2010年1月20日水曜日

クリティカル・シンキング

今日はライトワークス監修、岡本義行+江口夏郎著のクリティカル・シンキング、ファーストプレスを紹介します。

http://www.firstpress.co.jp/?p=58

この本はライトワークス・ビジネスベーシックシリーズの1冊で、同シリーズには他にも問題解決、仮説思考などおすすめの本があります。

クリティカル・シンキングの書籍はたくさんあるのですが、私にはわかりにくい本が多く、物事の考え方のルールをなかなか理解することができませんでした。その中でこの本は、考えることは「分解すること」であり「統合すること」である、とてもシンプルなのだと簡潔に紹介していてわかりやすいです。

統合する方法には、①要素間の関係性を見る方法(因果関係)、②要素の共通性を見いだしてカテゴリー化する方法(分類、体系化)、③要素のフローを見る方法(プロセス分解)などがあるそうです。

今の私は概念モデル、ロジックツリー、フレームワークの3つのいずれかで考えるようにしています。ただ以前はこのようなツールを全く知らなかったので、考え方を知らずに考えていた状況でした。当然、効率が悪く浅はかな考えのことが多かった気がします。

特に因果関係で要素を統合する方法はもっとも強力な考え方で、自然科学や社会科学など、名前に「科学」とつく学問では、ものごとを分解し、さらに因果関係に着目して統合する手法を使っているそうです。

約20年前から医療界ではEvidence Based Clinical Practice(EBCP、EBM、EBN)が言われるようになりました。EBCPでエビデンスレベルが高いもの(ランダム化比較試験、メタ分析など)は因果関係がより明確で、低いもの(症例報告、症例集積など)は因果関係が不明瞭という関係になっています。

EBCPの5つのステップ(①疑問点の抽出、②情報の検索、③情報の吟味:妥当か、何か、役立つか、④患者への適応、⑤ステップ①~④の振り返り)のうち、特に③情報の吟味がクリティカル・シンキングです。

EBCPが叫ばれる前から臨床疫学という学問はありましたが、医療に科学・サイエンスのアプローチが導入されたのは実質この20年で、それまでの医療は基礎医学とアートが主だったというのは、振り返ってみると驚きです。

医療にはサイエンスとアートの両方が重要ですが、それではサイエンスとは何か、アートとは何かと聞かれると即答しにくいです。しかし、クリティカル・シンキングを学習することで、サイエンスとは何かに関しては回答できるようになります。

栄養障害や嚥下障害などの原因追究(診断含め)や治療方法立案にもクリティカル・シンキングは有用で、より質の高い臨床栄養管理や嚥下リハなどが可能になります。

クリティカル・シンキングは医療人にはとっつきにくい領域ですし、一見あまり関係がないようにも思えますが、より質の高い医療を実践するのに有用なスキルです。EBCPと一緒に学ぶとより身に付きやすいので、同時に学習することをおすすめします。

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