2010年4月21日水曜日

情報調査力のプロフェッショナル

情報調査力のプロフェッショナル―ビジネスの質を高める「調べる力」、上野佳恵著、ダイヤモンド社を紹介します。

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=%39%37%38%2D%34%2D%34%37%38%2D%34%39%30%35%33%2D%32

現代はGoogleなどインターネットで何でも情報を検索できる時代です。Googleの活用法がとても大切であることは確かですが、適切な情報調査・検索をするためには、すぐにググればよいというものではないということが述べられています。

この書籍のポイントは2つあります。1つ目は「調べること」を分解すると、知識ギャップの認識、自分の情報源リストとのすり合わせ、情報の獲得、情報の検証・判断、情報の伝達、自分の情報源リストの整備になり、これらのステップを確実に1つずつ踏んで行うと、よい調査になりやすいということです。

すぐに検索できるので、私は深く考えないでとりあえずキーワードを入力してGoogleで検索しがちです。しかしそれでは、臨床研究においてリサーチクエスチョンや臨床研究デザインを深く考えないで、とりあえずデータを集めてしまうことと同じで、よい検索、よい臨床研究にはなりません。EBCPでも情報検索の前に、疑問をPECOの形で定式化します。

つまり、何の目的で何をどの程度知りたいのかを明確にすることが、データを収集する前に必要です。その次に、インターネット以外の情報源のほうがより有益な可能性もありますので、複数の情報源の中からどれで情報を調べるかを考えることも必要です。

例えば私は自宅近くの図書館に月2回、書店に月1回は行くようにしています。インターネットで調べるよりも図書館や書店で調べるほうが適切かつ速い可能性があります。また、同僚や友人に話を聞くほうが有効な場合もあります。これらの情報源(正確に言うとインターネットや図書館・書店は情報源ではなくて、情報源の宝庫です)から選択したうえで、情報を検索することが重要です。

2つ目のポイントは、ビジネスで「調べる領域」の80%は企業、人物、業界、消費者の4つに限定され、それぞれ情報検索のコツがあるということです。

医療で調べる領域の多くは、病院、人物、学会・研究会、医療情報(リハ栄養など)、学会時の会場・宿泊先・観光名所・評判のお店(?)あたりでしょうか。これらについても、全く同じ情報源で検索するよりも、領域によって検索方法を変えたほうがより適切かもしれません。私もあまり詳しいことは言えませんが…。

ネットサーフィンから質の高い情報調査に変化させるには、検索スキルだけでなく、Faculty Developmentに含まれる問題発見・解決能力やコミュニケーション能力の活用が重要です。FDを意識しながらGoogleを活用するだけでも違うかもしれません。

目次
はじめに――調べるスキルの引き出しを増やすには

序章 プロフェッショナル・リサーチャーの作法

ビジネス・リサーチの世界に起こった革命
 どこまで調べればいいのか

ビジネスは問題解決思考で動いている
 「本質的」な問題とは何か
 解決策の探り方

ないがしろにされている「調べる」スキル

第1章 調べる仕組みとは

ビジネス・リサーチはなぜ難しいか
 休暇の旅行先を「自発的に」調べる
 必要に迫られて調べるプレッシャーを楽しめるか

「調べること」を分解する
 (1) 知識ギャップの認識
 (2) 自分の情報源リストとのすり合わせ
 (3) 情報の獲得
 (4) 情報の検証・判断
 (5) 情報の伝達
 (6) 自分の情報源リストの整備

「調べるサイクル」
 ビジネスにおける「調べるサイクル」とは
 不完全な「調べるサイクル」

「調べる」ために必要なスキルセット
 情報リテラシーとは何か

第2章 ビジネス情報ニーズの範囲

ビジネスの課題の中のパターン
 情報センターに寄せられる問い合わせの傾向
 「ビジネス支援」情報とは
 「調べる領域」の80%とは

第3章 企業と人物について調べる

事例1:講演者を探す
 課題を明確にする
 事前の確認
 「とっかかり」は、何か
 「無」からは何も生まれない
 「足」で稼ぐ
 「人」で稼ぐ
 立ち止まって考える

視野を広げ、会社を調べる
 判断の基準
 異なる視点を取り込む
 いざというとき頼るのは「人」
 一歩先んじて動く
 伝え方しだい

第4章 基本のリサーチ[1] 「企業」「人物」

会社について調べる
 (1) 何をやっているどんな会社か?
 (2) その会社は儲かっているのか?
 (3) 最近どのようなことをやっているか、やろうとしているのか?

人について調べる

第5章 業界について調べる

事例2:ペット業界を調べる

佐藤くんの場合

山田さんの場合

鈴木くんの場合

コンサルタント村田さんの場合
 調べることの枠組み
 民間調査会社のレポートの利用
 情報提供サービス
 記事検索の位置づけ
 インターネットの利用
 情報量の見極め

第6章 基本のリサーチ[2] 「業界」「消費者」

業界を調べる
 (1) 政府統計
 (2) 業界団体による統計・資料
 データ集、統計集の功罪
 (3) 民間調査会社の市場調査レポート
 市場調査レポートの作られ方
 (4) 新聞・雑誌記事
 図書館活用のポイント
 (5) ヒアリング

消費者動向を調べる
 世論調査
 消費者調査の活用法

第7章 情報のプロフェッショナルへの道

原点

情報提供サービスでの仕事

コンサルティング会社の仕事
 リサーチの目的と条件
 リサーチのプロセス
 Plan Do See

情報の仕事で独立

あとがき

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