2010年4月14日水曜日

医学的研究のデザイン第3版

今日はHulleyら著、木原雅子・木原正博訳、医学的研究のデザイン第3版―研究の質を高める疫学的アプローチ、MEDSIメディカル・サイエンス・インターナショナルを紹介します。

http://www.medsi.co.jp/books/products/detail.php?product_id=2897

私が昔(といっても4-5年前ですが)臨床研究デザインの学習を必死にしていた頃は第2版だったのですが、昨年第3版が出ました。

臨床研究の経験のない人がこの書籍を読んでもあまり理解できないかもしれません。以前紹介した書籍のほうが初心者にはお勧めです。しかし、きちんとした臨床研究を行いたいと考えている人には必須の教科書です。これより優れた教科書は私が知る限りありませんので、臨床研究の初級者以降に強くお勧めします。

ただ、臨床研究デザインの学習にせよ、実際の臨床研究の実施にせよ、きちんと学び実施するには、1人では難しいことが少なくありません。仲間を見つけて(これも容易ではないのですが)一緒に学習し研究することが望ましいです。

以前に比べれば臨床研究デザインを学習できる場は増えていますが、私が学んだ「プライマリ・ケア医のための臨床研究デザイン塾」はなくなってしまいました。透析医と整形外科医のデザイン塾は動いているようですが。

第2版と第3版で基本的に大きな違いはないのですが、いくつか新しい記載があります。トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)に関しては、第3版で詳しく紹介されています(臨床研究のABCにも記載されています)。これは研究で得られた知見が、実地に応用できるかどうかを検討する研究であり、2つのタイプがあります。

・基礎研究で得られた知見を臨床研究に適用する(T1研究)
・臨床研究で得られた知見を社会(コミュニティ)における保健活動の改善に適用する(T2研究)

臨床現場で働く医療人には、T2研究のほうがより身近です。例えばランダム化比較試験で統計学的有意差が出ればエビデンスレベルとしては高いものになります。しかし、ランダム化比較試験の参加者は理想的な人であることが多く、医療人が臨床現場で接する患者さんとは異なることがあります。

いくらレベルの高いエビデンスがあっても、臨床現場で活用されなければ、活用されて実際に効果が出なければ、臨床上の意義は乏しいと言えます。研究者の出世と次の研究費の取得には意義が大きいかもしれませんが…。

リハ栄養の質の高いエビデンスを作るためには、この書籍を繰り返し熟読し理解することが必要と考えています。臨床研究にかなりの興味がある方はぜひ読んで学んでください。

目次
第Ⅰ部 基本的要素
1,さあ、始めよう:医学的研究の「解剖学」と「生理学」
2,研究テーマを考える
3,研究対象者を選ぶ:対象者の定義とサンプリングと集め方
4,測定方法を計画する:定度と真度
5,サンプルサイズを見積もるための準備:仮説と基本事項
6,サンプルサイズとパワーの推定:その応用と実例
第Ⅱ部 研究デザイン
7,コホート研究をデザインする
8,横断研究とケースコントロール研究をデザインする
9,観察的研究における因果推論を強めるために
10,盲検的ランダム化臨床試験をデザインする
11,その他の臨床試験のデザインと実施上の問題
12,医学検査に関する研究をデザインする
13,既存のデータを利用する
第Ⅲ部
14,倫理の問題
15,質問調査をデザインする
16,データ管理
17,研究の実施と質管理
18,コミュニティ研究と国際共同研究
19,研究申請書の作成と研究助成
演習問題
演習問題の解答

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