2010年4月1日木曜日

医療系のためのやさしい統計学入門

今日は、中村好一編集、医療系のためのやさしい統計学入門、診断と治療社を紹介します。

http://www.shindan.co.jp/shindan/shinkan/shinkanT.php?id=863

統計学自体が決して易しい学問ではないので、どんなにやさしい書籍であってもすぐに理解して臨床研究やEBCPに活用できるようになるという訳にはいきません。やはり一定の努力や苦労が必要です。

この本は統計ばかり記載されている殺伐とした書籍ではなく、臨床研究やEBCPとつなげながら記載されていて、統計の書籍の中ではわかりやすいと思います。読む気になる書籍です。ただ、この書籍の内容のすべてを理解したとはいえませんが…。

研究結果の公表の仕方もコンパクトにまとめられているので、学会発表の経験が少ない方に参考になると思います。ただ、あくまで入門書で多くの内容がコンパクトに詰まっていますので、詳細を知りたいときは別の書籍で学習することが必要です。一定の経験がある方には、よりレベルの高い書籍を推奨します。

データを収集してから統計の相談をされても基本的に手遅れで、研究プロトコール作成時に相談することは、臨床研究の鉄則です。統計学が得意な人は少ないと思いますが、苦手だからこそ後回しにするのではなく、先に相談しておくことが大切です。

この本のⅢ章はすぐに理解できなくても、他の章(特にⅡ章の推測統計学の基本的な考え方、母集団と標本の関係、推定と検定の違い)を理解できると、物の考え方が広がります。私は推測統計学の基本を理解できるまで数年かかりましたが…。リハ栄養の研究を進めるのに必要な考え方です。

目次
I章 研究を始める前に知っておきたいこと
   1.研究のアウトライン  山縣然太朗
   A はじめに / B EBM / C 因果関係 / D 根拠のレベル  
   2.情報収集(文献検索)  小笹晃太郎
   A 情報収集の目的 / B 情報源 / C 2次資料の利用(キーワードと検索式) / D 文献の収集 
   3.研究における倫理的配慮  尾島俊之
   A なぜ倫理的配慮が必要なのでしょうか / B 個人情報保護法と疫学研究倫理指針 
   / C 説明と同意 / D 倫理審査 / E 個人情報の安全管理

Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう ~Excelでできることを中心に~
   1.代表値,ばらつき  定金敦子,中村好一
   A データの種類 / B 質的データの記述統計 / C 数量データの記述統計
   2.記述統計としての相関係数,1次回帰,オッズ比  栗山進一
   A 散布図 / B 相関係数 / C 1次回帰 / D オッズ比
   3.統計学的推論(推定と検定)  横川博英
   A 推定と検定 / B 統計学的推定 / C 統計学的検定
   4.平均の差(推定と検定)  鈴木孝太
   A 平均の差における推定 / B 平均の差における検定
   5.割合の差(推定と検定)  早坂信哉,尾島俊之
   A 1つの母集団の割合 / B 2群の割合の差
   6.相関係数と1次回帰係数(推定と検定)  西 信雄
   A 相関係数 / B 1次回帰係数 / C これだけはやってはいけない

Ⅲ章 使えなくても理解できるようにしておこう ~生兵法はケガのもと,専門家と組んで解析したい~
   1.交絡因子  藤野善久
   A 交絡とは / B 交絡因子の制御方法 / C 仮説との対応
   2.層化分析(マンテル・ヘンツェル法)  定金敦子,中村好一
   A 層化とは / B マンテル・ヘンツェル法
   3.ロジスティック解析  栗山進一
   A ロジスティック解析の基礎概念 / B 前向きコホート研究・臨床研究での使用 
   / C 症例対照研究・横断研究での使用
   4.生存分析  横川博英
   A カプラン・マイヤー法 / B 2群の生存確率関数の差の検定   C コックス回帰分析
   5.分散分析,共分散分析  鈴木孝太
   A 分散分析 / B 共分散分析
   6.因子分析  尾島俊之
   A 主成分分析 / B 因子分析 / C 主成分分析と因子分析の違い
   7.一致性の検討(カッパ統計量)  西 信雄
   A カッパ統計量の求め方 / B 重みづけカッパ統計量の求め方
   8.ノンパラメトリック解析  松田晋哉
   A マン・ホイットニーのU検定(独立2群間の検定) 
   / B ウィルコクソンの符号つき順位和検定(対応のある2群間の検定) 
   / C クラスカル・ワリス検定(独立多群間の検定) / D ノンパラメトリック解析を行う際の留意点

Ⅳ章 研究結果を公表してみよう
   1.図表の描き方(グラフ,ヒストグラム,チャート)  安村誠司,山崎幸子
   A 図と表 / B 図 / C 表
   2.学会発表(演題申し込みから発表まで)  辻 一郎
   A どの学会で発表するか / B 演題名を決める / C 共同演者を決める / 
   D ポスター発表にするか口演発表にするか / E 抄録の作成 / F 発表資料の作成 / 
   G 予行演習 / H 発表そして質疑応答 / I 学会発表後に行うべきこと
   3.論文投稿(執筆から校正まで)  中村好一
   A 論文の主要部分の構成 / B 論文のその他の部分 / C 論文の順序  / 
   D 著者を誰にするか / E 投稿する雑誌をどれにするか / F 論文完成から投稿まで / 
   G 投稿 / H 編集委員会とのやりとり / I 論文採用後の対応 / J 論文刊行後

Ⅴ章 専門家との共同研究
   専門家と共同研究を行うにはどうすればよいか  松田晋哉
   A 研究計画の段階から相談する / B きちんとした仮説をもつ / C 問題の構造を図示する / 
   D 研究に正直であること / E データの質に責任をもとう / F 協力してくれた専門家には敬意を払う / G どこに行けば共同研究をしてくれる統計学専門家・疫学専門家に出会えるのか

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