今日は、回復期リハ診療報酬改定とリハ栄養の関連について記載します。
4月の診療報酬改定で、回復期リハに関しては、
・休日リハビリテーション提供体制加算(1日につき)60点
・リハビリテーション充実加算(1日につき)40点
が新設されました。休日リハ提供体制加算は、休日の1人1日当たりリハ提供単位数も平均2単位(40分)以上であることが算定要件です。リハ充実加算は、1人1日あたり平均6単位(2時間)以上のリハが行われていることが算定要件です。
病院経営上はこれらの加算を算定できるほうが明らかに有利なので、多くの回復期リハ病棟入院中の患者が、平日は1日6単位前後、休日は2単位前後のリハを行うことになります。
入院患者の栄養状態が良好で、1日6単位以上のリハの適応があれば、今回の診療報酬改定は好ましいことになります。訓練時間が増えることで、筋力、持久力、ADLなどのさらなる改善を期待できます。
しかし、重度の栄養障害の患者に対しても算定要件を満たすために、平日1日平均6単位以上、休日1日平均2単位以上にするために、これだけのリハが施行されることがあるかもしれません。
そうなると、リハの効果が出ないどころか、かえって体力低下、筋力低下につながる可能性があります。算定要件がリハの逆効果になってはいけないと考えます。
実際には重度の栄養障害の患者でも、栄養状態が改善傾向にあれば積極的なリハや1日6単位以上のリハも可能です。そのためには、リハによるエネルギー消費量の計算と、エネルギー蓄積量の付加の考慮が必要となります。
運動によるエネルギー消費量の目安は、以前にも紹介したメッツ(metabolic equivalents: METs)です。運動時の酸素消費量を安静座位時の酸素消費量で割った数値で、運動の強さの指標となります。例えば、
2メッツ:更衣、整容、歩行(平地、54m/分未満)、料理
3メッツ:歩行(平地、67m/分)、階段下り、屋内掃除、レジスタンストレーニング(軽・中等度)
となります。また、メッツを用いて、下記の式でリハによるエネルギー消費量を計算できます。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×運動時間(h)
例えば、体重60kgの患者が軽いレジスタンストレーニングなど3メッツ程度の理学療法と作業療法を合計2時間行うと、1.05×60×3×2=378kcalとなります。無視できないエネルギー消費量ですので、リハ栄養管理ではこれを考慮することが必須です。
さらに、低栄養状態であり栄養改善を要する患者には、1日200~500 kcal程度のエネルギー蓄積量も摂取することが必要です。そうしなければ低栄養状態を維持することになります。
これらの計算が大変であれば、1日平均6単位以上リハを行う患者の活動係数を1.5~1.7とやや高めに設定しておいて、栄養モニタリングで体重変化などを確認しながらエネルギー摂取量を適宜変更してもよいかもしれません。
リハを考慮しないエネルギー消費量の計算では、活動係数はベッド上1.0~1.2、ベッド外活動1.3のいずれかのことが多いです。確かにHarris-Benedict式では日本人では高めに計算されることが多いといわれています。
しかし活動係数1.3では、栄養障害の患者が1日6単位以上のリハを行った場合、栄養改善どころか栄養状態が悪化する可能性が十分あります。適切な活動係数を設定するためには、PT・OT・STの栄養管理への関与が必要です。
休日リハ提供体制加算とリハ充実加算の新設はよいことですが、リハ栄養的にみると、栄養状態良好もしくは低栄養状態でも栄養改善を目指した適切なリハ栄養管理が行われている場合のみ、望ましいです。つまり、回復期リハにおける栄養管理の重要性が、今回の診療報酬改定で高まったといえます。
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