今日は、中村好一編集、医療系のためのやさしい統計学入門、診断と治療社を紹介します。
http://www.shindan.co.jp/shindan/shinkan/shinkanT.php?id=863
統計学自体が決して易しい学問ではないので、どんなにやさしい書籍であってもすぐに理解して臨床研究やEBCPに活用できるようになるという訳にはいきません。やはり一定の努力や苦労が必要です。
この本は統計ばかり記載されている殺伐とした書籍ではなく、臨床研究やEBCPとつなげながら記載されていて、統計の書籍の中ではわかりやすいと思います。読む気になる書籍です。ただ、この書籍の内容のすべてを理解したとはいえませんが…。
研究結果の公表の仕方もコンパクトにまとめられているので、学会発表の経験が少ない方に参考になると思います。ただ、あくまで入門書で多くの内容がコンパクトに詰まっていますので、詳細を知りたいときは別の書籍で学習することが必要です。一定の経験がある方には、よりレベルの高い書籍を推奨します。
データを収集してから統計の相談をされても基本的に手遅れで、研究プロトコール作成時に相談することは、臨床研究の鉄則です。統計学が得意な人は少ないと思いますが、苦手だからこそ後回しにするのではなく、先に相談しておくことが大切です。
この本のⅢ章はすぐに理解できなくても、他の章(特にⅡ章の推測統計学の基本的な考え方、母集団と標本の関係、推定と検定の違い)を理解できると、物の考え方が広がります。私は推測統計学の基本を理解できるまで数年かかりましたが…。リハ栄養の研究を進めるのに必要な考え方です。
目次
I章 研究を始める前に知っておきたいこと
1.研究のアウトライン 山縣然太朗
A はじめに / B EBM / C 因果関係 / D 根拠のレベル
2.情報収集(文献検索) 小笹晃太郎
A 情報収集の目的 / B 情報源 / C 2次資料の利用(キーワードと検索式) / D 文献の収集
3.研究における倫理的配慮 尾島俊之
A なぜ倫理的配慮が必要なのでしょうか / B 個人情報保護法と疫学研究倫理指針
/ C 説明と同意 / D 倫理審査 / E 個人情報の安全管理
Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう ~Excelでできることを中心に~
1.代表値,ばらつき 定金敦子,中村好一
A データの種類 / B 質的データの記述統計 / C 数量データの記述統計
2.記述統計としての相関係数,1次回帰,オッズ比 栗山進一
A 散布図 / B 相関係数 / C 1次回帰 / D オッズ比
3.統計学的推論(推定と検定) 横川博英
A 推定と検定 / B 統計学的推定 / C 統計学的検定
4.平均の差(推定と検定) 鈴木孝太
A 平均の差における推定 / B 平均の差における検定
5.割合の差(推定と検定) 早坂信哉,尾島俊之
A 1つの母集団の割合 / B 2群の割合の差
6.相関係数と1次回帰係数(推定と検定) 西 信雄
A 相関係数 / B 1次回帰係数 / C これだけはやってはいけない
Ⅲ章 使えなくても理解できるようにしておこう ~生兵法はケガのもと,専門家と組んで解析したい~
1.交絡因子 藤野善久
A 交絡とは / B 交絡因子の制御方法 / C 仮説との対応
2.層化分析(マンテル・ヘンツェル法) 定金敦子,中村好一
A 層化とは / B マンテル・ヘンツェル法
3.ロジスティック解析 栗山進一
A ロジスティック解析の基礎概念 / B 前向きコホート研究・臨床研究での使用
/ C 症例対照研究・横断研究での使用
4.生存分析 横川博英
A カプラン・マイヤー法 / B 2群の生存確率関数の差の検定 C コックス回帰分析
5.分散分析,共分散分析 鈴木孝太
A 分散分析 / B 共分散分析
6.因子分析 尾島俊之
A 主成分分析 / B 因子分析 / C 主成分分析と因子分析の違い
7.一致性の検討(カッパ統計量) 西 信雄
A カッパ統計量の求め方 / B 重みづけカッパ統計量の求め方
8.ノンパラメトリック解析 松田晋哉
A マン・ホイットニーのU検定(独立2群間の検定)
/ B ウィルコクソンの符号つき順位和検定(対応のある2群間の検定)
/ C クラスカル・ワリス検定(独立多群間の検定) / D ノンパラメトリック解析を行う際の留意点
Ⅳ章 研究結果を公表してみよう
1.図表の描き方(グラフ,ヒストグラム,チャート) 安村誠司,山崎幸子
A 図と表 / B 図 / C 表
2.学会発表(演題申し込みから発表まで) 辻 一郎
A どの学会で発表するか / B 演題名を決める / C 共同演者を決める /
D ポスター発表にするか口演発表にするか / E 抄録の作成 / F 発表資料の作成 /
G 予行演習 / H 発表そして質疑応答 / I 学会発表後に行うべきこと
3.論文投稿(執筆から校正まで) 中村好一
A 論文の主要部分の構成 / B 論文のその他の部分 / C 論文の順序 /
D 著者を誰にするか / E 投稿する雑誌をどれにするか / F 論文完成から投稿まで /
G 投稿 / H 編集委員会とのやりとり / I 論文採用後の対応 / J 論文刊行後
Ⅴ章 専門家との共同研究
専門家と共同研究を行うにはどうすればよいか 松田晋哉
A 研究計画の段階から相談する / B きちんとした仮説をもつ / C 問題の構造を図示する /
D 研究に正直であること / E データの質に責任をもとう / F 協力してくれた専門家には敬意を払う / G どこに行けば共同研究をしてくれる統計学専門家・疫学専門家に出会えるのか
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