2011年1月26日水曜日

慢性期脳卒中の栄養状態と認知機能,運動機能の検討

雑誌「脳卒中」に、慢性期脳卒中の栄養状態と認知機能,運動機能の検討に関する論文が掲載されています。

横山絵里子、中野明子:血管性認知障害のリハビリテーション─慢性期脳卒中の栄養状態と認知機能,運動機能の検討─.脳卒中32:634–640,2010

下記HPで全文PDFファイルで見ることができます。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/6/634/_pdf/-char/ja/

筋力や持久力に関するリハ栄養の研究は増えつつあると思いますが、認知機能・障害と低栄養の関連を調べた研究はまだ少ないのが現状です。この研究では慢性期脳卒中患者で高度な低栄養ほど、ADLや認知機能、言語機能が低いという結果です。

慢性期脳卒中患者での検討ですが、脳卒中急性期の重症度や侵襲の程度は無視できないと思います。重症脳卒中患者では、重症なためにADL、運動機能、認知機能、栄養状態のすべて低くなりやすいです。ただ、回復期での栄養管理が不適切だったために、低栄養でADLや認知機能の改善が少なかったという仮説もあると考えます。

この研究は観察研究ですが、BCAAの投与で認知機能が改善したという報告もあります。エビデンスレベルが高いとはいえませんが、特に低栄養の場合には、適切な栄養管理と同時にBCAAの投与を検討してもよいかもしれません。

最後に考察を一部引用させていただきます。私はこの考察にまったく同感です。

「低栄養は機能障害の原因であり,結果でもある.栄養管理は特定の認知機能を改善させるわけではない.認知障害のリハにおける栄養管理の役割は,直接的な認知機能の改善(ビタミン欠乏による認知症など)や,間接的に体力低下や意欲低下などを改善させることで訓練効果を高め,認知・運動機能の帰結を向上させることである.認知・身体機能の土台固めと維持に栄養管理は不可欠であり,今後更に加速する高齢化に向けて,一層リハ栄養管理の重要性は高まると思われる.」

リハ栄養管理をリハの臨床現場に早く普及させて、さらなる機能改善やADL・QOLの向上に貢献したいですね。

要旨
【目的】脳卒中の栄養状態と認知・運動機能,ADL との関連を明らかにする.【方法】対象は慢性期脳卒中381 例(平均68±11 歳)で,下肢運動年齢(MA),Barthel index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS),Functional Independence Measure(FIM),長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS),標準失語症検査(SLTA),行動性無視検査(BIT)の評価と同時期にbody mass index(BMI),血清アルブミン(Alb), 体重変化率を指標に栄養状態を評価した.【結果】栄養状態は全体の69%が低栄養であった.高度な低栄養ほどMA,BI,FIM,HDS,SLTA,BIT は低下していた. 順位相関係数の検討ではMA,BI,HDS,SLTA はBMI やAlb と有意な正の相関を認めた.【結論】低栄養が認知・運動機能やADL 低下に関与する可能性が示された.

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