先日、サルコペニアのコンセンサス論文を紹介しましたが、その続きです。
Cruz-Jentoft AJ, Baeyens JP, Bauer JM,et al. Sarcopenia: European consensus on definition and diagnosis. Report of the European Working Group on Sarcopenia in Older People. Age and Ageing 2010;1–12. doi:10.1093/ageing/afq034
先日紹介したアルゴリズムでサルコペニアの有無を判断できること自体はとてもよいのですが、日常的に臨床で使用するには筋肉量の測定に課題があります。しかも筋肉量を測定できなければ、サルコペニアの診断ができません。
握力測定は男性30kg未満、女性20kg未満が1つの目安、歩行速度は0.8m/sが1つの目安になります。これらは日常的に臨床で測定することが可能です。
筋肉量の測定に関して、この論文ではCTかMRIをゴールドスタンダードとしています。確かにCTやMRIによる測定が一番正確です。しかし、日常的にCTやMRIで評価することは容易ではありません。
次にDEXA法(二重X線吸収測定法)での測定を推奨しています。骨粗鬆症の診断でもDEXA法による骨密度・骨量測定がゴールドスタンダードですので、これはやむを得ないかもしれません。ただDEXA法も日常的に臨床で測定することは容易ではないかもしれません。
次にBioimpedance analysis法(生体インピーダンス解析、BIA)が紹介されています。これはポータブルで測定可能ですので、DEXA法の代替法として使用できるとあります。この機械があれば測定は問題ありませんが、どこにでもある機械というわけにはいきません。
最後に身体計測(例:下腿周囲長31cm未満)が記載されています。しかし、身体計測に関しては誤差が生じやすいため、日常臨床でサルコペニアの診断に用いることは推奨しないとしています。つまり、何らかの機械を用いて筋肉量を計測することを推奨しています。
臨床研究であればCT、MRI、DEXA、BIAによる筋肉量の計測とサルコペニアの診断が必要かもしれません。骨粗鬆症の診断のことを考えても、これらの機械による診断のほうが適切かもしれません。
ただ、身体計測だけでも歩行速度と握力の測定と併用することで、「サルコペニア疑い」程度までは診断できるようになると、リハ栄養的にはありがたいです。目の前の患者にサルコペニアの存在を疑うだけでも臨床での意義は大きいと考えます。
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