切な栄養管理と安静臥床を行えば、炎症がより悪化して機能予後や生命予後が悪化する可能性があります。エビデンスは不十分ですが、急性期早期からの適切な栄養管理とリハビリテーションの併用が、急性期における慢性炎症状態の対策に必要だと考えています。
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