2010年1月5日火曜日

肥満とリハ栄養

肥満が単独で存在してその他の合併症や障害が存在しない場合には、通常リハの対象にはなりません。ただ、実際には脳卒中、脊髄損傷、変形性関節症、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患などに肥満を合併していることが少なくありません。この場合には、リハ栄養の対象となります。

肥満の場合、通常はBMI25以下に改善することが望ましいですし、現体重から5%以上の減量を目標とすることが多いです。肥満では生活習慣病の合併、骨関節疾患の合併、耐久性低下など様々な問題が生じ、肥満の程度が重いほど生命予後も不良です。

しかし、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患の場合にはObesity Paradoxといって、太っている患者ほど生命予後がよいという報告があります。そのため、これらの疾患の場合には、安易に減量しないほうがよい可能性があります。

次に、Obesity Paradoxの疾患を合併している肥満の場合を除いて、肥満を合併している障害者への減量を目標としたリハ栄養について紹介します。

運動療法には、有酸素運動(歩行など)とレジスタンストレーニング(筋トレ)が含まれます。エビデンスとしてはUpToDate(※)を見ると、有酸素運動の有効性のみ記載されていて、レジスタンストレーニングは全く記載されていませんでした。少し驚きました。

※UpToDateとは、臨床の現場で生じる疑問に回答を得るための二次データベースです(有料)。最近までの原著論文を批判的吟味の上でまとめてわかりやすく記載されていますので、EBCPの実践に有用です。

糖尿病の運動療法には、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方が記載されていてどちらも同じように有効となっているのですが、肥満に対するレジスタンストレーニングのエビデンスは不十分なようです。

ただし、レジスタンストレーニングで筋肉を増やすことで基礎代謝を改善することは、肥満の治療にも有効だと思われますので、有酸素運動とレジスタンストレーニング両方を行うことが望ましいと考えます。

栄養に関しては、エネルギー摂取量<エネルギー消費量とすることが基本です。どの程度の摂取量にするか、3大栄養素のバランスをどうするかに関してはいくつかの方法があります。

計算上は7000Kcalのマイナスバランスで体重が1kg減少することになっています。
ですので、1日エネルギー摂取量を1日エネルギー消費量より200Kcal少なくすれば35日で1kg、300Kcal少なくすれば23日で1kg、400Kcal少なくすれば17.5日で1kg、500Kcal少なくすれば14日で1kg、体重が減少します。

私の基礎エネルギー消費量はHarris-Benedict式で計算すると約1500Kcalです。活動係数を1.5とすると、1日エネルギー消費量は2250Kcalになります。これを3で割ると750Kcalになります。

つまり、1食あたり平均750Kcalのエネルギー摂取量であれば体重を維持できるということになります。そのため、私は750Kcalを1食の目安としています。

もし1食あたり平均650Kcal(1日で1950Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が減ります。一方、1食あたり平均850Kcal(1日で2550Kcal)にすれば計算上は23日で1kg体重が増えます。

一方、肥満の治療として、1日エネルギー摂取量200~800Kcal以下の食事療法もあります。確かに体重は減少しますが、これでは脂肪だけでなく筋肉量も減少しますし、積極的な運動療法やリハの併用が困難です。

そのためリハ栄養では、1日エネルギー摂取量の下限は、1日エネルギー消費量-500Kcalまでで、基礎エネルギー消費量を下回らない程度と考えています。そうすれば、栄養療法と運動療法の併用が可能で、筋肉量の維持、改善も期待できます。

脳卒中などに肥満を合併しているためにADLやQOLのゴールが低くなっている場合があります。その場合には、減量を考慮したリハ栄養、訓練プログラムが重要です。

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