私はこの数年、摂食・嚥下リハとNSTに力を入れてきました。学会としては日本摂食・嚥下リハ学会と日本静脈経腸栄養学会には、ほぼ毎年参加してきました。
日本摂食・嚥下リハ学会HP
http://www.jsdr.or.jp/
日本静脈経腸栄養学会HP
http://www.jspen.jp/top.html
前者ではSTの参加も多く、STとリハ医が一緒に学習できる場と言えます。PT・OTの参加は少ないのが現状です。
後者では職種としては管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、医師が中心です。STの参加は多少ありますが、PT・OTの参加は少ないです。
つまり、これらの学会に参加してもPT・OTと交流する機会はほとんどありませんでした。それでは自分が所属している他の学会ではと考えてみると、日本リハビリテーション医学会に少数のPT・OT・ST、日本神経心理学会は一部のOT・ST、日本義肢装具学会は一部のPT・OTが参加していますが、日本摂食・嚥下リハ学会や日本静脈経腸栄養学会のような雰囲気ではありません。
神奈川には歴史ある神奈川リハビリテーション研究会という研究会が年2回あります。ここはPT・OTとリハ医が一緒に学習できる場といえますが、一般演題のみで参加者は100人弱です。STの参加は少ないです。
近隣のPT・OTに話を聞いてみても、PT・OTはPT・OT向けの研修会が大半で、多職種で一緒に学習する研修会や学会への参加は少ないようです。日本理学療法士協会や日本作業療法士協会のHP、両者の県士会のHPを見ると、研修会はたくさんありますが、ほとんどがPT・OTのみを対象とするものでした。
リハ栄養はPT・OT・ST、管理栄養士、医師の関与は必須で、薬剤師、看護師、臨床検査技師、歯科医師、歯科衛生士などより多職種の関わりが望ましいと考えています。
ただ現状では、PT・OT・STとリハ医が一緒に学習できる場がほとんどありません。最近この事実に気付いて驚愕しました。この状況を改善しなければいけないと痛感しています。
まずはPT・OT・STが集まる場で、リハ栄養の話をしていきたいと考えています。日程調整さえつけばリハ栄養の講演依頼はすべて引き受けますので、もし何かありましたら遠慮なくご連絡ください。
また、研究会や学会の数が多すぎることは認識していますが、それでもリハ栄養を学習できる新たな場の創出が必要だと感じています。早ければ来年にはリハ栄養研究会的な場を創出したいと考えています。
2009年12月31日木曜日
持久力低下とリハ栄養
持久力には筋肉の持久力と全身の持久力が含まれますが、ここでは全身の持久力について考えます。
あくまで仮説ですので、ご意見などありましたらよろしくお願いいたします。
持久力低下の原因として、栄養面が関連するものとあまり関連しないものにわけて考えます。
<栄養面が関連する原因>
・飢餓、侵襲
短期の飢餓では肝臓、筋肉のグリコーゲンが枯渇
長期の飢餓では貧血を合併
侵襲でもグリコーゲン枯渇、貧血合併
・貧血(一部)
鉄欠乏性貧血、葉酸・ビタミンB12欠乏性貧血
・肥満
・悪液質
Evansらの悪液質の診断基準の1つに「疲労」が含まれている
<栄養面があまり関連しない原因>
・易疲労性、全身倦怠感を認める疾患の合併
貧血、甲状腺機能亢進症、うつ病、感染症、心不全、呼吸不全など
・廃用症候群
一定期間以上の安静臥床による
・加齢
10~20代がピークで、その後徐々に低下する
健康栄養フォーラム:加齢が局所筋量で補正した換気閾値や最高酸素摂取量に及ぼす影響~20-80歳の日本人男女を対象とした横断研究~のHP
http://www.linkdediet.org/hn/modules/pico/index.php?content_id=164
・その他
環境、その日の体調、日ごろの運動習慣、高次脳機能障害など
実際には複数の原因を合併していることが少なくないと思われます。
持久力を増加させるには、栄養面からのアプローチ、リハ・運動面からのアプローチの両方が重要であり、リハ栄養の考え方が有用です。まずは原因を適切に評価することが大切と考えます。
その上で、適切な臨床栄養管理のみで十分な場合、適切な運動療法・リハのみで十分な場合、臨床栄養管理と運動・リハの併用が必要な場合に分けられます。
一番問題なのは、飢餓、侵襲、栄養に関連する貧血、悪液質による持久力低下に対して、安易に運動・リハのみを行うことです。適切な臨床栄養管理を行わずに運動・リハを行うと、さらに持久力が低下する可能性が高いと考えます。
持久力がなくてPT・OT・STの訓練ができないと嘆いたり、体力がないからと安易に運動・リハを行ったりする前に、栄養面も含めて持久力低下の原因を考えることが、ADL、QOLの向上につながると思います。
あくまで仮説ですので、ご意見などありましたらよろしくお願いいたします。
持久力低下の原因として、栄養面が関連するものとあまり関連しないものにわけて考えます。
<栄養面が関連する原因>
・飢餓、侵襲
短期の飢餓では肝臓、筋肉のグリコーゲンが枯渇
長期の飢餓では貧血を合併
侵襲でもグリコーゲン枯渇、貧血合併
・貧血(一部)
鉄欠乏性貧血、葉酸・ビタミンB12欠乏性貧血
・肥満
・悪液質
Evansらの悪液質の診断基準の1つに「疲労」が含まれている
<栄養面があまり関連しない原因>
・易疲労性、全身倦怠感を認める疾患の合併
貧血、甲状腺機能亢進症、うつ病、感染症、心不全、呼吸不全など
・廃用症候群
一定期間以上の安静臥床による
・加齢
10~20代がピークで、その後徐々に低下する
健康栄養フォーラム:加齢が局所筋量で補正した換気閾値や最高酸素摂取量に及ぼす影響~20-80歳の日本人男女を対象とした横断研究~のHP
http://www.linkdediet.org/hn/modules/pico/index.php?content_id=164
・その他
環境、その日の体調、日ごろの運動習慣、高次脳機能障害など
実際には複数の原因を合併していることが少なくないと思われます。
持久力を増加させるには、栄養面からのアプローチ、リハ・運動面からのアプローチの両方が重要であり、リハ栄養の考え方が有用です。まずは原因を適切に評価することが大切と考えます。
その上で、適切な臨床栄養管理のみで十分な場合、適切な運動療法・リハのみで十分な場合、臨床栄養管理と運動・リハの併用が必要な場合に分けられます。
一番問題なのは、飢餓、侵襲、栄養に関連する貧血、悪液質による持久力低下に対して、安易に運動・リハのみを行うことです。適切な臨床栄養管理を行わずに運動・リハを行うと、さらに持久力が低下する可能性が高いと考えます。
持久力がなくてPT・OT・STの訓練ができないと嘆いたり、体力がないからと安易に運動・リハを行ったりする前に、栄養面も含めて持久力低下の原因を考えることが、ADL、QOLの向上につながると思います。
2009年12月27日日曜日
仕事のための12の基礎力
少し古い本ですが、大久保幸夫著、仕事のための12の基礎力、日経BP社を紹介します。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P44090.html
この本は中古品ならアマゾンで1円で入手できます。実に驚きです。
http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4822244091/ref=dp_olp_used?ie=UTF8&condition=used
キャリアを成功に導くには12の基礎力が必要で、それらの基礎力を育てるのには年齢に応じた旬があると述べています。
①反応(リアクション)力:10代~20代
②愛嬌力:10代~20代
③楽天力:10代~50代
④目標発見力:10代~40代
⑤継続学習力:20代~30代
⑥文脈理解力:20代~40代
⑦専門構築力:30代~40代
⑧人脈開拓力:30代~50代
⑨委任力:30代~40代
⑩相談(カウンセリング)力:40代~60代
⑪教授力:40代~60代
⑫仲介調整(コーディネート)力:40代~60代
私なりのFDの分類で分けてみると、複数にまたがるものもありますが、
問題発見・解決能力:④、⑦
マネジメント能力:③、⑨、⑫
コミュニケーション能力:①、②、⑥、⑧、⑩
生涯学習能力:⑤、⑪
になります。これらの能力にも初級・中級・上級レベルがあることがわかります。
リハ栄養という概念を広げようと考えている今の私に特に必要な能力は、⑦、⑧、⑨だと感じています。ちょうど30代から40代に求められる能力で、これらの能力次第でうまくいくかどうかが決まります。
専門構築力は自分独自の強みを計画的につくり上げる力と定義されています。そのための重要な原則として「理論と実践の両方をバランスよく深めていく」ことと記載されています。 自分の専門選び=登る山選びは大変な課題ですが、少なくとも臨床現場で実践できないものを選ぶのは適切ではないということになります。
著者の専門構築は完全に知識先行だったとのことですが、私の場合は完全に実践先行です。実践で経験したことを振り返ってことばにして、それと先行文献をつなげて理論(検証されていないので理論ではなく仮説ですが)としてなんとか1冊の本にしました。理論と実践のバランスが常に実践側に傾きやすいのが私の現状です。
自分以外の専門家との人的ネットワークを築いていくことも、専門構築に当たって大変重要なポイントと述べています。このことは、嚥下やNSTで強く実感しています。ネットワークがなければ自分の学習と成長が少なかったことは確実です。その人のネットワークと実力は相関関係にあると感じています。リハ栄養では人脈開拓力も課題です。
私1人でできることはとても限られています。今後、リハ栄養研究会の立ち上げには、PT・OT・STの協力と、ある程度の委任力が必須です。委任力について、「自分でやったほうが早い」という悪魔の声を吹っ切ることが最大のポイントとのことです。悪魔の声という例えは、とても気に入りました。
自分なりになるべく委任しよう、任せたら最終責任はとるがなるべく手を出さないようにしようと心がけるようにしているのですが、結局手を出してしまうことがあります。ただ、これでは大きな仕事はできないのも事実です。幸い委任できる場は少なからずあるので、意識して委任力を磨きたいと考えています。
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/P44090.html
この本は中古品ならアマゾンで1円で入手できます。実に驚きです。
http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/4822244091/ref=dp_olp_used?ie=UTF8&condition=used
キャリアを成功に導くには12の基礎力が必要で、それらの基礎力を育てるのには年齢に応じた旬があると述べています。
①反応(リアクション)力:10代~20代
②愛嬌力:10代~20代
③楽天力:10代~50代
④目標発見力:10代~40代
⑤継続学習力:20代~30代
⑥文脈理解力:20代~40代
⑦専門構築力:30代~40代
⑧人脈開拓力:30代~50代
⑨委任力:30代~40代
⑩相談(カウンセリング)力:40代~60代
⑪教授力:40代~60代
⑫仲介調整(コーディネート)力:40代~60代
私なりのFDの分類で分けてみると、複数にまたがるものもありますが、
問題発見・解決能力:④、⑦
マネジメント能力:③、⑨、⑫
コミュニケーション能力:①、②、⑥、⑧、⑩
生涯学習能力:⑤、⑪
になります。これらの能力にも初級・中級・上級レベルがあることがわかります。
リハ栄養という概念を広げようと考えている今の私に特に必要な能力は、⑦、⑧、⑨だと感じています。ちょうど30代から40代に求められる能力で、これらの能力次第でうまくいくかどうかが決まります。
専門構築力は自分独自の強みを計画的につくり上げる力と定義されています。そのための重要な原則として「理論と実践の両方をバランスよく深めていく」ことと記載されています。 自分の専門選び=登る山選びは大変な課題ですが、少なくとも臨床現場で実践できないものを選ぶのは適切ではないということになります。
著者の専門構築は完全に知識先行だったとのことですが、私の場合は完全に実践先行です。実践で経験したことを振り返ってことばにして、それと先行文献をつなげて理論(検証されていないので理論ではなく仮説ですが)としてなんとか1冊の本にしました。理論と実践のバランスが常に実践側に傾きやすいのが私の現状です。
自分以外の専門家との人的ネットワークを築いていくことも、専門構築に当たって大変重要なポイントと述べています。このことは、嚥下やNSTで強く実感しています。ネットワークがなければ自分の学習と成長が少なかったことは確実です。その人のネットワークと実力は相関関係にあると感じています。リハ栄養では人脈開拓力も課題です。
私1人でできることはとても限られています。今後、リハ栄養研究会の立ち上げには、PT・OT・STの協力と、ある程度の委任力が必須です。委任力について、「自分でやったほうが早い」という悪魔の声を吹っ切ることが最大のポイントとのことです。悪魔の声という例えは、とても気に入りました。
自分なりになるべく委任しよう、任せたら最終責任はとるがなるべく手を出さないようにしようと心がけるようにしているのですが、結局手を出してしまうことがあります。ただ、これでは大きな仕事はできないのも事実です。幸い委任できる場は少なからずあるので、意識して委任力を磨きたいと考えています。
2009年12月24日木曜日
フィードバックの技術で、職場の「気まずさ」を解消する
ハーバード・ポケットブック・シリーズ8 フィードバックの技術で、職場の「気まずさ」を解消する
を読みました。
http://www.firstpress.co.jp/?p=245
フィードバックとは、
①組織の人々の間でやりとりされる情報の流れのこと。通常はプロジェクトや完成した仕事に対する評価を意味する
②業績や仕事に関連した行為に対する評価を共有すること
③ポジティブで建設的な変化への第一歩
と記載されています。
フィードバックという言葉自体は学生の時に生理学の時間に習いましたし、卒後にも指導医養成ワークショップなどで習いましたが、フィードの意味がFeeding(食べ物を与えるの意)であることは、この本で初めて知りました。
嚥下やNSTに取り組んでいるので日ごろからFeedingを考えていましたが、それがフィードバックにも繋がっているとは私には新鮮でした。つまり、その人の栄養状態(嚥下やNSTでは身体面、フィードバックでは心理面や知識面が主でしょうか)を改善させてQOLを向上させることが、フィードバックの目的になります。
そう考えると、栄養アセスメント、栄養ケアプラン、実施、モニタリングという栄養ケアマネジメントの一連の流れを、そのままフィードバックにも活用できるように感じます。
フィードバックには大きく分けて、
ポジティブフィードバック
ネガティブフィードバック
の2つがあります。
ポジティブなフィードバックは、好ましい行動や問題解決パターンを推奨し、強化することを目的としたもの、指導的なフィードバックは、望ましくない行動を修正・改善し、より生産的な業務パターンを示すことで、受け手に新しい行動パターンや変化への対処を学ばせることを目指します、と紹介されています。
聞き手のことを考えると、ポジティブフィードバックのほうが気が楽ですが、実際にはネガティブフィードバックのほうが必要なことが少なくありません。褒める→こうするとよりよいことを指摘する→褒めるといったサンドイッチ法がよいと言われていますので、これを心がけるようにはしています。実際にはあまりできていませんが…。
あとがきには、「組織が問題を抱えているときは、必ずといっていいほど、その原因の中にフィードバックの機能不全が見つかるのである」という記載があります。因果関係なのか関連なのかはわかりませんが、適切なフィードバックが豊富な組織は、職場の気まずさは確かに少ないと思います。実際、心当たりもあります。
フィードバックを改めて学習するには有用な本だと思います。ちなみにHarvardポケットシリーズは、コンパクトにビジネススキルを学習できるものが少なくないので、他の書籍もお勧めします。
http://www.firstpress.co.jp/?cat=11
を読みました。
http://www.firstpress.co.jp/?p=245
フィードバックとは、
①組織の人々の間でやりとりされる情報の流れのこと。通常はプロジェクトや完成した仕事に対する評価を意味する
②業績や仕事に関連した行為に対する評価を共有すること
③ポジティブで建設的な変化への第一歩
と記載されています。
フィードバックという言葉自体は学生の時に生理学の時間に習いましたし、卒後にも指導医養成ワークショップなどで習いましたが、フィードの意味がFeeding(食べ物を与えるの意)であることは、この本で初めて知りました。
嚥下やNSTに取り組んでいるので日ごろからFeedingを考えていましたが、それがフィードバックにも繋がっているとは私には新鮮でした。つまり、その人の栄養状態(嚥下やNSTでは身体面、フィードバックでは心理面や知識面が主でしょうか)を改善させてQOLを向上させることが、フィードバックの目的になります。
そう考えると、栄養アセスメント、栄養ケアプラン、実施、モニタリングという栄養ケアマネジメントの一連の流れを、そのままフィードバックにも活用できるように感じます。
フィードバックには大きく分けて、
ポジティブフィードバック
ネガティブフィードバック
の2つがあります。
ポジティブなフィードバックは、好ましい行動や問題解決パターンを推奨し、強化することを目的としたもの、指導的なフィードバックは、望ましくない行動を修正・改善し、より生産的な業務パターンを示すことで、受け手に新しい行動パターンや変化への対処を学ばせることを目指します、と紹介されています。
聞き手のことを考えると、ポジティブフィードバックのほうが気が楽ですが、実際にはネガティブフィードバックのほうが必要なことが少なくありません。褒める→こうするとよりよいことを指摘する→褒めるといったサンドイッチ法がよいと言われていますので、これを心がけるようにはしています。実際にはあまりできていませんが…。
あとがきには、「組織が問題を抱えているときは、必ずといっていいほど、その原因の中にフィードバックの機能不全が見つかるのである」という記載があります。因果関係なのか関連なのかはわかりませんが、適切なフィードバックが豊富な組織は、職場の気まずさは確かに少ないと思います。実際、心当たりもあります。
フィードバックを改めて学習するには有用な本だと思います。ちなみにHarvardポケットシリーズは、コンパクトにビジネススキルを学習できるものが少なくないので、他の書籍もお勧めします。
http://www.firstpress.co.jp/?cat=11
2009年12月22日火曜日
PDNのHPで書籍紹介
PDN(PEGドクターズネットワーク)のHPで「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養」を紹介していただきました。
http://www.peg.or.jp/kanren/book/rehabilitation-eiyou.html
PDNにはセミナーなどでとてもお世話になっています。このようなNPOの活動には、自分なりにサポートしたいと考えていて、自分にできる範囲では実践しているつもりです。
以下、書籍の紹介を上記のHPから引用させていただきます。
介護予防としての筋肉トレーニングを、低栄養状態の患者さんに行ったらどうなるだろうか? 増えた体重の内容が筋肉ではなく脂肪だったら、患者さんのADLやQOLにどう影響するだろうか?
『栄養なくしてリハなし、リハなくして栄養なし』を確信した著者が、栄養状態を含めた全人的な評価に見合った訓練の実施を呼びかけた1冊。栄養学とリハ医学の知識の統合によって成果を出すリハ栄養マネジメントを、疾患別症例に添ってアセスメント・ケアプラン・経過を追っていく、PT・OT・ST向け栄養の本。
NSTを通じて多くの方と知り会わなければ、今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったであろう、と多職種との出会いに感謝する謙虚な著者であるが、聞く者をひきつける熱い講演は各方面で好評を博している。
あなたは読んでから聞く?聞いてから読む?
http://www.peg.or.jp/kanren/book/rehabilitation-eiyou.html
PDNにはセミナーなどでとてもお世話になっています。このようなNPOの活動には、自分なりにサポートしたいと考えていて、自分にできる範囲では実践しているつもりです。
以下、書籍の紹介を上記のHPから引用させていただきます。
介護予防としての筋肉トレーニングを、低栄養状態の患者さんに行ったらどうなるだろうか? 増えた体重の内容が筋肉ではなく脂肪だったら、患者さんのADLやQOLにどう影響するだろうか?
『栄養なくしてリハなし、リハなくして栄養なし』を確信した著者が、栄養状態を含めた全人的な評価に見合った訓練の実施を呼びかけた1冊。栄養学とリハ医学の知識の統合によって成果を出すリハ栄養マネジメントを、疾患別症例に添ってアセスメント・ケアプラン・経過を追っていく、PT・OT・ST向け栄養の本。
NSTを通じて多くの方と知り会わなければ、今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったであろう、と多職種との出会いに感謝する謙虚な著者であるが、聞く者をひきつける熱い講演は各方面で好評を博している。
あなたは読んでから聞く?聞いてから読む?
脳卒中後嚥下障害のRCTレビュー論文
少し古いですが、脳卒中後嚥下障害のRCTのレビュー論文を紹介します。
下記HPで無料で論文を入手できます。
http://ageing.oxfordjournals.org/cgi/reprint/37/3/258
一部訳:1966年から2007年の脳卒中後嚥下障害の治療の効果をみた論文(RCTに限定)の系統的レビュー。
15本の論文をレビューした。食形態の工夫、全般的な嚥下治療プログラム、経管栄養、薬物療法、身体・嗅覚刺激の治療が含まれていた。経鼻経管栄養はPEGと比較して死亡率は変わらない。全般的な嚥下治療プログラムは脳卒中急性期の肺炎を少なくする。
同じ治療方法とアウトカムを用いた研究はほとんどなかった。
私の論文解釈:嚥下でもRCTは増えつつあるが、RCTのメタ分析を行えるレベルには達していない。より質の高いエビデンスを出せる研究が必要。なぜShakerの頭部挙上訓練のRCTがこのレビューに含まれていないのか。
私の考え:質の高いエビデンスがあってもなくても、臨床現場での嚥下リハの重要性は確実で取り組むべき。ただし、さらなるエビデンスが出てこなければ今後、摂食機能療法を診療報酬として算定できる日数(開始後90日間)か点数(1日185点)が減らされる可能性がある。
Dysphagia treatment post stroke: a systematic review of randomised
controlled trials.
Foley N, Teasell R, Salter K, Kruger E, Martino R.
Age Ageing. 2008 May;37(3):258-64.
BACKGROUND: dysphagia is common following stroke and is associated
with the development of pneumonia. Many dysphagia treatment options
are available, some still experimental and others already rooted in
common practice. Previous reviews of these treatments were limited due
to a dearth of available studies. Recently, more trials have been
published warranting a re-examination of the evidence. OBJECTIVE: a
systematic review of all randomised controlled trials (RCTs), updating
previous work and evaluating a broader range of therapeutic
interventions intended for use in adults recovering from stroke and
dysphagia. METHODS: using multiple databases, we identified RCTs
published between the years 1966 and August 2007 examining the
efficacy of dysphagia therapies following stroke. Across studies,
results of similar treatments and outcomes were compared and
evaluated. RESULTS: fifteen articles were retrieved assessing a broad
range of treatments that included texture-modified diets, general
dysphagia therapy programmes, non-oral (enteral) feeding, medications,
and physical and olfactory stimulation. Across the studies there was
heterogeneity of the treatments evaluated and the outcomes assessed
that precluded the use of pooled analyses. Descriptively these
findings present emerging evidence that nasogastric tube feeding is
not associated with a higher risk of death compared to percutaneous
feeding tubes; and general dysphagia therapy programmes are associated
with a reduced risk of pneumonia in the acute stage of stroke.
CONCLUSIONS: dysphagia is known to be a common and potentially serious
complication of stroke. Despite the recent newly published RCTs, few
utilise the same treatment and outcomes thereby limiting the evidence
to support the medical effectiveness of common dysphagia treatments
used for patients recovering from stroke.
下記HPで無料で論文を入手できます。
http://ageing.oxfordjournals.org/cgi/reprint/37/3/258
一部訳:1966年から2007年の脳卒中後嚥下障害の治療の効果をみた論文(RCTに限定)の系統的レビュー。
15本の論文をレビューした。食形態の工夫、全般的な嚥下治療プログラム、経管栄養、薬物療法、身体・嗅覚刺激の治療が含まれていた。経鼻経管栄養はPEGと比較して死亡率は変わらない。全般的な嚥下治療プログラムは脳卒中急性期の肺炎を少なくする。
同じ治療方法とアウトカムを用いた研究はほとんどなかった。
私の論文解釈:嚥下でもRCTは増えつつあるが、RCTのメタ分析を行えるレベルには達していない。より質の高いエビデンスを出せる研究が必要。なぜShakerの頭部挙上訓練のRCTがこのレビューに含まれていないのか。
私の考え:質の高いエビデンスがあってもなくても、臨床現場での嚥下リハの重要性は確実で取り組むべき。ただし、さらなるエビデンスが出てこなければ今後、摂食機能療法を診療報酬として算定できる日数(開始後90日間)か点数(1日185点)が減らされる可能性がある。
Dysphagia treatment post stroke: a systematic review of randomised
controlled trials.
Foley N, Teasell R, Salter K, Kruger E, Martino R.
Age Ageing. 2008 May;37(3):258-64.
BACKGROUND: dysphagia is common following stroke and is associated
with the development of pneumonia. Many dysphagia treatment options
are available, some still experimental and others already rooted in
common practice. Previous reviews of these treatments were limited due
to a dearth of available studies. Recently, more trials have been
published warranting a re-examination of the evidence. OBJECTIVE: a
systematic review of all randomised controlled trials (RCTs), updating
previous work and evaluating a broader range of therapeutic
interventions intended for use in adults recovering from stroke and
dysphagia. METHODS: using multiple databases, we identified RCTs
published between the years 1966 and August 2007 examining the
efficacy of dysphagia therapies following stroke. Across studies,
results of similar treatments and outcomes were compared and
evaluated. RESULTS: fifteen articles were retrieved assessing a broad
range of treatments that included texture-modified diets, general
dysphagia therapy programmes, non-oral (enteral) feeding, medications,
and physical and olfactory stimulation. Across the studies there was
heterogeneity of the treatments evaluated and the outcomes assessed
that precluded the use of pooled analyses. Descriptively these
findings present emerging evidence that nasogastric tube feeding is
not associated with a higher risk of death compared to percutaneous
feeding tubes; and general dysphagia therapy programmes are associated
with a reduced risk of pneumonia in the acute stage of stroke.
CONCLUSIONS: dysphagia is known to be a common and potentially serious
complication of stroke. Despite the recent newly published RCTs, few
utilise the same treatment and outcomes thereby limiting the evidence
to support the medical effectiveness of common dysphagia treatments
used for patients recovering from stroke.
2009年12月20日日曜日
筋萎縮による嚥下障害
mixiにリハビリテーション栄養のコミュニティを作りました。mixiのトピックとブログの内容と重複することが少なくないかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
mixiに投稿した内容ですが、筋萎縮による嚥下障害です。
嚥下障害の原因というと、まずは脳卒中が挙げられます。次に2番目に多い嚥下障害の原因は、私は筋萎縮だと考えています。筋萎縮による嚥下障害の患者はかなり多く、リハ栄養的な適切な評価と対応が必要です。
筋萎縮による嚥下障害の原因は、大きく5つに分類できます。
廃用性筋萎縮
飢餓・侵襲
サルコペニア
悪液質
原疾患(神経筋疾患など)
廃用性筋萎縮は、しばらく経口摂取をしていなかった場合や禁食など、不活動によって生じます。
飢餓は、エネルギー消費量と比較してエネルギー摂取量(経口摂取+経管栄養+経静脈栄養)が不足している場合に生じます。侵襲は、手術、骨折、熱傷、発熱、感染症など生体へのストレスによって生じます。
サルコペニアは、狭い定義では加齢により生じる筋肉量の減少で、老年症候群の1つともいえます。骨格筋減少症、筋肉減少症とも訳されます。65歳以上で可能性あり、80歳以上で疑いと考えています。
悪液質は、がん、慢性閉塞性肺疾患、慢性感染症(結核、AIDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、関節リウマチなど関連する複雑な代謝症候群で、筋肉の喪失が特徴です。脂肪は喪失することもしないこともあります。
原疾患による筋萎縮には、筋萎縮性側索硬化症や多発性筋炎といった神経筋疾患などが含まれます。
実際の嚥下障害患者にはこれら5つの筋萎縮のうち、複数を合併していることが少なくありません。この原因を考慮した上で、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と臨床栄養管理を適切に行うことが重要です。
廃用性筋萎縮やサルコペニアが筋萎縮の原因の場合、治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングです。栄養状態が良好でない場合には、適切な臨床栄養管理を併用します。安易な禁食を避けることも、廃用予防として大切です。
飢餓が筋萎縮の原因の場合には、治療は栄養改善です。適切な臨床栄養管理を行わないでレジスタンストレーニングを行うと、筋萎縮がさらに悪化します。
侵襲の場合には、適切な栄養管理と侵襲の原因疾患の治療が重要です。
悪液質が筋萎縮の原因の場合、著明な改善は期待しにくいですが、n3脂肪酸(EPA、DHAなど)の投与が有効な可能性があります。EPAを含む栄養剤の使用やEPA製剤(エパデール)の投与を検討します。
原疾患による筋萎縮が原因の場合には、原疾患の治療を行いますが、難治性の疾患が少なくありません。それでも、廃用性筋萎縮と飢餓の予防は重要です。
このように筋萎縮による嚥下障害患者に対しては、リハと臨床栄養管理が重要であり、評価を間違えるとさらに嚥下障害を悪化させる可能性があります。そのため、リハ栄養的な考え方が必要です。
mixiに投稿した内容ですが、筋萎縮による嚥下障害です。
嚥下障害の原因というと、まずは脳卒中が挙げられます。次に2番目に多い嚥下障害の原因は、私は筋萎縮だと考えています。筋萎縮による嚥下障害の患者はかなり多く、リハ栄養的な適切な評価と対応が必要です。
筋萎縮による嚥下障害の原因は、大きく5つに分類できます。
廃用性筋萎縮
飢餓・侵襲
サルコペニア
悪液質
原疾患(神経筋疾患など)
廃用性筋萎縮は、しばらく経口摂取をしていなかった場合や禁食など、不活動によって生じます。
飢餓は、エネルギー消費量と比較してエネルギー摂取量(経口摂取+経管栄養+経静脈栄養)が不足している場合に生じます。侵襲は、手術、骨折、熱傷、発熱、感染症など生体へのストレスによって生じます。
サルコペニアは、狭い定義では加齢により生じる筋肉量の減少で、老年症候群の1つともいえます。骨格筋減少症、筋肉減少症とも訳されます。65歳以上で可能性あり、80歳以上で疑いと考えています。
悪液質は、がん、慢性閉塞性肺疾患、慢性感染症(結核、AIDSなど)、慢性心不全、慢性腎不全、関節リウマチなど関連する複雑な代謝症候群で、筋肉の喪失が特徴です。脂肪は喪失することもしないこともあります。
原疾患による筋萎縮には、筋萎縮性側索硬化症や多発性筋炎といった神経筋疾患などが含まれます。
実際の嚥下障害患者にはこれら5つの筋萎縮のうち、複数を合併していることが少なくありません。この原因を考慮した上で、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)と臨床栄養管理を適切に行うことが重要です。
廃用性筋萎縮やサルコペニアが筋萎縮の原因の場合、治療は嚥下筋のレジスタンストレーニングです。栄養状態が良好でない場合には、適切な臨床栄養管理を併用します。安易な禁食を避けることも、廃用予防として大切です。
飢餓が筋萎縮の原因の場合には、治療は栄養改善です。適切な臨床栄養管理を行わないでレジスタンストレーニングを行うと、筋萎縮がさらに悪化します。
侵襲の場合には、適切な栄養管理と侵襲の原因疾患の治療が重要です。
悪液質が筋萎縮の原因の場合、著明な改善は期待しにくいですが、n3脂肪酸(EPA、DHAなど)の投与が有効な可能性があります。EPAを含む栄養剤の使用やEPA製剤(エパデール)の投与を検討します。
原疾患による筋萎縮が原因の場合には、原疾患の治療を行いますが、難治性の疾患が少なくありません。それでも、廃用性筋萎縮と飢餓の予防は重要です。
このように筋萎縮による嚥下障害患者に対しては、リハと臨床栄養管理が重要であり、評価を間違えるとさらに嚥下障害を悪化させる可能性があります。そのため、リハ栄養的な考え方が必要です。
2009年12月17日木曜日
スローキャリア
今日はもう1冊、キャリアの本を紹介します。
高橋俊介著、スローキャリア、PHP文庫
アマゾンで中古商品ならなんと16円で入手できます。驚きました。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2-PHP%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%AB%98%E6%A9%8B-%E4%BF%8A%E4%BB%8B/dp/4569667244
スローキャリアとは、出世を第一とせず、仕事のやりがいや価値観を重視した生き方のことのことです。
キャリアと言うとますは、上昇志向(教授、院長、部長、理事など出世欲)、つまりアチーバー型キャリアを思いつきます。上昇志向が強い人はそれでもよいですが、強くない人は出世よりも自分らしさにこだわって仕事をするほうが、やりがいや充実感が高くなりやすいです。
スローキャリアでもアチーバー型キャリアでも、 キャリアのやりがい・充実感を高めるには、以下の10個の行動が有用と紹介されています。
①主体的ジョブデザイン行動
・自分の価値観やポリシーを持って仕事に取り組む。
・社会の変化、ビジネス動向に自分なりの見解を持つ。
・部署・チームを超えて、積極的に周囲の人を巻きこみながら仕事する。
・仕事の進め方や企画を立てる際、延長線上のやり方ではなく、常に自分なりの発想で取り組んでいる。
・自分の満足度を高めるように、仕事のやり方を工夫する。
②ネットワーク行動
・新しいネットワーク作りに常に取り組んでいる。
・自分のネットワークを構成する個々人が、どんなニーズを持っているかを把握し、応えようとしている。 ・自分の問題意識や考えを、社内外のキーパーソンに共有してもらうようにしている。
③スキル開発行動
・今後どのようなスキルを開発していくか、具体的なアクションプランを持っている。
・スキル、能力開発のための自己投資をしている。
私はアチーバー型キャリアを当初考えていました。というかスローキャリアという考え方を知らなかったので、それしか考えようがなかったというのが実情です。
今では7対3くらいでスローキャリアのほうが自分には向いていると感じています。 山登りは行っていますが、山登りを行うことと上昇志向が強いこととは、必ずしも一致しません。
また、アチーバー型キャリアよりスローキャリアが優れている・劣っている、よい・悪いという話ではなく、自分にとってどちらのタイプが向いているかという話です。
どちらのタイプのキャリアであっても、上記の10項目はキャリアのやりがい・充実感に有用ですので、これらを意識しながら日々の仕事を行うとよいと考えます。今の自分にも必要な行動だと実感しています。
高橋俊介著、スローキャリア、PHP文庫
アマゾンで中古商品ならなんと16円で入手できます。驚きました。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2-PHP%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%AB%98%E6%A9%8B-%E4%BF%8A%E4%BB%8B/dp/4569667244
スローキャリアとは、出世を第一とせず、仕事のやりがいや価値観を重視した生き方のことのことです。
キャリアと言うとますは、上昇志向(教授、院長、部長、理事など出世欲)、つまりアチーバー型キャリアを思いつきます。上昇志向が強い人はそれでもよいですが、強くない人は出世よりも自分らしさにこだわって仕事をするほうが、やりがいや充実感が高くなりやすいです。
スローキャリアでもアチーバー型キャリアでも、 キャリアのやりがい・充実感を高めるには、以下の10個の行動が有用と紹介されています。
①主体的ジョブデザイン行動
・自分の価値観やポリシーを持って仕事に取り組む。
・社会の変化、ビジネス動向に自分なりの見解を持つ。
・部署・チームを超えて、積極的に周囲の人を巻きこみながら仕事する。
・仕事の進め方や企画を立てる際、延長線上のやり方ではなく、常に自分なりの発想で取り組んでいる。
・自分の満足度を高めるように、仕事のやり方を工夫する。
②ネットワーク行動
・新しいネットワーク作りに常に取り組んでいる。
・自分のネットワークを構成する個々人が、どんなニーズを持っているかを把握し、応えようとしている。 ・自分の問題意識や考えを、社内外のキーパーソンに共有してもらうようにしている。
③スキル開発行動
・今後どのようなスキルを開発していくか、具体的なアクションプランを持っている。
・スキル、能力開発のための自己投資をしている。
私はアチーバー型キャリアを当初考えていました。というかスローキャリアという考え方を知らなかったので、それしか考えようがなかったというのが実情です。
今では7対3くらいでスローキャリアのほうが自分には向いていると感じています。 山登りは行っていますが、山登りを行うことと上昇志向が強いこととは、必ずしも一致しません。
また、アチーバー型キャリアよりスローキャリアが優れている・劣っている、よい・悪いという話ではなく、自分にとってどちらのタイプが向いているかという話です。
どちらのタイプのキャリアであっても、上記の10項目はキャリアのやりがい・充実感に有用ですので、これらを意識しながら日々の仕事を行うとよいと考えます。今の自分にも必要な行動だと実感しています。
2009年12月16日水曜日
キャリアデザイン入門
FDにはキャリアを考えることも含まれます。キャリアにはいろんな考え方があり、一人ひとりが自論・持論を持つことが大切です。その中で私が好んでいる本を紹介します。
キャリアデザイン入門―専門力編― 大久保幸夫著 日経文庫
http://www.nikkeibook.com/book_detail/11097/
基礎力編と2冊シリーズになっており、両方とも読む価値はありますが、私の年代では専門力編のほうがより有益でした。2点紹介します。
①キャリアの時期を大きく筏下りと山登りに分類しています。筏下りは30代半ば頃までが1つの目安で、目の前の仕事が何であれ、ひたすら打ち込むことでいろんなことを経験して学習する時期、山登りは30代半ば以降で、1つの打ち込むべきこと(登るべき山、何によって憶えられたいか)を決めて、他の山に登ることは捨てて、1つの山を登り続ける時期です。
私はなかなか登る山を選べませんでしたし、何によって憶えられたいかも答えられませんでした。それでもこれらを考え続けることで、リハ栄養という山を登ってみることに決めました。
山登りには仮決め、見習い、本決め、開花、無心の5段階があるそうです。本格的な山登りは3段階目の本決めからになります。ここの壁は実に高く厚いので、乗り越えられないで筏下りを続けて漂流してしまう医療人が少なくないと思います。
職種を決めることや、その職種で一人前になることは決して山登りではなく筏下りです。一人前をキャリアのゴールと考えて山登りをしなければ、30代半ば以降の学習と成長は少ないでしょうし、むしろ時代遅れの医療人になっていくと考えます。自分に見合った山を探して登っていくことが、キャリアの充実につながると私は考えています。
②キャリアを主観(個人ブランドと人的ネットワーク)と客観(プロフィールに記載できる量)の2つに分類しています。
客観では、以下の6項目でプロフィールを作成してみるとよいそうです。
最終学歴および取得学位
職歴および主要な役割の履歴
所有資格および受賞歴
公的役職の履歴
教歴
著作もしくは論文
このうち学歴、学位、職歴、所有資格しか記載できることがなければ、まだ筏下りをしているか山登りを始めて途中かだと思われます。記載できないところを埋めていくとよいキャリアになりやすいそうです。
しかし、より大切なのは客観ではなく主観と私は考えます。個人ブランドと人的ネットワークは、登る山を決めてからできるものです。登る山を決めて主観が決まれば、その結果としてプロフィールが徐々に充実してくるのだと思います。
ただ、人によってはこのようなキャリアの考え方は肌に合わないようです。その場合には、他のキャリアの考え方を自論・持論にすればよいと考えます。
2009年12月15日火曜日
脳卒中後の嚥下障害と栄養障害の関連
神奈川NSTMLにも投稿した内容ですが、こちらにも記載します。
脳卒中後の嚥下障害と栄養障害のレビュー論文がありましたので、紹介します。
一部のみ訳します。8つの研究で、脳卒中患者に栄養障害を認める割合は8.2%から49.0%、嚥下障害を認める割合は24.3%から52.6%。
5つの研究は脳卒中発症後7日以内、3つの研究は急性期以降のリハの時期(回復期)。
嚥下障害患者では、嚥下障害を認めない患者より、栄養障害の割合がオッズ比で2.425倍(95%信頼区間1.264-4.649,
p<0.008)統計学的に有意に高い。
サブグループ解析では、回復期では、嚥下障害患者に栄養障害の割合が高い(オッズ2.445倍、95%信頼区間1.009-5.925,
p<0.048)、発症後7日以内では統計学的有意差なし(オッズ2.401倍、95%信頼区間0.918-6.277, p<0.074)。
私の論文解釈:サブグループ解析で統計学的有意差がなくても臨床的有意差は認める。急性期でも回復期でも、嚥下障害患者には栄養障害を認める可能性オッズ比で2.4倍が高く、脳卒中患者では嚥下障害と栄養障害に関連を認める。
私の考え:嚥下だけでも栄養だけでも不十分で、臨床では両者を同時に評価して介入することが望ましい。脳卒中が重症であるほど、嚥下障害と栄養障害の両者を認めやすい可能性がある。脳卒中以外の患者(特に高齢者、誤嚥性肺炎の一部、廃用など、筋萎縮による嚥下障害)では、嚥下障害と栄養障害の関連がより強い可能性がある。
A review of the relationship between dysphagia and malnutrition
following stroke.
Foley NC, Martin RE, Salter KL, Teasell RW.
Lawson Health Research Institute, Parkwood Hospital, London, Ontario,
Canada. J Rehabil Med. 2009 Sep;41(9):707-13.
OBJECTIVE: To clarify the relationship between malnutrition and
dysphagia following stroke. DESIGN: Systematic review. METHODS: All
published trials that had examined both the swallowing ability and
nutritional status of subjects following stroke were identified.
Pooled analyses were performed to establish whether the odds of being
malnourished were increased given the presence of dysphagia. RESULTS:
Eight studies were identified. The presence of malnutrition and
dysphagia ranged from 8.2% to 49.0% and 24.3% to 52.6%, respectively.
Five of the included trials were conducted within the first 7 days
following stroke, while 3 were conducted during the rehabilitation
phase. The overall odds of being malnourished were higher among
subjects who were dysphagic compared with subjects with intact
swallowing (odds ratio: 2.425; 95% confidence interval: 1.264-4.649, p
< 0.008). In subgroup analysis, the odds of malnutrition were
significantly increased during the rehabilitation stage (odds ratio:
2.445; 95% confidence interval: 1.009-5.925, p < 0.048), but not
during the first 7 days of hospital admission (odds ratio: 2.401; 95%
confidence interval: 0.918-6.277, p < 0.074). CONCLUSION: In a
systematic review including the results from 8 studies, the odds of
being malnourished were increased given the presence of dysphagia
following stroke.
脳卒中後の嚥下障害と栄養障害のレビュー論文がありましたので、紹介します。
一部のみ訳します。8つの研究で、脳卒中患者に栄養障害を認める割合は8.2%から49.0%、嚥下障害を認める割合は24.3%から52.6%。
5つの研究は脳卒中発症後7日以内、3つの研究は急性期以降のリハの時期(回復期)。
嚥下障害患者では、嚥下障害を認めない患者より、栄養障害の割合がオッズ比で2.425倍(95%信頼区間1.264-4.649,
p<0.008)統計学的に有意に高い。
サブグループ解析では、回復期では、嚥下障害患者に栄養障害の割合が高い(オッズ2.445倍、95%信頼区間1.009-5.925,
p<0.048)、発症後7日以内では統計学的有意差なし(オッズ2.401倍、95%信頼区間0.918-6.277, p<0.074)。
私の論文解釈:サブグループ解析で統計学的有意差がなくても臨床的有意差は認める。急性期でも回復期でも、嚥下障害患者には栄養障害を認める可能性オッズ比で2.4倍が高く、脳卒中患者では嚥下障害と栄養障害に関連を認める。
私の考え:嚥下だけでも栄養だけでも不十分で、臨床では両者を同時に評価して介入することが望ましい。脳卒中が重症であるほど、嚥下障害と栄養障害の両者を認めやすい可能性がある。脳卒中以外の患者(特に高齢者、誤嚥性肺炎の一部、廃用など、筋萎縮による嚥下障害)では、嚥下障害と栄養障害の関連がより強い可能性がある。
A review of the relationship between dysphagia and malnutrition
following stroke.
Foley NC, Martin RE, Salter KL, Teasell RW.
Lawson Health Research Institute, Parkwood Hospital, London, Ontario,
Canada. J Rehabil Med. 2009 Sep;41(9):707-13.
OBJECTIVE: To clarify the relationship between malnutrition and
dysphagia following stroke. DESIGN: Systematic review. METHODS: All
published trials that had examined both the swallowing ability and
nutritional status of subjects following stroke were identified.
Pooled analyses were performed to establish whether the odds of being
malnourished were increased given the presence of dysphagia. RESULTS:
Eight studies were identified. The presence of malnutrition and
dysphagia ranged from 8.2% to 49.0% and 24.3% to 52.6%, respectively.
Five of the included trials were conducted within the first 7 days
following stroke, while 3 were conducted during the rehabilitation
phase. The overall odds of being malnourished were higher among
subjects who were dysphagic compared with subjects with intact
swallowing (odds ratio: 2.425; 95% confidence interval: 1.264-4.649, p
< 0.008). In subgroup analysis, the odds of malnutrition were
significantly increased during the rehabilitation stage (odds ratio:
2.445; 95% confidence interval: 1.009-5.925, p < 0.048), but not
during the first 7 days of hospital admission (odds ratio: 2.401; 95%
confidence interval: 0.918-6.277, p < 0.074). CONCLUSION: In a
systematic review including the results from 8 studies, the odds of
being malnourished were increased given the presence of dysphagia
following stroke.
2009年12月13日日曜日
継続教育と看護の実践知
高梨俊毅監修、看護医療系職の「高度専門職化」への道 継続教育と看護の実践知 KIERA(学会)活動20年の足跡を辿る(看護の科学社、2009)という本を読みました。
http://www.kango.co.jp/shoseki/keizokukyoiku.htm
KIERA学会とは、学会HPからの引用ですが、<ナラティブアプローチ>の一形態である「体験のことば化」を主たる<継続教育方法・研究方法>とすることによって、保健・医療・福祉系臨地専門職の≪Profession化=高度専門職化≫を導く、≪「継続教育力」と「実践知力」≫の内実を具体的に明らかにせんとする『学際的継続教育学会』であるとのことです。
http://homepage3.nifty.com/kiera/
この本を読むまでKIERA学会の存在も知らなかったのですが、感じたことが3つあります。
①この本でも体験をことば化することで経験からの学習を深めることが、看護師など保健・医療・福祉職の継続教育や研究に重要であると述べられています。
これは先日紹介した経験学習モデルとほぼ同じだと考えます。先行研究によるエビデンス、歴史、他人の経験からの学習ももちろん重要ですが、自分の経験から深く学ぶことも重要です。
まずいラーメン屋は20年たってもまずいと言いますが、ただ経験を積み重ねるだけで経験学習モデルのサイクルを回さなければ、医療人もまずいままだと感じます。
②アメリカでの専門看護師教育についての記載があります。日本では専門看護師の取得には修士が必要で、これでもかなり敷居が高いと感じていました。しかし、アメリカでは2015年以降、高度専門職の資格を志願するものは、博士レベル(Doctor of Nursing Practice:DNP、これはPh.Dとは異なる)で獲得しなければならないという声明書が採択されたとのことです。
DNPに要求されるコンピテンシー(エッセンシャルズ)には、以下の8つがあるそうです(p95-100)。
・科学的根拠に基づいた実践
・システム的思考を持った高度なリーダーシップ能力
・エビデンスに基づいた実践的判断能力
・ヘルスケアを改善したり変革したりするためのITや治療のために活用されるテクノロジーを使いこなす能力
・ヘルスケア制度改革の代弁者として活躍する能力
・ヘルスケアチームメンバーとの効果的なコミュニケーションやコラボレーション能力
・国民の健康増進や、疾病予防と公衆衛生に関する知識と技能を持っていること
・高度看護実践に関する能力
DNPプログラムはアメリカ各地の大学にあり、その数は200校以上だそうです。
最後の看護実践を各職種の専門知識・技能に置き換えれば、その他の7項目は他の医療職種にも求められるコンピテンシーかもしれません。
これだけのコンピテンシーを身に付けたDNPの看護師と一緒に仕事をできればとても心強いと思います。一方、単純比較はできませんが、DNPの看護師のほうが今の私よりは仕事ができる気もします。
例えば私は政策を考えたことはほとんどなく、「ヘルスケア制度改革の代弁者として活躍する能力」は皆無に近いです。日本の医師向けの大学院は基本的にPh.Dで、研究(大半は基礎研究)を行えばよいので、かなりの違いを感じます。個人的にはPh.DよりDNPのほうに魅力を感じます。
③看護教育における研究の位置づけの変化も興味深く読みました(p108-110)。
アメリカでは従来、看護研究方法と研究すること自体を学士、修士レベルの学生に教えることに焦点を当てていたそうです。これは今の日本が同じ状況です。
しかし、学士と修士では、EBNに主な注目がおかれ、研究がもたらした結果を評価し、どのようにその知識を実践に利用できるかに焦点を移行しているそうです。
Ph.Dはもちろんオリジナルな研究実施が必須ですが、DNPはEBNをとりいれたアクションリサーチ的なプロジェクト報告書などでもよいそうです。
学士や卒後3年目によく行われる院内看護研究は、やや無理があるように私は感じます。どちらも1年以内でリサーチクエスチョンの作成から発表(学会、論文)まで経験させることが多いと思います。しかし、一定以上の質の研究を、他の学業や仕事と並行しながら1年以内で行うことは極めて困難です。やらされ感だけが残ったという話も聞きます。
他の学業や仕事がフリーで研究に専念できる環境であれば、2年で仕上げることは可能かもしれません。つまり、修士であればEBNの習得だけでなく、論文執筆がゴールでもよいと思います。
私の知り合いの看護師は、修士の2年間ではEBNと研究方法を身につけることでせいいっぱいだったと言っています。私が行った質的研究は一昨日、アクセプトの連絡をいただきましたが、リサーチクエスチョンの作成から4年かかっています。雑誌に掲載されるのは来年で、掲載までは4年半というところでしょう。これは遅すぎかもしれませんが…。
日本でも看護学士では研究実施よりEBNに重きが置かれるようになるのではないかと予測しています。院内看護研究も継続するのであれば、卒後4年目以降から3-4年間かけて、グループで1つの研究を仕上げるほうが意味があるのではと感じます。
http://www.kango.co.jp/shoseki/keizokukyoiku.htm
KIERA学会とは、学会HPからの引用ですが、<ナラティブアプローチ>の一形態である「体験のことば化」を主たる<継続教育方法・研究方法>とすることによって、保健・医療・福祉系臨地専門職の≪Profession化=高度専門職化≫を導く、≪「継続教育力」と「実践知力」≫の内実を具体的に明らかにせんとする『学際的継続教育学会』であるとのことです。
http://homepage3.nifty.com/kiera/
この本を読むまでKIERA学会の存在も知らなかったのですが、感じたことが3つあります。
①この本でも体験をことば化することで経験からの学習を深めることが、看護師など保健・医療・福祉職の継続教育や研究に重要であると述べられています。
これは先日紹介した経験学習モデルとほぼ同じだと考えます。先行研究によるエビデンス、歴史、他人の経験からの学習ももちろん重要ですが、自分の経験から深く学ぶことも重要です。
まずいラーメン屋は20年たってもまずいと言いますが、ただ経験を積み重ねるだけで経験学習モデルのサイクルを回さなければ、医療人もまずいままだと感じます。
②アメリカでの専門看護師教育についての記載があります。日本では専門看護師の取得には修士が必要で、これでもかなり敷居が高いと感じていました。しかし、アメリカでは2015年以降、高度専門職の資格を志願するものは、博士レベル(Doctor of Nursing Practice:DNP、これはPh.Dとは異なる)で獲得しなければならないという声明書が採択されたとのことです。
DNPに要求されるコンピテンシー(エッセンシャルズ)には、以下の8つがあるそうです(p95-100)。
・科学的根拠に基づいた実践
・システム的思考を持った高度なリーダーシップ能力
・エビデンスに基づいた実践的判断能力
・ヘルスケアを改善したり変革したりするためのITや治療のために活用されるテクノロジーを使いこなす能力
・ヘルスケア制度改革の代弁者として活躍する能力
・ヘルスケアチームメンバーとの効果的なコミュニケーションやコラボレーション能力
・国民の健康増進や、疾病予防と公衆衛生に関する知識と技能を持っていること
・高度看護実践に関する能力
DNPプログラムはアメリカ各地の大学にあり、その数は200校以上だそうです。
最後の看護実践を各職種の専門知識・技能に置き換えれば、その他の7項目は他の医療職種にも求められるコンピテンシーかもしれません。
これだけのコンピテンシーを身に付けたDNPの看護師と一緒に仕事をできればとても心強いと思います。一方、単純比較はできませんが、DNPの看護師のほうが今の私よりは仕事ができる気もします。
例えば私は政策を考えたことはほとんどなく、「ヘルスケア制度改革の代弁者として活躍する能力」は皆無に近いです。日本の医師向けの大学院は基本的にPh.Dで、研究(大半は基礎研究)を行えばよいので、かなりの違いを感じます。個人的にはPh.DよりDNPのほうに魅力を感じます。
③看護教育における研究の位置づけの変化も興味深く読みました(p108-110)。
アメリカでは従来、看護研究方法と研究すること自体を学士、修士レベルの学生に教えることに焦点を当てていたそうです。これは今の日本が同じ状況です。
しかし、学士と修士では、EBNに主な注目がおかれ、研究がもたらした結果を評価し、どのようにその知識を実践に利用できるかに焦点を移行しているそうです。
Ph.Dはもちろんオリジナルな研究実施が必須ですが、DNPはEBNをとりいれたアクションリサーチ的なプロジェクト報告書などでもよいそうです。
学士や卒後3年目によく行われる院内看護研究は、やや無理があるように私は感じます。どちらも1年以内でリサーチクエスチョンの作成から発表(学会、論文)まで経験させることが多いと思います。しかし、一定以上の質の研究を、他の学業や仕事と並行しながら1年以内で行うことは極めて困難です。やらされ感だけが残ったという話も聞きます。
他の学業や仕事がフリーで研究に専念できる環境であれば、2年で仕上げることは可能かもしれません。つまり、修士であればEBNの習得だけでなく、論文執筆がゴールでもよいと思います。
私の知り合いの看護師は、修士の2年間ではEBNと研究方法を身につけることでせいいっぱいだったと言っています。私が行った質的研究は一昨日、アクセプトの連絡をいただきましたが、リサーチクエスチョンの作成から4年かかっています。雑誌に掲載されるのは来年で、掲載までは4年半というところでしょう。これは遅すぎかもしれませんが…。
日本でも看護学士では研究実施よりEBNに重きが置かれるようになるのではないかと予測しています。院内看護研究も継続するのであれば、卒後4年目以降から3-4年間かけて、グループで1つの研究を仕上げるほうが意味があるのではと感じます。
2009年12月10日木曜日
なぜリハ栄養か
なぜリハ栄養が大切だと自分が感じるようになったのかを、患者側の要因と、医療人側の要因に分けて考えてみます。
患者側の要因としては、入院リハを行っている患者に栄養障害の方が多いことに尽きます。おそらく昔よりもその割合は高くなっていると思います。
高齢社会の進行とともに、栄養障害になりやすい高齢の障害者が増えています。私が研修医だった頃は80代以上の患者は稀だったように憶えています。その後、自分が歳を重ねるとともに、患者が同じように歳を重ねているような実感があり、今は90代以上の患者も稀ではありません。
医学の進歩とともに、救命できる重症患者が増えています。このこと自体は全くよいことですが、侵襲が強く長期臥床を要することもあり、そのような患者の多くは栄養障害と廃用症候群を合併することになります。高齢者では予備力が少ないため、栄養障害と廃用症候群がより重度になりやすく、リハ栄養が重要となります。
次に医療人側の要因としては、リハ科医師やPT・OT・STの臨床栄養に関する知識不足が大きいです。
私も含めて医師やPT・OT・STは学生時代にほとんど臨床栄養を学習する機会がありませんでしたので、知識不足であることはやむをえない面があります。卒前教育の改善が必要です。
知識不足のため、目の前の患者が栄養障害を認めるかどうかを適切に判断できる医師やPT・OT・STは少ないと考えます。つまり、栄養障害の有無にかかわらず、ほぼ同じような訓練を行っているのが現状です。
しかし、栄養状態が良好な患者には有効な訓練でも、栄養不良の患者には逆効果となることがあります。PT・OT・STと患者が頑張れば頑張るほど、患者がぐったりして、むしろ機能が低下するという皮肉なケースもあります。
中重度の栄養障害を認めても適切な臨床栄養管理をされていれば、栄養改善とともに機能やADLが改善することはしばしばあります。しかし、1日200~600kcal程度の末梢静脈栄養のみで週単位にわたって管理されている禁食の患者は、今でも少なくありません。このような栄養管理下でリハを行っても、筋力や持久力が改善するわけはなく、低下していくのが当然です。
このような状況を数多く見てきて、リハ栄養の重要性を痛感しました。リハ関連職種にリハ栄養の重要性を伝えることで、より質の高いリハの実施、患者のADL・QOLのさらなる向上に貢献できるのではないかと考えています。
患者側の要因としては、入院リハを行っている患者に栄養障害の方が多いことに尽きます。おそらく昔よりもその割合は高くなっていると思います。
高齢社会の進行とともに、栄養障害になりやすい高齢の障害者が増えています。私が研修医だった頃は80代以上の患者は稀だったように憶えています。その後、自分が歳を重ねるとともに、患者が同じように歳を重ねているような実感があり、今は90代以上の患者も稀ではありません。
医学の進歩とともに、救命できる重症患者が増えています。このこと自体は全くよいことですが、侵襲が強く長期臥床を要することもあり、そのような患者の多くは栄養障害と廃用症候群を合併することになります。高齢者では予備力が少ないため、栄養障害と廃用症候群がより重度になりやすく、リハ栄養が重要となります。
次に医療人側の要因としては、リハ科医師やPT・OT・STの臨床栄養に関する知識不足が大きいです。
私も含めて医師やPT・OT・STは学生時代にほとんど臨床栄養を学習する機会がありませんでしたので、知識不足であることはやむをえない面があります。卒前教育の改善が必要です。
知識不足のため、目の前の患者が栄養障害を認めるかどうかを適切に判断できる医師やPT・OT・STは少ないと考えます。つまり、栄養障害の有無にかかわらず、ほぼ同じような訓練を行っているのが現状です。
しかし、栄養状態が良好な患者には有効な訓練でも、栄養不良の患者には逆効果となることがあります。PT・OT・STと患者が頑張れば頑張るほど、患者がぐったりして、むしろ機能が低下するという皮肉なケースもあります。
中重度の栄養障害を認めても適切な臨床栄養管理をされていれば、栄養改善とともに機能やADLが改善することはしばしばあります。しかし、1日200~600kcal程度の末梢静脈栄養のみで週単位にわたって管理されている禁食の患者は、今でも少なくありません。このような栄養管理下でリハを行っても、筋力や持久力が改善するわけはなく、低下していくのが当然です。
このような状況を数多く見てきて、リハ栄養の重要性を痛感しました。リハ関連職種にリハ栄養の重要性を伝えることで、より質の高いリハの実施、患者のADL・QOLのさらなる向上に貢献できるのではないかと考えています。
2009年12月9日水曜日
なぜFDか
このブログにはFDの話が多いのですが、今日はなぜ医療人にFDが必要かを考えてみます。
もっとも大きな原因は、今の世の中が知識社会かつ組織社会であり、医療人が知識労働者かつ組織労働者であるためです。
知識社会と知識労働者については、P.F.ドラッカーが1960年代から「経営者の条件」や「断絶の時代」などで述べています。ドラッカーの本を読んだことがない方は、ぜひ「プロフェッショナルの条件」を読むことをお勧めします。この本と出会ったことで私の人生が変わったといっても過言ではありません。
今は知識を知識に応用して成果を出すことが求められる時代です。そのため、医学知識や栄養知識といった医療人の専門知識だけでは成果は不十分で、FDと専門知識・技能を結合することではじめて十分な成果が出ます。
実際、問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力を意識していなないとしても、日々の仕事の中で医療人はこれらの能力を用いています。しかも、臨床だけでなく、教育、研究、管理でもこれらの能力を用いて仕事しているのです。つまり、これらの能力をより意識して仕事に応用することで、臨床、教育、研究、管理でより多くの成果が得られます。
FDと基礎医学は似ているところがあります。どちらも大切ですが、臨床医学に比べるととっつきにくく、忘れがちです。ある程度の臨床経験を積むことで、その重要性を再認識します。解剖、生理、病理を忘れても一定の臨床の仕事はできますが、これらをよく知っているとよりよい仕事をできます。FDを意識しなくても仕事はできますが、意識して学習、活用すると、よりよい仕事をできます。
また、知識社会では知識や知恵が重要な経営資源(人や社会関係資本も重要ですが)になるため、新しい情報や知識が各領域で急速に増えていきます。それらを身につけるためには、効率的な学習が必要です。若い学生に適した学習方法と成人に適した学習方法(成人学習理論)は異なるので、学生時代に習得した学習方法のまま医療人になっても学習することは、あまり効率的ではないことが多いと思われます。私はかなり学習方法を変えました。
FDを学ぶことで、キャリアの満足度を高めることも可能だと感じています。自分のキャリアを考えることの重要性も、今の社会では急速に増しています。一昔前は他人や会社、社会任せのキャリアでも何とかなっていましたが、今はそれでは満足なキャリアは得にくいと思います。今ほど個々の医療人がキャリアを考えることが大切な時代はありません。実際、私の周りではキャリアを真剣に考えている医療人が多いです。
論理的な文章になっていませんが、このような理由で私はFDに関心を持ち学習するようになりました。FDを学んでいなければ、リハ栄養の本を執筆することもなかったし、神奈川NST専門療法士連絡会や横浜南部地域一体型NSTを立ち上げることもなかったはずです。
もっとも大きな原因は、今の世の中が知識社会かつ組織社会であり、医療人が知識労働者かつ組織労働者であるためです。
知識社会と知識労働者については、P.F.ドラッカーが1960年代から「経営者の条件」や「断絶の時代」などで述べています。ドラッカーの本を読んだことがない方は、ぜひ「プロフェッショナルの条件」を読むことをお勧めします。この本と出会ったことで私の人生が変わったといっても過言ではありません。
今は知識を知識に応用して成果を出すことが求められる時代です。そのため、医学知識や栄養知識といった医療人の専門知識だけでは成果は不十分で、FDと専門知識・技能を結合することではじめて十分な成果が出ます。
実際、問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力を意識していなないとしても、日々の仕事の中で医療人はこれらの能力を用いています。しかも、臨床だけでなく、教育、研究、管理でもこれらの能力を用いて仕事しているのです。つまり、これらの能力をより意識して仕事に応用することで、臨床、教育、研究、管理でより多くの成果が得られます。
FDと基礎医学は似ているところがあります。どちらも大切ですが、臨床医学に比べるととっつきにくく、忘れがちです。ある程度の臨床経験を積むことで、その重要性を再認識します。解剖、生理、病理を忘れても一定の臨床の仕事はできますが、これらをよく知っているとよりよい仕事をできます。FDを意識しなくても仕事はできますが、意識して学習、活用すると、よりよい仕事をできます。
また、知識社会では知識や知恵が重要な経営資源(人や社会関係資本も重要ですが)になるため、新しい情報や知識が各領域で急速に増えていきます。それらを身につけるためには、効率的な学習が必要です。若い学生に適した学習方法と成人に適した学習方法(成人学習理論)は異なるので、学生時代に習得した学習方法のまま医療人になっても学習することは、あまり効率的ではないことが多いと思われます。私はかなり学習方法を変えました。
FDを学ぶことで、キャリアの満足度を高めることも可能だと感じています。自分のキャリアを考えることの重要性も、今の社会では急速に増しています。一昔前は他人や会社、社会任せのキャリアでも何とかなっていましたが、今はそれでは満足なキャリアは得にくいと思います。今ほど個々の医療人がキャリアを考えることが大切な時代はありません。実際、私の周りではキャリアを真剣に考えている医療人が多いです。
論理的な文章になっていませんが、このような理由で私はFDに関心を持ち学習するようになりました。FDを学んでいなければ、リハ栄養の本を執筆することもなかったし、神奈川NST専門療法士連絡会や横浜南部地域一体型NSTを立ち上げることもなかったはずです。
2009年12月8日火曜日
NST嚥下連絡票
2009年12月6日日曜日
質的研究
研究には大きく分けて、量的研究と質的研究があります。
量的研究は数字で統計学を利用して物事を考える、質的研究は数字ではなく言葉でインタビュー、観察、文書などからデータを収集して、分析して考えるという違いがあります。
私の場合、研究方法の基本を身につけることで、考える力が少しずつ身についてきたように感じています。
自分が行った質的研究のPowerpoint原稿は、共同演者の岡田唯男先生が以下のHPまとめてくださっています。
論文に関しては投稿が済んだところで現在査読中です。アクセプトされましたらまた報告させていただきます。
リハも臨床栄養も量的研究がほとんどですが、リハ栄養の臨床研究やエビデンスはまだ乏しいので、質的研究のほうが適当な研究テーマも少なくないのではないかと感じています。
http://www.scribd.com/doc/19730168/2009-
量的研究は数字で統計学を利用して物事を考える、質的研究は数字ではなく言葉でインタビュー、観察、文書などからデータを収集して、分析して考えるという違いがあります。
私の場合、研究方法の基本を身につけることで、考える力が少しずつ身についてきたように感じています。
自分が行った質的研究のPowerpoint原稿は、共同演者の岡田唯男先生が以下のHPまとめてくださっています。
論文に関しては投稿が済んだところで現在査読中です。アクセプトされましたらまた報告させていただきます。
リハも臨床栄養も量的研究がほとんどですが、リハ栄養の臨床研究やエビデンスはまだ乏しいので、質的研究のほうが適当な研究テーマも少なくないのではないかと感じています。
http://www.scribd.com/doc/19730168/2009-
2009年12月4日金曜日
経験学習モデル
私は数年前にコルブの経験学習モデルを知りました。
PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)にも似ていますし、PDSサイクル(Plan-Do-See)は学生の頃から知っていましたが、経験からどれだけ学習できていたかと振り返ると疑わしいものがあります。
今でも十分な内省はできていないと感じますが、質的研究を自分で経験してから、抽象的な概念化、一般化を以前より行えるようになりました。
世の中には経験から学習できる人と学習できない人がいます。特に予期せぬ成功と予期せぬ失敗から学べることが大きいです。賢者は歴史から学ぶ、愚者は経験から学ぶという言葉がありますが、歴史からも経験からも学習するためには、より多くの学習サイクルを回すことが大切だと感じています。
2009年12月3日木曜日
Faculty Development
Faculty Development(FD)という言葉は、大学関係者以外にはあまりなじみがないかもしれません。指導者養成などと訳され、教育のスキルを伸ばすという意味で使用されることもありますが、より広い概念もあります。
医療人が専門の知識や技能を用いて成果を出すためには、専門知識以外に、問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力の4つの能力が必要だと私は考えています。
Faculty Developmentを体系的に学習できる機会で私が知っているのは、鉄蕉会亀田ファミリークリニック館山の岡田唯男先生がディレクターをされているHANDS-FDFしかありません。
HANDS-FDF project http://handsfdf.mywiki.biz/
NST専門療法士が成果を出すためにもこれらの能力を身につけて活用することが重要だと考え、神奈川NST専門療法士連絡会を立ち上げました。その中でFD勉強会や神奈川NST合宿を企画して、臨床栄養とFDの両方を学習できるようにしています。このブログにはFD関連のことも記載していきたいと思います。
2009年12月2日水曜日
ブログ作成
このたび「PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 栄養ケアがリハを変える」という本を医歯薬出版株式会社から発行することになりました。
http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.cfm?bookcode=218620
栄養状態がよければリハビリテーションのことだけ考えていればよいのですが、実際には栄養障害を認める患者が少なくありません。栄養アセスメントを行わないでレジスタンストレーニングや持久力増強訓練を行うと、かえって筋力低下など機能低下を起こすことがあります。栄養ケアがリハビリテーションを変えると考えていますので、リハビリテーション栄養に関する内容を記載していきたいと思います。
http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.cfm?bookcode=218620
栄養状態がよければリハビリテーションのことだけ考えていればよいのですが、実際には栄養障害を認める患者が少なくありません。栄養アセスメントを行わないでレジスタンストレーニングや持久力増強訓練を行うと、かえって筋力低下など機能低下を起こすことがあります。栄養ケアがリハビリテーションを変えると考えていますので、リハビリテーション栄養に関する内容を記載していきたいと思います。
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