2010年1月6日水曜日

RTPとリハ栄養

RTPとはRapid Turnover Proteinの略で、肝臓で合成される蛋白質のうち、半減期が短いものを言います。具体的には、トランスサイレチン(プレアルブミン、PA)、トランスフェリン(Tf)、レチノール結合蛋白(RBP)の3種類です。

栄養評価や栄養指標には、身体計測と検査値があります。私は検査値より身体計測(体重、BMI、体重減少率、上腕周囲長、下腿周囲長)のほうがリハ栄養では大切だと考えていますが、検査値も必要ですし有用です。

検査値では血中アルブミン(ALB)が栄養指標としてもっともよく使用されています。アルブミンの有用性は否定しませんし私も活用していますが、半減期が20日間と長いのです。

そのため、積極的な訓練(筋力や持久力の増強訓練など)の指標として使用する場合には、現在のアルブミンだけでなく、過去のアルブミンと比較して改善傾向か横ばいか悪化傾向かも見なければいけません。

私は目安としてアルブミンが3g/dl以上であれば積極的な訓練が可能、3g/dl以下であれば維持的な訓練の適応と考えています。ただし、3.5g/dlであっても急速に悪化している場合には維持的な訓練の適応ですし、2.5g/dl以下であっても改善傾向にある場合には積極的な訓練で筋力、ADLが改善することは少なくありません。

一方、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白はそれぞれ半減期が2日、7日、0.5日と短いです。特にトランスサイレチンとレチノール結合蛋白に関しては、過去の数値と比較しなくても現在の検査値だけで蛋白合成の目安となります。

ここからは、トランスサイレチンの数値のみ検討します。個人的には、トランスサイレチン、トランスフェリン、レチノール結合蛋白のうち、1つだけ測定するのであればトランスサイレチンが使い勝手がよいと感じています。

大阪府栄養士会のHPによると、
高度低栄養5.0 mg/dl以下
中等度低栄養6~10 mg/dl
軽度低栄養11~15 mg/dl
正常16~40 mg/dl
と紹介されています。
http://www.osaka-eiyoushikai.or.jp/topics/yougo.html

また、ニットーボーメディカル
http://nittobo-nmd.co.jp/
の担当者に相談したところ、以下の2つの指標を教えてくれました。

褥瘡の予防と管理のガイドライン(米国・創傷・オストミー・失禁専門ナース協会)
高リスク:7以下
中リスク:7-12
低リスク:12-15

Nursing2005.35.5.70-71
5以下:Severe risk
5-10.9:Significant risk
11-15 :High risk
15-35 :Within normal limits

これら3つの指標をまとめると、
15mg/dl以下:軽度栄養障害
11mg/dl以下:中等度栄養障害
5mg/dl以下:重度栄養障害
といえると思います。

つまり、トランスサイレチンが11mg/dl以下であれば、侵襲下であっても飢餓であっても、肝臓の蛋白合成能がかなり不十分であり、レジスタンストレーニングによる筋蛋白合成も期待しにくいので、維持的なリハの適応という仮説ができます。あくまで仮説ですので、使用の際には十分留意してください。

一方、16mg/dlと正常であれば安心してレジスタンストレーニングを含めた積極的なリハの適応といえます。また、5mg/dl以下と重度栄養障害であればほぼ確実に維持的なリハの適応でしょう。

これをもう1つのRTP(Resistance Training Prohibition、筋トレ禁止)と名付けます。RTP(Rapid Turnover Protein)でRTP(筋トレ禁止)を判断するというシャレです。

もちろんトランスサイレチンだけで訓練内容を決めることはできませんし、身体計測のほうがより重要なことは改めて強調しますが、リハや訓練内容の指標の1つにすることはできると思います。

PT・OT・STと話をすると、こういった簡単で明確な指標を望んでいます。現時点では仮説ですが、今後このような仮説を検証する臨床研究が求められていると考えます。

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