2011年3月20日日曜日

災害時のリハ栄養・サルコペニア

日本作業療法士協会HPに、生活機能対応専門職チームを結成して3月26日からパイロット活動(対象:仙台市若林区避難所)が行われることが掲載されています。

http://www.jaot.or.jp/members/members/

「生活機能対応専門職チームの目的は、廃用性症候群の予防、心身機能の維持、主体的な生活の再構築の3点です。具体的な支援としては、相談(傾聴・情報提供)、動作指導、環境整備(物・人・生活リズム)となります。」とあります。この3つの目的に関しては異論ありませんし、3月中に活動を開始することは素晴らしいです。

参加団体は、日本作業療法士協会、日本理学療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本リハビリテーション医学会、日本精神保健福祉士協会、日本臨床心理士会、日本心理臨床学会、日本介護支援専門員協会、全国社会福祉協議会、日本介護福祉士会です。多くの団体が参加していますが、リハ栄養的には、日本栄養士会にもぜひ参加してほしいです。

避難所などにおいて廃用症候群の予防が重要であることは確実です。しかし、機能訓練・ADL訓練だけの視点で動作指導を行うと、リハ栄養的には逆効果となる可能性があります。

避難所によっては食事・水分などが十分行きとどいているところもあるようですが、一方で今でも1日おにぎり1個だけという話もあります。また、食事・水分などが十分にあっても、精神的なショックで食思不振となり、ほとんど食事も水分も摂取していない被災者がいるかもしれません。

そのため、廃用予防というリハの視点だけで考えるのではなく、サルコペニア予防というリハ栄養の視点で考えるほうが有用だと考えます。

災害時のサルコペニアのリスクを、加齢、活動、栄養、疾患の4つのサルコペニアの原因にわけて、それぞれ検討します。

加齢:被災地域は高齢化が進んでいる地域が多いので、被災者には高齢者も少なくありません。被災前からサルコペニアである高齢者もいる可能性があります。

活動:避難所生活をしていれば、活動量はどうしても少なくなります。廃用性筋萎縮だけでなく、深部静脈血栓症や肺塞栓のリスクも高まります。

栄養:上述の通り、食事・水分の経口摂取が不十分で、飢餓、脱水状態となっている可能性があります。脱水になると深部静脈血栓症や肺塞栓だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。食思不振などで食事・水分の経口摂取が困難であっても、栄養材や輸液製剤が不十分であることは言うまでもありません。

疾患:被災前から侵襲・悪液質・神経筋疾患などを合併している可能性があります。避難所生活での寒さ、不衛生、栄養不良などで感染症を併発しやすい環境です。そうなると侵襲による筋肉分解が進みます。

被災者が加齢と活動によるサルコペニアのみで、栄養や疾患に全く問題がないのであれば、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行えば、一定の効果を期待できます。

一方、栄養や疾患によるサルコペニアを併発している場合には、リハの視点だけで廃用予防を考えて動作指導を行行うと、さらなる筋肉量・筋力低下、低栄養、脱水を引き起こす可能性があります。被災者には栄養や疾患によるサルコペニアを併発していることが少なくありません。逆効果の可能性の認識が重要です。

ICF(国際生活機能分類)の心身機能には栄養関連の項目が含まれていますから、「生活機能対応専門職チーム」として活動するのであれば、栄養の視点も生活機能の中に含まれなければいけません。そのためにも日本栄養士会と協働して活動するか、管理栄養士以外の参加者がリハ栄養の視点を持って活動するかの、いずれかが大切です。

病院・施設・在宅でもリハ栄養の考え方は重要ですが、災害時はより重要です。「生活機能対応専門職チーム」にはリハ栄養の視点をもって、多くの成果を出してほしいと期待しています。

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