2011年3月21日月曜日

災害時のリハ栄養・持久力低下

災害時の持久力低下について、リハ栄養の視点から検討します。

持久力低下の原因をサルコペニアと同様に、加齢、活動、栄養、疾患の4つの原因に分けて考えます。

加齢:被災地域には高齢者が少なくないので、被災前から加齢による持久力低下を認めていた可能性があります。

活動:避難所生活では活動量が少なくなりがちなので、不活動による持久力低下が生じやすいです。被災地域は移動手段が自動車というところが多いので、被災前から活動量が少ない可能性があります。

栄養:十分な食事・水分の確保ができていなければ、低栄養や鉄欠乏などで貧血となります。ただし、脱水を合併していると検査値上は正常範囲ということもあります。エネルギー摂取量が少ないと、肝臓や筋肉に貯蔵されるグリコーゲンが不足するため、持久力が低下します。

疾患:被災前から呼吸不全、心不全などの併存疾患を有する場合には持久力が低下します。感染症などで侵襲を合併している場合にも、持久力は低下します。

この他にも精神面の要素が重要です。抑うつ状態で持久力が低下している方や、精神的に動く気になれない、食べる気になれない方は少なくないと思います。このような方を無理に動かそうとしたり食べさせそうとしたりすると、逆効果になる恐れがあります。

持久力低下への対応は原因によって異なります。

加齢や活動による持久力低下の場合には、持久力増強訓練を行います。機能改善を目標とした機能訓練の適応です。ただし精神面への配慮が必須です。

低栄養による持久力低下の場合には、適切な栄養管理が必要です(食思不振や嚥下調整食・栄養材・輸液製剤の不足などで、適切な栄養管理の実施は現実的にはかなり難しいですが…)。飢餓で不適切な栄養管理のときに持久力増強訓練を行っても、栄養状態が悪化して持久力はかえって低下しますので禁忌です。持久力改善を目指さないような軽度の有酸素運動や体操は、廃用予防として行ってよいですが、低栄養・脱水が進行するリスクを考慮して内容や程度を決めることが必要です。

疾患による持久力低下の場合、原疾患の治療が最も重要です。侵襲が軽度であれば、同時に飢餓予防の栄養管理と軽度の運動療法を併用します。

以上のように持久力低下の原因にあわせて、持久力増強訓練を行うべき場合と禁忌の場合を判断することが必要です。軽度の有酸素運動や体操であっても、行わないほうがよい場合もあります。また、すでに不活動や脱水などによって深部静脈血栓症を潜在的に認めていて、運動することで肺塞栓となる可能性もあります。

廃用予防、体力・持久力維持が重要なのは確かですが、その原因を考慮しないでいきなり運動療法を行うことは危険です。個々の原因を判断したうえで、その方に最適な廃用予防、体力・持久力維持のプログラムの立案と実施が重要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿