今日は、名郷直樹著、臨床研究のABC、メディカルサイエンス社を紹介します。
http://medcs.jp/?pid=14652443
名郷先生はご存知の方も多いかと思いますが、EBM・EBCPを日本に広めた1人で、これらに関する書籍が何冊もあります。この書籍ではEBCPの実践からいかに臨床研究につなげるかという視点で執筆されています。ですので、EBCPの基本的な知識がないと、やや読みにくいかもしれません。
特徴としては、臨床研究の最初のステップである「リサーチクエスチョンを作る」項目を、あえて一番最後にしていることです。リサーチクエスチョンを立てて適切な臨床研究を行うには、それ以前にEBCPや論文の書き方(研究デザインの学習の意味で)といった土台となる知識が必要だという考えです。
リサーチクエスチョンや研究デザインを熟慮しないでデータを収集してしまい、それをどうにか形にしようとあがいているものを、「耐震偽装論文」と表現しています。世の中には耐震偽装論文があふれているそうです。私も同感です。自分でリハ栄養の耐震偽装論文を執筆しないようにしたいものです…。
臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)も納得できるものです。先人の研究(他人の経験や歴史)から学べなければ、いい臨床も臨床研究もできるわけがありません。自分の経験から振り返って学べなければ(経験学習モデル)、いつまでたってもヤブです。日頃から好奇心や疑問をもって観察しなければ、研究したいと思うネタに気付くこともありません。
ただ、臨床研究のABCという割にはやや難しい内容で、初心者向けではないなあと私は感じました。多少の経験がある初級者から中級者が読むほうが、学びが多いかもしれません。
臨床研究の初心者には「福原俊一著、リサーチ・クエスチョンの作り方 (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト) 」をお勧めします。こちらのほうがわかりやすいと思います。
目次
第1章 研究を始める前の前に
第2章 EBMから臨床研究へ EBMの実践と臨床研究を対応させて
第3章 臨床研究を支える3つのK(研究、経験、観察)
第4章 先人の研究を振り返る 論文のイントロダクションを読む/研究のための情報検索/MEDLINEの検索ノウハウ/検索された論文を整理する/横断研究と症例対照研究/コホート研究/生態学的研究/介入研究/メタ分析/メタ分析の結果の読み/UKPDS33を例に:論文のイントロダクションを読む
第5章 経験と観察を振り返る カルテの情報を臨床研究に生かす/日常臨床における観察/厚生労働省統計表データベースを使ってみる
第6章 臨床研究のバイアス
第7章 論文の書き方から学ぶ CONSORT声明 治療の論文の書き方ガイド/CONSORT声明 研究デザイン/CONSORT声明 結果、考察/STROBE声明 コホート研究1/STROBE声明 コホート研究2/STROBE声明 症例対照研究1/STROBE声明 症例対照研究2/STARD声明 診断についての臨床研究を概観する/STARD声明 診断に関する臨床研究の主なバイアス/STARD声明 診断についての臨床研究論文を検討する
第8章 さまざまな臨床研究 Clinical Prediction Guide:臨床予測指標/質的研究/T2リサーチ
第9章 クリニカルクエスチョン リサーチクエッションを立てる
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