2012年9月13日木曜日

ESPEN参加感想最終日

ESPEN最終日は、サルコペニアのセッションに参加しました。

Sarcopenia: does size matter?
・Geriatrics and beyond
・Function is the goal
・Nutiritional determinants of mobility

内容
①Geriatrics and beyond
・ヨーロッパでは障害や施設入所への恐怖が、死への恐怖と同様に大きい。EWGSOPのサルコペニア定義は、障害を予防するために作られた。

・いくつかのコンセンサスによるサルコペニアの定義があるが、いずれも症候群である、筋肉量だけではない、身体機能を含む、悪液質とは異なるという点で一致している。一方、アウトカム、カットオフ値、筋肉内脂肪、サルコペニア肥満、虚弱との関連に関してはまだディスカッションが必要である。

・サルコペニアと身体的な虚弱(Frailty)はほぼ同義に近い。

・出生時体重が少ないとサルコペニアになりやすいという報告がある。

②Function is the goal
・50歳以降は年に1-2%筋肉量が減少し、80歳以降では11-50%がサルコペニア。

・筋力低下は筋肉量低下よりも速度が速く、筋肉量が増えなくても筋力は増えることがある(ABC研究)。薬剤で筋肉量が増加しても、筋力が増加するとは限らない。

・サルコペニアと関連するのは、アナボリック抵抗性、アポトーシス、軽度の炎症、筋肉内脂肪、神経の変化、筋線維の変化、血流減少、栄養、参加ストレス、遺伝など。

・治療は身体活動、筋トレ、カロリー制限(人でのエビデンスはないが)、ホルモン、抗炎症薬、抗酸化。蛋白は1.2g/kg。臥床で必須アミノ酸による筋蛋白合成が減少する。有酸素運動でアナボリック抵抗性が改善する。筋トレ+適切なエネルギー・蛋白摂取が最も有効か。

・ビタミンE、セレン、カロテノイドが低いと筋力が低いというデータはあるが、これらの介入効果は不明。

・サルコペニア肥満の場合、体重減少は生命予後不良と関連するので、どこまで体重を減少させるかは課題。過栄養から軽度肥満のほうが死亡率が低い。筋肉量・筋力増加は必要であるが。

③Nutiritional determinants of mobility
・不適切なエネルギー・蛋白摂取は、筋力、身体機能、生命予後不良と関連する。蛋白摂取量が多いと筋肉量減少が少ない。

・アルツハイマー病でも、栄養状態が悪いと身体機能が低下しやすい。

・ビタミンD血中濃度が身体機能と関連。施設入所者の転倒予防に有用であるが、高容量の投与で転倒増加の報告もある。一方、ビタミンD血中濃度が高いと死亡率が高いという報告もある。

・蛋白質のパルス投与(1回の食事で必要量の70-80%の蛋白質を投与)は賛否両論。

・ビタミンE血中濃度が高いほうが、大腿骨頸部骨折後の回復がよい。ただし、介入効果は不明。

・重炭酸の投与で筋力が増加するというRCTがある。重炭酸の血中濃度が低すぎても、高すぎても身体機能は低くなる。適度な血中濃度が重要。

・地中海食や果物・野菜の多い食事が有効かどうかの介入研究が望まれる。観察研究は多いが、これから介入研究にシフトすべきである。

感想
・大半は知っている研究結果であり、PubMedとGoogle Scholarのアラート機能を活用すれば、論文になっているものに関してはUp to dateな情報を入手できることを再確認できました。

・栄養療法として、n3脂肪酸以外にもビタミンD、ビタミンE、重炭酸、セレンが有用な可能性がありますが、やはり適切なエネルギー・蛋白質(1.2g/kg)の投与が最も重要です。

・EWGSOPのサルコペニア定義は、障害予防だけでなく、障害評価、治療(リハ栄養)にも有用ですが、障害になった後の話はありませんでした。やはり老年医学としてのサルコペニアの話がほとんどであり、障害者のサルコペニア・リハ栄養の話はありませんでした。

・栄養療法もRCTで検証されないといけないという雰囲気がかなりありました。リハ栄養に関しては当面、観察研究の数を増やしていくことでよいと思いますが、いずれは介入研究も行っていかなければいけないと改めて感じました。

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