2010年10月20日水曜日

EPCRCのがん悪液質ガイドライン

今日は、EPCRC(European Palliative Care Research Collaborative、ヨーロッパ緩和ケア研究協働)のがん悪液質ガイドラインのドラフトを紹介します。この情報は愛生会山科病院外科の荒金英樹先生から教えていただきました。どうもありがとございました。

下記のHPからPDFファイルをダウンロードできます。

http://www.epcrc.org/publication_listfiles.php?id=PMsIkFZHZny8tSrjqwBd

EPCRCの中にはESPENも主要メンバーに含まれています。今回のガイドラインの特徴は、悪液質をprecachexia、cachexia、Refractory cachexia(難治性or不応性悪液質)の3つのステージに分類したことです。Refractory cachexiaがいわゆるターミナルのイメージで、通常の悪液質とターミナルは別の概念となります。このことはとてもよいと私は考えています。

一方、悪液質の診断基準として、過去6カ月で体重が5%以上減少、もしくはBMI20未満で2%以上の体重減少、もしくは骨格筋筋肉量がサルコペニア相当(若年の2標準偏差以下)で2%以上の体重減少とあります。

私は、これではsimple starvationやprimary sarcopenia(加齢によるサルコペニア)との鑑別が難しいのではないかと思います。食思不振やCRP陽性が入っているほうが、これらとの鑑別をしやすいと感じます。ただ、これらを入れると悪液質の見落としが増えるということも一方でわかりますので、感度、特異度の関係で悩ましいところかもしれません。

個人的には前悪液質の診断基準(悪液質の基礎疾患あり、過去6カ月で体重が5%以上減少、食思不振、CRP陽性の4項目すべて該当)で、前悪液質の判断を臨床でしていきたいと思っています。来年のJSPENでの演題発表(予定)でもこの基準のまま行きます。 これでリハ栄養とつなげたいと考えています。

あと、今回はがんの悪液質ということで書かれていますが、がん以外の悪液質を生じる疾患でもある程度同じように応用できると思います(慢性感染症、CHF、COPD、CRF、肝不全、膠原病など)。

治療に関しても記載されていますが、全体に薬物療法は厳しめです。栄養療法、運動療法、薬物療法、心理療法などを含めたmultimodalな治療が重要のようです。

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