日本リハビリテーション医学会の震災関連情報センターより発信された情報が、rehay_jishin on Twitter リハビリ医療と東北関東大地震を考える
http://rehayjishin.jugem.jp/
のブログに掲載されていましたので、同じ内容をここにも掲載することにしました。以下、転載です。
1.物資調達と輸送に関して
1)東京都では、救援物資について受付しています(東京都内からのものに限定)。
①赤ちゃん用品として熱さまシート、紙おむつ(新生児S、M、L、ビッグサイズ)、おしり拭き、ベビーローション、ベビーオイル等、②高齢者用品として、大人用紙おむつ、介護用ウェットシート、介護食用とろみ剤等、③生活用品として、コンタクトのケア用品(洗浄液、コンタクトケース)、使い捨てカイロ、生理用品、紙コップ、サランラップ等、④飲料水の支援を受け付けています。薬品については、含まれていません。嚥下リハ学会では「介護食用とろみ剤等」を集めたとのことです。
(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3hd00.htm)
2)同様の「救援物資の受付」は一例で、岡山県でも確認しています。各県のホームページをご覧ください。個別に大量の物資を送付することは、せっかくの善意の物資がかえって、被災地の負担を強いる恐れがあります。
3)医薬品、医療器材、杖、装具、車椅子、福祉機器などの物資については、調達方法と輸送手段、現時点での需要については、把握できていません。日本医師会が医薬品メーカーの協力を得て、糖尿病薬や降血剤などの医薬品を岩手県、宮城県、福島県に送り、避難所に提供する予定との情報はあります。
2.リハ患者の受け入れ体制の整備に関して
1)リハ医学会地方会単位で受け入れ可能な病院(一般病床、回復期リハ病棟を含む)のリストが次々提出され、菅俊光先生が集約されました。リハ学会の会員用Webページの掲示板「全会員用」に掲載されています。患者を地方へ輸送するシステムは、今のところ確立されているわけではありません(リハ学会が宮城県との交渉によって移送手段として確保していた大型バスは、必要性が生じた時には利用可能のようです)。
2)回復期リハ病棟連絡協議会からは、さらに近い県(東京都、埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県、茨城県、秋田県、青森県、北海道)の受け入れ可能な回復期病院のリストが届いています。園田茂先生が集約され、菅俊光先生のファイルに組み込まれています。
3)全国肢体不自由児施設運営協議会、日本重症児福祉協会では障害児受け入れリストが作成され、福島整肢療護園からの障害児の受け入れが決定しました。
4)頸損患者の受け入れについては東北大学を中心に行い、宮城県の患者は終了しています。
5)透析患者の受け入れは亀田総合病院など単独で行っていますが、リハ病院については遠路への単独移送の情報は把握していません。日本腎臓学会でもメーリングリスト[jsn-kikikanri:番号]によって、透析受け入れ先について情報網が利用されています。日本透析医学会や日本腹膜透析医学会のホームページも活用してください。
6)東北大学のリハ科病棟は、脊髄損傷患者以外に透析患者も続々運ばれています。2−3日で関東や東北の他施設に転送する予定です。緊急時なのでリハ患者に限定するわけにはいきません。
3.医療制度の特例措置に関して
1)厚生労働省保険局医療課・厚生労働省老健局老人保健課から、「平成23 年東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の地震の被災に伴う保険診療関係等の取扱いについて」と題する通達が3月15日付で発行されています。1.保険医療機関等の建物が全半壊した場合の取扱い、2.保険調剤の取扱い、3.定数超過入院について、4.施設基準の取扱いについて、5.診療報酬の請求等の取扱いについて、6.訪問看護の取扱いについて、です。医療が行い易いよう基準が緩和されています。
(http://www.ccfj.jp/pdf/20110317-1.pdf)
4.医師の現地への派遣に関して
1)東北大学の医療キャラバン隊に毎日2名のリハ医が同行し、当面は現地での情報収集と一般医としての医療支援を行っています。
2)DMAT(災害派遣医療チーム)の役割は終了しましたが、岩手医科大学から各県に一般医の派遣要請があり、3月24日から4月下旬の予定で各県から医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)のチームが順次、派遣されます。そのため、岡山県からは大学病院には要請がありました。千葉県も同様のルートと考えていますが、定かではありません。リハ科も種々の疾患に対応可能ですので参加が求められます。
3)日本医師会はJMAT(日本医師会災害医療チーム)を組織していますが、県単位の医師会にご確認ください。
(http://www.med.or.jp/etc/eq201103/22chi1_197s.pdf)
4)ほかに、日赤、大学、国立医療機関、労災病院、等、各種の組織による現地派遣が続々と始まっています。
5)個別に応援に行きたい場合には、車、ガソリン、食事、寝袋等はすべて自前になります。車は、冬タイヤ付の4WDが望ましいです。残念ですが、途中で事故に遭っても応援は来てくれないものとの覚悟が必要です。ガソリンは特に深刻です。宮城県の方は「緊急通行車両確認証明書」を県警本部から発行してもらえれば、優先的にガソリンを供給してくれるガソリンスタンド(仙台市内に2か所しかない)が使えます。そこでは証明書を持った車でも、ガソリンを供給してもらうのに1~2時間待ちの状態です。被災地に来られるときは少なくともそのような証明書がないと無理とお考えください。
5.コメディカルの現地への派遣に関して
1)看護協会は災害研修を受けた看護師を独自で派遣の予定です。
2)岩手医科大学から各県に派遣要請されたのは、医師と同様です。療法士も含んでいるようです。
6.一般人のボランティアに関して
1)遠隔地域からのボランティアが必要なのは、「生活復興支援」の段階です。今しばらくお待ち下さい。
2)義援金の対応をご利用ください。
7.被災地の患者の現状についての情報
1)避難所生活において寒さ、ストレス、血圧コントロールの不良等によって、脳卒中が多発しているという情報がありますが、実態は不明です。
2)避難所では、寝て過ごす高齢者が多いため、廃用症候群の進行が危惧されています。運動指導の必要性が高いと考えられますが、具体的対応についての情報は今のところありません。
2011年3月21日月曜日
災害時のリハ栄養・持久力低下
災害時の持久力低下について、リハ栄養の視点から検討します。
持久力低下の原因をサルコペニアと同様に、加齢、活動、栄養、疾患の4つの原因に分けて考えます。
加齢:被災地域には高齢者が少なくないので、被災前から加齢による持久力低下を認めていた可能性があります。
活動:避難所生活では活動量が少なくなりがちなので、不活動による持久力低下が生じやすいです。被災地域は移動手段が自動車というところが多いので、被災前から活動量が少ない可能性があります。
栄養:十分な食事・水分の確保ができていなければ、低栄養や鉄欠乏などで貧血となります。ただし、脱水を合併していると検査値上は正常範囲ということもあります。エネルギー摂取量が少ないと、肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンが不足するため、持久力が低下します。
疾患:被災前から呼吸不全、心不全などの併存疾患を有する場合には持久力が低下します。感染症などで侵襲を合併している場合にも、持久力は低下します。
この他にも精神面の要素が重要です。抑うつ状態で持久力が低下している方や、精神的に動く気になれない、食べる気になれない方は少なくないと思います。このような方を無理に動かそうとしたり食べさせそうとしたりすると、逆効果になる恐れがあります。
持久力低下への対応は原因によって異なります。
加齢や活動による持久力低下の場合には、持久力増強訓練を行います。機能改善を目標とした機能訓練の適応です。ただし精神面への配慮が必須です。
低栄養による持久力低下の場合には、適切な栄養管理が必要です(食思不振や嚥下調整食・栄養材・輸液製剤の不足などで、適切な栄養管理の実施は現実的にはかなり難しいですが…)。飢餓で不適切な栄養管理のときに持久力増強訓練を行っても、栄養状態が悪化して持久力はかえって低下しますので禁忌です。持久力改善を目指さないような軽度の有酸素運動や体操は、廃用予防として行ってよいですが、低栄養・脱水が進行するリスクを考慮して内容や程度を決めることが必要です。
疾患による持久力低下の場合、原疾患の治療が最も重要です。侵襲が軽度であれば、同時に飢餓予防の栄養管理と軽度の運動療法を併用します。
以上のように持久力低下の原因にあわせて、持久力増強訓練を行うべき場合と禁忌の場合を判断することが必要です。軽度の有酸素運動や体操であっても、行わないほうがよい場合もあります。また、すでに不活動や脱水などによって深部静脈血栓症を潜在的に認めていて、運動することで肺塞栓となる可能性もあります。
廃用予防、体力・持久力維持が重要なのは確かですが、その原因を考慮しないでいきなり運動療法を行うことは危険です。個々の原因を判断したうえで、その方に最適な廃用予防、体力・持久力維持のプログラムの立案と実施が重要です。
持久力低下の原因をサルコペニアと同様に、加齢、活動、栄養、疾患の4つの原因に分けて考えます。
加齢:被災地域には高齢者が少なくないので、被災前から加齢による持久力低下を認めていた可能性があります。
活動:避難所生活では活動量が少なくなりがちなので、不活動による持久力低下が生じやすいです。被災地域は移動手段が自動車というところが多いので、被災前から活動量が少ない可能性があります。
栄養:十分な食事・水分の確保ができていなければ、低栄養や鉄欠乏などで貧血となります。ただし、脱水を合併していると検査値上は正常範囲ということもあります。エネルギー摂取量が少ないと、肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンが不足するため、持久力が低下します。
疾患:被災前から呼吸不全、心不全などの併存疾患を有する場合には持久力が低下します。感染症などで侵襲を合併している場合にも、持久力は低下します。
この他にも精神面の要素が重要です。抑うつ状態で持久力が低下している方や、精神的に動く気になれない、食べる気になれない方は少なくないと思います。このような方を無理に動かそうとしたり食べさせそうとしたりすると、逆効果になる恐れがあります。
持久力低下への対応は原因によって異なります。
加齢や活動による持久力低下の場合には、持久力増強訓練を行います。機能改善を目標とした機能訓練の適応です。ただし精神面への配慮が必須です。
低栄養による持久力低下の場合には、適切な栄養管理が必要です(食思不振や嚥下調整食・栄養材・輸液製剤の不足などで、適切な栄養管理の実施は現実的にはかなり難しいですが…)。飢餓で不適切な栄養管理のときに持久力増強訓練を行っても、栄養状態が悪化して持久力はかえって低下しますので禁忌です。持久力改善を目指さないような軽度の有酸素運動や体操は、廃用予防として行ってよいですが、低栄養・脱水が進行するリスクを考慮して内容や程度を決めることが必要です。
疾患による持久力低下の場合、原疾患の治療が最も重要です。侵襲が軽度であれば、同時に飢餓予防の栄養管理と軽度の運動療法を併用します。
以上のように持久力低下の原因にあわせて、持久力増強訓練を行うべき場合と禁忌の場合を判断することが必要です。軽度の有酸素運動や体操であっても、行わないほうがよい場合もあります。また、すでに不活動や脱水などによって深部静脈血栓症を潜在的に認めていて、運動することで肺塞栓となる可能性もあります。
廃用予防、体力・持久力維持が重要なのは確かですが、その原因を考慮しないでいきなり運動療法を行うことは危険です。個々の原因を判断したうえで、その方に最適な廃用予防、体力・持久力維持のプログラムの立案と実施が重要です。
2011年3月20日日曜日
EPCRCのがん悪液質ガイドライン

先月、EPCRCの正式な悪液質ガイドラインが出されました。愛生会山科病院の荒金英樹先生に教えていただきました。どうもありがとうございます。
Clinical practice guidelines on cancer cachexia in advanced cancer patients with a focus on refractory cachexia
下記のHPから全文PDFで見ることができます。
http://www.epcrc.org/guidelines.php?p=cachexia
タイトルにもあるように今回は、不応性悪液質(refractory cachexia)に焦点をあてています。今まで前悪液質と悪液質の診断基準に関する論文はありましたが、不応性悪液質の診断基準をある程度示したガイドラインは初めてです。なおこのガイドラインはがんによる悪液質が対象ですが、その他の疾患(慢性感染症、膠原病、慢性臓器不全:心臓、呼吸、肝臓、腎臓)による悪液質にもかなりあてはまると考えています。
悪液質とリハはもともと緩和リハで親和性がありますが、リハ栄養・サルコペニアの視点で考えるとさらに親和性があります。リハ、栄養、緩和医療がますます切り離せなくなってきました。リハ栄養的にはかなり重要なガイドラインですので、興味のある方はぜひご一読下さい。
以下、ポイントのみいくつか紹介します。
・悪液質の定義
Cancer cachexia is a multi-factorial syndrome defined by an ongoing loss of skeletal muscle mass (with or without loss of fat mass) that cannot be fully reversed by conventional nutritional support and leads to progressive functional impairment. The pathophysiology is characterized by a negative protein and energy balance driven by a variable combination of reduced food intake and abnormal metabolism.
これは先月のLancet Oncologyに掲載された論文と同じです。
・悪液質のステージ
前悪液質pre-cachexia、悪液質cachexia、不応性悪液質refractory cachexiaの3段階に分類。
これも先月のLancet Oncologyに掲載された論文と同じですが図に示します。悪液質のステージ分類はとても大事ですが、pre-cachexiaとrefractory cachexiaの日本語訳で定まったものはまだありません。私のこの訳で大きな間違いはないと思いますが、日本静脈経腸栄養学会や日本緩和医療学会のガイドラインで、早く悪液質のステージ分類を採用してほしいです。
・不応性悪液質の特徴と診断基準
不応性悪液質の特徴はperformance status(PS)が3(限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす)もしくは4(全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベットか椅子で過ごす。)で、生命予後が3カ月未満である。
Refractory cachexia is characterised by a low performance status (WHO 3 or 4) and life
expectancy less than 3 months.
不応性悪液質診断基準も図に示しましたが、以下の通りです。
Fulfil critera for cachexia definition:悪液質の診断基準に該当
Prognosis < 3 months:生命予後が3カ月未満
Performance status WHO 3 or 4:PSが3か4
Unresponsive to anti-cancer therapy:抗がん治療の効果がない
Ongoing catabolism at increasing rate:異化が進んでいる
Unsuitable for artificial nutritional support:人工的栄養サポートの適応がない
・悪液質に対する運動療法
以下のような推奨がされています。身体機能の維持に有効であり、個別化した介入をしなければいけません。ただし、どの程度の運動療法(有酸素運動、レジスタンストレーニングとも)が悪液質と不応性悪液質に有効かは不明です。
Recommendation
In cancer patients, physical training and other physical treatment options are beneficial as a preventive procedure to maintain functional status. The activities and training interventions have to be individualized (overall level of recommendation: strong positive; mean consensus 7.92). However, most research has been done in patients treated with curative intent, and it is not clear to what extent physical training is appropriate in patients with advanced cancer/refractory cachexia.
運動療法の抗炎症作用を期待したいところですが、エビデンスは少ないのが現状です。個人的見解ですが、不応性悪液質の時期はレジスタンストレーニングは禁忌で、機能維持目的の訓練のみが適応と考えます。一方、前悪液質と悪液質の時期は十分なエネルギー摂取量が確保されていれば、低(~中)負荷の有酸素運動とレジスタンストレーニングの適応はあると考えます。
災害時のリハ栄養・サルコペニア
日本作業療法士協会HPに、生活機能対応専門職チームを結成して3月26日からパイロット活動(対象:仙台市若林区避難所)が行われることが掲載されています。
http://www.jaot.or.jp/members/members/
「生活機能対応専門職チームの目的は、廃用性症候群の予防、心身機能の維持、主体的な生活の再構築の3点です。具体的な支援としては、相談(傾聴・情報提供)、動作指導、環境整備(物・人・生活リズム)となります。」とあります。この3つの目的に関しては異論ありませんし、3月中に活動を開始することは素晴らしいです。
参加団体は、日本作業療法士協会、日本理学療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本リハビリテーション医学会、日本精神保健福祉士協会、日本臨床心理士会、日本心理臨床学会、日本介護支援専門員協会、全国社会福祉協議会、日本介護福祉士会です。多くの団体が参加していますが、リハ栄養的には、日本栄養士会にもぜひ参加してほしいです。
避難所などにおいて廃用症候群の予防が重要であることは確実です。しかし、機能訓練・ADL訓練だけの視点で動作指導を行うと、リハ栄養的には逆効果となる可能性があります。
避難所によっては食事・水分などが十分行きとどいているところもあるようですが、一方で今でも1日おにぎり1個だけという話もあります。また、食事・水分などが十分にあっても、精神的なショックで食思不振となり、ほとんど食事も水分も摂取していない被災者がいるかもしれません。
そのため、廃用予防というリハの視点だけで考えるのではなく、サルコペニア予防というリハ栄養の視点で考えるほうが有用だと考えます。
災害時のサルコペニアのリスクを、加齢、活動、栄養、疾患の4つのサルコペニアの原因にわけて、それぞれ検討します。
加齢:被災地域は高齢化が進んでいる地域が多いので、被災者には高齢者も少なくありません。被災前からサルコペニアである高齢者もいる可能性があります。
活動:避難所生活をしていれば、活動量はどうしても少なくなります。廃用性筋萎縮だけでなく、深部静脈血栓症や肺塞栓のリスクも高まります。
栄養:上述の通り、食事・水分の経口摂取が不十分で、飢餓、脱水状態となっている可能性があります。脱水になると深部静脈血栓症や肺塞栓だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。食思不振などで食事・水分の経口摂取が困難であっても、栄養材や輸液製剤が不十分であることは言うまでもありません。
疾患:被災前から侵襲・悪液質・神経筋疾患などを合併している可能性があります。避難所生活での寒さ、不衛生、栄養不良などで感染症を併発しやすい環境です。そうなると侵襲による筋肉分解が進みます。
被災者が加齢と活動によるサルコペニアのみで、栄養や疾患に全く問題がないのであれば、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行えば、一定の効果を期待できます。
一方、栄養や疾患によるサルコペニアを併発している場合には、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行行うと、さらなる筋肉量・筋力低下、低栄養、脱水を引き起こす可能性があります。被災者には栄養や疾患によるサルコペニアを併発していることが少なくありません。逆効果の可能性の認識が重要です。
ICF(国際生活機能分類)の心身機能には栄養関連の項目が含まれていますから、「生活機能対応専門職チーム」として活動するのであれば、栄養の視点も生活機能の中に含まれなければいけません。そのためにも日本栄養士会と協働して活動するか、管理栄養士以外の参加者がリハ栄養の視点を持って活動するかの、いずれかが大切です。
病院・施設・在宅でもリハ栄養の考え方は重要ですが、災害時はより重要です。「生活機能対応専門職チーム」にはリハ栄養の視点をもって、多くの成果を出してほしいと期待しています。
http://www.jaot.or.jp/members/members/
「生活機能対応専門職チームの目的は、廃用性症候群の予防、心身機能の維持、主体的な生活の再構築の3点です。具体的な支援としては、相談(傾聴・情報提供)、動作指導、環境整備(物・人・生活リズム)となります。」とあります。この3つの目的に関しては異論ありませんし、3月中に活動を開始することは素晴らしいです。
参加団体は、日本作業療法士協会、日本理学療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本リハビリテーション医学会、日本精神保健福祉士協会、日本臨床心理士会、日本心理臨床学会、日本介護支援専門員協会、全国社会福祉協議会、日本介護福祉士会です。多くの団体が参加していますが、リハ栄養的には、日本栄養士会にもぜひ参加してほしいです。
避難所などにおいて廃用症候群の予防が重要であることは確実です。しかし、機能訓練・ADL訓練だけの視点で動作指導を行うと、リハ栄養的には逆効果となる可能性があります。
避難所によっては食事・水分などが十分行きとどいているところもあるようですが、一方で今でも1日おにぎり1個だけという話もあります。また、食事・水分などが十分にあっても、精神的なショックで食思不振となり、ほとんど食事も水分も摂取していない被災者がいるかもしれません。
そのため、廃用予防というリハの視点だけで考えるのではなく、サルコペニア予防というリハ栄養の視点で考えるほうが有用だと考えます。
災害時のサルコペニアのリスクを、加齢、活動、栄養、疾患の4つのサルコペニアの原因にわけて、それぞれ検討します。
加齢:被災地域は高齢化が進んでいる地域が多いので、被災者には高齢者も少なくありません。被災前からサルコペニアである高齢者もいる可能性があります。
活動:避難所生活をしていれば、活動量はどうしても少なくなります。廃用性筋萎縮だけでなく、深部静脈血栓症や肺塞栓のリスクも高まります。
栄養:上述の通り、食事・水分の経口摂取が不十分で、飢餓、脱水状態となっている可能性があります。脱水になると深部静脈血栓症や肺塞栓だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。食思不振などで食事・水分の経口摂取が困難であっても、栄養材や輸液製剤が不十分であることは言うまでもありません。
疾患:被災前から侵襲・悪液質・神経筋疾患などを合併している可能性があります。避難所生活での寒さ、不衛生、栄養不良などで感染症を併発しやすい環境です。そうなると侵襲による筋肉分解が進みます。
被災者が加齢と活動によるサルコペニアのみで、栄養や疾患に全く問題がないのであれば、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行えば、一定の効果を期待できます。
一方、栄養や疾患によるサルコペニアを併発している場合には、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行行うと、さらなる筋肉量・筋力低下、低栄養、脱水を引き起こす可能性があります。被災者には栄養や疾患によるサルコペニアを併発していることが少なくありません。逆効果の可能性の認識が重要です。
ICF(国際生活機能分類)の心身機能には栄養関連の項目が含まれていますから、「生活機能対応専門職チーム」として活動するのであれば、栄養の視点も生活機能の中に含まれなければいけません。そのためにも日本栄養士会と協働して活動するか、管理栄養士以外の参加者がリハ栄養の視点を持って活動するかの、いずれかが大切です。
病院・施設・在宅でもリハ栄養の考え方は重要ですが、災害時はより重要です。「生活機能対応専門職チーム」にはリハ栄養の視点をもって、多くの成果を出してほしいと期待しています。
瀬田先生からの報告その3
瀬田先生からの被災地報告その3(慈恵向けの報告ですのでそのような内容になっています)を転載させていただきます。以下、転載です。
私は、予定が変更となり、石巻、気仙沼等から搬送される患者で、リハ科でも対応可能な患者を東北大学で受け
入れるため、石巻行きは、他の医師に任せ、私は仙台に留まることにしました。
昨夜、内科佐藤病院の佐藤先生から連絡がありました。慈恵宮城県支部からの要請により、各地の慈恵OBOGから支援の意思が表明されました。しかし、いまだ仙台も含め、食糧・燃料が緊急車両でさえ確保が難しい状況で、人員を派遣いただく場合、「自給自足の自立した部隊で」というのが条件となってしまいます。
仙台まで医療材料を運び込むまでなら、緊急車両の登録をし、往復の燃料を関東で確保すれば可能と思われるので、医療材料を仙台まで運んできてもらうことを、積極的に要請することになりました。仙台に到着後は、さらなる物品の搬送を宮城県や東北大学に任せるのが一般的と思われますが、私が把握する限り、宮城県は不足のSOSを宮城県まで届けられているところのみしか把握できておらず、東北大学は、十分な医療材料を確保できましたが、その余力を石巻にしか援助できていないと思われます。
仙台市若林区海側、名取、岩沼、亘理、山元などは、拠点となる総合病院がなく、小~中規模病院は津波の被害にあっているか、動けていても、今いる入院患者の保護と細々とした外来ができる程度です。山元町にある国立病院機構宮城病院と連絡が取れず、県も大学も把握できていなかったため、数日前に私が、直接宮城病院まで車を運転して出向きましたが、まさに、今いる入院患者の保護と細々とした外来ができる程度でした。
そのため、運んできていただいた医療材料は、一旦内科佐藤病院に搬入保管し、仙台市若林区海側、名取、岩沼、亘理、山元や、塩釜、多賀城その他で活躍する慈恵OBOGの病院・診療所で医療材料が不足しているところ、その他の病院・診療所で医療材料が不足することろに、仙台でガソリンが確保でき次第、さらなる搬送をする方針としました。
私は、予定が変更となり、石巻、気仙沼等から搬送される患者で、リハ科でも対応可能な患者を東北大学で受け
入れるため、石巻行きは、他の医師に任せ、私は仙台に留まることにしました。
昨夜、内科佐藤病院の佐藤先生から連絡がありました。慈恵宮城県支部からの要請により、各地の慈恵OBOGから支援の意思が表明されました。しかし、いまだ仙台も含め、食糧・燃料が緊急車両でさえ確保が難しい状況で、人員を派遣いただく場合、「自給自足の自立した部隊で」というのが条件となってしまいます。
仙台まで医療材料を運び込むまでなら、緊急車両の登録をし、往復の燃料を関東で確保すれば可能と思われるので、医療材料を仙台まで運んできてもらうことを、積極的に要請することになりました。仙台に到着後は、さらなる物品の搬送を宮城県や東北大学に任せるのが一般的と思われますが、私が把握する限り、宮城県は不足のSOSを宮城県まで届けられているところのみしか把握できておらず、東北大学は、十分な医療材料を確保できましたが、その余力を石巻にしか援助できていないと思われます。
仙台市若林区海側、名取、岩沼、亘理、山元などは、拠点となる総合病院がなく、小~中規模病院は津波の被害にあっているか、動けていても、今いる入院患者の保護と細々とした外来ができる程度です。山元町にある国立病院機構宮城病院と連絡が取れず、県も大学も把握できていなかったため、数日前に私が、直接宮城病院まで車を運転して出向きましたが、まさに、今いる入院患者の保護と細々とした外来ができる程度でした。
そのため、運んできていただいた医療材料は、一旦内科佐藤病院に搬入保管し、仙台市若林区海側、名取、岩沼、亘理、山元や、塩釜、多賀城その他で活躍する慈恵OBOGの病院・診療所で医療材料が不足しているところ、その他の病院・診療所で医療材料が不足することろに、仙台でガソリンが確保でき次第、さらなる搬送をする方針としました。
2011年3月19日土曜日
宮城県塩釜市坂総合病院・藤原大先生より
rehay_jishin on Twitter リハビリ医療と東北関東大地震を考える、ブログからの転載で、宮城県塩釜市坂総合病院・藤原大先生からの情報を紹介させていただきます。
http://rehayjishin.jugem.jp/
これはとても貴重な避難地のリハ情報ですので、転載させていただくことにしました。坂総合病院リハ科の冨山先生には3月4日に東京でご挨拶させていただきました。その1週間後の地震でした…。ぜひ上記ブログを多くの方に見ていただきたいと思います。
以下、転載です。
我が坂総合病院は宮城県塩釜市にあり、まさに被災地の真っ只中にあります。病院からほど近い塩釜港は津波に飲み込まれ、今でも多数の遺体が収容されています。
医療圏である多賀城市、七ヶ浜町、松島町でも多数の傷病者が発生し、今でも多数の救急搬入が続いています。
我がリハビリ室は、震災後この一週間、トリアージブースとして、多数の患者の初療場所として使用されています。
リハスタッフ達は、連絡係や搬送係などをはじめ様々な形で、夜昼となく院内の災害医療活動に貢献してきました。しかし、彼らのリハビリ専門職としての役割を果たしてもらうべく、4日前より院内でのリハビリ医療活動を少しずつ再開しています。
みな一様に疲れは隠しきれないものの、生き生きと働いています。ある若い言語聴覚士は、失語症で震災後にうつ症状が顕在化し自傷行為にまでいたった患者に、リハビリとともに心理ケアを行い、笑顔を引き出しました。
訪問リハスタッフ達も、ガソリン不足で車が使えない中、徒歩と自転車で移動して、地域の利用者の安否確認と環境整備および指導に奔走しています。
リハビリ病棟のほうも、他院からの新規入院は受けられない状況にあるものの、病床数を増やして院内の対象者を受け入れています。
みな『頑張ってます!』のアピールが多いようですが、みな本当に奮闘してます。
災害という有事のなかで、リハビリ専門職が果たせる、果たすべき役割を改めて実感し、考えさせられています。
今後も時間経過とともに、その役割が変化してくるものと思いますが、皆様とともに考え、行動を起こしていきたいと思います。
当面事態が落ち着くまでは、携帯電話から(Neuro-Reha)メーリングリストのほうに投稿して、現地の情報をお伝えしていきたいと思います。
パソコン環境が安定して整備されましたら、ブログのほうにも投稿させて頂きます。
なお、情報源として病院名や名前を実名で公表して頂いて構いません。そのほうがリアルに伝わるでしょうか?
長町病院の水尻先生の名前も出ているようですし。 先生のお力添えに心より感謝申し上げます。
今後も皆様と一緒に考えながら、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。
宮城厚生協会 坂総合病院
リハビリテーション科 医長
MD 藤原大
http://rehayjishin.jugem.jp/
これはとても貴重な避難地のリハ情報ですので、転載させていただくことにしました。坂総合病院リハ科の冨山先生には3月4日に東京でご挨拶させていただきました。その1週間後の地震でした…。ぜひ上記ブログを多くの方に見ていただきたいと思います。
以下、転載です。
我が坂総合病院は宮城県塩釜市にあり、まさに被災地の真っ只中にあります。病院からほど近い塩釜港は津波に飲み込まれ、今でも多数の遺体が収容されています。
医療圏である多賀城市、七ヶ浜町、松島町でも多数の傷病者が発生し、今でも多数の救急搬入が続いています。
我がリハビリ室は、震災後この一週間、トリアージブースとして、多数の患者の初療場所として使用されています。
リハスタッフ達は、連絡係や搬送係などをはじめ様々な形で、夜昼となく院内の災害医療活動に貢献してきました。しかし、彼らのリハビリ専門職としての役割を果たしてもらうべく、4日前より院内でのリハビリ医療活動を少しずつ再開しています。
みな一様に疲れは隠しきれないものの、生き生きと働いています。ある若い言語聴覚士は、失語症で震災後にうつ症状が顕在化し自傷行為にまでいたった患者に、リハビリとともに心理ケアを行い、笑顔を引き出しました。
訪問リハスタッフ達も、ガソリン不足で車が使えない中、徒歩と自転車で移動して、地域の利用者の安否確認と環境整備および指導に奔走しています。
リハビリ病棟のほうも、他院からの新規入院は受けられない状況にあるものの、病床数を増やして院内の対象者を受け入れています。
みな『頑張ってます!』のアピールが多いようですが、みな本当に奮闘してます。
災害という有事のなかで、リハビリ専門職が果たせる、果たすべき役割を改めて実感し、考えさせられています。
今後も時間経過とともに、その役割が変化してくるものと思いますが、皆様とともに考え、行動を起こしていきたいと思います。
当面事態が落ち着くまでは、携帯電話から(Neuro-Reha)メーリングリストのほうに投稿して、現地の情報をお伝えしていきたいと思います。
パソコン環境が安定して整備されましたら、ブログのほうにも投稿させて頂きます。
なお、情報源として病院名や名前を実名で公表して頂いて構いません。そのほうがリアルに伝わるでしょうか?
長町病院の水尻先生の名前も出ているようですし。 先生のお力添えに心より感謝申し上げます。
今後も皆様と一緒に考えながら、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。
宮城厚生協会 坂総合病院
リハビリテーション科 医長
MD 藤原大
瀬田先生からの報告その2
瀬田先生から新たな情報をいただきましたので、その2として紹介させていただきます。
リハ関連5団体でも先遣隊、本隊の派遣準備が進んでいるようですが、「今はまだリハの出番ではない」という誤解が一部にあるようです。脳卒中などの疾患でも急性期リハが重要であるように、災害時も急性期リハは重要です。災害時に急性期からリハ介入しないことで、数多くの二次的合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
十分な回復期リハが必要な入院患者さんは受け入れ可能な施設に搬送、軽症で少しリハをやれば回復する入院患者さんは現地でマンパワーを増やして対応、避難所では二次的合併症の予防指導(栄養・水分管理が優先されますが、それでも機能維持目的のリハは実施可能です)、いずれも早期から必要な対応だと私は考えます。
以下、瀬田先生からの報告の転載です。
宮城県内(内陸)の急性期病院のリハ事情を確認してきました。
どこも、リハスタッフは健在ですが、
何をしていいか分からず、院内の移送の手伝いや、散乱した物品のかたづけの手伝いをしているような状況で、
訓練は、ベッドサイドで細々とやっているような状況でした。
正しいか分かりませんが、
災害時急性期リハの私なりのコンセプトを伝えてきました。
1.今、濃厚なリハ介入をすることで、退院できる可能性が高い患者が最優先である。
2.機能改善が望めても、退院につながらない患者は優先する必要はない。
3.肺塞栓予防は重要であるが、本来リハスタッフの仕事はではなく、看護の仕事である。
そのため、予防が実施できるよう病棟スタッフを指導する必要はあるが、それに時間を割くべきではない。
つまり、軽症で少しやれば退院生活が可能になる患者や、重症であっても家族指導により退院可能になる患者が優先されるということです。
それでも、余力があった場合に限り、今、機能改善が望める患者、肺塞栓症や拘縮、褥瘡等、合併症予防のリハも介入するということです。
来るべき、被災者の脳卒中や心筋梗塞をはじめとする、新たな急性疾患発症に備えることに、リハは貢献できると考えます。
私の考えが正しいかは別として、少なくとも、何をしていいか分からず、今はリハの出番ではないという状況が、多くの急性期病院にあると思われますので、それを解消すべきと考えます。
リハ学会から、各病院のリハ部門に、
もう少し整理された分かりやすいコンセプトにして、「今こそ、リハは動け」というメッセージを送っていただけないでしょうか。
リハ関連5団体でも先遣隊、本隊の派遣準備が進んでいるようですが、「今はまだリハの出番ではない」という誤解が一部にあるようです。脳卒中などの疾患でも急性期リハが重要であるように、災害時も急性期リハは重要です。災害時に急性期からリハ介入しないことで、数多くの二次的合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
十分な回復期リハが必要な入院患者さんは受け入れ可能な施設に搬送、軽症で少しリハをやれば回復する入院患者さんは現地でマンパワーを増やして対応、避難所では二次的合併症の予防指導(栄養・水分管理が優先されますが、それでも機能維持目的のリハは実施可能です)、いずれも早期から必要な対応だと私は考えます。
以下、瀬田先生からの報告の転載です。
宮城県内(内陸)の急性期病院のリハ事情を確認してきました。
どこも、リハスタッフは健在ですが、
何をしていいか分からず、院内の移送の手伝いや、散乱した物品のかたづけの手伝いをしているような状況で、
訓練は、ベッドサイドで細々とやっているような状況でした。
正しいか分かりませんが、
災害時急性期リハの私なりのコンセプトを伝えてきました。
1.今、濃厚なリハ介入をすることで、退院できる可能性が高い患者が最優先である。
2.機能改善が望めても、退院につながらない患者は優先する必要はない。
3.肺塞栓予防は重要であるが、本来リハスタッフの仕事はではなく、看護の仕事である。
そのため、予防が実施できるよう病棟スタッフを指導する必要はあるが、それに時間を割くべきではない。
つまり、軽症で少しやれば退院生活が可能になる患者や、重症であっても家族指導により退院可能になる患者が優先されるということです。
それでも、余力があった場合に限り、今、機能改善が望める患者、肺塞栓症や拘縮、褥瘡等、合併症予防のリハも介入するということです。
来るべき、被災者の脳卒中や心筋梗塞をはじめとする、新たな急性疾患発症に備えることに、リハは貢献できると考えます。
私の考えが正しいかは別として、少なくとも、何をしていいか分からず、今はリハの出番ではないという状況が、多くの急性期病院にあると思われますので、それを解消すべきと考えます。
リハ学会から、各病院のリハ部門に、
もう少し整理された分かりやすいコンセプトにして、「今こそ、リハは動け」というメッセージを送っていただけないでしょうか。
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