2010年7月14日水曜日

リハビリテーション栄養の過去・現在と将来展望

 過去のリハビリテーション(リハ)は、患者の栄養状態は良好で適切な栄養管理が行われているという思い込みのもとで行われていた。実際、高齢の障害者は現在より少なく、低栄養より過栄養のほうがリハの阻害因子と考えられていた。

 しかしリハを行っている患者の中には、重度栄養障害で餓死寸前の方もいた。餓死寸前の患者に必要なのは当然、訓練ではなく栄養である。一方、リハとNSTが協働して初めて、ADLやQOLが改善する患者もいた。これらの経験から「栄養ケアなくしてリハなし、リハなくして栄養ケアなし」と痛感し、リハ栄養ということばを作った。

 リハ栄養とは、栄養状態も含めてICF(国際生活機能分類)で評価を行ったうえで、適切な予後予測のもとでリハ栄養ケアプランを実践することである。栄養障害を認める患者では、リハと栄養管理を併用するリハ栄養ケアプランで、ADLやQOLの向上をより期待できる。ICFの心身機能・身体構造には栄養関連の項目が含まれているので、栄養も含めてICFで評価するのが本来のリハである。

 現在はリハプログラムを立案する際に栄養評価を行い、栄養状態と栄養管理にあわせた訓練内容を考慮するようになりつつある。栄養はバイタルサインの1つであり、栄養評価なしにリハプログラムは立案できない。中重度の栄養障害患者に1日2時間以上の積極的な機能訓練を行っても逆効果である。

 現在、NSTのメンバーに理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、歯科衛生士(DH)がいることは少ないが、これら4職種は2010年からNST専門療法士を取得できるようになった。多くのPT・OT・ST・DHにNST専門療法士を目指してほしい。

 将来はすべてのNSTにPT・OT・ST・DHが原則として参画し、リハと栄養を同時に管理するリハNSTへの発展が期待される。また、NSTが機能訓練室にも回診し、管理栄養士が機能訓練室に常駐して、個々の患者に適切な栄養・水分補給をいつでも機能訓練室でできることが期待される。

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