なぜリハ栄養が大切だと自分が感じるようになったのかを、患者側の要因と、医療人側の要因に分けて考えてみます。
患者側の要因としては、入院リハを行っている患者に栄養障害の方が多いことに尽きます。おそらく昔よりもその割合は高くなっていると思います。
高齢社会の進行とともに、栄養障害になりやすい高齢の障害者が増えています。私が研修医だった頃は80代以上の患者は稀だったように憶えています。その後、自分が歳を重ねるとともに、患者が同じように歳を重ねているような実感があり、今は90代以上の患者も稀ではありません。
医学の進歩とともに、救命できる重症患者が増えています。このこと自体は全くよいことですが、侵襲が強く長期臥床を要することもあり、そのような患者の多くは栄養障害と廃用症候群を合併することになります。高齢者では予備力が少ないため、栄養障害と廃用症候群がより重度になりやすく、リハ栄養が重要となります。
次に医療人側の要因としては、リハ科医師やPT・OT・STの臨床栄養に関する知識不足が大きいです。
私も含めて医師やPT・OT・STは学生時代にほとんど臨床栄養を学習する機会がありませんでしたので、知識不足であることはやむをえない面があります。卒前教育の改善が必要です。
知識不足のため、目の前の患者が栄養障害を認めるかどうかを適切に判断できる医師やPT・OT・STは少ないと考えます。つまり、栄養障害の有無にかかわらず、ほぼ同じような訓練を行っているのが現状です。
しかし、栄養状態が良好な患者には有効な訓練でも、栄養不良の患者には逆効果となることがあります。PT・OT・STと患者が頑張れば頑張るほど、患者がぐったりして、むしろ機能が低下するという皮肉なケースもあります。
中重度の栄養障害を認めても適切な臨床栄養管理をされていれば、栄養改善とともに機能やADLが改善することはしばしばあります。しかし、1日200~600kcal程度の末梢静脈栄養のみで週単位にわたって管理されている禁食の患者は、今でも少なくありません。このような栄養管理下でリハを行っても、筋力や持久力が改善するわけはなく、低下していくのが当然です。
このような状況を数多く見てきて、リハ栄養の重要性を痛感しました。リハ関連職種にリハ栄養の重要性を伝えることで、より質の高いリハの実施、患者のADL・QOLのさらなる向上に貢献できるのではないかと考えています。
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