今日はライトワークス監修、中川肇著の問題解決、ファーストプレスを紹介します。
http://www.firstpress.co.jp/?p=302
この本もライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊です。このシリーズの紹介は当面、この本で終わりにして、今度はリハ栄養のことを書きます。
問題発見・解決能力は、私が分類するFD(Faculty Development)の中でも、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力とともに4本柱の1つであり、極めて重要な能力と考えています。
問題解決とは、「現状とあるべき姿のギャップ」を埋める作業のことです。つまり、あるべき姿と現状の両方を認識できなければ、問題意識を持つことができません。先が見えずに思い悩んでいる状況では、あるべき姿か現状かこれら両方が見えていないことがよくあります。
問題解決の一連のプロセスは、
①解決すべき問題の設定
②問題の根本的な原因の追及
③問題を解消する対策の立案と実施
の3つのステップに分類されます。
医療人が仕事をしているのは、何らかの問題(健康問題など)がそこにあるからです。つまり、医療人は毎日、問題発見、問題解決に取り組んでいるともいえます。
問題設定のプロセスでは、問題を認識しても、それが解決されるべき問題(=課題)であるとは限らないことを、ほとんどの人が理解していないそうです。
しばらく放置したほうがよい問題や、他の問題を解決することでその問題自体が問題でなくなることや、そもそも解決しようのない問題のことがあります。あくまで解決すべき課題のみ、対策立案・実施の段階に進めます。
日本人は学生時代、常に問題を与えられ、唯一絶対の正解をいかに早く見つけるかということばかりやっています。そのため、問題発見能力や、唯一絶対の正解がない問題の解決能力を鍛える機会が、学生時代にはほとんどありません。
また、唯一絶対の正解以外はすべて不正解、失敗という世界で育っているためか、失敗を恐れる人が多いように感じます。失敗を恐れて何も行動しないことで失敗経験を避ける人もいます。私は何も行動しないことが最大の失敗だと思うようにしていますが…。
原因追求と対策立案には、先日紹介した仮説思考が極めて有効です。
その他に、SIS(Situation:事実, Implication:解釈, Solution:解決策の頭文字をとったもの)は思考の3つのプロセスを示していて、問題の本質を見極める際に重要な役割を果たすそうです。「空雨傘(空が暗い、雨が降りそうだ、傘を持っていこう)」も同じ意味です。
コンプリートメッセージは、What:結論、Why:根拠、How:方法の3つのコンポーネントがそろったメッセージのことで、これらのいずれかがあいまいか不十分だと、コミュニケーション不全に陥りやすいそうです。
例えば「面会したいのでアポお願いします。この日に○○病院に伺いたいのですがいかがでしょうか。」というメールがあった場合、WhatとHowは明確ですが、Whyがないので、貴重な時間を割いて面会する理由が分からず、私は面会する気分になりません。
できる医療人の多くは、問題意識が高いです。つまり、現状とあるべき姿とそのギャップをよく認識しています。問題発見・解決能力を磨いて、自分のあるべき姿に近づきたいです。
2010年1月26日火曜日
仮説思考
今日はライトワークス監修、江口夏郎、山川隆史著の仮説思考、ファーストプレスを紹介します。
http://www.firstpress.co.jp/?p=38
この本もライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊です。仮説思考の本も何冊もありますが、このシリーズが最もわかりやすいです。
仮説思考とは、現在入手できる情報から、最もありそうな仮の結論を考え出して、
それをベースに行動していくという考え方です。
実際には、仮説の構築→仮説の検証→検証結果の判断→仮説の構築(進化)のサイクルを繰り返して回していくことで、特に問題解決の際の原因追究(Whyの仮説)や対策立案(Howの仮説)のステップで活用します。
仮説思考のメリット、つまりなぜ仮説思考を行うかの理由として、以下の3点が紹介されています。
・仮説であることを意識することにより思い込みを回避できる。
・仮説の構築、検証を繰り返していくことにより、最終的に正しい答えに行き着く可能性が高くなる。
・仮説を構築、検証することにより、多数の可能性を排除でき、時間が短縮できる。
仮説思考というと一見難しそうですが私たちは日々の仕事の中で、意識しているか無意識かの違いはありますが、仮説思考を行っています。
なぜこの患者さんは栄養状態が悪いんだろう、嚥下機能が悪いんだろうと考えることも仮説思考です。栄養ケアプランや嚥下リハプランの立案も仮説思考です。
日々の臨床で唯一絶対の正解が1回で見つかることは少ないので、最もありそうな仮の考え・結論ということで、栄養ケアプランや嚥下リハプランを立てて実際に行って、1週間後などに再評価して、その仮説が正しかったかどうかを確認しているのが実情だと思います。
「優秀なビジネスパーソン」と「平凡なビジネスパーソン」を分かつポイントは、仮説思考ができるか否かであるとまえがきに書いてあります。これはビジネスパーソンだけでなく、医療人にも当てはまると私は考えます。
臨床研究のうち相関関係や因果関係を見る量的研究(ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究など)は、基本的に帰無仮説を作成して、その仮説を否定する(差がない可能性が5%未満=pが0.05未満)ことで、統計学的有意差があるということを検証していますので、まさに仮説思考です。
相関関係や因果関係を見る量的研究では厳密に仮説思考を行わなければいけませんが、日々の臨床ではそこまで厳密に行わなくてもよいと思います。
ただ、仮説思考を行っていることを常に意識することで、より質の高い仮説を最初から構築できるようになります。一方、意識しなければ構築する仮説のレベルは一向に変わらないかもしれません。この本を一読して仮説思考を意識しながら日々の臨床を行うことをおすすめします。
http://www.firstpress.co.jp/?p=38
この本もライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊です。仮説思考の本も何冊もありますが、このシリーズが最もわかりやすいです。
仮説思考とは、現在入手できる情報から、最もありそうな仮の結論を考え出して、
それをベースに行動していくという考え方です。
実際には、仮説の構築→仮説の検証→検証結果の判断→仮説の構築(進化)のサイクルを繰り返して回していくことで、特に問題解決の際の原因追究(Whyの仮説)や対策立案(Howの仮説)のステップで活用します。
仮説思考のメリット、つまりなぜ仮説思考を行うかの理由として、以下の3点が紹介されています。
・仮説であることを意識することにより思い込みを回避できる。
・仮説の構築、検証を繰り返していくことにより、最終的に正しい答えに行き着く可能性が高くなる。
・仮説を構築、検証することにより、多数の可能性を排除でき、時間が短縮できる。
仮説思考というと一見難しそうですが私たちは日々の仕事の中で、意識しているか無意識かの違いはありますが、仮説思考を行っています。
なぜこの患者さんは栄養状態が悪いんだろう、嚥下機能が悪いんだろうと考えることも仮説思考です。栄養ケアプランや嚥下リハプランの立案も仮説思考です。
日々の臨床で唯一絶対の正解が1回で見つかることは少ないので、最もありそうな仮の考え・結論ということで、栄養ケアプランや嚥下リハプランを立てて実際に行って、1週間後などに再評価して、その仮説が正しかったかどうかを確認しているのが実情だと思います。
「優秀なビジネスパーソン」と「平凡なビジネスパーソン」を分かつポイントは、仮説思考ができるか否かであるとまえがきに書いてあります。これはビジネスパーソンだけでなく、医療人にも当てはまると私は考えます。
臨床研究のうち相関関係や因果関係を見る量的研究(ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究など)は、基本的に帰無仮説を作成して、その仮説を否定する(差がない可能性が5%未満=pが0.05未満)ことで、統計学的有意差があるということを検証していますので、まさに仮説思考です。
相関関係や因果関係を見る量的研究では厳密に仮説思考を行わなければいけませんが、日々の臨床ではそこまで厳密に行わなくてもよいと思います。
ただ、仮説思考を行っていることを常に意識することで、より質の高い仮説を最初から構築できるようになります。一方、意識しなければ構築する仮説のレベルは一向に変わらないかもしれません。この本を一読して仮説思考を意識しながら日々の臨床を行うことをおすすめします。
2010年1月25日月曜日
症例研究と研究倫理
一昨日は第一回かながわ介護保険施設食事・栄養ケア研究大会に参加してきました。
http://www.peg.or.jp/news/information/kanagawa/100123.pdf
調理師の発表やセントラルキッチンの発表など、他ではなかなか聞くことのできない一般演題を聞くことができ、視野が広がりました。このような場を作られた臨床栄養士、NCMリーダーの方たちには頭が下がります。ぜひこの研究大会を継続していただきたいと感じています。
ただ一方で、気になる一般演題があったことも事実です。
こういった地域の研究会や研究大会では、活動報告、症例研究、症例集積(数例の症例経験のまとめ)といった発表がほとんどです。活動報告に関しては研究とは言えないことが多いので(アクションリサーチのような研究もありますが)、研究倫理面で問題になることは比較的少ないかと思います。
一方、症例研究や症例集積は立派な臨床研究ですので、十分な倫理的配慮が求められます。
研究倫理で求められることは、大きく分けると
・適切なインフォームドコンセントの文書での取得
・対象者の匿名化
・倫理審査委員会での審査
・発表内容に関するもの
に分類できると思います。大学病院での症例研究ではすでにこれらすべてが求められます。しかし、このような研究会での発表に関しては、施設内に倫理審査委員会がないなどの理由で倫理審査委員会での審査を受けられないことは、現状ではやむをえないかもしれません。
ただ、インフォームドコンセントと匿名化に関しては確実に求められます。これらのいずれかが不十分であれば倫理的に問題がある臨床研究、発表ということになりますが、これらに関して十分な発表は少ないのが実情です。匿名化も名前だけ匿名にすればよいという程、単純なものではありません。
また、発表内容に関しては、他の研究会の一般演題で発表したものを全く同じ内容で別の研究会の一般演題で発表することは、二重投稿と同じですので、倫理的に問題があります。これは私も昔、意識せずにやってしまったことがありますが…。
基本的には一般演題を発表することは、発表者にとって貴重な学習機会になりますので、私も推奨しています。ただ、研究倫理的に問題がある発表では、対象者の犠牲のもとに自己学習しているということになります。このことへの自覚が足りないのかもしれません。
あまり倫理、倫理と言い過ぎると研究意欲がなくなることもありますが、基本的な研究倫理のルールは守った上で、よい症例研究をより多くの方に行っていただきたいと思います。
研究倫理に関心のある方は、厚労省の臨床研究や疫学研究に関する倫理指針などを読んで学習してください。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/index.html#4
http://www.peg.or.jp/news/information/kanagawa/100123.pdf
調理師の発表やセントラルキッチンの発表など、他ではなかなか聞くことのできない一般演題を聞くことができ、視野が広がりました。このような場を作られた臨床栄養士、NCMリーダーの方たちには頭が下がります。ぜひこの研究大会を継続していただきたいと感じています。
ただ一方で、気になる一般演題があったことも事実です。
こういった地域の研究会や研究大会では、活動報告、症例研究、症例集積(数例の症例経験のまとめ)といった発表がほとんどです。活動報告に関しては研究とは言えないことが多いので(アクションリサーチのような研究もありますが)、研究倫理面で問題になることは比較的少ないかと思います。
一方、症例研究や症例集積は立派な臨床研究ですので、十分な倫理的配慮が求められます。
研究倫理で求められることは、大きく分けると
・適切なインフォームドコンセントの文書での取得
・対象者の匿名化
・倫理審査委員会での審査
・発表内容に関するもの
に分類できると思います。大学病院での症例研究ではすでにこれらすべてが求められます。しかし、このような研究会での発表に関しては、施設内に倫理審査委員会がないなどの理由で倫理審査委員会での審査を受けられないことは、現状ではやむをえないかもしれません。
ただ、インフォームドコンセントと匿名化に関しては確実に求められます。これらのいずれかが不十分であれば倫理的に問題がある臨床研究、発表ということになりますが、これらに関して十分な発表は少ないのが実情です。匿名化も名前だけ匿名にすればよいという程、単純なものではありません。
また、発表内容に関しては、他の研究会の一般演題で発表したものを全く同じ内容で別の研究会の一般演題で発表することは、二重投稿と同じですので、倫理的に問題があります。これは私も昔、意識せずにやってしまったことがありますが…。
基本的には一般演題を発表することは、発表者にとって貴重な学習機会になりますので、私も推奨しています。ただ、研究倫理的に問題がある発表では、対象者の犠牲のもとに自己学習しているということになります。このことへの自覚が足りないのかもしれません。
あまり倫理、倫理と言い過ぎると研究意欲がなくなることもありますが、基本的な研究倫理のルールは守った上で、よい症例研究をより多くの方に行っていただきたいと思います。
研究倫理に関心のある方は、厚労省の臨床研究や疫学研究に関する倫理指針などを読んで学習してください。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/index.html#4
2010年1月22日金曜日
「リハ栄養」と「栄養リハ」
「リハ栄養」と「栄養リハ」は似ているようで別の概念です。
まず「栄養リハ」は栄養士ナビの栄養士・管理栄養士用語集に掲載されています。
http://www.eiyo-navi.jp/glossary/word/0188.shtml
以下、引用です。
【カテゴリ / 公衆栄養学】
病気で健康的な食生活を送れなくなった人に対して、食事療法や食生活指導を行い、もとの食生活に戻すはたらきかけ。あるいは、病気が完治できない場合、長期的な食事管理によって病状の悪化を防ぎ、普通の社会生活を送るサポートをすること。現在の医療環境では入院・治療期間は専門家の食事指導を受けることができるが、退院後は十分な指導が行われないという問題点がある。従って、今後は栄養リハビリテーションを地域レベルの活動として機能させることが重要である。
一言でいうと、栄養状態を回復させること(個人単位や地域単位など)が「栄養リハ」です。英語で検索すると、飢餓の子供が多い途上国の栄養プログラムとして、「栄養リハ」という用語が用いられています。
つまり「栄養リハ」ではリハという言葉を使っていますが、PT・OT・STやリハ医が関与することは少ないと考えます。
一方、「リハ栄養」は、栄養状態も含めてICFで評価を行ったうえで、適切な予後予測のもとで、リハ栄養ケアプランを実践することです。これはリハ効果を高めるために臨床栄養を活用するという発想ですので、PT・OT・STやリハ医の関与が必須です。
英語で「リハ栄養」を検索すると、心疾患の「リハ栄養」はあるようですが、他の疾患やリハ全般での「リハ栄養」という用語はほとんどないようでした。検索不測の可能性もありますが…。
当初、リハと栄養を一緒に考える用語として、「リハ栄養」と「栄養リハ」のどちらがよいか考えましたが、「リハ栄養」という言葉のほうが適切だと判断して、この言葉をつくることにしました。
スポーツ栄養や運動栄養という言葉や学問はあっても、栄養スポーツや栄養運動という言葉はあまり聞きなじみがありませんので、その意味でも「リハ栄養」のほうが適切だと考えています。
まず「栄養リハ」は栄養士ナビの栄養士・管理栄養士用語集に掲載されています。
http://www.eiyo-navi.jp/glossary/word/0188.shtml
以下、引用です。
【カテゴリ / 公衆栄養学】
病気で健康的な食生活を送れなくなった人に対して、食事療法や食生活指導を行い、もとの食生活に戻すはたらきかけ。あるいは、病気が完治できない場合、長期的な食事管理によって病状の悪化を防ぎ、普通の社会生活を送るサポートをすること。現在の医療環境では入院・治療期間は専門家の食事指導を受けることができるが、退院後は十分な指導が行われないという問題点がある。従って、今後は栄養リハビリテーションを地域レベルの活動として機能させることが重要である。
一言でいうと、栄養状態を回復させること(個人単位や地域単位など)が「栄養リハ」です。英語で検索すると、飢餓の子供が多い途上国の栄養プログラムとして、「栄養リハ」という用語が用いられています。
つまり「栄養リハ」ではリハという言葉を使っていますが、PT・OT・STやリハ医が関与することは少ないと考えます。
一方、「リハ栄養」は、栄養状態も含めてICFで評価を行ったうえで、適切な予後予測のもとで、リハ栄養ケアプランを実践することです。これはリハ効果を高めるために臨床栄養を活用するという発想ですので、PT・OT・STやリハ医の関与が必須です。
英語で「リハ栄養」を検索すると、心疾患の「リハ栄養」はあるようですが、他の疾患やリハ全般での「リハ栄養」という用語はほとんどないようでした。検索不測の可能性もありますが…。
当初、リハと栄養を一緒に考える用語として、「リハ栄養」と「栄養リハ」のどちらがよいか考えましたが、「リハ栄養」という言葉のほうが適切だと判断して、この言葉をつくることにしました。
スポーツ栄養や運動栄養という言葉や学問はあっても、栄養スポーツや栄養運動という言葉はあまり聞きなじみがありませんので、その意味でも「リハ栄養」のほうが適切だと考えています。
2010年1月21日木曜日
臨床研究を阻害する要因
「ジェネラリストの臨床研究」という依頼原稿をいただき、臨床研究を阻害する要因について考察しています。質の高い臨床研究を行うのは本当に大変ですし、あらゆる研究資源が不足していることが多いです。
今回は、経営資源のフレームワーク(人、物、金、時間、知識、感情)で考えてみました。
人:臨床研究を行うジェネラリストが少ない、研究の協力者やメンターがいない、協力者がいても上手に役割分担できない
物:研究計画書作成支援ツールがない、統計ソフトを入手できない、わかりやすい臨床研究のテキストが少ない、臨床研究デザインを学習できる場が少ない
金:研究費を取得できない、多額の自己負担をしてまで臨床研究をやりたくない
時間:臨床・教育・管理で忙しくて臨床研究のための時間がない、質の高い臨床研究にはかなりの時間を要する
知識:臨床研究デザイン、統計、Evidence Based Clinical Practice(EBCP)、英語の知識が少ない
感情:臨床研究を行う必要性を感じない、臨床研究を最後(原著論文執筆)までやりきる気力がない
これらの臨床研究を阻害する要因を1つ1つ克服することで、質の高い臨床研究が増えていくと思います。
フレームワークはこのままでと考えているのですが、各要因についてさらに臨床研究を阻害する要因がありましたら、ご意見をいただけるとありがたいです。よろしくお願い申し上げます。
今回は、経営資源のフレームワーク(人、物、金、時間、知識、感情)で考えてみました。
人:臨床研究を行うジェネラリストが少ない、研究の協力者やメンターがいない、協力者がいても上手に役割分担できない
物:研究計画書作成支援ツールがない、統計ソフトを入手できない、わかりやすい臨床研究のテキストが少ない、臨床研究デザインを学習できる場が少ない
金:研究費を取得できない、多額の自己負担をしてまで臨床研究をやりたくない
時間:臨床・教育・管理で忙しくて臨床研究のための時間がない、質の高い臨床研究にはかなりの時間を要する
知識:臨床研究デザイン、統計、Evidence Based Clinical Practice(EBCP)、英語の知識が少ない
感情:臨床研究を行う必要性を感じない、臨床研究を最後(原著論文執筆)までやりきる気力がない
これらの臨床研究を阻害する要因を1つ1つ克服することで、質の高い臨床研究が増えていくと思います。
フレームワークはこのままでと考えているのですが、各要因についてさらに臨床研究を阻害する要因がありましたら、ご意見をいただけるとありがたいです。よろしくお願い申し上げます。
2010年1月20日水曜日
クリティカル・シンキング
今日はライトワークス監修、岡本義行+江口夏郎著のクリティカル・シンキング、ファーストプレスを紹介します。
http://www.firstpress.co.jp/?p=58
この本はライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊で、同シリーズには他にも問題解決、仮説思考などおすすめの本があります。
クリティカル・シンキングの書籍はたくさんあるのですが、私にはわかりにくい本が多く、物事の考え方のルールをなかなか理解することができませんでした。その中でこの本は、考えることは「分解すること」であり「統合すること」である、とてもシンプルなのだと簡潔に紹介していてわかりやすいです。
統合する方法には、①要素間の関係性を見る方法(因果関係)、②要素の共通性を見いだしてカテゴリー化する方法(分類、体系化)、③要素のフローを見る方法(プロセス分解)などがあるそうです。
今の私は概念モデル、ロジックツリー、フレームワークの3つのいずれかで考えるようにしています。ただ以前はこのようなツールを全く知らなかったので、考え方を知らずに考えていた状況でした。当然、効率が悪く浅はかな考えのことが多かった気がします。
特に因果関係で要素を統合する方法はもっとも強力な考え方で、自然科学や社会科学など、名前に「科学」とつく学問では、ものごとを分解し、さらに因果関係に着目して統合する手法を使っているそうです。
約20年前から医療界ではEvidence Based Clinical Practice(EBCP、EBM、EBN)が言われるようになりました。EBCPでエビデンスレベルが高いもの(ランダム化比較試験、メタ分析など)は因果関係がより明確で、低いもの(症例報告、症例集積など)は因果関係が不明瞭という関係になっています。
EBCPの5つのステップ(①疑問点の抽出、②情報の検索、③情報の吟味:妥当か、何か、役立つか、④患者への適応、⑤ステップ①~④の振り返り)のうち、特に③情報の吟味がクリティカル・シンキングです。
EBCPが叫ばれる前から臨床疫学という学問はありましたが、医療に科学・サイエンスのアプローチが導入されたのは実質この20年で、それまでの医療は基礎医学とアートが主だったというのは、振り返ってみると驚きです。
医療にはサイエンスとアートの両方が重要ですが、それではサイエンスとは何か、アートとは何かと聞かれると即答しにくいです。しかし、クリティカル・シンキングを学習することで、サイエンスとは何かに関しては回答できるようになります。
栄養障害や嚥下障害などの原因追究(診断含め)や治療方法立案にもクリティカル・シンキングは有用で、より質の高い臨床栄養管理や嚥下リハなどが可能になります。
クリティカル・シンキングは医療人にはとっつきにくい領域ですし、一見あまり関係がないようにも思えますが、より質の高い医療を実践するのに有用なスキルです。EBCPと一緒に学ぶとより身に付きやすいので、同時に学習することをおすすめします。
http://www.firstpress.co.jp/?p=58
この本はライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊で、同シリーズには他にも問題解決、仮説思考などおすすめの本があります。
クリティカル・シンキングの書籍はたくさんあるのですが、私にはわかりにくい本が多く、物事の考え方のルールをなかなか理解することができませんでした。その中でこの本は、考えることは「分解すること」であり「統合すること」である、とてもシンプルなのだと簡潔に紹介していてわかりやすいです。
統合する方法には、①要素間の関係性を見る方法(因果関係)、②要素の共通性を見いだしてカテゴリー化する方法(分類、体系化)、③要素のフローを見る方法(プロセス分解)などがあるそうです。
今の私は概念モデル、ロジックツリー、フレームワークの3つのいずれかで考えるようにしています。ただ以前はこのようなツールを全く知らなかったので、考え方を知らずに考えていた状況でした。当然、効率が悪く浅はかな考えのことが多かった気がします。
特に因果関係で要素を統合する方法はもっとも強力な考え方で、自然科学や社会科学など、名前に「科学」とつく学問では、ものごとを分解し、さらに因果関係に着目して統合する手法を使っているそうです。
約20年前から医療界ではEvidence Based Clinical Practice(EBCP、EBM、EBN)が言われるようになりました。EBCPでエビデンスレベルが高いもの(ランダム化比較試験、メタ分析など)は因果関係がより明確で、低いもの(症例報告、症例集積など)は因果関係が不明瞭という関係になっています。
EBCPの5つのステップ(①疑問点の抽出、②情報の検索、③情報の吟味:妥当か、何か、役立つか、④患者への適応、⑤ステップ①~④の振り返り)のうち、特に③情報の吟味がクリティカル・シンキングです。
EBCPが叫ばれる前から臨床疫学という学問はありましたが、医療に科学・サイエンスのアプローチが導入されたのは実質この20年で、それまでの医療は基礎医学とアートが主だったというのは、振り返ってみると驚きです。
医療にはサイエンスとアートの両方が重要ですが、それではサイエンスとは何か、アートとは何かと聞かれると即答しにくいです。しかし、クリティカル・シンキングを学習することで、サイエンスとは何かに関しては回答できるようになります。
栄養障害や嚥下障害などの原因追究(診断含め)や治療方法立案にもクリティカル・シンキングは有用で、より質の高い臨床栄養管理や嚥下リハなどが可能になります。
クリティカル・シンキングは医療人にはとっつきにくい領域ですし、一見あまり関係がないようにも思えますが、より質の高い医療を実践するのに有用なスキルです。EBCPと一緒に学ぶとより身に付きやすいので、同時に学習することをおすすめします。
2010年1月14日木曜日
第13回日本病態栄養学会
先週末の第13回日本病態栄養学会の一般演題で発表した「栄養障害は廃用症候群のリハビリテーションに影響を与えるか」の抄録を掲載します。
【目的】廃用症候群はリハビリテーション(以下リハと略す)の主要な対象障害の1つであり、一部の患者では栄養障害を合併している。栄養障害が廃用症候群のリハビリテーションに与える影響を検討する。
【方法】対象は2006年6月から2007年3月に当院リハ科に併診があり、リハ科医師が総合的に廃用症候群と診断した入院患者129人。平均年齢68.1歳、男性81人、女性48人。入院から併診までの中央値19日(14.5、28.5)。退院時の廃用症候群の帰結で、改善群(A群)78人と改善しなかった群(B群)51人の2群に分類した。両群で併診時の年齢、性別、併診までの日数、BMI、ヘモグロビン、総蛋白、アルブミン、総リンパ球数との関連を症例対照研究で検討した。統計学的解析は、カイ2乗検定(性別)、Mann-Whitney U検定(併診までの日数、総リンパ球数)、t検定で行い、α=0.05と設定した。
【結果】平均ヘモグロビン(A群10.42、B群9.62、p=0.01)と総リンパ球数(中央値A群1368、B群1046、p=0.01)に有意差を認めた。年齢(A群66.7、B群70.1、p=0.24)、性別(A群男性50女性28、B群男性31女性20、p=0.70)、併診までの日数(中央値A群18、B群22、p=0.57)、BMI(A群21.6、B群20.5、p=0.14)、総蛋白(A群6.17、B群6.05、p=0.44)、アルブミン(A群2.68、B群2.58、p=0.35)には有意差を認めなかった。
【考察】リハ開始時のヘモグロビンと総リンパ球数が低い患者では、廃用症候群が改善しないことが多かった。ヘモグロビン10以下、総リンパ球数1200以下といった中等度以上の栄養障害が、廃用症候群のリハに影響を与える可能性が示唆された。
【結語】栄養障害は廃用症候群のリハに影響を与える可能性がある。中等度以上の栄養障害を合併する廃用症候群の患者では、リハと適切な臨床栄養管理の併用が望ましい。
発表資料はリハ栄養サイトにPDFファイルを添付資料として置きましたので、興味のある方はご参照ください。
http://sites.google.com/site/noventurenoglory/
【目的】廃用症候群はリハビリテーション(以下リハと略す)の主要な対象障害の1つであり、一部の患者では栄養障害を合併している。栄養障害が廃用症候群のリハビリテーションに与える影響を検討する。
【方法】対象は2006年6月から2007年3月に当院リハ科に併診があり、リハ科医師が総合的に廃用症候群と診断した入院患者129人。平均年齢68.1歳、男性81人、女性48人。入院から併診までの中央値19日(14.5、28.5)。退院時の廃用症候群の帰結で、改善群(A群)78人と改善しなかった群(B群)51人の2群に分類した。両群で併診時の年齢、性別、併診までの日数、BMI、ヘモグロビン、総蛋白、アルブミン、総リンパ球数との関連を症例対照研究で検討した。統計学的解析は、カイ2乗検定(性別)、Mann-Whitney U検定(併診までの日数、総リンパ球数)、t検定で行い、α=0.05と設定した。
【結果】平均ヘモグロビン(A群10.42、B群9.62、p=0.01)と総リンパ球数(中央値A群1368、B群1046、p=0.01)に有意差を認めた。年齢(A群66.7、B群70.1、p=0.24)、性別(A群男性50女性28、B群男性31女性20、p=0.70)、併診までの日数(中央値A群18、B群22、p=0.57)、BMI(A群21.6、B群20.5、p=0.14)、総蛋白(A群6.17、B群6.05、p=0.44)、アルブミン(A群2.68、B群2.58、p=0.35)には有意差を認めなかった。
【考察】リハ開始時のヘモグロビンと総リンパ球数が低い患者では、廃用症候群が改善しないことが多かった。ヘモグロビン10以下、総リンパ球数1200以下といった中等度以上の栄養障害が、廃用症候群のリハに影響を与える可能性が示唆された。
【結語】栄養障害は廃用症候群のリハに影響を与える可能性がある。中等度以上の栄養障害を合併する廃用症候群の患者では、リハと適切な臨床栄養管理の併用が望ましい。
発表資料はリハ栄養サイトにPDFファイルを添付資料として置きましたので、興味のある方はご参照ください。
http://sites.google.com/site/noventurenoglory/
サルコペニアと悪液質のコンセンサス定義の論文
サルコペニアと悪液質のコンセンサス定義の論文を一部紹介します。
Muscaritoli M, et al: Consensus definition of sarcopenia, cachexia and pre-cachexia: Joint document elaborated by Special Interest Groups (SIG) “cachexia-anorexia in chronic wasting diseases” and “nutrition in geriatrics”. Clinical Nutrition (2010), doi:10.1016/j.clnu.2009.12.004
筋萎縮の原因として、サルコペニアや悪液質をあげていますが、サルコペニアと前悪液質の診断基準(pre-cachexia)の診断基準が記載されています。特に悪液質を2段階に分類しているのが特徴的です。
サルコペニア:筋肉量が若年の2SD以下かつ歩行速度が遅い(例:4m歩行テストで0.8m/s以下)
前悪液質:以下の4つをすべて満たす。
・悪液質の原因となる慢性疾患の存在(AIDS、癌、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、COPD、肝不全など)
・6ヶ月以内に5%以上の体重減少
・慢性・再発性の全身炎症反応(CRP陽性)
・食思不振もしくは食思不振に関連した症状
悪液質には、いわゆる癌のターミナルのような重症悪液質から、上記の診断基準をかろうじて満たす早期の前悪液質の段階までいろんな時期があります。末期の重症悪液質では改善は困難ですので、早期に診断して早期に介入しようという流れです。
NSTでは今まで悪液質や前悪液質の診断基準がなかったため、栄養障害とは判断できても、個々の患者さんが悪液質を合併しているかどうかはあまり判断していないのが現状だと思います。
実際、栄養障害(飢餓:マラスムス型、クワシオルコル型、混合型)の患者で悪液質を認めるのは一部ですが、悪液質の患者で栄養障害を認めないことはありえません。
悪液質に対する決定的な治療方法は現時点ではありませんが、適切な栄養管理(飢餓の予防は当然ですが、体重1kgあたり蛋白質1.5gの高蛋白食が有効という報告があります)、廃用予防の運動、n3脂肪酸(EPA、例えばエパデールを1日上限6錠内服、EPAを含む栄養剤プロシュアを1日2本経口か経管)の併用が有効な可能性があります。特に早期の発見、治療でより有効かもしれません。
栄養障害、筋萎縮を認める患者さんに悪液質や前悪液質を合併しているかどうかを判断すること、合併している場合には飢餓だけでなく悪液質に対して介入することで、NSTの質が高くなると考えます。
英文サマリー
Chronic diseases as well as aging are frequently associated with deterioration of nutritional status, loss muscle mass and function (i.e. sarcopenia), impaired quality of life and increased risk for morbidity and mortality. Although simple and effective tools for the accurate screening, diagnosis and treatment of malnutrition have been developed during the recent years, its prevalence still remains disappointingly high and its impact on morbidity, mortality and quality of life clinically significant. Based on these premises, the Special Interest Group (SIG) on cachexia-anorexia in chronic wasting diseases was created within ESPEN with the aim of developing and spreading the knowledge on the basic and clinical aspects of cachexia and anorexia as well as of increasing the awareness of cachexia among health professionals and care givers. The definition, the assessment and the staging of cachexia, were identified as a priority by the SIG. This consensus paper reports the definition of cachexia, pre-cachexia and sarcopenia as well as the criteria for the differentiation between cachexia and other conditions associated with sarcopenia, which have been developed in cooperation with the ESPEN SIG on nutrition in geriatrics.
Muscaritoli M, et al: Consensus definition of sarcopenia, cachexia and pre-cachexia: Joint document elaborated by Special Interest Groups (SIG) “cachexia-anorexia in chronic wasting diseases” and “nutrition in geriatrics”. Clinical Nutrition (2010), doi:10.1016/j.clnu.2009.12.004
筋萎縮の原因として、サルコペニアや悪液質をあげていますが、サルコペニアと前悪液質の診断基準(pre-cachexia)の診断基準が記載されています。特に悪液質を2段階に分類しているのが特徴的です。
サルコペニア:筋肉量が若年の2SD以下かつ歩行速度が遅い(例:4m歩行テストで0.8m/s以下)
前悪液質:以下の4つをすべて満たす。
・悪液質の原因となる慢性疾患の存在(AIDS、癌、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、COPD、肝不全など)
・6ヶ月以内に5%以上の体重減少
・慢性・再発性の全身炎症反応(CRP陽性)
・食思不振もしくは食思不振に関連した症状
悪液質には、いわゆる癌のターミナルのような重症悪液質から、上記の診断基準をかろうじて満たす早期の前悪液質の段階までいろんな時期があります。末期の重症悪液質では改善は困難ですので、早期に診断して早期に介入しようという流れです。
NSTでは今まで悪液質や前悪液質の診断基準がなかったため、栄養障害とは判断できても、個々の患者さんが悪液質を合併しているかどうかはあまり判断していないのが現状だと思います。
実際、栄養障害(飢餓:マラスムス型、クワシオルコル型、混合型)の患者で悪液質を認めるのは一部ですが、悪液質の患者で栄養障害を認めないことはありえません。
悪液質に対する決定的な治療方法は現時点ではありませんが、適切な栄養管理(飢餓の予防は当然ですが、体重1kgあたり蛋白質1.5gの高蛋白食が有効という報告があります)、廃用予防の運動、n3脂肪酸(EPA、例えばエパデールを1日上限6錠内服、EPAを含む栄養剤プロシュアを1日2本経口か経管)の併用が有効な可能性があります。特に早期の発見、治療でより有効かもしれません。
栄養障害、筋萎縮を認める患者さんに悪液質や前悪液質を合併しているかどうかを判断すること、合併している場合には飢餓だけでなく悪液質に対して介入することで、NSTの質が高くなると考えます。
英文サマリー
Chronic diseases as well as aging are frequently associated with deterioration of nutritional status, loss muscle mass and function (i.e. sarcopenia), impaired quality of life and increased risk for morbidity and mortality. Although simple and effective tools for the accurate screening, diagnosis and treatment of malnutrition have been developed during the recent years, its prevalence still remains disappointingly high and its impact on morbidity, mortality and quality of life clinically significant. Based on these premises, the Special Interest Group (SIG) on cachexia-anorexia in chronic wasting diseases was created within ESPEN with the aim of developing and spreading the knowledge on the basic and clinical aspects of cachexia and anorexia as well as of increasing the awareness of cachexia among health professionals and care givers. The definition, the assessment and the staging of cachexia, were identified as a priority by the SIG. This consensus paper reports the definition of cachexia, pre-cachexia and sarcopenia as well as the criteria for the differentiation between cachexia and other conditions associated with sarcopenia, which have been developed in cooperation with the ESPEN SIG on nutrition in geriatrics.
2010年1月13日水曜日
自分らしいキャリアの作り方
今日は高橋俊介著、自分らしいキャリアの作り方、PHP新書を紹介します。
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-70901-7
キャリアを考えるときに有用なキーフレーズを、ワークライフ、能力開発、キャリア形成、ジョブデザイン、ネットワーク形成、組織の中での成長、組織の見極め方の7種類で計44つ紹介しています。特に私が納得したのは、以下のキーフレーズです。
「デメリットは事前に見えやすいが、メリットはあとからわかる」
面倒、大変などネガティブな面だけを先に考えて、学習と成長の貴重な機会を自ら放棄しないようにしたいものです。
経験からの学びの差にもっとも影響があるのは、主体的か受け身かというその人の仕事への態度だそうです。
「他人に教えることができてはじめて習得したといえる」
アウトプットできない知識や技能は意味が少ないと私は感じています。昔はもっぱら試験合格のためにインプット(丸暗記)することに力を注いでいましたが、今はアウトプットできるようにインプットすることに力を入れています。To teach is to learn twiceです。
「仕事には枠をつくるのではなくのりしろをつくる」
チーム医療としての超職種型も重要な考え方ですし、一人の医療人として職種の壁を超えることも、より多くの成果を出すうえで大切だと考えます。
「見えない化する社会だから見える化の努力が求められる」
医療人もPCの前で仕事する時間が増えつつありますので、隣の同職種や他職種の人たちがどんな仕事をしているのかがわかりにくくなっています。
学習したことを折にふれて文章化しておくことは、仕事にも学びにも有効だそうです。
また、おわりにで紹介されている、経験から学べない5つの悪い姿勢もかなり参考になりました。キャリアの持論・自論を作るには、経験から学ぶこと(経験学習モデルのサイクルを数多く回すこと)が重要ですので。
・仕事もキャリアも自分で仕掛けない、なんでも他人のせいにする「受け身タイプ」
・やみくもに走りつづけるばかりで反省をしない「精神論タイプ」
・検証をしない「やりっぱなしタイプ」
・学びのレベルが低い「歪んだ持論タイプ」
・うすうすわかってるのに変わろうとしない「頑固タイプ」
昔の自分はこれら5つすべてに当てはまっていた気がします。今でも当てはまるものがあります。これらに当てはまると、経験学習モデルのサイクルをまわせずに、考えるだけで行動しない、行動するけど考えないので当然、学習と成長に乏しいです。
具体的な記載も少なくありませんが、キーフレーズ自体は抽象的ですので、ぱーっと一読するよりも、自分のキャリアの経験を振り返りながら気になるキーフレーズを1つ1つ考えてみるほうが、より参考になる書籍です。
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-70901-7
キャリアを考えるときに有用なキーフレーズを、ワークライフ、能力開発、キャリア形成、ジョブデザイン、ネットワーク形成、組織の中での成長、組織の見極め方の7種類で計44つ紹介しています。特に私が納得したのは、以下のキーフレーズです。
「デメリットは事前に見えやすいが、メリットはあとからわかる」
面倒、大変などネガティブな面だけを先に考えて、学習と成長の貴重な機会を自ら放棄しないようにしたいものです。
経験からの学びの差にもっとも影響があるのは、主体的か受け身かというその人の仕事への態度だそうです。
「他人に教えることができてはじめて習得したといえる」
アウトプットできない知識や技能は意味が少ないと私は感じています。昔はもっぱら試験合格のためにインプット(丸暗記)することに力を注いでいましたが、今はアウトプットできるようにインプットすることに力を入れています。To teach is to learn twiceです。
「仕事には枠をつくるのではなくのりしろをつくる」
チーム医療としての超職種型も重要な考え方ですし、一人の医療人として職種の壁を超えることも、より多くの成果を出すうえで大切だと考えます。
「見えない化する社会だから見える化の努力が求められる」
医療人もPCの前で仕事する時間が増えつつありますので、隣の同職種や他職種の人たちがどんな仕事をしているのかがわかりにくくなっています。
学習したことを折にふれて文章化しておくことは、仕事にも学びにも有効だそうです。
また、おわりにで紹介されている、経験から学べない5つの悪い姿勢もかなり参考になりました。キャリアの持論・自論を作るには、経験から学ぶこと(経験学習モデルのサイクルを数多く回すこと)が重要ですので。
・仕事もキャリアも自分で仕掛けない、なんでも他人のせいにする「受け身タイプ」
・やみくもに走りつづけるばかりで反省をしない「精神論タイプ」
・検証をしない「やりっぱなしタイプ」
・学びのレベルが低い「歪んだ持論タイプ」
・うすうすわかってるのに変わろうとしない「頑固タイプ」
昔の自分はこれら5つすべてに当てはまっていた気がします。今でも当てはまるものがあります。これらに当てはまると、経験学習モデルのサイクルをまわせずに、考えるだけで行動しない、行動するけど考えないので当然、学習と成長に乏しいです。
具体的な記載も少なくありませんが、キーフレーズ自体は抽象的ですので、ぱーっと一読するよりも、自分のキャリアの経験を振り返りながら気になるキーフレーズを1つ1つ考えてみるほうが、より参考になる書籍です。
2010年1月12日火曜日
プロフェッショナル進化論
今日は田坂広志著「プロフェッショナル進化論-個人シンクタンクの時代が始まる」を紹介させていただきます。アマゾンでは中古商品を34円で購入できます。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AB%96-%E3%80%8C%E5%80%8B%E4%BA%BA%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%8C%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B-PHP%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E7%94%B0%E5%9D%82-%E5%BA%83%E5%BF%97/dp/4569690386
ちなみにシンクタンク(Think-tank)とは考える集団、知の集団の意味ですが、これからは集団ではなく個人でも、考えて知識、智恵を深めて発信できる時代だそうです。
個人のシンクタンク力として以下の7つをあげています。
・インテリジェンス力
・コミュニティ力
・フォーサイト力
・ビジョン力
・コンセプト力
・メッセージ力
・ムーブメント力
そして、これらのシンクタンク力を身につけることために必要な6つの戦略を詳しく紹介しています。
・コンセプト・ベースの戦略:インターネットを自分の「知的創造の場」にする
・パーソナル・メディアの戦略:良き影響力を持つ「自分だけのメディア」を育てる
・プロフェッショナル・フィールドの戦略:自分の「経験の智恵」を語れる専門分野を定める
・アドバイザリー・コミュニティの戦略:人々の智恵が集まる「コミュニティ」を創り出す
・ムーブメント・プロジェクトの戦略:人々の行動を集めて「ムーブメント」を創り出す
・パーソナリティ・メッセージの戦略:自分の「パーソナリティ」を発信する
確かにこれだけの戦略を実践すれば、一人ひとりがシンクタンクになることは可能だと思います。それでは自分が実践できているかというと…
・コンセプト・ベースの戦略:専門領域の文献検索や読み込みを多少はしていますが、とても十分とは言えない状況です。改善の余地大です…。
・パーソナル・メディアの戦略:先月ブログを始めました。
・プロフェッショナル・フィールドの戦略:リハ栄養を専門分野に定めました。
・アドバイザリー・コミュニティの戦略:先月mixiのリハ栄養のコミュニティを立ち上げました。
・ムーブメント・プロジェクトの戦略:今後コミュニティを学習と成長の場に育てることができるかどうかにかかっています。
・パーソナリティ・メッセージの戦略:音声や動画の活用はまだ全くできていませんので今後の課題ですが、当面先送りですね…。
今までこれらの戦略を行っていなかった人が6つの戦略を同時に開始することは正直、大変だと感じます。ただ、これらのうち1つか2つの戦略だけでも実践すると、シンクタンクにはなれなくても自分の学習と成長にはつながると考えますので推奨いたします。
個人的にはコンセプト・ベースの戦略とプロフェッショナル・フィールドの戦略から取り組むのがよいと感じていますが、できそうな戦略から取り組むのが一番ですね。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AB%96-%E3%80%8C%E5%80%8B%E4%BA%BA%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%8C%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8B-PHP%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E7%94%B0%E5%9D%82-%E5%BA%83%E5%BF%97/dp/4569690386
ちなみにシンクタンク(Think-tank)とは考える集団、知の集団の意味ですが、これからは集団ではなく個人でも、考えて知識、智恵を深めて発信できる時代だそうです。
個人のシンクタンク力として以下の7つをあげています。
・インテリジェンス力
・コミュニティ力
・フォーサイト力
・ビジョン力
・コンセプト力
・メッセージ力
・ムーブメント力
そして、これらのシンクタンク力を身につけることために必要な6つの戦略を詳しく紹介しています。
・コンセプト・ベースの戦略:インターネットを自分の「知的創造の場」にする
・パーソナル・メディアの戦略:良き影響力を持つ「自分だけのメディア」を育てる
・プロフェッショナル・フィールドの戦略:自分の「経験の智恵」を語れる専門分野を定める
・アドバイザリー・コミュニティの戦略:人々の智恵が集まる「コミュニティ」を創り出す
・ムーブメント・プロジェクトの戦略:人々の行動を集めて「ムーブメント」を創り出す
・パーソナリティ・メッセージの戦略:自分の「パーソナリティ」を発信する
確かにこれだけの戦略を実践すれば、一人ひとりがシンクタンクになることは可能だと思います。それでは自分が実践できているかというと…
・コンセプト・ベースの戦略:専門領域の文献検索や読み込みを多少はしていますが、とても十分とは言えない状況です。改善の余地大です…。
・パーソナル・メディアの戦略:先月ブログを始めました。
・プロフェッショナル・フィールドの戦略:リハ栄養を専門分野に定めました。
・アドバイザリー・コミュニティの戦略:先月mixiのリハ栄養のコミュニティを立ち上げました。
・ムーブメント・プロジェクトの戦略:今後コミュニティを学習と成長の場に育てることができるかどうかにかかっています。
・パーソナリティ・メッセージの戦略:音声や動画の活用はまだ全くできていませんので今後の課題ですが、当面先送りですね…。
今までこれらの戦略を行っていなかった人が6つの戦略を同時に開始することは正直、大変だと感じます。ただ、これらのうち1つか2つの戦略だけでも実践すると、シンクタンクにはなれなくても自分の学習と成長にはつながると考えますので推奨いたします。
個人的にはコンセプト・ベースの戦略とプロフェッショナル・フィールドの戦略から取り組むのがよいと感じていますが、できそうな戦略から取り組むのが一番ですね。
2010年1月7日木曜日
回復期脳卒中患者への強化栄養療法論文
低栄養状態の回復期脳卒中患者への強化栄養療法の有効性を示した論文のサマリー(Evidence Based Nursing 2009 12: 85に掲載されたもの。原著論文はNeurology)を紹介します。下記のHPで表やコメントも見れます。
http://ebn.bmj.com/content/12/3/85.full.pdf
一部訳:目的:低栄養状態の回復期リハ脳卒中患者への強化栄養療法は有効か。
方法:ランダム化比較試験。対象は初回脳卒中で、脳卒中後2週間以内に2.5%以上の体重減少を認めた患者。
介入群は120mlで240kcal、蛋白11gの栄養剤、対照群は120mlで127kcal、蛋白5gの栄養剤をそれぞれ8時間おきに飲む。病院の食事とマルチビタミンは両群とも同じ。FIM(ADLの評価法)の数値の変化で効果判定。追跡率88%、ITT解析。
ただし、抄録には記載されていませんが、両群の平均体重は65-66kg、体重減少率は約10%、%理想体重は102%、アルブミンは3.6-3.7、トランスサイレチンは19-21、トランスフェリンは190-210と、体重減少以外は低栄養状態とは言いにくい。
結果:介入群はFIM総得点、運動得点が対照群より有意に改善。FIM認知得点は有意差なし。2分間歩行距離、6分間歩行距離も介入群で有意に改善。自宅退院割合も介入群で高い。
ただし、抄録には記載されていませんが、体重、%理想体重、アルブミン、トランスサイレチン、トランスフェリンの変化と入院期間は両群で有意差なし。
結論:低栄養状態の回復期リハ脳卒中患者への強化栄養療法は、通常の栄養療法よりADLを有意に改善させる。
研究資金提供:ブルケ医学研究財団とノバルティス(現在ネスレ)
私の論文解釈:強化栄養療法は栄養状態は改善させないが、ADLは改善させるという結果は個人的にすっきりしない。栄養療法の違いがADLの改善に影響を与えたのかどうかは疑わしい。介入群のほうがADLが改善しやすい患者が偶然多かった可能性がある。
私の考え:質の高いランダム化比較試験をこの領域で行ったことは素晴らしい。脳卒中回復期リハ患者にルーチンで栄養療法を行う必要はないが、低栄養状態の患者には強化栄養療法も含めて行うほうがリハの効果が高まる可能性がある。
Intensive nutritional supplementation improved functional outcome after stroke
QUESTION
Does an intensive nutritional supplement improve functional outcome in undernourished patients in a stroke rehabilitation
unit?
METHODS
Design: randomised controlled trial.
Allocation: concealed.
Blinding: blinded (patients, healthcare providers, therapists, data collectors, and outcome assessors).
Follow-up period: to discharge (mean 26 d).
Setting: stroke rehabilitation unit in New York, USA.
Patients: 116 patients (mean age 74 y, 59% men) who had had a first stroke ,4 weeks before admission to the unit, had >2.5% weight loss within 2 weeks after the stroke, were medically stable, and were able to ingest food orally.
Exclusion criteria were dementia, alcohol abuse, renal or liver disease, malabsorption, and terminal illness.
Intervention: intensive nutritional supplement (240 calories, 11 g of protein) (n=58) or standard nutritional supplement (127 calories, 5 g of protein) (n=58), 120 ml every 8 hours until discharge, plus usual hospital diet and multivitamins.
Outcomes: change in Functional Independence Measure (FIM) total score, FIM motor and cognitive subscores, and 2-minute and 6-minute walk tests; length of stay in unit; and discharge to home.
Patient follow-up: 88% (intention-to-treat analysis).
MAIN RESULTS
Patients in the intensive supplement group had greater improvements in total FIM score, motor FIM subscore, and 2-minute and 6-minute walk tests (table). Groups did not differ for change in cognitive FIM subscore (table), weight gain, or length of stay. More patients in the intensive supplement group were discharged home (63% v 43%,
p,0.05).
CONCLUSION
An intensive nutritional supplement improved functional outcome more than a standard supplement in undernourished patients in a stroke rehabilitation unit.
ABSTRACTED FROM
Rabadi MH, Coar PL, Lukin M, et al. Intensive nutritional supplements can improve outcomes in stroke rehabilitation. Neurology 2008;71:1856–61.
Sources of funding: Burke Medical Research Foundation and Novartis.
http://ebn.bmj.com/content/12/3/85.full.pdf
一部訳:目的:低栄養状態の回復期リハ脳卒中患者への強化栄養療法は有効か。
方法:ランダム化比較試験。対象は初回脳卒中で、脳卒中後2週間以内に2.5%以上の体重減少を認めた患者。
介入群は120mlで240kcal、蛋白11gの栄養剤、対照群は120mlで127kcal、蛋白5gの栄養剤をそれぞれ8時間おきに飲む。病院の食事とマルチビタミンは両群とも同じ。FIM(ADLの評価法)の数値の変化で効果判定。追跡率88%、ITT解析。
ただし、抄録には記載されていませんが、両群の平均体重は65-66kg、体重減少率は約10%、%理想体重は102%、アルブミンは3.6-3.7、トランスサイレチンは19-21、トランスフェリンは190-210と、体重減少以外は低栄養状態とは言いにくい。
結果:介入群はFIM総得点、運動得点が対照群より有意に改善。FIM認知得点は有意差なし。2分間歩行距離、6分間歩行距離も介入群で有意に改善。自宅退院割合も介入群で高い。
ただし、抄録には記載されていませんが、体重、%理想体重、アルブミン、トランスサイレチン、トランスフェリンの変化と入院期間は両群で有意差なし。
結論:低栄養状態の回復期リハ脳卒中患者への強化栄養療法は、通常の栄養療法よりADLを有意に改善させる。
研究資金提供:ブルケ医学研究財団とノバルティス(現在ネスレ)
私の論文解釈:強化栄養療法は栄養状態は改善させないが、ADLは改善させるという結果は個人的にすっきりしない。栄養療法の違いがADLの改善に影響を与えたのかどうかは疑わしい。介入群のほうがADLが改善しやすい患者が偶然多かった可能性がある。
私の考え:質の高いランダム化比較試験をこの領域で行ったことは素晴らしい。脳卒中回復期リハ患者にルーチンで栄養療法を行う必要はないが、低栄養状態の患者には強化栄養療法も含めて行うほうがリハの効果が高まる可能性がある。
Intensive nutritional supplementation improved functional outcome after stroke
QUESTION
Does an intensive nutritional supplement improve functional outcome in undernourished patients in a stroke rehabilitation
unit?
METHODS
Design: randomised controlled trial.
Allocation: concealed.
Blinding: blinded (patients, healthcare providers, therapists, data collectors, and outcome assessors).
Follow-up period: to discharge (mean 26 d).
Setting: stroke rehabilitation unit in New York, USA.
Patients: 116 patients (mean age 74 y, 59% men) who had had a first stroke ,4 weeks before admission to the unit, had >2.5% weight loss within 2 weeks after the stroke, were medically stable, and were able to ingest food orally.
Exclusion criteria were dementia, alcohol abuse, renal or liver disease, malabsorption, and terminal illness.
Intervention: intensive nutritional supplement (240 calories, 11 g of protein) (n=58) or standard nutritional supplement (127 calories, 5 g of protein) (n=58), 120 ml every 8 hours until discharge, plus usual hospital diet and multivitamins.
Outcomes: change in Functional Independence Measure (FIM) total score, FIM motor and cognitive subscores, and 2-minute and 6-minute walk tests; length of stay in unit; and discharge to home.
Patient follow-up: 88% (intention-to-treat analysis).
MAIN RESULTS
Patients in the intensive supplement group had greater improvements in total FIM score, motor FIM subscore, and 2-minute and 6-minute walk tests (table). Groups did not differ for change in cognitive FIM subscore (table), weight gain, or length of stay. More patients in the intensive supplement group were discharged home (63% v 43%,
p,0.05).
CONCLUSION
An intensive nutritional supplement improved functional outcome more than a standard supplement in undernourished patients in a stroke rehabilitation unit.
ABSTRACTED FROM
Rabadi MH, Coar PL, Lukin M, et al. Intensive nutritional supplements can improve outcomes in stroke rehabilitation. Neurology 2008;71:1856–61.
Sources of funding: Burke Medical Research Foundation and Novartis.
2010年1月6日水曜日
RTPとリハ栄養
RTPとはRapid Turnover Proteinの略で、肝臓で合成される蛋白質のうち、半減期が短いものを言います。具体的には、トランスサイレチン(プレアルブミン、PA)、トランスフェリン(Tf)、レチノール結合蛋白(RBP)の3種類です。
栄養評価や栄養指標には、身体計測と検査値があります。私は検査値より身体計測(体重、BMI、体重減少率、上腕周囲長、下腿周囲長)のほうがリハ栄養では大切だと考えていますが、検査値も必要ですし有用です。
検査値では血中アルブミン(ALB)が栄養指標としてもっともよく使用されています。アルブミンの有用性は否定しませんし私も活用していますが、半減期が20日間と長いのです。
そのため、積極的な訓練(筋力や持久力の増強訓練など)の指標として使用する場合には、現在のアルブミンだけでなく、過去のアルブミンと比較して改善傾向か横ばいか悪化傾向かも見なければいけません。
私は目安としてアルブミンが3g/dl以上であれば積極的な訓練が可能、3g/dl以下であれば維持的な訓練の適応と考えています。ただし、3.5g/dlであっても急速に悪化している場合には維持的な訓練の適応ですし、2.5g/dl以下であっても改善傾向にある場合には積極的な訓練で筋力、ADLが改善することは少なくありません。
一方、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白はそれぞれ半減期が2日、7日、0.5日と短いです。特にトランスサイレチンとレチノール結合蛋白に関しては、過去の数値と比較しなくても現在の検査値だけで蛋白合成の目安となります。
ここからは、トランスサイレチンの数値のみ検討します。個人的には、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白のうち、1つだけ測定するのであればトランスサイレチンが使い勝手がよいと感じています。
大阪府栄養士会のHPによると、
高度低栄養5.0 mg/dl以下
中等度低栄養6~10 mg/dl
軽度低栄養11~15 mg/dl
正常16~40 mg/dl
と紹介されています。
http://www.osaka-eiyoushikai.or.jp/topics/yougo.html
また、ニットーボーメディカル
http://nittobo-nmd.co.jp/
の担当者に相談したところ、以下の2つの指標を教えてくれました。
褥瘡の予防と管理のガイドライン(米国・創傷・オストミー・失禁専門ナース協会)
高リスク:7以下
中リスク:7-12
低リスク:12-15
Nursing2005.35.5.70-71
5以下:Severe risk
5-10.9:Significant risk
11-15 :High risk
15-35 :Within normal limits
これら3つの指標をまとめると、
15mg/dl以下:軽度栄養障害
11mg/dl以下:中等度栄養障害
5mg/dl以下:重度栄養障害
といえると思います。
つまり、トランスサイレチンが11mg/dl以下であれば、侵襲下であっても飢餓であっても、肝臓の蛋白合成能がかなり不十分であり、レジスタンストレーニングによる筋蛋白合成も期待しにくいので、維持的なリハの適応という仮説ができます。あくまで仮説ですので、使用の際には十分留意してください。
一方、16mg/dlと正常であれば安心してレジスタンストレーニングを含めた積極的なリハの適応といえます。また、5mg/dl以下と重度栄養障害であればほぼ確実に維持的なリハの適応でしょう。
これをもう1つのRTP(Resistance Training Prohibition、筋トレ禁止)と名付けます。RTP(Rapid Turnover Protein)でRTP(筋トレ禁止)を判断するというシャレです。
もちろんトランスサイレチンだけで訓練内容を決めることはできませんし、身体計測のほうがより重要なことは改めて強調しますが、リハや訓練内容の指標の1つにすることはできると思います。
PT・OT・STと話をすると、こういった簡単で明確な指標を望んでいます。現時点では仮説ですが、今後このような仮説を検証する臨床研究が求められていると考えます。
栄養評価や栄養指標には、身体計測と検査値があります。私は検査値より身体計測(体重、BMI、体重減少率、上腕周囲長、下腿周囲長)のほうがリハ栄養では大切だと考えていますが、検査値も必要ですし有用です。
検査値では血中アルブミン(ALB)が栄養指標としてもっともよく使用されています。アルブミンの有用性は否定しませんし私も活用していますが、半減期が20日間と長いのです。
そのため、積極的な訓練(筋力や持久力の増強訓練など)の指標として使用する場合には、現在のアルブミンだけでなく、過去のアルブミンと比較して改善傾向か横ばいか悪化傾向かも見なければいけません。
私は目安としてアルブミンが3g/dl以上であれば積極的な訓練が可能、3g/dl以下であれば維持的な訓練の適応と考えています。ただし、3.5g/dlであっても急速に悪化している場合には維持的な訓練の適応ですし、2.5g/dl以下であっても改善傾向にある場合には積極的な訓練で筋力、ADLが改善することは少なくありません。
一方、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白はそれぞれ半減期が2日、7日、0.5日と短いです。特にトランスサイレチンとレチノール結合蛋白に関しては、過去の数値と比較しなくても現在の検査値だけで蛋白合成の目安となります。
ここからは、トランスサイレチンの数値のみ検討します。個人的には、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白のうち、1つだけ測定するのであればトランスサイレチンが使い勝手がよいと感じています。
大阪府栄養士会のHPによると、
高度低栄養5.0 mg/dl以下
中等度低栄養6~10 mg/dl
軽度低栄養11~15 mg/dl
正常16~40 mg/dl
と紹介されています。
http://www.osaka-eiyoushikai.or.jp/topics/yougo.html
また、ニットーボーメディカル
http://nittobo-nmd.co.jp/
の担当者に相談したところ、以下の2つの指標を教えてくれました。
褥瘡の予防と管理のガイドライン(米国・創傷・オストミー・失禁専門ナース協会)
高リスク:7以下
中リスク:7-12
低リスク:12-15
Nursing2005.35.5.70-71
5以下:Severe risk
5-10.9:Significant risk
11-15 :High risk
15-35 :Within normal limits
これら3つの指標をまとめると、
15mg/dl以下:軽度栄養障害
11mg/dl以下:中等度栄養障害
5mg/dl以下:重度栄養障害
といえると思います。
つまり、トランスサイレチンが11mg/dl以下であれば、侵襲下であっても飢餓であっても、肝臓の蛋白合成能がかなり不十分であり、レジスタンストレーニングによる筋蛋白合成も期待しにくいので、維持的なリハの適応という仮説ができます。あくまで仮説ですので、使用の際には十分留意してください。
一方、16mg/dlと正常であれば安心してレジスタンストレーニングを含めた積極的なリハの適応といえます。また、5mg/dl以下と重度栄養障害であればほぼ確実に維持的なリハの適応でしょう。
これをもう1つのRTP(Resistance Training Prohibition、筋トレ禁止)と名付けます。RTP(Rapid Turnover Protein)でRTP(筋トレ禁止)を判断するというシャレです。
もちろんトランスサイレチンだけで訓練内容を決めることはできませんし、身体計測のほうがより重要なことは改めて強調しますが、リハや訓練内容の指標の1つにすることはできると思います。
PT・OT・STと話をすると、こういった簡単で明確な指標を望んでいます。現時点では仮説ですが、今後このような仮説を検証する臨床研究が求められていると考えます。
2010年1月5日火曜日
肥満とリハ栄養
肥満が単独で存在してその他の合併症や障害が存在しない場合には、通常リハの対象にはなりません。ただ、実際には脳卒中、脊髄損傷、変形性関節症、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患などに肥満を合併していることが少なくありません。この場合には、リハ栄養の対象となります。
肥満の場合、通常はBMI25以下に改善することが望ましいですし、現体重から5%以上の減量を目標とすることが多いです。肥満では生活習慣病の合併、骨関節疾患の合併、耐久性低下など様々な問題が生じ、肥満の程度が重いほど生命予後も不良です。
しかし、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患の場合にはObesity Paradoxといって、太っている患者ほど生命予後がよいという報告があります。そのため、これらの疾患の場合には、安易に減量しないほうがよい可能性があります。
次に、Obesity Paradoxの疾患を合併している肥満の場合を除いて、肥満を合併している障害者への減量を目標としたリハ栄養について紹介します。
運動療法には、有酸素運動(歩行など)とレジスタンストレーニング(筋トレ)が含まれます。エビデンスとしてはUpToDate(※)を見ると、有酸素運動の有効性のみ記載されていて、レジスタンストレーニングは全く記載されていませんでした。少し驚きました。
※UpToDateとは、臨床の現場で生じる疑問に回答を得るための二次データベースです(有料)。最近までの原著論文を批判的吟味の上でまとめてわかりやすく記載されていますので、EBCPの実践に有用です。
糖尿病の運動療法には、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方が記載されていてどちらも同じように有効となっているのですが、肥満に対するレジスタンストレーニングのエビデンスは不十分なようです。
ただし、レジスタンストレーニングで筋肉を増やすことで基礎代謝を改善することは、肥満の治療にも有効だと思われますので、有酸素運動とレジスタンストレーニング両方を行うことが望ましいと考えます。
栄養に関しては、エネルギー摂取量<エネルギー消費量とすることが基本です。どの程度の摂取量にするか、3大栄養素のバランスをどうするかに関してはいくつかの方法があります。
計算上は7000Kcalのマイナスバランスで体重が1kg減少することになっています。
ですので、1日エネルギー摂取量を1日エネルギー消費量より200Kcal少なくすれば35日で1kg、300Kcal少なくすれば23日で1kg、400Kcal少なくすれば17.5日で1kg、500Kcal少なくすれば14日で1kg、体重が減少します。
私の基礎エネルギー消費量はHarris-Benedict式で計算すると約1500Kcalです。活動係数を1.5とすると、1日エネルギー消費量は2250Kcalになります。これを3で割ると750Kcalになります。
つまり、1食あたり平均750Kcalのエネルギー摂取量であれば体重を維持できるということになります。そのため、私は750Kcalを1食の目安としています。
もし1食あたり平均650Kcal(1日で1950Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が減ります。一方、1食あたり平均850Kcal(1日で2550Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が増えます。
一方、肥満の治療として、1日エネルギー摂取量200~800Kcal以下の食事療法もあります。確かに体重は減少しますが、これでは脂肪だけでなく筋肉量も減少しますし、積極的な運動療法やリハの併用が困難です。
そのためリハ栄養では、1日エネルギー摂取量の下限は、1日エネルギー消費量-500Kcalまでで、基礎エネルギー消費量を下回らない程度と考えています。そうすれば、栄養療法と運動療法の併用が可能で、筋肉量の維持、改善も期待できます。
脳卒中などに肥満を合併しているためにADLやQOLのゴールが低くなっている場合があります。その場合には、減量を考慮したリハ栄養、訓練プログラムが重要です。
肥満の場合、通常はBMI25以下に改善することが望ましいですし、現体重から5%以上の減量を目標とすることが多いです。肥満では生活習慣病の合併、骨関節疾患の合併、耐久性低下など様々な問題が生じ、肥満の程度が重いほど生命予後も不良です。
しかし、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患の場合にはObesity Paradoxといって、太っている患者ほど生命予後がよいという報告があります。そのため、これらの疾患の場合には、安易に減量しないほうがよい可能性があります。
次に、Obesity Paradoxの疾患を合併している肥満の場合を除いて、肥満を合併している障害者への減量を目標としたリハ栄養について紹介します。
運動療法には、有酸素運動(歩行など)とレジスタンストレーニング(筋トレ)が含まれます。エビデンスとしてはUpToDate(※)を見ると、有酸素運動の有効性のみ記載されていて、レジスタンストレーニングは全く記載されていませんでした。少し驚きました。
※UpToDateとは、臨床の現場で生じる疑問に回答を得るための二次データベースです(有料)。最近までの原著論文を批判的吟味の上でまとめてわかりやすく記載されていますので、EBCPの実践に有用です。
糖尿病の運動療法には、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方が記載されていてどちらも同じように有効となっているのですが、肥満に対するレジスタンストレーニングのエビデンスは不十分なようです。
ただし、レジスタンストレーニングで筋肉を増やすことで基礎代謝を改善することは、肥満の治療にも有効だと思われますので、有酸素運動とレジスタンストレーニング両方を行うことが望ましいと考えます。
栄養に関しては、エネルギー摂取量<エネルギー消費量とすることが基本です。どの程度の摂取量にするか、3大栄養素のバランスをどうするかに関してはいくつかの方法があります。
計算上は7000Kcalのマイナスバランスで体重が1kg減少することになっています。
ですので、1日エネルギー摂取量を1日エネルギー消費量より200Kcal少なくすれば35日で1kg、300Kcal少なくすれば23日で1kg、400Kcal少なくすれば17.5日で1kg、500Kcal少なくすれば14日で1kg、体重が減少します。
私の基礎エネルギー消費量はHarris-Benedict式で計算すると約1500Kcalです。活動係数を1.5とすると、1日エネルギー消費量は2250Kcalになります。これを3で割ると750Kcalになります。
つまり、1食あたり平均750Kcalのエネルギー摂取量であれば体重を維持できるということになります。そのため、私は750Kcalを1食の目安としています。
もし1食あたり平均650Kcal(1日で1950Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が減ります。一方、1食あたり平均850Kcal(1日で2550Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が増えます。
一方、肥満の治療として、1日エネルギー摂取量200~800Kcal以下の食事療法もあります。確かに体重は減少しますが、これでは脂肪だけでなく筋肉量も減少しますし、積極的な運動療法やリハの併用が困難です。
そのためリハ栄養では、1日エネルギー摂取量の下限は、1日エネルギー消費量-500Kcalまでで、基礎エネルギー消費量を下回らない程度と考えています。そうすれば、栄養療法と運動療法の併用が可能で、筋肉量の維持、改善も期待できます。
脳卒中などに肥満を合併しているためにADLやQOLのゴールが低くなっている場合があります。その場合には、減量を考慮したリハ栄養、訓練プログラムが重要です。
2010年1月4日月曜日
臨床研究とリサーチ・クエスチョン
リハ栄養を学問として発展させていくには、臨床研究の実施が極めて重要です。仮説としてリハ栄養が重要であることは間違いないと考えていますが、この仮説を検証しなければあくまで仮説のままで、真実かどうかは不明です。
臨床研究は以下の7つのステップに分類されます。この順番を1つずつ踏んでいくことで、より質の高い臨床研究になります。
ありがちな研究として、カルテなどで最初にデータを集めてから何か言えないかあれこれ考えるという流れがあります。しかし、データを集める前までに、よい研究かどうかの9割が決まります。
ステップ①:リサーチクエスチョン(RQ)の作成
臨床などで感じた疑問をPECOの形にする。
ステップ②:情報の検索
情報源(PubMed、Google Scholar)から論文を十分に検索する。
ステップ③:RQの再吟味と概念モデルの作成
検索結果を考慮してPECOを十分に再吟味する。概念モデルで仮説形成か検証かを判断する。
ステップ④:臨床研究デザインの選択
リサーチクエスチョンの解決に最適な研究デザインを選択する。
ステップ⑤:研究プロトコール・アウトライン作成
概念(PECO)の変数化、サンプリング、データ収集方法、解析計画、倫理的配慮等を検討する。
ステップ⑥:研究の実施(データ収集、分析)
ステップ⑦:研究の発表(学会発表、論文執筆)
この中でもっとも重要なのはリサーチクエスチョン(RQ)の作成、吟味ですので、RQについて記載します。RQはPECOで表現します。PECOとは、
Patient(対象、患者)
Exposure(曝露、要因)
Comparison(比較、対照)
Outcome(アウトカム)
の頭文字をとったもので、PICO(Intervention、介入)とも言います。
なぜRQをPECOの形に構造化するか、しなければいけないかの理由として、
・自分の漠然としたクリニカル・クエスチョン(CQ)が明確なRQになる。
・臨床研究に必須の4項目(研究の大黒柱)を含んでいる。
・PECOがダメなら、ランダム化比較試験であってもダメな研究にしかならない。
が挙げられます。漠然としたのままではRQになりません。ちなみに症例報告、症例集積、質的研究はPECOに形にすることは難しいです。
私が昔作成したPECOの一例を紹介します。どんな臨床研究であるかが伝わると感じませんか。ただ、諸々の理由で研究には至りませんでした…。
Patient(対象、患者):誤嚥性肺炎の入院患者に、
Exposure(曝露、要因):嚥下リハとNSTによる栄養ケアマネジメントを行うと、
Comparison(比較、対照):嚥下リハと主治医の栄養管理と比較して、
Outcome(アウトカム):退院時の経口摂取が改善するか。
次によいPECOかどうかは、“FINER”の視点で考えます(Hulley、医学的研究のデザイン:研究の質を高める疫学的アプローチ- 第3版、2009)。
Feasible:実現可能性。例えば自分の病院でできること。
Interesting:興味深い。周りの人に聞いてみるとよい。
Novel:新規性がある。過去の文献チェック。
Ethical:倫理的配慮。説明と同意、匿名化、倫理審査委員会。
Relevant:重要性。聞く人・読む人に役立つか。患者と社会に役立つか。
これらで繰り返し練ってすべてを満たすものがいいRQです。上記のPECOではFeasibleが最も大きな問題でした。
臨床研究を行うことは、学習と成長の貴重な機会にもなります。FDの問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力のすべてを磨くことができます。
まずは自分が質の高いリハ栄養の臨床研究を行わなければいけません(英語の原著論文を1本も執筆していませんし…)が、多くの方に臨床研究に挑戦してほしいと思います。
臨床研究は以下の7つのステップに分類されます。この順番を1つずつ踏んでいくことで、より質の高い臨床研究になります。
ありがちな研究として、カルテなどで最初にデータを集めてから何か言えないかあれこれ考えるという流れがあります。しかし、データを集める前までに、よい研究かどうかの9割が決まります。
ステップ①:リサーチクエスチョン(RQ)の作成
臨床などで感じた疑問をPECOの形にする。
ステップ②:情報の検索
情報源(PubMed、Google Scholar)から論文を十分に検索する。
ステップ③:RQの再吟味と概念モデルの作成
検索結果を考慮してPECOを十分に再吟味する。概念モデルで仮説形成か検証かを判断する。
ステップ④:臨床研究デザインの選択
リサーチクエスチョンの解決に最適な研究デザインを選択する。
ステップ⑤:研究プロトコール・アウトライン作成
概念(PECO)の変数化、サンプリング、データ収集方法、解析計画、倫理的配慮等を検討する。
ステップ⑥:研究の実施(データ収集、分析)
ステップ⑦:研究の発表(学会発表、論文執筆)
この中でもっとも重要なのはリサーチクエスチョン(RQ)の作成、吟味ですので、RQについて記載します。RQはPECOで表現します。PECOとは、
Patient(対象、患者)
Exposure(曝露、要因)
Comparison(比較、対照)
Outcome(アウトカム)
の頭文字をとったもので、PICO(Intervention、介入)とも言います。
なぜRQをPECOの形に構造化するか、しなければいけないかの理由として、
・自分の漠然としたクリニカル・クエスチョン(CQ)が明確なRQになる。
・臨床研究に必須の4項目(研究の大黒柱)を含んでいる。
・PECOがダメなら、ランダム化比較試験であってもダメな研究にしかならない。
が挙げられます。漠然としたのままではRQになりません。ちなみに症例報告、症例集積、質的研究はPECOに形にすることは難しいです。
私が昔作成したPECOの一例を紹介します。どんな臨床研究であるかが伝わると感じませんか。ただ、諸々の理由で研究には至りませんでした…。
Patient(対象、患者):誤嚥性肺炎の入院患者に、
Exposure(曝露、要因):嚥下リハとNSTによる栄養ケアマネジメントを行うと、
Comparison(比較、対照):嚥下リハと主治医の栄養管理と比較して、
Outcome(アウトカム):退院時の経口摂取が改善するか。
次によいPECOかどうかは、“FINER”の視点で考えます(Hulley、医学的研究のデザイン:研究の質を高める疫学的アプローチ- 第3版、2009)。
Feasible:実現可能性。例えば自分の病院でできること。
Interesting:興味深い。周りの人に聞いてみるとよい。
Novel:新規性がある。過去の文献チェック。
Ethical:倫理的配慮。説明と同意、匿名化、倫理審査委員会。
Relevant:重要性。聞く人・読む人に役立つか。患者と社会に役立つか。
これらで繰り返し練ってすべてを満たすものがいいRQです。上記のPECOではFeasibleが最も大きな問題でした。
臨床研究を行うことは、学習と成長の貴重な機会にもなります。FDの問題発見・解決能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力、生涯学習能力のすべてを磨くことができます。
まずは自分が質の高いリハ栄養の臨床研究を行わなければいけません(英語の原著論文を1本も執筆していませんし…)が、多くの方に臨床研究に挑戦してほしいと思います。
2010年1月2日土曜日
プロフェッショナルの条件
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
年始ということで私のバイブルであるドラッカーのプロフェッショナルの条件を紹介させていただきます。
http://book.diamond.co.jp/_itemcontents/0201_biz/30059-3.html
私がドラッカーの本を読むようになって10年くらいになりますが、今でも一番おすすめできる本です。私たちがいかに成果をあげ貢献し自己実現できるかについて易しくはないのですがしっかり記載されています。
プロフェッショナルの条件にはいろいろありますが、自分独自の成果をだし、自分独自の貢献をして、自分独自の自己実現をできていれば、プロフェッショナルと言えると考えます。単に国家資格をもっていること、一人前であること、その仕事で生活するだけの給料を稼いでいることがプロフェッショナルとは思えません。
この本の1章と2章で、今の世の中が知識社会兼組織社会であることと、医療人は知識労働者でありかつチーム・組織で働く組織人・組織労働者であることを、私は学びました。現在がどんな社会で自分がどんな労働者であるかを理解しなければ、十分な成果を出すことは困難です。
3章ではドラッカーの人生を変えた7つの経験が紹介されています。
目標とビジョンをもって行動する。
神々がみていると考え、完全を目指す。
一つのことに集中する。
定期的に検証と反省を行う。
新しい仕事が要求するものを考える。
書き留めておく(フィードバック)。
何によって憶えられたいかを問う。
特に「何によって憶えられたいか」という質問に対して、答えをもつことが大切です。私は今はリハ栄養を広めた人ということで憶えられたいですが、以前は違う答えをもっていました。自分なりの答えをもつと、必ず生き方が変わってきます。皆さんは何によって憶えられたいですか。正月は自問自答するいい機会です。
成果をあげる習慣についても紹介されています。ここは主に「経営者の条件」からの引用です。
時間管理(時間を記録、整理、まとめる)
外の世界への貢献に焦点を合わせる。
強みを基盤にする。
もっとも重要な事に集中する。
成果をあげるよう意思決定を行う。
この5点を意識して生活するだけで、自分独自の成果が何かさえ認識していれば、より多くの成果をだすことができるはずです。
今の自分は、3年前や5年前にどんな生活、どんな努力、学習、成長をしていたかで決まると私は考えています。別の言い方をすると、3年後や5年後の自分の生活や生き方をしているかは、今現在のどんな学習と成長をしているかで決まります。
プロフェッショナルの条件を読みなおすたびに、いい加減な生き方をしてはいけないなと痛感します。実際にはいい加減に生きている部分が少なからずあります。それでも、常に前年よりは今年のほうが充実している、昔はよかった、あの頃に戻りたいと思うことが決してない、今が一番だといえる生き方をしたいです。
まだプロフェッショナルの条件を読んだことがないという方はぜひ読んでください。すでに読んだという方はぜひ読み直してください。読み直す程新しい発見があってさらに学習できます。
年始ということで私のバイブルであるドラッカーのプロフェッショナルの条件を紹介させていただきます。
http://book.diamond.co.jp/_itemcontents/0201_biz/30059-3.html
私がドラッカーの本を読むようになって10年くらいになりますが、今でも一番おすすめできる本です。私たちがいかに成果をあげ貢献し自己実現できるかについて易しくはないのですがしっかり記載されています。
プロフェッショナルの条件にはいろいろありますが、自分独自の成果をだし、自分独自の貢献をして、自分独自の自己実現をできていれば、プロフェッショナルと言えると考えます。単に国家資格をもっていること、一人前であること、その仕事で生活するだけの給料を稼いでいることがプロフェッショナルとは思えません。
この本の1章と2章で、今の世の中が知識社会兼組織社会であることと、医療人は知識労働者でありかつチーム・組織で働く組織人・組織労働者であることを、私は学びました。現在がどんな社会で自分がどんな労働者であるかを理解しなければ、十分な成果を出すことは困難です。
3章ではドラッカーの人生を変えた7つの経験が紹介されています。
目標とビジョンをもって行動する。
神々がみていると考え、完全を目指す。
一つのことに集中する。
定期的に検証と反省を行う。
新しい仕事が要求するものを考える。
書き留めておく(フィードバック)。
何によって憶えられたいかを問う。
特に「何によって憶えられたいか」という質問に対して、答えをもつことが大切です。私は今はリハ栄養を広めた人ということで憶えられたいですが、以前は違う答えをもっていました。自分なりの答えをもつと、必ず生き方が変わってきます。皆さんは何によって憶えられたいですか。正月は自問自答するいい機会です。
成果をあげる習慣についても紹介されています。ここは主に「経営者の条件」からの引用です。
時間管理(時間を記録、整理、まとめる)
外の世界への貢献に焦点を合わせる。
強みを基盤にする。
もっとも重要な事に集中する。
成果をあげるよう意思決定を行う。
この5点を意識して生活するだけで、自分独自の成果が何かさえ認識していれば、より多くの成果をだすことができるはずです。
今の自分は、3年前や5年前にどんな生活、どんな努力、学習、成長をしていたかで決まると私は考えています。別の言い方をすると、3年後や5年後の自分の生活や生き方をしているかは、今現在のどんな学習と成長をしているかで決まります。
プロフェッショナルの条件を読みなおすたびに、いい加減な生き方をしてはいけないなと痛感します。実際にはいい加減に生きている部分が少なからずあります。それでも、常に前年よりは今年のほうが充実している、昔はよかった、あの頃に戻りたいと思うことが決してない、今が一番だといえる生き方をしたいです。
まだプロフェッショナルの条件を読んだことがないという方はぜひ読んでください。すでに読んだという方はぜひ読み直してください。読み直す程新しい発見があってさらに学習できます。
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