今日は本田直之著、レバレッジ人脈術、ダイヤモンド社を紹介します。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-00275-9
「人脈術」ということばを聞くと、いかに有名人や自分にとって利益になる人とのネットワークを作れるかをイメージしがちですが、この書籍は貢献・コントリビューションに力を入れています。これはドラッカーの「経営者の条件」の影響かもしれません。
パーソナル・ブランディングの重要性を私は実感しました。パーソナルブランドがよりよいものになれば、よりよい人脈ができるということが基本です。フォローの仕方などテクニックも有用ですが、大切なことではないと思います。
「会いたいと思われる人」になるための条件として、以下の3つが紹介されています。
①インプット
まず絶対条件として、常にインプットする人間であること。
②魅力的なプロフィール
相手に「この人は何かおもしろそうだな」「会ってみたいな」と思ってもらえるようなプロフィールが必要。
③情報発信
ブログやメルマガを書いたり、本を出したり、新聞にコラムを書いたりしていること。
振り返ってみると私は昔から①はそれなりにやってきたつもりですが、②と③はダメでした。実際、すべての医療人はインプット型の学習はやっているはずです。ただ、情報発信・アウトプットを積極的に行っている人は少ないかもしれません。
今の自分は③もやっていますが、あくまで昨年12月からの話です。それまではブログも本もありませんでした。ただ、情報発信・アウトプットの重要性は痛感しています。アウトプットしなければ基本的に知られることがないので、会いたいと思われることは少ないでしょう。
②と③はにわとりと卵の関係で、情報発信・アウトプットを行えばより魅力的なプロフィールになり、そうなるとより情報発信を行う機会が増えることになります。どちらから取り組んでもよいですが、このサイクルに入るまでの壁は高いと感じています。
自分が成長するほど、人脈も成長します。人脈は人生の宝物の1つになります。人脈という宝物を手に入れるためには、パーソナル・ブランディングが必要です。そのためには自己研磨を続けるしかありません。
目次
Prologue 人脈づくりこそ最強の投資
最小の労力で、関わった人すべてが最大の成果を生む「レバレッジ人脈術」
●人脈なしで成功できるのは「天才」だけ
●人脈に勝るパーソナルキャピタルはない
●「誰を知っているか」ではなく、「誰に知られているか」
●積極的に人脈づくりをしている人、わずか九・二%
●本書で実現できない四つのこと
Leverage 1 レバレッジ人脈とは何か
●「ギブ・アンド・ギブ」ではなく「コントリビューション」が基本
●人脈は短期でつくれません
●人脈とは大きな目標に沿って、ゆっくりつくられるもの
●アーリーステージの企業に投資するVCの精神で
●有名人と知り合いになるメリットは少ない
●「レバレッジ」=「自分だけ得をする」ではない
●「お山の大将系」では、レバレッジが効かない
●「BS(バランスシート)型」人脈づくりのすすめ
●人脈づくりは自己責任
●相手の持つ「時間価値」「情報価値」「人脈価値」を意識しているか
●人脈づくり六つのタブー
●コントリビューション・四つのレベルを理解する
●「会いたいと思われる人」になるには
●自分の「ブランディング」ができているか
●人が会いたくなるような「魅力的なプロフィール」を書いてみよう
●本の出版は個人にとって究極のIPO
●本を出す近道も、人とのつながりにある
Leverage 2 会いたい人に接触する「アプローチ」の方法
●「知名度」より「マインド」の高い人を選べ
●「会いたい」と思ったら即メール
●相手のことを調べ尽くせ
●自己紹介は時間のムダ
●「飛び込み営業」で成功するはずがない
●相手が忙しいときに、アプローチしていないか
●メールに「思いの丈」をぶつけるな
●短いメールに感情を乗せる方法
●「おもしろい!」と思わず唸った学生からのメール
●疎遠な関係も、案外簡単に復活できる
●「今度」「近いうち」は永遠に来ない
●断られても気にする必要はない
●なぜ異業種交流会では人脈が広がらないのか
●人脈づくりに使えるLinkedin
Leverage3 うまくコミュニケーションをとる方法
●少ない労力でおおいに喜ばれる貢献とは
●情報提供にはルールがある
●私が世界遺産検定を受けた理由
●人との会話は「一〇対九〇」で聞き役に回れ
●「敬語禁止」で距離が縮まる
●人に教えることができるものを持て
●お店紹介もコントリビューション
●人と会うなら「ホーム」に呼び込め
●「いい店」は足で探せ
Leverage4 人脈を継続させるには
●ネットワーク構築までの三ステップ
●思わず「紹介したくなる人」、五つの条件
●人と会った後は、かならずフォローを
●お礼の「手紙」は避けたほうがいい
●メールのやりとりは常に「待ち」の状態に
●フォローで頼みごとは厳禁
●紋切り型のフォローでは、人間関係も紋切り型に
●名刺を整理する時間のほうがもったいない
●人脈のリストアップで自分の得意分野が見えてくる
●お中元、お歳暮、年賀状は送らない
●高価なものよりも、気の利いた小物を贈る
Leverage5 「レバレッジ・ネットワーク」構築でお互いに成長する
●レバレッジ・ネットワークのメリット
●「会」を成功させるポイントは、カテゴリーを絞ること
●人脈は、囲い込まないほうが広がる
●何かの共通点を見つけ、会をでっち上げろ
●「紹介制」でメンバーを守れ
●「希薄化」で会は崩壊に向かう
●会同士を結びつける「コネクター」を目指せ
●二次会は不要。そのかわり一次会を長く
●パーティは必ず立食形式で
●オフィスを「人が集まる場所」にする
●レベルの高い会に入れば触発される
●コントリビューションできない会には、参加しても意味がない
●ネットワークの仲間にしかできない相談もある
●「お願い」をしてもいい最終段階とは
あとがきにかえて──コントリビューション自体が「喜び」だ
2010年4月27日火曜日
サルコペニアのコンセンサス論文続き
先日、サルコペニアのコンセンサス論文を紹介しましたが、その続きです。
Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM,et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis. Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age and Ageing 2010;1–12. doi:10.1093/ageing/afq034
先日紹介したアルゴリズムでサルコペニアの有無を判断できること自体はとてもよいのですが、日常的に臨床で使用するには筋肉量の測定に課題があります。しかも筋肉量を測定できなければ、サルコペニアの診断ができません。
握力測定は男性30kg未満、女性20kg未満が1つの目安、歩行速度は0.8m/sが1つの目安になります。これらは日常的に臨床で測定することが可能です。
筋肉量の測定に関して、この論文ではCTかMRIをゴールドスタンダードとしています。確かにCTやMRIによる測定が一番正確です。しかし、日常的にCTやMRIで評価することは容易ではありません。
次にDEXA法(二重X線吸収測定法)での測定を推奨しています。骨粗鬆症の診断でもDEXA法による骨密度・骨量測定がゴールドスタンダードですので、これはやむを得ないかもしれません。ただDEXA法も日常的に臨床で測定することは容易ではないかもしれません。
次にBioimpedance analysis法(生体インピーダンス解析、BIA)が紹介されています。これはポータブルで測定可能ですので、DEXA法の代替法として使用できるとあります。この機械があれば測定は問題ありませんが、どこにでもある機械というわけにはいきません。
最後に身体計測(例:下腿周囲長31cm未満)が記載されています。しかし、身体計測に関しては誤差が生じやすいため、日常臨床でサルコペニアの診断に用いることは推奨しないとしています。つまり、何らかの機械を用いて筋肉量を計測することを推奨しています。
臨床研究であればCT、MRI、DEXA、BIAによる筋肉量の計測とサルコペニアの診断が必要かもしれません。骨粗鬆症の診断のことを考えても、これらの機械による診断のほうが適切かもしれません。
ただ、身体計測だけでも歩行速度と握力の測定と併用することで、「サルコペニア疑い」程度までは診断できるようになると、リハ栄養的にはありがたいです。目の前の患者にサルコペニアの存在を疑うだけでも臨床での意義は大きいと考えます。
Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM,et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis. Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age and Ageing 2010;1–12. doi:10.1093/ageing/afq034
先日紹介したアルゴリズムでサルコペニアの有無を判断できること自体はとてもよいのですが、日常的に臨床で使用するには筋肉量の測定に課題があります。しかも筋肉量を測定できなければ、サルコペニアの診断ができません。
握力測定は男性30kg未満、女性20kg未満が1つの目安、歩行速度は0.8m/sが1つの目安になります。これらは日常的に臨床で測定することが可能です。
筋肉量の測定に関して、この論文ではCTかMRIをゴールドスタンダードとしています。確かにCTやMRIによる測定が一番正確です。しかし、日常的にCTやMRIで評価することは容易ではありません。
次にDEXA法(二重X線吸収測定法)での測定を推奨しています。骨粗鬆症の診断でもDEXA法による骨密度・骨量測定がゴールドスタンダードですので、これはやむを得ないかもしれません。ただDEXA法も日常的に臨床で測定することは容易ではないかもしれません。
次にBioimpedance analysis法(生体インピーダンス解析、BIA)が紹介されています。これはポータブルで測定可能ですので、DEXA法の代替法として使用できるとあります。この機械があれば測定は問題ありませんが、どこにでもある機械というわけにはいきません。
最後に身体計測(例:下腿周囲長31cm未満)が記載されています。しかし、身体計測に関しては誤差が生じやすいため、日常臨床でサルコペニアの診断に用いることは推奨しないとしています。つまり、何らかの機械を用いて筋肉量を計測することを推奨しています。
臨床研究であればCT、MRI、DEXA、BIAによる筋肉量の計測とサルコペニアの診断が必要かもしれません。骨粗鬆症の診断のことを考えても、これらの機械による診断のほうが適切かもしれません。
ただ、身体計測だけでも歩行速度と握力の測定と併用することで、「サルコペニア疑い」程度までは診断できるようになると、リハ栄養的にはありがたいです。目の前の患者にサルコペニアの存在を疑うだけでも臨床での意義は大きいと考えます。
理系のための研究生活ガイド第2版
今日は坪田一男著、理系のための研究生活ガイド第2版―テーマの選び方から留学の手続きまで、ブルーバックスB-1671、講談社を紹介します。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2576716
ブルーバックスですので、高校生~一般社会人向けに執筆された書籍になりますが、医療人が読んでも参考になることが多いと感じました。医学書と異なり値段も安いですし(940円+消費税)、医療人で研究生活に関心のある方は一読の価値があると考えます。
まず英語に関しては何としても身につけなければいけないことが強調されています。誰でも最初から不自由なく英語を読んだり書いたりできるわけはありませんので、一定(相当ですが)の努力の必要性を再認識しました。避けて通るわけにはいかないのですが、避ける気持ちも個人的にはよく理解できます…。
学会などで「必ず1回以上質問をする」というのもよいことだと考えます。質問する気で聞くと発表をより真剣に聞くことができますし、「自分が研究している分野の学会で認められるいちばん良い方法でもある」そうです。「かわいい子の発表では必ず質問する」というのは賛否両論かもしれませんが…。
時間管理の方法も参考になりました。研究時間を以下の6つに分類して、1週間でそれぞれ2単位(1単位2時間なので計4時間)確保しているそうです。
・文献を読む時間
・臨床の論文を書く時間
・基礎の研究を考える時間
・一般的な読書時間
・一般の本を執筆する時間
・研究費取得、ビジネス時間
教授となると臨床以外にも管理業務やら何やらでとても忙しいようにみえますが、その中で毎週これだけの時間を捻出して実践しているのは実に素晴らしいことです。
自分で当てはめて考えてみると、基礎研究や一般の本の執筆は行っていませんが、
・文献や医学書を検索して読む時間
・臨床の論文や書籍を書く時間
・臨床研究のデータ収集・分析時間
・一般的な読書時間
・ブログを執筆する時間
は必須です。ただどれだけこれらの時間に使っているかとなると、前半3つの時間は明らかに少ないと感じます。そのため、「1週間ごとに達成率をチェックする」ことが必要だそうです。
すべての医療人は知識労働者ですので、時間の使い方を記録して、無駄な時間を整理してまとめて、自分の学習のインプットとアウトプットに多くの時間を費やすようにしたいものです。
目次
ガイド1 「研究」とは何かを理解する
ガイド2 研究者になるための8つのチェックポイント
ガイド3 大学と研究室を選ぶ11のポイント
ガイド4 研究テーマを決める14の原則
ガイド5 コミュニケーションのABC
ガイド6 研究者のためのIT活用術
ガイド7 研究者のための「超」読書術
ガイド8 研究者のための英語習得6つの必勝法
ガイド9 英語論文を書く21のコツ
ガイド10 学会発表13の技術
ガイド11 研究のための知的時間管理法
ガイド12 絶対留学するためのテクニック
ガイド13 研究費を集める14のノウハウ
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2576716
ブルーバックスですので、高校生~一般社会人向けに執筆された書籍になりますが、医療人が読んでも参考になることが多いと感じました。医学書と異なり値段も安いですし(940円+消費税)、医療人で研究生活に関心のある方は一読の価値があると考えます。
まず英語に関しては何としても身につけなければいけないことが強調されています。誰でも最初から不自由なく英語を読んだり書いたりできるわけはありませんので、一定(相当ですが)の努力の必要性を再認識しました。避けて通るわけにはいかないのですが、避ける気持ちも個人的にはよく理解できます…。
学会などで「必ず1回以上質問をする」というのもよいことだと考えます。質問する気で聞くと発表をより真剣に聞くことができますし、「自分が研究している分野の学会で認められるいちばん良い方法でもある」そうです。「かわいい子の発表では必ず質問する」というのは賛否両論かもしれませんが…。
時間管理の方法も参考になりました。研究時間を以下の6つに分類して、1週間でそれぞれ2単位(1単位2時間なので計4時間)確保しているそうです。
・文献を読む時間
・臨床の論文を書く時間
・基礎の研究を考える時間
・一般的な読書時間
・一般の本を執筆する時間
・研究費取得、ビジネス時間
教授となると臨床以外にも管理業務やら何やらでとても忙しいようにみえますが、その中で毎週これだけの時間を捻出して実践しているのは実に素晴らしいことです。
自分で当てはめて考えてみると、基礎研究や一般の本の執筆は行っていませんが、
・文献や医学書を検索して読む時間
・臨床の論文や書籍を書く時間
・臨床研究のデータ収集・分析時間
・一般的な読書時間
・ブログを執筆する時間
は必須です。ただどれだけこれらの時間に使っているかとなると、前半3つの時間は明らかに少ないと感じます。そのため、「1週間ごとに達成率をチェックする」ことが必要だそうです。
すべての医療人は知識労働者ですので、時間の使い方を記録して、無駄な時間を整理してまとめて、自分の学習のインプットとアウトプットに多くの時間を費やすようにしたいものです。
目次
ガイド1 「研究」とは何かを理解する
ガイド2 研究者になるための8つのチェックポイント
ガイド3 大学と研究室を選ぶ11のポイント
ガイド4 研究テーマを決める14の原則
ガイド5 コミュニケーションのABC
ガイド6 研究者のためのIT活用術
ガイド7 研究者のための「超」読書術
ガイド8 研究者のための英語習得6つの必勝法
ガイド9 英語論文を書く21のコツ
ガイド10 学会発表13の技術
ガイド11 研究のための知的時間管理法
ガイド12 絶対留学するためのテクニック
ガイド13 研究費を集める14のノウハウ
2010年4月26日月曜日
侵襲下でのリハ栄養管理の目標:維持か改善か
侵襲とは生体の内部環境の恒常性を乱す刺激で、手術、外傷、骨折、感染症、熱傷、発熱などが含まれます。1日エネルギー消費量を計算するときの、ストレス係数が侵襲の程度となります。
侵襲には傷害期、異化期、同化期があります。検査値で判断するには、窒素バランスの推移が確実です。ただ、侵襲の治療がうまくいっていないためにCRPが高値の時期、もしくはCRPが増加傾向にある時期は、異化期の可能性が高いといえます。一方、CRPが低値もしくは明らかに減少している時期は、同化期の可能性が高いです。
異化期では主に筋蛋白の異化(分解)で、侵襲に対する治癒反応へのエネルギーが供給されます。つまり、どんなに体外から体内へ栄養を投与しても、筋肉の分解を0にすることはできません。ただ、不適切な栄養管理で飢餓にしてしまうと、より筋肉の分解が進みますので、飢餓にはならないような維持的な栄養管理は必要です。
リハに関しても目標は機能改善ではなく、機能維持です。異化期にはレジスタンストレーニング(筋トレ)は基本的に行いません。
一方、同化期では筋肉合成(同化)が可能となります。同化に必要な栄養は、筋肉を構築するために必要な蛋白質、脂質(細胞膜の構築に必要)、エネルギー(同化には原材料だけでなくエネルギーが必要)です。
同化期では1日エネルギー消費量に見合ったエネルギーしか投与しなければ、筋肉量を維持できても増やすことは困難です。そのため、機能改善を目標とした積極的な栄養管理が必要です。エネルギー蓄積量として1日200~500kcalを消費量に加えて投与することで、筋肉量増加に必要な栄養を満たすことができます。
リハに関しては機能改善が目標ですので、もちろんレジスタンストレーニングが必須です。栄養管理だけで筋肉量を増やすことはできません。
まとめると侵襲下では疾患の治療、炎症のコントロールがうまくいっていないときは、機能改善を見込めないため、維持的なリハ栄養管理を行います。治療が奏功し炎症反応が改善したら、積極的なリハ栄養管理を行います。
リハでは目標を機能維持の時期と機能改善の時期に明確に分けて考えることは、普通に行われます。例えばALS(筋萎縮性側索硬化症)のリハでは、廃用の合併がなければ筋力増強は期待できないため、維持的に行うことが多いです。救命センターや集中治療室でのリハも、人工呼吸器の離脱や無気肺の改善など呼吸リハの意味では呼吸機能改善を目指しますが、筋肉量を増やすことは目指しません。二次的合併症を予防するための維持的リハが主です。
栄養管理でも機能維持の時期と機能改善の時期に明確に分けて考えることが必要です。時期によって栄養管理の内容も多少異なってきますので、飢餓、侵襲、(前)悪液質の有無と程度を評価したうえで、栄養管理の目標を栄養維持か栄養改善か明確にすることが望ましいです。
飢餓、侵襲、(前)悪液質では、リハと栄養管理の目標が解離することは稀です。リハ栄養管理として、目標を栄養維持か栄養改善か明確にして、状態に見合った適切なリハ栄養管理を行うことが、筋力、ADL、QOLの悪化予防、維持、向上に有効だと考えます。
侵襲には傷害期、異化期、同化期があります。検査値で判断するには、窒素バランスの推移が確実です。ただ、侵襲の治療がうまくいっていないためにCRPが高値の時期、もしくはCRPが増加傾向にある時期は、異化期の可能性が高いといえます。一方、CRPが低値もしくは明らかに減少している時期は、同化期の可能性が高いです。
異化期では主に筋蛋白の異化(分解)で、侵襲に対する治癒反応へのエネルギーが供給されます。つまり、どんなに体外から体内へ栄養を投与しても、筋肉の分解を0にすることはできません。ただ、不適切な栄養管理で飢餓にしてしまうと、より筋肉の分解が進みますので、飢餓にはならないような維持的な栄養管理は必要です。
リハに関しても目標は機能改善ではなく、機能維持です。異化期にはレジスタンストレーニング(筋トレ)は基本的に行いません。
一方、同化期では筋肉合成(同化)が可能となります。同化に必要な栄養は、筋肉を構築するために必要な蛋白質、脂質(細胞膜の構築に必要)、エネルギー(同化には原材料だけでなくエネルギーが必要)です。
同化期では1日エネルギー消費量に見合ったエネルギーしか投与しなければ、筋肉量を維持できても増やすことは困難です。そのため、機能改善を目標とした積極的な栄養管理が必要です。エネルギー蓄積量として1日200~500kcalを消費量に加えて投与することで、筋肉量増加に必要な栄養を満たすことができます。
リハに関しては機能改善が目標ですので、もちろんレジスタンストレーニングが必須です。栄養管理だけで筋肉量を増やすことはできません。
まとめると侵襲下では疾患の治療、炎症のコントロールがうまくいっていないときは、機能改善を見込めないため、維持的なリハ栄養管理を行います。治療が奏功し炎症反応が改善したら、積極的なリハ栄養管理を行います。
リハでは目標を機能維持の時期と機能改善の時期に明確に分けて考えることは、普通に行われます。例えばALS(筋萎縮性側索硬化症)のリハでは、廃用の合併がなければ筋力増強は期待できないため、維持的に行うことが多いです。救命センターや集中治療室でのリハも、人工呼吸器の離脱や無気肺の改善など呼吸リハの意味では呼吸機能改善を目指しますが、筋肉量を増やすことは目指しません。二次的合併症を予防するための維持的リハが主です。
栄養管理でも機能維持の時期と機能改善の時期に明確に分けて考えることが必要です。時期によって栄養管理の内容も多少異なってきますので、飢餓、侵襲、(前)悪液質の有無と程度を評価したうえで、栄養管理の目標を栄養維持か栄養改善か明確にすることが望ましいです。
飢餓、侵襲、(前)悪液質では、リハと栄養管理の目標が解離することは稀です。リハ栄養管理として、目標を栄養維持か栄養改善か明確にして、状態に見合った適切なリハ栄養管理を行うことが、筋力、ADL、QOLの悪化予防、維持、向上に有効だと考えます。
2010年4月23日金曜日
NST加算に関するシンポジウム
5月22日(土)16~18時に、第2回JSPEN首都圏支部学会終了後、NST加算に関するシンポジウムが、東京ファッションタウンTFTホール(東京・有明)で開催されます。会費は無料(予定)です。
http://www.procomu.jp/jspen2010/eiyou.html
NST加算に関心のある方は、ぜひご参加ください。
<プログラム>
1.基調講演 栄養サポートチーム加算新設について
総務省消防庁救急企画室救急専門官 長谷川学
厚生労働省医政局医事科試験免許室試験専門官 佐藤礼子
2.都市部基幹病院におけるNST活動と診療報酬
都立大久保病院 丸山道生
3.地域基幹病院におけるNST活動と診療報酬
箕面市立病院 飯島正平
4.大学病院におけるNST活動と診療報酬
東邦大学大森病院 鷲沢尚宏
5.シンポジウム(質疑応答)
シンポジスト:上記3名に加えて
岩佐正人 認定資格検討委員会委員長
竹山廣光 教育委員会委員長
福田能啓 NST委員会委員
東海林徹 薬剤師部会長
山田繁代 看護師部会長
足立香代子 栄養士部会長
http://www.procomu.jp/jspen2010/eiyou.html
NST加算に関心のある方は、ぜひご参加ください。
<プログラム>
1.基調講演 栄養サポートチーム加算新設について
総務省消防庁救急企画室救急専門官 長谷川学
厚生労働省医政局医事科試験免許室試験専門官 佐藤礼子
2.都市部基幹病院におけるNST活動と診療報酬
都立大久保病院 丸山道生
3.地域基幹病院におけるNST活動と診療報酬
箕面市立病院 飯島正平
4.大学病院におけるNST活動と診療報酬
東邦大学大森病院 鷲沢尚宏
5.シンポジウム(質疑応答)
シンポジスト:上記3名に加えて
岩佐正人 認定資格検討委員会委員長
竹山廣光 教育委員会委員長
福田能啓 NST委員会委員
東海林徹 薬剤師部会長
山田繁代 看護師部会長
足立香代子 栄養士部会長
医療関係職種教育におけるFDのシステム
理学療法ジャーナルの2010年4月号に、入門講座:理学療法学教育とFD①として、藤崎和彦先生の「医療関係職種教育におけるFDのシステム」という原稿が掲載されています(p317-324)。リハの雑誌でFaculty Developmentという用語を私は初めて見た気がします。
この論文では、教師の教育・学習スキルをどう伸ばすか(Teacher training)と成人学習理論の紹介に重きが置かれています。
なぜTeacher trainingが必要かに関しては、「教育の対象領域が単なる生物学的医学知識から社会心理行動面まで含めた全人的なものへと拡大し、教育手法もより学習者参加型の実践的なものへと変化して」いるためとしています。
私は一方的な講義中心型教育は「昭和」の学習方法で、参加型学習が「平成」の学習方法と考えています。個人的経験で、講義中心型教育の学習効率は悪いことを痛感しています。そのため、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会では、なるべく参加型学習を増やすように心がけています。
自分が講義・講演をする機会には、なるべく一方的にならないように、質問を投げかけたり、症例検討にしたりするように気をつけています。それでもまだまだ不十分ですが…。
成人教育理論の特徴として、以下の4点が紹介されています。
①自己決定的
②体験・経験重視
③ニードに基づく学習が効果的
④問題中心的、作業中心的学習を好む
これらの特徴を活かした参加型学習の学習効率は比較的高いと感じています。
Daleによる社会心理学の実験結果も紹介されています。
「読むことだけで2週間後に覚えているのは約1割、聞いたことでは2割、みたことで3割、みることと聞くことをあわせてやっと5割というように、受動的な学習では効率がよくない。一方、自分で話すと7割が記憶に残るし、話した後に実際に体験してみると何と9割が記憶に残っている」
私の実感では、受動的学習では1割も覚えることはできていません。5%程度だと思います。一方、話したり書いたりすることで5割以上は記憶に残っている印象です。ここからも主体的・能動的学習、経験からの学習の重要性がわかります。
この論文では岐阜大学医学部医学教育開発研究センターの取り組みが紹介されています。年間4回医学教育セミナー&ワークショップを開催しています。
その他にFDを学べる機会は少ないのですが、私の友人が「ハワイ大学医学部 医学教育室 医学教育フェローシップ」に参加しています。
http://www.medical-principle.co.jp/hawaii/info01.html
HPに掲載されている範囲でしか内容は確認できないのですが、友人の話では相当すごいそうで、私も参加を薦められています。ちなみに薬剤師も参加しているそうです。モジュールのみ紹介いたします。
Module 1 魅力ある教育の創造:危険な「輸入」教育。標準化ではなく多様化が勝負の鍵
Module 2 上手に教える:『トップ指導医』への道
Module 3 上手に育てる:『評価のための評価』に別れを告げよう!
Module 4 リーダーシップ:技術、経験、そして、智恵
Module 5 国際交流:Globalizationの時代に生き残るための戦略
入門講座:理学療法学教育とFDは3回連載のようですので、PTジャーナルを入手できる人は、ぜひ4月号から6月号までご一読ください。
この論文では、教師の教育・学習スキルをどう伸ばすか(Teacher training)と成人学習理論の紹介に重きが置かれています。
なぜTeacher trainingが必要かに関しては、「教育の対象領域が単なる生物学的医学知識から社会心理行動面まで含めた全人的なものへと拡大し、教育手法もより学習者参加型の実践的なものへと変化して」いるためとしています。
私は一方的な講義中心型教育は「昭和」の学習方法で、参加型学習が「平成」の学習方法と考えています。個人的経験で、講義中心型教育の学習効率は悪いことを痛感しています。そのため、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会では、なるべく参加型学習を増やすように心がけています。
自分が講義・講演をする機会には、なるべく一方的にならないように、質問を投げかけたり、症例検討にしたりするように気をつけています。それでもまだまだ不十分ですが…。
成人教育理論の特徴として、以下の4点が紹介されています。
①自己決定的
②体験・経験重視
③ニードに基づく学習が効果的
④問題中心的、作業中心的学習を好む
これらの特徴を活かした参加型学習の学習効率は比較的高いと感じています。
Daleによる社会心理学の実験結果も紹介されています。
「読むことだけで2週間後に覚えているのは約1割、聞いたことでは2割、みたことで3割、みることと聞くことをあわせてやっと5割というように、受動的な学習では効率がよくない。一方、自分で話すと7割が記憶に残るし、話した後に実際に体験してみると何と9割が記憶に残っている」
私の実感では、受動的学習では1割も覚えることはできていません。5%程度だと思います。一方、話したり書いたりすることで5割以上は記憶に残っている印象です。ここからも主体的・能動的学習、経験からの学習の重要性がわかります。
この論文では岐阜大学医学部医学教育開発研究センターの取り組みが紹介されています。年間4回医学教育セミナー&ワークショップを開催しています。
その他にFDを学べる機会は少ないのですが、私の友人が「ハワイ大学医学部 医学教育室 医学教育フェローシップ」に参加しています。
http://www.medical-principle.co.jp/hawaii/info01.html
HPに掲載されている範囲でしか内容は確認できないのですが、友人の話では相当すごいそうで、私も参加を薦められています。ちなみに薬剤師も参加しているそうです。モジュールのみ紹介いたします。
Module 1 魅力ある教育の創造:危険な「輸入」教育。標準化ではなく多様化が勝負の鍵
Module 2 上手に教える:『トップ指導医』への道
Module 3 上手に育てる:『評価のための評価』に別れを告げよう!
Module 4 リーダーシップ:技術、経験、そして、智恵
Module 5 国際交流:Globalizationの時代に生き残るための戦略
入門講座:理学療法学教育とFDは3回連載のようですので、PTジャーナルを入手できる人は、ぜひ4月号から6月号までご一読ください。
2010年4月22日木曜日
SCAMPERによるアイデア創出法
今日は、SCAMPERによるアイデア創出法を紹介します。
アイデアをたくさん出したいときにもっともよく用いられる方法は、ブレインストーミングだと思います。ただ、ゼロからアイデアを考えるのが難しい場合には、何かをSCAMPERに基づいて考えるのが有効かもしれません。
SCAMPERとは、ボブ・エバールによって開発された強制連想型アイデア発想ツールで、以下の頭文字をくっつけたものです。
S = Substitude:代用する
C = Combine:結合する
A = Adapt:適用する
M = Modify:修正する
P = Put to other purposes, users:転用する
E = Eliminate:除去する
R = Rearrange, Reverse:再配列する
もとは48~49項目の質問がありますが、それでは覚えきれないので、SCAMPERと覚えるほうがよいかと思います。モノの活用法、考え方、組織運営などに利用できると考えます。ブログのネタ作りの参考にもなるかもしれません…。
この中で最も強力なツールは、結合することだと私は考えています。リハビリテーション栄養は当然ですが、リハと栄養を結合させたものです。結合することで、モノの見方や考え方が広がりましたし、質と成果も向上したと感じています。
何と何を結合させるかがその人の腕の見せ所になります。試行錯誤でいろいろと結合させてみて、よさそうなものを試しに深く掘り下げてみるのがよいと思います。
例えば、リハ、栄養、看護、薬剤、放射線、臨床検査、歯科、緩和、感染、安全、褥瘡、呼吸、循環、排泄、嚥下などをすべての組み合わせで結合させてみて、よさそうなものを掘り下げてみるのはいかがでしょうか。
ちなみに48項目の質問リストは下記のHPで確認できます。
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0804/15/news007_2.html
アイデアをたくさん出したいときにもっともよく用いられる方法は、ブレインストーミングだと思います。ただ、ゼロからアイデアを考えるのが難しい場合には、何かをSCAMPERに基づいて考えるのが有効かもしれません。
SCAMPERとは、ボブ・エバールによって開発された強制連想型アイデア発想ツールで、以下の頭文字をくっつけたものです。
S = Substitude:代用する
C = Combine:結合する
A = Adapt:適用する
M = Modify:修正する
P = Put to other purposes, users:転用する
E = Eliminate:除去する
R = Rearrange, Reverse:再配列する
もとは48~49項目の質問がありますが、それでは覚えきれないので、SCAMPERと覚えるほうがよいかと思います。モノの活用法、考え方、組織運営などに利用できると考えます。ブログのネタ作りの参考にもなるかもしれません…。
この中で最も強力なツールは、結合することだと私は考えています。リハビリテーション栄養は当然ですが、リハと栄養を結合させたものです。結合することで、モノの見方や考え方が広がりましたし、質と成果も向上したと感じています。
何と何を結合させるかがその人の腕の見せ所になります。試行錯誤でいろいろと結合させてみて、よさそうなものを試しに深く掘り下げてみるのがよいと思います。
例えば、リハ、栄養、看護、薬剤、放射線、臨床検査、歯科、緩和、感染、安全、褥瘡、呼吸、循環、排泄、嚥下などをすべての組み合わせで結合させてみて、よさそうなものを掘り下げてみるのはいかがでしょうか。
ちなみに48項目の質問リストは下記のHPで確認できます。
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0804/15/news007_2.html
2010年4月21日水曜日
情報調査力のプロフェッショナル
情報調査力のプロフェッショナル―ビジネスの質を高める「調べる力」、上野佳恵著、ダイヤモンド社を紹介します。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=%39%37%38%2D%34%2D%34%37%38%2D%34%39%30%35%33%2D%32
現代はGoogleなどインターネットで何でも情報を検索できる時代です。Googleの活用法がとても大切であることは確かですが、適切な情報調査・検索をするためには、すぐにググればよいというものではないということが述べられています。
この書籍のポイントは2つあります。1つ目は「調べること」を分解すると、知識ギャップの認識、自分の情報源リストとのすり合わせ、情報の獲得、情報の検証・判断、情報の伝達、自分の情報源リストの整備になり、これらのステップを確実に1つずつ踏んで行うと、よい調査になりやすいということです。
すぐに検索できるので、私は深く考えないでとりあえずキーワードを入力してGoogleで検索しがちです。しかしそれでは、臨床研究においてリサーチクエスチョンや臨床研究デザインを深く考えないで、とりあえずデータを集めてしまうことと同じで、よい検索、よい臨床研究にはなりません。EBCPでも情報検索の前に、疑問をPECOの形で定式化します。
つまり、何の目的で何をどの程度知りたいのかを明確にすることが、データを収集する前に必要です。その次に、インターネット以外の情報源のほうがより有益な可能性もありますので、複数の情報源の中からどれで情報を調べるかを考えることも必要です。
例えば私は自宅近くの図書館に月2回、書店に月1回は行くようにしています。インターネットで調べるよりも図書館や書店で調べるほうが適切かつ速い可能性があります。また、同僚や友人に話を聞くほうが有効な場合もあります。これらの情報源(正確に言うとインターネットや図書館・書店は情報源ではなくて、情報源の宝庫です)から選択したうえで、情報を検索することが重要です。
2つ目のポイントは、ビジネスで「調べる領域」の80%は企業、人物、業界、消費者の4つに限定され、それぞれ情報検索のコツがあるということです。
医療で調べる領域の多くは、病院、人物、学会・研究会、医療情報(リハ栄養など)、学会時の会場・宿泊先・観光名所・評判のお店(?)あたりでしょうか。これらについても、全く同じ情報源で検索するよりも、領域によって検索方法を変えたほうがより適切かもしれません。私もあまり詳しいことは言えませんが…。
ネットサーフィンから質の高い情報調査に変化させるには、検索スキルだけでなく、Faculty Developmentに含まれる問題発見・解決能力やコミュニケーション能力の活用が重要です。FDを意識しながらGoogleを活用するだけでも違うかもしれません。
目次
はじめに――調べるスキルの引き出しを増やすには
序章 プロフェッショナル・リサーチャーの作法
ビジネス・リサーチの世界に起こった革命
どこまで調べればいいのか
ビジネスは問題解決思考で動いている
「本質的」な問題とは何か
解決策の探り方
ないがしろにされている「調べる」スキル
第1章 調べる仕組みとは
ビジネス・リサーチはなぜ難しいか
休暇の旅行先を「自発的に」調べる
必要に迫られて調べるプレッシャーを楽しめるか
「調べること」を分解する
(1) 知識ギャップの認識
(2) 自分の情報源リストとのすり合わせ
(3) 情報の獲得
(4) 情報の検証・判断
(5) 情報の伝達
(6) 自分の情報源リストの整備
「調べるサイクル」
ビジネスにおける「調べるサイクル」とは
不完全な「調べるサイクル」
「調べる」ために必要なスキルセット
情報リテラシーとは何か
第2章 ビジネス情報ニーズの範囲
ビジネスの課題の中のパターン
情報センターに寄せられる問い合わせの傾向
「ビジネス支援」情報とは
「調べる領域」の80%とは
第3章 企業と人物について調べる
事例1:講演者を探す
課題を明確にする
事前の確認
「とっかかり」は、何か
「無」からは何も生まれない
「足」で稼ぐ
「人」で稼ぐ
立ち止まって考える
視野を広げ、会社を調べる
判断の基準
異なる視点を取り込む
いざというとき頼るのは「人」
一歩先んじて動く
伝え方しだい
第4章 基本のリサーチ[1] 「企業」「人物」
会社について調べる
(1) 何をやっているどんな会社か?
(2) その会社は儲かっているのか?
(3) 最近どのようなことをやっているか、やろうとしているのか?
人について調べる
第5章 業界について調べる
事例2:ペット業界を調べる
佐藤くんの場合
山田さんの場合
鈴木くんの場合
コンサルタント村田さんの場合
調べることの枠組み
民間調査会社のレポートの利用
情報提供サービス
記事検索の位置づけ
インターネットの利用
情報量の見極め
第6章 基本のリサーチ[2] 「業界」「消費者」
業界を調べる
(1) 政府統計
(2) 業界団体による統計・資料
データ集、統計集の功罪
(3) 民間調査会社の市場調査レポート
市場調査レポートの作られ方
(4) 新聞・雑誌記事
図書館活用のポイント
(5) ヒアリング
消費者動向を調べる
世論調査
消費者調査の活用法
第7章 情報のプロフェッショナルへの道
原点
情報提供サービスでの仕事
コンサルティング会社の仕事
リサーチの目的と条件
リサーチのプロセス
Plan Do See
情報の仕事で独立
あとがき
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=%39%37%38%2D%34%2D%34%37%38%2D%34%39%30%35%33%2D%32
現代はGoogleなどインターネットで何でも情報を検索できる時代です。Googleの活用法がとても大切であることは確かですが、適切な情報調査・検索をするためには、すぐにググればよいというものではないということが述べられています。
この書籍のポイントは2つあります。1つ目は「調べること」を分解すると、知識ギャップの認識、自分の情報源リストとのすり合わせ、情報の獲得、情報の検証・判断、情報の伝達、自分の情報源リストの整備になり、これらのステップを確実に1つずつ踏んで行うと、よい調査になりやすいということです。
すぐに検索できるので、私は深く考えないでとりあえずキーワードを入力してGoogleで検索しがちです。しかしそれでは、臨床研究においてリサーチクエスチョンや臨床研究デザインを深く考えないで、とりあえずデータを集めてしまうことと同じで、よい検索、よい臨床研究にはなりません。EBCPでも情報検索の前に、疑問をPECOの形で定式化します。
つまり、何の目的で何をどの程度知りたいのかを明確にすることが、データを収集する前に必要です。その次に、インターネット以外の情報源のほうがより有益な可能性もありますので、複数の情報源の中からどれで情報を調べるかを考えることも必要です。
例えば私は自宅近くの図書館に月2回、書店に月1回は行くようにしています。インターネットで調べるよりも図書館や書店で調べるほうが適切かつ速い可能性があります。また、同僚や友人に話を聞くほうが有効な場合もあります。これらの情報源(正確に言うとインターネットや図書館・書店は情報源ではなくて、情報源の宝庫です)から選択したうえで、情報を検索することが重要です。
2つ目のポイントは、ビジネスで「調べる領域」の80%は企業、人物、業界、消費者の4つに限定され、それぞれ情報検索のコツがあるということです。
医療で調べる領域の多くは、病院、人物、学会・研究会、医療情報(リハ栄養など)、学会時の会場・宿泊先・観光名所・評判のお店(?)あたりでしょうか。これらについても、全く同じ情報源で検索するよりも、領域によって検索方法を変えたほうがより適切かもしれません。私もあまり詳しいことは言えませんが…。
ネットサーフィンから質の高い情報調査に変化させるには、検索スキルだけでなく、Faculty Developmentに含まれる問題発見・解決能力やコミュニケーション能力の活用が重要です。FDを意識しながらGoogleを活用するだけでも違うかもしれません。
目次
はじめに――調べるスキルの引き出しを増やすには
序章 プロフェッショナル・リサーチャーの作法
ビジネス・リサーチの世界に起こった革命
どこまで調べればいいのか
ビジネスは問題解決思考で動いている
「本質的」な問題とは何か
解決策の探り方
ないがしろにされている「調べる」スキル
第1章 調べる仕組みとは
ビジネス・リサーチはなぜ難しいか
休暇の旅行先を「自発的に」調べる
必要に迫られて調べるプレッシャーを楽しめるか
「調べること」を分解する
(1) 知識ギャップの認識
(2) 自分の情報源リストとのすり合わせ
(3) 情報の獲得
(4) 情報の検証・判断
(5) 情報の伝達
(6) 自分の情報源リストの整備
「調べるサイクル」
ビジネスにおける「調べるサイクル」とは
不完全な「調べるサイクル」
「調べる」ために必要なスキルセット
情報リテラシーとは何か
第2章 ビジネス情報ニーズの範囲
ビジネスの課題の中のパターン
情報センターに寄せられる問い合わせの傾向
「ビジネス支援」情報とは
「調べる領域」の80%とは
第3章 企業と人物について調べる
事例1:講演者を探す
課題を明確にする
事前の確認
「とっかかり」は、何か
「無」からは何も生まれない
「足」で稼ぐ
「人」で稼ぐ
立ち止まって考える
視野を広げ、会社を調べる
判断の基準
異なる視点を取り込む
いざというとき頼るのは「人」
一歩先んじて動く
伝え方しだい
第4章 基本のリサーチ[1] 「企業」「人物」
会社について調べる
(1) 何をやっているどんな会社か?
(2) その会社は儲かっているのか?
(3) 最近どのようなことをやっているか、やろうとしているのか?
人について調べる
第5章 業界について調べる
事例2:ペット業界を調べる
佐藤くんの場合
山田さんの場合
鈴木くんの場合
コンサルタント村田さんの場合
調べることの枠組み
民間調査会社のレポートの利用
情報提供サービス
記事検索の位置づけ
インターネットの利用
情報量の見極め
第6章 基本のリサーチ[2] 「業界」「消費者」
業界を調べる
(1) 政府統計
(2) 業界団体による統計・資料
データ集、統計集の功罪
(3) 民間調査会社の市場調査レポート
市場調査レポートの作られ方
(4) 新聞・雑誌記事
図書館活用のポイント
(5) ヒアリング
消費者動向を調べる
世論調査
消費者調査の活用法
第7章 情報のプロフェッショナルへの道
原点
情報提供サービスでの仕事
コンサルティング会社の仕事
リサーチの目的と条件
リサーチのプロセス
Plan Do See
情報の仕事で独立
あとがき
サルコペニアのコンセンサス論文
今日はサルコペニアのコンセンサス論文を紹介します。
Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis
Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People
Age and Ageing 2010; 1–12 doi: 10.1093/ageing/afq034
私が思うこの論文のポイントを先に記載します。
・サルコペニアの定義に身体機能低下を含めたこと。
・サルコペニアの段階付けをしたこと(前サルコペニア、サルコペニア、重症サルコペニアの3段階)。ちなみに悪液質の論文でも同じように悪液質を3段階に分類しているものがあります。
・サルコペニアを診断するアルゴリズムを作成したこと。歩行速度が0.8m/s以下もしくは握力が例えば男性30kg未満、女性20kg未満で、筋肉量の低下(例:若年の2標準偏差以下)を認める場合に、サルコペニアと診断しています。
・抄録にはありませんが、サルコペニアの原因で、原発性サルコペニアPrimary sarcopenia(加齢以外に明らかな原因がないもの=Age-related sarcopenia)と二次性サルコペニアSecondary sarcopeniaに分類したこと。
・二次性サルコペニアは、活動に関連したサルコペニアActivity-related sarcopenia、疾患に関連したサルコペニアDisease-related sarcopenia、栄養に関連したサルコペニアNutrition-related sarcopeniaの3つに分類。
・活動に関連したサルコペニアは、ベッド上安静、あまり動かないライフスタイル(座ってばかり)、廃用、無重力によって生じる。廃用による筋萎縮とほぼ同義。
・疾患に関連したサルコペニアは、進行した臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症疾患、悪性疾患、内分泌疾患によって生じる。悪液質、侵襲、原疾患による筋萎縮がここに含まれている。
・栄養に関連したサルコペニアは、吸収不良、消化管疾患、薬剤使用、食思不振などに伴うエネルギー(+蛋白質)摂取量不足によって生じる。飢餓による筋萎縮とほぼ同義。
サルコペニアに興味のある方は、ぜひ全文読まれることをお勧めします。論文にはOpen Access articleと書いてありますので、無料で入手できるかもしれません。できなかったらすみません…。
抄録一部訳
EWGSOPは、加齢に関連したサルコペニアの、実用的な臨床での定義と診断分類のコンセンサスを作成した。EWGSOPはESPENも含め4つの組織で構成されている。
サルコペニアの診断には、筋肉量の低下と筋肉機能の低下(筋力もしくは身体機能)の両方を用いる。
前サルコペニア(筋肉量の低下のみ)、サルコペニア(筋肉量の低下+筋力低下もしくは身体機能低下)、重症サルコペニア(筋肉量の低下+筋力低下+身体機能低下)という段階を定義する。
歩行速度(0.8m/s以上か以下か)、握力(例:男性30kg未満、女性20kg未満)、筋肉量(例:若年の2標準偏差以下か)を用いて、サルコペニアを診断するアルゴリズムを作成した。
Abstract
The European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP) developed a practical clinical definition and consensus diagnostic criteria for age-related sarcopenia. EWGSOP included representatives from four participant organisations, i.e. the European Geriatric Medicine Society, the European Society for Clinical Nutrition and Metabolism, the International Association of Gerontology and Geriatrics—European Region and the International Association of Nutrition and Aging. These organisations endorsed the findings in the final document.
The group met and addressed the following questions, using the medical literature to build evidence-based answers: (i) What is sarcopenia? (ii) What parameters define sarcopenia? (iii) What variables reflect these parameters, and what measurement tools and cut-off points can be used? (iv) How does sarcopenia relate to cachexia, frailty and sarcopenic obesity?
For the diagnosis of sarcopenia, EWGSOP recommends using the presence of both low muscle mass + low muscle function (strength or performance). EWGSOP variously applies these characteristics to further define conceptual stages as ‘presarcopenia’,‘sarcopenia’ and ‘severe sarcopenia’.
EWGSOP reviewed a wide range of tools that can be used to measure the specific variables of muscle mass, muscle strength and physical performance. Our paper summarises currently available data defining sarcopenia cut-off points by age and gender; suggests an algorithm for sarcopenia case finding in older individuals based on measurements of gait speed, grip strength and muscle mass; and presents a list of suggested primary and secondary outcome domains for research.
Once an operational definition of sarcopenia is adopted and included in the mainstream of comprehensive geriatric assessment, the next steps are to define the natural course of sarcopenia and to develop and define effective treatment.
2010年4月20日火曜日
第17回川崎市南部地区リハ連絡会研修会
今度6月15日(火)の18時30分~20時に、ミューザ川崎市民交流室(JR川崎駅西口徒歩1分)で、第17回川崎市南部地区リハ連絡会研修会が開催されます。
テーマ:「PT・OT・STのための嚥下リハビリテーション」
講師:横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科 若林秀隆
テーマは嚥下リハですが、リハ栄養の話もある程度する予定です。平日の夜ですが、近隣のPT・OT・STの方はよろしければご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
テーマ:「PT・OT・STのための嚥下リハビリテーション」
講師:横浜市立大学附属市民総合医療センターリハビリテーション科 若林秀隆
テーマは嚥下リハですが、リハ栄養の話もある程度する予定です。平日の夜ですが、近隣のPT・OT・STの方はよろしければご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
回復期リハ診療報酬改定とリハ栄養
今日は、回復期リハ診療報酬改定とリハ栄養の関連について記載します。
4月の診療報酬改定で、回復期リハに関しては、
・休日リハビリテーション提供体制加算(1日につき)60点
・リハビリテーション充実加算(1日につき)40点
が新設されました。休日リハ提供体制加算は、休日の1人1日当たりリハ提供単位数も平均2単位(40分)以上であることが算定要件です。リハ充実加算は、1人1日あたり平均6単位(2時間)以上のリハが行われていることが算定要件です。
病院経営上はこれらの加算を算定できるほうが明らかに有利なので、多くの回復期リハ病棟入院中の患者が、平日は1日6単位前後、休日は2単位前後のリハを行うことになります。
入院患者の栄養状態が良好で、1日6単位以上のリハの適応があれば、今回の診療報酬改定は好ましいことになります。訓練時間が増えることで、筋力、持久力、ADLなどのさらなる改善を期待できます。
しかし、重度の栄養障害の患者に対しても算定要件を満たすために、平日1日平均6単位以上、休日1日平均2単位以上にするために、これだけのリハが施行されることがあるかもしれません。
そうなると、リハの効果が出ないどころか、かえって体力低下、筋力低下につながる可能性があります。算定要件がリハの逆効果になってはいけないと考えます。
実際には重度の栄養障害の患者でも、栄養状態が改善傾向にあれば積極的なリハや1日6単位以上のリハも可能です。そのためには、リハによるエネルギー消費量の計算と、エネルギー蓄積量の付加の考慮が必要となります。
運動によるエネルギー消費量の目安は、以前にも紹介したメッツ(metabolic equivalents: METs)です。運動時の酸素消費量を安静座位時の酸素消費量で割った数値で、運動の強さの指標となります。例えば、
2メッツ:更衣、整容、歩行(平地、54m/分未満)、料理
3メッツ:歩行(平地、67m/分)、階段下り、屋内掃除、レジスタンストレーニング(軽・中等度)
となります。また、メッツを用いて、下記の式でリハによるエネルギー消費量を計算できます。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×運動時間(h)
例えば、体重60kgの患者が軽いレジスタンストレーニングなど3メッツ程度の理学療法と作業療法を合計2時間行うと、1.05×60×3×2=378kcalとなります。無視できないエネルギー消費量ですので、リハ栄養管理ではこれを考慮することが必須です。
さらに、低栄養状態であり栄養改善を要する患者には、1日200~500 kcal程度のエネルギー蓄積量も摂取することが必要です。そうしなければ低栄養状態を維持することになります。
これらの計算が大変であれば、1日平均6単位以上リハを行う患者の活動係数を1.5~1.7とやや高めに設定しておいて、栄養モニタリングで体重変化などを確認しながらエネルギー摂取量を適宜変更してもよいかもしれません。
リハを考慮しないエネルギー消費量の計算では、活動係数はベッド上1.0~1.2、ベッド外活動1.3のいずれかのことが多いです。確かにHarris-Benedict式では日本人では高めに計算されることが多いといわれています。
しかし活動係数1.3では、栄養障害の患者が1日6単位以上のリハを行った場合、栄養改善どころか栄養状態が悪化する可能性が十分あります。適切な活動係数を設定するためには、PT・OT・STの栄養管理への関与が必要です。
休日リハ提供体制加算とリハ充実加算の新設はよいことですが、リハ栄養的にみると、栄養状態良好もしくは低栄養状態でも栄養改善を目指した適切なリハ栄養管理が行われている場合のみ、望ましいです。つまり、回復期リハにおける栄養管理の重要性が、今回の診療報酬改定で高まったといえます。
4月の診療報酬改定で、回復期リハに関しては、
・休日リハビリテーション提供体制加算(1日につき)60点
・リハビリテーション充実加算(1日につき)40点
が新設されました。休日リハ提供体制加算は、休日の1人1日当たりリハ提供単位数も平均2単位(40分)以上であることが算定要件です。リハ充実加算は、1人1日あたり平均6単位(2時間)以上のリハが行われていることが算定要件です。
病院経営上はこれらの加算を算定できるほうが明らかに有利なので、多くの回復期リハ病棟入院中の患者が、平日は1日6単位前後、休日は2単位前後のリハを行うことになります。
入院患者の栄養状態が良好で、1日6単位以上のリハの適応があれば、今回の診療報酬改定は好ましいことになります。訓練時間が増えることで、筋力、持久力、ADLなどのさらなる改善を期待できます。
しかし、重度の栄養障害の患者に対しても算定要件を満たすために、平日1日平均6単位以上、休日1日平均2単位以上にするために、これだけのリハが施行されることがあるかもしれません。
そうなると、リハの効果が出ないどころか、かえって体力低下、筋力低下につながる可能性があります。算定要件がリハの逆効果になってはいけないと考えます。
実際には重度の栄養障害の患者でも、栄養状態が改善傾向にあれば積極的なリハや1日6単位以上のリハも可能です。そのためには、リハによるエネルギー消費量の計算と、エネルギー蓄積量の付加の考慮が必要となります。
運動によるエネルギー消費量の目安は、以前にも紹介したメッツ(metabolic equivalents: METs)です。運動時の酸素消費量を安静座位時の酸素消費量で割った数値で、運動の強さの指標となります。例えば、
2メッツ:更衣、整容、歩行(平地、54m/分未満)、料理
3メッツ:歩行(平地、67m/分)、階段下り、屋内掃除、レジスタンストレーニング(軽・中等度)
となります。また、メッツを用いて、下記の式でリハによるエネルギー消費量を計算できます。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×運動時間(h)
例えば、体重60kgの患者が軽いレジスタンストレーニングなど3メッツ程度の理学療法と作業療法を合計2時間行うと、1.05×60×3×2=378kcalとなります。無視できないエネルギー消費量ですので、リハ栄養管理ではこれを考慮することが必須です。
さらに、低栄養状態であり栄養改善を要する患者には、1日200~500 kcal程度のエネルギー蓄積量も摂取することが必要です。そうしなければ低栄養状態を維持することになります。
これらの計算が大変であれば、1日平均6単位以上リハを行う患者の活動係数を1.5~1.7とやや高めに設定しておいて、栄養モニタリングで体重変化などを確認しながらエネルギー摂取量を適宜変更してもよいかもしれません。
リハを考慮しないエネルギー消費量の計算では、活動係数はベッド上1.0~1.2、ベッド外活動1.3のいずれかのことが多いです。確かにHarris-Benedict式では日本人では高めに計算されることが多いといわれています。
しかし活動係数1.3では、栄養障害の患者が1日6単位以上のリハを行った場合、栄養改善どころか栄養状態が悪化する可能性が十分あります。適切な活動係数を設定するためには、PT・OT・STの栄養管理への関与が必要です。
休日リハ提供体制加算とリハ充実加算の新設はよいことですが、リハ栄養的にみると、栄養状態良好もしくは低栄養状態でも栄養改善を目指した適切なリハ栄養管理が行われている場合のみ、望ましいです。つまり、回復期リハにおける栄養管理の重要性が、今回の診療報酬改定で高まったといえます。
2010年4月17日土曜日
第2回神奈川県央地区PDNセミナー
今度6月5日に厚木でリハ栄養の講演を行います。今回はテーマが「リハビリテーションと栄養」ということで、シンポジウムも含めて、まさにリハ栄養です。
下記のHPに案内と申し込み用紙があります。
http://www.peg.or.jp/seminar/kaisai/kanagawa/100605.pdf
お近くの方はぜひご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
日 時:平成22年6月5日(土) 14:00~17:15(13:00~受付開始)
場 所:神奈川工科大学ITエクステンションセンター3F 302 大会議室
神奈川県厚木市中町3-3-17 (小田急線本厚木駅北口より徒歩3分)
世話人:江頭文江先生(地域栄養ケアPEACH 厚木 代表)
テーマ:「リハビリテーションと栄養」
内容
13:30~14:00 展示企業プレゼンテーション
14:00~14:05 世話人からのご挨拶
14:05~15:30 特別講演「リハビリテーションと栄養管理」
講師:若林 秀隆先生
(横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科)
15:30~15:45 休憩
15:45~17:15 シンポジウム「栄養なくしてリハビリなし!~それぞれの取り組み~」
司会:江頭文江先生 コメンテーター:若林秀隆先生
医療機関・介護施設・在宅それぞれの現場からの発表の後、みなさんで
ディスカッションしましょう!
参加費:1,000円
対 象:医療・介護従事者(職種は問いません)
定 員:80名予定
申込み:参加申込書に必要事項を記入の上、FAXまたはE-Mailにてお申し込みください。
地域栄養ケアPEACH 厚木 www.taberukenri.com/
FAX ⇒ 046-225-6840 別紙ご記入の上、お送り下さい
E-Mail ⇒ training@taberukenri.com 件名を「県央PDN セミナー」とし、必要事項(FAX 申込書参照)をご記入の上送信してください。
下記のHPに案内と申し込み用紙があります。
http://www.peg.or.jp/seminar/kaisai/kanagawa/100605.pdf
お近くの方はぜひご参加いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
日 時:平成22年6月5日(土) 14:00~17:15(13:00~受付開始)
場 所:神奈川工科大学ITエクステンションセンター3F 302 大会議室
神奈川県厚木市中町3-3-17 (小田急線本厚木駅北口より徒歩3分)
世話人:江頭文江先生(地域栄養ケアPEACH 厚木 代表)
テーマ:「リハビリテーションと栄養」
内容
13:30~14:00 展示企業プレゼンテーション
14:00~14:05 世話人からのご挨拶
14:05~15:30 特別講演「リハビリテーションと栄養管理」
講師:若林 秀隆先生
(横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科)
15:30~15:45 休憩
15:45~17:15 シンポジウム「栄養なくしてリハビリなし!~それぞれの取り組み~」
司会:江頭文江先生 コメンテーター:若林秀隆先生
医療機関・介護施設・在宅それぞれの現場からの発表の後、みなさんで
ディスカッションしましょう!
参加費:1,000円
対 象:医療・介護従事者(職種は問いません)
定 員:80名予定
申込み:参加申込書に必要事項を記入の上、FAXまたはE-Mailにてお申し込みください。
地域栄養ケアPEACH 厚木 www.taberukenri.com/
FAX ⇒ 046-225-6840 別紙ご記入の上、お送り下さい
E-Mail ⇒ training@taberukenri.com 件名を「県央PDN セミナー」とし、必要事項(FAX 申込書参照)をご記入の上送信してください。
病因に基づいた低栄養状態の分類
今日は、Adult starvation and disease-related malnutrition: A proposal for etiology-based diagnosis in the clinical practice setting from the International Consensus Guideline Committeeという論文を紹介します。Gordon L. Jensen et al: Clinical Nutrition 29(2),151-153,2010です。
ASPENとESPENの両学会誌に掲載されているコンセンサスの論文です。低栄養状態の概念や定義が論文や人によって異なっている混乱を改善させるために、低栄養状態を病因によって、大きく3つに分類したものです。
①飢餓に関連した低栄養状態:When there is chronic starvation without inflammation, we propose the adoption of the term “starvation-related malnutrition”. Examples of this syndrome include medical conditions like anorexia nervosa.
これは炎症反応がない純粋な飢餓(エネルギー摂取量不足による栄養障害)で、神経性食思不振症や途上国での飢饉などです。①の場合、栄養サポートによって栄養状態は十分に改善します。
②慢性疾患に関連した低栄養状態:When inflammation is chronic and of mild to moderate degree, we propose the term “chronic disease-related malnutrition”. Examples of this syndrome include organ failure, pancreatic cancer, rheumatoid arthritis or sarcopenic obesity.
これは従来の悪液質に近い概念だと思います。ただ、sarcopenic obesityが入っているのが微妙です。臓器不全(心臓、肺、腎臓、肝臓の慢性臓器不全)、膵癌、関節リウマチは悪液質の原因疾患になります。一方、sarcopenic obesityは悪液質の結果、筋萎縮は認めたが脂肪は減少しなかった場合に生じるものです。②の場合、栄養サポートで一部は栄養悪化防止ができますが、原疾患の治療が重要です。
③急性疾患に関連した低栄養状態:When inflammation is acute and of severe degree, we propose the term “acute disease or injury-related malnutrition”. Examples of this syndrome include major infection, burns, trauma or closed head injury.
これは従来の侵襲に近い概念だと思います。③の場合も、栄養サポートで一部は栄養悪化防止ができますが、原疾患の治療が進まなければ栄養障害は悪化します。
リハ栄養的に言えば、①飢餓に関連した低栄養状態は、栄養改善すればそれとともに筋肉量・筋力が改善しやすいです。栄養悪化時は維持的なリハにとどめ、ある程度栄養改善が明らかになってから、積極的なリハを行います。
一方、②慢性疾患に関連した低栄養状態と③急性疾患に関連した低栄養状態は、原疾患の活動性が高い時は、栄養サポート単独やリハ単独での筋肉量・筋力の改善は困難で、原疾患の治療+リハ栄養が必要です。原疾患が改善、治癒したら、積極的にリハ栄養を進めます。
私は今まで筋萎縮の原因として、低栄養状態の用語を、飢餓・侵襲・悪液質に分類して使用してきました。今後、用語の整理、概念の統一が進み、①~③のように低栄養状態を表現する時代がくるかもしれません。
Background & aims
Multiple definitions for malnutrition syndromes are found in the literature resulting in confusion. Recent evidence suggests that varying degrees of acute or chronic inflammation are key contributing factors in the pathophysiology of malnutrition that is associated with disease or injury.
Methods
An International Guideline Committee was constituted to develop a consensus approach to defining malnutrition syndromes for adults in the clinical setting. Consensus was achieved through a series of meetings held at the ASPEN and ESPEN Congresses.
Results
It was agreed that an etiology-based approach that incorporates a current understanding of inflammatory response would be most appropriate. The Committee proposes the following nomenclature for nutrition diagnosis in adults in the clinical practice setting. “Starvation-related malnutrition”, when there is chronic starvation without inflammation, “chronic disease-related malnutrition”, when inflammation is chronic and of mild to moderate degree, and “acute disease or injury-related malnutrition”, when inflammation is acute and of severe degree.
Conclusions
This commentary is intended to present a simple etiology-based construct for the diagnosis of adult malnutrition in the clinical setting. Development of associated laboratory, functional, food intake, and body weight criteria and their application to routine clinical practice will require validation.
ASPENとESPENの両学会誌に掲載されているコンセンサスの論文です。低栄養状態の概念や定義が論文や人によって異なっている混乱を改善させるために、低栄養状態を病因によって、大きく3つに分類したものです。
①飢餓に関連した低栄養状態:When there is chronic starvation without inflammation, we propose the adoption of the term “starvation-related malnutrition”. Examples of this syndrome include medical conditions like anorexia nervosa.
これは炎症反応がない純粋な飢餓(エネルギー摂取量不足による栄養障害)で、神経性食思不振症や途上国での飢饉などです。①の場合、栄養サポートによって栄養状態は十分に改善します。
②慢性疾患に関連した低栄養状態:When inflammation is chronic and of mild to moderate degree, we propose the term “chronic disease-related malnutrition”. Examples of this syndrome include organ failure, pancreatic cancer, rheumatoid arthritis or sarcopenic obesity.
これは従来の悪液質に近い概念だと思います。ただ、sarcopenic obesityが入っているのが微妙です。臓器不全(心臓、肺、腎臓、肝臓の慢性臓器不全)、膵癌、関節リウマチは悪液質の原因疾患になります。一方、sarcopenic obesityは悪液質の結果、筋萎縮は認めたが脂肪は減少しなかった場合に生じるものです。②の場合、栄養サポートで一部は栄養悪化防止ができますが、原疾患の治療が重要です。
③急性疾患に関連した低栄養状態:When inflammation is acute and of severe degree, we propose the term “acute disease or injury-related malnutrition”. Examples of this syndrome include major infection, burns, trauma or closed head injury.
これは従来の侵襲に近い概念だと思います。③の場合も、栄養サポートで一部は栄養悪化防止ができますが、原疾患の治療が進まなければ栄養障害は悪化します。
リハ栄養的に言えば、①飢餓に関連した低栄養状態は、栄養改善すればそれとともに筋肉量・筋力が改善しやすいです。栄養悪化時は維持的なリハにとどめ、ある程度栄養改善が明らかになってから、積極的なリハを行います。
一方、②慢性疾患に関連した低栄養状態と③急性疾患に関連した低栄養状態は、原疾患の活動性が高い時は、栄養サポート単独やリハ単独での筋肉量・筋力の改善は困難で、原疾患の治療+リハ栄養が必要です。原疾患が改善、治癒したら、積極的にリハ栄養を進めます。
私は今まで筋萎縮の原因として、低栄養状態の用語を、飢餓・侵襲・悪液質に分類して使用してきました。今後、用語の整理、概念の統一が進み、①~③のように低栄養状態を表現する時代がくるかもしれません。
Background & aims
Multiple definitions for malnutrition syndromes are found in the literature resulting in confusion. Recent evidence suggests that varying degrees of acute or chronic inflammation are key contributing factors in the pathophysiology of malnutrition that is associated with disease or injury.
Methods
An International Guideline Committee was constituted to develop a consensus approach to defining malnutrition syndromes for adults in the clinical setting. Consensus was achieved through a series of meetings held at the ASPEN and ESPEN Congresses.
Results
It was agreed that an etiology-based approach that incorporates a current understanding of inflammatory response would be most appropriate. The Committee proposes the following nomenclature for nutrition diagnosis in adults in the clinical practice setting. “Starvation-related malnutrition”, when there is chronic starvation without inflammation, “chronic disease-related malnutrition”, when inflammation is chronic and of mild to moderate degree, and “acute disease or injury-related malnutrition”, when inflammation is acute and of severe degree.
Conclusions
This commentary is intended to present a simple etiology-based construct for the diagnosis of adult malnutrition in the clinical setting. Development of associated laboratory, functional, food intake, and body weight criteria and their application to routine clinical practice will require validation.
2010年4月15日木曜日
ファシリテーターの心構え
ファシリテーションとは、会議、ワークショップ、組織などを促進する、円滑にする、スムーズに運ばせるという意味です。リハの世界では麻痺の改善やより適切な発達を促通するという意味で使われますが、世間的には前者の意味が主流です。
最近、私のまわりではファシリテーションに関心があるという人が増えています。それだけチームや組織での活動・仕事が徐々に多くなってきたということでもあり、それらの活動・仕事が必ずしもうまくいっていないということでもあるのでしょう。
ファシリテーションというと、アイスブレイク、場の盛り上げ、時間管理、ブレインストーミング、合意形成など、どちらかというとスキル的なことに重きがおかれていることが多いように感じます。しかし、私はその前に心構えがより大切だと考えています。
ファシリテーターの心構えとして、私は以下の7つが大切だと思っています。
グループには無限の可能性がある。
答えはグループの中にある。
グループの答えを見つけるパートナーになる。
唯一絶対の正答はない。
グループメンバーを信じる。
グループメンバーを受け入れる。
グループメンバーに共感する。
ただグループやチームのメンバーとファシリテーターの間に、知識や技能面で大差がある場合には、ファシリテーションよりティーチングのほうが適切なことがあります。ですので、状況に応じてファシリテーションとティーチングを使い分けることが必要です。
しかし私の経験では、ファシリテーションのほうが適切な場面でティーチングを使ってしまうことが少なくありません。そうなるとグループやチームの満足度や成果は少ないものになってしまいます。
私たちは学生時代から医療人になってもティーチングで育ってきている部分が大きいので、どうしてもティーチングになりがちです。しかし、社会人の学習では、ポイントのみ簡単にティーチングを使うことはあっても、ベースはファシリテーションのほうが学習効率も満足度も高いと考えます。
実際、学会や研修会でも、学習効率の悪い大人数での一方的な講義より、学習効率の高い小グループでの学習・実習が徐々に増えてきています。神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会や神奈川NST合宿でも、なるべく小グループ学習を多くして、同時にファシリテーションも学べる機会としています。
コーチングとファシリテーションの違いのベースは、対象が個人かチーム・組織かの違いですので、心構えとしてはコーチングもファシリテーションも同じです。ティーチングとのバランスの重要性も同様です。
リハ栄養はチーム医療ですので、ファシリテーションが必須です。チーム医療がうまくいかない理由の1つに、ファシリテーター不在があります。ファシリテーションに興味のある方は、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会や神奈川NST合宿に参加してみてください。
最近、私のまわりではファシリテーションに関心があるという人が増えています。それだけチームや組織での活動・仕事が徐々に多くなってきたということでもあり、それらの活動・仕事が必ずしもうまくいっていないということでもあるのでしょう。
ファシリテーションというと、アイスブレイク、場の盛り上げ、時間管理、ブレインストーミング、合意形成など、どちらかというとスキル的なことに重きがおかれていることが多いように感じます。しかし、私はその前に心構えがより大切だと考えています。
ファシリテーターの心構えとして、私は以下の7つが大切だと思っています。
グループには無限の可能性がある。
答えはグループの中にある。
グループの答えを見つけるパートナーになる。
唯一絶対の正答はない。
グループメンバーを信じる。
グループメンバーを受け入れる。
グループメンバーに共感する。
ただグループやチームのメンバーとファシリテーターの間に、知識や技能面で大差がある場合には、ファシリテーションよりティーチングのほうが適切なことがあります。ですので、状況に応じてファシリテーションとティーチングを使い分けることが必要です。
しかし私の経験では、ファシリテーションのほうが適切な場面でティーチングを使ってしまうことが少なくありません。そうなるとグループやチームの満足度や成果は少ないものになってしまいます。
私たちは学生時代から医療人になってもティーチングで育ってきている部分が大きいので、どうしてもティーチングになりがちです。しかし、社会人の学習では、ポイントのみ簡単にティーチングを使うことはあっても、ベースはファシリテーションのほうが学習効率も満足度も高いと考えます。
実際、学会や研修会でも、学習効率の悪い大人数での一方的な講義より、学習効率の高い小グループでの学習・実習が徐々に増えてきています。神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会や神奈川NST合宿でも、なるべく小グループ学習を多くして、同時にファシリテーションも学べる機会としています。
コーチングとファシリテーションの違いのベースは、対象が個人かチーム・組織かの違いですので、心構えとしてはコーチングもファシリテーションも同じです。ティーチングとのバランスの重要性も同様です。
リハ栄養はチーム医療ですので、ファシリテーションが必須です。チーム医療がうまくいかない理由の1つに、ファシリテーター不在があります。ファシリテーションに興味のある方は、神奈川NST専門療法士連絡会のFD勉強会や神奈川NST合宿に参加してみてください。
2010年4月14日水曜日
医学的研究のデザイン第3版
今日はHulleyら著、木原雅子・木原正博訳、医学的研究のデザイン第3版―研究の質を高める疫学的アプローチ、MEDSIメディカル・サイエンス・インターナショナルを紹介します。
http://www.medsi.co.jp/books/products/detail.php?product_id=2897
私が昔(といっても4-5年前ですが)臨床研究デザインの学習を必死にしていた頃は第2版だったのですが、昨年第3版が出ました。
臨床研究の経験のない人がこの書籍を読んでもあまり理解できないかもしれません。以前紹介した書籍のほうが初心者にはお勧めです。しかし、きちんとした臨床研究を行いたいと考えている人には必須の教科書です。これより優れた教科書は私が知る限りありませんので、臨床研究の初級者以降に強くお勧めします。
ただ、臨床研究デザインの学習にせよ、実際の臨床研究の実施にせよ、きちんと学び実施するには、1人では難しいことが少なくありません。仲間を見つけて(これも容易ではないのですが)一緒に学習し研究することが望ましいです。
以前に比べれば臨床研究デザインを学習できる場は増えていますが、私が学んだ「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」はなくなってしまいました。透析医と整形外科医のデザイン塾は動いているようですが。
第2版と第3版で基本的に大きな違いはないのですが、いくつか新しい記載があります。トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に関しては、第3版で詳しく紹介されています(臨床研究のABCにも記載されています)。これは研究で得られた知見が、実地に応用できるかどうかを検討する研究であり、2つのタイプがあります。
・基礎研究で得られた知見を臨床研究に適用する(T1研究)
・臨床研究で得られた知見を社会(コミュニティ)における保健活動の改善に適用する(T2研究)
臨床現場で働く医療人には、T2研究のほうがより身近です。例えばランダム化比較試験で統計学的有意差が出ればエビデンスレベルとしては高いものになります。しかし、ランダム化比較試験の参加者は理想的な人であることが多く、医療人が臨床現場で接する患者さんとは異なることがあります。
いくらレベルの高いエビデンスがあっても、臨床現場で活用されなければ、活用されて実際に効果が出なければ、臨床上の意義は乏しいと言えます。研究者の出世と次の研究費の取得には意義が大きいかもしれませんが…。
リハ栄養の質の高いエビデンスを作るためには、この書籍を繰り返し熟読し理解することが必要と考えています。臨床研究にかなりの興味がある方はぜひ読んで学んでください。
目次
第Ⅰ部 基本的要素
1,さあ、始めよう:医学的研究の「解剖学」と「生理学」
2,研究テーマを考える
3,研究対象者を選ぶ:対象者の定義とサンプリングと集め方
4,測定方法を計画する:定度と真度
5,サンプルサイズを見積もるための準備:仮説と基本事項
6,サンプルサイズとパワーの推定:その応用と実例
第Ⅱ部 研究デザイン
7,コホート研究をデザインする
8,横断研究とケースコントロール研究をデザインする
9,観察的研究における因果推論を強めるために
10,盲検的ランダム化臨床試験をデザインする
11,その他の臨床試験のデザインと実施上の問題
12,医学検査に関する研究をデザインする
13,既存のデータを利用する
第Ⅲ部
14,倫理の問題
15,質問調査をデザインする
16,データ管理
17,研究の実施と質管理
18,コミュニティ研究と国際共同研究
19,研究申請書の作成と研究助成
演習問題
演習問題の解答
http://www.medsi.co.jp/books/products/detail.php?product_id=2897
私が昔(といっても4-5年前ですが)臨床研究デザインの学習を必死にしていた頃は第2版だったのですが、昨年第3版が出ました。
臨床研究の経験のない人がこの書籍を読んでもあまり理解できないかもしれません。以前紹介した書籍のほうが初心者にはお勧めです。しかし、きちんとした臨床研究を行いたいと考えている人には必須の教科書です。これより優れた教科書は私が知る限りありませんので、臨床研究の初級者以降に強くお勧めします。
ただ、臨床研究デザインの学習にせよ、実際の臨床研究の実施にせよ、きちんと学び実施するには、1人では難しいことが少なくありません。仲間を見つけて(これも容易ではないのですが)一緒に学習し研究することが望ましいです。
以前に比べれば臨床研究デザインを学習できる場は増えていますが、私が学んだ「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」はなくなってしまいました。透析医と整形外科医のデザイン塾は動いているようですが。
第2版と第3版で基本的に大きな違いはないのですが、いくつか新しい記載があります。トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に関しては、第3版で詳しく紹介されています(臨床研究のABCにも記載されています)。これは研究で得られた知見が、実地に応用できるかどうかを検討する研究であり、2つのタイプがあります。
・基礎研究で得られた知見を臨床研究に適用する(T1研究)
・臨床研究で得られた知見を社会(コミュニティ)における保健活動の改善に適用する(T2研究)
臨床現場で働く医療人には、T2研究のほうがより身近です。例えばランダム化比較試験で統計学的有意差が出ればエビデンスレベルとしては高いものになります。しかし、ランダム化比較試験の参加者は理想的な人であることが多く、医療人が臨床現場で接する患者さんとは異なることがあります。
いくらレベルの高いエビデンスがあっても、臨床現場で活用されなければ、活用されて実際に効果が出なければ、臨床上の意義は乏しいと言えます。研究者の出世と次の研究費の取得には意義が大きいかもしれませんが…。
リハ栄養の質の高いエビデンスを作るためには、この書籍を繰り返し熟読し理解することが必要と考えています。臨床研究にかなりの興味がある方はぜひ読んで学んでください。
目次
第Ⅰ部 基本的要素
1,さあ、始めよう:医学的研究の「解剖学」と「生理学」
2,研究テーマを考える
3,研究対象者を選ぶ:対象者の定義とサンプリングと集め方
4,測定方法を計画する:定度と真度
5,サンプルサイズを見積もるための準備:仮説と基本事項
6,サンプルサイズとパワーの推定:その応用と実例
第Ⅱ部 研究デザイン
7,コホート研究をデザインする
8,横断研究とケースコントロール研究をデザインする
9,観察的研究における因果推論を強めるために
10,盲検的ランダム化臨床試験をデザインする
11,その他の臨床試験のデザインと実施上の問題
12,医学検査に関する研究をデザインする
13,既存のデータを利用する
第Ⅲ部
14,倫理の問題
15,質問調査をデザインする
16,データ管理
17,研究の実施と質管理
18,コミュニティ研究と国際共同研究
19,研究申請書の作成と研究助成
演習問題
演習問題の解答
2010年4月13日火曜日
クリニコ臨床栄養セミナーin山形
6月19日に山形で「摂食・嚥下障害の栄養管理」をテーマにしたクリニコ臨床栄養セミナーが開催されます。私もリハ栄養の話をします。
http://www.peg.or.jp/news/information/yamagata/100619.pdf
日時:2010年6月19日(土)14:00 ~ 17:00
場所:食糧会館
〒990-0047 山形県山形市旅篭町三丁目1番4号
講演・講師
「栄養士としての摂食・嚥下ケア」
医療法人社団 横浜育明会 都筑シニアセンター 管理栄養士
麻植有希子先生
「摂食・嚥下障害のリハと栄養管理の実践」
横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科
若林秀隆先生
定員120名
参加費無料
◎参加者にはもれなく粗品進呈!! 楽しい抽選会も予定しております。
クリニコの担当者から参加申し込み用紙を入手してFAXで申し込むのがベストですが、当日参加も可能とのことです。お近くの方はぜひ参加ください。よろしくお願い申し上げます。
http://www.peg.or.jp/news/information/yamagata/100619.pdf
日時:2010年6月19日(土)14:00 ~ 17:00
場所:食糧会館
〒990-0047 山形県山形市旅篭町三丁目1番4号
講演・講師
「栄養士としての摂食・嚥下ケア」
医療法人社団 横浜育明会 都筑シニアセンター 管理栄養士
麻植有希子先生
「摂食・嚥下障害のリハと栄養管理の実践」
横浜市立大学附属市民総合医療センター リハビリテーション科
若林秀隆先生
定員120名
参加費無料
◎参加者にはもれなく粗品進呈!! 楽しい抽選会も予定しております。
クリニコの担当者から参加申し込み用紙を入手してFAXで申し込むのがベストですが、当日参加も可能とのことです。お近くの方はぜひ参加ください。よろしくお願い申し上げます。
第2回神奈川NST合宿
今度10月に神奈川NST専門療法士連絡会で、第2回神奈川NST合宿を開催します。4月14日までは東京、神奈川の参加申し込みを優先しますが、4月15日以降はその他の道府県の方も参加申し込み可能です。
対象は原則としてNST専門療法士ですが、PT、OT、ST、歯科衛生士で今年NST専門療法士を受験予定という方の参加も歓迎します。
臨床栄養だけでなくFaculty Development(問題発見・解決能力、生涯学習能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力)も学習できる機会ですので、興味がある方はぜひ申し込んでください。先着順ですので早めによろしくお願いいたします。
≪ 第2回神奈川NST合宿 ≫
【 日時 】
2010年10月16日(土)12:30から(受付12:00~)
~ 10月17日(日)13:40まで(受付 8:00~)
【 会場・宿泊先 】
ニューウェルシティ 湯河原
http://www.welcity-yugawara.co.jp/
【 申込資格 】
・NST専門療法士
(薬剤師・管理栄養士・看護師・臨床検査技師の方は、
資格取得者優先とさせて頂きます )
・NST専門療法士と同等の知識を有する医療従事者
(医師、歯科医師、PT、OT、ST、歯科衛生士 等)
【 申込方法 】
≪申し込み用紙≫
ダウンロード先http://sites.google.com/site/kanagawanst/
に全項目入力頂き、≪申し込み用紙≫添付の上、
下記アドレス宛にメールにてご連絡ください。
≪申込先≫
FD-front@yahoogroups.jp 第2回神奈川NST合宿窓口
会場の関係上、両日とも70名(宿泊者60名まで)となり次第、
締め切らせて頂きます。
原則、申込順の受付となります。
参加の可否は、お申し込み頂きました方全員に、
こちらからメールにてご連絡いたします。
また、参加者同士の交流を深めていただく事も本合宿の醍醐味
と考え企画させて頂いており、基本的には相部屋での対応と
させて頂くことになるかと思われます。ご了承くださいませ。
【 プログラム 】
《 1日目プログラム(10月16日) 》
12:00 受付開始
12:30 開会挨拶 オリエンテーション
12:40 ミニレクチャー 「 アサーション・コーチング・ティーチング 」
関東中央病院 田中麗先生
13:15 自己紹介
14:00 特別講演 「なぜ我々はチーム医療に邁進するのか」
一般社団法人 チーム医療フォーラム代表 理事
医療法人財団松圓会 東葛クリニック病院 副院長
秋山和宏先生
( 株式会社クリニコ提供 )
15:15 症例検討のためのミニレクチャー
昭和大学藤が丘病院 八木仁史先生
15:45 症例検討 グループディスカッション
症例【 高エネルギー外傷後の多臓器不全 】
昭和大学藤が丘病院 佐藤千秋先生
17:15 症例検討:発表、全体討論、解説、振り返り
17:50 株式会社クリニコ 情報提供(10分)
18:00 終了の挨拶
19:30 懇親会
《 2日目プログラム(10月17日) 》
8:00 受付開始
8:30 2日目 オリエンテーション
8:35 自己紹介
8:45 症例検討のためのミニレクチャー
横浜市立大学附属病院 土屋佳世先生
9:15 症例検討 グループディスカッション
症例【 経口摂取困難と診断された重症心不全患者 】
横浜市立大学附属病院 雁部弘美先生
10:45 症例検討:発表、全体討論、解説、振り返り
11:20 ネスレニュートリション株式会社 情報提供
11:30 ミニレクチャー 「文献検索について」
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
林 宏行先生
12:15 特別講演
「癌患者の栄養管理」
山中温泉医療センター センター長
大村健二先生
( ネスレニュートリション株式会社 提供 )
13:25 修了証・参加証授与
13:30 閉会の辞
お問い合わせ先
FD-front@yahoogroups.jp 第2回神奈川NST合宿窓口
対象は原則としてNST専門療法士ですが、PT、OT、ST、歯科衛生士で今年NST専門療法士を受験予定という方の参加も歓迎します。
臨床栄養だけでなくFaculty Development(問題発見・解決能力、生涯学習能力、マネジメント能力、コミュニケーション能力)も学習できる機会ですので、興味がある方はぜひ申し込んでください。先着順ですので早めによろしくお願いいたします。
≪ 第2回神奈川NST合宿 ≫
【 日時 】
2010年10月16日(土)12:30から(受付12:00~)
~ 10月17日(日)13:40まで(受付 8:00~)
【 会場・宿泊先 】
ニューウェルシティ 湯河原
http://www.welcity-yugawara.co.jp/
【 申込資格 】
・NST専門療法士
(薬剤師・管理栄養士・看護師・臨床検査技師の方は、
資格取得者優先とさせて頂きます )
・NST専門療法士と同等の知識を有する医療従事者
(医師、歯科医師、PT、OT、ST、歯科衛生士 等)
【 申込方法 】
≪申し込み用紙≫
ダウンロード先http://sites.google.com/site/kanagawanst/
に全項目入力頂き、≪申し込み用紙≫添付の上、
下記アドレス宛にメールにてご連絡ください。
≪申込先≫
FD-front@yahoogroups.jp 第2回神奈川NST合宿窓口
会場の関係上、両日とも70名(宿泊者60名まで)となり次第、
締め切らせて頂きます。
原則、申込順の受付となります。
参加の可否は、お申し込み頂きました方全員に、
こちらからメールにてご連絡いたします。
また、参加者同士の交流を深めていただく事も本合宿の醍醐味
と考え企画させて頂いており、基本的には相部屋での対応と
させて頂くことになるかと思われます。ご了承くださいませ。
【 プログラム 】
《 1日目プログラム(10月16日) 》
12:00 受付開始
12:30 開会挨拶 オリエンテーション
12:40 ミニレクチャー 「 アサーション・コーチング・ティーチング 」
関東中央病院 田中麗先生
13:15 自己紹介
14:00 特別講演 「なぜ我々はチーム医療に邁進するのか」
一般社団法人 チーム医療フォーラム代表 理事
医療法人財団松圓会 東葛クリニック病院 副院長
秋山和宏先生
( 株式会社クリニコ提供 )
15:15 症例検討のためのミニレクチャー
昭和大学藤が丘病院 八木仁史先生
15:45 症例検討 グループディスカッション
症例【 高エネルギー外傷後の多臓器不全 】
昭和大学藤が丘病院 佐藤千秋先生
17:15 症例検討:発表、全体討論、解説、振り返り
17:50 株式会社クリニコ 情報提供(10分)
18:00 終了の挨拶
19:30 懇親会
《 2日目プログラム(10月17日) 》
8:00 受付開始
8:30 2日目 オリエンテーション
8:35 自己紹介
8:45 症例検討のためのミニレクチャー
横浜市立大学附属病院 土屋佳世先生
9:15 症例検討 グループディスカッション
症例【 経口摂取困難と診断された重症心不全患者 】
横浜市立大学附属病院 雁部弘美先生
10:45 症例検討:発表、全体討論、解説、振り返り
11:20 ネスレニュートリション株式会社 情報提供
11:30 ミニレクチャー 「文献検索について」
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院
林 宏行先生
12:15 特別講演
「癌患者の栄養管理」
山中温泉医療センター センター長
大村健二先生
( ネスレニュートリション株式会社 提供 )
13:25 修了証・参加証授与
13:30 閉会の辞
お問い合わせ先
FD-front@yahoogroups.jp 第2回神奈川NST合宿窓口
2010年4月9日金曜日
臨床研究のABC
今日は、名郷直樹著、臨床研究のABC、メディカルサイエンス社を紹介します。
http://medcs.jp/?pid=14652443
名郷先生はご存知の方も多いかと思いますが、EBM・EBCPを日本に広めた1人で、これらに関する書籍が何冊もあります。この書籍ではEBCPの実践からいかに臨床研究につなげるかという視点で執筆されています。ですので、EBCPの基本的な知識がないと、やや読みにくいかもしれません。
特徴としては、臨床研究の最初のステップである「リサーチクエスチョンを作る」項目を、あえて一番最後にしていることです。リサーチクエスチョンを立てて適切な臨床研究を行うには、それ以前にEBCPや論文の書き方(研究デザインの学習の意味で)といった土台となる知識が必要だという考えです。
リサーチクエスチョンや研究デザインを熟慮しないでデータを収集してしまい、それをどうにか形にしようとあがいているものを、「耐震偽装論文」と表現しています。世の中には耐震偽装論文があふれているそうです。私も同感です。自分でリハ栄養の耐震偽装論文を執筆しないようにしたいものです…。
臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)も納得できるものです。先人の研究(他人の経験や歴史)から学べなければ、いい臨床も臨床研究もできるわけがありません。自分の経験から振り返って学べなければ(経験学習モデル)、いつまでたってもヤブです。日頃から好奇心や疑問をもって観察しなければ、研究したいと思うネタに気付くこともありません。
ただ、臨床研究のABCという割にはやや難しい内容で、初心者向けではないなあと私は感じました。多少の経験がある初級者から中級者が読むほうが、学びが多いかもしれません。
臨床研究の初心者には「福原俊一著、リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト) 」をお勧めします。こちらのほうがわかりやすいと思います。
目次
第1章 研究を始める前の前に
第2章 EBMから臨床研究へ EBMの実践と臨床研究を対応させて
第3章 臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)
第4章 先人の研究を振り返る 論文のイントロダクションを読む/研究のための情報検索/MEDLINEの検索ノウハウ/検索された論文を整理する/横断研究と症例対照研究/コホート研究/生態学的研究/介入研究/メタ分析/メタ分析の結果の読み/UKPDS33を例に:論文のイントロダクションを読む
第5章 経験と観察を振り返る カルテの情報を臨床研究に生かす/日常臨床における観察/厚生労働省統計表データベースを使ってみる
第6章 臨床研究のバイアス
第7章 論文の書き方から学ぶ CONSORT声明 治療の論文の書き方ガイド/CONSORT声明 研究デザイン/CONSORT声明 結果、考察/STROBE声明 コホート研究1/STROBE声明 コホート研究2/STROBE声明 症例対照研究1/STROBE声明 症例対照研究2/STARD声明 診断についての臨床研究を概観する/STARD声明 診断に関する臨床研究の主なバイアス/STARD声明 診断についての臨床研究論文を検討する
第8章 さまざまな臨床研究 Clinical Prediction Guide:臨床予測指標/質的研究/T2リサーチ
第9章 クリニカルクエスチョン リサーチクエッションを立てる
http://medcs.jp/?pid=14652443
名郷先生はご存知の方も多いかと思いますが、EBM・EBCPを日本に広めた1人で、これらに関する書籍が何冊もあります。この書籍ではEBCPの実践からいかに臨床研究につなげるかという視点で執筆されています。ですので、EBCPの基本的な知識がないと、やや読みにくいかもしれません。
特徴としては、臨床研究の最初のステップである「リサーチクエスチョンを作る」項目を、あえて一番最後にしていることです。リサーチクエスチョンを立てて適切な臨床研究を行うには、それ以前にEBCPや論文の書き方(研究デザインの学習の意味で)といった土台となる知識が必要だという考えです。
リサーチクエスチョンや研究デザインを熟慮しないでデータを収集してしまい、それをどうにか形にしようとあがいているものを、「耐震偽装論文」と表現しています。世の中には耐震偽装論文があふれているそうです。私も同感です。自分でリハ栄養の耐震偽装論文を執筆しないようにしたいものです…。
臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)も納得できるものです。先人の研究(他人の経験や歴史)から学べなければ、いい臨床も臨床研究もできるわけがありません。自分の経験から振り返って学べなければ(経験学習モデル)、いつまでたってもヤブです。日頃から好奇心や疑問をもって観察しなければ、研究したいと思うネタに気付くこともありません。
ただ、臨床研究のABCという割にはやや難しい内容で、初心者向けではないなあと私は感じました。多少の経験がある初級者から中級者が読むほうが、学びが多いかもしれません。
臨床研究の初心者には「福原俊一著、リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト) 」をお勧めします。こちらのほうがわかりやすいと思います。
目次
第1章 研究を始める前の前に
第2章 EBMから臨床研究へ EBMの実践と臨床研究を対応させて
第3章 臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)
第4章 先人の研究を振り返る 論文のイントロダクションを読む/研究のための情報検索/MEDLINEの検索ノウハウ/検索された論文を整理する/横断研究と症例対照研究/コホート研究/生態学的研究/介入研究/メタ分析/メタ分析の結果の読み/UKPDS33を例に:論文のイントロダクションを読む
第5章 経験と観察を振り返る カルテの情報を臨床研究に生かす/日常臨床における観察/厚生労働省統計表データベースを使ってみる
第6章 臨床研究のバイアス
第7章 論文の書き方から学ぶ CONSORT声明 治療の論文の書き方ガイド/CONSORT声明 研究デザイン/CONSORT声明 結果、考察/STROBE声明 コホート研究1/STROBE声明 コホート研究2/STROBE声明 症例対照研究1/STROBE声明 症例対照研究2/STARD声明 診断についての臨床研究を概観する/STARD声明 診断に関する臨床研究の主なバイアス/STARD声明 診断についての臨床研究論文を検討する
第8章 さまざまな臨床研究 Clinical Prediction Guide:臨床予測指標/質的研究/T2リサーチ
第9章 クリニカルクエスチョン リサーチクエッションを立てる
2010年4月8日木曜日
MNA®-SFとリハ栄養
MNA®-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form、簡易栄養状態評価表)は、従来のMNA®と比較して6項目しかなく、PT・OT・STでも容易に行えます。また、信頼性、妥当性が検証されている数少ない栄養評価方法でもあり、高齢者におけるリハ栄養管理での使用を推奨しています。実際のMNA®-SFは下記のHPから入手できます。
http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf
スクリーニング
A 過去3 ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、そしゃく・嚥下困難などで食事量が減少しましたか?
0 = 著しい食事量の減少
1 = 中等度の食事量の減少
2 = 食事量の減少なし
B 過去3 ヶ月間で体重の減少がありましたか?
0 = 3 kg 以上の減少
1 = わからない
2 = 1~3 kg の減少
3 = 体重減少なし
C 自力で歩けますか?
0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用
1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない
2 = 自由に歩いて外出できる
D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
0 = はい 2 = いいえ
E 神経・精神的問題の有無
0 = 強度認知症またはうつ状態
1 = 中程度の認知症
2 = 精神的問題なし
F1 BMI (kg/m2):体重(kg)÷身長(m)2
0 = BMI が19 未満
1 = BMI が19 以上、21 未満
2 = BMI が21 以上、23 未満
3 = BMI が23 以上
BMIが測定できない場合、
F2 ふくらはぎの周囲長(cm) : CC
0 = 31cm未満
3 = 31cm以上
スクリーニング値
(最大 : 14ポイント)
12-14 ポイント: 栄養状態良好
8-11 ポイント: 低栄養のおそれあり (At risk)
0-7 ポイント: 低栄養
今頃になって気付いたのですが、急性期と回復期の入院患者のリハ栄養と密接に関連しているのは、「C 自力で歩けますか?」と「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の2項目です。
急性期と回復期の入院リハでは、主な原因疾患は脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などになると思います。これらの疾患で入院しリハを要する場合、「C 自力で歩けますか?」の回答が「2 =自由に歩いて外出できる」となることはほとんどありません。「0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用」か「1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない」でしょう。
また、「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の回答が「2 = いいえ」となることもありません。脳卒中、大腿骨頸部骨折、誤嚥性肺炎は急性疾患ですし、廃用症候群は何らかの急性疾患による治療上の安静によるものがほとんどです。
以上より、急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者の大半は、この時点で3点減点となります。つまり、他の項目が満点の場合でも最高11点であり、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養という結果になります。
リハ栄養的に考えると、脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などで急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者は全員、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養ということです。要するに全員、リハ栄養アセスメントが必要で、低栄養の場合にはリハ栄養管理が必要となります。
実際にはこれら以外の疾患・障害で入院リハを行っている患者もいますが、入院リハを要するすべての高齢者に低栄養を疑うべきといっても過言ではないと思います。「栄養ケアなくしてリハなし」ということを、MNA®-SFで再認識しました。
http://www.mna-elderly.com/forms/mini/mna_mini_japanese.pdf
スクリーニング
A 過去3 ヶ月間で食欲不振、消化器系の問題、そしゃく・嚥下困難などで食事量が減少しましたか?
0 = 著しい食事量の減少
1 = 中等度の食事量の減少
2 = 食事量の減少なし
B 過去3 ヶ月間で体重の減少がありましたか?
0 = 3 kg 以上の減少
1 = わからない
2 = 1~3 kg の減少
3 = 体重減少なし
C 自力で歩けますか?
0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用
1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない
2 = 自由に歩いて外出できる
D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?
0 = はい 2 = いいえ
E 神経・精神的問題の有無
0 = 強度認知症またはうつ状態
1 = 中程度の認知症
2 = 精神的問題なし
F1 BMI (kg/m2):体重(kg)÷身長(m)2
0 = BMI が19 未満
1 = BMI が19 以上、21 未満
2 = BMI が21 以上、23 未満
3 = BMI が23 以上
BMIが測定できない場合、
F2 ふくらはぎの周囲長(cm) : CC
0 = 31cm未満
3 = 31cm以上
スクリーニング値
(最大 : 14ポイント)
12-14 ポイント: 栄養状態良好
8-11 ポイント: 低栄養のおそれあり (At risk)
0-7 ポイント: 低栄養
今頃になって気付いたのですが、急性期と回復期の入院患者のリハ栄養と密接に関連しているのは、「C 自力で歩けますか?」と「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の2項目です。
急性期と回復期の入院リハでは、主な原因疾患は脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などになると思います。これらの疾患で入院しリハを要する場合、「C 自力で歩けますか?」の回答が「2 =自由に歩いて外出できる」となることはほとんどありません。「0 = 寝たきりまたは車椅子を常時使用」か「1 = ベッドや車椅子を離れられるが、歩いて外出はできない」でしょう。
また、「D 過去3 ヶ月間で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?」の回答が「2 = いいえ」となることもありません。脳卒中、大腿骨頸部骨折、誤嚥性肺炎は急性疾患ですし、廃用症候群は何らかの急性疾患による治療上の安静によるものがほとんどです。
以上より、急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者の大半は、この時点で3点減点となります。つまり、他の項目が満点の場合でも最高11点であり、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養という結果になります。
リハ栄養的に考えると、脳卒中、大腿骨頸部骨折、廃用症候群、誤嚥性肺炎などで急性期と回復期の入院リハを要する高齢患者は全員、低栄養のおそれあり(At risk)もしくは低栄養ということです。要するに全員、リハ栄養アセスメントが必要で、低栄養の場合にはリハ栄養管理が必要となります。
実際にはこれら以外の疾患・障害で入院リハを行っている患者もいますが、入院リハを要するすべての高齢者に低栄養を疑うべきといっても過言ではないと思います。「栄養ケアなくしてリハなし」ということを、MNA®-SFで再認識しました。
2010年4月7日水曜日
ビタミンDに関連した身体機能変化:系統的レビュー
ビタミンD投与による骨折予防効果として、骨量増加以外に、筋力改善やバランス改善が得られるという報告が出ています。もし本当に有効でしたら、リハ栄養的には高齢者(特にサルコペニア)ではルーチンに投与したいところですが…。以下が現時点でのエビデンスです。
抄録一部訳:
目的:ビタミンD低値とビタミンD投与が高齢者の筋肉、バランス、歩行機能に影響するかを調べる。
方法:2004年1月から2008年11月までの英語・仏語論文を検索。
結果:16論文についてレビューした。観察研究8つ、介入(ビタミンD投与)研究8つ。多くの研究は地域の高齢女性が対象。5つの観察研究は統計学的に有意な関連を認めたが、3つの観察研究では認めなかった。バランスに関しては5つの介入研究のうち4つ、歩行に関しては3つの介入研究のうち2つがそれぞれ無効であった。筋力に関しては7つの介入研究のうち4つで有効であった。半分の研究ではビタミンD投与と立ち座りテストの改善の間に有意な関連を認めなかった。
結論:ビタミンと身体機能の関連は、物議をかもしている(controversial)。観察研究と介入研究で結果が異なっており、ビタミンD値やビタミンD投与と身体機能の関連は、現時点ではまだ理解が不十分といえる。
私の考え:骨粗鬆症の患者にはビタミンD投与は一応有効(副作用の高カルシウム血症に要注意)とされているが、サルコペニア(Age-related sarcopenia)への有効性は不明である。現時点では高齢者(特にサルコペニア)にルーチンにビタミンD値を投与する必要性はない。今後新たな研究の積み重ねでリハ栄養のエビデンスが変わる可能性はある。
Vitamin D-related changes in physical performance: a systematic review.
Annweiler C, Schott AM, Berrut G, Fantino B, Beauchet O.
J Nutr Health Aging. 2009 Dec;13(10):893-8.
Abstract
OBJECTIVE: The objective of this study was to systematically review all the published articles examining the effects of low serum vitamin D concentration and vitamin D supplementation on muscle, balance and gait performance among people aged 65 and older.
METHODS: An English and French Medline search ranging from January 2004 to November 2008 indexed under the Medical Subject Heading (MeSH) terms "aged OR aged, 80 and over" AND "Vitamin D OR Vitamin D Deficiency" combined with the terms "Gait" OR "Gait Apraxia" OR "Gait Disorders, Neurologic" OR "Walking" OR "Mobility Limitation" OR "Polyneuropathy" OR "Proprioception" OR "Ataxia" OR "Accidental Falls" was performed.
RESULTS: Of the 102 selected studies, 16 met the selection criteria and were included in the final analysis. There were 8 observational studies and 8 interventional studies. The number of participants ranged from 24 to 33067. A majority of studies examined community-dwelling older women. Five observational studies showed a significant positive association, whereas three studies did not. Four of the 5 studies and two of the 3 studies which tested the vitamin D supplementation effect, respectively on balance and gait, showed no significant effect. Four studies showed a significant effect on muscle strength, while this effect was not observed in three others studies. In addition, there was no significant association between vitamin D supplementation and an improvement of the sit-to-stand test results in 50% of the studies.
CONCLUSIONS: The findings show that the association between vitamin D and physical performance remains controversial. Observational studies and clinical trials yielded divergent results, which highlights the complex and to date still poorly understood association between serum vitamin D concentration or vitamin D supplementation and physical performance.
抄録一部訳:
目的:ビタミンD低値とビタミンD投与が高齢者の筋肉、バランス、歩行機能に影響するかを調べる。
方法:2004年1月から2008年11月までの英語・仏語論文を検索。
結果:16論文についてレビューした。観察研究8つ、介入(ビタミンD投与)研究8つ。多くの研究は地域の高齢女性が対象。5つの観察研究は統計学的に有意な関連を認めたが、3つの観察研究では認めなかった。バランスに関しては5つの介入研究のうち4つ、歩行に関しては3つの介入研究のうち2つがそれぞれ無効であった。筋力に関しては7つの介入研究のうち4つで有効であった。半分の研究ではビタミンD投与と立ち座りテストの改善の間に有意な関連を認めなかった。
結論:ビタミンと身体機能の関連は、物議をかもしている(controversial)。観察研究と介入研究で結果が異なっており、ビタミンD値やビタミンD投与と身体機能の関連は、現時点ではまだ理解が不十分といえる。
私の考え:骨粗鬆症の患者にはビタミンD投与は一応有効(副作用の高カルシウム血症に要注意)とされているが、サルコペニア(Age-related sarcopenia)への有効性は不明である。現時点では高齢者(特にサルコペニア)にルーチンにビタミンD値を投与する必要性はない。今後新たな研究の積み重ねでリハ栄養のエビデンスが変わる可能性はある。
Vitamin D-related changes in physical performance: a systematic review.
Annweiler C, Schott AM, Berrut G, Fantino B, Beauchet O.
J Nutr Health Aging. 2009 Dec;13(10):893-8.
Abstract
OBJECTIVE: The objective of this study was to systematically review all the published articles examining the effects of low serum vitamin D concentration and vitamin D supplementation on muscle, balance and gait performance among people aged 65 and older.
METHODS: An English and French Medline search ranging from January 2004 to November 2008 indexed under the Medical Subject Heading (MeSH) terms "aged OR aged, 80 and over" AND "Vitamin D OR Vitamin D Deficiency" combined with the terms "Gait" OR "Gait Apraxia" OR "Gait Disorders, Neurologic" OR "Walking" OR "Mobility Limitation" OR "Polyneuropathy" OR "Proprioception" OR "Ataxia" OR "Accidental Falls" was performed.
RESULTS: Of the 102 selected studies, 16 met the selection criteria and were included in the final analysis. There were 8 observational studies and 8 interventional studies. The number of participants ranged from 24 to 33067. A majority of studies examined community-dwelling older women. Five observational studies showed a significant positive association, whereas three studies did not. Four of the 5 studies and two of the 3 studies which tested the vitamin D supplementation effect, respectively on balance and gait, showed no significant effect. Four studies showed a significant effect on muscle strength, while this effect was not observed in three others studies. In addition, there was no significant association between vitamin D supplementation and an improvement of the sit-to-stand test results in 50% of the studies.
CONCLUSIONS: The findings show that the association between vitamin D and physical performance remains controversial. Observational studies and clinical trials yielded divergent results, which highlights the complex and to date still poorly understood association between serum vitamin D concentration or vitamin D supplementation and physical performance.
2010年4月1日木曜日
医療系のためのやさしい統計学入門
今日は、中村好一編集、医療系のためのやさしい統計学入門、診断と治療社を紹介します。
http://www.shindan.co.jp/shindan/shinkan/shinkanT.php?id=863
統計学自体が決して易しい学問ではないので、どんなにやさしい書籍であってもすぐに理解して臨床研究やEBCPに活用できるようになるという訳にはいきません。やはり一定の努力や苦労が必要です。
この本は統計ばかり記載されている殺伐とした書籍ではなく、臨床研究やEBCPとつなげながら記載されていて、統計の書籍の中ではわかりやすいと思います。読む気になる書籍です。ただ、この書籍の内容のすべてを理解したとはいえませんが…。
研究結果の公表の仕方もコンパクトにまとめられているので、学会発表の経験が少ない方に参考になると思います。ただ、あくまで入門書で多くの内容がコンパクトに詰まっていますので、詳細を知りたいときは別の書籍で学習することが必要です。一定の経験がある方には、よりレベルの高い書籍を推奨します。
データを収集してから統計の相談をされても基本的に手遅れで、研究プロトコール作成時に相談することは、臨床研究の鉄則です。統計学が得意な人は少ないと思いますが、苦手だからこそ後回しにするのではなく、先に相談しておくことが大切です。
この本のⅢ章はすぐに理解できなくても、他の章(特にⅡ章の推測統計学の基本的な考え方、母集団と標本の関係、推定と検定の違い)を理解できると、物の考え方が広がります。私は推測統計学の基本を理解できるまで数年かかりましたが…。リハ栄養の研究を進めるのに必要な考え方です。
目次
I章 研究を始める前に知っておきたいこと
1.研究のアウトライン 山縣然太朗
A はじめに / B EBM / C 因果関係 / D 根拠のレベル
2.情報収集(文献検索) 小笹晃太郎
A 情報収集の目的 / B 情報源 / C 2次資料の利用(キーワードと検索式) / D 文献の収集
3.研究における倫理的配慮 尾島俊之
A なぜ倫理的配慮が必要なのでしょうか / B 個人情報保護法と疫学研究倫理指針
/ C 説明と同意 / D 倫理審査 / E 個人情報の安全管理
Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう ~Excelでできることを中心に~
1.代表値,ばらつき 定金敦子,中村好一
A データの種類 / B 質的データの記述統計 / C 数量データの記述統計
2.記述統計としての相関係数,1次回帰,オッズ比 栗山進一
A 散布図 / B 相関係数 / C 1次回帰 / D オッズ比
3.統計学的推論(推定と検定) 横川博英
A 推定と検定 / B 統計学的推定 / C 統計学的検定
4.平均の差(推定と検定) 鈴木孝太
A 平均の差における推定 / B 平均の差における検定
5.割合の差(推定と検定) 早坂信哉,尾島俊之
A 1つの母集団の割合 / B 2群の割合の差
6.相関係数と1次回帰係数(推定と検定) 西 信雄
A 相関係数 / B 1次回帰係数 / C これだけはやってはいけない
Ⅲ章 使えなくても理解できるようにしておこう ~生兵法はケガのもと,専門家と組んで解析したい~
1.交絡因子 藤野善久
A 交絡とは / B 交絡因子の制御方法 / C 仮説との対応
2.層化分析(マンテル・ヘンツェル法) 定金敦子,中村好一
A 層化とは / B マンテル・ヘンツェル法
3.ロジスティック解析 栗山進一
A ロジスティック解析の基礎概念 / B 前向きコホート研究・臨床研究での使用
/ C 症例対照研究・横断研究での使用
4.生存分析 横川博英
A カプラン・マイヤー法 / B 2群の生存確率関数の差の検定 C コックス回帰分析
5.分散分析,共分散分析 鈴木孝太
A 分散分析 / B 共分散分析
6.因子分析 尾島俊之
A 主成分分析 / B 因子分析 / C 主成分分析と因子分析の違い
7.一致性の検討(カッパ統計量) 西 信雄
A カッパ統計量の求め方 / B 重みづけカッパ統計量の求め方
8.ノンパラメトリック解析 松田晋哉
A マン・ホイットニーのU検定(独立2群間の検定)
/ B ウィルコクソンの符号つき順位和検定(対応のある2群間の検定)
/ C クラスカル・ワリス検定(独立多群間の検定) / D ノンパラメトリック解析を行う際の留意点
Ⅳ章 研究結果を公表してみよう
1.図表の描き方(グラフ,ヒストグラム,チャート) 安村誠司,山崎幸子
A 図と表 / B 図 / C 表
2.学会発表(演題申し込みから発表まで) 辻 一郎
A どの学会で発表するか / B 演題名を決める / C 共同演者を決める /
D ポスター発表にするか口演発表にするか / E 抄録の作成 / F 発表資料の作成 /
G 予行演習 / H 発表そして質疑応答 / I 学会発表後に行うべきこと
3.論文投稿(執筆から校正まで) 中村好一
A 論文の主要部分の構成 / B 論文のその他の部分 / C 論文の順序 /
D 著者を誰にするか / E 投稿する雑誌をどれにするか / F 論文完成から投稿まで /
G 投稿 / H 編集委員会とのやりとり / I 論文採用後の対応 / J 論文刊行後
Ⅴ章 専門家との共同研究
専門家と共同研究を行うにはどうすればよいか 松田晋哉
A 研究計画の段階から相談する / B きちんとした仮説をもつ / C 問題の構造を図示する /
D 研究に正直であること / E データの質に責任をもとう / F 協力してくれた専門家には敬意を払う / G どこに行けば共同研究をしてくれる統計学専門家・疫学専門家に出会えるのか
http://www.shindan.co.jp/shindan/shinkan/shinkanT.php?id=863
統計学自体が決して易しい学問ではないので、どんなにやさしい書籍であってもすぐに理解して臨床研究やEBCPに活用できるようになるという訳にはいきません。やはり一定の努力や苦労が必要です。
この本は統計ばかり記載されている殺伐とした書籍ではなく、臨床研究やEBCPとつなげながら記載されていて、統計の書籍の中ではわかりやすいと思います。読む気になる書籍です。ただ、この書籍の内容のすべてを理解したとはいえませんが…。
研究結果の公表の仕方もコンパクトにまとめられているので、学会発表の経験が少ない方に参考になると思います。ただ、あくまで入門書で多くの内容がコンパクトに詰まっていますので、詳細を知りたいときは別の書籍で学習することが必要です。一定の経験がある方には、よりレベルの高い書籍を推奨します。
データを収集してから統計の相談をされても基本的に手遅れで、研究プロトコール作成時に相談することは、臨床研究の鉄則です。統計学が得意な人は少ないと思いますが、苦手だからこそ後回しにするのではなく、先に相談しておくことが大切です。
この本のⅢ章はすぐに理解できなくても、他の章(特にⅡ章の推測統計学の基本的な考え方、母集団と標本の関係、推定と検定の違い)を理解できると、物の考え方が広がります。私は推測統計学の基本を理解できるまで数年かかりましたが…。リハ栄養の研究を進めるのに必要な考え方です。
目次
I章 研究を始める前に知っておきたいこと
1.研究のアウトライン 山縣然太朗
A はじめに / B EBM / C 因果関係 / D 根拠のレベル
2.情報収集(文献検索) 小笹晃太郎
A 情報収集の目的 / B 情報源 / C 2次資料の利用(キーワードと検索式) / D 文献の収集
3.研究における倫理的配慮 尾島俊之
A なぜ倫理的配慮が必要なのでしょうか / B 個人情報保護法と疫学研究倫理指針
/ C 説明と同意 / D 倫理審査 / E 個人情報の安全管理
Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう ~Excelでできることを中心に~
1.代表値,ばらつき 定金敦子,中村好一
A データの種類 / B 質的データの記述統計 / C 数量データの記述統計
2.記述統計としての相関係数,1次回帰,オッズ比 栗山進一
A 散布図 / B 相関係数 / C 1次回帰 / D オッズ比
3.統計学的推論(推定と検定) 横川博英
A 推定と検定 / B 統計学的推定 / C 統計学的検定
4.平均の差(推定と検定) 鈴木孝太
A 平均の差における推定 / B 平均の差における検定
5.割合の差(推定と検定) 早坂信哉,尾島俊之
A 1つの母集団の割合 / B 2群の割合の差
6.相関係数と1次回帰係数(推定と検定) 西 信雄
A 相関係数 / B 1次回帰係数 / C これだけはやってはいけない
Ⅲ章 使えなくても理解できるようにしておこう ~生兵法はケガのもと,専門家と組んで解析したい~
1.交絡因子 藤野善久
A 交絡とは / B 交絡因子の制御方法 / C 仮説との対応
2.層化分析(マンテル・ヘンツェル法) 定金敦子,中村好一
A 層化とは / B マンテル・ヘンツェル法
3.ロジスティック解析 栗山進一
A ロジスティック解析の基礎概念 / B 前向きコホート研究・臨床研究での使用
/ C 症例対照研究・横断研究での使用
4.生存分析 横川博英
A カプラン・マイヤー法 / B 2群の生存確率関数の差の検定 C コックス回帰分析
5.分散分析,共分散分析 鈴木孝太
A 分散分析 / B 共分散分析
6.因子分析 尾島俊之
A 主成分分析 / B 因子分析 / C 主成分分析と因子分析の違い
7.一致性の検討(カッパ統計量) 西 信雄
A カッパ統計量の求め方 / B 重みづけカッパ統計量の求め方
8.ノンパラメトリック解析 松田晋哉
A マン・ホイットニーのU検定(独立2群間の検定)
/ B ウィルコクソンの符号つき順位和検定(対応のある2群間の検定)
/ C クラスカル・ワリス検定(独立多群間の検定) / D ノンパラメトリック解析を行う際の留意点
Ⅳ章 研究結果を公表してみよう
1.図表の描き方(グラフ,ヒストグラム,チャート) 安村誠司,山崎幸子
A 図と表 / B 図 / C 表
2.学会発表(演題申し込みから発表まで) 辻 一郎
A どの学会で発表するか / B 演題名を決める / C 共同演者を決める /
D ポスター発表にするか口演発表にするか / E 抄録の作成 / F 発表資料の作成 /
G 予行演習 / H 発表そして質疑応答 / I 学会発表後に行うべきこと
3.論文投稿(執筆から校正まで) 中村好一
A 論文の主要部分の構成 / B 論文のその他の部分 / C 論文の順序 /
D 著者を誰にするか / E 投稿する雑誌をどれにするか / F 論文完成から投稿まで /
G 投稿 / H 編集委員会とのやりとり / I 論文採用後の対応 / J 論文刊行後
Ⅴ章 専門家との共同研究
専門家と共同研究を行うにはどうすればよいか 松田晋哉
A 研究計画の段階から相談する / B きちんとした仮説をもつ / C 問題の構造を図示する /
D 研究に正直であること / E データの質に責任をもとう / F 協力してくれた専門家には敬意を払う / G どこに行けば共同研究をしてくれる統計学専門家・疫学専門家に出会えるのか
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