2010年5月10日月曜日

サルコペニア予防・改善のためのアミノ酸栄養

今日は、Geriatric Medicine(老年医学)48巻2号の特集【サルコペニア 研究の現状と臨床への応用】の中から、小林久峰:サルコペニア予防・改善のためのアミノ酸栄養、Page211-216を紹介します。
SUMMARY
高齢者では、食事などの筋タンパク質同化刺激による筋タンパク質の合成促進反応と、分解抑制反応が減弱しており、その結果として骨格筋量の減少(サルコペニア)が起こる。高齢者の筋タンパク質合成を促進するには、必須アミノ酸の摂取が重要であることが判明しており、特にロイシンの含量を高めた高ロイシン必須アミノ酸は、比較的少量で、効率よく筋タンパク質の合成を促進し、その長期的な摂取により、骨格筋量、筋力、身体機能などの改善が期待できる。

サルコペニアに対して現時点で最も有効な治療方法が、レジスタンストレーニング(筋トレ)であることは確実です。食事療法やサプリメント単独で、レジスタンストレーニングの効果を上回ることはありませんし、単独での有効性は十分検証されているとはまだ言えないと思います。

ただ、レジスタンストレーニングに食事療法やサプリメントを併用することで、サルコペニアに対する治療効果をより高めることは可能だと私は考えています。

その中で分岐鎖アミノ酸(BCAA)が有効だと言われていますすが、BCAAの中でもロイシンの割合が高い必須アミノ酸投与がよいそうです。ただ、ロイシン単独での効果は不十分で、他の必須アミノ酸(少なくともバリン、イソロイシン)をともに摂取することがポイントのようです。

以前、サルコペニアの方に訓練効果増強を期待して、リーバクト(BCAA製剤)をリハ前に飲んでもらったことがありますが、短期的には目に見える効果は感じられませんでした。長期的に続けていれば目に見える改善が得られたのかもしれませんが…。レジスタンストレーニングにしてもアミノ酸にしても、継続しなければ効果を期待できないというのが現状でしょう。

このような背景もあり、高齢者での蛋白質摂取量を体重当たり1.2g/日程度まで増やしたほうがよいという考えもあります。一方で慢性腎臓病(CKD)予防のためには、なるべく蛋白質摂取量を少なくしたほうがよい(体重当たり0.6g/日程度)という考え方もあります。サルコペニアと腎機能のバランスの考慮が必要です。

特に慢性腎不全の患者では悪液質によるサルコペニア(疾患に関連した二次性サルコペニア)を合併することがあるため、蛋白質摂取量のバランスが重要となります。腎不全進行を予防するための食事療法の重要性は言うまでもありませんが、厳格な食事療法の結果、サルコペニアが進行してADLやQOLに悪影響が出るようでは最適な治療とは言えないかもしれません。難しいところです。

少なくとも栄養に関連した二次性サルコペニア(不十分なエネルギー摂取量による飢餓)や活動に関連した二次性サルコペニア(安静、臥床、不活発な生活による廃用性筋萎縮)に関しては、予防することが重要です。その上で腎機能と筋肉量・筋力・歩行能力を見ながら、個々の患者にあわせて蛋白質摂取量を調整することになるかと思います。

2 件のコメント:

  1. 諸冨5/11/2010

    いつもお世話になっています。
    諸冨です。気になったので質問です。
    リーバクトは保険診療として(つまり病名をつけて)処方したのでしょうか。
    実は先日、ご相談しました「虚弱な慢性心不全患者に対する心リハと栄養療法」について倫理委員会に出したのですが、栄養療法と言っても、何を与える気なのだ?とか、1つに絞ってしまっては、偏よりが出てしまうし、その製品の業者と癒着しているかのように思われるから、宜しくないと言われてしまったのです。

    それとこの前、読んでいた論文でCr(クレアチニン)を直接経口投与したというのを読んだのですが、ご経験はあるでしょうか。

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  2. 諸冨先生、コメントどうもありがとうございます。
    リーバクトは「非代償性肝硬変患者の低アルブミン血症」という病名で処方しました。ただ、大学病院だとDPCですので、必要な薬剤であれば病名に関係なく処方します。

    栄養療法は1つに絞る短所もありますが、偏りは比較的少ないと思います。何らかの栄養剤の投与という形が難しいようでしたら、管理栄養士による積極的な栄養指導vs.パンフレットをわたすのみといった介入方法もあります。管理栄養士の協力が必須ですが…。

    サプリメントの件ですが、クレアチニンではなくクレアチンではないでしょうか。いずれにしても私は使用経験はありません。ただ、クレアチンに関しては筋肉量増加に関して、一定のエビデンスはあるようです。

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